流体用作動弁
【課題】 作動ロッドの進退作動における潤滑条件の改善によって従来に比してより高い耐久性を有する流体用作動弁を提供する。
【解決手段】 駆動手段5により作動ロッド4を進退作動させて弁体3を弁座22に向けて進退させ、弁体と弁座との間の隙間量である弁開度を変更して流量変更を行う。作動ロッドに潤滑剤封入孔71を形成し、Oリング61,62と保持筒28との間の摺動部に対し連通孔72を開口させて補給口とする。潤滑剤封入孔の基端を流体に臨んで開口させて流体圧導入口711とし、内部に封入した潤滑剤に対し流体圧を背圧として作用させ、この背圧により、摺動部での潤滑剤の減少に伴い潤滑剤封入孔から潤滑剤を自動補給させる。
【解決手段】 駆動手段5により作動ロッド4を進退作動させて弁体3を弁座22に向けて進退させ、弁体と弁座との間の隙間量である弁開度を変更して流量変更を行う。作動ロッドに潤滑剤封入孔71を形成し、Oリング61,62と保持筒28との間の摺動部に対し連通孔72を開口させて補給口とする。潤滑剤封入孔の基端を流体に臨んで開口させて流体圧導入口711とし、内部に封入した潤滑剤に対し流体圧を背圧として作用させ、この背圧により、摺動部での潤滑剤の減少に伴い潤滑剤封入孔から潤滑剤を自動補給させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体を弁座に対し作動させて流体の流れを制御するために弁ハウジングの内部を摺動により進退作動する作動ロッドを備えた流体用作動弁に関し、特に作動ロッドと弁ハウジングとの間の摺動部に対し潤滑剤を自動補給するための技術に係る。上記の流体用作動弁としては、流体の流れを停止・流通のいずれかに切換制御する開閉弁、流体の流れの方向切換・分流・混合を行う方向制御弁、又は、流体の流量を変更して流れを制御する流量制御弁(流量調整弁)、あるいは、これら開閉弁,方向制御弁,流量制御弁の内の2以上もしくは全ての機能を備えた流体作動弁などが該当する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体用作動弁として、ガイドカラー内にブッシュロッドが摺動により軸方向に往復動するように案内された流体制御用の電磁弁において、ブッシュロッドに対しこのブッシュロッドを軸方向に貫通するようにオイル流出穴を形成する一方、上記ガイドカラー及びブッシュロッドの一方に溝を設けてオイル溜まりとし、このオイル溜まりと上記オイル流出穴とを連通するように貫通穴を形成したものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、他の流体用作動弁として、コアの中空部内にブッシュが内装され、このブッシュ内にシャフトが摺動により上下動するように案内された電磁式圧力調整弁において、上記中空部の内面に上下に貫通する縦溝を形成して潤滑剤の給排出路とし、この給排出路の一部が上記ブッシュとシャフトとの摺動面間に露出するようにしたものも知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
さらに、流体用作動弁として、過圧逃がし機構を有する流量調整弁が本出願人によって提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】実開平5−67882号公報
【特許文献2】特開平9−53742号公報
【特許文献3】特開2003−130235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、弁体を弁座に対し近接離反させるためにその弁体を作動ロッドにより進退作動させる場合であって、かつ、上記の弁体の弁座に対する進退作動により流体、例えば水の流れを制御する場合には、通常は、Oリングを用いて、その作動ロッドの摺動案内と、作動ロッドと弁ハウジングとの間の止水シールとを兼ねるようにしている。すなわち、図10に例示するように、上記作動ロッド400の外周面に少なくとも一対のOリング600,600を外嵌させ、これらのOリング600,600を弁ハウジング200側の内周面201に対し密に内嵌させることにより、Oリング600,600の外周囲と弁ハウジング200側の内周面201とを密に接触させて水密状態で摺動可能にされている。この場合には、上記のOリング付きの作動ロッド400を弁ハウジング200側に内嵌させる際に、そのOリング600,600や近傍の作動ロッド400の外表面に対し潤滑剤として所定量のグリースが塗布され、この状態で弁ハウジング200側の内周面201に押し込まれることになる。
【0007】
この場合には、図11に示すように、作動ロッド400が弁ハウジング200側の内周面201に対し進退方向(同図の上下方向)に往復作動されると、Oリング600,600と上記内周面201との間でグリースGによる潤滑によって摺動が滑らかに行われるものの、上記内周面201に残留するグリースGにより一対のOリング600,600間に溜められたグリース量が僅かずつ減少することになる。そして、最終的には上記のグリースGが枯渇して寿命を迎えることになる。
【0008】
現状では上記の組付けの際に塗布される所定量のグリースにより必要十分な耐久性は確保されているものの、このような流体用作動弁を搭載する各種装置の複雑化や高耐久性化等の進歩に伴い、流体用作動弁においても、将来、さらにより高い耐久性や長い寿命を有するものの開発が必要になると考えられる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作動ロッドの進退作動における潤滑条件の改善によって従来に比してより高い耐久性を有する流体用作動弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、弁体を弁座に対し作動させて流体の流れを制御するために弁ハウジングの内部を進退作動する作動ロッドと、この作動ロッドと弁ハウジングとの間に配設され上記作動ロッドを摺動により進退方向へ作動案内する摺動部とを備えた流体用作動弁を対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記作動ロッドに対し、その内部に潤滑剤が封入される潤滑剤封入空間と、この潤滑剤封入空間内から潤滑剤を上記摺動部に対し自動補給するよう上記潤滑剤封入空間に連通して上記摺動部に臨んで開口された補給口とを形成することとした(請求項1)。
【0011】
かかる本発明の場合、潤滑剤封入空間内に潤滑剤が封入された状態では、摺動部での潤滑剤が減り気味になると、その減った分に相当する潤滑剤が上記潤滑剤封入空間内から補給口を通して自動的に補給もしくは補充されることになる。すなわち、摺動部は、通常、極めて狭い隙間等に潤滑剤が充満され、この充満された潤滑剤と潤滑剤封入空間内の潤滑剤とが上記補給口を通して連続した状態になっているため、上記摺動部における潤滑剤が減ると、その潤滑剤の容積減少分だけの引き込み力(吸い込み力)によって潤滑剤封入空間側からの潤滑剤が補給口を通して摺動部に対し補給されることになる。これにより、作動ロッドの摺動部に対する潤滑を極めて長期に亘り維持・保証することが可能になり、流体用作動弁の耐久性や寿命を飛躍的に向上させることが可能になる。
【0012】
本発明の流体用作動弁における作動ロッドにおいて、上記潤滑剤封入空間に対し制御対象の流体の圧力を直接又は間接に作用させる流体圧作用部をさらに形成することもできる(請求項2)。このような流体圧作用部の形成により、潤滑剤封入空間内に封入された潤滑剤に対し上記の流体圧を背圧として作用させることが可能となり、上記の摺動部に対する潤滑剤の自動補給をより確実に実現させ得ることになる。すなわち、摺動部での潤滑剤の減少に伴う上記の引き込み力が弱くてもあるいはそのような引き込み力が無くても、潤滑剤封入空間内の潤滑剤に対し流体圧が背圧として作用しているため、その背圧に基づいて摺動部側の潤滑剤が減少すればその減少分の潤滑剤が補給口から摺動部内に押し込まれ確実に補給されることになる。もちろん、通常は、このような流体圧による押し込み力に加えて上記の引き込み力が作用するため、摺動部への潤滑剤の自動補給をより一層確実に実現させて潤滑状態を維持させることが可能になる。
【0013】
