説明

流体浄化・流体浄化度測定システム、および方法

【課題】流体を浄化、または流体の浄化度を測定する。
【解決手段】空気または水のような流体、媒体における生物的粒子を、同時に光学的に殺菌、検知するシステムと方法が開示されている。媒体に入射する光源は、可視レーザ光ビームおよび紫外線レーザ光ビームを同時に照射する2波長レーザである。特に、半導体レーザは第1可視レーザ光ビームを生成し、第2紫外線レーザ光ビームは、第1可視レーザ光ビームが周波数倍増クリスタルを通過することにより生成される。光検知部は、リアルタイムに生物的粒子の存在を測定するために、空気または水を通過したレーザ光ビームの散乱、蛍光、および/または通過を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気または水のような流体の処理、および流体の汚染度合を検知する装置に関する。特に、2つの波長を放射するレーザを用いて、空気または水を処理し、空気中または水中の汚染を測定する装置に関する。本発明は、空気を浄化し、呼吸しても安全かどうかを確認する製品に適用してもよい。また、本発明は、飲料水を浄化し、飲んでも安全かどうかを確認する製品に適用してもよい。
【背景技術】
【0002】
呼吸しても安全なきれいな空気、飲んでも安全な水の必要性が、世界中の国、または地域で高まっている。主要な、大量の、小型でソリッドステートな遠紫外線(UV−C)光源の適用は、水または空気を、化学薬品を使用せずに殺菌する。UV−C光源は、恒久な物理的なダメージをDNAに与え、バクテリア、ウィルス、菌が再び作り出されることを防ぐ。これは、安全に呼吸したり飲んだりするために利用する点で、UV−Cの処理が空気や水の殺菌に利用できることを意味する。UV−C光は、特に大腸菌を破壊するのに効果的である。
【0003】
また、小型でソリッドステートなUV−C光源は、生物的化学的な検知にも適用される。生物物質と化学物質の混合物は、UV−C光を強く吸収するためである。たんぱく質および他の有機的な化学物質は、それぞれの蛍光スペクトルにより特定できる。蛍光の測定は、混合物が強く吸収する地点に短波長の光の照明を必要とし、長波長の蛍光の結果を検出して行う。およそ280nmの波長が好適であるが、短いものであれば、およそ220nmの波長は、この波長で強く吸収できるので好ましい。
【0004】
空気および水を処理するUV−C製品の使用は、既に可能である。これらの製品は、UV光源として水銀ランプを使用している。しかしながら、水銀ランプは、有毒な材料を含み、寿命が短い傾向があり、ウォームアップに時間を要する。これに代わる、開発中のUV光源は、UV半導体発光ダイオード(LED:Light emitting diode)である。現在のUV半導体発光ダイオードを使用するときの欠点は、寿命の問題、波長260nmより小さい場合のパフォーマンスの低さ、平行ビームや焦点を絞った強い光を与えることができないという点である。一方、UV−Cレーザは、潜在的に、蛍光の測定に速やかに調節可能な、単色で干渉性があり、平行で容易に焦点を絞ることが可能なビームを提供する。また、UV−Cレーザは、205nmへ低下した波長で照射する。
【0005】
UV−Cレーザは、周波数倍増青紫波長レーザダイオードによって実現できる。“Nishimura, JJAP 42, 5079(2003)”には、このようにしてUV−Cレーザを製造することが記載されている。周波数倍増によって製造されたUV−Cレーザを用いる利点は、装置を、UV−Cレーザ光(205〜230nm)および青紫レーザ光(410〜460nm)の両方を放射するように製造することができるという点である。2つの波長の光は、特に、微生物の種類とサイズを区別するセンサシステムに有用である。
【0006】
空気中にUVレーザを用いて微生物の処理および検知を行うシステムについて、以下にいくつか開示されている。
【0007】
“Yoshinaga et al., US5123731 June 13, 1992”には、第1レーザビームを周波数倍増して2つの波長のレーザを用いる粒子測定装置が開示されている。ここでは、200nmに低下した波長のレーザを用いることが記載されている。しかしながら、空気を処理することについては開示されておらず、粒子の処理についても記載されていない。
【0008】
“Silcott et al., US7106442 September 12, 2006”には、周波数倍増レーザビームを含む、波長の異なる複数のレーザビームを用いる粒子測定装置が開示されている。しかしながら、粒子の処理については、記載されていない。
【0009】
“Wilson et al., US7242009 July 10, 2007”には、空気中の粒子の脅威と背景とを区別する蛍光を誘発する複数の波長のレーザを用いる方法が開示されている。しかしながら、粒子の脅威を処理する方法については記載されていない。
【0010】
“Berry et al., WO2004110504A2 December 23, 2004”には、UVレーザを用いる空気殺菌システムが記載されている。複数の波長のレーザを用いることは記載されているが、離れた、狭い範囲についてのみである。また、検知については記載されていない。
