説明

流体浄化装置並びに流体浄化方法

【課題】簡単な構成によって高い殺菌・浄化機能を発揮できる流体浄化装置を提供するものであり、水などの液体からなる被処理流体の殺菌・浄化時に騒音や高電圧の帯電の発生などを抑制し、安定した状態で殺菌・浄化機能を働かせることのできる流体浄化装置を提供すること。
【解決手段】非導電性の材料からなる内筒27とこの内筒27から所定の空間Sを空けて非導電性の材料からなる外筒28を同芯上に設け、外筒28の内側の一部又は全周に導電性部材を取付けて電極30を設けて装置本体10を形成し、この装置本体10の電極30に電圧を加えたときに内筒27の内部を流れる水などの液体からなる被処理流体Wをアース電極として空間Sに放電してこの空間Sを流れる酸素又は空気などの気体と反応させてオゾンを発生させ、このオゾンを被処理流体Wに混合して浄化する液体浄化機能を備えた流体浄化装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、浴槽水やプール水、或は生活廃水、産業廃水などの被処理流体を殺菌・浄化する流体浄化装置並びに流体浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風呂水やプール用水、養殖用水などの水を殺菌・浄化する浄化装置として、被浄化手段を濾過する濾過手段と、被浄化水に接触するように設けられた光触媒、及び光触媒を照射する光源とからなる殺菌手段により構成された水浄化装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
この水浄化装置は、光触媒と、蛍光灯や紫外線ランプからなる光源によって被浄化水を浄化するようにしている。
【0003】
一方、風呂水等の被処理水が流れる配管に設けられる反応容器内に大表面積材料を設け、この大表面積材料に紫外線を照射する紫外線光源と、反応容器の上流側にオゾンを注入するオゾン注入手段を設けた水処理装置がある(例えば、特許文献2参照。)。
この水処理装置は、オゾン注入手段により被処理水にオゾンを注入し、透明に形成した反応容器の外面から紫外線を照射して反応容器内の大表面積材料の表面に光触媒を生成することにより、オゾンと光触媒によって被処理水の浄化を行っている。
【0004】
また、風呂水等の被処理流体が流れる配管の途中に外筒と内筒を備えた二重管からなる反応容器を設け、この反応容器の外筒全周に一方の電極を位置させ、外筒から所定の空間を空けるように設けた透明な内筒に一方の電極と対を成す他方の電極を設け、外筒と内筒との間の電極間に放電を発生させながら外筒と内筒の空間に酸素又は空気を供給することによりオゾンを生成させるようにし、このオゾンを被処理流体に混合させて浄化するようにした流体浄化装置がある(例えば、特許文献3参照。)。反応容器は、外筒をステンレス製によって形成し、一方、内筒を石英ガラス又はホウ珪酸ガラス製によって形成し、外筒側の一方の電極をアース電極としている。
この流体浄化装置は、内筒内に光触媒を設置し、オゾンを発生させるための放電により発生した紫外線を利用してこの光触媒を活性化して機能させるようにし、オゾンと光触媒によって被処理流体の浄化を行っている。
【特許文献1】特開平8−89725号公報
【特許文献2】特開2004−154742号公報
【特許文献3】特開2004−223345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の水浄化装置は、紫外線ランプのみによる殺菌にかえて光触媒と光源によって殺菌して殺菌能力を向上させようとしているが、被処理水を十分に殺菌処理できる殺菌能力を有しているとは言い難かった。
【0006】
特許文献2の水処理装置は、被処理水にオゾンを注入することで光触媒に加えて殺菌作用の高いオゾンにより殺菌能力を高めることはできるが、この場合、オゾン注入手段を反応容器の上流側に別の装置として設け、この外部のオゾン注入手段によってオゾンを別に生成する構造の水処理装置としているため、装置全体が複雑化し、大型化するという問題があった。
【0007】
特許文献3の流体浄化装置においては、二重管からなる反応容器内でオゾンと光触媒を生成し、オゾンの強い殺菌作用を働かせつつ簡単な構造で被処理流体を浄化することで特許文献2の問題を解決しようとするものであるが、この流体浄化装置は、反応容器の外筒をステンレスからなる金属、内筒を透明なガラスからなる誘電体とした構造であるため、次のような問題があらたに生じていた。
