説明

流体用制御弁

【課題】流体用制御弁において、支持プレートのこじれを抑制すること。
【解決手段】流体用制御弁であって、筒状で、かつ一端部に流体噴射孔を有し、流体を流通させるための流体流通空間を形成するバルブボディと、バルブボディ内で移動して流体噴射孔を開閉する弁体と、流体流通空間に配置され、弁体を支持する支持プレートと、支持プレートの略中央に形成され弁体が挿入される中央貫通孔と、中央貫通孔と支持プレートの外周部との間に形成され流体流通空間で圧力分布が生じることを抑制するための圧力抑制貫通孔と、中央貫通孔に沿って配置されると共に、圧力抑制貫通孔間に形成される連通部に対応する部分で弁体の側面に当接しないように配置され、連通部に対応する部分以外の部分で弁体の側面に当接するように配置されるプレート弾性部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体、例えば水素ガスを供給する流体供給系に用いられる流体用制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体用制御弁は、筒状のバルブボディ内を移動することにより、流体噴射孔を開閉する弁体を備えている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−182377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記流体用制御弁において、弁体が常時支持ばねに接触しているため、弁体の移動の際に支持ばねの移動量の違いにより、こじれを起こすおそれがあった。弁体がこじれを起こすと、弾性体の磨耗が生じるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、流体用制御弁において、支持プレート(支持ばね)のこじれを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
流体用制御弁であって、筒状で、かつ一端部に流体噴射孔を有し、流体を流通させるための流体流通空間を形成するバルブボディと、前記バルブボディ内で移動して前記流体噴射孔を開閉する弁体と、前記流体流通空間に配置され、前記弁体を支持する支持プレートであって、前記支持プレートの略中央に形成され前記弁体が挿入される中央貫通孔と、前記中央貫通孔と前記支持プレートの外周部との間に形成され前記流体流通空間で圧力分布が生じることを抑制するための圧力抑制貫通孔と、前記中央貫通孔に沿って配置されると共に、前記圧力抑制貫通孔間に形成される連通部に対応する部分で前記弁体の側面に当接しないように配置され、前記連通部に対応する部分以外の部分で前記弁体の側面に当接するように配置されるプレート弾性部材と、を備えることを要旨とする。
【0008】
上記構成の流体用制御弁によれば、流体用制御弁において、支持プレートのこじれを抑制することができる。また、プレート弾性部材の局所的な摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】流体用制御弁100の中央付近の断面図である。
【図2】支持プレート127の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施例:
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照しつつ、詳細に説明する。本実施の形態に係る流体用制御弁は、燃料電池自動車に搭載されている燃料電池に水素ガスを供給する流体供給系に備えられる流体用制御弁として用いている。
【0011】
図1は流体用制御弁100の中央付近の断面図である。図示するように、流体用制御弁100は、円筒状のバルブボディ101を有する。バルブボディ101は、互いに嵌め合い接合された筒状部材からなるアッパボディ103とロアボディ105とから構成される。アッパボディ103内の中央部には、ほぼ円筒状のコア107が挿入配置されている。コア107は磁性材からなり、ロアボディ105との間に非磁性材からなる鍔付リング109が配置されている。またロアボディ105の先端部(コア107と反対側)には、バルブシート131が配置されている。
【0012】
アッパボディ103とコア107の間には、ほぼ円筒状のボビン111が配置されている。ボビン111は合成樹脂等の電気絶縁材からなり、ソレノイドコイル113が多層状に巻かれている。ソレノイドコイル113は、通電によって電磁力を生じ、弁体129をバルブシート131の座面135aから離間させる。言い換えれば、ソレノイドコイル113は、電磁力によって、弁体129が、ガス噴射孔137から離間する方向に移動させる。
【0013】
