説明

流動層炉

【課題】燃え易いゴミを含む廃棄物であっても可燃性ガスを安定して得ることができる流動層炉を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、廃棄物18を加熱して当該廃棄物18から可燃性ガスを取り出す流動層炉10であって、流動層14に流動化ガスを吹き込むための複数の風箱32が、炉本体20の底壁21の下側に配列され、各温度検出部40が、流動層14の第1領域ua内において上下に間隔をおいた上側位置と下側位置との温度を検出すると共に、流動層14の第2領域ua内において上下に間隔をおいた上側位置と下側位置との温度を検出できる位置にそれぞれ配置され、制御部50が、各温度検出部40によって検出された温度に基づいて第1領域uaから第2領域uaに向けて流動層14の温度が高くなるように各風箱32に供給される流動化ガスの空気比をそれぞれ調整することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動粒子を流動化させた流動層において廃棄物を加熱することにより、当該廃棄物から可燃性ガスを取り出す流動層炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流動層炉として特許文献1に記載のものが知られている。この流動層炉は、図5に示されるように、炉底部に流動砂(流動粒子)102を有する炉本体104と、流動砂102を流動化させて流動層を形成するために炉底部の流動砂102中に空気を供給する空気供給部106と、を備える。炉本体104は側壁を有し、この側壁に、前記流動層の上に廃棄物を投入するための投入部108が設けられる。
【0003】
この流動層炉100では、空気供給部106が高温の流動砂102中に空気を供給することにより流動砂102を浮遊懸濁状態にして流動化し、これにより、流動層を形成する。前記空気供給部106は、投入部108から流動層上に投入された廃棄物を層内部に取り込んで効率よく燃焼できるよう、流動層の全域において流動砂102の流動状態が略一定となるように空気を供給する。
【0004】
高温の流動砂に投入部108から廃棄物が投入される度に、当該廃棄物は前記流動層の高温の流動砂102と混合されて熱分解(ガス化)される。これにより、可燃性ガスが発生する。この可燃性ガスは、例えば、後段の溶融炉で高温燃焼される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−242454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
流動層炉100に投入される廃棄物は、活発な流動層の中に取り込まれて燃焼若しくはガス化するが、廃棄物が間欠的に投入される度に廃棄物中の可燃物が急激に燃えることにより、発生する可燃性ガスの発生量や濃度等の急激な変動が繰り返される。このガス化反応の変動は廃棄物の供給の定量性に大きく依存するため、廃棄物供給の変動やごみ質に変化がある場合、可燃性ガスを安定して発生させることができない。特に、廃棄物に紙やシート状のプラスチック等の燃え易いゴミが多く含まれる場合には、発生する可燃性ガスの変動がより大きくなり、その安定化が求められる。
【0007】
例えば、発生させた可燃性ガスをガスエンジンに用いて発電を行うような場合、可燃性ガスの変動が大きいと安定したエネルギーを得ることができないため、流動層炉において得られる可燃性ガスの安定化がより求められる。
【0008】
そこで、燃え易いゴミを含む廃棄物であっても可燃性ガスを安定して得ることができる流動層炉を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明は、廃棄物を加熱して当該廃棄物から可燃性ガスを取り出す流動層炉であって、前記廃棄物を加熱するための流動層を構成する流動粒子を下方から支持する底壁およびこの底壁から立上がる側壁を有し、前記底壁においてその中心位置から特定方向に偏った位置に前記廃棄物中の不燃物を前記流動粒子と共に排出するための排出口が設けられ、この排出口に向かって前記底壁の上面上を前記不燃物が降下するように当該底壁の上面が前記排出口に向かって低くなるように傾斜する炉本体と、前記炉本体の底壁から前記流動粒子に対して流動化ガスを吹き込むことにより当該流動粒子を流動化させるガス供給部と、前記流動層の温度を検出する複数の温度検出部と、前記ガス供給部を制御する制御部と、前記側壁のうち前記底壁の中心位置を挟んで前記排出口と反対側に位置する供給側側壁から前記流動層上における当該供給側側壁に隣接する領域に前記廃棄物を供給する廃棄物供給部と、を備える。そして、前記ガス供給部は、前記底壁の下側において前記供給側側壁から前記排出口に向かう方向と直交する方向に延び、且つこの直交する方向の所定の位置から前記流動粒子に対して前記流動化ガスを吹き込むための複数の風箱と、これら各風箱に前記流動化ガスをそれぞれ供給し、且つ前記各風箱に供給される前記流動化ガスの空気比をそれぞれ調整可能な供給部と、を有し、前記複数の風箱は、前記供給側側壁から前記排出口に向かう方向に配列され、前記複数の温度検出部は、前記流動層における前記供給側側壁に最も近い第1の風箱と上下方向に重なる第1領域内において上下に間隔をおいた上側位置と下側位置との温度を検出すると共に、前記流動層における前記排出口に最も近い第2の風箱又は前記排出口と上下方向に重なる第2領域内において上下に間隔をおいた上側位置と下側位置との温度を検出できる位置にそれぞれ配置され、前記制御部は、前記各温度検出部によって検出された温度に基づいて前記第1領域から前記第2領域に向けて流動層の温度が高くなるように前記供給部によって前記各風箱に供給される流動化ガスの空気比をそれぞれ調整する。
【0010】