【0008】
すなわち、この流体浄化装置においては、反応容器の電極間に放電を発生させるものであるが、内筒と外筒の間に電極を設けて放電する場合、内筒の外面側に電極を設けて放電させると、アーク放電が生じて大きな音が発生するという問題があった。
一方、内筒の内面側に電極を密着させると、無声放電となって音の発生の問題は解決できるが、この場合において内筒内面側の電極を高圧側に帯電させると、内筒内部を流れる流体が液体である場合、この液体が高圧に帯電し、この結果、内筒を接続されている配管が高圧に帯電して危険な状態になるおそれがあった。また、このように内面側を高圧に帯電させると保護装置が必要になるが、この保護装置の装着が困難となっていた。
また、外筒を高圧側に帯電させるようにしたとしても、外筒の外部側に悪影響を及ぼすおそれがあるため、高圧電源の保護装置が必要になっていた。
【0009】
本発明は、上記した実情に鑑み、鋭意検討の結果開発に至ったものであり、その目的とするところは、簡単な構成によって高い殺菌・浄化機能を発揮できる流体浄化装置並びに流体浄化方法を提供するものであり、水などの液体からなる被処理流体の殺菌・浄化時に騒音や高電圧の帯電の発生などを抑制し、安定した状態で殺菌・浄化機能を働かせることのできる流体浄化装置並びに流体浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、非導電性の材料からなる内筒とこの内筒から所定の空間を空けて非導電性の材料からなる外筒を同芯上に設け、外筒の内側の一部又は全周に導電性部材を取付けて電極を設けて装置本体を形成し、この装置本体の電極に電圧を加えたときに内筒の内部を流れる水などの液体からなる被処理流体をアース電極として空間に放電してこの空間を流れる酸素又は空気などの気体と反応させてオゾンを発生させ、このオゾンを被処理流体に混合して浄化する液体浄化機能を備えた流体浄化装置である。
【0011】
請求項2記載の発明は、非導電性の材料からなる内筒とこの内筒から所定の空間を空けて非導電性の材料からなる外筒を同芯上に設け、外筒の内側の一部又は全周に導電性部材を取付けて一方の電極とすると共に、内筒の内側に外筒の電極と同等又はそれ以上の幅の導電性部材を取付けて他方の電極を設けて装置本体を形成し、この装置本体の電極間に電圧を加えたときに空間に放電してこの空間を流れる酸素又は空気などの気体と反応させてオゾンを発生させ、このオゾンを内筒の内部を流れる気体からなる被処理流体に混合して浄化する気体浄化機能を備えた流体浄化装置である。
【0012】
請求項3記載の発明は、内筒内に光触媒を形成するようにした流体浄化装置である。
【0013】
請求項4記載の発明は、外筒と内筒を透明或は半透明の材料によって形成し、外筒の外周側に紫外光を照射する紫外線光源を設けた流体浄化装置である。
【0014】
請求項5記載の発明は、紫外線光源を無電極放電管とした流体浄化装置である。
【0015】
請求項6記載の発明は、外筒と内筒の空間を流れる気体を圧縮機等の機器で0.2〜1MPaに加圧した後に、流体制御機で1〜20l/minに流量調節した流体浄化装置である。
【0016】
請求項7記載の発明は、外筒と内筒の空間を流れる気体を圧縮機等の機器で0.2〜1MPaに加圧した後にエアドライヤを経由させ、流体制御機で1〜20l/minに流量調節した流体浄化装置である。
【0017】
請求項8記載の発明は、装置本体の上流側に筒状体を装着し、この筒状体の内部に少なくともヘアキャッチャーを着脱自在に内蔵した流体浄化装置である。
【0018】
請求項9記載の発明は、非導電性の材料からなる内筒とこの内筒から所定の空間を空けて非導電性の材料からなる外筒を同芯上に設け、外筒の内側の一部又は全周に導電性部材を取付けて電極とし、この電極に電圧を加えたときに内筒の内部を流れる水などの液体からなる被処理流体をアース電極として空間に放電してこの空間を流れる酸素又は空気などの気体と反応させてオゾンを発生させ、このオゾンを被処理流体に混合して浄化させた流体浄化方法である。
【0019】
