説明

流量制御システム

【課題】流体の流量を制御するために静水圧と電気浸透流を併用する流量コントローラを提供する。
【解決手段】流量が静水圧と電気浸透流の双方に依存する推進流体を、(a)例えばクロマトグラフのような作動可能な装置における作動流体として直接に、あるいは(b)ストレージ容器625からの作動流体1203を作動可能な装置1301中に移送するために、あるいは(a)と(b)の双方のために、使用することができる。推進流体1204は一又は複数の流体から構成できる。推進流体1204の一部又は全てが、静水圧によって誘導される流量を増加又は減少させるように電気浸透装置100を流通させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は流体の流量を制御するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流量の正確な制御はしばしば重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−281077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポンプとバルブと、機械的なフィードバックループを利用する既知の流量コントローラには問題がある。一つの問題は特に低流量において流量に望ましくない変動が生じることである。他の問題は異なった流量を供するには機械的な変更が必要となることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
我々は、本発明によれば、流体の流量を制御するために静水圧と電気浸透圧流の組合せを用いることによりこれらの問題を改善することができることが分かった。「静水圧」と言う用語はここでは流体を流れるようにする任意の形の圧力を意味するために使用される。適切な相対的に非導電性流路中の適切な導電性流体に適切な電位を印加することによって、流体を流れるようにする電気浸透圧力を作り出すことができる。
【0006】
第一の側面では、この発明は、第一の点から第二の点まで作動流体を流す方法において、第一の点で作動流体に推進圧をかけることを含み、推進圧の少なくとも一部が、流量が
(i)静水圧成分(すなわち、大きさが静水圧に依存する成分)と
(ii)電気浸透成分(すなわち、大きさと方向が電気浸透圧流に依存する成分)
を含む推進流体によって与えられる、方法を提供する。
「作動流体」という用語はここでは作動状態にある作動可能な装置によって使用され得る流体を意味するために使用される。そのような装置には、例えばクロマトグラフ(グラジエント液体クロマトグラフを含む)、マイクロ化学リアクター、及び分離システム(マイクロ分離システムを含む)、例えば化学的分析、遺伝子シーケンシング、及び生体物質からの蛋白発現のキャラクタライゼーションのための分離システムが含まれる。本発明の第一の側面の方法における「第二の点」は例えば作動可能な装置の入口でありうる。「第二の点」はまたここでは終点とも呼ぶ。
【0007】
ある実施態様では、推進流体は作動流体と同じである。他の実施態様では、作動流体は(i)第一の点でストレージ部材(あるいは「カートリッジ」)に保存され、(ii)推進流体によってストレージ部材から離間せしめられる保存流体を含む。装置は、全ての作動流体がカートリッジから排出されたときに新しい満杯のカートリッジがシステムに挿入され得るようにバルブ装置を具備しうる。
【0008】
電気浸透成分の大きさ及び/又は方向は、電位及び/又は電位が印加される電気浸透圧流体を変えることによって変えることができる。これは、同じ装置を機械的な変化の必要なしに様々な状況において用いることができることを意味するので、貴重である。よって、本発明の第一の側面は、第一群の条件下で作動する装置が第一の期間の間に作動可能な装置によって作動流体を第一の点から第二の点まで流れさせ、その後、第二群の条件下で作動する同じ装置が第二の期間の間に作動可能な装置によって作動流体を第一の点から第二の点まで流れさせ;第一の期間中の作動流体が第二の期間中の作動流体とは異なり、及び/又は第一の期間中の作動可能な装置の作動条件が第二の期間中の作動可能な装置の作動条件とは異なり、及び/又は第一の期間中の作動可能な装置が第二の期間中の作動可能な装置とは異なる方法を含む。
【0009】
本発明の特定の実施態様では、推進流体流は、
(A)静水圧によって流体の流れを供給し、電気浸透圧流によって上記流体の流量を変化させ;あるいは
(B)静水圧によって第一流体と第二流体の混合物を、電気浸透圧流が該混合物中に生じる流路に流通させ;又は
(C)(i)部分的又は全体的に静水圧である圧力に流量が依存する作動流体と、
(ii)混合前に部分的又は全体的に静水圧である圧力に流量が依存する第二流体とを、混合することを含み、
ここで、電気浸透圧流が生じる流路を通って流れる混合物がつくり出される、方法によってつくられる。
【0010】
方法(C)の一例では、
(i)作動流体は、
(a)静水圧Pの第一供給源から供給され、
(b)第一流量制御部材を通過し;
(ii)第二流体は、
(a)静水圧Pの第二供給源から供給され、
(b)第二流量制御部材を通過する。
第一流量制御部材はコンダクタンスkを有し、第二流量制御部材はコンダクタンスkを有し、流路はコンダクタンスkを有し;1+k/kはP/Pより大きく、1+k/kはP/Pより大きい。
【0011】
本発明のある実施態様は、
(a)例えば圧力トランスデューサ、流量計、温度センサ、熱流計、変位センサ、ロードセル、歪みゲージ、導電率センサ、選択性イオンセンサ、pHセンサ、フロー分光光度計、及び濁度センサによって少なくとも一の変数をモニターし、
(b)上記のモニターに応答して、電気浸透成分の少なくとも一部を生じる電位を変化させることを、含む。
本発明のある実施態様では、電気浸透成分における変動が静水圧成分における変動を少なくとも部分的に補償する。
【0012】
本発明のある実施態様では、第二の点における推進流体の流量は50マイクロリットル/分未満、又は10マイクロリットル/分未満、又は1マイクロリットル/分未満、又は0.5マイクロリットル/分未満であり、例えば0.1マイクロリットル/分より大きく、又は0.2マイクロリットル/分より大きいものであってよい。
本発明のある実施態様では、作動流体は次の特性の少なくとも一を有している:
(i)少なくとも25ミリモル、例えば0.5ミリモルのイオン強度を有する液体を含む;
(ii)5センチポアズより大なる動粘度を有する液体を含む;
(iii)実質的に純粋な有機液体を含む;
(iv)20未満の誘電率を有する液体を含む;
(v)多価イオンを含む液体を含む;及び
(vi)7未満、例えば4未満のpH値を有する液体を含む。
【0013】
第二の側面では、この発明は、本発明の第一の側面の方法において使用するのに適した装置を提供し、該装置は、
(1)入口と出口を含み、圧力がかけられた流体が通過して入口から出口まで流れる流路と、
(2)流路の入口と出口の間に位置せしめられた多孔質誘電材料と、
(3)圧力がかかった動電学的流体が流路の入口と出口の間を流れるときに、流体が流れる速度を電極に接続された電位を変化させることによって変化させることができるように、位置せしめられた電極とを具備する。
これらの三部材が協働して、ここで電気浸透圧装置又は流路と呼ぶものを構成する。
【0014】
装置は好適には次の特性の少なくとも一を有する;
(a)圧力がかけられた流体が入口に達する前に流れる流量制御部材を具備する;
(b)圧力がかけられた流体が出口を離れた後に流れる流量制御部材を具備する;
(c)(i)作動状態で加圧流体を用い、
(ii)(a)加圧流体が出口から流れ出るときに装置を通過するように出口に、あるいは(b)流路に接続された第二の出口と加圧流体の供給源に接続可能な入口を有する導管の第一の出口に、接続されている作動可能な装置を具備する;