このような流体圧作用部としては、潤滑剤封入空間内の潤滑剤が摺動部側の潤滑剤と連続し、その摺動部側は閉塞状態になっているため、制御対象である流体に臨む位置に開口して上記潤滑剤封入空間に流体圧を作用させる流体圧導入口を作動ロッドに形成するだけにして、潤滑剤封入空間内の潤滑剤が上記流体圧導入口の両者の境界において流体に直接に接触して流体側から流体圧を直接に受けるようにしてもよいが、次のようにして流体圧を間接に受けるようにしてもよい。例えば、上記流体圧作用部として、上記流体に臨む位置に開口して上記潤滑剤封入空間に流体圧を作用させる流体圧導入口と、この流体圧導入口に対し流体と潤滑剤との間の境界を構成するように内挿された閉止栓とを備えたもので構成することができる(請求項3)。このようにすることにより、上記閉止栓によって、潤滑剤封入空間内の潤滑剤と、流体との境界を仕切って区画することが可能になる。その上に、上記閉止栓は流体圧導入口に内挿されているため、潤滑剤封入空間内の潤滑剤が摺動部側に補給されるに従って潤滑剤と共に流体圧導入口から内方に向けて順次移動して潤滑剤に追随することになって、閉止栓を介して内部の潤滑剤に対し常に流体圧を作用させ続けることが可能になる。
【0014】
そして、このように閉止栓を備える場合には、上記流体圧作用部として、上記流体圧導入口から流体側への上記閉止栓の脱落を防止する脱落防止部をさらに備えるようにすることもできる(請求項4)。通常の使用状態では上記閉止栓の脱落するおそれはないが、作動ロッドを弁ハウジングに対し組み付ける前などの製造段階では、潤滑剤封入空間内への潤滑剤の封入後に閉止栓を内挿したとしても、その保持が不安定になるおそれもある。これに対し、上記の脱落防止手段を備えることにより、流体用作動弁として使用されるまで閉止栓を流体圧導入口内に確実に保持させて、その機能を発揮させることが可能になる。
【0015】
以上の流体用作動弁においては、上記補給口として、上記潤滑剤封入空間と摺動部との間を連通させる連通孔により構成することとし、この連通孔として、上記摺動部に臨む部位の孔断面積を他の部位よりも拡大させるように形成することができる(請求項5)。このようにすることにより、連通孔の形成により潤滑剤封入空間と摺動部との連通を容易に実現させ得る上に、補給口における摺動部側との接触面積の増大により摺動部に対する潤滑剤の補給もより確実に行い得ることになる。
【0016】
又、以上の流体用作動弁において、上記摺動部を、上記作動ロッドの外周面に対し進退方向に互いに離して外嵌された少なくとも一対のOリングと、この一対のOリングが接触する上記弁ハウジング側の内周面との間の摺動面により構成し、上記補給口として、上記一対のOリング間に挟まれた作動ロッドの外周面から上記摺動面に臨んで開口するように形成することができる(請求項6)。このようにすることにより、摺動部側の潤滑剤と潤滑剤封入空間内の潤滑剤とが連続して、潤滑剤封入空間側から摺動部側への潤滑剤の自動補給が確実に行い得る構成を特定することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように、請求項1〜請求項6のいずれかの流体用作動弁によれば、潤滑剤封入空間内に潤滑剤を封入しておくと、摺動部での潤滑剤が減れば、その減少に伴う引き込み力によって減った分に相当する潤滑剤を上記潤滑剤封入空間内から補給口を通して自動的に補給もしくは補充させることができ、作動ロッドの摺動部に対する潤滑を極めて長期に亘り維持・保証させることができる。これにより、流体用作動弁の耐久性や寿命を飛躍的に向上させることができるようになる。
【0018】
請求項2によれば、流体圧作用部によって、潤滑剤封入空間内に封入された潤滑剤に対し流体圧を背圧として作用させることができるようになり、かかる背圧として作用する流体圧によって、摺動部側の潤滑剤が減少すれば潤滑剤封入空間側の潤滑剤を摺動部側に押し込むことができるようになる。これにより、上記の摺動部に対する潤滑剤の自動補給を、上記の引き込み力と共に、あるいは、上記の引き込み力が弱いもしくは生じなくても、確実に実現させて潤滑状態を維持させることができるようになる。
【0019】
請求項3によれば、流体圧作用部を流体圧導入口と、潤滑剤の封入後に流体圧導入口から内挿される閉止栓とで構成しているため、その閉止栓によって、潤滑剤封入空間内の潤滑剤と流体との境界を仕切って区画することができる上に、潤滑剤封入空間内の潤滑剤が摺動部側に補給されるに従って潤滑剤に追随して潤滑剤封入空間内の潤滑剤に対し常に流体圧を作用させ続けることができる。
【0020】
請求項4によれば、脱落防止手段を備えているため、流体用作動弁として使用されるまで閉止栓を流体圧導入口内に確実に保持させて、その機能を発揮させることができるようになる。
【0021】
請求項5によれば、連通孔の形成により潤滑剤封入空間と摺動部との連通を容易に実現させることができる上に、補給口における摺動部側との接触面積を増大させて摺動部に対する潤滑剤の補給をより確実に行うことができるようになる。
【0022】
請求項6によれば、摺動部の構成、及び、摺動部と補給口との関係を具体的に特定することができ、これにより、以上の本発明の効果をより確実に得ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る流体用作動弁として、流体(例えば湯又は水)の流量を変更制御する流量調整弁1を示す。なお、本実施形態及び以降の実施形態における位置関係についての説明では、図1に対し上又は下と表示するが、流量調整弁1の配置を後述の作動ロッド4が上下方向に向いた縦向きに限定するものではなく、横向きに配置して用いることもできる。
【0025】
上記流量調整弁1は、内部に弁口21、弁座22及び弁室23が形成された弁ハウジング2と、この弁ハウジング2の弁室23内において上記弁座22に対し開閉方向(図1の上下方向)に進退作動されるように収容された弁体3と、この弁体3に対し作動ロッド4を介して進退作動のための駆動力を伝達するモータ又はアクチュエータ等からなる駆動手段5とを基本構成要素として備えている。又、上記弁ハウジング2には、図示省略の流入側配管等に連通接続される流入口24と、同様に図示省略の流出側配管等に連通接続される流出口25とが形成されている一方、上記作動ロッド4を進退方向に作動案内可能に保持する保持筒28が内部に組み込み固定されている。そして、弁体3の進退作動により弁体3の先端止水部31と弁座22との間の隙間量(弁開度)が増減変更され、これにより、上記流入口24から流出口25への流体の通過流量が変更調整されるようになっている。なお、駆動手段5としては、弁体3を一方向(同図の上下方向)に対し直線運動させるように駆動力伝達が可能であれば、回転駆動するものでも、直線的に伸縮駆動するものでも、いずれでもよい。
【0026】
駆動手段5の駆動制御と、弁開度の変更制御との関係について詳細に説明する。上記作動ロッド4の基端側(図1の上端側)にはセレーション軸部41と外周ネジ部42とが形成され、セレーション軸部41は例えばステッピングモータ等により構成された駆動手段5としての駆動モータ5aと接続される一方、上記外周ネジ部42は上記保持筒28内の内周ネジ部281にねじ込まれており、これにより、上記作動ロッド4は弁座22に対し開閉方向に進退作動(直線往復動)されるようになっている。すなわち、作動ロッド4は上記セレーション軸部41を介して上記駆動モータから回転駆動力の伝達を受けて軸X回りに回転駆動され、この回転駆動により上記内周ネジ部281を回転しながら開閉方向に進退作動するようになっている。そして、上記の駆動モータ5aの駆動制御(例えばステッピングモータのステップ数制御)によって作動ロッド4(弁体3)の進退位置を調整し、この進退位置の調整によって弁座22と弁体3の先端部との間の隙間量(弁開度)を増減変更調整して、流入口24から流出口25への通過流量を変更調整し得るようになっている。
【0027】
例えば、上記駆動モータ5aの回転駆動により作動ロッド4を弁閉側(図1の下側)に作動させて行くと、上記の隙間量は徐々に低減していき、最終的には図2に示すように弁体3の先端止水部31が弁座22に接触して着座することになる。この状態では流入口24と流出口25との間の流体の流れが完全に遮断されて閉止状態になる。この閉止状態から駆動モータ5aを逆方向に回転駆動させると、上記とは逆に作動ロッド4は弁開側(図2の上側)に作動され、図1に示すような開弁状態で通過流量の変更調整が可能な状態になる。このような作動ロッド4の進退作動は、その作動ロッド4の外周面に外嵌した一対のOリング61,62の外周面が保持筒28の内周面に対し進退方向に接触しつつ摺動することにより案内されるようになっている。
【0028】