【0011】
“Zamir, WO2005011753A1 February 10, 2005”には、UVレーザを用いて液体および気体を殺菌するシステムが開示されている。UV光のみが用いられており、微生物の検知はしていない。
【0012】
UVレーザを用いて水中の微生物を検知し処理するシステムが以下に開示されている。
【0013】
“Baca et al., US6919019B2 July 19, 2005”には、軍事用のレーザ水検知・処理システムが開示されている。しかしながら、このシステムは、微生物を水処理領域から分けて検知し、レーザを微生物の検知には用いていない。これらの問題は、システムの大きさとコストを増大させる。
【0014】
“Goudy, Jr., US4816145 March 28, 1989”には、流体をレーザ消毒するシステムが開示されている。この装置は、UV(ガス)レーザ、および、散乱を補償するレーザパワーを調節するためのセンサーを用いて水を消毒する。1つの波長(UV)のレーザのみが用いられており、検知と、散乱、吸収および蛍光とを区別していない。また、このようなシステムの大きさおよびコストは問題がある。さらに、検知の精度と範囲が限定的である。
【0015】
“Baca, US6740244B2 May 25, 2004”には、UVレーザが使用される地点の近傍で水を消毒するレーザ水処理システムが開示されている。UVレーザのみが使用されており、検知はしていない。
【0016】
“Safta, US6767458B2 July 27, 2004”には、UVレーザのみを用いる水浄化システムが開示されている。しかしながら、検知は行っていない。
【0017】
“Killinger et al., US7812946 October 12, 2010”には、有機的結合を分解して蛍光させるためのUV LED光源を含む水監視装置が開示されている。UVレーザを使用することは記載されているが、UV LEDとのパフォーマンスの比較としてのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】“Yoshinaga et al., US5123731 June 13, 1992”
【特許文献2】“Silcott et al., US7106442 September 12, 2006”
【特許文献3】“Wilson et al., US7242009 July 10, 2007”
【特許文献4】“Berry et al., WO2004110504A2 December 23, 2004”
【特許文献5】“Zamir, WO2005011753A1 February 10, 2005”
【特許文献6】“Baca et al., US6919019B2 July 19, 2005”
【特許文献7】“Goudy, Jr., US4816145 March 28, 1989”
【特許文献8】“Baca, US6740244B2 May 25, 2004”
【特許文献9】“Safta, US6767458B2 July 27, 2004”
【特許文献10】“Killinger et al., US7812946 October 12, 2010”
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】“Nishimura, JJAP 42, 5079(2003)”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記特許文献1には、空気を処理することについては開示されておらず、粒子の処理についても記載されていない。
【0021】
上記特許文献2には、粒子の処理については、記載されていない。
【0022】
上記特許文献3には、粒子の脅威を処理する方法については記載されていない。
【0023】
上記特許文献4には、複数の波長のレーザを用いることは記載されているが、離れた、狭い範囲についてのみである。また、検知については記載されていない。
【0024】
上記特許文献5は、微生物の検知はしていない。
【0025】
上記特許文献6の記載された発明は、微生物を水処理領域から分けて検知し、レーザを微生物の検知には用いていない。これらの問題は、システムの大きさとコストを増大させる。
【0026】
上記特許文献7に記載された発明は、1つの波長(UV)のレーザのみが用いられており、検知と、散乱、吸収および蛍光とを区別していない。また、このようなシステムの大きさおよびコストは問題がある。さらに、検知の精度と範囲が限定的である。
【0027】
上記特許文献8に記載された発明は、UVレーザのみが使用されており、検知はしていない。
【0028】
上記特許文献9に記載された発明は、検知は行っていない。
【0029】