請求項10記載の発明は、非導電性の材料からなる内筒とこの内筒から所定の空間を空けて非導電性の材料からなる外筒を同芯上に設け、外筒の内側の一部又は全周に導電性部材を取付けて一方の電極とすると共に、内筒の内側に外筒の電極と同等又はそれ以上の幅の導電性部材を取付けて他方の電極とし、この電極間に電圧を加えたときに空間に放電してこの空間を流れる酸素又は空気などの気体と反応させてオゾンを発生させ、このオゾンを内筒の内部を流れる気体からなる被処理流体に混合して浄化させた流体浄化方法である。
【0020】
請求項11記載の発明は、内筒内に光触媒を形成し、この光触媒を空間内で放電したときに生じる紫外光で機能させるようにした流体浄化方法である。
【0021】
請求項12記載の発明は、請求項11の流体浄化方法において、外筒の外周側に紫外線光源を設け、この紫外線光源の紫外光で光触媒を機能させるようにした流体浄化方法である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明によると、簡単な構成によってオゾンを大量に発生して効果的に被処理流体に混合させて高い殺菌・浄化機能を発揮できる流体浄化装置であり、被処理流体が液体である場合に、無声放電によって放電を行うことによって大きな音が発生したり配管が高電圧に帯電したりするのを抑制しながら殺菌・浄化機能を働かせることができる流体浄化装置を提供できる。また、保護装置を必要とすることがないため、安定した状態でオゾンを発生することができる。
【0023】
請求項2に係る発明によると、被処理流体が気体であっても大量のオゾンを安全に発生させることができる流体浄化装置であり、このオゾンを被処理流体に効率的に混合させて殺菌・浄化効果の高い流体浄化装置を提供できる。
【0024】
請求項3に係る発明によると、電極からの放電によって生じた紫外線を光触媒に作用させ、この光触媒によって効果的に被処理流体を殺菌・浄化することが可能な流体浄化装置を提供できる。
【0025】
請求項4に係る発明によると、紫外線光源から紫外光を効果的に光触媒に照射することができ、この紫外光によって光触媒による殺菌・浄化機能を大幅に向上させることが可能な流体浄化装置を提供できる。
【0026】
請求項5に係る発明によると、電極を設けることなく紫外線光源を発光させることができ、紫外線光源を発光させるための付属品などを省略して構造を簡略化でき、コストも削減することができる流体浄化装置を提供できる。
【0027】
請求項6に係る発明によると、外筒と内筒の間を流れる酸素や空気からオゾンを効果的に発生することができる流体浄化装置であり、さらに、請求項7に係る発明によると、酸素や空気の結露を防いで、この供給された酸素や空気を無駄なく利用してよりオゾンを効果的に発生できる流体浄化装置を提供できる。
【0028】
請求項8に係る発明によると、被処理流体に混ざった髪の毛やゴミ等の混合物を取り除くことができ、また、全体のコンパクト化を図ることができる。流体浄化装置を交換しようとする場合には、装置本体を筒状体から外すだけでよく、交換に必要な作業スペースを小さくできる。
【0029】
請求項9に係る発明によると、簡単な構成によってオゾンを大量に発生して効果的に被処理流体に混合させて高い殺菌・浄化機能を発揮できる流体浄化方法であり、被処理流体が液体である場合に、無声放電によって放電を行うことによって大きな音が発生したり配管が高電圧に帯電したりするのを抑制しながら殺菌・浄化機能を働かせることができる流体浄化方法である。また、保護装置を必要とすることがないため、安定した状態でオゾンを発生することができる。
【0030】
請求項10に係る発明によると、被処理流体が気体であっても大量のオゾンを安全に発生させることができる流体浄化方法であり、このオゾンを被処理流体に効率的に混合させて殺菌・浄化効果を高めることができる流体浄化方法である。
【0031】
請求項11に係る発明によると、電極からの放電によって生じた紫外線を光触媒に作用させ、この光触媒によって効果的に被処理流体を殺菌・浄化することができる流体浄化方法である。
【0032】
請求項12に係る発明によると、紫外線光源から紫外光を効果的に光触媒に照射することができ、この紫外光によって光触媒による殺菌・浄化機能を大幅に向上させることができる流体浄化方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明における流体浄化装置並びに流体浄化方法の一例を実施形態に基づいて詳しく説明する。