(d)第一流体の第一供給源と第二流体の第二供給源とを具備し、第一供給源と第二供給源の双方が該供給源からの加圧流体が入口を通って流路中に流入可能なように入口に接続されている;
(e)電極に接続された可変電源装置を具備する;
(f)制御信号をモニターするための少なくとも一のセンサとセンサに作動可能に接続されたフィードバック制御機構を具備し、よって装置が電極に接続された電源装置を具備する場合、フィードバック制御機構が電源装置から供給される電位を、例えば制御信号を予め決まった範囲内に維持するように変調する;
(g)(i)入口に接続されている第一流路出口と(ii)一の作動可能な装置又は複数の作動可能な装置に接続可能な第二流路出口と、(iii)加圧流体の供給源に接続可能な流路入口を有する流路を具備し、よって加圧流体が流路に流入するとき、加圧流体の一部が流路を通って流れ、加圧流体の残りが一又は複数の装置を通って流れる;
(h)二以上の上記の流路と、(i)上記流路の各々の入口又は出口に接続された複数の流路入口と(ii)一又は複数の作動可能な装置に接続可能な流路出口を有する流路を具備する;
(i)二以上の上記の流路を具備し、流路内の誘電材料が互いに異なっている;及び
(j)ブリッジを介して流路に接続された電極を有する電源装置を具備する。
【0015】
ここで使用される「多孔質誘電材料」という語句において、「多孔性」という用語は流体に対して透過性であるあらゆる材料を指し、「誘電」という用語はその導電性が流体よりも実質的に小さく、有限の誘電率を有するあらゆる材料を指す。多孔質誘電材料の例は、溶融石英キャピラリー、シリカ粒子、有機ポリマー、及びリソグラフパターン化、リソグラフエッチング、直接射出成形、ゾル-ゲル法、又は電鋳法によって製作された製品である。「流量制御部材」という用語はここでは圧力がかけられた流体が流通可能で、装置に流入するときの流体の圧力が装置を離れるときの流体の圧力よりも大きいような装置を指すために使用される。流量制御部材は例えば圧力を5%以下、例えば少なくとも5%、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも40%、そして多くとも80%、多くとも60%、又は多くとも50%低減させる。流量制御部材はまた「フロー部材」又は「フローレジスタ」とも称される。本発明の装置は、推進流体の少なくとも一部が通過する一又は複数の流量制御部材を具備しうる。
【0016】
第三の側面では、この発明は加圧流体をその作動状態で用いる作動可能な装置に向けて加圧作動流体が移送される速度を変更するための電気浸透圧流の使用に関する。
第四の側面では、この発明は、
(a)(i)圧力Pの第一流体供給源に流通可能に連通した第一流体入口と;
(ii)第一流体入口に流通可能に連通した圧力Pの第一流体出口であって、P<Pのものと;
(iii)第一流体入口と第一節点の間に配設された第一流量制御部材と
を具備する第一流路と;
(b)(i)圧力Pの第二流体供給源に流通可能に連通した第二流体入口と;
(ii)第二流体入口と、第一流路の第一節点とに流通可能に連通した第二流体出口と;
(iii)第二流体入口と第二流体出口の間に配設された第二流量制御部材と;
(iv)圧力Pの第三流体出口であって、P<P及びP<Pで、第二流量制御部材出口の第2節点と流通可能に連通した第三流体出口;
を有する第二流路とを、
具備し、ここで、
α=θ(ここで、vは第一節点の内部容積で、θはv内での見かけの圧縮率の合計である)で、α=θ(ここで、vは第二節点の内部容積で、θはv内での見かけの圧縮率の合計である)で、第一流量制御部材はkのコンダクタンスを有し、第二流体制御部材がkのコンダクタンスを有し、α/k>α/kである流量制御装置に関する。
【0017】
この発明において使用される静水圧は如何なる方法でもつくり出すことができ、例えば一又は複数のポンプ、例えば高圧シリンジポンプ又は手動ポンプ、あるいは圧縮空気駆動システムによってつくり出すことができる。
一又は複数の流体を、電気浸透圧流路に通過させることができる。二種の流体を流路に流通させる一実施態様では、流路は、それぞれ圧力P及びPである第一流体供給源(つまり第一流体の供給源)と第二流体供給源(つまり第二流体の供給源)に流れるように連通させられた流体入口(つまり流体のための入口)を有する。流路はまた出口圧とも称される圧力Pの流体終点(つまり流体の終点)と流体入口に流れるように連通させられた流体出口(つまり流体のための出口)を有する。出口圧力はP及びPの双方よりも低い。電源装置が電極に適当な電位を印加したとき、流路は動電学的にアクティブである。電位は圧力推進流れの少なくとも一を変調する電気浸透圧駆動流れ成分を生じる。システム中の異なった点における圧力と流量を制限するために、流れ絞り装置を適当な位置に設けることができる。
【0018】
場合によっては、二以上の電気浸透圧装置をシステムにおいて使用することができる。例えば、一つの装置で二流体の比を制御し、他方で流体流の全量を制御することができる(図15a及び15b)。
本発明のある実施態様では、電気浸透圧流体、つまり電気浸透圧流がつくられうる(ここでは動電学的流体とも呼ばれる)流体には、一方が終点に至り、他方が電気浸透圧装置に至る二つの流路が設けられている。電気浸透装置の電極の電位を替えることによって、様々な量の電気浸透流が終点まで流れる。
本発明のある実施態様では、電気浸透圧流体を貯留する流体ストレージ部材は電気浸透圧装置の直前に配され、電気浸透圧流体は圧力がかけられた流体によって装置中に強制的に流入させられる。
【0019】
本発明は流体制御に電気浸透圧流の原理を利用する。動電学的流れとしても知られている電気浸透圧流は流路への圧力差の適用によって別につくり出されるであろう流れと競合し又はその流れを支配さえすることができる。本発明における電気浸透圧流は電極を使用して電場の印加で誘電材料と適切な流体を使用して発生される。流体は多孔質誘電材料に対して高いゼータ電位をもたらす。
このゼータ電位の大きさは約1から150mV又はそれ以上の範囲であることが望ましい。ゼータ電位は符号は正でも負でもよい。ゼータ電位のサインと大きさは流体の誘電定数、流体のpH、流体のイオン強度及び流体中のイオンのタイプに依存する。
流体は、ある低濃度の様々なイオンのような導電種をまた有しうる純粋な流体又は純粋な流体の混合物でありうる。好ましくは、純粋な流体は高誘電定数(約5から100相対単位)、低動粘度(約0.1から2センチポアズ)及び低伝導度(約10−4から10−14mho/m)を有しているべきである。好ましくは流体のpH及びイオン強度を定め又は制御するために添加剤が投入される。添加剤は流体に完全に溶解する種類と濃度のものでなければならない。これらの添加剤の種類と濃度は、好ましくは、多孔質誘電媒体中の孔径によって課される条件下でゼータ電位を増大又は最適化するように選択される。
【0020】
適切な純粋な流体には、例を挙げると、限定されるものではないが、蒸留及び/又は脱イオン化水、環状カーボネート、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、ベンジルアルコール、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ブタノン、ジメトキシメタン、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、p−ジオキサン、アセトニトリル、ホルムアミド、メチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトン、酢酸、トリエチルアミン、ジクロロメタン、エチレングリコール、及びジメチルスルホキシドが含まれる。
ゼータ電位を生じるには、一般に、誘電材料の表面は流体の存在下でイオン化される酸性又は塩基性部位を示す。これらのイオン性表面部位は材料に本来的にあるものでもよいし又は表面材料にある種を吸着又はグラフトさせることにより得られるものでありうる。
【0021】