本発明によれば、前記第1領域から前記第2領域に向けて温度が高くなっている流動層の第1領域側に廃棄物供給部によって廃棄物が供給されることにより、発生させる可燃性ガスの量や濃度等の急激な変動が抑えられ、その結果、廃棄物から可燃性ガスを安定して発生させることができる。
【0011】
具体的には、流動層において温度の低い第1領域側に廃棄物が供給されることにより、廃棄物中の燃え易いゴミの急激な燃焼が抑えられ、また、廃棄物のガス化による可燃性ガスの発生も少ない。この廃棄物は、流動層を構成する流動粒子の流動や廃棄物供給部によって炉本体内に新たな廃棄物が供給されること等によって炉本体内を排出口側に(即ち、流動層の第2領域に向けて)移動する。そうすると、この第2領域では、高温であるため、第1領域側から移動してきた廃棄物が十分にガス化されて可燃性ガスが発生する。これにより、可燃性ガスの間欠的且つ急激な発生が抑えられ、当該ガスの発生を安定させることができる。
【0012】
また、供給側側壁から排出口に向かう方向における流動層の各領域に供給される流動化ガスの空気比を調整することによって流動層の前記各領域の温度を調整するため、流動層において流動不良が生じ難くなる。即ち、流動層の前記各領域に供給する流動化ガスの流量を十分に保って前記各領域の流動粒子の流動状態を維持しつつ、流動層に供給される流動化ガスの空気比(即ち、酸素濃度)の調整によって前記各領域の温度を調整する。
【0013】
しかも、第1領域と第2領域とにおいて上下に間隔をおいた上側位置と下側位置との温度をそれぞれ検出することにより、当該領域に流動不良が生じた場合にこれを確実に検出することができる。詳しくは、底壁から流動層内に流動化ガスが供給されたときに、当該流動化ガスが供給された領域の流動粒子が十分に流動化していればこの流動化ガスが上方に向かって流動層内を進み易いが、当該領域に流動不良が生じていると前記流動化ガスが上方に向かって流動層内を進み難くなる。そのため、流動不良が生じている領域では流動粒子が十分に撹拌されず、これにより前記上側と下側とで温度差が生じ、この温度差を検出することによって流動不良を検出することができる。
【0014】
また、炉本体の底壁の上面が排出口に向かって低くなるように傾斜しているため、流動層において底壁まで沈んだ廃棄物中の不燃物は、排出口に向かって底壁の上面上を降下する。これにより、前記不燃物を炉本体から容易に排出することができる。
【0015】
前記流動層における前記第1領域と前記第2領域との間では、前記複数の温度検出部は、前記供給側側壁から前記排出口に向かう方向に所定間隔で温度を検出できる位置にそれぞれ配置されることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、第1領域と第2領域との間の温度を検出することができるため、第1領域と第2領域との間において局所的に温度が低下する等の温度異常が生じた場合にこれを検出することができ、当該局所的な温度異常に対応することが可能となる。
【0017】
この場合、前記第1領域と第2領域との間に配置される各温度検出部は、前記第1の風箱と前記第2の風箱との間に配置される各風箱と上下方向に重なる各領域の温度を検出できる位置にそれぞれ配置されることがより好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、流動層において各風箱から供給された流動化ガスの通過する領域の温度をそれぞれ検出することができるため、各風箱に供給される流動化ガスの空気比の調整が容易になる。
【0019】
前記第1領域と第2領域との間の前記風箱と上下方向に重なる各領域では、前記各温度検出部は、上下に間隔をおいた上側位置と下側位置との温度を検出できる位置にそれぞれ配置されることが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、流動層における第1領域から第2領域までの各領域の流動不良を好適に検出することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上より、本発明によれば、燃え易いゴミを含む廃棄物であっても可燃性ガスを安定して得ることができる流動層炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る流動層炉の概略構成図である。
【図2】図1のII−II横断面図である。
【図3】前記流動層炉の流動層における上方領域及び温度センサの配置を説明するための図である。
【図4】他実施形態に係る流動層炉における温度センサの配置を説明するための図である。
【図5】従来の流動層炉の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0024】
本実施形態に係る流動層炉(流動床炉)は、高温の流動粒子(流動砂)によって廃棄物を加熱することにより、廃棄物から可燃性ガスを取り出す炉である。この流動層炉は、図1及び図2に示されるように、内部に流動層14を構成する流動粒子12を有する炉本体20と、炉本体内に流動化ガスを供給するガス供給部30と、流動層14の温度を検出する複数の温度センサ(温度検出部)40と、ガス供給部30を制御する制御部50と、炉本体20内に廃棄物18を供給する廃棄物供給部60と、を備える。
【0025】
流動粒子12は、炉本体20の内部において流動層14を構成し、廃棄物18を加熱するための粒子である。即ち、廃棄物18の一部の燃焼により加熱されて高温になった流動粒子12が廃棄物18と混合されることにより、当該廃棄物18がガス化されて可燃性ガスが発生する。本実施形態では、流動粒子12して珪砂等が用いられる。
【0026】
