説明

流路開閉弁

【課題】バルブ押さえをボールバルブの回転に追従して回動することを可能にすると共に、バルブ押さえとバルブ本体との接触抵抗を可及的に減少させる。
【解決手段】EGRバルブ20はバルブ本体22とボールバルブ30とシャフト軸90と、前記ボールバルブ30が接するバルブ押さえ32と、バルブシート39とを有し、前記バルブ押さえ32は可動部材34とウェーブワッシャ38と、スリーブ36を含む。スリーブ36はウェーブワッシャ38を収容する。ボールバルブ30が回動するのに伴い、バルブ押さえ32も追従して回動するが、バルブ押さえ32を構成する可動部材34はバルブ本体22から離間する直径であり、バルブ本体22との間で齧りを生じることはない。ボールバルブ30の回動終了後に、ウェーブワッシャ38が弾発付勢していることで、可動部材34は原位置に復帰する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路開閉弁に関し、一層詳細には、例えば、内燃機関から排出される排気ガスが流通する流路に介装されて該流路の開閉等を行う流路開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の流路開閉弁には、排気ガスを再循環させるために用いられるものがある。実開平6−16774号公報(特許文献1)には、この種の排気流路開閉弁として球状の弁体を有する「ボールバルブ」構造が開示されている。この球状の弁体を回動させるためのシャフト軸は前記球状弁体の上部に設けられた溝に嵌合され、シャフト軸が回動することによって、流路の開閉を行う。
【0003】
特公平6−5111号公報(特許文献2)は「ボール弁」に関するものであって、流路を開閉するために弁本体の上部に円弧面を持つように膨出形成されたシャフト軸先端構造を採用する。
【0004】
特開2008−208984号公報(特許文献3)は「ガスコック」に関するものであって、この「ガスコック」は、開閉弁の上部に設けられた嵌合溝にシャフト軸が嵌合してシャフト軸の回動動作に伴って前記開閉弁が流路を開閉する。
【0005】
特開昭57−114068号公報(特許文献4)は、「ボールバルブ」に関するものであって、ボールに接触したシートリングは、熱による該ボールの膨張に応じて、該ボールが組み込まれたボディの開口端部方向へスライドできる可動部材である構成が開示されている。前記シートリングは、前記ボールに接触するインナーリングと、該インナーリングより前記ボディの開口端部方向に設けられたアウターリングとからなり、該インナーリングと該アウターリングは、ねじ結合によって一体に結合され、さらに、前記インナーリングと前記アウターリングとの間には、弾性体であるシートリングが設けられている。また、前記アウターリングと前記ボディとの間には、弾性体である皿ばねが設けられていることにより、熱膨張した前記ボールに追随して、前記シートリングは、前記ボディの開口端部方向へ滑らかに変位することができる。
【0006】
ところで、特許文献4の従来技術によれば、ボールの回転軸方向において、シートリングの外周面とボディの内周面とは、面接触をしている。ここでボールを回動させた場合、前記面接触による接触抵抗が大きいことから、該シートリングは、該ボディに対して位置が固定され、前記ボールに追従して回動することはない。しかしながら、前記ボールの回動に伴い、前記シートリングには回動方向へ力が負荷されているのにも拘らず、該シートリングが該ボディに対して位置が固定されていることから、前記ボールと前記シートリングとの接触抵抗が増大する。従って、該ボールを回動しようとすると、この接触抵抗によって回動トルクが増大する可能性を否定できない。
【0007】
また仮に、前記シートリングと前記ボディとの接触抵抗に抗して、前記シートリングが前記ボールに追従して回動したとすると、上述した前記ボールの回動トルクの増大はいくらか防止される。しかしながら、該シートリングは外周に角部を有する形状であるため、該角部と前記ボディの内周面とが接触し、この新たな接触抵抗によっても、前記ボールの回動トルクが増大するという不都合がある。さらに、上述した前記ボールの回動トルクが増大したいずれの場合においても、前記ボールと該シートリングとの接触箇所に、増大した回動トルクに伴う齧り(焼付き)が発生する懸念も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平6−16774号公報
