説明

流動床式焼却炉

【課題】 流動床への燃料ガスの滞留時間が長くなって流動床で燃焼する燃料ガスの量が多くなり、流動床が効果的に加熱されて効率が向上すると共にCOやNOxの発生量も抑えることができる流動床式焼却炉を提供する。
【解決手段】 焼却炉1内の下部に砂等の流動媒体を装填して流動床2を形成し、流動床2内に散気手段5にて流動エアを散気して流動床2に混入された被焼却物を流動攪拌すると共にガスガン4aのような燃焼手段4で流動床2内に燃焼火炎を吹き出して流動床2を加熱することにより被焼却物を燃焼させるようにした流動床式焼却炉である。これにおいて、中空パイプ13に複数個のガス噴出孔14を列設したガス散出管15を流動床2内に導入し、空気の未混合の生の燃料ガスをガス散出管15に供給してガス噴出孔14から流動床2内に生の燃料ガスを供給するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流動床を流動させて汚泥、産業廃棄物等の被焼却物を焼却する流動床式焼却炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に流動床式焼却炉は、汚泥などの低発熱量のものから、プラスチックなどの高発熱量のものまで焼却可能であり、下水汚泥焼却炉として広く用いられている。
【0003】
従来、この種の流動床式焼却炉の一例としては図7に示すものがある(例えば、特許文献1参照)。これは焼却炉1内の下部に砂等の流動媒体を装填して流動床2を形成してあり、流動床2の上方を燃焼室3としてある。流動床2には燃焼手段4としてガスガン4aを導入してあり、燃料ガスに空気を予混合したガスをガスガン4aに供給してガスガン4aで燃焼させて火炎を流動床2に吐出させるようになっている。またガスガン4aの下方で流動床2内に散気手段5としての散気管5aを配置してあり、散気管5aに流動エアを供給して流動エアを散気管5aから散気することで流動媒体を攪拌できるようになっている。また焼却炉1には燃焼室3を昇温するための昇温バーナ7や被焼却物を投入するための被焼却物投入口8を設けてある。焼却炉1の上には排気口9を設けてあり、排気口9から排気経路10を経て排気する排気ガスと散気管5aに給気経路11を経て供給する流動エアとを熱交換器12にて熱交換するようになっている。
【0004】
上記の流動床式焼却炉で被焼却物を焼却する場合、被焼却物投入口8から被焼却物が投入され、ガスガン4aで燃焼させられてガスガン4aから流動床2内に火炎が吐出され、また散気管5aから流動エアを散気することで流動媒体及び被焼却物を攪拌し、必要に応じて昇温バーナ7を燃焼させることにより被焼却物を燃焼させるようになっていた。
【特許文献1】特開2000−81206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来例にあっては、ガスガン4aから空気を燃料ガスに予混合したガスを吐出させて流動床2内で燃焼させるようになっているが、散気管5aから流動エアを吐出させることで流動媒体や被焼却物を流動させているためにガスガン4aから吐出させた燃料ガスが燃焼したときの熱が流動床2に余り留まらず、流動床2が効果的に加熱されず原単位(単位重量の被焼却物を燃焼させるのに必要な熱量であり、この熱量が少ない程、原単位が高い)が低く、効率が悪かった。つまり、焼却炉1の下部まで高温燃焼させることができないために焼却炉1内での熱気の滞留時間が短くて熱の効率が悪いと共にCO、NOxの発生もしやすかった。
【0006】
この効率を向上するために散気管5aに送る流動エアに燃料ガスを混入することも行われているが、流動エアに薄められた燃料ガスが散気管5aから出ると共に散気管5aから出る流動エアで流動媒体が流動することにより燃料ガスが燃焼室3に抜け、流動床2内で燃焼する燃料ガスの量がさほど増えなく、依然として流動床2が効果的に加熱されず原単位が低くなり、効率が悪かった。
【0007】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、流動床への燃料ガスの滞留時間が長くなって流動床で燃焼する燃料ガスの量が多くなり、流動床が効果的に加熱されて効率が向上すると共にCOやNOxの発生量も抑えることができる流動床式焼却炉を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の流動床式焼却炉は、焼却炉1内の下部に砂等の流動媒体を装填して流動床2を形成し、流動床2内に散気手段5にて流動エアを散気して流動床2に混入された被焼却物を流動攪拌すると共にガスガン4aのような燃焼手段4で流動床2内に燃焼火炎を吹き出して流動床2を加熱することにより被焼却物を燃焼させるようにした流動床式焼却炉において、中空パイプ13に複数個のガス噴出孔14を列設したガス散出管15を流動床2内に導入し、空気の未混合の生の燃料ガスをガス散出管15に供給してガス噴出孔14から流動床2内に生の燃料ガスを供給するようにしたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、散気手段5から流動エアを散気して流動媒体と被焼却物とを流動攪拌しながらガスガン4aのような燃焼手段4から燃焼火炎を流動床2に吹き出して流動床2を加熱することで被焼却物が焼却される。