上記特許文献10には、UVレーザを使用することは記載されているが、UV LEDとのパフォーマンスの比較としてのみである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の一側面は、流体を浄化する、流体の浄化度合を測定するシステムである。本発明の実施形態は、流体の流路に投射する第1レーザ光ビームを生成する光源と、流体の流路に投射する第2レーザ光ビームを生成するための、第1レーザ光ビームの少なくとも一部分の周波数を倍増させる周波数倍増器と、を含み、第2レーザ光ビームは、流体中の汚染物質によって吸収されるのに適した波長である。複数の光検知部は、上記光ビームが流路から出た後、少なくとも第1レーザ光ビームおよび第2レーザ光ビームのいずれかを検知する。制御部は、複数の光検知部の検知に基づいて、流体中に汚染物質が存在するか否かを測定するように構成されている。
【0031】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記第1レーザ光ビームは可視レーザ光ビームであり、上記第2レーザ光ビームは紫外線レーザ光ビームである。
【0032】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記紫外線レーザ光ビームの波長は、上記可視レーザ光ビームの厳密に半分の値である。
【0033】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記紫外線レーザ光ビームの波長は、270nmよりも小さいものである。
【0034】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記紫外線レーザ光ビームの波長は、230nmよりも小さいものである。
【0035】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記紫外線レーザ光ビームの波長は、210nmよりも小さいものである。
【0036】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記可視レーザ光ビームの波長は、540nmよりも小さいものである。
【0037】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記可視レーザ光ビームの波長は、460nmよりも小さいものである。
【0038】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記可視レーザ光ビームの波長は、420nmよりも小さいものである。
【0039】
本発明の典型的な他の実施形態では、少なくとも1つの上記光検知部は、流路から散乱した光を測定して、散乱光を検知するものである。
【0040】
本発明の典型的な他の実施形態では、少なくとも1つの上記光検知部は、流路を通過した光を測定して、通過光を検知するものである。
【0041】
本発明の典型的な他の実施形態では、少なくとも1つの上記光検知部は、流路からの蛍光を測定して、蛍光を検知するものである。
【0042】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記第1レーザ光ビームは振動レーザビームである。
【0043】
本発明の典型的な他の実施形態では、さらに、流体の流路を規定する導管を含むものである。
【0044】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記導管は、上記第1および第2レーザ光ビームの波長と対応する波長の光を透過する、複数の光窓領域を含むものである。
【0045】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記第1および第2レーザ光ビームは、異なる箇所で上記流路と交差するものである。
【0046】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記流体は、流路が固定された容器に収容されているものである。
【0047】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記光源は、上記第1レーザ光ビームを生成する半導体レーザを含むものである。
【0048】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記周波数倍増器は、非線形の光学クリスタルである。
【0049】
本発明の典型的な他の実施形態では、上記周波数倍増器は、β‐ホウ酸バリウム非線形光学クリスタルである。
【0050】
本発明の他の側面は、流体の浄化、または流体の浄化度合を測定する方法である。上記方法の典型的な実施形態は、流体の流路に投射する第1レーザ光ビームを生成するステップと、上記流体の流路に投射する第2レーザ光ビームを生成するために、上記第1レーザ光ビームの少なくとも一部分の周波数を倍増するステップと、上記流路から光ビームが出た後、上記第1レーザ光ビームおよび上記第2レーザ光ビームの少なくとも1つを検知するステップと、上記検知した光に基づいて、流体中に汚染物質が存在するか否かを測定するステップとを含み、上記第2レーザ光ビームは、流体中の汚染物質によって吸収されるのに適した波長である。