図1において、本発明の流体浄化装置を利用した流体浄化システムの概念図を示しており、この流体浄化システム1は、水などの液体を被処理流体として処理するものであって、本実施形態においては、温泉や健康施設等において利用され、循環する風呂の湯を被処理流体(被処理水)Wとして処理するようにしたものである。
【0034】
流体浄化システム1において、浴槽2の中には被処理水Wが溜まっており、この被処理水Wをヘアキャッチャー4、流体浄化装置の装置本体10、循環ポンプ5、濾過タンク6、熱交換器7を循環用配管3で結んで循環させるようにしている。
【0035】
ヘアキャッチャー4は、装置本体10の前に設けており、浴槽2の被処理水Wに混ざった髪の毛やゴミなどの比較的大きな混入物を回収するようにしている。装置本体10には、後述する筒状体21、22を装着しており、このうち、上流側の筒状体21の内部において、少なくともこのヘアキャッチャー4を着脱自在に内蔵している。
【0036】
循環ポンプ5は、浴槽2の被処理水Wを汲み上げ、循環用配管3内を循環させるようにしている。濾過タンク6は、循環ポンプ5の下流側に設けられ、ヘアキャッチャー4により回収できない微細な異物等を濾過して除去可能に設けている。熱交換器7は濾過タンク6の下流側に設けられ、被処理水Wの温度を所定温度に昇温させるようにしている。
【0037】
配管3aは、ポンプの一次側となるため一般的に負圧となり、ポンプ二次側の配管3bは正圧となる。この正圧の最も高くなる熱交換器7の手前から分岐させた枝管3cを混合装置(エジェクター)14に配管し、オゾンと被処理流体Wの混合を促進している。
【0038】
装置本体10には、循環用配管3とは別にエア配管11が接続され、このエア配管11には、フィルタ12、エアポンプ13、エジェクター14が設けられている。フィルタ12はエアポンプ13によって吸気した酸素や空気などの気体に混入したゴミなどの異物を除去し、この気体をエアポンプ13によってエア配管11、エジェクター14を介して装置本体10に供給可能に設けている。
【0039】
エジェクター14は、装置本体10の前に取付けられ、セラミックや金属を材料として図示しないリング状に形成している。これにより、エアポンプ13からの気体を枝管3cからの流体と混合することで微細気泡状にして装置本体10側に放出している。
【0040】
図2、3において、装置本体10は、ケース本体20、被処理流体Wの流路である上流、下流側のある筒状体21、22、高圧電源24、オゾン供給流路25を組合わせて形成しており、これに逆止弁26と前述のエジェクター14を組合わせている。
【0041】
ケース本体20の内部には、図3に示すように、内部側に被処理水Wが流れる流体流路29を有する内筒27と、この内筒27から所定の空間Sを空けて外筒28を設けている。内筒27と外筒28の空間Sの間隔としては、例えば、0.5〜2mm程度の間隔とし、内筒27と外筒28を同芯状に設けていることでこの間隔が円周方向において均一になるようにしている。
この場合、図5に示すように、空間の間隔を0.6〜1.5mm程度の範囲に設けるのが最も望ましく、異なる電圧に対しても収率比が高まり、後述するオゾンの発生量を多くすることができる。
【0042】
内筒27と外筒28は、非導電性の材料によって形成し、例えば、紫外線を透過する透明或は半透明のガラス材料によって形成している。このガラス材料としては、石英ガラスやホウ珪酸ガラスなどのより紫外線を通しやすいものとするのが望ましく、特に、ホウ珪酸ガラス、高珪酸ガラスは比較的安価であり、通常の材料をそのまま使用することができるが、紫外線透過率、耐熱性、強度等の点を考慮した場合、石英ガラスが最も好ましい。
【0043】
外筒28の内側には導電性部材を設けて電極30としてこれを高圧帯電用としており、この電極30は、外筒28外部に設けた高圧電源24の図示しないプラス側に接続されている。高圧電源24によって電極30に電圧が加わると、外筒28が帯電し、内筒27側に放電できるようにしている。電極30は、帯状の単純な形状であればよく、本実施形態において断面略C字状に形成し、外筒28の内周面28aに沿って、この内周面28aの円周方向の一部に概ね10〜50mmの幅で設けているが、この電極30は、内周面28aに沿ってほぼ1周(全周)に亘って設けるようにしてもよい。