本来的にイオン性の材料には、例を挙げると、限定されるものではないが、シリカ(酸性)、アルミナ(両性)、及びナイロン(双性イオン性、カルボキシル及びアミン)が含まれる。ゼータ電位の符号は真の表面電荷の符号と同じである。
表面電荷を生じる吸着の例としては、イオン性界面活性剤とのポリエチレン又はポリプロピレンの混合物を用いることができる。ポリエチレン及びポリプロピレンは本来的なイオン性部位を持たない非極性ポリマーである。ある種のイオン性界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム)を含む水溶液では、界面活性剤の疎水性末端がポリマーに吸着する。そして界面活性剤の荷電末端は表面に電荷部位としてあらわれる。
【0022】
表面部位のイオン化度は流体のpHに依存する。大抵の場合、表面が真の中性であるpHがあり、よってゼータ電位はゼロである。ゼータ電位は、表面が真の中性であるpH値より充分に高いpH値(酸性表面部位に対して)又は充分に低いpH値(塩基性表面部位に対して)で最大値に達する。イオン性表面部位は化学反応又はグラフト化によって材料に付加することができるか、又はプラズマ又は放射線処理を介して反応性表面化学物質の創造又は欠陥の創造によって誘導することができる。
誘電材料は、高ゼータ電位、ゼータ電位の符号、添加剤での流体中での不溶性及び安定性、低電気伝導率、及び充分な機械的強度の性質について選択される。
【0023】
好適な酸化物材料の例には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、及び酸化タンタルが含まれる。これらの酸化物はアモルファスでも又はガラス状でも又は結晶性でもよく、また他の微小な酸化物成分を有する混合物として組み合わされていてもよい。
好適なガラス材料の例には、クラウン又はフロート又はホウケイ酸ガラス、ランタン又はフリント又は重フリントガラス、PyrexTMが含まれる。好適な窒化物材料の例には、窒化ケイ素、窒化ホウ素、及び窒化アルミニウムが含まれる。
好適なポリマーの例には、NafionTM(デュポンの商品名、スルホン化PTFE)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、酢酸セルロース、混合セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド(ナイロン)、シリコーンエラストマー、ポリメタクリレート、及びニトロセルロースが含まれる。
他のクラスの好適な材料には、ある種の半導体、炭化物(例えば、炭化チタン)及びケイ素化合物(例えば、ゲルマニウムケイ素化合物)が含まれる。
【0024】
対イオンは、ゼータ電位の符号と反対の電荷符号を有する流体中のイオンである。バルク流体中の対イオンの濃度を増加させると、表面電荷を遮断する傾向があり、よってゼータ電位の大きさを低減させる。例として、シリカが純水としてのpH7の水に暴露された誘電材料でありKClが添加剤として使用される場合、この系に対するゼータ電位は負であり、それぞれ0.1、1、10及び100ミリモルのKCl濃度に対して約120mV、100mV、70mV及び30mVの大きさを持つ。対イオンのイオン価はまたゼータ電位の性質に対して顕著な効果を有しうる。多価(つまり多数荷電)対イオンは表面部位に結合して、ゼロの真の電荷のpHを変えうる(つまり、「等電点」)。例えば、一価の対イオン(例えばNa)の存在下でシリカは約2.8の等電点を示す一方、二価の対イオン(例えばCa2+又はBa2+)の存在下でシリカは6から7の範囲の等電点を示す。この点において、輸送流体は好ましくは多価対イオンが実質的に含まれないように選択又は精製される。
【0025】
流体に添加することができるイオン性添加物は二つの一般的クラスに分けることができる:完全にイオン化するもの(例えば塩、強酸及び強塩基)と部分的にイオン化するものである。前者のクラスは主に流体のイオン強度を達成するために使用することができる。後者のクラスは主に流体を緩衝させ、よって流体のpHを達成し維持するために使用することができる。二つのクラスは組み合わせて使用されることも多い。緩衝種は多価状態で存在し得る(例えば蟻酸塩は中性又は一価の荷電状態で存在する一方、リン酸塩は中性、一価、二価及び三価の荷電状態で存在する)。よって、緩衝化合物の選択は上で検討した多価対イオンの問題を考慮してなされる。
イオン性及び緩衝添加剤の例には、限定されるものではないが、アルカリハライド塩、無機酸及び塩基、有機酸及び塩基、リン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、蟻酸塩、炭酸塩、塩素酸塩、硝酸塩、硫酸塩及び亜硫酸塩、硝酸塩及び亜硝酸塩、アンモニウム-、メチルアンモニウム-、エチルアンモニウム-、プロピルアンモニウム-塩、BIS、MES、TRIS、TES、HEPES、TEAが含まれる。
【0026】
しばしば帯電防止剤とも呼ばれるある種の化合物はゼータ電位を変更又は除去することが知られている。例えば、特別な薬剤を炭化水素燃料に添加してゼータ電位を除去し、よってポンピングと輸送中の帯電を防止する。更なる例として、特別な薬剤をまたシャンプー及びコンディショナーに添加してゼータ電位を除去し帯電を防止する。ある種の界面活性剤はこれらの薬剤の一クラスを表す。この点において、流体はゼータ電位を低下させ又は除去する薬剤が実質的に含まれないように選択又は精製される。例として、少量の界面活性剤SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の添加は水溶液中のシリカのゼータ電位を増大させることが知られている。水中のシリカに対する界面活性剤CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)の効果は、低濃度での添加の際に、濃度が増加するにつれてゼロに近い値までゼータ電位を低減することであり、更に高い濃度においてゼータ電位の符号を逆転させることである。ポリアミンの添加はまたシリカのゼータ電位を低減させ又は逆転させることが知られている。界面活性剤の表面改変性については、M.J.Rosen, 'Adsorption of surface-active agents at interfaces: the electrical double layer,' Chapter II, Surfactants and Interaction Phenomena (Wiley, NY, 1986), pp.33-107の概説がある。
【0027】
流体中及び誘電表面に隣接する真の電荷の領域は、ある程度の距離だけ流体中に延びる。この層のe分の1(1/e)厚はバルク流体中のおよそデバイ長である。20℃の温度でのデバイ長は流体イオン強度に対する流体誘電率(後でモル/リットルの単位を取る)の比の平方根の約0.034nm倍の値を有している。水中1ミリモルのKClに対してデバイ長は約9.6nmである。
多孔質誘電材料中の孔部は長さ方向に沿ってサイズが変化し、様々な孔径が存在しうる。よって、ある与えられたイオン強度の流体で飽和した誘電材料は真の電荷の実質的にオーバーラップした領域を含む孔部のあるサブセットを有し(ここでは「ナノポア」と言う)、電荷層のオーバーラップのないある量のコア流体を含む孔(ここでは「標準」ポアと言う)とバランスする。孔部の全てが電流、よってイオン種を輸送するが、ナノポアは標準ポアに比較して大きく減少した速度で流れを輸送する。電流を印加して流体イオン組成の変更が最少である流れをつくり出すことが望ましい。ナノポアの存在はこのプロセスの効率を低減させ、また実質的で性能を低下させるイオン強度、組成及び多孔性部材のpH勾配を生じうる。
【0028】
多孔質誘電材料は非常に様々な方法によって製造することができ、その例には、限定されるものではないが次のものが含まれる:
(a)粒子がガラス又はセラミック又はポリマーでもよい充填粒子。その粒子は、限定するものではないがエンド−フリット又は他の機械的拘束を含む従来から知られている任意の方法、あるいは圧力下での低温溶着又は化学的接合によって所定位置に配することができる(つまり流路に収容される)。
(b)例えばA.P. Philipse, 'Solid opaline packings of colloidal silica spheres,' J. Mat. Sci. Lett. 8pp. 1371-1373 (1989)に記載されているような、合成多孔性乳白ガラス材料、及び例えばJ.E.G.J.Wijnhoven及びW.L.Vos, 'Preparation of photonic crystals made of air spheres in titania,' Science 281pp.802-804 (1998)に記載されているようなテンプレートとして乳白ガラスを使用してつくり出された多孔性材料。
(c)ガラスの相分離及び化学浸出、例えばT. Yazawa, 'Present status and future potential of preparation of porous glass and its application,' Key Engineering Materials,' 115pp.125-146 (1996)に記載されているような、ホウケイ酸塩又は他の複合ガラスに応用されるようなバイコール法。
(d)シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア及び他の無機酸化物又はその混合物におけるゾルゲル又はエーロゲル法。
(e)例えばY.Ma等, 'A review of zeolite-like porous materials,' Microporous and Mesoporous Materials, 243-252 (2000)に記載されているようなゼオライト及びゼオライト様多孔質媒体。
(f)ポリマーの相分離−例えばK. Nakanishi及びN. Soga, 'Phase separation in silica sol-gel system containing polyacrylic acid I. Gel Formation behavior and effect of solvent composition,'J. Non-crystalline Solids 139 pp.1-13 (1992)に記載されているようなシリカロッド(SilicaRod)法を例えば用いて実施される無機酸化物溶液。
【0029】
(g)リソグラフ及びエッチング、モールディング、キャスティング、レーザーアブレーション及び従来から知られている他の方法による直接の機械加工。直接の機械加工は、所望の輸送液体のポンピングと組み合わせて、例えばゼータ電位を生じる材料から製造されたマイクロチャンネル又はピラーの規則的又は不規則的なアレイをつくるために使用できる。そのようなマイクロチャンネル又はピラーは本発明の実施態様の多孔質誘電材料として使用することができる。
(h)フィルムストレッチング、焼結、トラックエッチング、キャスティングの後に浸出又は蒸発、スリップキャスティング、転相、熱転相を行うことによって調製される多孔質ポリマー。同様な方法がポリマー濾過膜の製造にしばしば使用される。例えばE.C. Peters等, 'Molded rigid polymer monoliths as separation media for capillary electrochromatography,' Anal. Chem. 69 pp.3646-3649 (1997)。
(i)例えばJ.Drott, K. Lindstrom, L. Rosengren及びT. Laurell, 'Porous silicon as the carrier matrix in micro structured enzyme reactors yielding high enzyme activities,' J. Micromech. Microeng. 7pp 14-23(1997)に記載されているようなシリコンに応用される、あるいは例えばO. Jessensky, F.Muller及びU.Gosele, 'Self-organized formation of hexagonal pore structure in anodic alumina,' J. Electrochem. Soc. 145 pp.3735-3740(1998)に記載されているようにアルミニウムに応用される陽極腐蝕法。
多孔質材料は流路内で(インチャンネルで)製造されてもよいし、又はおそらくは機械加工され又は切断された後に流路内に挿入又は密封されてもよい。表面の性質は流路内に配設する前又は後に改変することができる。
【0030】
ゼータ電位の符号と大きさは上述したような多孔質材料の表面又はバルクの化学的性質の改変によって変更し又は増強することができる。表面の化学的性質の改変は一般に本来的に材料上に存在している部位(例えばシラノール、ヒドロキシル、アミン)との反応によって一般的になされる。バルクの化学的性質の改変はイオン性部位を直接導入する材料の合成によって一般になされる。例には限定されるものではないが、次のものが含まれる:
(a)S=O基のある部分をスルホン酸に転換するためのポリスルホン又はポリエーテルスルホンのバルクの化学的性質の改変。
(b)スルホン酸基で終わる側鎖を結合させるためのPTFEのバルクの化学的性質の改変。
(c)第4級アミンを導入するためのポリフッ化ビニリデン又はポリエーテルスルホンのバルクの化学的性質の改変。
(d)カルボキシ(酸性)又はアミン(塩基性)表面部位を持つ材料を提供するためのポリアミド(ナイロン)のバルク又は表面の化学的性質の改変。
(e)既存のイオン性部位の1つを非イオン性末端基で終端させるための双性イオン性材料(例えばナイロン)の改変。
(f)プラズマ、紫外線又は電離放射線への暴露を介する架橋の生成又は欠陥の導入によるポリマー材料の活性化。
(g)アミノ基又はスルホン酸基をつくり出すためのメトキシ-又はクロロ-シランでの表面シラノール基の改変。
【0031】
本発明の更なる特徴は次の説明と添付図面の議論に開示される。これらの図面は例示的な実施態様であり本発明の範囲を限定しないことが理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施態様を示すものである。なお、符号(a)により示される図は、1A線に沿った断面を示し、多孔質誘電材料が満たされた流路を示している。
【図2】本発明の実施態様に係る電圧制御フロースプリッタを示す。
【図3】フィードバック信号を発生させ電源装置を調節するためのサーボループコントローラとセンサを具備する本発明の実施態様を示す。
【図4】フィードバック信号を発生させ電源装置を調節するためのサーボループコントローラと2つのセンサを具備する本発明の実施態様を示す。
【図5】位置又は変位センサを有する本発明の実施態様を示す。
【図6】二種の流体の流れを制御するために使用される本発明の実施態様を示す。この実施態様は分離技術に使用される流体混合物及び流体混合物のグラジエントを生成するために使用することができる。
【図7】推進圧が変化するにもかかわらず、本発明のフローコントローラによって生じる制御圧力を示す。
【図8】推進圧の減少にもかかわらず、本発明のフローコントローラによって生じる制御圧力を示す。
【図9】推進圧とカラム圧を時間の関数として示すグラフである。
【図10】水:アセトニトリルの勾配の再現性を示すグラフである。
【図11】増大した範囲の作動条件と流路から電極を除去する方法を提供する本発明の実施態様を示す。
【図12】電気浸透圧駆動流量制御部材の性能と作動範囲を改善するために第二流体が作動流体と混合される本発明の直列モードの実施態様を示す。
【図13】電気浸透圧駆動流量制御部材の性能と作動範囲を改善するために第二流体が作動流体と混合される本発明の分岐モードの実施態様を示す。