【特許文献2】特公平6−5111号公報
【特許文献3】特開2008−208984号公報
【特許文献4】特開昭57−114068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の従来技術を克服するためになされたものであって、シートリング(以下、可動部材と称することもある)が、ボール(以下、ボールバルブと称することもある)の回転に追従して円滑に回動することを可能にすると共に、可動部材がボールバルブに追従して回動するのに伴う、該可動部材とボディ(以下、バルブ本体と称することもある)との接触抵抗を可及的に減少させることで、前記ボールバルブの回動トルクを増大させることなく、さらに、前記ボールバルブと前記可動部材との接触箇所に発生する齧り(焼付き)を回避することを可能にし、しかも、前記ボールバルブの回動終了後は、追従して回動した前記可動部材を円滑に原位置に復帰させることが可能な流路開閉弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本願の請求項1で特定される発明は、ボールバルブと、前記ボールバルブを回転自在に収容する室と第1の流体口と第2の流体口とを有するバルブ本体と、前記ボールバルブを前記室内で回動させることにより、前記第1の流体口と第2の流体口とを連通遮断するシャフト軸と、前記シャフト軸を回動するアクチュエータと、前記ボールバルブと前記第1の流体口又は前記第2の流体口の少なくとも一方との間に設けられる可動部材と、前記可動部材を前記ボールバルブ側に弾発力によって押圧する弾性部材とを備え、前記可動部材は、少なくとも前記ボールバルブが回動している間は、前記バルブ本体から離間していることを特徴とする。
【0011】
本願の請求項1の発明によれば、可動部材をボールバルブの回転に追従して円滑に回動することを可能にすると共に、該可動部材が、バルブ本体と接触することなく、前記ボールバルブの回動動作に追従して回動することによって、前記ボールバルブの回動トルクを可及的に少なくすることで、該ボールバルブと前記可動部材との接触箇所における齧り(焼付き)の発生を回避できるという効果が得られる。
【0012】
本願の請求項2で特定される発明は、請求項1記載の流路開閉弁において、該流路開閉弁は前記弾性部材を収容するスリーブ部材を有し、前記スリーブ部材は前記室の内周壁に接するシール部を有することを特徴とする。
【0013】
本願の請求項2の発明によれば、前記ボールバルブの回動終了後は、前記可動部材に接して設けられた弾性部材によって、追従して回動した該可動部材を原位置に復帰させることができるとともに、スリーブ部材が室の内周壁に接しているので流体口から侵入しようとする不要物をシール部で捕捉することができる。
【0014】
本願の請求項3で特定される発明は、請求項1又は2記載の流路開閉弁において、該流路開閉弁がEGRバルブであることを特徴とする。
【0015】
本願の請求項3の発明によれば、前記流路開閉弁をEGRバルブとして用いるので、例えば、内燃機関から排出される排気ガス中に含まれる不要物、例えば、炭素微粒子を効果的に捕捉することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0017】
すなわち、可動部材をボールバルブの回転に追従して円滑に回動することを可能にすると共に、該可動部材が、バルブ本体と接触することなく、前記ボールバルブの回動動作に追従して回動することによって、前記ボールバルブの回動トルクを可及的に少なくすることで、該ボールバルブと前記可動部材との接触箇所における齧り(焼付き)の発生を回避できるという効果を達成することができる。さらに、前記ボールバルブの回動終了後は、前記可動部材に接して設けられた弾性部材によって、追従して回動した該可動部材を原位置に復帰させることができるという効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本流路開閉弁の一つの実施の形態に係るEGRバルブの一部縦断斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すEGRバルブの一部分解切欠縦断面図である。
