説明

流路閉塞度検査装置

【課題】構造が簡単で安価なうえ、応答性がよく、熱影響により検出精度が低下することがない流路閉塞度検査装置を目的とする。
【解決手段】被検査物の連通流路内に吹き込まれたパルスエアが外部開放口Hより流出する際の風速に基づいて連通流路の閉塞を検知する孔閉塞検査装置であって、被検査物の外部開放口から噴出されるエアを導入するエア導入孔11とエアの排出孔12とを備えた貫通流路13を形成し、風速により変位する撓み板14をエアの流れを阻害しない隙間をもたせて前記排出孔12の出口に配設し、前記撓み板14の変位に基づいて排出孔12を通過する風速を検出するもので、応答性が良好なうえ、熱による影響が少なく閉塞度の検出精度の低下を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックやシリンダヘッド等の鋳造品に形成される冷却水流路の閉塞状態を検出する流路閉塞度査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、風速により流路の閉塞度を検査する方法は本出願人によって出願され登録されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。また、開口部から吹き込まれた空気が他の開口部より流出する空気流量を測定する方法がある(例えば、特許文献3)。
【0003】
しかし、風速で測定を行う場合、熱線あるいは半導体等よりなる感熱部から熱を奪い温度を下げるのに時間がかかり応答が遅くなるという問題があり、また、風量による測定でも、一定の風量に達するまでに時間がかかり応答が遅くなるという問題がある。しかも、風速による測定の場合、風温が高いと熱線の放熱が悪く温度が下がり難くなるため、温度補償素子サーミスタを組み込んでいるが、温度補償サーミスタと熱線感知部の熱容量が大きく異なるため、急激な風温上昇が20℃近くになると、熱線の放熱が悪く冷え難くなるうえに温度補償素子は応答が遅いため、風温変化に直ちに反応せず測定値が1/2以下の低風速と表示するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3268766号
【特許文献2】特許第3406872号
【特許文献3】特開2007−38239号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、構造が簡単で安価なうえ、応答性がよく、熱影響により検出精度が低下することがない流路閉塞度検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被検査物の連通流路内に吹き込まれたパルスエアが外部開放口より流出する際の風速に基づいて連通流路の閉塞を検知する孔閉塞検査装置であって、被検査物の外部開放口から噴出されるエアを導入するエア導入孔とエアの排出孔とを備えた貫通流路を形成し、風速により変位する撓み板をエアの流れを阻害しない隙間をもたせて前記排出孔の出口に配設し、前記撓み板の変位に基づいて排出孔を通過する風速を検出することを特徴とする流路閉塞度検査装置である。
【0007】
なお、撓み板の制振機構を設けたり、撓み板の変位を検出する変位センサを、撓み板の背面側に配置させたりしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、被検査物の連通流路内に吹き込まれたパルスエアが外部開放口より流出する際の風速に基づいて連通流路の閉塞を検知する孔閉塞検査装置であって、被検査物の外部開放口から噴出されるエアを導入するエア導入孔とエアの排出孔とを備えた貫通流路を形成し、風速により変位する撓み板をエアの流れを阻害しない隙間をもたせて前記排出孔の出口に配設し、前記撓み板の変位に基づいて排出孔を通過する風速を検出することにより、応答性が良好なうえ、熱による影響が少なく閉塞度の検出精度の低下を抑えることができ、しかも、簡単な構造で安価に提供できる。
【0009】
また、請求項2のように、撓み板の制振機構を設けたことにより、撓み板が外部からの振動の影響を受けることを防止できるので、風速の検出精度を高めることができる。
【0010】
さらに、請求項3のように、撓み板の変位を検出する変位センサを、撓み板の背面側に配置させたことにより、変位センサによりエア流が阻害されることがないので、精確な風速を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す断面図である。
【図2】同じく側面図である。