【図14】電気浸透圧駆動流量制御部材に入る前に二種の流体の混合を促進する本発明の実施態様を示す。
【図15】符号(a)により示される図は、別個に電源供給される二つの電気浸透圧駆動流量制御部材を有する本発明の実施態様を示す。また、符号(b)により示される図は、電源装置を共有する二つの電気浸透圧駆動流量制御部材を有する本発明の実施態様を示す。
【図16】6番及び7番の流れ部材が第二流体供給源とドレインの間に直列に接続されている本発明の実施態様を示す。
【図17】流れ部材の一つに保存された作動流体の投入を含む本発明の実施態様を示す。
【図18】フローコントローラの流れ部材を切り替えるために使用できる弁構造を示す。
【図19】流れ部材の一つに貯留された流体の投入を含む本発明の実施態様を示し、ここで流体は電気浸透的にアクティブな部材の電気浸透圧機能を支援するように選択される。
【図20】流れ部材の一つに貯留された流体の投入を含む本発明の直列モードの実施態様を示し、ここで流体は電気浸透的にアクティブな部材の電気浸透圧機能を支援するように選択される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は本発明の「インライン」又は「直列型」流量制御器の実施態様を示す。図1において、全断面積A及び全長Lの流路(導管)100に多孔質誘電媒体104が充填されている。流路100は圧力Pの流体供給源102及び圧力Pの出口103に流通可能に連通している入口101を有している(ここでP<P)。この説明を通して、我々は流体供給源102と入口101の間、また流体出口103と流体収集リザーバ109の間の流体の流れに対する抵抗は無視できる(また圧力損失も無視できる)と仮定した。このような場合では、流路100における圧力損失ΔPはP−Pに等しい。流路100における圧力損失を正確に反映させるように条件ΔPを調節することによって流体供給源102と入口101の間、また流体出口103と流体収集リザーバ109の間の圧力損失を考慮に入れるために以下の式を変更することは、自身の知識とこの明細書に含まれる情報に基づけば当業者には困難はないであろう。流量Qは、電源107によって発生させられ、離間電極105、106を通して流路内の流体に印加される電位差ΔVと、流路入口101と流路出口103の間の圧力差ΔPの組み合わさった作用によってつくり出される。
【0034】
図1において、多孔質誘電媒体104は流体不浸透性「流路(導管)」100に含まれる。流路材料は機械的強度、絶縁破壊の強さ、輸送流体及び流体加算適合性、及び多孔質誘電媒体104を保持する能力に対する要件を満たすように選択される。流路100の幾何構造は長さが長く断面が小さいものから長さが短く断面が大きいものまでの全範囲を網羅する。前者の幾何構造の例は、円形から矩形から傾斜又は湾曲側面を持つ矩形まで含む断面形状を有する基体に形成されたキャピラリー又は被覆マイクロチャンネルであってもよい流路100である。この流路100は従来から知られている任意の手段によって形成することができる。後者の幾何構造の例は大径で薄い多孔性メンブランである。
【0035】
孔径の選択、トポロジー数及び物理的幾何構造(例えば多孔質部材の厚み及び断面積)は与えられる用途に特定のものである。そして、これがイオン強度と緩衝能の必要性を生じる。一般に、本発明の好適な実施態様を実施するには次の事項が考慮されうる。
(a)よく定まった、よって良好に作用するゼータ電位のための一価対イオンの使用。
(b)ゼータ電位を低下させ又は除去する化合物が流体中にないこと。
(c)「最少の」二重層オーバーラップと適合性があるイオン種の最も低い濃度(つまり特徴的な孔径の約5分の1未満の流体デバイ長を生じる濃度)の使用。
(d)流体のpHを達成し維持するのに矛盾しない緩衝イオン種の最も低い濃度の使用。
(e)流体と適合性があり、よく溶解し、良好に解離するイオン種の使用。
(f)好ましくは単分散性であり、多分散ならば時折の孔又は欠陥(例えばひび割れ又は空隙)を含まず、「ナノポア」が含まれないか最小数である孔径分布。
(g)添加剤を伴う流体よりも伝導性が低い多孔質誘電材料104の使用。
(h)絶縁破壊なしに印加される電位に耐えるのに十分な誘電耐力を持つ多孔質誘電材料104の使用。
(i)圧縮と崩壊に耐える能力と境界形成流路の材料に付着したままになる能力の双方についてかかる圧力に耐えるのに十分に機械的に強い多孔質誘電材料104の使用。
(j)添加剤を伴う輸送流体に耐性があり不溶性である多孔質誘電材料104の使用。
(k)絶縁体である流路材料の使用、特に流路材料は添加剤を伴う流路よりも伝導性が低くなければならない。
(l)絶縁破壊なしに印加される電位に耐えるのに十分な誘電耐力を持つ流路材料の使用。
(m)かかる圧力に十分に耐えるほど機械的に強く厚い流路材料の使用。
(n)添加剤を伴う輸送流体に耐性があり不溶性である流路材料の使用。
(o)誘電率が高い値を持ち、動粘度が低い値を持つ流体の使用。
(p)ゼータ電位の高い値をもたらす流体、表面の化学的性質及び添加イオン種の化学的性質の組合せの使用。
(q)純粋な流体又は純粋な流体の高度に混和性の混合物である流体の使用。
【0036】
流体中の電極105、106を介しての流体への電位の印加により、流体中に電流を発生させることができ、流体の電気分解を介して電極105、106に気体が発生することは当業者にはよく知られている。閉じた流体流路内での気体の発生は望ましくないことが更に理解される。よって、図1に示されるように、ブリッジ108が流体で満たされたリザーバ102、109中の電極105、106を流路100中の流体に接続するために使用されうる。このようなブリッジは例えばC. Desiderio, S. Fanali及びP. Bocek, 'A new electrode chamber for stable performance in capillary electrophoresis,' Electrophoresis 20, 525-528 (1999)に記載されており、一般にブリッジを通過する流体の流れを最少にし、同時にイオンの輸送をもたらすように(つまり電流の流れを可能にするように)十分に小さな孔を有するように選択された多孔質メンブラン又は多孔質固体を含む。典型的なブリッジ材料にはナフィオン(NafionTM)(イオン選択性ポリマーメンブラン)又は多孔性バイコール(VycorTM)(5nmのオーダーの孔径を有する相分離されエッチングされた多孔質ガラス)が含まれる。
【0037】
流路100における流量は、Q=(νΔV−κΔP)A/LFで表される。この関係式は圧力推進流に対するダーシーの法則と多孔質媒体中の電気浸透流に対して適合化されたヘルムホルツ−スモルコフスキー関係式のよく知られた組合せである。ここで、νは有効電気浸透移動度であり、κはFが乗ぜられ液体の動粘度で割られた多孔質媒体のダーシー浸透率であり、Fは多孔質媒体の形成係数であり、簡単には連結多孔度の逆数以上である。Fは、多孔質媒体を含まない流路で1と定義され、多孔質媒体を含む流路では1より大きい値をとる。形成係数はF=τ/φによって多孔質媒体のより多くの記述子に関係しており、ここでτはねじれと称され、φは固体の連結多孔度である。連結多孔度は貫通した連結孔を示し端部が詰まった孔を除外する湿潤体積分率である。これらの記述子の各々は従来からよく知られた方法の何れかを用いて決定することができる。
【0038】
デバイ長のスケールは流体のイオン強度を変化させることによって変更することができ、好ましくは多孔質誘電媒体104の固有孔径の約5分の1より少ない。固有孔径の約5分の1より大きいデバイ長に対して、孔の対向する壁部の荷電層は実質的に合同し始め、見かけのゼータ電位を低減させる効果を有する。二重層オーバーラップの度合いの定量的決定のためには、固有孔径Dporeは、好ましくは、D.L. Johnson及びP.N. Sen, Phys. Rev. B37, 3502-3510(1988); D.L. Johnson, J. Koplick及びJ.M. Schwartz, Phys. Rev. Lett. 57, 2564-2567 (1986);及びD.L. Johnson, J. Koplick及びR. Dashen, J. Fluid Mech. 170, 379-392 (1987)によって定義されているようにして取られる。Dporeの定義は多孔質媒体中のより大なる貫通孔に有利に強い重みをつくり出す。