以上のような流量調整弁1において、後述の隙間63を含み上記一対のOリング61,62により構成される摺動部6(図3参照)に対し潤滑剤(例えばグリース)を自動補給するための手段が付設されている。すなわち、作動ロッド4の内部には先端面(下端面)43から下方に臨んで開口する潤滑剤封入孔71が潤滑剤封入空間として形成されており、先端面43の開口が流体圧導入口711とされる一方、潤滑剤封入孔71の基端(上端)712(図3参照)に連通し基端712から放射方向に延びて外周面に開口する1又は2以上の連通孔72,72,…が形成されている。各連通孔72の上記開口は、図3に示すように一対のOリング61,62間において作動ロッド4の外周面と保持筒28の内周面との間に形成される隙間63に臨むように位置付けられて、補給口721とされている。
【0029】
上記各Oリング61,62はそれぞれ作動ロッド4の外周面に形成された周溝611,621に外嵌されて外周囲に若干量突出した状態にされ、これら一対のOリング61,62が保持筒28の内周面281に密に接触した状態で内挿された状態ではその内周面281と作動ロッド4の外周面との間に僅かな隙間63が形成されることになる。上記作動ロッド4が保持筒28内に組み付けられる製造段階において、上記Oリング61,62や作動ロッド4の外周面あるいは保持筒28の内周面281に対し潤滑剤(例えばグリース)が塗布された状態で作動ロッド4の保持筒28内への組み付けが行われるため、上記隙間63には潤滑剤が充満した状態にされている。そして、この隙間63(図4参照)に臨んで上記補給口721,721,…が開口するように設定されている。
【0030】
又、潤滑剤封入孔71の先端側は、図5(a)に示すように潤滑剤封入孔71や各連通孔72に潤滑剤が充満するように注入された後に閉止栓73がその潤滑剤封入孔71に内挿されており、封入された潤滑剤Gと、外部の流体Wとの間の境界を仕切る役割を上記閉止栓73が果たすようになっている。つまり、上記閉止栓73は潤滑剤Gと流体Wとに挟まれて、潤滑剤Gに追随して潤滑剤封入孔71内を移動可能とされている。上記閉止栓73としては具体的には潤滑剤封入孔71の内径に対応する直径を有する球形状に形成され、全方位への回転を自在としつつも、潤滑剤Gと流体Wとの仕切の役割を果たすようになっている。さらに、流体圧導入口711には上記閉止栓73の脱落防止手段が設けられている。図5(a)にはかしめ手段により脱落防止手段を構成したものが図示されている。すなわち、潤滑剤封入孔71に孔縁から僅かに突出する縁部74aを形成し(同図の一点鎖線参照)、この縁部をかしめと同様に孔内部側に屈曲させて、閉止栓73の脱落防止用のストッパ74を脱落防止手段として形成したものである。
【0031】
なお、脱落防止手段としては、このストッパ74の他に、例えば外周面にねじ切りされて内部に貫通孔を形成した孔明きネジや、内周側に張り出し縁を有するナット状部材等のねじ込み、あるいは、上記のストッパ74と同様部分の溶着等の手段により形成してもよい。さらに、かかる脱落防止手段を全く設けることなく、例えば図5(b)に示すように潤滑剤封入孔71内に注入・封入した潤滑剤Gの境界端面gと流体Wとを直接に接触させるようにしてもよい。潤滑剤Gとしてグリース等の粘性のあるものであれば、流体Wと混ざることなく潤滑剤Gと流体Wとが互いに仕切られた状態に維持される。従って、閉止栓73を伴うことなく、流体圧導入口711のみによっても流体圧を背圧として作用させる流体圧作用部が構成されることになる。
【0032】
そして、上記潤滑剤封入孔71及び各連通孔72内に潤滑剤が充満し各補給口721において上記の隙間63に充満されることになる塗布済み潤滑剤と連続するように、例えば流体圧導入口711の側から潤滑剤が注入され、この状態で保持筒28内に内挿されて、図3に示す状態になる。そして、後述の如き流体通路に介装されて、流体導入口711の側から流体圧が閉止栓73を介して潤滑剤Gに対し背圧として作用することになる。
【0033】
なお、本実施形態の流量調整弁1は過圧逃がし機構を備えたものであり、これについて説明を次に追記する。すなわち、流量調整弁としての流量変更制御機能は、作動ロッド4と、弁体3とが一体に結合されたものでも実現し得るものであるが、上記の過圧逃がし機構のために作動ロッド4と弁体3とが別体とされている。開閉方向(進退方向:図1の上下方向)に進退作動される作動ロッド4の先端側位置(下端側位置)において弁体3が外挿され、この弁体3は上記開閉方向に対し上下両側のストッパ81,82間を相対移動可能に保持される一方、この弁体3が付勢バネとしての圧縮コイルスプリング83からの付勢力を受けている。上記圧縮コイルスプリング83は、その一端(上端)831側がバネ受け部材84に支持され、他端(下端)832側がバネ受け部材85に支持されている。バネ受け部材84は上側のストッパ82に係止され、バネ受け部材85は弁体3の上端縁に係止されている。これら双方のバネ受け部材84,85間に上記圧縮コイルスプリング83の圧縮復元力が付勢力として作用するようにされ、これにより、弁体3を作動ロッド4に対し最も閉弁側に押し付けた状態に位置付けるようになっている。
【0034】
この状態で、上記作動ロッド4の進退作動位置の調整により弁体3と弁座22との間の隙間量が変更されて通過流量の変更調整が行われる一方、作動ロッド4の前進作動により弁体3の先端止水部31が弁座22と当接して閉弁されるようになっている。この閉弁状態においては、上記弁座22との接地位置よりも外周側の弁体3の先端面部分が弁体3の基端面(図1の上端面)の受圧面積よりも大きくなるようにされている。このため、流入口24側(上流側)から過圧力を受けると、その過圧力が弁体3の上記先端面部分に作用し、基端面よりも受圧面積が大きい分だけの差圧が圧縮コイルスプリング83のバネ荷重よりも大きくなると、上記圧縮コイルスプリング83が縮んで弁体3が押し上げられ、これにより、上記過圧力を流出口25側に逃がすようになっている。以上が過圧逃がし機構の原理である。上記の如き過圧が作用しない通常の場合には、作動ロッド4の進退作動によって、弁体3及び圧縮コイルスプリング83はその作動ロッド4と共に一体に進退することになる。
【0035】
以上の流量調整弁1は、流体として例えば湯又は水が流れる通路に介装されて通過する湯又は水の通過流量を目標流量に制御するために用いられる。例えば図6に示すように給湯装置9において用いられる。この給湯装置9は、入水路91から入水された水道水等の水を熱交換器92に導き、熱交換器92を通過する間に燃焼バーナ93からの燃焼熱により熱交換加熱し、加熱された湯を出湯路94から給湯先に給湯するようになっている。そして、上記の入水路91に流量調整弁1を介装し、熱交換器92及びバイパス路95の側に流す水の流量を制御するために用いられる。同図中の符号96は流量センサであり、この流量センサ96により検出される流量検出値の出力を受けた図示省略のコントローラによって流量調整弁1の駆動手段が駆動制御されて通過流量が所定の目標流量になるように制御される。
【0036】
かかる給湯装置9における流量調整弁1の主な役割は次の通りである。すなわち、燃焼バーナ93の燃焼能力に限りがあるため、通過流量を絞ることにより燃焼能力を補って設定温度での給湯を可能とするために用いられている。つまり、入水温度が冷た過ぎたり、リモコンに入力設定される設定温度が高過ぎたり、あるいは、大流量の給湯が継続されたりして入水路91から水道管等の給水圧に基づき供給される水をそのままの流量で入水させたとすると、上記燃焼能力では設定温度まで昇温しきれない場合に、上記流量調整弁1が閉側に作動されて設定温度まで昇温させ得る程度まで通過流量を低減させるようになっている。つまり、上記流量調整弁1の弁開度調整によっても給湯温度の温調を行い得るようになっている。なお、以上の給湯装置9に流量調整弁1が適用される点等は第2実施形態以降の他の実施形態についても同じである。又、流量調整弁1等を入水路91ではなくて、出湯路94の側に介装させるようにしても、もちろんよい。
【0037】