炉本体20は、高温の流動粒子12によって廃棄物18から可燃性ガスを取り出す。炉本体20は、流動粒子12を下方から支持する底壁21と、この底壁21から立上がる側壁22と、側壁22上端に設けられた可燃性ガス排出部23とを有する。
【0027】
側壁22は、上下に延びる角筒形状を有する。具体的に、側壁22は、前後(図2において左右)に間隔をおいて対向する前壁(供給側側壁)24及び後壁25と、これら前壁24と後壁25との端部同士をそれぞれ接続する横壁26,26と、を有する。横壁26,26同士は互いに平行である。即ち、炉本体20は、横壁26,26同士の間隔である幅方向の寸法が前後方向について均一な平面形状を有する。
【0028】
この側壁22のうち底壁21の中心位置を挟んで排出口29と反対側に位置する側壁(前壁)24には、炉本体20内へ廃棄物18を挿入するための廃棄物挿入口28が設けられる。尚、本実施形態において、図2に示すように、前後方向とは炉本体20における前後方向(図2における左右方向)のことをいい、幅方向とは炉本体20における幅方向(図2における上下方向)のことをいう。
【0029】
廃棄物挿入口28は、前壁24の下部において幅方向の中央部に設けられている。この廃棄物挿入口28は、炉本体20の底壁21が支持する流動粒子12(流動層14)の上面上に廃棄物18を横向きに押し込むことができる高さ位置、即ち、流動層14の上面よりも僅かに高い位置に廃棄物挿入口28の下端が位置するように設けられている。
【0030】
可燃性ガス排出部23は、炉本体20内で発生した可燃性ガスを排出する部位である。この可燃性ガス排出部23は、炉本体20で得られた可燃性ガスを後段の例えば発電プロセスのガスエンジン等に供給するためのダクト等を接続できるよう、側壁22よりも外径が絞られている。
【0031】
底壁21には、その中心位置から特定の方向に偏った位置に廃棄物18中の不燃物を流動粒子12と共に排出するための排出口29が設けられる。この排出口29は、底壁21において前記偏った位置の幅方向の中心部に開口している。底壁21の上面21aは、当該上面21a上を不燃物等が降下するように排出口29に向って低くなるように傾斜する。本実施形態の底壁21の上面21aは、排出口29の前側(図2における左側)の領域211と、排出口29の後側(図2における右側)の領域212と、排出口29の幅方向両側の領域213、214とに分けられる。そして、各領域211、212、213、214は、排出口29へ向かって一定の下り勾配となる傾斜面である。即ち、底壁21の上面21aにおいて最も低い位置に排出口29が設けられている。
【0032】
ガス供給部30は、底壁21から流動粒子12に対して流動化ガスを吹き込むことにより当該流動粒子12を流動化させる。このガス供給部30は、底壁21に配設される複数のノズル31と、各ノズル31に流動化ガスを分配する複数の風箱32と、各風箱32に流動化ガスをそれぞれ供給する供給部33と、を有する。本実施形態では、底壁21において複数のノズル31が幅方向に並べられると共にこの幅方向に並ぶノズル31の列が前後方向に配列されている。即ち、複数のノズル31は、底壁21において幅方向及び前後方向に間隔をおいた格子状に配置される。各ノズル31は、底壁21を貫通するように底壁21に取り付けられている。尚、各ノズル31の配置位置は、前記格子状の配置に限定されない。
【0033】
各風箱32は、底壁21における幅方向の所定の位置からノズル31を介して炉本体20内に流動化ガスを吹き込む。風箱32は、底壁21の下側に配置され、幅方向に延びる箱形状を有する。この風箱32は、底壁21において幅方向に並ぶ各ノズル31に流動化ガスを分配するヘッダーとして働くものであり、幅方向に並ぶ各ノズル31から吹き出される流動化ガスの流量を均一にする機能をもつ。本実施形態では前後二列に並ぶ各ノズル31に対して一つの風箱32から共通の流動化ガスが分配される。
【0034】
これら複数の風箱32は、底壁21の下面側において前後方向に並ぶ。これにより、各風箱32に対応するノズル31毎に、そのノズル31から吹き出す流動化ガスの成分や流量を変更することが可能となる。本実施形態では、底壁21の下側において3個の風箱32a,32b,32cが前後方向に並んでいる。詳しくは、底壁21の下側において、排出口29よりも前壁24側に2個の風箱(第1風箱32a及び第2風箱32b)が配置され、排出口29よりも後壁25側に1個の風箱(第3風箱32c)配置されている。
【0035】
供給部33は、空気(酸素)を供給するための空気供給部34と水蒸気を供給するための水蒸気供給部35と、これら各供給部34、35と各風箱32とを接続する管路36とを有し、これら各供給部34,35から管路36を介して風箱32に空気及び水蒸気をそれぞれ供給する。本実施形態では、これら空気供給部34及び水蒸気供給部35から風箱32に供給される空気又は/及び水蒸気によって流動化ガスが構成される。
【0036】
各管路36には、当該管路36内を流れる流体(本実施形態では空気又は水蒸気)の流量を調整するためのバルブ37a、37b、37c、38a、38b、38cがそれぞれ設けられている。各バルブ37a、37b、37c、38a、38b、38cは、制御部50からの制御信号によって開度を変更する。これにより、各風箱32から炉本体20内に供給される流動化ガスの空気比(酸素濃度)や流量が調整される。
【0037】
複数の温度センサ40は、流動層14の温度を検出するセンサであり、炉本体20内にそれぞれ配置される。各温度センサ40は、制御部50にそれぞれ接続され、検出した温度を温度信号に変換して制御部50に出力する。
【0038】