上で与えられたDporeの定義を用いて、ダーシーの透過率は次の式によって与えられる:
=DporeM/F
ここで、Mは「孔幾何数」と称され、円筒管に対して1/32に等しく、多の断面形状の管路と多くの多孔質媒体に対してはおよそ1/32に等しい。
【0039】
単純な幾何(例えば溝又は円形の孔)における荷電層オーバーラップの効果は理論的に研究されている。例えば、C. L. Rice及びR. Whitehead, 'Electrokinetic flow in a narrow cylindrical pore,' J. Phys. Chem. 69 pp.4017-4024 (1965);及びD. Burgreen及びF.R. Nakache 'Electrokinetic flow in ultrafine capillary slit,' J. Phys. Chem. 68 pp. 1084-1091 (1964)を参照のこと。これらの研究の結論は上で定義されたDpore の使用を通して一般的な多孔質媒体に同じように適用できる。
有効電気浸透移動度は次のように記載することができる:
ν=εζ(1−ξ)/μ
ここで、ε及びμはそれぞれ流体の誘電透過率及び動粘度であり、ζはゼータ電位であり、ξは真の電荷層をオーバーラップさせる効果(つまり、電荷層の厚みが媒体中の孔径の順になる条件下での見かけのゼータ電位の減少)をもたらす係数である。ゼータ電位、よって電気浸透移動度は流体及び誘電材料の性質に依存して正又は負の符号となりうる(例えば、水溶液で飽和したTiOからなる多孔質誘電材料104に対しては、ゼータ電位は低pHで正の符号を持ち、高pHで負の符号を持ち、TiOでは約pH6.2である材料等電点では無視できるほどに小さい)。
【0040】
動電学的なアクティブな部材の動電学的性質は、
a=νΔV/κP
によって特徴付けられ、ここでΔVは部材に対して印加される電圧である。量aは無次元で、Pに等しい圧力差によってつくり出される圧力推進流量によって割られた電位ΔVによってつくり出される電気浸透流量と考えられる。動電学的にアクティブな材料の性能に対する有用な測定基準は量ν/κであり、これはpsi/ボルトの単位を持つ。これらの定義を用いて、部材を通しての流量はおよそ接合部で合計された後、接合部の圧力に対して解かれる。
【0041】
本発明は多孔質誘電材料104で満たされた流路100において圧力推進流及び電気浸透推進流の組合せを用いる。印加電位は好ましくは圧力推進流と同じ方向の電気浸透流を生じるように選択される(例えば、高pH、よって負のゼータ電位、よって負の電気浸透移動度でのTiOに対して、電位は圧力推進流の方向に対して下流の負の端子によって印加される)。この構造において、流路100を通る最大流量は上の流量の式によって与えられ、印加される電位の大きさによってのみ制限される一方、最小流量はΔV=0であるときの純粋に圧力推進流に対するものであり、よってQ=−κΔPA/LFである。よって、多孔質誘電材料104で満たされた流路100において圧力推進流及び電気浸透推進流を組合せることによってその流路を通過する流量を変化させる電圧制御手段が提供される。要するに、流量制御は流路を通る圧力推進流に対する電気浸透「補助」の度合いを変えることによってもたらされる。以下に記載する他の好適な実施態様に関して更に詳細に説明するように、センサを用いて流量制御システム中の一又は複数の点における圧力、流量等々のパラメータをモニターすることができる。これらのセンサから生じる信号をサーボループで用いて、信号と予め決められた設定点の間の偏差に応答して電源から出力される電圧を調節することによって、信号を予め決められた範囲内に維持することができる。
【0042】
図2のシステムは電圧制御フロースプリッタとして作用する装置となる本発明の他の好適な実施態様を示す。流体はゲージ圧Pの供給源102から供給され、続いて節点202で分岐されて、それぞれゲージ圧P及びPの一対の流体出口103、204まで装置を通過して流れる。P及びPは共にPよりも低い。図2のシステムは圧力Pの流体供給源102に流通可能に連通している入口206と圧力Pnodeの節点202に流通可能に連通している入口207を有する流れ部材205とも呼ばれる第一流れ抵抗を含みうる。圧力Pの流体供給源102と節点202の間に圧力推進流れ抵抗、つまりダーシー流れ抵抗をもたらし、節点202で達成された最大の利用可能な流量と最大の利用可能な圧力が流路100の電気浸透流量と適合性があるようにPnodeの利用可能な圧力と流量を低減するために、第一流れ部材205を含めることができる。これは、第一流れ部材205の抵抗を流路100及び入口203と出口204を有する第三流れ部材201の流れ抵抗のある分数又は倍数にすることによって達成される。
【0043】
ゲージ圧Pはゼロ、つまり雰囲気圧でありうる。しかし、この実施態様はこの条件に限定されるものではなく、この条件はこの適用例を純粋に例証するためのものにすぎない。第三流れ部材201を通る流量Qは、P=0の場合、
=k(k(1−y)−(k+k)P)/(k+k+k)
但し、k≡κA/LF及びy≡(ν/κ)kΔV/kである。
変数kは、Aが有効断面積、Lが部材又は流路の長さである各流れ部材又は流路に対する上述の圧力推進流れ抵抗パラメータ又はコンダクタンスとして事実上考えることができる。よって、ΔV=0、よってy=0の場合、第三流れ部材201を通る流量は、
=k (k−(k+k)P)/(k+k+k)
の値を持つ一方、この流量Q(つまり第三流れ部材201を通る流量)は、
y=1−(k+k)P/k
のときにゼロであり、よってこの流量は、電位が
ΔV=(k−(k+k)P)/(κ/ν)
の値に設定されるときにゼロである。
【0044】
第三流れ部材201を通る流量Qは更に高い値の電位を印加することによって負とされうる(つまり、第三流れ部材を通る流れの方向が逆になる)。
第一流れ部材205のダーシー流れ抵抗は第三流れ部材201を通る流量の所望の範囲と電源107によって流路100に対して最大の電圧が供給されるときに達成される電気浸透流量に基づいて選択される。例えば、第三流れ部材201を通る流れを中断する能力が望まれるならば、PnodeがPに等しくなければならない。節点202の圧力は、Pnode=(k(1−y)+k)/(k+k+k)によって与えられる。よって、第一流れ部材205と流路100の相対抵抗は、流路100を通る電気浸透流を、第一流れ部材205を通る圧力推進流れに等しくなるように設計されなければならない。特定の適用例での流路100、第一流れ部材205及び第三流れ部材201に対する相対流れ抵抗の適切な選択は当業者により上に与えた式を用いて即座に決定される。
【0045】
図3は、図2に示す流れ部材の共通の節点202における圧力をモニターするために第一センサ301を付加していることを除いて、図2に示したものと同様の実施態様を示す。第一センサ301は、共通の節点202の圧力、よって流れ部材201を通る流量Qを調節するための検出制御ループの一部としてサーボループコントローラ302と共に用いることができる。第三流れ部材201を通る流量Qはまた以下に詳細に記載するように第二センサ311を通して直接的又は間接的にモニターしてもよい。このような調節は供給源圧力Pの変動(例えば圧力Pを与えるポンプ出力の変動から生じる)を補償するために望ましいであろう。再びゲージ圧Pがゼロである例を参照すると(繰り返すがこの特定の条件に発明は限定されない)、第三流れ部材201を通る流量QはQ=k(Pnode−P)によって与えられ、ここで節点202の圧力は、Pnode=(k(1−y)+k)/(k+k+k)によって与えられる。よって、Pの変動は、節点202で一定圧力、よって第三流れ部材201を通る特定の流量Qを維持するように、ΔV、よってyを調節することによって補償することができる。
