説明

流動層炉からの不燃物抜出システム

不燃物抜出システム(302a)は、流動媒体(310)によって形成される流動層(312)を有する流動層炉(305)から不燃物を抜き出す。不燃物抜出システム(302a)は、流動媒体と不燃物とを混合させた混合物(310b)を流動層炉(305)の炉底(311)から移送する混合物移送経路(316)を有する。また、不燃物抜出システム(302a)は、混合物移送経路(316)の下流に位置し、混合物(310b)を流動化ガス(331)により流動させると共に、混合物を第1の分離混合物(310g)と第2の分離混合物(310f)とに分離する流動層分級室(390)を有する。不燃物抜出システム(302a)は、第1の分離混合物(310g)を流動層炉(305)内に還流させる還流通路(391,394)と、第2の分離混合物(310f)を流動層炉(305)の外部へ排出させる不燃物排出通路(392)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床式燃焼炉、流動床式ガス化炉、および、循環流動層ボイラのような流動層炉から不燃物を抜き出す不燃物抜出システムに関し、特に、都市ごみ、固形化燃料(RDF)、廃プラスチック、廃強化プラスチック(廃FRP)、バイオマス廃棄物、自動車廃棄物(ASR)、廃油等の廃棄物、または不燃分を含む固体燃料等(例えば石炭)の固体可燃物を燃焼、またはガス化、若しくは熱分解処理する流動層炉から不燃物を流動媒体と共に抜き出す不燃物抜出システムに関する。また、本発明は、かかる不燃物抜出システムと流動層炉とを備える流動層炉システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、不燃物抜出システム502と流動床式ガス化炉(流動層炉)505とを備えた従来の流動床式ガス化炉システム(流動層炉システム)501の模式的な断面図である。不燃物抜出システム502は、不燃物抜出シュート504と、不燃物抜出コンベヤ520と、ダブルダンパ518とを備える。流動床式ガス化炉505に投入された固体可燃物514は、流動床式ガス化炉505内で可燃物が部分燃焼あるいはガス化され不燃物が流動媒体510と共に流動層512内を旋回する。この不燃物と流動媒体510の混合物510aを、炉底511から自然流下させる垂直な、もしくは傾斜をもった不燃物抜出シュート504と、不燃物抜出シュート504と連結した不燃物抜出コンベヤ520とを経由して下流のダブルダンパ518へ移送させている。
【0003】
流動床式ガス化炉505は、炉底511から流動層512へ部分燃焼用空気524が供給され、350℃から850℃に保持された流動媒体510を内部で旋回流動させる流動層512が形成される。流動床式ガス化炉505に供給された固体可燃物514がこの流動層512に投入されると、熱せられた流動媒体510と部分燃焼用空気524に接触して速やかに熱分解ガス化され、ガス、タール、固形カーボンを生成する。
【0004】
流動層512で熱分解ガス化された熱分解ガスは流動層512上部の出口ダクト522より排出される。また、炉底511からは流動媒体510と不燃物の混合物510aが不燃物抜出シュート504へ排出される。ここで排出される流動媒体510には、硅砂の他に鉄、鋼、アルミニュームといった不燃物およびガス化工程で発生する未燃チャー分が含まれている。
【0005】
以上のような従来の流動床式ガス化炉システム501の流動床式ガス化炉505は、不燃物抜出シュート504から不燃物抜出コンベヤ520にかけて形成されている混合物移送経路516の気密状態を維持するシール性を確保することが重要である。すなわち、混合物移送経路516の気密状態部分のシール性が維持できなくなると、流動床式ガス化炉505内の未燃焼の可燃ガスや一酸化炭素等が流動床式ガス化炉505外に漏れ出し、爆発や人体に中毒を引き起こすという悪影響が懸念されるだけでなく、不燃物抜出シュート504に部分燃焼用空気524がリークすることによって、不燃物抜出シュート504内の流動媒体510中に混入している未燃分が燃焼、高温化し硅砂や灰分が溶解してクリンカを形成させる可能性が高まる。不燃物抜出コンベヤ520の出口に設けたダブルダンパ218は、このシール性を補うためのものである。
【0006】
また、不燃物抜出シュート504から不燃物抜出コンベヤ520にかけての混合物移送経路516のシール性が確保されている状態であっても、不燃物抜出シュート504の上方、すなわち、流動層512から不燃物抜出シュート504への入口近傍部分515においては、流動媒体510に混入して排出されようとする未燃チャーが拡散してきた部分燃焼用空気524と反応して燃焼、高温化し、同じくクリンカを形成するおそれがある。このクリンカは、不燃物抜出シュート504を閉塞させ、流動床式ガス化炉505の稼働率を低下させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、流動媒体と不燃物の混合物の不燃物濃度を高めて外部に抜き出すことのできる不燃物抜出システムを備えた流動層炉システムを提供することを第1の目的とする。
【0008】
また、本発明は、流動層炉システムの外への未燃ガスのリークを防止することのできる不燃物抜出システムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、流動媒体を内部で流動させて流動層を形成する流動層炉から不燃物を抜き出す不燃物抜出システムが提供される。不燃物抜出システムは、前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路を有する。不燃物抜出システムは、前記混合物移送経路の下流に位置し、前記混合物を流動化ガスにより流動させると共に、前記混合物を前記流動媒体の濃度が高い第1の分離混合物と前記不燃物の濃度が高い第2の分離混合物とに分離する流動層分級室を有する。不燃物抜出システムは、前記第1の分離混合物を前記流動層炉内に還流させる還流通路と、前記第2の分離混合物を前記流動層炉の外部へ排出させる不燃物排出通路とを含む。
【0010】
このように、不燃物抜出システムは、混合物移送経路と、流動層分級室と、還流通路と、不燃物排出通路とを備えるため、流動層分級室において、混合物移送経路により流動層炉の炉底から移送した流動媒体と不燃物とを混合させた混合物を流動化ガスにより流動させ、混合物中の流動媒体と不燃物との濃度分布を変化させ、混合物を流動媒体の濃度が高い第1の分離混合物と前記不燃物の濃度が高い第2の分離混合物とに分離し、第1の分離混合物を貫流通路により流動層炉へ還流させ、第2の分離混合物を不燃物排出通路により流動層炉の外部へ排出させることができる。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、前記不燃物排出通路は、前記流動層分級室の下流に設けられている、前記不燃物排出通路は、前記第2の分離混合物を垂直上方に移送し、前記流動層の界面よりも高い位置から前記第2の分離混合物を前記流動層炉の外部へ排出させてもよい。このような不燃物排出通路により、第2の分離混合物を上方に移送させ、流動層の界面よりも高い位置から第2の分離混合物を流動層炉の外部へ排出することができる。
【0012】
本発明の好ましい態様によれば、不燃物抜出システムは、前記不燃物排出通路内で前記第2の分離混合物を垂直方向へ移送させる流動媒体移送装置をさらに有する。あるいは、不燃物抜出システムは、前記不燃物排出通路内で前記第2の分離混合物を水平面に対して前記流動媒体の安息角以上の角度で移送させる流動媒体移送装置をさらに有していてもよい。このような流動媒体移送装置により、第2の分離混合物を垂直若しくは水平面から流動媒体の安息角以上の角度で上方へ移送させることができる。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、前記流動層分級室は、前記不燃物排出通路に接続される通路部を有する。前記通路部は、前記不燃物排出通路方向に進むほど徐々に断面積が増大し、前記通路部の底面は、前記不燃物排出通路に向けて下方に傾斜する。このように構成すると、通路部により第1の分離混合物と第2の分離混合物とを効率良く分離させることができる。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、流動媒体を内部で流動させて流動層を形成する流動層炉から不燃物を抜き出す不燃物抜出システムが提供される。不燃物抜出システムは、前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路を有する。不燃物抜出システムは、前記混合物移送経路の下流に位置し、前記混合物を垂直上方に移送し、前記流動層の界面よりも高い位置から前記混合物を前記流動層炉の外部へ排出させる不燃物排出通路を有する。
【0015】
このように、不燃物抜出システムは混合物移送経路と不燃物排出通路とを備えるため、混合物移送経路により流動層炉の炉底から移送した流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を、不燃物排出通路により上方に移送させ流動層の界面よりも高い位置から流動層炉の外部へ排出することができる。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、流動媒体を内部で流動させて流動層を形成する流動層炉から不燃物を抜き出す不燃物抜出システムが提供される。不燃物抜出システムは、前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路を有する。不燃物抜出システムは、前記流動層分級室の下流に設けられた不燃物排出通路と、前記不燃物排出通路内で前記混合物を垂直方向へ移送させる流動媒体移送装置とを有する。不燃物抜出システムは、前記不燃物排出通路の内面から径方向内側に突出する凸部を有する。このような構成により、前記混合物の周方向の回転は抑制され、スクリューと共回りすることなく安定な搬送を維持することができる。
【0017】
本発明の第4の態様によれば、流動媒体を内部で流動させて流動層を形成する流動層炉から不燃物を抜き出す不燃物抜出システムを提供する。不燃物抜出システムは、前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路を有する。不燃物抜出システムはまた、前記流動層分級室の下流に設けられた不燃物排出通路と、前記不燃物排出通路内で前記混合物を前記流動層炉の外部へ垂直上方に移送するスクリュー翼を有するスクリューコンベアとを有する。前記スクリューコンベアは、前記スクリュー翼の裏面に設けられたブロック部材を有する。
【0018】
本発明の第5の態様によれば、流動媒体を内部で流動させて流動層を形成する流動層炉から不燃物を抜き出す不燃物抜出システムが提供される。不燃物抜出システムは、前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路を有する。不燃物抜出システムは、前記流動層分級室の下流に設けられた不燃物排出通路と、前記不燃物排出通路内で前記混合物を垂直方向へ前記流動層炉の外部へ移送させる流動媒体移送装置とを有する。不燃物抜出システムは、前記流動媒体移送装置の下部からガスを吹き込み、前記流動媒体移送装置の下部の圧力を上げる吹き込み装置を有する。
【0019】
本発明の第6の態様によれば、流動媒体を内部で流動させて流動層を形成し、不燃物含有物を燃焼、ガス化、または熱分解する流動層炉を有する流動層炉システムが提供される。流動層炉システムは、上述した不燃物抜出システムを有する。このように構成すると、第1の分離混合物3を流動層炉へ還流させ、第2の分離混合物を流動層炉の外部へ排出させることができる。
【0020】
本発明の上述した目的ならびにその他の目的および効果は、本発明の好ましい実施形態を一例として図示した添付図面と照らし合わせれば、以下に述べる説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態における不燃物抜出システムを図2から図13を参照して説明する。