各温度センサ40は、流動層14における風箱32と上下方向に重なる各領域(以下、単に「上方領域」とも称する。)ua、ua、uaにおいて上下に間隔をおいた上側位置と下側位置との温度を検出できるようにそれぞれ配置される。本実施形態では、6個の温度センサ40が配置されている。具体的には、第1風箱32aの上方領域(第1領域)ua、第2風箱32bの上方領域(第3領域)ua、及び第3風箱32cの上方領域(第2領域)uaにそれぞれ2個の温度センサ40が配置される。尚、本実施形態では、炉本体20に3つの風箱32が設けられているために上方領域ua、ua、uaの数が3つであるが、風箱32の個数が増えればこれに対応して上方領域ua、ua、ua、…の数も増える。また、上側位置とは、上下方向において流動層14の中央よりも上側の位置であり、下側位置とは、前記中央よりも下側の位置である。但し、上側位置は、流動層14の上面より上側の気温や廃棄物の温度の影響を受け難い所定深さ以上の位置であり、下側位置は、底壁21自体の温度の影響を受け難い底壁21の上面21aよりも所定の距離以上上側の位置である。
【0039】
各上方領域ua、ua、uaに配置される2個の温度センサ40は、当該上方領域ua、ua、uaにおける上側位置と下側位置との温度が検出できればよく、上下方向に重なる位置に配置されなくてもよい。即ち、上側位置の温度を検出する温度センサ40と下側位置の温度を検出する温度センサ40とが上方領域ua、ua、ua内において幅方向にずれた位置にそれぞれ配置(図2参照)されてもよく、また、上側位置の温度を検出する温度センサ40と下側位置の温度を検出する温度センサ40とが上方領域ua、ua、ua(詳しくは、前列のノズル31の噴出口と後列のノズル31の噴出口との間の領域(図3の斜線部参照))内において前後方向にずれた位置にそれぞれ配置されてもよい。
【0040】
また、温度センサ40は、第1領域uaと第2領域uaとにおいて上側位置と下側位置との温度を検出できるように配置されていれば、他の上方領域(本実施形態では、第3領域ua)には1個でもよい。また、温度センサ40は、各上方領域ua、ua、uaに3個以上ずつ配置されてもよい。
【0041】
尚、少なくとも第1領域ua内と第2領域ua内とに上側位置と下側位置との温度を検出できるように温度センサ40がそれぞれ配置されていれば、炉本体20内に配置される温度センサ40の具体的な個数や配置位置は、限定されない。
【0042】
例えば、流動層14における第1領域uaと第2領域uaとの間では、1個の温度センサ40が配置されてもよく、また、複数の温度センサ40が前後方向に所定間隔で温度を検出できる位置に(例えば、幅方向から見て前後に一列に並ぶように(図4参照))それぞれ配置されてもよい。この場合、各温度センサ40は、第1領域uaと第2領域uaとの間に位置する各上方領域(本実施形態では第3領域ua)内にそれぞれ配置されてもよく、また、上方領域ua、ua、uaと関係なく前後方向に所定間隔をおいて配置されてもよい。このように配置することにより、流動層14における第1領域uaと第2領域uaとの間の温度を検出することができるため、第1領域uaと第2領域uaとの間において局所的に温度が低下する等の流動層14の局所的な温度異常を検出することが可能となる。
【0043】
また、第1領域uaと第2領域uaとの間の各上方領域ua、…において、温度センサ40が上側位置と下側位置との温度を検出できる位置にそれぞれ配置されることが好ましい。このように各温度センサ40が配置されることにより、流動層14における第1領域uaから第2領域uaまでの各上方領域ua、…における流動不良を好適に検出することができる。詳しくは、底壁21から流動層14内に流動化ガスが供給されたときに、当該流動化ガスが供給された領域の流動粒子12が十分に流動化していればこの流動化ガスが上方に向かって流動層14内を進み易いが、当該領域uaに流動不良が生じていると前記流動化ガスが上方に向かって流動層14内を進み難くなる。そのため、流動不良が生じている領域及びその周囲では流動粒子12が十分に撹拌されず、これにより当該領域における上側位置と下側位置とで温度差が生じ、この温度差を検出することによって当該領域の流動不良を検出することができる。
【0044】
制御部50は、各温度センサ40によって検出された温度に基づいて流動層14の温度が後側に向かって(即ち、前壁24から後壁25に向かって)高くなるように供給部33によって各風箱32に供給される流動化ガスの空気比をそれぞれ調整する。これにより、当該流動層炉10において発生させる可燃性ガスの量や濃度等の急激な変動が抑えられ、その結果、廃棄物18から可燃性ガスを安定して発生させることができる。
【0045】
また、制御部50は、各温度センサ40によって検出された温度に基づいて流動層14に生じた流動異常(局所的な流動不良等)を検出し、ガス供給部30を制御して炉本体20内に供給される流動化ガスの空気比や流量を調整することにより、この流動異常の解消を図る。
【0046】
具体的に、制御部50は、以下の方法(第1の方法)によって、流動層14の前後方向における各領域の温度を制御する。本実施形態において、図1における上側の温度センサ40を左から順に第1温度センサ、第2温度センサ、第3温度センサとし、下側の温度センサを左から順に第4温度センサ、第5温度センサ、第6温度センサとしたときに、第1温度センサによって検出された温度をT、第2温度センサによって検出された温度をT、第3温度センサによって検出された温度をT、第4温度センサによって検出された温度をT、第5温度センサによって検出された温度をT、第6温度センサによって検出された温度をTとする。
【0047】
制御部50は、各温度センサ40からの温度信号を受信して流動層14の各領域(各温度センサ40が配置された領域)の温度を取得すると、TとTの平均値Ave1、TとTの平均値Ave2、TとTの平均値Ave3をそれぞれ求める。そして、制御部50は、これら各平均値Ave1、Ave2、Ave3を比較する。