以上の本実施形態の場合、作動ロッド4が保持筒28に対し進退方向(上下方向)に作動され、これが繰り返されることにより、隙間63(図3参照)内の潤滑剤Gが僅かずつ減少すると、その減少に伴い生じる引き込み力と、流体圧導入口711側からの背圧として作用する流体圧(図6の例では水道水の供給圧)に基づく押し込み力とによって、上記隙間63内の潤滑剤Gと連続している潤滑剤封入孔71内の潤滑剤Gが補給口721から隙間63側に供給されることになる。これにより、潤滑剤Gの潤滑剤封入孔71側から隙間63側への自動補給が行われることになる。そして、この自動補給に伴いその補給分だけ流体圧導入口711側の潤滑剤Gの境界端面が潤滑剤封入孔71内を基端側(上端側)に移動し、この境界端面の移動に追随して閉止栓73も移動する。これにより、この閉止栓73を介して流体圧(水圧)を背圧として潤滑剤封入孔71内の潤滑剤Gに対し常に作用させ続けることができ、この背圧に基づく押し込みによって上記の自動補給を維持させることができる。以上により、摺動部6の潤滑を飛躍的に長期に亘り持続して良好な状態に維持させることができ、流量調整弁1の耐久性や寿命を飛躍的に向上させることができるようになる。
【0038】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係る流体作動弁として流量調整弁1aを示す。この流量調整弁1aは潤滑剤を自動補給するための手段の形態においてのみ第1実施形態の流量調整弁1と異なり、その他の構成は第1実施形態の流量調整弁1と同じである。このため、第1実施形態と同様構成の要素については第1実施形態と同じ符号を付して重複する詳細説明を省略する。
【0039】
本実施形態の流量調整弁1aは、潤滑剤を摺動部6(図3参照)に対し自動補給するための手段として、潤滑剤封入空間としての潤滑剤封入孔75を有する点、及び、この潤滑剤封入孔75に連通して摺動部6(図3参照)に臨んで補給口721が開口する1又2以上の連通孔72を有する点は第1実施形態のそれと同じである一方、上記の潤滑剤封入孔75の形成の態様及び流体圧の導入位置において第1実施形態とは異なっている。
【0040】
すなわち、上記潤滑剤封入孔75は、作動ロッド4の基端側(図7の上端側)であるセレーション軸部41の端面から軸Xに沿って先端側(下端側)に向けて所定位置まで穿孔されたものであり、入口開口側は大気が作用することになるため潤滑剤Gの封入後に例えば閉止ネジ751のねじ込みにより閉止されるようになっている。
【0041】
上記潤滑剤封入孔75の先端部752は作動ロッド4が流体と接触することになる位置に設定され、その先端部752に連通して先端部752から放射方向に延びる導入孔76,76,…が形成されている。そして、各導入孔76の先端は作動ロッド4の外周面が流体に接触することになる位置に開口され、この開口が流体圧導入口761とされている。
【0042】
この第2実施形態の場合も、第1実施形態と同様に潤滑剤封入孔75に封入された潤滑剤Gが上記流体圧導入口761からの流体圧を背圧として受けて第1実施形態で説明した摺動部6に対し自動補給されることになる。
【0043】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記第1又は第2実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、作動ロッド4が回転することにより進退作動される場合について説明したが、これに限らず、作動ロッドが駆動手段の駆動により直接に進退作動される構成に対し本発明を適用するようにしてもよい。例えば、駆動モータと作動ロッドとをラックアンドピニオン等の機構を介して接続したり、あるいは、駆動手段としてシリンダタイプ等の直線運動をするアクチュエータを採用したりして、作動ロッドを直接に進退作動させるようにすればよい。これらの場合においても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。そして、このような進退作動される作動ロッドを有し流体の流れを制御するために用いられるものであれば、流量調整弁に限らず、他の開閉弁等に本発明を適用することもでき、これらの場合にも本発明による効果を上記と同様に得ることができる。
【0044】
上記各実施形態では流量調整弁1の適用例として給湯装置での使用例について説明したが、これに限らず、上記流量調整弁1を他の流体機器に適用してもよく、また、湯水の流量調整以外に油やガス等の他の流体を対象にして流量調整するために上記流量調整弁1を適用してもよい。
【0045】
又、上記各実施形態における補給口721の形態として、次のようなものを採用することができる。すなわち、図8(a)に符号721aで示す補給口のように隙間63に向けて徐々に拡開するようなテーパを付したもの、あるいは、図8(b)又は図9(a)に符号721bで示す補給口のように拡径部を設けたもの、を採用してもよい。隙間63に臨む開口面積が大きいほど、潤滑剤Gの自動補給を効果的かつスムースに行うことができるようになる。さらに、上記の補給口721bの如く連通孔72の先端開口部分のみを拡径させるのではなくて、図9(b)に示す如くその拡径部分を作動ロッド4の外周面の周方向に連続して延びるようにしてもよい。つまり、上記の補給口721bに対応する溝幅の周溝721cを作動ロッド4の外周面に形成し、この周溝721cに各連通孔72の先端を開口させるようにしてもよい。この場合、隙間63(図8参照)に対する潤滑剤Gの補給を最も効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面説明図である。
【図2】弁閉状態を示す図1対応図である。
【図3】図1のA部の拡大図である。
【図4】図3のC−C線における断面説明図である。
【図5】図1のB部の拡大図である。
【図6】実施形態が適用される給湯装置の概略模式図である。
【図7】第2実施形態を示す断面説明図である。
【図8】補給口の他の形態を示す図3に対応した部分拡大図であり、図8(a)はテーパ状に拡開するもの、図8(b)は拡径部を形成するものである。
【図9】補給口の他の形態を示し、図9(a)は作動ロッドの部分斜視図であり、図9(b)は作動ロッドの部分正面図である。
【図10】課題を説明するために流体用作動弁の一部を切欠いて示す斜視図である。
【図11】図10の場合の摺動部の部分拡大説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1,1a 流量調整弁(流体用作動弁)
2 弁ハウジング
3 弁体
4 作動ロッド
6 摺動部
22 弁座
28 保持筒(弁ハウジング側)
61,62 Oリング
71,75 潤滑剤封入孔(潤滑剤封入空間)
72 連通孔
73 閉止栓
74 ストッパ(脱落防止手段)
281 内周面(弁ハウジング側の内周面;摺動面)
711,761 流体圧導入口(流体圧作用部)
721,721a,721b 補給口
721c 周溝(補給口)
G 潤滑剤
W 流体
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体を弁座に対し作動させて流体の流れを制御するために弁ハウジングの内部を摺動により進退作動する作動ロッドを備えた流体用作動弁に関し、特に作動ロッドと弁ハウジングとの間の摺動部に対し潤滑剤を自動補給するための技術に係る。上記の流体用作動弁としては、流体の流れを停止・流通のいずれかに切換制御する開閉弁、流体の流れの方向切換・分流・混合を行う方向制御弁、又は、流体の流量を変更して流れを制御する流量制御弁(流量調整弁)、あるいは、これら開閉弁,方向制御弁,流量制御弁の内の2以上もしくは全ての機能を備えた流体作動弁などが該当する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体用作動弁として、ガイドカラー内にブッシュロッドが摺動により軸方向に往復動するように案内された流体制御用の電磁弁において、ブッシュロッドに対しこのブッシュロッドを軸方向に貫通するようにオイル流出穴を形成する一方、上記ガイドカラー及びブッシュロッドの一方に溝を設けてオイル溜まりとし、このオイル溜まりと上記オイル流出穴とを連通するように貫通穴を形成したものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、他の流体用作動弁として、コアの中空部内にブッシュが内装され、このブッシュ内にシャフトが摺動により上下動するように案内された電磁式圧力調整弁において、上記中空部の内面に上下に貫通する縦溝を形成して潤滑剤の給排出路とし、この給排出路の一部が上記ブッシュとシャフトとの摺動面間に露出するようにしたものも知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