【0022】
図2は、本発明の第1の実施の形態としてのガス化システム(流動層炉システム)301の模式図である。流動層炉システム301は、流動媒体310を収容する流動層炉305と不燃物抜出システム302aとを備える。流動層炉305は、グランドに対して鉛直方向に立設された円筒形もしくは矩形容器である。不燃物抜出システム302aは、流動層炉305の下方に設けられた混合物移送経路316と、この混合物移送経路316の下流に位置する流動層分級室390と、流動層分級室390の上方に設けられた還流通路としての流動媒体上昇室391と、流動層分級室390の下流に設けた第1の不燃物排出通路としての立ち上がり室392と、流動媒体上昇室391の下流に設けた還流通路としての流動媒体戻し通路394と、を備える。混合物移送経路316は、流動層炉305の炉底311に接続され鉛直方向に配置された不燃物抜出シュート307と、不燃物抜出シュート307に接続され水平に配置された混合物水平移送経路316dを備える。
【0023】
流動層炉305は、被処理物としての可燃性廃棄物314を上部の投入口308から内部へ投入し、この可燃性廃棄物314を燃焼させる燃焼温度を有する高温の流動媒体310を炉底311から吹き込む燃焼用空気324により流動させ旋回流動306を起こし濃厚な旋回流動層312を形成する。この旋回流動層312の中で可燃性廃棄物314の燃焼を行う。可燃性廃棄物314は、例えば、都市ごみ、固形化燃料(RDF)、廃プラスチック、廃強化プラスチック(廃FRP)、バイオマス廃棄物、自動車廃棄物(ASR)、廃油等の廃棄物、または不燃分を含む固体燃料等(例えば石炭)の可燃物である。
【0024】
この流動層炉305に投入された可燃性廃棄物314は、流動層炉305内で完全燃焼される。完全燃焼した可燃性廃棄物314は、流動媒体310と不燃物が混合した混合物310aを形成し、混合物310aは流動層炉305の炉底311から抜き出され混合物移送経路316を経由して流動層分級室390へ移送される。可燃性廃棄物314の完全燃焼により発生するガスは、流動層炉305の上部に設けた出口ダクト322から排気され、例えば、次段の溶融炉システムへ供給される。
【0025】
混合物移送経路316は、流動層炉5の炉底311から流下した混合物310aを、混合物移送経路316の混合物水平移送経路316d内に配置されたスクリューコンベヤ(図示せず)により、混合物310bとして気密状態で流動層分級室390へ移送する。
【0026】
流動層分級室390内の混合物310bは、外部から供給口330を介して流動化ガス331(例えば、酸素を含まない不活性ガス)により、流動媒体310の濃度が高い第1の分離混合物310gと、不燃物濃度が高い第2の分離混合物310fとに分離される。第1の分離混合物310gは流動媒体上昇室391を流動化ガス331とともに上昇し、流動媒体排出口393から流動媒体戻し通路394を経由して流動層炉305の還流口393aへ移送され、流動層炉305のフリーボード部332に供給される。流動層分級室390に供給される流動化ガス331は第1の分離混合物310g中の未燃分濃度が十分に低い場合は空気等の酸素含有ガスでもよい。
【0027】
また、流動媒体上昇室391から排気されるガスは、流動媒体上昇室391の頂部に設けられた流動化ガス排気口397から排出され、配管を介して流動層炉305のガス還流口396へ移送し流動層炉305のフリーボード部332に供給される。この流動媒体上昇室391の排気ガスは、2次燃焼用ガスとして流動層炉305内部で有効に利用される。勿論、排気口397と流動媒体排出口393は共通としてもよい。したがって、この場合は、ガス還流口396と還流口393aも共通にすることができる。
【0028】
このように流動媒体上昇室391と流動層炉305のフリーボード部332が連通しているため、流動層炉305と流動媒体上昇室391は互いに極端な圧力差が生じることを防止できるという利点がある。
【0029】
さらに、流動層分級室390に併設された第1の不燃物排出通路としての立ち上がり室392に流下した第2の分離混合物310fは、例えば、流動媒体移送装置としての垂直移送のスクリューコンベヤ378により立ち上がり室392内部を上昇し不燃物排出口317から不燃物360として外部へ排出され、または次段の溶融炉(図示せず)の処理システムへ移送される。ここで、図示した立ち上がり室9392は、グランドに対して鉛直方向に90°の角度で立設して構成している。
【0030】
本実施の形態では、従来のように不燃物を単に下方に抜き出すだけでなく上方に方向転換して抜き出すように構成している。また、ダブルダンパ等の機械的シール手段を設けることなく流動層炉305の炉内ガスまたは燃焼用空気324が不燃物抜出シュート307内へリークすることを確実に防止できる。
【0031】
また、本実施の形態の流動層炉システム1は、抜き出される不燃物と流動媒体310が混合した第2の分離混合物310f中の不燃物割合を30%から50%以上の割合へと飛躍的に増大させることができる。また、不燃物の割合が20%を超えるようなシュレッダーダストなどを投入して大量の不燃物を流動媒体310ともに流動層炉305の外部へ抜き出す場合であっても第2の分離混合物310f中の不燃物の割合を増大させることができる。
【0032】
また、本実施の形態によれば、例えば、クリンカの発生を防止するために不燃物抜出シュート307を通過する流動媒体310を冷却する冷却システム(図示せず)を追加したりすることができる。このようにすると、熱ロスによる熱回収率の低下を招いたり、それに伴う不燃物抜出シュート307の下流部での高温流動媒体によって引き起こされるトラブルを防止し、補助燃料消費量の増大等の種々の弊害を有効に防止することができる。さらに、大量の流動媒体310を完全に不燃物抜出シュート307の下流に問題が生じないレベルにまで冷却することができる。
【0033】
図3Aおよび図3Bは、本発明の第2の実施の形態としてのガス化システムにおける不燃物抜出システム302aの模式図である。図3Aは平面水平断面図、図3Bは、側面断面図である。不燃物抜出システム302aは、混合物移送経路316と、混合物排出口316aと、混合物排出口316aの下流に設けた流動層分級室390と、流動層分級室390の上方に設けた還流通路としての流動媒体上昇室391と、流動層分級室390の下流に設けた第1の不燃物排出通路としての立ち上がり室392と、を備える。
【0034】
混合物移送経路316は、例えば粒径が約数十μmから数mmの流動媒体10と短径が約数mmから200mmの不燃物との混合物310bが流動層炉の炉底(図示せず)から抜き出される。混合物310bは、混合物移送経路316に回転可能に支持されたスクリューコンベヤ320により次段の流動層分級室390へ混合物排出口316aを介して移送される。
【0035】
流動層分級室390に供給された混合物310bは、粉粒体として流動層分級室390の内部で流動され流動層を形成する。流動層分級室390内で、流動層の上部では流動媒体310の濃度が高くなり、流動層の下部では不燃物の濃度が高くなるように、混合物310b中の流動媒体310と不燃物との濃度分布を変化させ、流動媒体の濃度が高い第1の分離混合物310gと不燃物の濃度が高い第2の分離混合物310fとに分離する。
【0036】
流動層分級室390は、さらに流動媒体310の濃度が高い第1の混合物310gを流動媒体上昇室391を経由させ、そのまま流動層炉(図示せず)内に還流させると共に、不燃物の濃度が高い第2の混合物310fを、立ち上がり室392を経由させて流動層炉(図示せず)の外部に排出する。
【0037】
不燃物抜出システム302aの流動層分級室390は、通路部390cを有し、通路部390cの底面390bが立ち上がり室392に向かって下方に傾斜しており、その底面390bには流動化ガス分散ノズルとしての上部に位置する供給口330と下部に位置する供給口330aが設けられており、この供給口330、330aを介して酸素を含まないガスである水蒸気が流動化ガス331として流動層分級室390の内部に吹き込まれる。流動化ガス331は、酸素を含まないガスである炭酸ガスであってもよい。
【0038】
ここで、流動化ガス331として酸素を含まないガスを用いるのは、この流動化ガス331が流動層炉(図示せず)側に逆流しクリンカを発生させるという不具合を未然に防止するためである。したがって、流動層分級室390に供給される流動化ガス331は、流動媒体中の未燃分濃度が十分に低い場合は空気等の酸素含有ガスでもよい。
【0039】
流動化ガス331としての水蒸気は、流動層分級室390において、流動媒体のロックを防止するため流動媒体の終端速度以上の速度が維持されるようにブロア(図示せず)等の吹き込み装置により供給口330、330aから流動層分級室390内部へ供給される。流動層分級室390における流動媒体310dと不燃物310cとの分級効果を十分に高めたい場合は、流動媒体の速度が最低流動化速度以上に維持されるよう流動化ガス331を供給するとよい。この流動媒体の流動化によって、不燃物310cは流動層分級室390の底面390b側に移動し、流動媒体310dは流動層分級室390の上部に緩やかに移動して、流動媒体310dと不燃物310cとが分離する。
【0040】
すなわち、流動層分級室390において通路部390cの底面390b近傍の混合物310b(流動媒体310dと不燃物310cとの混合物)中の不燃物濃度が相対的に高くなり、不燃物310cが濃縮される。また、供給口330、330aから吹き込まれる流動化ガス331に不燃物310cが直接接触するため不燃物310cは急速に冷却される。流動化ガス331に最初に接する通路部390cの底面390bの近傍に流動している不燃物310cが最も冷却される対象となる。
【0041】
流動層分級室390の上部に集められた流動媒体310dを含む第1の混合物310gは、供給口330、330aから吹き込まれる流動化ガス331の上昇流に伴って、流動層分級室390の上方に設けられた流動媒体上昇室391中を上昇する。この流動媒体上昇室391の上部には流動媒体排出口393が設けられており、流動媒体上昇室391を上昇した流動媒体310eを含む第1の混合物310gは、流動媒体排出口393から排出され、還流口(図示せず)を経由して流動層炉(図示せず)へ還流する。
【0042】
また、流動媒体排出口393の手前には、ある一定の高さまで噴き上がった流動媒体のみが排出されるように堰395が設けられている。この堰395は、流動媒体排出口393、流動媒体310eを含む第1の混合物310gを充満させておく効果があり、排出先である流動層炉(図示せず)との圧力バランスを保つ効果も有する。これは流動媒体上昇室391の圧力を流動層炉(図示せず)の圧力と独立して制御する必要がある場合に有効である。
【0043】
一方、通路部390cの底面390b近傍の不燃物310cは、濃縮された流動媒体310と不燃物310cとを含む第2の混合物310fとして、通路部390cの底面390bに沿って立ち上がり室392に供給される。通路部390cの立ち上がり室392までの経路は、図3Aに示すように、立ち上がり室392の底部に向けて垂直断面積が徐々に大きくなる通路部を構成する。
【0044】
すなわち、混合物310b中の不燃物濃度が高まった流動媒体が、仮にブリッジトラブルを引き起こした場合であっても、流動層分級室390からスムーズに立ち上がり室392へ流入させるように構成している。また、通路部390cの高低差と断面差により立ち上がり室392から第2の混合物310fが流動層分級室390へ逆流することも有効に防止することができるという利点がある。
【0045】
立ち上がり室392には、第2の混合物310fを上方に移動せしめる流動媒体移送装置としてのスクリューコンベヤ378が設けられている。この流動媒体移送装置は、例えば、スクリューコンベヤ378のように搬送効率が100%ではなく、立ち上がり室392内に第2の混合物310fを充満させた状態で移動させる形式のものが望ましい。