【0048】
制御部50は、「Ave1<Ave2<Ave3」の関係が崩れると、供給部33によって各風箱32に供給される流動化ガスの流量を一時的に増加させる。ここで、本実施形態の制御部50は、「Ave1<Ave2<Ave3」の関係の監視を常時行うが、所定の時間間隔毎に「Ave1<Ave2<Ave3」の関係を監視してもよい。
【0049】
具体的に、制御部50は、「Ave1>Ave2」又は「Ave2>Ave3」となって温度異常を検出すると、各風箱32に供給される流動化ガスの流量を増加させる。このとき、制御部50は、各風箱32に供給される空気と水蒸気との比(即ち、流動化ガスの空気比)を一定に保ちつつ風箱32から炉本体20内に吹き込まれる流動化ガスの流量だけを増加させる。詳しくは、制御部50は、前記温度異常を検出すると、各風箱32から流動層14内に吹き込ませる流動化ガスの流量を通常の流量(例えば、U/Umf=3.0)から一時的に増加させる(例えば、増加後の流量がU/Umf=5.0)。ここで、Umfは、流動粒子12を流動化するための流動化ガスの吹き込みの最小流速である最小流動化速度であり、Uは、流動化ガスの平均断面流速である。
【0050】
そして、制御部50は、各温度センサ40によって検出した温度が「Ave1<Ave2<Ave3」の関係を満たすと、供給部33を制御して各風箱32から流動層14内に吹き込ませる流動化ガスの流量を元に戻し(前記の例では、U/Umf=5.0から3.0に戻し)、温度の監視を続ける。一方、制御部50は、流動化ガスの流量を増加させて一定時間経過しても、各温度センサ40によって検出された温度が「Ave1<Ave2<Ave3」の関係を満たさなければ、炉本体20内に異常が発生したと判断して、当該流動層炉10の運転を停止する。
【0051】
より具体的には、例えば、流動層14に温度異常が生じていない流動層炉10の通常の運転状態においては、Ave1が600℃付近、Ave2が650℃付近、Ave3が700℃付近である。この状態から炉本体20内に供給される廃棄物18の量又は/及び成分が変動することにより、Ave1が660℃になったとする。このとき、制御部50は、温度異常(Ave1>Ave2)を検出し、各風箱32から流動層14内に吹き込ませる流動化ガスの流量を一時的に増加させる。すると、Ave1が700℃、Ave2が750℃、Ave3が800℃になり、流動層14の温度が全体的に上昇するが、流動層14の局所的な流動不良等のが解消されて炉内のバランスが回復し、各温度センサ40によって検出される温度が「Ave1<Ave2<Ave3」の関係を満たすようになる。その後、制御部50が各風箱32から流動層14内に吹き込ませる流動化ガスの流量を元に戻すと、Ave1が600℃付近、Ave2が650℃付近、Ave3が700℃付近まで戻り、流動層に生じた温度異常が解消される。
【0052】
尚、制御部50は、各温度センサ40によって検出された温度が「Ave1<Ave2<Ave3」の関係を満たしていても、Ave1とAve3とがそれぞれ所定の範囲(min<Ave1<max、及び、min<Ave3<max)から外れた場合に、各風箱32から流動層14内に吹き込ませる流動化ガスの流量を一時的に増加させてもよい。これにより、制御部50は、流動層の前後方向における温度分布(即ち、前壁24から後壁25に向かって温度が徐々に高くなる温度分布)をより好適に維持することが可能となる。
【0053】
また、制御部50は、以下の方法(第2の方法)によって、流動層14の前後方向における各領域の温度を制御してもよい。
【0054】
制御部50は、上記の方法と同様に、「Ave1<Ave2<Ave3」の関係を監視する。即ち、制御部50は、各温度センサ40からの温度信号を受信して流動層14の各領域の温度を取得し、Ave1、Ave2、Ave3をそれぞれ求め、これら各平均値Ave1、Ave2、Ave3を比較する。尚、この方法においても、制御部50は、「Ave1<Ave2<Ave3」の関係の監視を常時行ってもよく、所定の時間間隔毎に「Ave1<Ave2<Ave3」の関係を監視してもよい。
【0055】
制御部50は、「Ave1<Ave2<Ave3」の関係が崩れると、供給部33によって異常領域に対応する風箱32に供給される空気と水蒸気との比を調整する。例えば、Ave1>Ave2となって流動層14の第1領域uaに高温異常が生じると、制御部50は、供給部33を制御して、第1風箱32から流動層14内に吹き込まれる流動化ガスの流量を一定に保ちつつ、バルブ37aを絞ると共にバルブ38aを開いて第1風箱32に供給される空気の流量を減らすと共に水蒸気の流量を増加させる。これにより、第1風箱32から流動層14内に吹き込まれる流動化ガスの空気比が小さくなる(即ち、酸素濃度が低下する)。そして、制御部50は、温度監視を続け、Ave1<Ave2となったら、バルブ37a、38aをそれぞれ元に戻して(即ち、バルブ37aを開くと共にバルブ38aを絞って)第1風箱32から流動層14内に吹き込まれる流動化ガスの空気比(酸素濃度)を元に戻す。一方、第1風箱32から流動層14内に吹き込まれる流動化ガスの空気比を小さくしてから所定時間経過しても温度がAve1>Ave2の状態であれば、制御部50は、炉本体20内に異常が生じたと判断して、当該流動層炉10の運転を停止する。
【0056】