【図3】同じく平面図である。
【図4】撓み板の変位を渦流センサにより検出する実施例を示す要部の断面図である。
【図5】撓み板の変位を光電センサにより検出する実施例を示す要部の断面図である。
【図6】光電センサによる検出方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を鋳造品よりなるシリンダヘッドS(被検査物)に形成された連通流路の閉塞度を検査する実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
1はシリンダヘッドSに例えば、中央下面に形成された外部開放口Hを通じてパルスエアを連通流路に吹き込むノズルであり、該ノズル1は方向制御弁2、流量調整弁3、圧力制御弁4、フィルタ5、コック7を介してエア源8に接続されて、1〜10Hz程のパルス周波数でパルスエアを噴出させるものである。
【0013】
パルスエアのパルス周波数を1〜10Hz程とするのは、ノズル1から外部開放口Hまでの距離の遠近によりエアが到達する時間が変わるからである。例えば、シリンダヘッドSの中間部に配置させたノズル1から風速1m/secのエアが噴出されるとした場合、シリンダヘッドSの長さを360mmとすると、検査ヘッド10を配置させた側面の外部開放口Hまでの距離は180mmとなり、外部開放口Hに達するまで0.18sec要する。このため、0.18sec以上エアを噴射しないと、エアは外部開放口Hに達しないことになります。さらに、エアを止めてエアの流れが安定するのに約0.1sec必要とするから、0.28secの周期より早くすることができないので、パルス周波数は3Hz程度が限界となる。このことはノズル1から検査ヘッド10までの距離が短いほど高いパルス周波数で測定が行えることとなり、測定時間を短縮することができる。
【0014】
また、圧力を高めて間歇的にエアを噴出させるパルスエアとすることにより、エアを総量を増さず撓み板14の変位量を大きくすることができるので、検出精度をたかめることができるうえに電力消費が減りランニングコストを抑えることができる。また、測定タイミングを合わせることができるので、測定時以外の振動等による影響を抑えることができるので検出精度を向上させることができる。
【0015】
前記外部開放口HはシリンダヘッドSの底面と上面、及び側面に多数形成されており、該各外部開放口Hはパルスエアを吹き込むノズル1の挿入孔としたり、風速を検出する検査ヘッド10の取付部としたりする。検査ヘッド10は外部開放口Hと密接させるほうが風量の漏れが抑えられるが、鋳造品よりなるシリンダヘッドSには部位によっては凹凸形状があり、密接させると検査ヘッド10の貫通流路13と外部開放口Hとの中心軸線がずれるため、ずれが生じない範囲まで近接させるか、弾性パッドを介在させて中心軸線のずれを防げば、エアの漏れも抑えられるので好ましい。
【0016】
また、検査ヘッド10は被検査物としてのシリンダヘッドSの外部開放口H径より大径のエア導入孔11とシリンダヘッドSの外部開放口H径より小径の排出孔径dを有する排出孔12とを備えた漏斗状の貫通流路13が形成され、外部開放口Hからの風が滑らかに流入して、流速を減少させず貫通流路13に導入できるようになっているが、ワーク形状や測定条件によっては漏斗状としなくてもよい。
【0017】
14は検査ヘッド10の排出孔12側出口に隙間Lを介して配設される金属製の撓み板であり、エア流量、すなわち風速に応じて変位する撓み板であり、該撓み板14の幅は排出孔径dとを略等しいものとして、排出孔径dから吹き出されるエア全体を受け止めることができるようになっているが、ワーク形状や測定条件によっては必ずしも等しくしなくてもよい。金属製の撓み板14は約0℃〜50℃の温度範囲内で安定した変位をすることが実験により得られた。
【0018】
また、エア流を阻害しないよう隙間Lを介して出口に配設される撓み板14は、隙間LがL>1/4d(d=排出孔径)との関係となるように設定されているが、ワーク形状や測定条件によっては必ずしも上記の関係に設定する必要はない。
【0019】
また、撓み板14は例えば、ステンレスのように非磁性材で、厚みを0.1mm〜0.02mmとし、大きな風速を検出する場合は厚手もものを用い、小さな風速を検出する場合は薄手のものを用いることが好ましい。具体的には撓み板14は0.1mmの厚みとした場合、パルスエアによるエア流による風速から数ミクロンの変位が得られる。しかし、撓み板14は風速を検出できる厚みとなると外部振動の影響を受け易くなるので、パルスエアを噴射してから外部開放口Hから噴出するタイミングと測定タイミングを一致させることにより定常的に発生する振動による変位分を測定値から除去したり、加算したりすることにより、検出精度を向上させたり、制振機構16を設けて外部振動の影響を除去して検出精度を向上させたりする。