【0046】
つまり、立ち上がり室392内が流動媒体を含む第2の混合物310fで充満されていないと外部の圧力とのシール性が悪化するため、供給口330から流動層分級室390に供給した流動化ガス331が立ち上がり室392の方へ流入してしまい、分級が阻害されるだけでなく、流動層分級室390の圧力保持が困難になり流動層炉(図示せず)内のガスが流動層分級室390に向けて流入し、ひいては立ち上がり室392を経由して外部にガスが漏れ出すおそれがあるためである。
【0047】
立ち上がり室392の上部には、不燃物排出口317が設けられている。不燃物排出口317の最下部の位置317aは立ち上がり室392に要求される層高さに応じて自由に設定できる。立ち上がり室392に要求される層高さとは、例えば、流動層分級室390内の圧力を要求される所定の値に保持するのに必要とされるシール性を発揮できる流動媒体充填層の高さを示し、流動層炉の界面(図示せず)の高さ以上の高さである。以下、不燃物排出口317の最下部の位置317aの高さを、不燃物排出口317の高さという。
【0048】
流動層分級室390に要求される所定の圧力とは、上流に接続された装置によって異なるが、本実施の形態の不燃物抜出システム302aを用いる流動層炉システムの流動層炉(図示せず)の場合は、流動層炉の炉底近傍に位置する不燃物抜出部(図示せず)の圧力よりも高い値のことをいう。もちろん不燃物排出口317の高さは、立ち上がり室392に要求される層高さ以上であればいくらでもよい。
【0049】
不燃物排出口317の高さは、上述した流動媒体充填層の高さに限定されるものではなく、それ以上の高さに設定してもよい。例えば、流動層分級室390の床面390aから鉛直方向に1mの高さの位置392aより高い位置であって、流動媒体充填層の高さより高い位置に設定することもできる。
【0050】
このように外部とのシール性の強さを不燃物排出口317の高さにより任意に設定できるため、これまで設計面で制約のあった流動層炉(図示せず)の層高さの設計自由度をさらに拡大させることができる。したがって例えば、流動層炉システム(図示せず)のスケールアップ等に大きな自由度をもたらす。
【0051】
また、立ち上がり室392は、図3Bに示すように鉛直方向に向けて90°の角度で立ち上がって立設しているとよい。搬送効率を確保するためには、好ましくは80°以上、さらに、好ましくは70°以上、最も好ましくは60°以上の角度で傾いていてもよい。立ち上がり角度を小さくすると流動媒体および不燃物の搬送効率を高くすることができ、搬送効率は角度60°で15〜20%である。但し、立ち上がり室392があまりに傾くと流動媒体移送装置としてのスクリューコンベヤ78の機長が長くなるため合理的ではない。
【0052】
一方、立ち上がり室392の傾き角度は、流動媒体の分級効果を確保するためには鉛直方向に向けて流動媒体の安息角(35°)以上、好ましくは60°以上、さらに好ましくは70°以上、最も好ましくは80°以上とするとよい。
【0053】
さらに、スクリューコンベヤ378を用いる場合は、上方に位置する片持釣下部の軸シール部に流動媒体310が流入し損傷させることを防止するためは、立ち上がり室392の傾きを図示するように可能な限り90°に近づけて設定することが望ましい。
【0054】
上記スクリューコンベヤ378は、スクリュー軸を垂直にした場合、コンベヤ軸の上部のみを立ち上がり室392の頂部に位置決めをし、スクリュー軸を鉛直下方にぶら下げるように構成する。このように構成することで、第1に、立ち上がり室392下部の軸シールが不要になる。第2に、熱膨張等があってもスクリュー軸にかかる力は引っ張り応力だけになる。第3に、スクリュー軸の下方端は遥動自在なため、仮に硬い大きな不燃物がスクリューに噛みこむようなことが生じても、スクリュー軸の撓みの許容分だけスクリュー軸が逃げるスペースを確保することができるという種々の利点がある。
【0055】
流動層分級室390は、不燃物と流動媒体310の混合物310bを受容し、不燃物と流動媒体を分級する。分級した不燃物濃度の高い第2の混合物310fは、立ち上がり室392を上昇し上方に設けた不燃物排出口317から不燃物360として排出され、次段の溶融炉等(図示せず)へ移送する一連のプロセスを形成させる。
【0056】
このプロセスは、立ち上がり室392のスクリューコンベヤ378の移送量を制御するだけで流動層分級室390における不燃物濃度の濃縮率を調整できる。すなわち、立ち上がり室392のスクリューコンベヤ378の移動量(回転数)を減らすことによって流動層分級室390における不燃物濃縮率を高めることができるのである。さらにスクリューコンベヤ378のスクリューとケーシングとのクリアランスを流動媒体の最大径(0.8mm)の3倍以上とすることにより、当該クリアランスを通って流動媒体が下方へ滑り落ちることによる不燃物濃縮効果も期待できる。このクリアランスを適切に設定することで、従来流動層炉への流動媒体の補充は適切に選定された篩目を通過した流動媒体のみで行うのであるが、この篩工程を省略することもできる。
【0057】
流動層炉内の流動媒体310中の不燃物割合は一般に約3%から約5%であるが、この不燃物の濃度は、不燃物が炉底311に堆積して旋回流動層312の健全性を失わせることの無いようにするための濃度とみなせる。一方、スクリューコンベヤ378等の機械的手段で適切に流動媒体310を抜き出せる不燃物濃度は、被処理物314(固体可燃物)として都市ごみを流動層炉305へ投入した場合に約20%である。破砕等で不燃物の性状(大きさ、形状)を調節することで、約30%から50%といった高濃度で抜き出すことも可能である。
【0058】
したがって、本実施の形態では、流動層分級室390で不燃物を濃縮することで系外への不燃物と流動媒体が混合した第2の混合物310fの排出量を従来に比して10分の1、もしくはそれ以下の量にまで減らすことが可能になる。しかも、流動層炉系外に第2の混合物310fを抜き出す量が減少し、冷却されているということは流動媒体冷却システムが簡素化できる他に、外部に放出する熱量が減少するため、流動層炉システム全体の熱回収効率改善の点からも好ましい。
【0059】
上述したように立ち上がり室392のスクリューコンベヤ378の移送量(回転数)を減じると、流動媒体と不燃物との第2の混合物310fが流動層分級室390側へ逆流する割合が多くなることが懸念されるが、その場合は流動層分級室390の圧力を立ち上がり室392の圧力より高めることによって第2の混合物310fの逆流を抑制することができる。
【0060】
流動層分級室390の圧力を高めるためには、流動媒体上昇室391の側部から供給する流動化ガスの流量を減じ、流動媒体上昇室391内の希薄流動層の空隙率を下げればよい。また流動層分級室390において通路部390cの底面390bから供給口330、330aを介して供給している流動化ガス331の速度が最低流動化ガス速度以下になるよう供給量を減少させることでも流動層分級室390の流動層の粘性が高まるので逆流抑制に導くことができる。
【0061】
図4Aおよび図4Bは、本発明の第3の実施の形態としての流動層炉システム301の概略図である。図4Aは流動層炉システム301の正断面図であり、図4Bは流動層炉システム301の側断面図である。
【0062】
流動層炉システム301は、流動媒体310を収容する流動層炉305と、不燃物抜出システム302aとを備える。流動層炉305の内部には、流動媒体310を旋回流動306させる旋回流動層312が形成されている。不燃物抜出システム302aは、旋回流動層312の炉底311の下方に設置された混合物移送経路316と、混合物移送経路316の移送終端に設けられた流動層分級室390と、流動層分級室390の上部に立設された還流通路としての流動媒体上昇室391と、流動層分級室390の下流に設けられた第1の不燃物排出通路としての立ち上がり室392と、を備える。流動層分級室390は、通路部390cを有し、通路部390cは底面390bを有する。通路部390c、底面390bは、第2の実施の形態と同様に形成されている。
【0063】
流動層炉305の内部に投入された被処理物としての可燃性廃棄物(図示せず)中の不燃物を流動媒体310とともに混合物移送経路316を経由させ流動層炉305の外へ排出する。この混合物移送経路316にはスクリューコンベヤ320が略水平に設置されており、不燃物と流動媒体310との混合物を流動層分級室390へと導くことができる。
【0064】
混合物移送経路316内部のスクリューコンベヤ320は、回転自在に支持されその下方から流動媒体の冷却用ガス340が供給されている。この冷却用ガス340は、典型的には蒸気が用いられるが、流動媒体中に未燃分が殆ど含まれない場合には空気等の酸素含有ガスを用いてもよい。
【0065】
この冷却用ガス340は、旋回流動層312の上部の高温流動媒体310と混合しないように最低流動化速度以下の流量で供給される。但し、スクリューコンベイヤ320の部分での分級機能を強化するために最低流動化速度の2ないしは3倍程度までの供給速度で冷却用ガス340を供給することも有効である。このように旋回流動層312の下部の流動媒体310を冷却することは、スクリューコンベヤ320を冷却することを避ける意味もある。
【0066】
すなわち、スクリューコンベヤ320を冷却するとスクリューの表面で水分が凝縮するという問題が生じるからである。一方、不燃物の濃度が高く、不燃物と流動媒体310との混合物を流動層炉305から大量に抜き出す場合は、冷却用ガス340に代えて水をスクリューコンベヤ20の下方から供給してもよい。
【0067】
流動層分級室390は、上述した如く底面390bから供給される流動化ガス331によって不燃物を底面390b側に移動させ、流動媒体310を不燃物の上部に移動させて両者を緩やかに分離する。流動層分級室390の上部に集められた流動媒体310を主成分とした第1の混合物310gは、流動化ガス331の上昇流に伴って流動層分級室390の上方に設けられた流動媒体上昇室391に移動する。この流動媒体上昇室391を上昇した第1の混合物310gは流動媒体上昇室391内部の堰395aおよび堰395bのループシール部を超えて流動層炉305の上部に設けられた還流口393aを経由し流動層炉305へ還流される。
【0068】
上記還流口393aと流動媒体上昇室391との接続部分の最下位391aの高さは、上述した流動層炉305の旋回流動層312の圧力変動を受けないように濃厚流動層の界面(旋回流動層312の上部表面)よりも上方に配置している。流動媒体排出口393aの流動媒体上昇室391側には堰395aおよび堰395bが設けられている。この堰395aと堰395bは、流動媒体排出口393aに流動媒体を主成分とした第1の混合物310gを充満させておく効果があり、流動層炉305内部の圧力との圧力差をシールし、流動層炉305内のガスが流動媒体上昇室391側に流入することを防止する効果をも有する。
【0069】
流動媒体上昇室391は、流動媒体を主体とする第1の混合物310gの噴き上がりを促進するための手段として、例えば、流動媒体上昇室391の側面に流動媒体上昇用の流動化ガス398の分散ノズルを設けることができる。この流動媒体上昇用の流動化ガス398により、流動媒体上昇室391を流れる流動化ガスの流動化速度を所望の値に増減し、第1の混合物310gの流動媒体上昇室391を上昇する上昇量を調整することができる。
【0070】
第1の混合物310gは、流動媒体上昇室391内部の流動化速度を高めれば高めるほど流動媒体上昇室391内部の流動媒体の濃度が希薄になるため、流動層分級室390の部分での大きな圧力上昇を招くことなく第1の混合物310gをより高く上昇させることが可能になる。
【0071】