さらに、流体用作動弁として、過圧逃がし機構を有する流量調整弁が本出願人によって提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】実開平5−67882号公報
【特許文献2】特開平9−53742号公報
【特許文献3】特開2003−130235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、弁体を弁座に対し近接離反させるためにその弁体を作動ロッドにより進退作動させる場合であって、かつ、上記の弁体の弁座に対する進退作動により流体、例えば水の流れを制御する場合には、通常は、Oリングを用いて、その作動ロッドの摺動案内と、作動ロッドと弁ハウジングとの間の止水シールとを兼ねるようにしている。すなわち、図10に例示するように、上記作動ロッド400の外周面に少なくとも一対のOリング600,600を外嵌させ、これらのOリング600,600を弁ハウジング200側の内周面201に対し密に内嵌させることにより、Oリング600,600の外周囲と弁ハウジング200側の内周面201とを密に接触させて水密状態で摺動可能にされている。この場合には、上記のOリング付きの作動ロッド400を弁ハウジング200側に内嵌させる際に、そのOリング600,600や近傍の作動ロッド400の外表面に対し潤滑剤として所定量のグリースが塗布され、この状態で弁ハウジング200側の内周面201に押し込まれることになる。
【0007】
この場合には、図11に示すように、作動ロッド400が弁ハウジング200側の内周面201に対し進退方向(同図の上下方向)に往復作動されると、Oリング600,600と上記内周面201との間でグリースGによる潤滑によって摺動が滑らかに行われるものの、上記内周面201に残留するグリースGにより一対のOリング600,600間に溜められたグリース量が僅かずつ減少することになる。そして、最終的には上記のグリースGが枯渇して寿命を迎えることになる。
【0008】
現状では上記の組付けの際に塗布される所定量のグリースにより必要十分な耐久性は確保されているものの、このような流体用作動弁を搭載する各種装置の複雑化や高耐久性化等の進歩に伴い、流体用作動弁においても、将来、さらにより高い耐久性や長い寿命を有するものの開発が必要になると考えられる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作動ロッドの進退作動における潤滑条件の改善によって従来に比してより高い耐久性を有する流体用作動弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、弁体を弁座に対し作動させて流体の流れを制御するために弁ハウジングの内部を進退作動する作動ロッドと、この作動ロッドと弁ハウジングとの間に配設され上記作動ロッドを摺動により進退方向へ作動案内する摺動部とを備えた流体用作動弁を対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記作動ロッドに対し、その内部に潤滑剤が封入される潤滑剤封入空間と、この潤滑剤封入空間内から潤滑剤を上記摺動部に対し自動補給するよう上記潤滑剤封入空間に連通して上記摺動部に臨んで開口された補給口とを形成することとした(請求項1)。
【0011】
かかる本発明の場合、潤滑剤封入空間内に潤滑剤が封入された状態では、摺動部での潤滑剤が減り気味になると、その減った分に相当する潤滑剤が上記潤滑剤封入空間内から補給口を通して自動的に補給もしくは補充されることになる。すなわち、摺動部は、通常、極めて狭い隙間等に潤滑剤が充満され、この充満された潤滑剤と潤滑剤封入空間内の潤滑剤とが上記補給口を通して連続した状態になっているため、上記摺動部における潤滑剤が減ると、その潤滑剤の容積減少分だけの引き込み力(吸い込み力)によって潤滑剤封入空間側からの潤滑剤が補給口を通して摺動部に対し補給されることになる。これにより、作動ロッドの摺動部に対する潤滑を極めて長期に亘り維持・保証することが可能になり、流体用作動弁の耐久性や寿命を飛躍的に向上させることが可能になる。
【0012】
本発明の流体用作動弁における作動ロッドにおいて、上記潤滑剤封入空間に対し制御対象の流体の圧力を直接又は間接に作用させる流体圧作用部をさらに形成することもできる(請求項2)。このような流体圧作用部の形成により、潤滑剤封入空間内に封入された潤滑剤に対し上記の流体圧を背圧として作用させることが可能となり、上記の摺動部に対する潤滑剤の自動補給をより確実に実現させ得ることになる。すなわち、摺動部での潤滑剤の減少に伴う上記の引き込み力が弱くてもあるいはそのような引き込み力が無くても、潤滑剤封入空間内の潤滑剤に対し流体圧が背圧として作用しているため、その背圧に基づいて摺動部側の潤滑剤が減少すればその減少分の潤滑剤が補給口から摺動部内に押し込まれ確実に補給されることになる。もちろん、通常は、このような流体圧による押し込み力に加えて上記の引き込み力が作用するため、摺動部への潤滑剤の自動補給をより一層確実に実現させて潤滑状態を維持させることが可能になる。
【0013】
このような流体圧作用部としては、潤滑剤封入空間内の潤滑剤が摺動部側の潤滑剤と連続し、その摺動部側は閉塞状態になっているため、制御対象である流体に臨む位置に開口して上記潤滑剤封入空間に流体圧を作用させる流体圧導入口を作動ロッドに形成するだけにして、潤滑剤封入空間内の潤滑剤が上記流体圧導入口の両者の境界において流体に直接に接触して流体側から流体圧を直接に受けるようにしてもよいが、次のようにして流体圧を間接に受けるようにしてもよい。例えば、上記流体圧作用部として、上記流体に臨む位置に開口して上記潤滑剤封入空間に流体圧を作用させる流体圧導入口と、この流体圧導入口に対し流体と潤滑剤との間の境界を構成するように内挿された閉止栓とを備えたもので構成することができる(請求項3)。このようにすることにより、上記閉止栓によって、潤滑剤封入空間内の潤滑剤と、流体との境界を仕切って区画することが可能になる。その上に、上記閉止栓は流体圧導入口に内挿されているため、潤滑剤封入空間内の潤滑剤が摺動部側に補給されるに従って潤滑剤と共に流体圧導入口から内方に向けて順次移動して潤滑剤に追随することになって、閉止栓を介して内部の潤滑剤に対し常に流体圧を作用させ続けることが可能になる。
【0014】
そして、このように閉止栓を備える場合には、上記流体圧作用部として、上記流体圧導入口から流体側への上記閉止栓の脱落を防止する脱落防止部をさらに備えるようにすることもできる(請求項4)。通常の使用状態では上記閉止栓の脱落するおそれはないが、作動ロッドを弁ハウジングに対し組み付ける前などの製造段階では、潤滑剤封入空間内への潤滑剤の封入後に閉止栓を内挿したとしても、その保持が不安定になるおそれもある。これに対し、上記の脱落防止手段を備えることにより、流体用作動弁として使用されるまで閉止栓を流体圧導入口内に確実に保持させて、その機能を発揮させることが可能になる。
【0015】
以上の流体用作動弁においては、上記補給口として、上記潤滑剤封入空間と摺動部との間を連通させる連通孔により構成することとし、この連通孔として、上記摺動部に臨む部位の孔断面積を他の部位よりも拡大させるように形成することができる(請求項5)。このようにすることにより、連通孔の形成により潤滑剤封入空間と摺動部との連通を容易に実現させ得る上に、補給口における摺動部側との接触面積の増大により摺動部に対する潤滑剤の補給もより確実に行い得ることになる。
【0016】
又、以上の流体用作動弁において、上記摺動部を、上記作動ロッドの外周面に対し進退方向に互いに離して外嵌された少なくとも一対のOリングと、この一対のOリングが接触する上記弁ハウジング側の内周面との間の摺動面により構成し、上記補給口として、上記一対のOリング間に挟まれた作動ロッドの外周面から上記摺動面に臨んで開口するように形成することができる(請求項6)。このようにすることにより、摺動部側の潤滑剤と潤滑剤封入空間内の潤滑剤とが連続して、潤滑剤封入空間側から摺動部側への潤滑剤の自動補給が確実に行い得る構成を特定することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように、請求項1〜請求項6のいずれかの流体用作動弁によれば、潤滑剤封入空間内に潤滑剤を封入しておくと、摺動部での潤滑剤が減れば、その減少に伴う引き込み力によって減った分に相当する潤滑剤を上記潤滑剤封入空間内から補給口を通して自動的に補給もしくは補充させることができ、作動ロッドの摺動部に対する潤滑を極めて長期に亘り維持・保証させることができる。これにより、流体用作動弁の耐久性や寿命を飛躍的に向上させることができるようになる。