【図3】図3は、図1のIII−III線に沿う一部省略断面図である。
【図4】図4は、図1に示すEGRバルブの弾性部材収容部周辺を拡大して示した一部省略縦断斜視図である。
【図5】図5は、図1に示すEGRバルブのボールバルブとシャフト軸先端の係合状態を示し且つボールバルブが閉成状態の縦断斜視説明図である。
【図6】図6は、図1に示すEGRバルブを構成するボールバルブとシャフト軸先端との係合状態を示す一部省略拡大斜視図である。
【図7】図7は、図1に示すEGRバルブの概略縦断面図である。
【図8】図8は、図6に対応してEGRバルブが排気ガス導入口と排気ガス導出口とを連通させた状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る流路開閉弁に関し、EGRバルブを好適な実施の形態として例示し、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0020】
図1において、参照符号20は流路開閉弁の一つの実施の形態としての排気流路バルブ(以下、EGRバルブと称する)を示す。EGRバルブ20は、バルブ本体22を有し、このバルブ本体22の下部には、比較的小径な排気ガス流入口(第1の流体口)24と、その反対側に前記排気ガス流入口24に連通する比較的大径な排気ガス流出口(第2の流体口)26が設けられている。実際、前記バルブ本体22の前記排気ガス流入口24と排気ガス流出口26の間に室28が形成され、この室28の内部に変形した球状のボールバルブ30が回動自在に配設される。排気ガス流入口24側には、バルブ押さえ32が配設される。
【0021】
バルブ押さえ32は、環状の可動部材34と、スリーブ36と、前記可動部材34とスリーブ36との間に介装されるウェーブワッシャ38とからなる。前記可動部材34は、室28の内周壁の直径よりもその直径が小さく、従って、可動部材34の外周壁が前記室28の周壁に接触することはない。前記可動部材34は、その軸線方向に沿って貫通する孔部34aを有し、前記孔部34aは、一端部が排気ガス流入口24側に臨み、他端部がボールバルブ30に臨むように形成される。
【0022】
ボールバルブ30は、球体状であって、前記可動部材34は、このボールバルブ30の球体状の曲面に接する。このため、可動部材34は、ボールバルブ30の曲面に接するために、当該孔部34aから拡開する湾曲した曲面34bを有する。可動部材34の孔部34a側の外側には、環状溝34cが形成されるとともに、その外周壁は、環状の突部34dとして形成されている。前記環状溝34cは、ウェーブワッシャ38を収容可能な構造である。
【0023】
スリーブ36は、室28の排気ガス流入口24側の周壁28aに接する環状平坦面36aと、前記環状平坦面36aと一体的に形成され、且つ前記室28の軸線方向に延在する内周面28bに接するシール部36bを有する。実際、シール部36bは、その外周部が前記室28の内周面28bにシール効果を持って接する湾曲した曲面36cを有する(図4参照)。さらに、シール部36bは、その内周面36dが、可動部材34における突部34dの内周面34eと同一面上となるように設けられる(図4の仮想線A参照)。従って、スリーブ36の前記環状平坦面36aと、これに直交するシール部36bと、可動部材34の環状溝34cと、突部34dとで囲繞される空間に前記ウェーブワッシャ38が収納されることになる。そして、ウェーブワッシャ38の弾発力は、スリーブ36の環状平坦面36aに接することによって生じる反力を前記可動部材34の環状溝34cに付与し、これによってボールバルブ30は排気ガス流出口26側に常時弾発付勢されることになる。
【0024】
この場合、図示していないが、スリーブ36の環状平坦面36aとバルブ本体22の室28を形成する周壁28aとの間にプレーンワッシャを設けてもよい。このプレーンワッシャの介装によって、ウェーブワッシャ38のボールバルブ30側への弾発力の調整を行うことができる。
【0025】
排気ガス流出口26側には、バルブシート39が配設される。このバルブシート39は環状体であって、バルブ本体22に設けられた円形状の溝43にしっかりと嵌合される。バルブシート39にはボールバルブ30の球面をシールするための曲面39aが形成されるとともに、この曲面39aと同軸に孔部39bが前記排気ガス流出口26側へと延在している。