また、流動媒体上昇室391の上部には、上述した如く流動化ガス排出口397が設けられており、流動層分級室390において通路部390cの底面390bから供給された流動化ガス331、および流動媒体上昇室391の側面から供給された流動化ガス398が流動化ガス排出口397から排出される。もちろんこの流動化ガス331、398は上述した流動層炉305の2次燃焼用ガスとして用いてもよく、その場合は、流動媒体還流口393aを共通の経路とすることができる。この場合、少なくとも堰395bは不用となる。
【0072】
流動媒体上昇室391の側部から供給される流動化ガス398は、上述した流動層分級室390において通路部390cの底面390bから供給される流動化ガス331と同種のガスでもよく、後述する空気等の酸素を含むガスを用いてもよい。
【0073】
ここで酸素含有ガスを用いてよい理由は、流動媒体上昇室391の側部から供給された流動化ガス398は、よほど圧力バランスが崩れるようなことが無ければ決して流動媒体上昇室391の下方へ流れることはないので、酸素含有ガスであっても混合物のクリンカトラブルを引き起こす要因には成り得ないからである。
【0074】
このように、流動媒体上昇室391の側部からは酸素含有ガスを供給することが出来るので、第1の混合物310g中にチャーなどの未燃分が含まれる場合でも流動媒体上昇室391の中で燃焼させることが出来るため、流動媒体のクリーンナップ効果や未燃ロス減少の効果も期待できる。しかも、第1の混合物310g中の未燃分の燃焼によって高温になった流動媒体を流動層炉305内にそのまま還流せることができるため流動層炉305の熱効率向上にもプラスに作用する。
【0075】
一方、流動層分級室390の通路部390cの底面390b近傍において不燃物が濃縮された、流動媒体と不燃物とが混合した第2の混合物310fは、通路部390cの底面390bに沿って立ち上がり室392に供給される。立ち上がり室392の内部には、流動媒体と不燃物の第2の混合物310fを上方に移動せしめる例えば、スクリューコンベヤ378のような流動媒体移動手段を設け、立ち上がり室392の上部に設けられた不燃物排出口317から第2の混合物310fを不燃物360として排出する。
【0076】
不燃物排出口317の最下部の位置317aは、立ち上がり室392に要求される層高さに応じて自由に設定できる。立ち上がり室392に要求される層高さとは、流動層分級室390内の圧力を流動層炉305の混合物移送経路316の内部圧力よりも高く保持するのに必要とされるシール性を発揮できる流動媒体充填層の高さである。典型的には、流動層炉305の旋回流動層312(濃厚流動層)の界面の高さよりも高位置に設定すればよい。
【0077】
不燃物排出口317の高さは、上述した流動媒体充填層の高さに限定されるものではなく、それ以上の高さに設定してもよい。例えば、流動層分級室390の床面390aから鉛直方向に1mの高さの位置392aより高い位置であって、流動媒体充填層の高さより高い位置に設定することもできる。
【0078】
このように外部とのシール性の強さを不燃物排出口317の高さにより任意に設定できるため、これまで設計面で制約のあった流動層炉305の層高さの設計自由度をさらに拡大させることができる。したがって、例えば、流動層炉システム301のスケールアップ等に大きな自由度をもたらす。
【0079】
立ち上がり室392は、その流動媒体移送装置としてのスクリューコンベヤ378の流動媒体移動量(回転速度)を減じることによって外部に排出する第2の混合物310fの不燃物濃度を高めることができる。この場合、立ち上がり室392内部の第2の混合物310fが流動層分級室390側へ逆流する割合が多くなることが懸念される。
【0080】
この逆流を防止するためには、流動媒体上昇室391の側部から供給している流動化ガス398の流量を減じ、流動媒体上昇室391内部の希薄流動層の空隙率を下げ、流動層分級室390の圧力を高めること等が有効である。また、混合物移送経路316に設けられたスクリューコンベヤ320の移動速度(回転速度)を増速することによっても流動層分級室390の圧力を高めることができるので有効である。
【0081】
本実施の形態の流動層炉システム301では、不燃物濃度を高めた第2の混合物310fを抜き出すことで、系外に抜き出す、不燃物と流動媒体とが混合した第2の混合物310fの排出量を重量比で従来の10分の1、もしくはそれ以下の量にまで減らすことができる。
【0082】
しかも抜き出される、不燃物と流動媒体との第2の混合物310fは、流動層分級室390で流動化ガス331に接触し直接冷却されているため、系外に抜き出す第2の混合物310fの量が減少し、しかも冷却されているという二重の効果が期待することができ、流動媒体を冷却する流動媒体冷却システムを簡素化できるだけでなく、外部に放出する熱量を減少させて、流動層炉システム301全体の熱回収効率を改善する点からも好ましい。
【0083】
本実施の形態の他の有利な点は、従来方式のように不燃物排出口が流動層炉よりも下方に設けられているわけではないので流動層炉305の設置レベルを従来に比して低くすることができ、グランドにピットを掘ることなく容易に設置高を低くすることができる。
【0084】
このように流動層炉305の据付期間を短縮させ、据付構造をコストを低減させ、据付構造を簡易なものとすることができるのはもちろん、流動層炉305の据付レベルに伴って据付レベルを下げることの出来る給塵系、すなわち被処理物としての可燃性廃棄物(図示せず)を流動層炉305へ供給する供給系を始めとする全ての機器に影響し、設備全体の建設期間を大幅に短縮し、建設コストを大幅に低下させることができる。
【0085】
図5は、本発明の第4の実施の形態としての流動層炉システム301の模式的な系統図である。流動層炉システム301は、流動層炉305と不燃物抜出システム302aとを備える。不燃物抜出システム302aは、混合物移送経路316と、流動層分級室390と、還流通路としての流動媒体上昇室391と、第1の不燃物排出通路としての立ち上がり室392とを備える。さらに流動層炉システム301は、流動層炉305の上部圧力と炉底圧力に基づき流動層の層高を測定する第1の差圧計406と、流動層炉305の下流に配置した流動層分級室390の圧力を測定する圧力検出器415と、流動層炉305の炉底圧力と流動層分級室390の圧力に基づきシール差圧を測定する第2の差圧計413と、温度制御装置416に接続され冷却用ガス340を流動層炉305の下方に配置した混合物移送経路316へ供給する第1の制御バルブ420と、流動層分級室390の圧力検出器415に接続され流動化ガス331を流動層分級室390において通路部390cの底面390bへ供給する第2の制御バルブ418と、第2の差圧計413に接続され流動化ガス398を流動媒体上昇室391の側部へ供給する第3の制御バルブ412と、流動化ガス398を流動媒体上昇室391の上部に設けられた堰395bの近傍へ供給する第4の制御バルブ408と、流動層分級室390内の流動媒体温度を制御する温度制御装置416と、流動層炉305の炉底から流動媒体を抜き出す、回転自在に支持されたスクリューコンベヤ320と、このスクリューコンベヤ320を駆動する駆動モータ400と、温度制御装置416および流動層分級室390の圧力検出器415から制御信号を受けて駆動モータ400の回転数を制御する第1の回転数制御装置419と、流動層分級室390の下流に配置した立ち上がり室392内に回転自在に支持された流動媒体移送装置としてのスクリューコンベヤ378と、このスクリューコンベヤ378を駆動する駆動モータ401と、駆動モータ401の回転数を制御する第2の回転数制御装置402と、を備える。以下、図5を参照し、流動層炉システム301の動作について説明をする。
【0086】
第1の差圧計406は、流動層炉305の上部圧力を測定する第1の圧力検出器404と流動層炉305の炉底圧力を測定する第2の圧力検出器407とに接続され、第1および第2の圧力検出器404、407から送信される流動層炉5の上部圧力と炉底圧力に基づき流動層の層高を測定する。
【0087】
第2の差圧計413は、第2の圧力検出器407および第3の圧力検出器415から送信される炉底圧力と分級室圧力に基づきシール圧を測定するとともに、この測定データに基づき第3の制御バルブ412の開閉制御を実行する。
【0088】
第3の圧力検出器415は、流動層炉305の炉底から抜き出され流動媒体を受容する流動層分級室390の圧力を測定すると共に、第2の制御バルブ418の開閉制御を実行する。
【0089】
回転数制御装置419(SIC1)は、駆動モータ400に回転数制御信号を送信し駆動モータ400を回転させ、回転軸を水平方向に設定したスクリューコンベヤ320を回転制御する。
【0090】
温度制御装置416(TIC1)は、スクリューコンベヤ320の移送終端から流動層分級室390へ入る部分411の流動媒体の温度を検出し、この検出信号に対応する開閉制御信号を第1の制御バルブとしての制御バルブ420(CV1)へ送信し、スクリューコンベヤ320の底部に複数設けた供給口から供給される流動媒体の冷却用ガス340の供給量を制御する。
【0091】
この制御された冷却用ガス340により、流動層分級室390へ入る部分411の流動媒体温度を450℃以下に保つように制御する。本実施の形態において冷却用ガス340として蒸気を用いるとよい。また、冷却用ガス340として蒸気に代えて水を用いる場合も同様の制御方法を適用することができる。もちろん流動媒体中の未燃カーボン量が少ない場合は、冷却用ガス340として空気や燃焼排ガスのような酸素を含んだガスを用いてもよい。
【0092】
差圧計413(DPIA2)は、圧力検出器407(PIR2)を通じて取得する旋回流動層内部409の圧力と、圧力検出器415(PIR3)を通じて取得する流動層分級室390へ入る部分410の圧力とを減算器414を通じて差圧を入力し、流動層分級室390へ入る部分410の圧力(PIR3)が常に旋回流動層内の炉底圧力(PIR2)よりも高く維持されるように制御バルブ412(CV3)を制御する。
【0093】
すなわち、流動層炉305と流動層分級室390の圧力は常に差圧計413により監視されている。流動層分級室390へ入る部分410の圧力維持は、主に流動媒体上昇室391の側部から供給される流動化ガスの制御バルブ412を調節し、ガス流量を減少させて調整される。本実施の形態では流動化ガス398として空気を用いることができる。
【0094】
また、略水平に設置されたスクリューコンベヤ320から流動層分級室390へ入る部分410の圧力(PIR3)は、ある管理値以下になると立ち上がり室392から第2の混合物310fの逆流が懸念されるため、所定の圧力以下になりそうな場合は流動層分級室390において通路部390cの底面390bから供給する流動化ガス331の流量を制御する制御バルブ418(CV2)を絞るように制御し、流動層分級室390の流動化を弱めるか、スクリューコンベヤ320の回転数を回転数制御装置419により制御し回転数を上昇させ流動媒体の移動量を増すことで立ち上がり室392からの第2の混合物310fの逆流を防止することができる。
【0095】
但し、スクリューコンベヤ320の回転数を増速すると、流動層分級室390へ入る部分410の温度(TIC1)が所定値以上に上昇するため、流動層分級室390において通路部390cの底面390bから供給する流動化ガス331の流量減少を優先し、混合物の流動化を低くする方が有利となる。
【0096】
第1の差圧計406(DPIR1)は、第1の圧力検出器404(PIR1)および第2の圧力検出器407(PIR2)に減算器405を介して接続され、流動層炉5のフリーボード上部403の圧力(PIR1)と旋回流動層内部409の炉底圧力(PIR2)の差圧を検出し旋回流動層の層高を監視する。
【0097】
第4の制御バルブ408(CV4)は、バルブの開放により流動媒体上昇室391から流動層炉305へ流動媒体を還流する還流口393aの上流に設けたループシール部に流動化ガス398(空気)を供給する。このループシール部は、流動媒体上昇室391と流動層炉305とを仕切る機能を備え、流動媒体上昇室391の上部に設けた頂部通過堰395aと底部通過堰395bを含んで構成する。特別なことが無い限り固定流量の空気が流動化ガス398として供給されている。具体的な流量としては最低流動化速度の約2倍となるように固定される。