【0051】
本発明の他の典型的な実施形態では、上記第1レーザ光ビームは可視レーザ光ビームであり、上記第2レーザ光ビームは、上記第1レーザ光ビームの波長の半分の波長の紫外線レーザ光ビームである。
【0052】
本発明の他の典型的な実施形態では、上記第1および第2レーザ光ビームは、異なる箇所で上記流路と交差するものである。
【0053】
本発明の他の典型的な実施形態では、上記流路から散乱した検知された光、上記流路を通過して検知された光、上記流路からの蛍光を検知された光、の少なくとも1つを含む、上記第1レーザ光ビームおよび上記第2レーザ光ビームのうちの少なくとも1つを検知する。
【発明の効果】
【0054】
本発明の利点は、次の通りである。
(a)UV−Cレーザの波長の大きな効果は、バクテリアを破壊するスピードが速い。すなわち、蛍光により強力に発生したバクテリアを汚染された水中で強力に吸収する。
(b)強く平行かつ緊密に焦点を合わせたレーザビームの使用することにより、速やかかつ効果的に水の処理を行うことができ、水中の微生物からの信号を精度よく検知できる。(c)可視およびUVレーザビームはともに、同じ光源により生成される。よって、構成部品のサイズ、コスト、消費電力を低くすることができる。
(d)光の2つの波長は、微生物の種類とサイズとを区別する検知システムに有用である。
【0055】
上述および関連する目的の実現のために、本発明は、以下に充分に記載され、そして請求項において特に指摘した特徴を含む。以下の記載および添付図面は、本発明の特定の実施例である実施形態を詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態は、発明の原理が利用可能な様々な方法のうちの一部を示すに過ぎない。発明の他の目的、利点、およびこれまでにない特徴は、図面と併せて考慮される場合、本発明の以下の詳細な説明から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の典型的な実施形態に係る、空気または水の浄化および検知システムを示す概略図である。
【図2】半導体レーザからの青紫レーザ光ビームを周波数倍増することによって生成されたUVレーザの構成要素を示す平面図である。
【図3】2つの波長のレーザによって生成された、実際の光出力を示す図であり、(a)は青紫レーザビームを示し、(b)は(a)の青紫レーザビームを周波数倍増して生成されたUVレーザビームを示す。
【図4】本発明の典型的な実施形態に係る、水浄化および検知システムを示す概略図である。
【図5】本発明の典型的な実施形態に係る、空気浄化および検知システムを示す概略図である。
【図6】本発明の典型的な実施形態に係る、静的な浄化および検知システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の一側面は、水または空気のような流れる流体を、紫外線レーザ光を用いて消毒し、流体(空気または水)中の可視および紫外線レーザ光の蛍光、散乱、吸収を検知、比較することによって、流体(空気または水)の浄化度合を測定するするシステムを含む。
【0058】
本発明の典型的な実施形態は、可視および紫外線レーザビームを同時に生成するレーザ光源を含む。両方のレーザビームは、水または空気のような、微生物の微粒子を含む流体の狭い流れに投射される。微生物は、蛍光を生じて死滅するとともに、UVレーザ光をほとんど吸収し、また、可視青紫レーザ光を、ほとんど通過させ、散乱させる。異なるレーザビームの蛍光、吸収、散乱を検知、比較することにより、水または空気の浄化度合を測定できる。
【0059】
本発明の典型的な他の実施形態は、直線の流路に沿って一定速度の生物粒子を含む水または空気のような流体の流路を形成する導管と、水または空気の流路に直接投射される紫外線および可視レーザビームを同時に発射するレーザ光源とを有する装置を備えたシステムを含む。可視レーザ光ビームは、半導体レーザによって生成され、紫外線レーザ光ビームは、非線形光学クリスタルを用いて可視レーザ光ビームを周波数倍増することにより生成される。紫外線レーザ光ビームは、同時に、生物粒子から蛍光を発生させるとともに生物粒子のDNA構造を傷つける。このシステムは、さらに、流路中の生物粒子から散乱したレーザ光を測定するセンサ、流路中の生物粒子からの蛍光を測定するセンサ、および、水または空気によって吸収されたレーザ光を測定するために、流路を通過するレーザ光を測定するセンサを含んでいてもよい。このシステムは、さらに、センサの検知の基づいて流路中の汚染物質の存在を測定するように構成された制御部を含んでいてもよい。
【0060】
本発明の典型的な他の実施形態では、流体は、空気および水の少なくともいずれかである。
【0061】
図1および2に示すように、本発明は、第2紫外線レーザ光ビームを生成するための半導体レーザ1aからの第1可視レーザ光ビームの周波数を倍増させることによって生成される2波長レーザ1を用いている。周波数倍増は、例えば、非線形光学周波数倍増クリスタルのような周波数倍増器を用いて達成される。図2は、周波数倍増青紫レーザ光ビームによって生成された2波長レーザ1の構成を示す平面図である。