ロアボディ105の円形断面の筒孔105c内には、ストッパ121、カラー123、支持プレート127、リング125およびバルブシート131が配置されている。
【0014】
ストッパ121は、リング状に形成され、ロアボディ105の筒孔105cに嵌め込まれ、ロアボディ105の筒孔105cの内径方向に突出された内側フランジ部105aに当接される。カラー123は、例えばリング状に形成されており、ロアボディ105の筒孔105cに嵌め込まれ、一端がストッパ121の外周部の側面と当接され、他端が支持プレート127に当接される。リング125は、例えばリング状に形成され、ロアボディ105の筒孔105cに嵌め込まれ、支持プレート127の外周部の側面と当接される。
【0015】
バルブシート131は、シートボディ133と、軸中心部にガス噴射孔137を有するシート135とから構成されている。シート135の上面に上記座面135aが形成される。
【0016】
シートボディ133がロアボディ105の筒孔105c内に圧入嵌合される際、リング125、カラー123、支持プレート127の外周側およびストッパ121は、順次押圧され、ロアボディ105の筒孔105cの内径方向に突出する内側フランジ部105aに加圧される。すなわち、ロアボディ105の筒孔105cに配置されるリング125、カラー123、支持プレート127およびストッパ121は、ロアボディ105の筒孔105c内に圧入されたシートボディ133によってロアボディ105に固定される構成とされる。
【0017】
弁体129は、磁性材からなり、コア107とほぼ同様の断面形状をなす円筒形状の主部129aと、その主部129aの下側の弁体129の移動方向と直交する方向に突出するフランジ部129bと、主部129a先端に突出する円柱状のバルブ部129cとを有する。弁体129は、ソレノイドコイル113による電磁力によってガス噴射孔137から離間する方向へと移動されたとき、ストッパ121がフランジ部129bの背面と当接することで、それ以上の移動が規制される。
【0018】
弁体129は、コア107内に配置されたスプリング141によってガス噴射孔137を閉じる方向に付勢され、ソレノイドコイル113の通電が解除されているときには、スプリング141による付勢力によって、バルブ部129cがシート135の座面135aに押し付けられた閉弁状態となる。
【0019】
バルブ部129cとシート135の座面135aとが接触する接触面には、弾性を有する環状のシール部材140が嵌着されている。
【0020】
バルブ部129cは、主部129aの中空部129dと連通するとともに径方向に放射状に延びる貫通孔129hが形成されている。貫通孔129hは、バルブ部129cにおいて、4つ形成されており、それぞれが周方向に90度の等間隔で形成されている。
【0021】
流体(水素ガス)は、コア107の中空部107aを経て弁体129の中空部129dへと導かれる。弁体129が閉弁状態に置かれているとき、水素ガスは、弁体129の中空部129dから貫通孔129hを通り、弁体129の外周領域とロアボディ105の内周面との間の空間部151に導入される。上記の各中空部107a,129d、貫通孔129hおよび空間部151によって水素ガスの流路が構成される。空間部151に導入された水素ガスは、ソレノイドコイル113への通電により弁体129が開弁状態となると、ガス噴射孔137を介して、流体用制御弁100外部に噴射される。
【0022】
図2は、支持プレート127の平面図である。支持プレート127は、円板状のプレート本体201と、プレート本体201の内周部に嵌着されたプレートゴム203とを備える。支持プレート127において、プレートゴム203の内側には、弁体129のバルブ部129cが挿入・配置される。プレート本体201は、例えば析出硬化系ステンレスからなり、中央部に設けられる円形の貫通孔201aと、貫通孔201aとプレート本体201の外周部との間に設けられる複数の流体用貫通孔201bと、流体用貫通孔201b間に形成される連通部201cとを有する。流体用貫通孔201bは、空間部151内において水素ガスの圧力分布が生じることを抑制するための貫通孔である。本実施例の支持プレート127(プレート本体201)において、連通部201cは、図2に示すように、3箇所に形成されている。なお、図2には、プレート本体201の中心軸Ttが示されている。プレート本体201において、流体用貫通孔201bを形成する内周部から中心軸Ttに向かう方向を径方向とも呼ぶ。
【0023】
支持プレート127(プレート本体201)は、上述したように、外周部の側面がカラー123とリング125に挟持されてロアボディ105側に止着されている。すなわち、支持プレート127の外周部がバルブボディ101の内壁に止着される構成となっている。
【0024】