【0046】
このようにして達成できる制御は、Pの圧力が要求された流量を供給するのに充分に高いままであるという条件によって制限される。このタイプのフィードバック制御は当該分野においてよく知られている任意の手段、例えば第一センサ301を使用して節点202の圧力又は流量の読み取りを行い、電源107によって印加される電位を手動で調節する方法;第一センサ301で節点202の圧力又は流量を測定し、電子的に(又は機械的に)調節可能な電源装置107を駆動するアナログ電子(又は機械的)サーボループコントローラ302にこの測定値を供給する方法;コンピュータに接続された第一センサ301で節点202の圧力又は流量を測定し、場合によってはコンピュータに供給される他のデータを考慮する高次補正(例えば流体又はセンサの温度変動の補正)を行いながら、コンピュータを用いて電源装置107を調節する方法によって、達成することができる。
【0047】
サーボループ制御を具備するか具備しない図2及び3に示されたもののような複数の装置を同時に操作して、一つの共通の流体供給源102から可変流量の複数の並列供給源を運転してもよい。これらの並列実施装置の出口は必要ではないが同じ圧力の負荷で終了してもよい。同様に、これらの並列装置の流れ抵抗及び移動度係数は必要ではないが同じでもよい。
上述のサーボループは様々な制御入力及び作用出力を用いることができる。例を挙げると、限定するものではないが、第三流れ部材201を通る一定流量Qを提供する目的で、サーボループへの入力を、例えば第三流れ部材201を通る差圧(第一センサ301及び第二センサ311を圧力の測定に使用することができる図4を参照)として、又は第三流れ部材201と直列に配設されたある他の受動的圧力損失の差圧として取る。ついでこの差圧からダーシーの法則によって流量測定値が得られる。別法として、流量は、従来から知られている他の手段、例えば限定するものではないが、第三流れ部材201の流体出口204において又はそれを越えた位置で測定されるタービン流量計、熱対流流量計、ドップラー流量計によって検出することができる。
【0048】
熱伝達に使用される液体の流量を供給し、これにより、第三流れ部材201を通る液体流の結果として温度又は熱流束を制御する目的で、(図4に示されるような)第一センサ301及び第二センサ311を用いて温度を測定することができ、第三流れ部材201を液体熱交換器又はある種の更なる下流の部材の一側に持って行く。温度制御では、サーボループへの入力は熱電対又はサーミスタ又はRTD又は従来から知られている他の装置でありうる。熱流束の制御では、サーボループへの入力は熱流束センサ又は流体の温度変化又は従来から知られている他の手段からのものでありうる。
【0049】
ベローズ501(図5参照)又はピストン又はダイアフラム又は従来から知られている他の手段へ流体圧を加えることによって機械的力又は変位を加える目的で、第一センサ301を用いて、当該分野で知られているようにロードセル(力に対して)又は変位センサからサーボループへの入力信号を発生させることができる。当業者であれば、油圧機械システムが好ましくは圧縮負荷条件下で利用されることが分かるであろう。負荷が自然に圧縮性(例えば重力又はバネ復帰負荷)である場合、単一の流量制御装置を用いて、負荷に対して作用する油圧力を印加し制御することができる。この場合、流路100に対して電源装置107によって印加される電位を減少させ、負荷に対して流量を増加させて負荷に対処する一方、流路100に対する電位を増加させて、負荷が復帰されるときに油圧アクチュエータからの流体の流量を増大させる。負荷が中立である場合又はアクティブな復元力が必要とされる場合には、二つのそのような流量制御/サーボ装置をプッシュプル構成で使用することができる。
【0050】
図1から5に示された設計は本発明の幾つかの実施態様を示す。これらの実施態様を当面の問題又は適用態様によって影響される様々な直列及び並列配置で組み合わせることができることは当業者であれば分かるであろう。この点について、図1に示された実施態様はインライン又は直列流量コントローラの形態として考えられ、図2から5に示された実施態様はシャント又はブリード流量コントローラの形態であると考えられる。
【0051】
図6に示したシステムは二つの流体を共通の流れに合流させるのに有用な本発明の更なる実施態様を示す。一つの可能な応用例として、この実施態様を例証すると、このようなシステムを用いて、グラジエントタイプの高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)に使用される二つの試薬又はバッファーの制御した混合を実施できる。上述したように、圧力検出及びサーボ−フィードバック制御の使用を、混合物と出力流量の双方をモニターし、及び/又は制御し、及び/又は調節するために(図6に示されるように)利用することができる。繰り返すが、このシステムと本発明はこの特定の実施例に限定されない。
【0052】
図6の実施例では、圧力P及びPの二つの流体A及びBの供給源102及び602が、流体が混合される共通の接合部612(センサ613によってモニターされるゲージ圧P)に流体を供給する二つのシャントタイプコントローラー(入口101、206、203、601、626及び609と出口103、207、204、603、627及び611をそれぞれ有する流れ部材100、205、201、600、608及び625と、ブリッジ108及び628、節点202、610、及び612及び節点圧P2A及びP2Bをそれぞれモニターする二つのセンサ301、614を具備)に供給される。この混合物は更にサンプルインジェクタ616に、ついで圧力駆動クロマトグラフィーカラム617に供給される。これを例証するために、第二及び第四部材100及び600のためのクロマトグラフィーカラム617と収液リザーバ109、629の出力圧を周囲圧とする(しかし本発明はこれらの出力圧に限定されないし、これらの出力圧が同じである必要もない)。
【0053】
本発明のこの態様の目的は流体の組成にプログラムされた変動を与えながらカラム617に一定流量を与えることにある。その各供給源102及び602からの流体A及びBの流量は、第一、第二及び第三センサ301、613及び614、第一及び第二サーボループコントローラ302及び615、第一及び第二電源107及び607、及び定値入力618、619を含む二つの検出制御ループによって独立に測定されサーボ制御される。流体組成中のプログラムされた変動は一連のステップ変化の形態でもよいし、又は連続ランプの形態(つまり勾配)又は分離技術において知られている他の形態の任意のものでありうる。二以上の流体供給源を必要とする適用例では、アテンダント流量コントローラとサーボループを組み合わせて、更に複雑な又は広範囲の流体組成変動のためにあてがうことができる。このような構成装置を流体の共通の供給源から同時に運転して複数の分離を並行して実施することができる。
【0054】
これを例証する目的で、分離カラム617のヘッドのサンプルインジェクタ弁616に接続されたサンプルループ621を通してのサンプルの注入を、HPLC技術において知られている手段の任意のものによって(例えば特殊なサンプル注入弁、例えば616によって、あるいは多孔質媒体を通しての電気浸透/電気泳動注入によって)実施する。これを例証する目的で、分離の最終用途をHPLC技術において知られている最終用途(例としては、例えばレーザ誘導蛍光、光吸収、屈折率又は電気化学ポテンシャルを測定する検出器620による検体検出;分離成分の収集;質量分析計又はICP又はNMRスペクトロメータへの入力;HPLC又はLC又は電気クロマトグラフィーによる次の段階の分離への入力;又は分取HPLC)の任意のものとできる。
【0055】