【0026】
この実施の形態において、バルブシート39を排気ガス流出口26側に設けて、バルブ押さえ32を構成する可動部材34、ウェーブワッシャ38、及びスリーブ36を排気ガス流入口24側に設けたが、サイズ等を適宜変更することを前提に、その逆の構成であっても良い。すなわち、バルブ押さえ32を排気ガス流出口26側へ設けてもよい。また、前記のサイズ等の変更を前提とした上で、排気ガス流入口24側及び排気ガス流出口26側の両方にバルブ押さえ32を設けてもよい。
【0027】
ボールバルブ30は、図2から容易に了解されるように、中心軸に直交するように一方の曲面と他方の曲面が取り除かれて、該中心軸に沿って一方の面から他方の面へと貫通孔40が形成された球体である。そして、この貫通孔40に直交する頂部には、平面長方形状の凹部42が形成される。図5及び図6から容易に了解されるように、前記凹部42は、湾曲する底面44とその両側の平行な第1の側面46と第2の側面48とを有する。好ましくは、前記ボールバルブ30は、前記貫通孔40に直交するように孔部50を形成し、また、変形例として、場合によって前記貫通孔40及び孔部50に直交する孔部52を設けるとよい(図5参照)。
【0028】
前記ボールバルブ30は、後述するシャフト軸90によって回動されると、その貫通孔40がバルブ押さえ32を構成する可動部材34の孔部34aに連通するとともに、バルブシート39に形成された孔部39bと連通する。前記孔部50は、排気ガス流入口24から送出される所定圧力の排気ガスを他の部位に迂回することのないように受け入れるためのものであり、孔部52はボールバルブ30の貫通孔40の内部に蓄積する炭素の微粒子等の不要物を受容するためのものである。
【0029】
この場合、前記孔部52に対応して、バルブ本体22の前記孔部52の直下には、着脱自在な盲栓60を嵌合する孔部61を設けておく。ボールバルブ30の貫通孔40内に堆積する前記不要物を必要に応じて除去するためのものである。
【0030】
次に、以上のように構成されるボールバルブ30を回動させるためのアクチュエータ側の構造について説明する。
【0031】
バルブ本体22の上方には、小径な第1の環状溝70と、この第1環状溝70に連通する大径な第2の環状溝72が互いに連通して同軸的に形成され、前記第2環状溝72は外方に開放された状態にある。第1環状溝70から第2環状溝72にかけて、コイルスプリング74が設けられ、このコイルスプリング74の上端部に回転力伝達プレート76が配設される。回転力伝達プレート76は、その中心部分に下方へと開口する室78と、この室78と同軸で且つ狭径な上方へと開口する室80が設けられている。前記室80を構成する肉厚な環状の壁部82に連結ピン84が等間隔で複数本植設される。各々の連結ピン84の上部に金属製の円環状チューブ85が被嵌される。前記壁部82を囲繞してロータ押さえ86が嵌合し、このロータ押さえ86の上面に金属板からなるロータ88が設けられている。前記ロータ88は、後述するアクチュエータ110からの回動動作によって回転力伝達プレート76がどの程度回動したかを検出するためのセンサの一部を構成する。
【0032】
一方、室80の中心部には、シャフト軸90が前記ボールバルブ30側へと延在するようにナット92によって締め付けられている。実際、シャフト軸90はバルブ本体22に設けられた転がり軸受け94によって、その回動動作が円滑に行えるように構成され、さらに、前記転がり軸受け94と同軸的に且つその下方に排気ガスが外部に漏出しないようにシール96が設けられている。さらに、シール96の下方には、軸受け98が前記シール96から所定間隔離間して設けられている。
【0033】
そこで、シャフト軸90の先端は、図2、及び図3乃至図8から容易に了解されるように、二つの平行な側面100aと100bを有し、且つこの側面100a、100bが終端する下方は互いに外方へと膨出する曲面102a、102bとして形成されている。前記曲面102a、102bの下端部は、該曲面102a、102bの膨出方向に直交するように延在する円弧状の膨出部104に繋がっている。前記膨出部104、曲面102a、102b、側面100a、100bはシャフト軸90が組みつけられたとき、ボールバルブ30の凹部42に嵌合する。この場合、前記円弧状の膨出部104に代えて、図6に示すように屈曲する平面膨出部としてもよい。