支持プレート127のプレートゴム203は、弾性力を有するゴムから成り、プレート本体201の貫通孔201aに沿って形成される。具体的には、プレートゴム203は、図2に示すように、プレート本体201の連通部201cに対応する部分(以下では、対応部分J1とも呼ぶ)における径方向の長さL1が、連通部201c以外に対応する部分(以下では、対応部分J2とも呼ぶ)における径方向の長さL2よりも、短く凹状に形成されている。プレート本体201の径方向の剛性は長さL1が長さL1に比べ大きい。そのため、プレート本体201の軸方向の移動量は長さL2が長さL1より大きくなる。そして、プレートゴム203は、対応部分J2が弁体129(二点鎖線で示す)の側面に当接される。これにより、弁体129がバルブシート131のガス噴射孔137を開閉するべく中心軸方向に移動されるとき、プレートゴム203の対応部分J2は、同方向に弾性変形し、弁体129をガイドしつつ、同じ移動量を移動するため弁体129の開閉動作を許容する。また、プレートゴム203において、対応部分J1は、対応部分J2よりも径方向に短く形成されているので、移動量が小さくても弁体129に当接することがないため、弁体129の開閉動作を許容する。プレートゴム203は、本発明における「プレート弾性部材」に対応する。
【0025】
弁体129がスプリング141によって閉弁状態に置かれる場合において、支持プレート127には、ガス噴射孔137の開き方向(弁体129の上方向)に付勢力が作用する。これにより弁体129と支持プレート127とは接触状態が維持される。支持プレート127の付勢力は、スプリング141の付勢力に比べてはるかに小さく、スプリング141による弁体129の閉弁動作を損なうものではない。
【0026】
以上のように、本実施例の流体用制御弁100では、支持プレート127を設けているので、支持プレート127のこじれを抑制することができる。その結果、プレートゴムの磨耗を防止することができる。
【0027】
本実施例の流体用制御弁100におけるプレートゴム203は、対応部分J1で、弁体129の側面に当接しないように配置され、対応部分J2で、弁体129の側面に当接するように配置されている。このようにすれば、径方向に大きな応力がかかる対応部分J1が弁体129に当接しないので、支持プレート127のこじれがなくなり、プレートゴム203が局所的に摩耗することを抑制することができる。
【0028】
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
100…流体用制御弁
101…バルブボディ
103…アッパボディ
105…ロアボディ
105a…内側フランジ部
105c…筒孔
105側…ロアボディ
107…コア
107a…中空部
109…鍔付リング
111…ボビン
113…ソレノイドコイル
121…ストッパ
123…カラー
125…リング
127…支持プレート
129…弁体
129a…主部
129b…フランジ部
129c…バルブ部
129d…中空部
129h…貫通孔
131…バルブシート
133…シートボディ
135…シート
135a…座面
137…ガス噴射孔
140…シール部材
141…スプリング
151…空間部
201…プレート本体
201a…貫通孔
201b…流体用貫通孔
201c…連通部
203…プレートゴム
J1…対応部分
J2…対応部分
Tt…中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体用制御弁であって、
筒状で、かつ一端部に流体噴射孔を有し、流体を流通させるための流体流通空間を形成するバルブボディと、
前記バルブボディ内で移動して前記流体噴射孔を開閉する弁体と、
前記流体流通空間に配置され、前記弁体を支持する支持プレートであって、前記支持プレートの略中央に形成され前記弁体が挿入される中央貫通孔と、前記中央貫通孔と前記支持プレートの外周部との間に形成され前記流体流通空間で圧力分布が生じることを抑制するための圧力抑制貫通孔と、前記中央貫通孔に沿って配置されると共に、前記圧力抑制貫通孔間に形成される連通部に対応する部分で前記弁体の側面に当接しないように配置され、前記連通部に対応する部分以外の部分で前記弁体の側面に当接するように配置されるプレート弾性部材と、
を備えることを特徴とする流体用制御弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−261495(P2010−261495A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111958(P2009−111958)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】