【0018】
請求項2によれば、流体圧作用部によって、潤滑剤封入空間内に封入された潤滑剤に対し流体圧を背圧として作用させることができるようになり、かかる背圧として作用する流体圧によって、摺動部側の潤滑剤が減少すれば潤滑剤封入空間側の潤滑剤を摺動部側に押し込むことができるようになる。これにより、上記の摺動部に対する潤滑剤の自動補給を、上記の引き込み力と共に、あるいは、上記の引き込み力が弱いもしくは生じなくても、確実に実現させて潤滑状態を維持させることができるようになる。
【0019】
請求項3によれば、流体圧作用部を流体圧導入口と、潤滑剤の封入後に流体圧導入口から内挿される閉止栓とで構成しているため、その閉止栓によって、潤滑剤封入空間内の潤滑剤と流体との境界を仕切って区画することができる上に、潤滑剤封入空間内の潤滑剤が摺動部側に補給されるに従って潤滑剤に追随して潤滑剤封入空間内の潤滑剤に対し常に流体圧を作用させ続けることができる。
【0020】
請求項4によれば、脱落防止手段を備えているため、流体用作動弁として使用されるまで閉止栓を流体圧導入口内に確実に保持させて、その機能を発揮させることができるようになる。
【0021】
請求項5によれば、連通孔の形成により潤滑剤封入空間と摺動部との連通を容易に実現させることができる上に、補給口における摺動部側との接触面積を増大させて摺動部に対する潤滑剤の補給をより確実に行うことができるようになる。
【0022】
請求項6によれば、摺動部の構成、及び、摺動部と補給口との関係を具体的に特定することができ、これにより、以上の本発明の効果をより確実に得ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る流体用作動弁として、流体(例えば湯又は水)の流量を変更制御する流量調整弁1を示す。なお、本実施形態及び以降の実施形態における位置関係についての説明では、図1に対し上又は下と表示するが、流量調整弁1の配置を後述の作動ロッド4が上下方向に向いた縦向きに限定するものではなく、横向きに配置して用いることもできる。
【0025】
上記流量調整弁1は、内部に弁口21、弁座22及び弁室23が形成された弁ハウジング2と、この弁ハウジング2の弁室23内において上記弁座22に対し開閉方向(図1の上下方向)に進退作動されるように収容された弁体3と、この弁体3に対し作動ロッド4を介して進退作動のための駆動力を伝達するモータ又はアクチュエータ等からなる駆動手段5とを基本構成要素として備えている。又、上記弁ハウジング2には、図示省略の流入側配管等に連通接続される流入口24と、同様に図示省略の流出側配管等に連通接続される流出口25とが形成されている一方、上記作動ロッド4を進退方向に作動案内可能に保持する保持筒28が内部に組み込み固定されている。そして、弁体3の進退作動により弁体3の先端止水部31と弁座22との間の隙間量(弁開度)が増減変更され、これにより、上記流入口24から流出口25への流体の通過流量が変更調整されるようになっている。なお、駆動手段5としては、弁体3を一方向(同図の上下方向)に対し直線運動させるように駆動力伝達が可能であれば、回転駆動するものでも、直線的に伸縮駆動するものでも、いずれでもよい。
【0026】
駆動手段5の駆動制御と、弁開度の変更制御との関係について詳細に説明する。上記作動ロッド4の基端側(図1の上端側)にはセレーション軸部41と外周ネジ部42とが形成され、セレーション軸部41は例えばステッピングモータ等により構成された駆動手段5としての駆動モータ5aと接続される一方、上記外周ネジ部42は上記保持筒28内の内周ネジ部281にねじ込まれており、これにより、上記作動ロッド4は弁座22に対し開閉方向に進退作動(直線往復動)されるようになっている。すなわち、作動ロッド4は上記セレーション軸部41を介して上記駆動モータから回転駆動力の伝達を受けて軸X回りに回転駆動され、この回転駆動により上記内周ネジ部281を回転しながら開閉方向に進退作動するようになっている。そして、上記の駆動モータ5aの駆動制御(例えばステッピングモータのステップ数制御)によって作動ロッド4(弁体3)の進退位置を調整し、この進退位置の調整によって弁座22と弁体3の先端部との間の隙間量(弁開度)を増減変更調整して、流入口24から流出口25への通過流量を変更調整し得るようになっている。
【0027】
例えば、上記駆動モータ5aの回転駆動により作動ロッド4を弁閉側(図1の下側)に作動させて行くと、上記の隙間量は徐々に低減していき、最終的には図2に示すように弁体3の先端止水部31が弁座22に接触して着座することになる。この状態では流入口24と流出口25との間の流体の流れが完全に遮断されて閉止状態になる。この閉止状態から駆動モータ5aを逆方向に回転駆動させると、上記とは逆に作動ロッド4は弁開側(図2の上側)に作動され、図1に示すような開弁状態で通過流量の変更調整が可能な状態になる。このような作動ロッド4の進退作動は、その作動ロッド4の外周面に外嵌した一対のOリング61,62の外周面が保持筒28の内周面に対し進退方向に接触しつつ摺動することにより案内されるようになっている。
【0028】
以上のような流量調整弁1において、後述の隙間63を含み上記一対のOリング61,62により構成される摺動部6(図3参照)に対し潤滑剤(例えばグリース)を自動補給するための手段が付設されている。すなわち、作動ロッド4の内部には先端面(下端面)43から下方に臨んで開口する潤滑剤封入孔71が潤滑剤封入空間として形成されており、先端面43の開口が流体圧導入口711とされる一方、潤滑剤封入孔71の基端(上端)712(図3参照)に連通し基端712から放射方向に延びて外周面に開口する1又は2以上の連通孔72,72,…が形成されている。各連通孔72の上記開口は、図3に示すように一対のOリング61,62間において作動ロッド4の外周面と保持筒28の内周面との間に形成される隙間63に臨むように位置付けられて、補給口721とされている。
【0029】
上記各Oリング61,62はそれぞれ作動ロッド4の外周面に形成された周溝611,621に外嵌されて外周囲に若干量突出した状態にされ、これら一対のOリング61,62が保持筒28の内周面281に密に接触した状態で内挿された状態ではその内周面281と作動ロッド4の外周面との間に僅かな隙間63が形成されることになる。上記作動ロッド4が保持筒28内に組み付けられる製造段階において、上記Oリング61,62や作動ロッド4の外周面あるいは保持筒28の内周面281に対し潤滑剤(例えばグリース)が塗布された状態で作動ロッド4の保持筒28内への組み付けが行われるため、上記隙間63には潤滑剤が充満した状態にされている。そして、この隙間63(図4参照)に臨んで上記補給口721,721,…が開口するように設定されている。
【0030】
又、潤滑剤封入孔71の先端側は、図5(a)に示すように潤滑剤封入孔71や各連通孔72に潤滑剤が充満するように注入された後に閉止栓73がその潤滑剤封入孔71に内挿されており、封入された潤滑剤Gと、外部の流体Wとの間の境界を仕切る役割を上記閉止栓73が果たすようになっている。つまり、上記閉止栓73は潤滑剤Gと流体Wとに挟まれて、潤滑剤Gに追随して潤滑剤封入孔71内を移動可能とされている。上記閉止栓73としては具体的には潤滑剤封入孔71の内径に対応する直径を有する球形状に形成され、全方位への回転を自在としつつも、潤滑剤Gと流体Wとの仕切の役割を果たすようになっている。さらに、流体圧導入口711には上記閉止栓73の脱落防止手段が設けられている。図5(a)にはかしめ手段により脱落防止手段を構成したものが図示されている。すなわち、潤滑剤封入孔71に孔縁から僅かに突出する縁部74aを形成し(同図の一点鎖線参照)、この縁部をかしめと同様に孔内部側に屈曲させて、閉止栓73の脱落防止用のストッパ74を脱落防止手段として形成したものである。
【0031】