電極30の材料としては、例えば、ステンレス製とし、これを薄膜状に形成したものを使用しているが、これ以外にも、ニッケルクロムを真空蒸着にて装着することで放電にもオゾンにも強い薄膜を形成することが可能となる。その他の材料としては、アルミや銅、或はチタン等を使用することもできるが、アルミや銅を使用する場合には耐オゾン用として、塗装等による表面処理を行うことが必要になる。ただし、空気や酸素の水分含有率が低ければ問題なく使用できる。
【0044】
内筒27の内部には、網やチタン線、繊維状チタン材料の集合体、その他多孔性チタン材料等からなるチタン又はチタン合金製の大表面積材料31を収納している。この大表面積材料31には、予め表面側に二酸化チタンの光触媒32が形成されていてもよく、或は、後述のように、発生させたオゾンによって使用中に二酸化チタンの光触媒32を形成するものでもよい。
大表面積材料31は、細状に形成することによりオゾンとの反応性が高くなり、確実に光触媒32を形成できる。この大表面積材料31は、チタンやチタン合金以外の材料によって形成するようにしてもよく、例えば、ガラスやステンレス、シリカゲル等の材料を大表面積材料とすることもできる。
【0045】
外筒28の外周側には、紫外光を照射する蛍光灯等の紫外線光源34を配設している。この紫外線光源34は、二酸化チタンの光触媒32が正孔および電子を効率良く生じさせる紫外光(例えば、波長が410nm以下)を多く含むことが望ましく、紫外線ランプや低圧または高圧水銀ランプ、または300〜400nmの波長をもつ蛍光ランプなどであってもよい。さらには、紫外光を照射するLEDを複数個並べたものであってもよい。LEDランプを使用すると、寿命を延ばすことができ、小型化も可能となる。更に、発熱量も抑えられるため、より効率のよい流体の浄化が可能となる。
【0046】
また、紫外線光源34は、直線(ストレート)形、円筒(サークル)形、螺旋形、波形などの各種の形状に形成することによって、光触媒32をより効果的に機能させることもでき、更に、本実施形態の紫外線光源34は、無電極によって放電できる無電極放電管としており、これにより、オゾン生成時における放電時にこの無電極放電管34を電極30に近接させておくことで無電極により発光可能に設けている。無電極放電管34を明るく点灯させるためには、高電圧で高周波の電極30を用いるようにするのがよい。更に、紫外線光源34は、無電極放電管以外にも、通常の電極を設けて発光させるタイプのものを用いるようにしてもよい。
【0047】
外筒28のさらに外周側には、断熱性を有する保護筒35を設けており、これにより、外筒28とこの保護筒35との間に断熱空間Sを形成し、前記の紫外線光源34は、この断熱空間Sに収納されている。紫外線光源34や、電極30による放電光をより効果的に照射するためには、この保護筒35の内面側に図示しないアルミなどを蒸着等の手段で貼り付けるようにしてもよく、この場合、紫外光などを反射できることにより高効率で照射することが可能となる。
【0048】
内筒27、外筒28、保護筒35は、取付筒36、37によって一体化され、内筒27、外筒28と、取付筒36、37との間には、例えば、EPDM(エチレンとプロピレン及び架橋用ジェンモノマーとの三元共重合体)製によるOリング38、39が装着され、これにより外部へのオゾン及び被処理水Wの漏れを無くし、また、メンテナンス等における分解時に、容易に取付筒36、37を取り外すことができるようにしている。
【0049】
取付筒36、37を組合わせた後には、取付筒36、37内部に形成したエア流路36b、37bと空間Sとが連通し、取付筒37に設けた導入口37aより空気又は酸素等の気体を導入させると、この気体はエア流路36bを通って空間Sを通過した後に、取付筒36内のエア流路36bを通って吐出口36aより吐出可能に設けている。吐出口36aと接続したオゾン供給流路25の途中には逆止弁26が設けられているため、吐出口36aより吐出されたオゾンは、逆止弁26を経てエジェクター14の内部の図示しない隘路によって枝管3cからの流体の流速が早められ、混合された状態で筒状体21から供給される。
オゾン供給口21bは、流体流路29に連通し、この流体流路29を流れる被処理水Wにオゾンを混合可能に設けている。
【0050】
取付筒36、37には、流入口21a、流出口22aを有する筒状体21、22が接続され、これにより、流入口21aより流入した被処理水Wは、流体流路29を通過してオゾンが混合された後に、流出口22aから流出される。
【0051】