【0034】
なお、図中、参照符号106、107は、前記EGRバルブ20を強制的に冷却するための図示しない冷却水供給用パイプに連通する孔部を示し、参照符号108はシール96と転がり軸受94との間に設けられた金属製の押さえ板を示す。さらに、参照符号110は、前記シャフト軸90を開動するためのアクチュエータを示す。前記アクチュエータ110は、バルブ本体22の上部にロータ88を包被するように固着される。
【0035】
本実施の形態に係るEGRバルブ20は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用並びに効果について説明する。
【0036】
実際、アクチュエータ110は、ロータリーアクチュエータからなり、このアクチュエータ110が付勢されると、その回転力は、チューブ85が被嵌された連結ピン84に伝達される。前記のように連結ピン84には、金属製のチューブ85が被嵌されているために、アクチュエータ110が長期間に渡ってその回動動作を繰り返しても連結ピン84がその摩擦によって損耗することはない。このように連結ピン84に回転力が伝達されると、前記連結ピン84を植設している回転力伝達プレート76が回動し、その回動量はロータ88によって検出されるとともに、ナット92によってその一端部が緊締されたシャフト軸90にその回転力が伝達される。シャフト軸90の先端部は前記のように平行な側面100a、100bと、曲面102a、102b及び膨出部104がしっかりとボールバルブ30の凹部42に密着嵌合しているため、前記シャフト軸90とボールバルブ30との間で回動動作にずれを生じることなく前記ボールバルブ30がその回転力に応じて即時に回動するに至る。すなわち、バルブ押さえ32を構成する可動部材34の孔部34aと、バルブシート39の孔部39bに密着して両孔部34a、39bの連通を遮断している状態(図7参照)から、ボールバルブ30を図8の状態に回動すれば、排気ガス流入口24側の孔部34aがボールバルブ30の貫通孔40と連通し、さらにこの貫通孔40はバルブシート39側の孔部39bと連通して排気ガス流出口26に至る。従って、図示しないエンジンからの排気ガスが前記排気ガス流入口24に到達すると、孔部34a、貫通孔40、そして孔部39bを経て排気ガス流出口26から導出される。なお、前記ボールバルブ30の回動(図3の矢印X)に追従して、バルブ押さえ32を構成する可動部材34も回動(図3の矢印Y1)するが、該バルブ押さえ32の作用並びに効果の詳細については後述する。
【0037】
一方、EGRバルブ20を閉成しようとするとき、前記と同様にアクチュエータ110からの回転力が連結ピン84に伝達され、ロータ88によってその位置が確認されるとともに、回転力伝達プレート76が回動し、シャフト軸90を経て、ボールバルブ30を図7に示す位置に回動せしめる。これによって、バルブシート39の通路56は完全に閉成されることから、図示しないエンジンからの排気ガスが流通することはない。なお、バルブシート39の閉成直後にエンジンからの排気ガスが、排気ガス流入口24に到達する場合がある。この排気ガスは、ボールバルブ30に到達し、孔部50から貫通孔40に至るが、この貫通孔40内に留まる。場合によって、ボールバルブ30の貫通孔40内に蓄積された排気ガス中に含まれる炭素の微粒子等の不要物は、孔部52に堆積することがある。従って、必要に応じて盲栓60を取り外して、ボールバルブ30の内部に蓄積された前記不要物を外部に取り出すことができる。
【0038】
次に、バルブ押さえ32の作用並びに効果について説明する。上述したように、シャフト軸90とボールバルブ30との間で回動動作にずれを生じることなく、前記ボールバルブ30がその回転力に応じて即時に回動するに至る。ここで、可動部材34はその曲面34bがウェーブワッシャ38の弾発力によってボールバルブ30の曲面に接しているため、図3の矢印Xで示すボールバルブ30の回動に追従して、図3の矢印Y1及び矢印Y2で示すように容易に回動する。ここで、図3にはバルブ押さえ32が、その軸線(図3の一点鎖線L参照)に交差するように回動している状態が示されているが、実際のEGRバルブ20では斯様に大きく回動することはない。理解を容易にするために誇張して描出されている。