【0062】
第1青紫レーザ光ビームは、青紫半導体レーザ1aにより生成され、波長は410〜460nmである。緑半導体レーザの波長は、540nm程度であれば好ましい。波長が540nmより小さい場合が好ましいのは、波長540nmが、周波数倍増することによってUV(270nm)となる最大値であるためである。この点で、可視からUVへの変換は、可視の波長を効果的に減少させる。すなわち、540nmより小さい範囲は460nmより小さい範囲よりも好ましく、また、460nmよりも小さい範囲は420nmよりも小さい範囲よりも好ましい。
単色の青紫レーザ光ビームは、まとまった形態で、非線形光学周波数倍増クリスタルのような周波数倍増器に焦点が合わされている。この非線形光学周波数倍増クリスタルは、順応し幾何学的な形状となるように、クリスタルが所定のカットをされたβ-ホウ酸バリウム(BaBまたはBBO)によって形成されている。BBO周波数倍増クリスタルは、入射したレーザ光ビームの周波数を倍増して、出力する2倍(または半分の波長)の周波数の第2紫外線レーザ光ビームを生成する。例えば、460nmのレーザ光ビームが入射すると、230nmのレーザ光ビームを出力する。図1に示すように、入射ビームの一定割合の周波数が2倍となり、残りはそのまま通過する。出力されたビームの1つの要素は第1青紫レーザ光ビームであってもよいし、出力されたビームの他の要素は、第1青紫レーザ光ビームの周波数を倍増(または半分の波長に)した第2紫外線(UV)レーザ光ビームであってもよい。よって、BBO周波数倍増クリスタルからの出力は、波長の異なる2つのビーム(入力されたものと周波数が倍増されたもの)を含む。第2UVレーザ光ビームは、空気または水の浄化に適した波長であることが多い。生物的な汚染物質は、UVレーザ光を吸収して死滅するためである。
【0063】
典型的な実施形態では、BBO周波数倍増クリスタルは、BBO周波数倍増クリスタルに入射された青紫レーザ光ビームが複数の通路を通過するようにする再循環光学的空洞の内側に位置している。これにより、UV光に変換する青紫光の全体量が増加する。加えて、青紫レーザ光ビームに対し直交する方向にマイクロメータ単位の寸法で構成されているとともに、青紫レーザ光ビームと同じ方向にミリメータ単位の寸法で構成されているリッジ導波構造で、BBO周波数倍増クリスタルが機械的に成形されていることにより、UV光に変換する青紫光の全体量が増加する。
【0064】
図3は、青紫半導体レーザ1aから出力し、BBO周波数倍増クリスタル1bを通過した1つのビームを周波数倍増によって生成した2波長レーザ1からの光学スペクトルを示す。青紫半導体レーザは、超高速で、調節および振動させることが可能である。よって、UVレーザ光ビームは、同じ速度で調節できる。UVレーザ光ビーム(b)は、基本的に青紫レーザ光ビーム(a)の半分の波長である。
【0065】
本発明の実施例の動作を下記に示す。本発明は、主に空気中または水中の汚染物質の浄化および検知について記載しているが、本発明はこれに限られるものではない。むしろ、本発明は、適した流体(流体は、液体と気体とを含む)について利用されてもよい。
【0066】
(実施例1)
本発明の典型的な好ましい実施形態を、図4を参照して説明する。図4に示すシステムは、水が一様に流れる流路を規定する導管2aを含む。導管の直径は、1〜10mmであることが好ましく、3mmが最も好ましい。水の流れは、毎分0.1〜3リットルであることが好ましく、毎分1リットルが最も好ましい。導管は、紫外線と赤外線の間の波長の光を透過する光窓領域5を含む。これにより、第1青紫レーザ光ビームと第2紫外線レーザ光ビームとが透過する。光窓領域5は、例えば、結晶石英である。
【0067】
2波長レーザ1によって生成された2つのレーザ光ビームは、分割されて、上記光窓領域を介して水の流れに対し直接入射する。UVレーザ光ビームは、水中の生物粒子または微生物にほぼ吸収され、生物粒子または微生物は蛍光を発する。生物粒子のDNA構造は、ほぼ、UV光により、物理的に傷つけられるか死滅する。UVレーザ光ビームはまた、粒子の散乱を抑えるか、または水を通過するものもある(水の清らさによる)。ほとんどの青紫レーザ光ビームは、水を通過するか、または粒子の散乱を抑える。しかしながら、粒子による蛍光は、青紫レーザ光ビームにより生じる。
【0068】
複数の光検知部3は、水が流れている導管の光窓領域5からから出た光を受ける場所に位置している。例えば、光検知部3は、水中の生物粒子による、光の散乱を測定する検知部(検知部3a)、蛍光を測定する検知部(検知部3b)、透過した光を測定する検知部(検知部3c)を含む(それぞれ、吸収を測定するために用いられてもよい)。CCDセンサは、小型なサイズのため検知部に好ましい。光学フィルタはまた、信号を区別するために用いられる。レーザ光ビームを振動させることは、入力光信号として用いられる。水中の生物粒子の型、サイズ、数は、対応する散乱、蛍光、透過した信号を、検知し比較することにより測定される。