【0020】
前記制振機構16としては、撓み板14が非磁性良導体の場合、積算電力計の原理を利用して制振を行う。これは固定の磁石を近接させた撓み板14が振動すると渦電流が発生して撓み板14を動かそうとする力が働く、この撓み板14を動かそうとする力を制振力として利用するものである。この渦電流による力は風速による力より小さいものとすることは言うまでもない。あるいは、撓み板14の端縁付近に上下方向からの空気流を形成し、空気の粘性で撓み板14の振動を抑える空気制振を利用してもよい。
【0021】
15は渦電流方式の微小変位計やレーザ式変位計、光量式変位計、歪みゲージ等の変位センサであり、該変位センサ15は撓み板14の背面側に配置させることにより、撓み板14に吹き付けられるエア流を阻害することなく風速を精度よく検出できる。前記した光量式変位計は図6に示されるよう、投光用の光ファイバーと受光用の光ファイバーとからなり、投光用の光ファイバーによる投光面と、受光用の光ファイバーによる受光面との重なり合った領域が反射入光面となり、撓み板14の変位により変動する反射入光面の光量に基づいて撓み板14の変位量を検出する。
【0022】
20は必要に応じてシリンダヘッドSの上面を覆う遮蔽板であり、該遮蔽板20はノズル1をシリンダヘッドSの中央部下面に上向きに配置させて検査ヘッド10を側面あるいは両側面に配置させた場合、エアの移動距離が長くなり側面から吹き出されるエアが弱くなるからであり、ノズル1を側面の外部開放口Hに向けて横向きに配置させれば遮蔽板20は不要となる。
【0023】
このように構成されたものは、シリンダヘッドSの上面を遮蔽板20で覆ったうえ、シリンダヘッドSの中央下面の外部開放口Hにノズル1を挿し込む。次いで、シリンダヘッドSの側面に検査ヘッド10を配置させる。
【0024】
次いで、方向制御弁2を切り換えることによりエアをオンオフしてパルスエアを生じさせて例えば、ノズル1から風速1m/sec、周波数3Hzのパルスエアエアを噴出させれば、約0.18sec後、パルスエアは側面に配置した検査ヘッド10の外部開放口H径より漏斗状の貫通流路13に流入する。
【0025】
そして、パルスエアは貫通流路13の出口に隙間Lを介して配設されている撓み板14に吹き付けられる。このとき撓み板14に吹き付けられるパルスエアの風速は、シリンダヘッドSの連通流路に狭窄や閉塞があれば小さなものとなり、閉塞がなければ風速は大きくなるので連通路の閉塞度を検出できるものとなる。
【符号の説明】
【0026】
1 ノズル
2 方向制御弁
3 流量調整弁
4 圧力制御弁
5 フィルタ
6 コック
7 エア源
10 検査ヘッド
11 エア導入孔
12 排出孔
13 貫通流路
14 撓み板
15 変位センサ
16 制振機構
20 遮蔽板
d 排出孔径
L 隙間
H 外部開放口
S シリンダヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の連通流路内に吹き込まれたパルスエアが外部開放口より流出する際の風速に基づいて連通流路の閉塞を検知する孔閉塞検査装置であって、被検査物の外部開放口から噴出されるエアを導入するエア導入孔とエアの排出孔とを備えた貫通流路を形成し、風速により変位する撓み板をエアの流れを阻害しない隙間をもたせて前記排出孔の出口に配設し、前記撓み板の変位に基づいて排出孔を通過する風速を検出することを特徴とする流路閉塞度検査装置。
【請求項2】
撓み板の制振機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の流路閉塞度検査装置。
【請求項3】
撓み板の変位を検出する変位センサを、撓み板の背面側に配置させたことを特徴とする請求項1または2に記載の流路閉塞度検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−276391(P2010−276391A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127130(P2009−127130)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】