【0098】
また、第2の回転数制御装置102(SIC2)は、立ち上がり室392の頂部に片持ち状態で吊り下げられているスクリューコンベヤ378に接続する駆動モータ401に回転数制御信号を送信し駆動モータ401を回転させスクリューコンベヤ378を回転制御する。このスクリューコンベヤ378の回転数も通常は予め設定した固定値で運転される。
【0099】
本実施の形態では、底面390bは立ち上がり室392に向けて下方に傾斜しており、かつ通路部390cは立ち上がり室392方向に進むほど垂直方向断面積が徐々に大きくなるよう形成されているため、混合物を立ち上がり室392の低部にスムーズに移送することができる。
【0100】
また、流動層分級室390の上部には、希薄流動層が形成されるように流動層分級室390において通路部390cの底面390bから流動化ガス331を供給し、また流動媒体上昇室391の中間部から流動化ガス398を供給する。流動層分級室390の上部には流動層炉305に連通する開口としての還流口393aが設けられ、流動媒体上昇室391内に噴き上げられた流動媒体を主体とする第1の混合物310gが、還流口393aから再び流動層炉305に還流する。
【0101】
図6は、本発明の第5の実施の形態としての、流動層炉システムとしての流動層式ガス化溶融炉システム301aの模式図である。流動層式ガス化溶融炉システム301aは、流動層炉としての流動層式ガス化炉305aと、不燃物抜出システム302aとを備える。不燃物抜出システム302aは、流動層式ガス化炉305aの下方に設けた混合物移送経路316と、混合物移送経路316の下流に設けた還流通路としての流動媒体上昇室391および第1の不燃物排出通路としての立ち上がり室392と、流動層式ガス化炉305aの出口ダクト322に接続され下流に設けた溶融炉431とを備えている。ここで、流動層式ガス化炉305a、混合物移送経路316、流動媒体上昇室391、および立ち上がり室392は、上述した第1の実施の形態と同等の構成を用いることができるため重複した説明を省略する。図6の流動層式ガス化炉305aは、図2の流動層炉5に対応する。
【0102】
溶融炉431は、1次室429、2次室428、3次室430を備え、流動層式ガス化炉305aの出口ダクト322から配管424を経由しガス導入口423へ熱分解ガスを導入し、導入した熱分解ガスが1次室429と2次室428により完全燃焼し灰分をスラグ化する。また、未燃分のガスが3次室430により完全燃焼するように構成されている。
【0103】
ここで、流動媒体上昇室391からの排気は、流動化ガス排気口397から溶融炉431の3次室430に配管422を経由して供給するのが良い。流動媒体上昇室391からの排気は、酸素濃度が低く燃焼用の酸化剤としては適さず、流動層式ガス化炉305aや溶融炉431の1次室429および2次室428に供給したのでは灰分をスラグ化するための高温化の妨げになってしまうからである。
【0104】
但し、本発明は、上述した溶融炉431の3次室430に配管422を経由して排ガスを供給する構成に限定されず、例えば、流動媒体上昇室391からの排気は、流動媒体と熱交換をして約500℃にまで加温されているため、高温化への悪影響は緩和されており、排気中の酸素濃度が15%以上ある場合は、流動媒体上昇室391からの排気を配管421に経由させて溶融炉431の1次室429や2次室428に供給しても良い。流動媒体中に未燃分が少ない場合は、このような構成が可能になる。いずれにしても従来のように流動媒体を高温のまま抜き出し、全て熱ロスとして処理することに比べれば大きなメリットがもたらされる。
【0105】
溶融炉431は、上記1次室429と2次室428で熱分解ガスがスラグ化して溶融炉431の底部433に落下したスラグ434をこの底部433から排出する。
【0106】
このように、本実施の形態の流動層式ガス化溶融炉システム301aでは、流動層分級室390の下流に流動媒体と不燃物との第2の混合物310fを上方に移送させる立ち上がり室392を設け、流動層式ガス化炉305の旋回流動層312(濃厚流動層)の界面よりも高い位置から不燃物の濃度の高い第2の混合物310fを外部へ排出することができる。
【0107】
また、本実施の形態では、水平面から約90°に立設する略円筒の立ち上がり室392に内設する流動媒体移送装置として、第2の混合物310fを鉛直方向へ上昇させる懸垂型のスクリューコンベヤ378を用いるとよい。
【0108】
図7は、本発明の第6の実施の形態としての、流動層炉システムとしての流動層式ガス化炉システム301bの模式的な断面図である。流動層式ガス化炉システム301bは、流動層式ガス化炉305aと、不燃物抜出システム302a(部分的に図示)とを備える。流動層式ガス化炉305aは、水平断面形状が略円形の円筒の中に旋回流動306する流動媒体310を収容する。不燃物抜出システム302aは、この旋回流動306する流動媒体310を炉底311から抜き出す混合物移送経路としての不燃物抜出シュート307と、不燃物抜出シュート307の下方に設けた混合物移送経路としての流動媒体抜出水平経路316dと、流動媒体抜出水平経路316dの内部に設けたスクリューコンベヤ320とを備える。流動媒体抜出水平経路316dには、スクリューコンベヤ320の移送終端部の近傍に設けた混合物排出口440が形成されている。不燃物抜出システム302aは、さらに混合物排出口440から排出された、流動媒体と不燃物とが混合した混合物を受け入れる流動層分級室(図示せず)と、還流通路としての流動媒体上昇室(図示せず)と、第1の不燃物排出通路としての立ち上がり室(図示せず)とを備える。流動層式ガス化炉システム301bは、流動媒体を旋回流動306させるガスのガス供給領域に設けた圧力センサ437と、不燃物抜出シュート307の外壁部に設置した温度センサ435と、圧力センサ437に接続され流動層ガス化炉305aの炉底圧力を測定する圧力測定装置438(PIR2)と、温度センサ435に接続され不燃物抜出シュート307の外壁温度を検出する温度測定装置436(TIA)とを備える。
【0109】
図7においては、不燃物抜出シュート307の入口近傍315は、酸素分圧の高い部分で不燃物と流動媒体とが高温化しクリンカを生成しやすい。このため、入口近傍315の側面からパージ用のガスとして蒸気439を供給するように構成し、この蒸気439の供給により不燃物抜出シュート307の入口近傍315を流動化させクリンカ形成を防止する。また、付随的に不燃物抜出シュート307内を冷却するため、流動媒体と不燃物の温度を低下させる効果がある。
【0110】
また、圧力測定装置438(PIR2)により、流動層炉305内の圧力を測定しパージ用ガスの圧力を制御し、流動層炉5内の圧力より高くなるように不燃物抜出シュート307内の圧力を制御する。
【0111】
さらに、温度測定装置436は、不燃物抜出シュート307の外壁温度を検出し不燃物抜出シュート307内の温度が定性的にクリンカ生成温度を超えないように監視する。この温度測定装置436に接続する温度センサ435が不燃物抜出シュート307内に突出して設置されると、流動媒体および不燃物の重力落下を妨げこれら混合物の排出を阻害するため、外壁温度を検出するように構成する。
【0112】
図8は、本発明の第7の実施の形態としての、流動層炉システムとしての流動層式ガス化炉システム301bの模式図である。流動層式ガス化炉システム301bは、流動層式ガス化炉305aと、不燃物抜出システム302a(部分的に図示)とを備える。流動層式ガス化炉305aは、炉底346の上方に、旋回流動層312と、フリーボード348とを備える。不燃物抜出システム302aは、炉底346の下方に配置された混合物移送経路としての流動媒体抜出経路316と、流動媒体抜出経路316の下部水平部316d内に配置したスクリューコンベヤ320とを備える。不燃物抜出システム302aは、さらに混合物排出口440から排出された、流動媒体と不燃物とが混合した混合物を受け入れる流動層分級室(図示せず)と、還流通路としての流動媒体上昇室(図示せず)と、第1の不燃物排出通路としての立ち上がり室(図示せず)とを備える。流動媒体抜出経路316の下部水平部316dには、スクリューコンベヤ320の移送終端部の近傍に設けた混合物排出口440が形成されている。流動媒体抜出経路316は、鉛直に配置された不燃物抜出シュート307と、水平に配置された下部水平部316dとを含んで構成される。
【0113】
炉底346から供給される高温状態の燃焼用空気324は、旋回流動層312内部で流動媒体310の内部旋廻流を発生させる。流動層式ガス化炉305aに供給された被処理物としての廃棄物314は、温度450℃から650℃の旋回流動層312に接触し、熱分解ガス化し可燃ガスを発生する。可燃ガスは、フリーボード348上部の出口ダクト322から排ガスとして流動層式ガス化炉305a外へ排出される。
【0114】
流動媒体抜出経路316は、炉底346から流動媒体310を抜き出し、抜き出した流動媒体310をスクリューコンベヤ320により水平方向図8の右長手方向へ移送する。移送された流動媒体310は、混合物排出口440から排出され、流動層分級室(図示せず)へ移送される。
【0115】
流動媒体抜出経路316の最下部364と炉底346との間には、例えば、パージ用ガスとしての蒸気を供給するパージ用ガス供給口330が設けられている。旋回流動層312の内部圧力P0を例えば、15kPaに設定した場合、パージ用ガスを供給しパージ用ガス供給口330近傍の圧力P1をP0より高い約17kPaとする。
【0116】
流動媒体上昇室(図示せず)と、立ち上がり室(図示せず)とのシール効果により流動媒体抜出経路316の出口近傍での圧力P2は、大気圧より少し高い数kPaに維持することができるが、パージ用ガス供給口330近傍の圧力P1を約17kPaに維持させることができる程度の圧力であれば大気圧でも良い。
【0117】
上記圧力条件でパージ用ガスをパージ用ガス供給口330から流動媒体抜出経路316内へ供給し、燃焼用空気324と流動媒体310に含まれる未燃焼ガスを流動媒体抜出経路316および旋回流動層312の炉底346近傍から追放することができる。
【0118】
この場合、旋回流動層312の内部圧力P0と、流動媒体抜出経路316の内部圧力P1と、流動媒体抜出経路316の排出口付近の内部圧力P2との関係は、P0<P1>P2の高低関係を維持する必要がある。
【0119】
本実施の形態では、パージ用ガス供給口330からパージ用ガスを供給する段階において、流動媒体上昇室(図示せず)と、立ち上がり室(図示せず)とにより流動媒体抜出経路16の出口を密閉して上述した関係(P0<P1>P2)の圧力関係を維持すれば良い。
【0120】
本実施の形態では、流動媒体抜出経路316内に設けるコンベヤ320をチェーン式コンベヤやベルト式コンベヤを用いても良く。スクリューコンベヤを用いても良い。また、流動媒体310として硅砂を使用することができる。
【0121】
また、パージ用ガスとして窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガスを用いることができる。この窒素ガスや炭酸ガスを用いた場合は、流動媒体抜出経路316内でパージ用ガスが冷却されても水分を発生させることがなく乾燥した環境を維持することができ、流動媒体抜出経路316の外部へ放出しても白煙(蒸気)を発生させることもない。
【0122】
さらに、流動媒体と不燃物との混合物は冷却されているため、流動媒体上昇室(図示せず)と、第1の不燃物排出通路としての立ち上がり室(図示せず)の設定条件に余裕が生じ、シール性の確保に有効である。
【0123】
したがって、混合物のマテリアルシールを確実にするために、不燃物抜出シュート307の長さを長くする必要がなく、不燃物抜出シュート307をグランドに設置した場合でも流動層式ガス化炉305aの配置高を従来に比して低くすることができ流動層炉システムの設置費用を低減させることができる。