尚、制御部50は、各温度センサ40で検出された温度が「Ave1<Ave2<Ave3」の関係を満たしていても、Ave1とAve3とがそれぞれ所定の範囲(min<Ave1<max、及び、min<Ave3<max)から外れた場合に、Ave1、Ave3を所定の範囲内に戻すために、各バルブ37a、37c、38a、38cの開度を調整して、第1風箱32aから流動層14内に吹き込まれる流動化ガスの空気比、又は第3風箱32cから流動層14内に吹き込まれる流動化ガスの空気比を調整してもよい。具体的に、流動層14の第1領域uaに低温異常が生じると、制御部50は、供給部33を制御して、バルブ37aを開くと共にバルブ38aを絞ることにより、第1風箱32aから流動層14内に吹き込まれる流動化ガスの空気比を大きくする。また、流動層14の第2領域uaに高温異常が生じると、制御部50は、供給部33を制御して、バルブ37cを絞ると共にバルブ38cを開くことにより、第3風箱32cから流動層14内に吹き込まれる流動化ガスの空気比を小さくする。また、流動層14の第2領域uaに高温異常が生じると、制御部50は、供給部33を制御して、バルブ37cを開くと共にバルブ38cを絞ることにより、第3風箱32cから流動層14内に吹き込まれる流動化ガスの空気比を大きくする。
【0057】
また、制御部50は、流動層14の流動異常(流動層14における局所的な流動不良等)が起こったときに生じる流動層14の局所的な温度異常を監視し、この温度異常が検出されると、供給部33を制御して各風箱32に供給される流動化ガスの空気比や流量を調整することにより、流動層14の流動異常を解消する。
【0058】
具体的に、流動不良が生じている領域では流動化ガスの流れ易さが他の領域と異なるため、流動粒子12が十分に撹拌されず、これにより前記上側と下側とで温度差が生じる。そこで、制御部50は、この温度差を検出することによって流動層14における局所的な流動不良、即ち、流動層14の流動異常を検出し、炉本体20内に供給される流動化ガスの流量を調整することによってこれを解消する。
【0059】
詳しくは、制御部50は、以下の方法によって、流動層14の各領域における上下方向(垂直方向)の温度を制御する。
【0060】
制御部50は、各温度センサ40からの温度信号を受信して流動層14の各領域(各温度センサ40が配置された領域)の温度を取得すると、流動層14の各領域における上側位置と下側位置との温度差ΔT(=T−T)、ΔT(=T−T)、ΔT(=T−T)をそれぞれ求める。そして、制御部50は、各温度差ΔT,ΔT,ΔTと予め設定されている所定の値とを比較することにより、流動層14における局所的な流動不良が生じているか否かの監視(検出)を行う。尚、この監視は、常時行われてもよく、所定の時間間隔毎に行われてもよい。
【0061】
例えば、前記所定の値を±10℃としたときに、制御部50は、ΔT,ΔT,ΔT>10℃、又はΔT,ΔT,ΔT<−10℃となった場合に、該当する領域に供給される流動化ガスの流量を一時的に増加させる。具体的に、ΔT<−10℃となった場合、制御部50は、供給部33を制御して、第1風箱32aから流動層14内に吹き込まれる流動化ガスの流量を通常の流量(例えば、U/Umf=3.0)から一時的に増加させる(例えば、増加後の流量がU/Umf=5.0)。このとき、流動化ガスの空気比が変わらないように流量だけを増加させる。そして、制御部50は、ΔT>−10℃且つΔT<10℃となると、供給部33を制御して、第1風箱32aから流動層14内に吹き込まれる流動化ガスの流量を元に戻し(例えば、U/Umf=5.0から3.0に戻し)、温度の監視を続ける。一方、制御部50は、流量を増加させて一定時間経過してもΔT<−10℃の状態のであれば、炉本体20内に異常が生じたと判断して、当該流動層炉10の運転を停止する。
【0062】
また、制御部50は、廃棄物供給部60等の制御も行う。
【0063】
廃棄物供給部60は、前壁24から流動層14上における前壁24に隣接する領域に廃棄物18を供給する。本実施形態の廃棄物供給部60としては、スクリュー押し込み機が用いられる。これにより、シール性を担保しつつ連続的に廃棄物18を炉内に供給することができる。また、紙やプラスチックシートのような嵩比重が小さく、飛散しやすいごみを塊で炉本体20内に供給することができ、従来のように炉の上部から投入する場合に比べ、炉本体20内でこれらのごみが飛散することを抑制することができる。尚、廃棄物供給部60の具体的構成は限定されない。例えば、本実施形態の廃棄物供給部60では、スクリュー押し込み機が廃棄物18を炉内に押し込むが、プッシャ等によって廃棄物18が炉内に押し込まれてもよい。
【0064】
以上のように構成される流動層炉10では、以下のようにして廃棄物18から可燃性ガスが回収される。
【0065】
流動層炉の運転開始時には、制御部50は、各風箱32から炉本体20内の底壁21に支持されている流動粒子12に対して流動化ガスを吹き込ませる。運転開始時には、流動層14に廃棄物18が無い(若しくは有ったとしても微量の)ため、制御部50は、図示しないバーナー等によって流動層14の上部から流動媒体である流動粒子12を加熱する。このとき、制御部50は、水蒸気を吹き込むことなく空気のみを各風箱32から流動粒子12に対して供給することにより流動状態にし、この状態の流動粒子12を加熱する。そして、流動層14全体が所定の温度(例えば、600℃)になった時点で、制御部50は、廃棄物供給部60によって廃棄物18を炉本体20内に投入し始める。このとき、制御部50は、バーナー等の運転を少しずつ抑制し、所定の比率になるように水蒸気の添加量を増やしつつ空気の供給量を絞る。
【0066】
各風箱32から流動粒子12に対して吹き込まれる流動化ガスの空気比は、流動層炉10の運転に適した値として予め求められ、制御部50に記憶されている。即ち、運転中の流動層炉10において、流動層14に温度異常が生じていなければ、制御部50は、各バルブ37a、37b、37c、38a、38b、38cの開度を調整することなく、各風箱32に所定の流量で空気及び水蒸気をそれぞれ供給する。
【0067】