【0039】
この場合、可動部材34の外周面が、バルブ本体22に形成された室28の内周面28bから離間していることによって、可動部材34がボールバルブ30の回動動作に対して追従して回動し易くなり、ボールバルブ30の回動トルクを可及的に少なくすることができる。しかも、ボールバルブ30の回動トルクを可及的に少なくすることで、可動部材34の曲面34bにおける齧り(焼付き)の発生を回避することができる。
【0040】
さらに、可動部材34は排気ガス流入口24側に延在することなく、室28の領域内にある。従って、可動部材34が図3の矢印Y1及び矢印Y2で示すように回動したときも、その回動動作が制約されることなくボールバルブ30の回動トルクの増大を防止することができる。
【0041】
シャフト軸90の回動が終了、すなわち停止するのに伴い、ボールバルブ30も停止し、さらに、該ボールバルブ30に追従して回動する可動部材34も停止する。この時、該ウェーブワッシャ38によって、図3の矢印Y1と逆方向に可動部材34が弾発付勢されることで、該可動部材34は原位置に復帰することができる。可動部材34が原位置に復帰することによって、上述したボールバルブ30における回動トルク増大防止の効果を持続させることができる。
【0042】
なお、前述したように、スリーブ36のシール部36bが、バルブ本体22の室28の内周面28bと接することによって、排気ガス流入口24と室28との間のシール効果が高められている。該シール効果が高められることによって、EGRバルブ20の閉成時に、排気ガス流入口24に到達した排気ガスが、孔部50以外の部位を迂回して、室28内に流入することを防止することができることで、EGRバルブ20をより確実に閉成させることができる。
【0043】
以上、本発明について、好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。特に、EGRバルブは排気ガス専用の流路開閉弁であるが、本実施の形態に係る流路開閉弁は、前記EGRバルブに限定されるものではなく、種々の流体の流路を開閉する弁として多くの用途に活用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
20…EGRバルブ 22…バルブ本体
24…排気ガス流入口 26…排気ガス流出口
28、78、80…室 28b…内周面
30…ボールバルブ 32…バルブ押さえ
38…ウェーブワッシャ 39…バルブシート
39a…曲面 90…シャフト軸
100a、100b…側面 102a、102b…曲面
104…膨出部 110…アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールバルブと、
前記ボールバルブを回転自在に収容する室と第1の流体口と第2の流体口とを有するバルブ本体と、
前記ボールバルブを前記室内で回動させることにより、前記第1の流体口と第2の流体口とを連通遮断するシャフト軸と、
前記シャフト軸を回動するアクチュエータと、
前記ボールバルブと前記第1の流体口又は前記第2の流体口の少なくとも一方との間に設けられる可動部材と、
前記可動部材を前記ボールバルブ側に弾発力によって押圧する弾性部材とを備え、
前記可動部材は、少なくとも前記ボールバルブが回動している間は、前記バルブ本体から離間していることを特徴とする流路開閉弁。
【請求項2】
請求項1記載の流路開閉弁において、
流路開閉弁は、前記弾性部材を収容するスリーブ部材を有し、前記スリーブ部材は前記室の内周壁に接するシール部を有することを特徴とする流路開閉弁。
【請求項3】
請求項1又は2記載の流路開閉弁において、該流路開閉弁はEGRバルブであることを特徴とする流路開閉弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−236685(P2010−236685A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88105(P2009−88105)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】