【0124】
図9は、本発明の第8の実施の形態に係る流動層炉システム301の模式的な系統図である。流動層システム301は、流動層炉350と、不燃物抜出システム302bとを備える。流動層炉350は、流動層炉350の炉底346の上方に形成された旋回流動層342と、フリーボード348と備える。不燃物抜出システム302bは、炉底346の下方に配置される混合物移送経路としての流動媒体抜出経路316と、第2の不燃物排出通路としての縦経路376と、縦経路376の上部に接続され水平に配置された第2の不燃物排出通路としての横経路376aとを備える。縦経路376は、流動媒体310と不燃物360の混合物が内部に充満し、鉛直方向に対して60°に傾斜した立ち上がり部344と、排気ダクト352と、流動媒体310と不燃物360を縦経路376から排出する不燃物排出口358とを有する。不燃物排出口358から縦経路376を出た流動媒体310と不燃物360は横経路376aを経て、外部に排出される。
【0125】
旋回流動層312は、炉底346から供給される高温状態の燃焼用空気324を散気板362に通過させ、旋回流動層312内部で流動媒体の内部旋回流342を発生させている。ここで、流動層炉350と流動媒体抜出経路316は、上述した第7の実施の形態と同等の部材を用いることができ、重複する説明を省略する。
【0126】
縦経路376の立ち上がり部344の終端に設けた、混合物を縦経路376から水平方向に排出する不燃物排出口358は、不燃物排出口358の最下部の位置358aが、旋回流動層312の界面366の凸凹の平均高または界面366の頂点より高い位置に配置し、流動媒体310の自重作用により不燃物排出口358に至る縦経路376の立ち上がり部344に流動媒体310を充満または滞留させる。
【0127】
不燃物抜出システム302bは、縦経路376内に配置された流動媒体移送装置としての縦軸のスクリューコンベヤ378をさらに備える。縦経路376の底部に移送された流動媒体310は内部で回転するスクリューコンベヤ378に巻き込まれ、スクリューコンベヤ378によって、縦経路376の上部へ移送される。
【0128】
上記縦経路376内の流動媒体310は、縦経路376の立ち上がり部344を充満または滞留し、充満した流動媒体310はパージ用ガス341が供給されるパージ用ガス供給口330近傍の圧力P1の低下を防止するシール効果を発揮することができる。
【0129】
シール装置としてのダブルダンパやロックホッパに代えて、縦経路376を設け、縦経路376の立ち上がり部344に流動媒体310を充満させるため、シール効果が向上すると共に、流動媒体抜出経路316の下にダブルダンパを収容するピットと称する穴の掘削工事が不要となり、流動層炉システム301の設置高を低く抑えるので流動層炉システム301の建設期間、および建設費用を低減させることができる。
【0130】
また、パージ用ガス341は、旋回流動層312内に含まれる未燃焼ガスが流動媒体抜出経路316の導入部や縦経路376内に進入することを防止することができる。しかも、パージ用ガスリークを防止する特殊なシール装置を設ける必要が無いので、シール装置を収容するピットを掘る掘削工程も簡略化することができる。よって、流動層炉350を従来に比して低位置に設置でき、架構工事費を廉価にすることができる。
【0131】
縦経路376から排出された流動媒体310は、不燃物排出口358の外へ排出し、横経路376aを経て外部に排出される。排出された流動媒体310と不燃物360は、流動層炉350の外部に設けられた不燃物系設備としての溶融炉等(図示せず)で分離処理をしてから、各々回収される。
【0132】
一方、パージ用ガス341は、排気ダクト352から排出され供給経路354を経て排気ボイラ356へ供給し熱源として再利用することができる。また、排気ダクト352から排出される水蒸気の一部をフリーボード348へ供給しフリーボード348中の可燃ガスと水性ガス化反応を生じさせることができる。この水性ガス化反応の吸熱効果により、フリーボード348内の温度を適切な温度に下げることができる。
【0133】
このように、本実施の形態では、縦経路376に内設する第2の流動媒体移動手段として、水平面から少なくとも60°以上の内角を有する傾斜角度で混合物を上方へ移送させるスクリューコンベヤ378を用いるとよい。
【0134】
図10は、本発明の第9の実施の形態に係るガス化システムにおける不燃物抜出システム302bの模式的な断面図である。不燃物抜出システム302bは、流動媒体310を略水平方向に移送する水平部372aを含む混合物移送経路372と、混合物移送経路372の水平部372a内で回転自在に水平方向に支持されたスクリューコンベヤ377と、混合物移送経路372の水平部372aの移送終端に設けられた傾斜経路374と、傾斜経路374の下方終端から鉛直方向に立設された第2の不燃物排出通路としての縦経路376と、縦経路376の頂部から片持ち状態で釣下げられ回転自在に支持された流動媒体移送装置としてのスクリューコンベヤ378と、縦経路376の最上部から流動媒体310と不燃物360とを外部に排出する不燃物排出口358とを備える。
【0135】
混合物移送経路372の水平部372aは、流動媒体310を横軸のスクリューコンベヤ377の回転により図示した右長手方向に移送させる。混合物移送経路372は、その右側の移送終端部に設けた傾斜経路374の上部まで流動媒体310を移送させる。流動媒体310は、自重作用で傾斜経路374を経由して縦経路376の底部に移動する。
【0136】
縦経路376は、内設する縦軸のスクリューコンベヤ378の回転により底部に溜まった流動媒体310をスクリュー羽根と縦経路376の内壁との間に捲込みながら縦経路376の上方へ移送する。縦軸のスクリューコンベヤ378で縦経路376の頂点方向へ上昇した流動媒体310は、その自重作用で不燃物排出口358から排出され、流動媒体抜出経路外に不燃物360と共に排出される。排出された不燃物360は、回収され、流動層炉350(図9参照)外で有効に利用することができる。
【0137】
例えば、回収された不燃物360は、砂としてアスファルトと共に道路等の舗装材料として利用できる。また、再利用可能な程度の硅砂は流動層炉に戻される。回収される不燃物360には、未燃焼ガスがほとんど含まれていないので、未燃焼ガスが大気に散逸することがない。
【0138】
図10に示すように、不燃物排出口358の最下部の位置358aは、第2の不燃物抜出排出通路としての混合物移送経路372の、水平部372aの高さと同等の高さに位置している。パージ用ガス341(図9参照)をシールできる程度に流動媒体310を立ち上がり部344内部に充満させることができれば、図示した高さに不燃物排出口358の最下部の位置を配置してもよく、図9に示すように旋回流動層312の界面366より高い位置に不燃物排出口358の最下部の位置358aを配置してもよい。
【0139】
上記縦経路376の上部内壁面は、下部内壁面に比して粗度を高くした粗面壁382で構成する。この粗面壁382に対向する縦軸のスクリューコンベヤ378のスクリュー羽根は、横断面の直径が小さく粗面壁382とのクリアランスが大きくなるように構成する。例えば、流動媒体の最大粒径の3倍以上となるように構成することができる。このような構成により、流動媒体310と不燃物360が自重降下してシール性を増大させることができる。
【0140】
一方、下部内壁面は、上部内壁面に比して粗度を低くした平滑なライナ380で構成する。このライナ380に対向する縦軸のスクリューコンベヤ378のスクリュー羽根は、横断面の直径が大きくライナ380とのクリアランスが小さくなるように構成するとよい。例えば、流動媒体の最大粒径の3倍未満となるように構成することが好ましい。
【0141】
また、縦経路376の立ち上がり部344は、上部内壁面から下部内壁面へ連続するように構成し、立ち上がり部344の上部内壁は、スクリュー羽根とのクリアランスを大きく(例えば、流動媒体の最大粒径の3倍以上)、下部内壁はスクリュー羽根とのクリアランスが小さく(例えば、流動媒体の最大粒径の3倍未満)なるように構成する。
【0142】
次に、上記縦経路376の作用を説明する。縦経路376の上部は、粗面壁382と対向するスクリュー羽根とのクリアランスが大きいので、流動媒体310の搬送効率が低い。これに対して、縦経路376下部は、ライナ380と対向するスクリュー羽根とのクリアランスが小さいので、流動媒体310の搬送効率が高い。
【0143】
上記縦経路376内の搬送効率の高低差により、縦経路376の上部は、縦経路376の下部に流動媒体310が新たに供給される場合、縦経路376上部の流動媒体310を縦経路376下部の流動媒体310で押し出して不燃物排出口358側へ流動媒体310を排出させることができる。
【0144】
これに対して、縦経路376下部に流動媒体310が新たに供給されない場合は、不燃物排出口358側へ流動媒体310を押し出すように搬送できないが、縦経路376の上部から下部に連続する立ち上がり部344へ、流動媒体310を滞留または充満させ、図10に示すように立ち上がり部344の下に空隙384を形成することができる。この空隙384は、傾斜経路374から十分に流動媒体310が供給されない状態の縦経路376底部に形成されるパージ用ガスを充満させる空間として機能する。
【0145】
さらに、混合物移送経路372と縦経路376の接続箇所に空隙を積極的に形成できるような流動媒体溜り室(図示せず)を設けてもよい。この流動媒体溜り室はある程度の容量を有するタンクとすればよい。
【0146】
上記縦経路376の立ち上がり部344は、流動媒体310を滞留または充満させているので、混合物移送経路372側から進入するパージ用ガスをシールすることができ、空隙384にはパージ用ガスを留めておくこともできる。したがって、広範囲の回転数で縦軸のスクリューコンベヤ378を回転させても十分な流動媒体310を立ち上がり部344へ滞留または充満させておくことができる。
【0147】
また、空隙384内のパージ用ガスが傾斜経路374から供給される流動媒体310に巻き込まれて、縦経路376の上方へ上昇した場合には、縦経路376の上部に排気ダクト(図9参照)を設けパージ用ガスを排出することができる。
【0148】
上記縦経路376の下部内壁面のライナ380の粗度が低く、ライナ380と対向するスクリュー羽根とのクリアランスを小さく構成した場合、縦軸のスクリューコンベヤ378を縦経路376の上部からぶら下げる懸垂型縦軸コンベヤを使用することができる。
【0149】
この場合、縦経路376の頂部に設けた駆動モータ(図示せず)を設置し、縦軸のスクリューコンベヤ378の上端部を上部軸受けで回転自在に支持すると共に、縦軸のスクリューコンベヤ378の下端部を縦経路376の内壁面で回転自在に固定するように構成し、駆動モータで縦軸のスクリューコンベヤ378を回転させることができる。
【0150】
上記縦軸のスクリューコンベヤ378によれば、縦経路376の底部に位置する縦軸のスクリューコンベヤ378の下端部を回転自在に固定する下部軸受けを省略することもできるが、信頼性を高めるために下部軸受けを設けて、縦軸のスクリューコンベヤ378の回転横振れをより少なくするように構成することもできる。
【0151】
したがって、縦経路376のメンテナンス期間が長くなり、不燃物抜出システム302bの稼働率を向上させることができる。また、下部軸受けに代えて平滑面を有する耐磨耗性のライナ380を備えるので、縦軸のスクリューコンベヤ378の軸横振れを有効に防止することができる。
【0152】
さらに、流動媒体310の移送能力を混合物移送経路372と縦経路376との間で調整することにより、空隙384の生成期間を調整することができる。例えば、同一搬送能力の横軸および縦軸のスクリューコンベヤに用いた場合には、横軸のスクリューコンベヤ377の回転数を縦軸のスクリューコンベヤ378の回転数より低くし、横軸のスクリューコンベヤ377の移送能力を縦軸のスクリューコンベヤ378の搬送能力より低く設定することができる。この場合、縦経路376への乗り継ぎ部に生成する空隙384の残留期間が延長され、パージ用ガスのシール効果を増大させることができる。