続いて、本発明における流体浄化装置の上記実施形態の動作を説明する。被処理水Wは、循環ポンプ5により加圧されて濾過タンク6内に圧送され、異物等が除去された後に熱交換器7を介して一定の温度に温められて浴槽2内に戻される。また、循環ポンプ5の上流側では、この循環用ポンプ5により吸引された浴槽2からの被処理水Wがヘアキャッチャー4により髪の毛等が除去された後に装置本体10の内部に流入する。
【0052】
一方、エア配管11より装置本体10の導入口37aより気体が導入されると、この気体はエア流路37bを通って空間Sに導入される。
このとき、高圧電源24によって外筒28に設けた電極30をプラスに帯電させると、内筒27の流体流路29を流れる被処理水Wがアース電極となってマイナスに帯電し、電極30からアース電極(被処理水W)に向って放電が行われる。この放電は、電極30が帯状であることと被処理水Wが液体であることにより無声放電となり、この放電区間を気体が通過することによりオゾンが生成される。
【0053】
生成されたオゾンは、エア流路36bを通って吐出口36aより吐出され、被処理水Wの上流側の逆止弁26とエジェクター14を経てオゾン供給口21bより微細気泡の状態で供給され、流体流路29の上流側より被処理水Wに混合される。これによりオゾンによる被処理水Wの浄化処理が行われる。
【0054】
オゾンの混合した被処理水Wは、大表面積材料31の隙間を通過するが、電極30の放電時には紫外光が発生しており、この紫外光を大表面積材料31の光触媒32に照射することで光触媒32による殺菌・浄化機能が後述のように働き、これにより被処理水Wの処理も同時に行なっている。
このとき、内筒27と外筒28を透明或は半透明のガラス材料によって形成しているので、紫外線光源34からの紫外光を高い効率で光触媒32に照射することができ、光触媒32の機能を向上させている。
大表面積材料31は、表面の光触媒32が剥離した場合でも、露出したチタン原子に対して被処理水W中のオゾンが酸化反応して、大表面積材料31の表面に二酸化チタンによる光触媒32を常時発生させることができる。
【0055】
このときの光触媒32を用いた殺菌・浄化作用の原理を説明する。半導体物質である二酸化チタン等の光触媒32に波長が400nm以下の紫外光が照射されると、価電子帯に正孔が発生するとともに伝導帯に電子が生じる。この正孔の酸化電位は、フッ素、オゾン、過酸化水素等の酸化電位よりも低く、有機物は光触媒32により完全に酸化分解されて最終的には二酸化炭素ガスと水、硫酸、硝酸などに完全酸化される。光触媒32による酸化反応のメカニズムは、光触媒32に紫外光が照射された際に生じる正孔またはこの正孔と水が反応して生じる極めて反応活性に富むヒドロオキシルラジカル(OHラジカル)により、酸化反応が起こると考えられている。このとき、紫外光が照射された際に生じる正孔と同時に発生する電子と酸素ガス等との還元反応が、平行して進行する。光触媒32の作用は、このような強力な酸化反応により、従来のオゾンや過酸化水素、塩素等の殺菌剤よりも強い殺菌能力を有し、有機物の分解能力も備えている。また、光照射により生じた正孔やOHラジカルの寿命はミリ秒以下と短いので、オゾンや過酸化水素等の酸化剤のように処理後に残留することがなく、残留酸化剤を処理する装置が不要であるという利点がある。このようなことから、光触媒32を用いて効果的に被処理水Wを浄化することができる。
オゾンは殺菌力が強く、浄化力が非常に高い。また、有機物の分解もできるため、循環水の浄化、上下水道の浄化、殺菌等に大きな効果がある。しかし、ある種の酸化物や有機物でオゾンに反応しない物質もあり、温泉等の循環水では泉質により処理できないものもある。この場合、オゾンと光触媒32を複合することでほとんどの泉質に対応することができる。
【0056】
図6に示すように、装置本体10の上流側にコンプレッサ(圧縮機)等の機器15を設けるようにしてもよく、具体的には、コンプレッサ15に続けてフィルタ12と、これに加えて流体制御機16をエア配管11に設けた流体浄化システム40としてもよい。
この流体浄化システム40は、コンプレッサ15によって0.2〜1MPa程度に空気を加圧したのちに流量制御機16に送り、この流体制御機16によって1〜20l/minに流量調節して内筒27と外筒28の空間Sにこの空気を流すようにし、これにより、通常のエアポンプやエジェクターによる吸い込みのみを行う場合に比較して1.3〜1.5倍程度のオゾンの発生量が得られる。