なお、脱落防止手段としては、このストッパ74の他に、例えば外周面にねじ切りされて内部に貫通孔を形成した孔明きネジや、内周側に張り出し縁を有するナット状部材等のねじ込み、あるいは、上記のストッパ74と同様部分の溶着等の手段により形成してもよい。さらに、かかる脱落防止手段を全く設けることなく、例えば図5(b)に示すように潤滑剤封入孔71内に注入・封入した潤滑剤Gの境界端面gと流体Wとを直接に接触させるようにしてもよい。潤滑剤Gとしてグリース等の粘性のあるものであれば、流体Wと混ざることなく潤滑剤Gと流体Wとが互いに仕切られた状態に維持される。従って、閉止栓73を伴うことなく、流体圧導入口711のみによっても流体圧を背圧として作用させる流体圧作用部が構成されることになる。
【0032】
そして、上記潤滑剤封入孔71及び各連通孔72内に潤滑剤が充満し各補給口721において上記の隙間63に充満されることになる塗布済み潤滑剤と連続するように、例えば流体圧導入口711の側から潤滑剤が注入され、この状態で保持筒28内に内挿されて、図3に示す状態になる。そして、後述の如き流体通路に介装されて、流体導入口711の側から流体圧が閉止栓73を介して潤滑剤Gに対し背圧として作用することになる。
【0033】
なお、本実施形態の流量調整弁1は過圧逃がし機構を備えたものであり、これについて説明を次に追記する。すなわち、流量調整弁としての流量変更制御機能は、作動ロッド4と、弁体3とが一体に結合されたものでも実現し得るものであるが、上記の過圧逃がし機構のために作動ロッド4と弁体3とが別体とされている。開閉方向(進退方向:図1の上下方向)に進退作動される作動ロッド4の先端側位置(下端側位置)において弁体3が外挿され、この弁体3は上記開閉方向に対し上下両側のストッパ81,82間を相対移動可能に保持される一方、この弁体3が付勢バネとしての圧縮コイルスプリング83からの付勢力を受けている。上記圧縮コイルスプリング83は、その一端(上端)831側がバネ受け部材84に支持され、他端(下端)832側がバネ受け部材85に支持されている。バネ受け部材84は上側のストッパ82に係止され、バネ受け部材85は弁体3の上端縁に係止されている。これら双方のバネ受け部材84,85間に上記圧縮コイルスプリング83の圧縮復元力が付勢力として作用するようにされ、これにより、弁体3を作動ロッド4に対し最も閉弁側に押し付けた状態に位置付けるようになっている。
【0034】
この状態で、上記作動ロッド4の進退作動位置の調整により弁体3と弁座22との間の隙間量が変更されて通過流量の変更調整が行われる一方、作動ロッド4の前進作動により弁体3の先端止水部31が弁座22と当接して閉弁されるようになっている。この閉弁状態においては、上記弁座22との接地位置よりも外周側の弁体3の先端面部分が弁体3の基端面(図1の上端面)の受圧面積よりも大きくなるようにされている。このため、流入口24側(上流側)から過圧力を受けると、その過圧力が弁体3の上記先端面部分に作用し、基端面よりも受圧面積が大きい分だけの差圧が圧縮コイルスプリング83のバネ荷重よりも大きくなると、上記圧縮コイルスプリング83が縮んで弁体3が押し上げられ、これにより、上記過圧力を流出口25側に逃がすようになっている。以上が過圧逃がし機構の原理である。上記の如き過圧が作用しない通常の場合には、作動ロッド4の進退作動によって、弁体3及び圧縮コイルスプリング83はその作動ロッド4と共に一体に進退することになる。
【0035】
以上の流量調整弁1は、流体として例えば湯又は水が流れる通路に介装されて通過する湯又は水の通過流量を目標流量に制御するために用いられる。例えば図6に示すように給湯装置9において用いられる。この給湯装置9は、入水路91から入水された水道水等の水を熱交換器92に導き、熱交換器92を通過する間に燃焼バーナ93からの燃焼熱により熱交換加熱し、加熱された湯を出湯路94から給湯先に給湯するようになっている。そして、上記の入水路91に流量調整弁1を介装し、熱交換器92及びバイパス路95の側に流す水の流量を制御するために用いられる。同図中の符号96は流量センサであり、この流量センサ96により検出される流量検出値の出力を受けた図示省略のコントローラによって流量調整弁1の駆動手段が駆動制御されて通過流量が所定の目標流量になるように制御される。
【0036】
かかる給湯装置9における流量調整弁1の主な役割は次の通りである。すなわち、燃焼バーナ93の燃焼能力に限りがあるため、通過流量を絞ることにより燃焼能力を補って設定温度での給湯を可能とするために用いられている。つまり、入水温度が冷た過ぎたり、リモコンに入力設定される設定温度が高過ぎたり、あるいは、大流量の給湯が継続されたりして入水路91から水道管等の給水圧に基づき供給される水をそのままの流量で入水させたとすると、上記燃焼能力では設定温度まで昇温しきれない場合に、上記流量調整弁1が閉側に作動されて設定温度まで昇温させ得る程度まで通過流量を低減させるようになっている。つまり、上記流量調整弁1の弁開度調整によっても給湯温度の温調を行い得るようになっている。なお、以上の給湯装置9に流量調整弁1が適用される点等は第2実施形態以降の他の実施形態についても同じである。又、流量調整弁1等を入水路91ではなくて、出湯路94の側に介装させるようにしても、もちろんよい。
【0037】
以上の本実施形態の場合、作動ロッド4が保持筒28に対し進退方向(上下方向)に作動され、これが繰り返されることにより、隙間63(図3参照)内の潤滑剤Gが僅かずつ減少すると、その減少に伴い生じる引き込み力と、流体圧導入口711側からの背圧として作用する流体圧(図6の例では水道水の供給圧)に基づく押し込み力とによって、上記隙間63内の潤滑剤Gと連続している潤滑剤封入孔71内の潤滑剤Gが補給口721から隙間63側に供給されることになる。これにより、潤滑剤Gの潤滑剤封入孔71側から隙間63側への自動補給が行われることになる。そして、この自動補給に伴いその補給分だけ流体圧導入口711側の潤滑剤Gの境界端面が潤滑剤封入孔71内を基端側(上端側)に移動し、この境界端面の移動に追随して閉止栓73も移動する。これにより、この閉止栓73を介して流体圧(水圧)を背圧として潤滑剤封入孔71内の潤滑剤Gに対し常に作用させ続けることができ、この背圧に基づく押し込みによって上記の自動補給を維持させることができる。以上により、摺動部6の潤滑を飛躍的に長期に亘り持続して良好な状態に維持させることができ、流量調整弁1の耐久性や寿命を飛躍的に向上させることができるようになる。
【0038】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係る流体作動弁として流量調整弁1aを示す。この流量調整弁1aは潤滑剤を自動補給するための手段の形態においてのみ第1実施形態の流量調整弁1と異なり、その他の構成は第1実施形態の流量調整弁1と同じである。このため、第1実施形態と同様構成の要素については第1実施形態と同じ符号を付して重複する詳細説明を省略する。
【0039】
本実施形態の流量調整弁1aは、潤滑剤を摺動部6(図3参照)に対し自動補給するための手段として、潤滑剤封入空間としての潤滑剤封入孔75を有する点、及び、この潤滑剤封入孔75に連通して摺動部6(図3参照)に臨んで補給口721が開口する1又2以上の連通孔72を有する点は第1実施形態のそれと同じである一方、上記の潤滑剤封入孔75の形成の態様及び流体圧の導入位置において第1実施形態とは異なっている。
【0040】
すなわち、上記潤滑剤封入孔75は、作動ロッド4の基端側(図7の上端側)であるセレーション軸部41の端面から軸Xに沿って先端側(下端側)に向けて所定位置まで穿孔されたものであり、入口開口側は大気が作用することになるため潤滑剤Gの封入後に例えば閉止ネジ751のねじ込みにより閉止されるようになっている。
【0041】
上記潤滑剤封入孔75の先端部752は作動ロッド4が流体と接触することになる位置に設定され、その先端部752に連通して先端部752から放射方向に延びる導入孔76,76,…が形成されている。そして、各導入孔76の先端は作動ロッド4の外周面が流体に接触することになる位置に開口され、この開口が流体圧導入口761とされている。
【0042】
この第2実施形態の場合も、第1実施形態と同様に潤滑剤封入孔75に封入された潤滑剤Gが上記流体圧導入口761からの流体圧を背圧として受けて第1実施形態で説明した摺動部6に対し自動補給されることになる。