そしてこのときガス散出管15のガス噴出孔14から生の燃料ガスが散出されるために燃料ガスが直ぐに希薄にならないと共に流動床2への滞留時間が長くなる。これによりガス散出管15から散出した燃料ガスが流動床2から抜けにくくなり、流動床2で燃料ガスが効果的に燃焼して流動床2が加熱される。これにより投入される被焼却物の量や質に拘わらず、安定的に燃焼させることができ、しかも焼却炉1の下部から高温燃焼させることにより、焼却炉1内への熱気の滞留時間を稼ぎ、効率よく焼却できると共にCO、NOx発生量を低く抑えることができる。
【0010】
また流動エアを散気する散気手段5の下方にガス散出管15を導入したことを特徴とすることも好ましい。この場合、流動エアを散気する散気手段5の下にガス散出管14から生の燃料ガスを散出することにより、より下方の位置で燃焼ガスを噴出することができ、一層の燃料ガスの流動床2への滞留時間が長くなり、流動床2で燃料ガスが一層効果的に燃焼して流動床2が加熱され、被焼却物を効率よく焼却することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は叙述の如くガス散出管のガス噴出孔から空気の未混合の生の燃料ガスを噴出するので、ガス噴出孔から散出した燃料ガスが希薄にならないと共に流動床への滞留時間が長くなるものであって、ガス散出管から散出した燃料ガスが流動床から抜けにくくなり、流動床で燃料ガスが効果的に燃焼して流動床が加熱される。従って、投入される被焼却物の量や質に拘わらず、安定的に燃焼させることができるのは勿論、焼却炉の下部から高温燃焼させることにより、焼却炉内への熱気の滞留時間を稼ぎ、効率よく焼却できると共にCO、NOxの発生量を低く抑えることができるという効果がある。このとき散気手段より下に配置したガス散出管から生の燃料ガスをを噴出するようにしてあると、一層流動床から燃料ガスが抜けにくくなり、一層被焼却物を効率よく焼却することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。流動床式焼却炉の本体となる焼却炉1は耐火材にて形成されており、図1、図2に示すように焼却炉1内の底部に砂のような流動媒体を装填してあり、この流動媒体にて流動床2を形成してある。この流動床2には散気手段5として散気管5aを配置してあり、この散気管5aには給気経路11を経て流動エアを供給するようになっている。この散気管5aは平行に複数本並設してある。そして給気経路11から流動エアを散気管5aに供給することにより流動媒体と被焼却物とを混合攪拌することができるようになっている。また散気管5aの上には燃焼手段4としてガスガン4aを配置してあり、ガスガン4aから燃料ガスを流動床2内に噴出して流動床2内で火炎を形成して燃焼するようになっている。このガスガン4aは図4に示すような構造になっており、外管16にはメインガス管17とパイロットガス管18とを並設してあり、メインガス管17とパイロットガス管18には夫々燃料ガスと一次空気とを混合した空気予混合の燃料ガスを供給できるようになっている。また外管16の基部には二次空気を導入する空気導入口19を設けてあり、空気導入口19から導入された二次空気を取り入れることでメインガス管17とパイロットガス管18の先端で燃焼をするようになっている。また外管16の先端の手前には砂のような流動媒体を避けるためのマトリックス22を装着してある。
【0013】
また本発明では流動床2にガス散出管15を導入してあり、このガス散出管15から流動床2に空気未混入の生の燃料ガスを散出することができるようになっている。このガス散出管15は図5に示すように中空パイプ13に複数のガス噴出孔14を列設して形成してある。かかるガス噴出孔14は例えば5mmφ程度の径である。またガス散出管15を流動床2に導入する位置は図1のように散気管5aの下であっても図2に示すように散気管5aの上であってもよいが、散気管5aの下に設ける方が好ましい。
【0014】
焼却炉1内の上部は燃焼室3となっており、この燃焼室3には昇温バーナ7を装着してある。この昇温バーナ7は焼却炉1の起動時等に燃焼させて燃焼室3を加熱するようになっている。また焼却炉1の上部には焼却する被焼却物を投入するための被焼却物投入口8を設けてある。焼却炉1の上端には排気口9を設けてあり、この排気口9から排気経路10を経て排気ガスを外部に排気できるようになっている。この排気経路10の途中には熱交換器12を配置してあり、散気管5aに給気経路11を経て供給する流動エアとを熱交換器12にて熱交換するようになっており、排気ガスで流動エアを加熱して供給することができるようになっている。また焼却炉1の下端には排出口20を設けてある。また21は点検口である。