【0057】
また、図7に示すように、コンプレッサ等の機器15に続けてフィルタ12、エアドライヤ17、流体制御機16をエア配管11に設けた流体浄化システム41としてもよい。 この流体浄化システム41は、コンプレッサ15によって0.2〜1MPa程度に空気を加圧したのちに、エアドライヤ17を経由した後に流量制御機16に送って、この流体制御機16によって1〜20l/minに流量調節して空間Sにこの空気を流すようにしている。このように、オゾンを生成する際の空気は乾燥空気が望ましく、オゾンの生成にコンプレッサにより圧縮した空気を使用し、更に、乾燥空気とすることでオゾンの発生量が飛躍的に上昇する。
【0058】
図4のグラフにおいては、エア流量5l/minのときの電圧とオゾン発生量の関係を示している。このグラフより、エアポンプ13のみの場合のオゾン発生量と、図7のコンプレッサ15とエアドライヤ17を組合わせた場合のオゾンの発生量には約2.4倍の開きがある。また、図6のコンプレッサ15を使用した場合でも、エアポンプ使用時と比較すると、1.4倍の効果が認められる(80Vにおいて)。
図4のグラフの条件としては、使用するコンプレッサ15の圧力を0.5MPaにしたときの効果であるが、この圧力を高くすることによって発生量をより増加させることができる。
【0059】
また、エアドライヤ17の代わりに、図示しないシリカゲル等の乾燥剤や或は冷凍式ドライヤを用いて空気を乾燥させるようにしてもよく、この場合においてもエアドライヤ17を使用した場合と同等の効果が得られる。
更には、図示しない酸素ボンベや酸素発生器(一般的には、PSA装置)を用いてオゾンの発生を増やすこともできる。
【0060】
放電時には上述のように紫外光が発生することにより、この紫外光を被処理水Wに直接照射することによって殺菌することもでき、しかも、上述のように内筒27と外筒28をガラス材料によって形成しているため、紫外光の透過率が高くなり、被処理水Wへの紫外光の照射量を増やして殺菌力を高めることができる。また、この放電光により光触媒を活性化することも可能である。
その上、外筒28の外部には紫外線光源34を別途設けているため、この紫外線光源34からの強い紫外光によって被処理水Wを殺菌・浄化することもでき、その浄化効果を一層高めている。
【0061】
以上のように、流体浄化システム1は、酸素を効果的にオゾンに変化させて高濃度のオゾンを生成することができ、このオゾンを被処理水Wに混合して浄化する液体浄化機能を備えている。更に、光触媒32、紫外線によって被処理水Wの殺菌や有機物の分解処理及び浄化を行うことで効率的に浄化処理を行うことができる。
【0062】
この流体浄化システムを備え付ける風呂としては、例えば、空気を原料とした場合、3g/hまでのオゾン発生量が得られるので、20〜60t程度の浴槽まで対応できる。このとき、浴槽内に発生しようとするレジオラ菌などによる汚染を確実に防止できる。
更に、酸素を原料とした場合、15g/h程度のオゾン発生量が得られ、300t程度の浴槽まで対応できる。
【0063】
この流体浄化方法において、被処理水Wは浴槽2の湯以外の各種の流体を対象とすることができ、例えば、生活排水や工業用水などの液体も処理できる。また、液体以外にも酸素や空気、或はその他の気体を被処理流体Wとして浄化処理することもできる。
この場合、外筒の内側の一部又は全周に導電性部材を取付けて一方の電極とし、内筒の内側に外筒の電極と同等又はそれ以上の幅の導電性部材を取付けて他方の電極として、この電極間に電圧を加えて内筒と外筒の空間に放電してオゾンを発生させ、このオゾンを内筒内部を流れる気体に混合することで気体浄化機能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】流体浄化システムを示した概念図である。
【図2】本発明の流体浄化装置の一例を示した正面図である。
【図3】図2の要部拡大断面図である。
【図4】放電時における電圧とオゾンの発生量の関係を示したグラフである。
【図5】外筒と内筒の隙間幅の違いによるオゾンの発生効率を示したグラフである。
【図6】流体浄化システムの他例を示した概念図である。
【図7】流体浄化システムの更に他例を示した概念図である。
【符号の説明】
【0065】
10 装置本体
15 コンプレッサ(機器)
16 流体制御機
17 エアドライヤ
27 内筒
28 外筒