【0153】
上記実施の形態では、横軸と縦軸のスクリューコンベヤ377、378の回転数を調整したが、本実施の形態では、横軸のスクリューコンベヤ377のスクリューピッチを縦軸のスクリューコンベヤ378のスクリューピッチより広げたり、横軸のスクリューコンベヤ377のスクリュー直径を縦軸のスクリューコンベヤ378のスクリュー直径より小さく調整することにより、横軸のスクリューコンベヤ377の移送能力を縦軸のスクリューコンベヤ378の移送能力より低く構成することができる。この構成により、空隙384を不燃物抜出経路370のバッファとして機能させて、パージ用ガスのリークを防止し、混合物移送経路372内のパージ用ガスの圧力を維持することができる。
【0154】
スクリュー軸が水平面から60°以上傾斜したスクリューコンベアにおいては、水平のスクリューコンベヤにおいて被搬送物に作用する重力のように、スクリュー軸に垂直外向きかつ一定方向に作用する力の成分が弱い。この被搬送物に作用する力は被搬送物がスクリュー軸の回転に伴って共回りすることを防止し、安定な搬送を可能にする非常に重要な力である。従って、スクリュー軸が水平面から60°以上傾斜したスクリューコンベアにおいて搬送効率を維持するためには、重力に頼ることなく搬送物がスクリューと共回りするのを防止する必要がある。
【0155】
被搬送物から見て回転するスクリューに抗して周方向に回転させられるのを抑制するには、固定されているスクリューケーシング面との摩擦を利用するしかない。但し、その摩擦力は搬送方向すなわちスクリュー軸の軸方向よりも周方向に対して作用しやすくするのが良く、具体的方法としては、ケーシング面にスクリュー軸に平行にレールのように連続的な凹凸を設けるのが良い。
【0156】
図11は、本発明に係るスクリューコンベヤ450の断面図である。図11は、スクリューコンベヤのスクリュー軸に垂直な切断面を表したものである。図11ではスクリューケーシング200の内面にC形鋼203を6本スクリュー軸201に平行に溶接して取り付けているが、C形鋼以外にもL形鋼やフラットバーを用いても良い。このような構成にすることで被搬送物の周方向の回転は抑制され、スクリューと共回りすることなく安定な搬送を維持することができる。
【0157】
しかしながら、不燃物の性状(大きさや形状)によっては、図11のような構成では、凸部452とスクリュー翼454端に不燃物がかみこむ危険性がある。この噛み込みを防止するためには、凸部452とスクリュー翼454端とのクリアランスを適切に選定する必要があるが、一般廃棄物の不燃物の場合は20mm以上とするのが良く、必要に応じて20mmから75mmまでの値を採用することができる。
【0158】
また、図11のようにスクリューケーシング453内面にスクリュー軸451と平行に凸部452を設ける方法以外でも、単にスクリューケーシング453内面とスクリュー翼454端のクリアランスを適正な寸法にまで狭めるだけで、同様な効果を上げることができる。特に被搬送物中に含まれる不燃物の大きさが凸部452の断面積よりも小さな場合には不燃物が隣接する凸部452の間に堆積し、結果的に凸部452の間に空間が無いのと同様な状態になってしまうことから、このような場合には、凸部452を設けずに、単にスクリューケーシング453内面とスクリュー翼454端のクリアランスを適正な寸法にまで狭めるだけで良い。
【0159】
スクリューケーシング453内面とスクリュー翼454端のクリアランスの具体的な寸法としては、もちろん投入される原料に含まれる不燃物の性状(大きさや形状)によるが、一般廃棄物を原料とする場合は75mm以下、好ましくは50mm以下、さらに好ましくは25mm以下とするのが良い。但し、クリアランスを狭めると、スクリュー翼454とスクリューケーシング453の間に不燃物を噛み込むリスクが増大するので、あまり狭めすぎてはならず、一般廃棄物の場合、好ましくは5mm以上、さらに好ましくは10mm以上、最も好ましいのは15mm以上とするのが良い。
【0160】
また、スクリュー軸が水平面から60°以上傾斜したスクリューコンベアは元来コンベヤ内に被搬送物を充満させ、炉内からガスが外部にリークするのを抑制するために考案したものであるが、考案者等が実験的に性能を確認したところ、水平面からの傾斜角が大きくなればなるほど、スクリュー翼搬送面の裏側に空間ができやすく、この空間を通ってガスがリークしやすくなることが判明した。従ってガスのシール性を維持するにはこのスクリュー搬送面裏側に形成される空間(ガス流路)を遮断する工夫が必要となる。
【0161】
スクリュー搬送面の裏側にできる空間を埋める方法として一般的なのは、スクリュー翼の強度増すためにしばしば用いられる裏羽根を用いることができる。これはスクリュー翼の搬送面の裏側に対角に連続的に補強部材を溶接して取り付けるものである。それとは別の方式としてスクリュー翼搬送面裏側にスクリュー翼とスクリュー軸にほぼ垂直になるようにリブを立ててもよい。
【0162】
裏羽根方式に比べると、スクリュー裏側の空間でできたガス流炉の遮断の手段としてはリブ方式の方が優れている。なぜなら、リブ方式ではリブが被搬送物を掻き取るスクレーパのような状態で接するため、掻き取られた被搬送物が確実に隙間を埋める働きをし、裏羽根方式のように被搬送物と面で接触するのに比べてガス流路遮断効果が大きいからである。
【0163】
また、リブであれば砂との接触によって磨耗し、最終的には最も理想的な形状に自律的に成形されるという特長も活かすことができ、ある程度ラフに大きめのリブにしておきさえすれば、シール性を維持しながらリブが自然に成形されることを期待しても良い。
【0164】
しかしながら、シール性を高めるためにリブ高さを高くして砂との接触度合いを高めると、被搬送物の共回りを促進したり、過剰負荷でモータの許容動力を超えてトリップしたりする恐れがあるので、できるだけ適切なリブ形状にしておく必要がある。
【0165】
本発明者等はスクリューコンベヤの水平面からの傾斜角度とスクリュー搬送面に乗った流動媒体の安息角度を用いて最適なリブ形状を決定することができることを見出した。すなわち、スクリュー翼の搬送面裏にできる空間によって形成されるガス流路を遮断するのに適したリブ形状の基本形は、スクリュー翼面とスクリュー軸に対してほぼ垂直になるように立てられた平板の直角三角形で、スクリュー軸からのスクリュー翼高さを一辺とし、かつスクリューコンベヤの水平面からの傾斜角をA(度)、被搬送物である流動媒体安息角をB(度)とした場合、スクリュー翼面との角度が((90−A)+B)°となるように形成された三角形とするのが良い。
【0166】
もちろんこれはあくまでも基本形であり、被搬送物の性状を勘案し必要に応じてスクリュー翼に接する辺の長さをスクリュー翼高さより短くしたり長くしたりすることはもちろん、スクリュー翼面もしくはスクリュー軸に対して垂直でなくても良い。また平板を用いなくても、曲面を持った板でリブを形成しても構わない。また、被搬送物が流動床燃焼炉や流動床ガス化炉の流動媒体が主体である場合の流動媒体安息角Bの具体的数値は、30〜45°、好ましくは30〜40°、さらに好ましくは30〜35°とするのが良い。
【0167】
図12に示す例においては、スクリューコンベヤ450aのスクリュー軸451が水平面に対して75°の角度で傾斜しており、被搬送物の安息角度は30°である。従って、スクリュー翼454の搬送面裏側に取り付けられたリブ455は、スクリュー翼454との底角が45°(=90°−75°+30°)となるように形成された三角形としている。
【0168】
スクリュー軸451の周りに180°または360°のピッチでリブ455を設けないことが好ましい。スクリュー軸451の周りに180°または360°のピッチでリブ455を設けた場合には、リブ455のシール性能がスクリュー軸451の回転に同期して脈動を生じる。
【0169】
図13は、本発明の他の実施の形態におけるスクリューコンベヤ450bを示す正面図である。スクリューコンベヤ450bは、スクリュー翼454の裏面に連続的に設けられた裏羽根456を有している。裏羽根456は、図12に示すリブ455と同様に、スクリュー翼454との底角が45°(=90°−75°+30°)となるように形成された三角形としている。
【0170】
さらに、本発明者等は水平面から60°以上で傾斜したスクリューコンベアにおいて回転数以外に搬送量を制御するパラメータがあることを見出した。一般にスクリューコンベヤ設計においては被搬送物との相対速度が最も大きくなる部位、すなわちスクリュー翼端の摩耗を抑制することを念頭に設計され、そのことによって搬送能力の上限が規定される。すなわち搬送能力を高めるために回転数を高めたり、スクリュー翼径を大きくしたりしても、共に比例してスクリュー翼端の速度を増大させるため、搬送能力の限界があることが知られている。
【0171】
また、水平面から60°以上で傾斜したスクリューコンベアの搬送効率は、水平に配置した場合の30%以下と大きく低下することが本発明者等の実験によって判明しており、搬送能力を高めることのできる装置を必要としていたが、本発明者等は傾斜したスクリューコンベヤの下部、すなわち被搬送物の流れからすると上流部にあたる部分の圧力を高めることで、スクリューコンベヤの搬送能力が増大することを見出した。
【0172】
上述したように、スクリューコンベアの下部の圧力を高めるために空気等のガスを吹き込んでもよい。例えば、図3Bにおいて、スクリューコンベヤ378の上流の流動媒体分級室390に流動化ガス331を吹き込んでもよい。流動化ガス331の量を調節することで、スクリューコンベア378の下部の圧力を調節することができる。流動化ガス331は、蒸気、窒素等の不活性ガス、炭酸ガス、酸素、およびそれらの混合ガスとすることができる。スクリューコンベヤ378の下部の圧力は吹き込まれる流動化ガス331の量に比例するので、圧力の調節が簡単である。
【0173】
本発明者等は、吹き込むガスとして空気を用いた実験により、ガス吹き込みの無い場合に比べて搬送能力が2倍以上高まることを確認した。この実験結果は、磨耗防止のためにスクリュー翼端の周速に限界があるスクリューコンベヤの設計領域を大きく広げられることを示している。
【0174】
本発明の不燃物抜出システムおよび流動層炉システムは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明は、都市ごみ、固形化燃料(RDF)、廃プラスチック、廃強化プラスチック(廃FRP)、バイオマス廃棄物、自動車廃棄物(ASR)、廃油等の廃棄物、または不燃分を含む固体燃料等(例えば石炭)の固体可燃物を燃焼、またはガス化、若しくは熱分解処理する流動層炉から排出される流動媒体と共に不燃物を抜き出す不燃物抜出システムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1は、従来の流動床ガス化炉システムの模式的な断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態としてのガス化システムの不燃物抜出システムの模式図である。
【図3】図3Aおよび図3Bは、本発明の第2の実施の形態としてのガス化炉システムの不燃物抜出システムの模式図である。
【図4】図4Aおよび図5Bは、本発明の第3の実施の形態としての流動層炉システムの不燃物抜出システムの模式図である。
【図5】図5は、本発明の第4の実施の形態としての流動層炉システムの不燃物抜出システムの模式図である。
【図6】図6は、本発明の第5の実施の形態としての流動床ガス化炉およびスラグ燃焼炉の不燃物抜出システムの模式図である。
【図7】図7は、本発明の第6の実施の形態としての流動床ガス化炉システムの不燃物抜出システムの模式図である。
【図8】図8は、本発明の第7の実施の形態としての流動床ガス化炉システムの不燃物抜出システムの模式図である。