【0069】
導管2aは、入射窓とは近接していない、水の流れから光を通すための、いくつかの光窓領域5を含む。これは、UVレーザ光ビームが、導管内で複数の反射をする手段となり、その結果、いかなる微生物も死滅させることにより、殺菌効果が増加する。
【0070】
制御部7は、複数の光検知部3からの出力を受信し、処理する。制御部7は、複数の光検知部3の検知に基づいて、水中の汚染物質の存在を測定するように構成されている。より詳細には、制御部7は、格納されている既知の汚染物質の参照信号と光検知部3の出力とを比較する。このようにして、汚染物質の種類は、特定されるとともに測定される。光学フィルタは、光検知部3と連動して信号対雑音比を改善するために利用される。制御部7は、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録されたプログラムを実行する制御回路またはプロセッサーの形で構成されている。このような制御部は、本発明の範囲から離れることなく、機能的にハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、およびこれらの組み合わせにより、実行される。
【0071】
(実施例2)
上記システムの別の典型的な好ましい実施形態を図5に示す。図5に示す実施形態は、空気が一定に流れる流路を規定する導管2bを含む。導管の直径は、1〜10mmが好ましく、3mmが最も好ましい。空気の流れは、毎分0.1〜3リットルが好ましく、毎分1リットルが最も好ましい。導管は、紫外線と赤外線との間の波長の光を透過する光窓領域5を含み、これにより、第1青紫レーザ光ビームおよび第2紫外線レーザ光ビームの光を透過する。光窓領域5は、例えば、結晶石英である。
【0072】
2波長レーザにより生成された2つのレーザ光ビームは、分かれて、光窓領域を介して空気の流れに直接入射する。UVレーザ光ビームは、空気中の生物粒子または微生物にほとんど吸収され、生物粒子または微生物は蛍光を発する。生物粒子のDNA構造は、ほぼ、UV光により、物理的に傷つけられるか死滅する。UVレーザ光ビームはまた、粒子の散乱を抑えるか、または空気を通過するものもある(空気の清らさによる)。ほとんどの青紫レーザ光ビームは、空気を通過するか、または粒子の散乱を抑える。しかしながら、粒子による蛍光は、青紫レーザ光ビームにより生じる。
【0073】
複数の光検知部3は、空気が流れている導管の光窓領域からから出た光を受ける場所に位置している。例えば、光検知部3は、空気中の生物粒子による、光の散乱を測定する検知部(検知部3a)、蛍光を測定する検知部(検知部3b)、透過した光を測定する検知部(検知部3c)を含む(それぞれ、吸収を測定するために用いられてもよい)。CCDセンサは、小型なサイズのため検知部に好ましい。光学フィルタはまた、信号を区別するために用いられる。レーザ光ビームを振動させることは、入力光信号として用いられる。空気中の生物粒子の型、サイズ、数は、対応する散乱、蛍光、透過した信号を、検知し比較することにより測定される。
【0074】
導管2aは、入射窓とは近接していない、水の流れから光を通すための、いくつかの光窓領域5を含む。これは、UVレーザ光ビームが、導管内で複数の反射をする手段となり、その結果、いかなる微生物も死滅させることにより、殺菌効果が増加する。
【0075】
上記実施例の通り、制御部7は、複数の光検知部3からの出力を受信し、処理する。制御部7は、複数の光検知部3の検知に基づいて、空気中の汚染物質の存在を測定するように構成されている。
【0076】
(実施例3)
上記システムの別の典型的な好ましい実施形態を図6に示す。図6に示す実施形態は、空気と水が周期的に充填され空になる容器4を含む。容器内に充填された空気および水は、殺菌処理および検知される。容器の容積は、10〜1000mmが好ましく、125mmが最も好ましい。容器は、紫外線と赤外線との間の波長の光を透過する光窓領域6を含み、これにより、第1青紫レーザ光ビームおよび第2紫外線レーザ光ビームの光を透過する。光窓領域6は、例えば、結晶石英である。
【0077】
2波長レーザにより生成された2つのレーザ光ビームは、分かれて、光窓領域を介して空気および水に直接入射する。UVレーザ光ビームは、空気中および水中の生物粒子または微生物にほとんど吸収され、生物粒子または微生物は蛍光を発する。生物粒子のDNA構造は、ほぼ、UV光により、物理的に傷つけられるか死滅する。UVレーザ光ビームはまた、粒子の散乱を抑えるか、または空気または水を通過するものもある(空気または水の清らさによる)。ほとんどの青紫レーザ光ビームは、空気または水を通過するか、または粒子の散乱を抑える。しかしながら、粒子による蛍光は、青紫レーザ光ビームにより生じる。
【0078】