このようにして流動粒子12が流動状態となることにより、炉本体20内に流動層14が形成される。このとき、各風箱32から流動層14内に吹き込まれる流動化ガスの流量は同じであるが、空気比はそれぞれ異なっている。具体的には、流動層14において前壁24から後壁25に向かって温度が高くなるように、制御部50は、第1風箱32aに供給される流動化ガスの空気比よりも第2風箱32bに供給される流動化ガスの空気比が大きく、且つ、第2風箱32bに供給される流動化ガスの空気比よりも第3風箱32cに供給される流動化ガスの空気比が大きくなるように、各バルブ37a、37b、37c、38a、38b、38cの開度を調整する。
【0068】
このように、制御部50は、各風箱32から流動層14内に吹き込まれる流動化ガスの流量を一定とすることにより流動層14における各領域の流動状態を好適に維持しつつ、流動層14内の各領域における酸素濃度を変化させることにより所定の温度分布(即ち、前壁24から後壁25に向かって温度が高くなる温度分布)を形成する。
【0069】
Ave1が600℃付近、Ave2が650℃付近、Ave3が700℃付近となると、制御部50は、炉内が定常状態になったと判断し、流動層14の温度制御を開始する。尚、本実施形態において制御部50は、Ave1とAve3との温度差が50℃以上となり、且つ、Ave1が600℃〜700℃、Ave3が700℃〜800℃となるように流動層14の温度制御を行う。
【0070】
具体的には、スクリュー押し込み機(廃棄物供給部60)が炉本体20内に横向きに廃棄物18を押し込む。これにより、廃棄物18は、第1領域ua上に押し込まれる(図1及び図2参照)。炉本体20内では活発な流動層14が形成されているため、投入された廃棄物18は、流動層14に取り込まれつつ拡散作用によって前壁24側から後壁25側に向かって拡散しながら移動する。尚、流動層14内での廃棄物18は、前壁24から後壁25側への一方向にのみ移動するのではなく、上下方向、左右方向、前後方向への往復移動を繰り返しつつ、廃棄物18の密度が高い領域から低い領域へ(即ち、投入側(前壁24)から後壁25へ)向けて徐々に拡散して移動する。
【0071】
このとき、流動層14の第1領域uaの温度が低いため、廃棄物18の急激な燃焼が抑えられ、廃棄物18のうちガス化し易いものがガス化する。即ち、プラスチックや紙等のガス化し易い廃棄物18は第1領域ua及びその隣接領域でガス化する。一方、木片などのガス化し難いものは一部がガス化されるものの、大部分がガス化されずに流動粒子の流動等によって後壁25側に徐々に移動して第2領域uaまで到達する。このように、ガス化し易い廃棄物18を、第2領域uaに到達する前に第1領域uaやその周辺(第2領域ua側の領域)において穏やかな条件(低い温度)でガス化させることにより、発生する可燃性ガスの変動を抑制することができる。
【0072】
そして、流動層14における排出口29と上下方向に重なる領域及びその周辺の高温の領域においてこの移動してきた廃棄物18が流動粒子12と十分に混合されることにより、前壁24側の領域において燃え残った廃棄物18のガス化が十分に行われる。
【0073】
このように、流動層14の温度が前壁24から後壁25側に向かって高くなっている状態で廃棄物18がスクリュー押し込み機60によって連続的に供給されることにより、可燃性ガスの間欠的且つ急激な発生が抑えられ、当該可燃性ガスの発生を安定させることができる。
【0074】
流動層14において排出口29から不燃物等と共に排出される流動粒子12は、必要に応じて前記不燃物等と分離され、再度、炉本体20の中に投入される。
【0075】
尚、廃棄物18の投入量や廃棄物18に含まれるゴミの成分等によって、流動層14の温度分布に異常が生じたり(局所的に温度の低い領域や高い領域が生じたり)、流動異常(流動層14における局所的な流動不良等の発生)等が生じた場合には、制御部50は、上記のように各温度センサ40において検出した温度に基づいてガス供給部30を制御して各風箱32に供給される空気の流量や水蒸気の流量を調整することにより、流動層14の温度分布の異常や流動異常を解消させる。
【0076】
炉本体20内で発生した可燃性ガスは、炉本体20の可燃性ガス排出部23から当該可燃性ガス排出部23に接続されたダクト等を介して後段の例えば発電プロセスのガスエンジン等に供給される。このとき、可燃性ガスに含まれる水蒸気は、可燃性ガスの温度を下げることにより凝縮して水となり回収される。これにより、流動層炉10の後段へは、水蒸気が除去された可燃性ガスが供給される。
【0077】
このように、上記の流動層炉10では、第1領域uaから第2領域uaに向けて温度が高くなっている流動層14の第1領域ua側に廃棄物供給部60によって廃棄物18が供給されることにより、発生させる可燃性ガスの量や濃度等の急激な変動が抑えられ、その結果、廃棄物18から可燃性ガスを安定して発生させることができる。
【0078】
具体的には、流動層14において温度の低い第1領域ua側に廃棄物18が供給されることにより、廃棄物18中の燃え易いゴミの急激な燃焼が抑えられ、また、廃棄物18のガス化による可燃性ガスの発生も少ない。この廃棄物18は、流動層14を構成する流動粒子12の流動や廃棄物供給部60によって炉本体20内に新たな廃棄物18が供給されること等によって炉本体20内を排出口29側に(即ち、流動層14の第2領域uaに向けて)移動する。そうすると、この第2領域uaでは、高温であるため、第1領域ua側から移動してきた廃棄物18が十分にガス化されて可燃性ガスが発生する。これにより、可燃性ガスの間欠的且つ急激な発生が抑えられ、当該ガスの発生を安定させることができる。
【0079】