【0043】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記第1又は第2実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、作動ロッド4が回転することにより進退作動される場合について説明したが、これに限らず、作動ロッドが駆動手段の駆動により直接に進退作動される構成に対し本発明を適用するようにしてもよい。例えば、駆動モータと作動ロッドとをラックアンドピニオン等の機構を介して接続したり、あるいは、駆動手段としてシリンダタイプ等の直線運動をするアクチュエータを採用したりして、作動ロッドを直接に進退作動させるようにすればよい。これらの場合においても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。そして、このような進退作動される作動ロッドを有し流体の流れを制御するために用いられるものであれば、流量調整弁に限らず、他の開閉弁等に本発明を適用することもでき、これらの場合にも本発明による効果を上記と同様に得ることができる。
【0044】
上記各実施形態では流量調整弁1の適用例として給湯装置での使用例について説明したが、これに限らず、上記流量調整弁1を他の流体機器に適用してもよく、また、湯水の流量調整以外に油やガス等の他の流体を対象にして流量調整するために上記流量調整弁1を適用してもよい。
【0045】
又、上記各実施形態における補給口721の形態として、次のようなものを採用することができる。すなわち、図8(a)に符号721aで示す補給口のように隙間63に向けて徐々に拡開するようなテーパを付したもの、あるいは、図8(b)又は図9(a)に符号721bで示す補給口のように拡径部を設けたもの、を採用してもよい。隙間63に臨む開口面積が大きいほど、潤滑剤Gの自動補給を効果的かつスムースに行うことができるようになる。さらに、上記の補給口721bの如く連通孔72の先端開口部分のみを拡径させるのではなくて、図9(b)に示す如くその拡径部分を作動ロッド4の外周面の周方向に連続して延びるようにしてもよい。つまり、上記の補給口721bに対応する溝幅の周溝721cを作動ロッド4の外周面に形成し、この周溝721cに各連通孔72の先端を開口させるようにしてもよい。この場合、隙間63(図8参照)に対する潤滑剤Gの補給を最も効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面説明図である。
【図2】弁閉状態を示す図1対応図である。
【図3】図1のA部の拡大図である。
【図4】図3のC−C線における断面説明図である。
【図5】図1のB部の拡大図である。
【図6】実施形態が適用される給湯装置の概略模式図である。
【図7】第2実施形態を示す断面説明図である。
【図8】補給口の他の形態を示す図3に対応した部分拡大図であり、図8(a)はテーパ状に拡開するもの、図8(b)は拡径部を形成するものである。
【図9】補給口の他の形態を示し、図9(a)は作動ロッドの部分斜視図であり、図9(b)は作動ロッドの部分正面図である。
【図10】課題を説明するために流体用作動弁の一部を切欠いて示す斜視図である。
【図11】図10の場合の摺動部の部分拡大説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1,1a 流量調整弁(流体用作動弁)
2 弁ハウジング
3 弁体
4 作動ロッド
6 摺動部
22 弁座
28 保持筒(弁ハウジング側)
61,62 Oリング
71,75 潤滑剤封入孔(潤滑剤封入空間)
72 連通孔
73 閉止栓
74 ストッパ(脱落防止手段)
281 内周面(弁ハウジング側の内周面;摺動面)
711,761 流体圧導入口(流体圧作用部)
721,721a,721b 補給口
721c 周溝(補給口)
G 潤滑剤
W 流体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体を弁座に対し作動させて流体の流れを制御するために弁ハウジングの内部を進退作動する作動ロッドと、この作動ロッドと弁ハウジングとの間に配設され上記作動ロッドを摺動により進退方向へ作動案内する摺動部とを備えた流体用作動弁であって、
上記作動ロッドには、その内部に潤滑剤が封入される潤滑剤封入空間と、この潤滑剤封入空間内から潤滑剤を上記摺動部に対し自動補給するよう上記潤滑剤封入空間に連通して上記摺動部に臨んで開口された補給口とが形成されている
ことを特徴とする流体用作動弁。
【請求項2】
請求項1記載の流体用作動弁であって、
上記作動ロッドには、上記潤滑剤封入空間に対し制御対象の流体の圧力を直接又は間接に作用させる流体圧作用部が形成されている、流体用作動弁。
【請求項3】
請求項2に記載の流体用作動弁であって、
上記流体圧作用部は、上記流体に臨む位置に開口して上記潤滑剤封入空間に流体圧を作用させる流体圧導入口と、この流体圧導入口に対し流体と潤滑剤との間の境界を構成するように内挿される閉止栓とを備えて構成されている、流体用作動弁。
【請求項4】
請求項3に記載の流体用作動弁であって、
上記流体圧作用部は、上記流体圧導入口から流体側への上記閉止栓の脱落を防止する脱落防止部をさらに備えている、流体用作動弁。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の流体用作動弁であって、
上記補給口は上記潤滑剤封入空間と摺動部との間を連通させる連通孔により構成され、この連通孔は上記摺動部に臨む部位の孔断面積が他の部位よりも拡大するように形成されている、流体用作動弁。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の流体用作動弁であって、
上記摺動部は、上記作動ロッドの外周面に対し進退方向に互いに離して外嵌された少なくとも一対のOリングと、この一対のOリングが接触する上記弁ハウジング側の内周面との間の摺動面であり、
上記補給口は、上記一対のOリング間に挟まれた作動ロッドの外周面から上記摺動面に臨んで開口するように形成されている、流体用作動弁。
【請求項1】
弁体を弁座に対し作動させて流体の流れを制御するために弁ハウジングの内部を進退作動する作動ロッドと、この作動ロッドと弁ハウジングとの間に配設され上記作動ロッドを摺動により進退方向へ作動案内する摺動部とを備えた流体用作動弁であって、
上記作動ロッドには、その内部に潤滑剤が封入される潤滑剤封入空間と、この潤滑剤封入空間内から潤滑剤を上記摺動部に対し自動補給するよう上記潤滑剤封入空間に連通して上記摺動部に臨んで開口された補給口とが形成されている
ことを特徴とする流体用作動弁。
【請求項2】
請求項1記載の流体用作動弁であって、
上記作動ロッドには、上記潤滑剤封入空間に対し制御対象の流体の圧力を直接又は間接に作用させる流体圧作用部が形成されている、流体用作動弁。
【請求項3】
請求項2に記載の流体用作動弁であって、
上記流体圧作用部は、上記流体に臨む位置に開口して上記潤滑剤封入空間に流体圧を作用させる流体圧導入口と、この流体圧導入口に対し流体と潤滑剤との間の境界を構成するように内挿される閉止栓とを備えて構成されている、流体用作動弁。
【請求項4】
請求項3に記載の流体用作動弁であって、
上記流体圧作用部は、上記流体圧導入口から流体側への上記閉止栓の脱落を防止する脱落防止部をさらに備えている、流体用作動弁。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の流体用作動弁であって、
上記補給口は上記潤滑剤封入空間と摺動部との間を連通させる連通孔により構成され、この連通孔は上記摺動部に臨む部位の孔断面積が他の部位よりも拡大するように形成されている、流体用作動弁。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の流体用作動弁であって、
上記摺動部は、上記作動ロッドの外周面に対し進退方向に互いに離して外嵌された少なくとも一対のOリングと、この一対のOリングが接触する上記弁ハウジング側の内周面との間の摺動面であり、
上記補給口は、上記一対のOリング間に挟まれた作動ロッドの外周面から上記摺動面に臨んで開口するように形成されている、流体用作動弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−40422(P2007−40422A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225647(P2005−225647)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
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