複数の光検知部3は、空気および水が充填されている容器の光窓領域からから出た光を受ける場所に位置している。例えば、光検知部3は、空気中または水中の生物粒子による、光の散乱を測定する検知部(検知部3a)、蛍光を測定する検知部(検知部3b)、透過した光を測定する検知部(検知部3c)を含む(それぞれ、吸収を測定するために用いられてもよい)。CCDセンサは、小型なサイズのため検知部に好ましい。光学フィルタはまた、信号を区別するために用いられる。レーザ光ビームを振動させることは、入力光信号として用いられる。空気中または水中の生物粒子の型、サイズ、数は、対応する散乱、蛍光、透過した信号を、検知し比較することにより測定される。
【0079】
容器4は、入射窓とは近接していない、空気または水から光を通すための、いくつかの光窓領域6を含む。これは、UVレーザ光ビームが、容器内で複数の反射をする手段となり、その結果、いかなる微生物も死滅させることにより、殺菌効果が増加する。
【0080】
上記実施例の通り、制御部7は、複数の光検知部3からの出力を受信し、処理する。制御部7は、複数の光検知部3の検知に基づいて、空気中または水中の汚染物質の存在を測定するように構成されている。
【0081】
空気または水の殺菌処理が完了すると、容器4は空になり、安全な使用のために他の容器が準備される。そして、最初の容器4は、新たな空気および水の処理および検知のために再び充填される。
【0082】
本発明は、特定の実施形態に関して記載されているが、本明細書の記載および添付図面を読み、理解することにより、当業者が、同等の変更および修正を生じさせてもよい。特に、上述の要素(構成要素、組み立て品、デバイス、配置、等)によって実行される様々な機能に関して、そのような要素を記載するために使用された用語(「手段」への言及を含む)は、本発明の本明細書中での典型的な実施形態において、その機能を実施する開示された構造と構造的に同等ではないとしても、特に指摘がない限り、記載された要素の特定の機能を実施するあらゆる要素(すなわち、機能的に同等であるもの)に対応することが意図されている。さらに、本発明の特有の特徴は、いくつかの実施形態のうちの一つのみ、または複数に関して上述されてきたが、そのような特徴は、与えられたアプリケーションあるいは特有のアプリケーションに対して望まれる、または利点があるように、他の実施形態の一つまたは複数の他の特徴と組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、空気を浄化し、呼吸しても安全かどうかを確認する製品に適用してもよい。また、本発明は、飲料水を浄化し、飲んでも安全かどうかを確認する製品に適用してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 2波長レーザ源
1a 半導体レーザ
1b 周波数倍増(FD)クリスタル
2 空気または水が流れる導管
2a 水が流れる導管
2b 空気が流れる導管
3 光検知部
3a 流れから散乱しているレーザ光を測定する光検知部
3b 流れからにより生じたレーザの蛍光を測定する光検知部
3c 流れを通過したレーザ光を測定する光検知部
4 水または空気を収容する容器
5 流路の光窓領域
6 容器の光窓領域
7 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路に投射する第1レーザ光ビームを生成する光源と、
上記流体の上記流路に投射する第2レーザ光ビームであって、流体中の汚染物質によって吸収されるのに適した波長である第2レーザ光ビームを生成するために、上記第1レーザ光ビームの少なくとも一部分の周波数を倍増させる周波数倍増器と、
上記流路から出た後に、上記第1レーザ光ビームおよび上記第2レーザ光ビームの少なくともいずれかを検知する複数の光検知部と、
上記複数の光検知部の検知に基づいて、上記流体中に汚染物質が存在するか否かを測定するように構成されている制御部と、を備えていることを特徴とする流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項2】
上記第1レーザ光ビームは可視レーザ光ビームであり、上記第2レーザ光ビームは紫外線レーザ光ビームであることを特徴とする請求項1に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項3】
上記紫外線レーザ光ビームの波長は、上記可視レーザ光ビームの厳密に半分の値であることを特徴とする請求項2に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項4】
上記紫外線レーザ光ビームの波長は、270nmよりも小さいものであることを特徴とする請求項2に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項5】
上記紫外線レーザ光ビームの波長は、230nmよりも小さいものであることを特徴とする請求項4に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項6】
上記紫外線レーザ光ビームの波長は、210nmよりも小さいものであることを特徴とする請求項5に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項7】