また、前壁24から後壁25(又は排出口29)に向かう方向における流動層14の各領域に供給される流動化ガスの空気比を調整することによって流動層14の前記各領域の温度を調整するため、流動層14において流動異常(流動層14における局所的な流動不良等)が生じ難くなる。即ち、流動層14の前記各領域に供給する流動化ガスの流量を十分に保って前記各領域の流動粒子12の流動状態を良好に維持しつつ、流動層14に供給される流動化ガスの空気比(即ち、酸素濃度)の調整によって前記各領域の温度を調整する。しかも、第1領域ua、第2領域ua、及び第3領域uaにおいて上下に間隔をおいた上側位置と下側位置との温度をそれぞれ検出することにより、当該領域に流動不良が生じた場合にこれを確実に検出することができる。
【0080】
また、炉本体20の底壁21の上面21aが排出口に向かって低くなるように傾斜しているため、流動層14において底壁21まで沈んだ廃棄物18中の不燃物や炭化物等は、排出口29に向かって底壁21の上面21a上を降下する。これにより、前記不燃物等を炉本体20から容易に排出することができる。
【0081】
尚、本発明の流動層炉は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0082】
各上方領域ua、ua、ua内に配置される温度センサ40は、上側位置と下側位置との温度を検出する位置に加え、上下方向における上側位置と下側位置との中間位置の温度を検出する位置に配置されてもよい。
【0083】
また、上記実施形態において、各温度センサ40は、前後方向において、同じ高さ位置に間隔をおいて並ぶように配置されているが、これに限定されない。各温度センサ40は、上方領域ua、ua、ua毎に異なる高さ位置であってもよい。
【0084】
排出口29の前後(図3において排出口29の右側及び左側)の両側において風箱がそれぞれ排出口29に隣接している場合には、排出口29に最も近い風箱とはこれら両方の風箱を差す。但し、流動層14全体の温度を好適に制御する観点から、排出口29の後側(図3における右側)の風箱における上方領域の温度を制御することが好ましい。
【符号の説明】
【0085】
10 流動層炉
12 流動粒子
14 流動層
18 廃棄物
20 炉本体
21 底壁
21a 底壁の上面
24 前壁(供給側側壁)
29 排出口
30 ガス供給部
32 風箱
33 供給部
40 温度センサ(温度検出部)
50 制御部
60 廃棄物供給部
ua、ua、ua 上方領域(第1領域、第2領域、第3領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を加熱して当該廃棄物から可燃性ガスを取り出す流動層炉であって、
前記廃棄物を加熱するための流動層を構成する流動粒子を下方から支持する底壁およびこの底壁から立上がる側壁を有し、前記底壁においてその中心位置から特定方向に偏った位置に前記廃棄物中の不燃物を前記流動粒子と共に排出するための排出口が設けられ、この排出口に向かって前記底壁の上面上を前記不燃物が降下するように当該底壁の上面が前記排出口に向かって低くなるように傾斜する炉本体と、
前記炉本体の底壁から前記流動粒子に対して流動化ガスを吹き込むことにより当該流動粒子を流動化させるガス供給部と、
前記流動層の温度を検出する複数の温度検出部と、
前記ガス供給部を制御する制御部と、
前記側壁のうち前記底壁の中心位置を挟んで前記排出口と反対側に位置する供給側側壁から前記流動層上における当該供給側側壁に隣接する領域に前記廃棄物を供給する廃棄物供給部と、を備え、
前記ガス供給部は、前記底壁の下側において前記供給側側壁から前記排出口に向かう方向と直交する方向に延び、且つこの直交する方向の所定の位置から前記流動粒子に対して前記流動化ガスを吹き込むための複数の風箱と、これら各風箱に前記流動化ガスをそれぞれ供給し、且つ前記各風箱に供給される前記流動化ガスの空気比をそれぞれ調整可能な供給部と、を有し、
前記複数の風箱は、前記供給側側壁から前記排出口に向かう方向に配列され、
前記複数の温度検出部は、前記流動層における前記供給側側壁に最も近い第1の風箱と上下方向に重なる第1領域内において上下に間隔をおいた上側位置と下側位置との温度を検出すると共に、前記流動層における前記排出口に最も近い第2の風箱又は前記排出口と上下方向に重なる第2領域内において上下に間隔をおいた上側位置と下側位置との温度を検出できる位置にそれぞれ配置され、
前記制御部は、前記各温度検出部によって検出された温度に基づいて前記第1領域から前記第2領域に向けて流動層の温度が高くなるように前記供給部によって前記各風箱に供給される流動化ガスの空気比をそれぞれ調整することを特徴とする流動層炉。
【請求項2】
請求項1に記載の流動層炉において、
前記流動層における前記第1領域と前記第2領域との間では、前記複数の温度検出部は、前記供給側側壁から前記排出口に向かう方向に所定間隔で温度を検出できる位置にそれぞれ配置される流動層炉。
【請求項3】
請求項2に記載の流動層炉において、
前記第1領域と第2領域との間に配置される各温度検出部は、前記第1の風箱と前記第2の風箱との間に配置される各風箱と上下方向に重なる各領域の温度を検出できる位置にそれぞれ配置される流動層炉。
【請求項4】
請求項3に記載の流動層炉において、
前記第1領域と第2領域との間の前記風箱と上下方向に重なる各領域では、前記各温度検出部は、上下に間隔をおいた上側位置と下側位置との温度を検出できる位置にそれぞれ配置される流動層炉。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−215307(P2012−215307A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78981(P2011−78981)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】