【0015】
上記の焼却炉1で燃料として用いられる燃料ガスは一般的には都市ガスであって、例えば13Aと称される天然ガスである。かかる燃料ガスは都市ガスに限定されず、プロパンガスやブタンガス等であってもよい。
【0016】
本発明流動床式焼却炉は上記のように構成され、次のように被焼却物の焼却が行われる。ガスガン4aから流動床2内に火炎が噴出されて流動床2が加熱されると共に散気管5aから流動エアが散気されて流動床2の流動媒体が流動攪拌される。流動床式焼却炉の起動時は昇温バーナ7が燃焼させられて流動床2と燃焼室3が加熱される。被焼却物は被焼却物投入口8から投入され、上記流動エアの散気により流動媒体と一緒に被焼却物が混合攪拌される。このとき、ガス散出管15から空気未混入の生の燃料ガスが噴出されて流動床2内に供給され、流動床2内で空気と混合されて燃焼する。これにより流動床2内が800℃程度に加熱されて被焼却物が焼却される。このとき流動床2で燃焼しなかった未燃焼ガスは燃焼室3で燃焼させられる。
【0017】
上記のように被焼却物が燃焼させられるが、ガス散出管15から生の燃料ガスが散出されることにより、燃料ガスが直ぐに希薄にならないと共に流動床2への滞留時間が長くなり、流動床2に燃焼ガスが長く滞留して燃焼するため流動床2で燃料ガスが多く燃焼する。従って、投入される被焼却物の量や質に拘わらず、安定的に燃焼させることができるのは勿論、焼却炉1の下部から高温燃焼させることにより、焼却炉1内への熱気の滞留時間を稼ぎ、効率よく焼却できると共にCO、NOxの発生量を低く抑えることができる。このとき、図1のように散気管5aの下にガス散出管15を配置して流動床2に燃料ガスを噴出させる方が、流動床2から燃料ガスが一層抜けにくくなり、一層燃焼の効率を向上することができる。
【0018】
また燃料ガスとして都市ガスを用いた場合、都市ガスの汎用性や制御の容易さから便利に使用できるが、都市ガスは空気より比重が軽いために流動床2は滞留しにくいが、上記ようにガス散出管15より生の燃料ガスを散出させるようにすると、空気より比重の軽い都市ガスでも流動床2に滞留させることができて燃焼の効率を向上させることができる。
【0019】
上記のように本発明ではガス散出管15から生の燃料ガスを噴出することで燃料ガスを流動床2に滞留しやすくしているが、これに加えて図6に示すように給気経路11から給気する流動エアにも生の燃料ガスをプレミックスとして混合し、散気管5aから散気することでも燃料ガスを流動床2に滞留させる機能を持たせてよい。
【0020】
なお、本発明のようにガス散出管15を流動床2に導入して流動床3に生の燃料ガスを噴出させるようにするのは新設の流動床式焼却炉の場合であっても、既設の流動床式焼却炉の場合であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の流動床式焼却炉の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】同上の他の例を示す断面図である。
【図3】同上の外観を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】同上のガスガンを示す断面図である。
【図5】同上のガス散出管を示す一部切欠正面図である。
【図6】同上の他の例の断面図である。
【図7】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 焼却炉
2 流動床
4 燃焼手段
4a ガスガン
5 散気手段
5a 散気管
13 中空パイプ
14 ガス噴出孔
15 ガス散出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉内の下部に砂等の流動媒体を装填して流動床を形成し、流動床内に散気手段にて流動エアを散気して流動床に混入された被焼却物を流動攪拌すると共にガスガンのような燃焼手段で流動床内に燃焼火炎を吹き出して流動床を加熱することにより被焼却物を燃焼させるようにした流動床式焼却炉において、中空パイプに複数個のガス噴出孔を列設したガス散出管を流動床内に導入し、空気の未混合の生の燃料ガスをガス散出管に供給してガス噴出孔から流動床内に生の燃料ガスを供給するようにしたことを特徴とする流動床式焼却炉。
【請求項2】
流動エアを散気する散気手段の下方にガス散出管を導入したことを特徴とする請求項1記載の流動床式焼却炉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−226631(P2006−226631A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42608(P2005−42608)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】