上記可視レーザ光ビームの波長は、540nmよりも小さいものであることを特徴とする請求項2に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項8】
上記可視レーザ光ビームの波長は、460nmよりも小さいものであることを特徴とする請求項7に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項9】
上記可視レーザ光ビームの波長は、420nmよりも小さいものであることを特徴とする請求項8に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項10】
上記光検知部の少なくとも1つは、流路から散乱した光を測定して、散乱光を検知するものであることを特徴とする請求項1に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項11】
上記光検知部の少なくとも1つは、流路を通過した光を測定して、通過光を検知するものであることを特徴とする請求項1に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項12】
上記光検知部の少なくとも1つは、流路からの蛍光を測定して、蛍光を検知するものであることを特徴とする請求項1に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項13】
上記第1レーザ光ビームは振動レーザ光ビームであることを特徴とする請求項1に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項14】
さらに、流体の流路を規定する導管を備えていることを特徴とする請求項1に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項15】
上記導管は、上記第1および第2レーザ光ビームの波長と対応する波長の光を透過する、複数の光窓領域を含むことを特徴とする請求項14に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項16】
上記第1および第2レーザ光ビームは、異なる箇所で上記流路と交差することを特徴とする請求項15に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項17】
上記流体は、流路が固定された容器に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項18】
上記光源は、上記第1レーザ光ビームを生成する半導体レーザを含むことを特徴とする請求項1に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項19】
上記周波数倍増器は、非線形の光学クリスタルであることを特徴とする請求項1に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項20】
上記周波数倍増器は、β‐ホウ酸バリウム非線形光学クリスタルであることを特徴とする請求項19に記載の流体浄化・流体浄化度測定システム。
【請求項21】
流体の流路に投射する第1レーザ光ビームを生成するステップと、
上記流体の流路に投射する第2レーザ光ビームであって、流体中の汚染物質によって吸収されるのに適した波長である第2レーザ光ビームを生成するために、上記第1レーザ光ビームの少なくとも一部分の周波数を倍増するステップと、
上記流路から出た後に、上記第1レーザ光ビームおよび上記第2レーザ光ビームの少なくとも1つを検知するステップと、
上記検知した光に基づいて、流体中に汚染物質が存在するか否かを測定するステップと、を含むことを特徴とする流体浄化・流体浄化度測定方法。
【請求項22】
上記第1レーザ光ビームは可視レーザ光ビームであり、上記第2レーザ光ビームは、上記第1レーザ光ビームの波長の半分の波長の紫外線レーザ光ビームであることを特徴とする請求項21に記載の流体浄化・流体浄化度測定方法。
【請求項23】
上記第1および第2レーザ光ビームは、異なる箇所で上記流路と交差することを特徴とする請求項21に記載の流体浄化・流体浄化度測定方法。
【請求項24】
上記検知するステップでは、上記流路から散乱した検知された光、上記流路を通過して検知された光、上記流路からの蛍光を検知された光、の少なくとも1つを含む、上記第1レーザ光ビームおよび上記第2レーザ光ビームのうちの少なくとも1つを検知することを特徴とする請求項21に記載の流体浄化・流体浄化度測定方法。
【請求項25】
上記流体は、空気および水の少なくとも1つであることを特徴とする請求項21に記載の流体浄化・流体浄化度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−19894(P2013−19894A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−146100(P2012−146100)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】