【図9】図9は、本発明の第8の実施の形態としての流動床ガス化炉システムの不燃物抜出システムの模式図である。
【図10】図10は、本発明の第9の実施の形態としての流動床ガス化炉システムの不燃物抜出システムの模式図である。
【図11】図11は、本発明の第10の実施の形態としての不燃物抜出システムのスクリューコンベヤを示す模式的な断面図である。
【図12】図12は、本発明の第11の実施の形態としての不燃物抜出システムのスクリューコンベヤを示す正面図である。
【図13】図13は、本発明の第12の実施の形態としての不燃物抜出システムのスクリューコンベヤを示す正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動媒体を内部で流動させて流動層を形成する流動層炉から不燃物を抜き出す不燃物抜出システムであって、
前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路と、
前記混合物移送経路の下流に位置し、前記混合物を流動化ガスにより流動させると共に、前記混合物を前記流動媒体の濃度が高い第1の分離混合物と前記不燃物の濃度が高い第2の分離混合物とに分離する流動層分級室と、
前記第1の分離混合物を前記流動層炉内に還流させる還流通路と、
前記第2の分離混合物を前記流動層炉の外部へ排出させる不燃物排出通路と、
を有する、不燃物抜出システム。
【請求項2】
前記不燃物排出通路は、前記流動層分級室の下流に設けられている、請求項1に記載の不燃物抜出システム。
【請求項3】
前記不燃物排出通路は、前記第2の分離混合物を垂直上方に移送し、前記流動層の界面よりも高い位置から前記第2の分離混合物を前記流動層炉の外部へ排出させる、請求項2に記載の不燃物抜出システム。
【請求項4】
前記不燃物排出通路内で前記第2の分離混合物を垂直方向へ移送させる流動媒体移送装置をさらに有する、請求項3に記載の不燃物抜出システム。
【請求項5】
前記不燃物排出通路内で前記第2の分離混合物を水平面に対して前記流動媒体の安息角以上の角度で移送させる流動媒体移送装置をさらに有する、請求項3に記載の不燃物抜出システム。
【請求項6】
前記流動層分級室は、前記不燃物排出通路に接続される通路部を有し、
前記通路部は、前記不燃物排出通路方向に進むほど徐々に断面積が増大し、前記通路部の底面は、前記不燃物排出通路に向けて下方に傾斜する、請求項1に記載の不燃物抜出システム。
【請求項7】
流動媒体を内部で流動させて流動層を形成する流動層炉から不燃物を抜き出す不燃物抜出システムであって、
前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路と、
前記混合物移送経路の下流に位置し、前記混合物を垂直上方に移送し、前記流動層の界面よりも高い位置から前記混合物を前記流動層炉の外部へ排出させる不燃物排出通路と、
を有する、不燃物抜出システム。
【請求項8】
前記不燃物排出通路内で前記混合物を垂直方向へ移送させる流動媒体移送装置をさらに有する、請求項7に記載の不燃物抜出システム。
【請求項9】
前記不燃物排出通路内で前記混合物を水平面に対して前記流動媒体の安息角以上の角度で移送させる流動媒体移送装置をさらに有する、請求項7に記載の不燃物抜出システム。
【請求項10】
前記不燃物排出通路は、前記不燃物排出通路の内面と前記流動媒体移送装置との間に小さなクリアランスが形成されるように配置されている、請求項9に記載の不燃物抜出システム。
【請求項11】
前記クリアランスは約5mmから約75mmの範囲にある、請求項10に記載の不燃物抜出システム。
【請求項12】
流動媒体を内部で流動させて流動層を形成する流動層炉から不燃物を抜き出す不燃物抜出システムであって、
前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路と、
前記流動層分級室の下流に設けられた不燃物排出通路と、
前記不燃物排出通路内で前記混合物を垂直方向へ移送させる流動媒体移送装置と、
前記不燃物排出通路の内面から径方向内側に突出する凸部と、
を有する、不燃物抜出システム。
【請求項13】
前記凸部は、前記凸部と前記流動媒体移送装置との間に約20mm以上のクリアランスを形成するように配置されている、請求項12に記載の不燃物抜出システム。
【請求項14】
流動媒体を内部で流動させて流動層を形成する流動層炉から不燃物を抜き出す不燃物抜出システムであって、
前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路と、
前記流動層分級室の下流に設けられた不燃物排出通路と、
前記不燃物排出通路内で前記混合物を前記流動層炉の外部へ垂直上方に移送するスクリュー翼と、前記スクリュー翼の裏面に設けられたブロック部材とを有するスクリューコンベアと、
を有する、不燃物抜出システム。
【請求項15】
前記ブロック部材は、前記スクリュー翼の裏面に連続的に設けられた裏羽根である、請求項14に記載の不燃物抜出システム。
【請求項16】
前記ブロック部材は、前記スクリュー翼の裏面に取り付けられた複数のリブである、請求項14に記載の不燃物抜出システム。
【請求項17】
Aを前記スクリュー翼の傾斜角、Bを前記混合物の安息角として、前記ブロック部材は前記スクリュー翼と(90−A+B)の角度をなす、請求項14に記載の不燃物抜出システム。
【請求項18】
流動媒体を内部で流動させて流動層を形成する流動層炉から不燃物を抜き出す不燃物抜出システムであって、
前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路と、
前記流動層分級室の下流に設けられた不燃物排出通路と、
前記不燃物排出通路内で前記混合物を垂直方向へ前記流動層炉の外部へ移送させる流動媒体移送装置と、
前記流動媒体移送装置の下部からガスを吹き込み、前記流動媒体移送装置の下部の圧力を上げる吹き込み装置と、
を有する、不燃物抜出システム。
【請求項19】
流動媒体を内部で流動させて流動層を形成し、不燃物含有物を燃焼、ガス化、または熱分解する流動層炉と、
前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路と、
前記混合物移送経路の下流に位置し、前記混合物を流動化ガスにより流動させると共に、前記混合物を前記流動媒体の濃度が高い第1の分離混合物と前記不燃物の濃度が高い第2の分離混合物とに分離する流動層分級室と、
前記第1の分離混合物を前記流動層炉内に還流させる還流通路と、
前記第2の分離混合物を前記流動層炉の外部へ排出させる不燃物排出通路と、
を有する不燃物抜出システムと、
を有する、流動層炉システム。
【請求項20】
前記不燃物排出通路は、前記流動層分級室の下流に設けられている、請求項19に記載の流動層炉システム。
【請求項21】
前記不燃物排出通路は、前記第2の分離混合物を垂直上方に移送し、前記流動層の界面よりも高い位置から前記第2の分離混合物を前記流動層炉の外部へ排出させる、請求項20に記載の流動層炉システム。
【請求項22】
前記不燃物排出通路内で前記第2の分離混合物を垂直方向へ移送させる流動媒体移送装置をさらに有する、請求項21に記載の流動層炉システム。
【請求項23】
前記不燃物排出通路内で前記第2の分離混合物を水平面に対して前記流動媒体の安息角以上の角度で移送させる流動媒体移送装置をさらに有する、請求項21に記載の流動層炉システム。
【請求項24】
前記流動層分級室は、前記不燃物排出通路に接続される通路部を有し、
前記通路部は、前記不燃物排出通路方向に進むほど徐々に断面積が増大し、前記通路部の底面は、前記不燃物排出通路に向けて下方に傾斜する、請求項19に記載の流動層炉システム。
【請求項25】
流動媒体を内部で流動させて流動層を形成し、不燃物含有物を燃焼、ガス化、または熱分解する流動層炉と、
前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路と、
前記混合物移送経路の下流に位置し、前記混合物を垂直上方に移送し、前記流動層の界面よりも高い位置から前記混合物を前記流動層炉の外部へ排出させる不燃物排出通路と、
を有する不燃物抜出システムと、
を有する、流動層炉システム。
【請求項26】
前記不燃物排出通路内で前記混合物を垂直方向へ移送させる流動媒体移送装置をさらに有する、請求項25に記載の流動層炉システム。
【請求項27】
前記不燃物排出通路内で前記混合物を水平面に対して前記流動媒体の安息角以上の角度で移送させる流動媒体移送装置をさらに有する、請求項25に記載の流動層炉システム。
【請求項28】
前記不燃物排出通路は、前記不燃物排出通路の内面と前記流動媒体移送装置との間に小さなクリアランスが形成されるように配置されている、請求項27に記載の流動層炉システム。
【請求項29】
前記クリアランスは約5mmから約75mmの範囲にある、請求項10に記載の流動層炉システム。
【請求項30】
流動媒体を内部で流動させて流動層を形成し、不燃物含有物を燃焼、ガス化、または熱分解する流動層炉と、
前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路と、
前記流動層分級室の下流に設けられた不燃物排出通路と、
前記不燃物排出通路内で前記混合物を垂直方向へ移送させる流動媒体移送装置と、
前記不燃物排出通路の内面から径方向内側に突出する凸部と、
を有する不燃物抜出システムと、
を有する、流動層炉システム。
【請求項31】
前記凸部は、前記凸部と前記流動媒体移送装置との間に約20mm以上のクリアランスを形成するように配置されている、請求項30に記載の流動層炉システム。
【請求項32】
流動媒体を内部で流動させて流動層を形成し、不燃物含有物を燃焼、ガス化、または熱分解する流動層炉と、
前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路と、
前記流動層分級室の下流に設けられた不燃物排出通路と、
前記不燃物排出通路内で前記混合物を前記流動層炉の外部へ垂直上方に移送するスクリュー翼と、前記スクリュー翼の裏面に設けられたブロック部材とを有するスクリューコンベアと、
を有する不燃物抜出システムと、
を有する、流動層炉システム。
【請求項33】
前記ブロック部材は、前記スクリュー翼の裏面に連続的に設けられた裏羽根である、請求項32に記載の流動層炉システム。
【請求項34】
前記ブロック部材は、前記スクリュー翼の裏面に取り付けられた複数のリブである、請求32に記載の流動層炉システム。
【請求項35】
Aを前記スクリュー翼の傾斜角、Bを前記混合物の安息角として、前記ブロック部材は前記スクリュー翼と(90−A+B)の角度をなす、請求項32に記載の流動層炉システム。
【請求項36】
流動媒体を内部で流動させて流動層を形成し、不燃物含有物を燃焼、ガス化、または熱分解する流動層炉と、
前記流動媒体と前記不燃物とを混合させた混合物を前記流動層炉の炉底から移送する混合物移送経路と、
前記流動層分級室の下流に設けられた不燃物排出通路と、
前記不燃物排出通路内で前記混合物を垂直方向へ前記流動層炉の外部へ移送させる流動媒体移送装置と、
前記流動媒体移送装置の下部からガスを吹き込み、前記流動媒体移送装置の下部の圧力を上げる吹き込み装置と、
を有する不燃物抜出システムと、
を有する流動層炉システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2007−506927(P2007−506927A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515396(P2006−515396)
【出願日】平成16年3月24日(2004.3.24)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004043
【国際公開番号】WO2005/031211
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】