30 電極
32 光触媒
34 紫外線光源
S 空間
W 被処理流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性の材料からなる内筒とこの内筒から所定の空間を空けて非導電性の材料からなる外筒を同芯上に設け、前記外筒の内側の一部又は全周に導電性部材を取付けて電極を設けて装置本体を形成し、この装置本体の電極に電圧を加えたときに前記内筒の内部を流れる水などの液体からなる被処理流体をアース電極として前記空間に放電してこの空間を流れる酸素又は空気などの気体と反応させてオゾンを発生させ、このオゾンを前記被処理流体に混合して浄化する液体浄化機能を備えたことを特徴とする流体浄化装置。
【請求項2】
非導電性の材料からなる内筒とこの内筒から所定の空間を空けて非導電性の材料からなる外筒を同芯上に設け、前記外筒の内側の一部又は全周に導電性部材を取付けて一方の電極とすると共に、前記内筒の内側に前記外筒の電極と同等又はそれ以上の幅の導電性部材を取付けて他方の電極を設けて装置本体を形成し、この装置本体の電極間に電圧を加えたときに前記空間に放電してこの空間を流れる酸素又は空気などの気体と反応させてオゾンを発生させ、このオゾンを前記内筒の内部を流れる気体からなる被処理流体に混合して浄化する気体浄化機能を備えたことを特徴とする流体浄化装置。
【請求項3】
前記内筒内に光触媒を形成するようにした請求項1又は2記載の流体浄化装置。
【請求項4】
前記外筒と内筒を透明或は半透明の材料によって形成し、前記外筒の外周側に紫外光を照射する紫外線光源を設けた請求項3記載の流体浄化装置。
【請求項5】
前記紫外線光源を無電極放電管とした請求項4記載の流体浄化装置。
【請求項6】
前記外筒と内筒の空間を流れる気体を圧縮機等の機器で0.2〜1MPaに加圧した後に、流体制御機で1〜20l/minに流量調節した請求項1乃至5の何れか1項に記載の流体浄化装置。
【請求項7】
前記外筒と内筒の空間を流れる気体を圧縮機等の機器で0.2〜1MPaに加圧した後にエアドライヤを経由させ、流体制御機で1〜20l/minに流量調節した請求項1乃至5の何れか1項に記載の流体浄化装置。
【請求項8】
前記装置本体の上流側に筒状体を装着し、この筒状体の内部に少なくともヘアキャッチャーを着脱自在に内蔵した請求項1乃至7の何れか1項に記載の流体浄化装置。
【請求項9】
非導電性の材料からなる内筒とこの内筒から所定の空間を空けて非導電性の材料からなる外筒を同芯上に設け、前記外筒の内側の一部又は全周に導電性部材を取付けて電極とし、この電極に電圧を加えたときに前記内筒の内部を流れる水などの液体からなる被処理流体をアース電極として前記空間に放電してこの空間を流れる酸素又は空気などの気体と反応させてオゾンを発生させ、このオゾンを前記被処理流体に混合して浄化させたことを特徴とする流体浄化方法。
【請求項10】
非導電性の材料からなる内筒とこの内筒から所定の空間を空けて非導電性の材料からなる外筒を同芯上に設け、前記外筒の内側の一部又は全周に導電性部材を取付けて一方の電極とすると共に、前記内筒の内側に前記外筒の電極と同等又はそれ以上の幅の導電性部材を取付けて他方の電極とし、この電極間に電圧を加えたときに前記空間に放電してこの空間を流れる酸素又は空気などの気体と反応させてオゾンを発生させ、このオゾンを前記内筒の内部を流れる気体からなる被処理流体に混合して浄化させたことを特徴とする流体浄化方法。
【請求項11】
前記内筒内に光触媒を形成し、この光触媒を前記空間内で放電したときに生じる紫外光で機能させるようにした請求項9又は10記載の流体浄化方法。
【請求項12】
請求項11の流体浄化方法において、前記外筒の外周側に紫外線光源を設け、この紫外線光源の紫外光で光触媒を機能させるようにした流体浄化方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−167807(P2007−167807A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372235(P2005−372235)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(304017476)東洋バルヴ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】