図7及び8は図3に示されるシャントタイプの流量コントローラ構成装置を用いた流量制御の例を示す。流れ部材は0.6mmの直径の非多孔質シリカビーズを充填した150ミクロンの内径のシリカキャピラリーセグメントから製作した。流れ部材、圧力トランスデューサ及び圧力供給源を一般的な小型HPLC継手を用いて接続した。
図7−10は横軸に時間(分)を、縦軸に圧力(psi)をプロットしたものである。
図7に示されたデータは圧力供給源として市販の「ネジ調整」型シリンジポンプを用いて生成した(推進圧曲線(ライン700)のリップルがシリンジポンプによってつくり出されるよく知られた圧力変動に対応する)。時間t=0でコントローラを、約225psiの設定値でスイッチを入れて作動させた。制御された圧力のトレース701によって示されているように、t>2.5分までに設定値が達成された。残りの試験では、シリンジポンプの供給量を数回変化させ、推進圧700に変化を生じさせたが、つくり出された推進圧700の変化は制御された圧力701の2%未満の変動であった。トレース700中の明らかな推進圧の変動を流量コントローラによって効率的に除去したので、制御された圧力トレース701には存在しない。
【0056】
図8に示されるデータはまた市販の「ネジ調整」型シリンジポンプを用いて生成した。再び、t=0でコントローラを作動させ、約225psiの設定値の制御された圧力801を速やかに達成した。この例では、推進圧800が増加させられた後、シリンジポンプの作動が停止され、所定の時間にわたって推進圧800が減少した。約190分までに推進圧800は約240psiまで低下する一方、コントローラは約225psiの設定値の制御された圧力を維持した。このようにして、設定値圧より僅かだけ大きい推進圧で制御が達成された。図8に示す上側のトレース802は流量制御部材を通る電流を示している。
【0057】
図9は伝統的なHPLCポンプによって駆動されるナノボアキャピラリーシステムからの圧力データを示している。HPLCポンプの流量はトレース900によってモニターされ、ポンプの出力圧が150psiの瞬時過渡現象を生じるマイクロシステムでは不安定であることを示している。カラムヘッドにおける圧力トランスデューサの出力はトレース901によって示されている。流量コントローラを作動(およそ60分から120分)させることによって、カラムへの圧力と流量を正確に制御することが可能になる。流量コントローラが作動する範囲にわたって、650psiの設定値についての2乗平均平方根(「RMS」)圧力変動は1.7psiである。8.5nL/秒のカラム流量では、これは0.02nL/秒の流量RMS変動に相関する。
流量コントローラの設定値は推進圧より少ないほぼ任意の値に変化させることができるので、二又はそれ以上の流量コントローラを組み合わせて、マイクロスケールの分離に使用できる速く正確で再現性のある勾配を達成しうる。単一の圧力供給源を用いて勾配に使用される異なった流体の全てを推進することができる。流量コントローラがマイクロスケールの装置であるので、複数の並列配置で操作するのに適合している。
【0058】
図10は、トレース1000(水)及び1001(アセトニトリル)に示されている水/アセトニトリル勾配を生じるようにプログラムされた、図6に示されたシステムのようなデュアル流量コントローラシステムの性能を示している。トレース1000及び1001は図6に示された節点202及び610で測定された圧力に対応する。6の勾配が図において繰り返され、およそ3、12、21、30及び39分に始まる。水とアセトニトリルは共に3分の勾配にわたってその最初から終わりまでの圧力まで数百psi傾斜し、ナノボア分離カラムのヘッドのミキシングティーまで送られる。勾配は、流体がナノボア分離カラムに送られる速度を制御しながら混合された流体の組成を変化させる。勾配の出発条件は1分未満で再樹立できる。このシステムでは、単一の手動操作ポンプが推進圧をもたらす。流れの大部分がHPLC中に直接入る;廃液は非常に少ししか生じない。分離カラムの流量は質量分析計への直接の供給に適合している。これはナノボアHPLCシステムに速い勾配を迅速かつ再生可能に生成するデュアルフローコントローラシステムの能力を立証している。
【0059】
上で述べたように、閉流路中に通電電極が存在すると望ましくない悪影響が生じうる。ブリッジは電流をなお提供しながら流路から電極を取り除く一方法を提供する。また上で述べたように、ゼータ電位は流体組成とpHの関数である。このように、任意の与えられた流量制御多孔質部材が、ある限られた範囲の流体条件下で操作されうる。図11は閉流路から電極を除去し、操作条件の範囲を増大する方法を共に提供する本発明の実施態様を示す。
図11では、第二流量制御部材流路100は並列な二つのそのような流路100及び1100に置き換えられている。二つの流路100、1100の流体出口103、1103は、共に供給源102の圧力Pより低い終圧Pの別個の流体リザーバ109、1109に導かれる。電源装置107からの電力がリザーバ中に電極105、106を通って供給される。ついで、電流は電源装置107から一方の流路(例えば100)を通って、また他方の流路(例えば1100)を逆に通って電源装置107まで運ばれる。流路の共通の流体接続点である節点202がついで任意の電圧(必ずではないが好ましくはシステムアース)に維持されうる。流路100及び1100は電気浸透流を支援するのに充分に大きな孔径を有する異なったゼータ電位多孔質誘電材料104、1104を具備する。この構造は流路の一方が電気浸透流を支援するには小さ過ぎるが電流を運ぶにはなお充分に大きい孔径を有する材料を含むという制限のブリッジの場合に帰着することに留意のこと。
【0060】
例えば、流路100内の材料104はpH3の名目等電点を持つシリカであってよく、流路1100内の材料1104はpH9.2の等電点を持つアルミナであってよい。更なる例として、材料104はスルホン酸基(pH1.5の名目等電点)を示すように改変され得、媒体1104は第4級アミン(pH14より高い名目等電点)を支持するように改変されうる。二つの材料の等電点の間のpHを持つ流体の場合は、一方の流路を通る電気浸透流は供給陽極に向かい、他方の流路を通る電気浸透流は供給陰極に向かう。ついでこれは単一の流路を使用して支援されるよりもより広い範囲のpH条件にわたって流れ、よって流量制御をもたらし、同時に、閉流路100、1100から通電電極105、106を除去する。
【0061】
特定の例として、流路100及び1100中の材料104、1104がそれぞれシリカ及びアルミナであると考える。pH3を持つ流体では、シリカが満たされた流路100は無視できるゼータ電位を持ち、よって電気浸透流を提供しないが、それでもなお電流を運ぶ。アルミナが満たされた流路1100はpH3の流体では高い正のゼータ電位を持ち、よって(供給陽極に向かう流路の共通の接続点202から)流量制御に必要とされる電気浸透流をもたらす。pH9を持つ流体では、役割が逆転し、シリカが高い負のゼータ電位を示す一方、アルミナが無視できるゼータ電位を持ち、よって電気浸透流が、供給陰極に向けての流路の共通の接続点202から、シリカが満たされた流路100を通過する。pHが3から9の流体では、流路100及び1100は共にある程度の電気浸透流を供給し、よって流量制御を達成する能力に寄与する。
【0062】
これまでに記載された本発明の実施態様におけるアクティブな部材としての任意の与えられた材料の使用は、使用されうる液体の範囲を制限する物ではないことは明らかである。例えば、多くのタンパク質及び小分子のクロマトグラフィーは酸性流体条件下で実施される。しかしながら、シリカは酸性条件下では実施できない。よって、これまでに記載した本発明の実施態様は異なったpH範囲で作動する動電学的にアクティブな材料を変えることを必要としうる。
とにかく、流量コントローラのダイナミックレンジはアクティブな部材の有効孔径の二乗を減少させ、ゼータ電位を増加させることによって増大させられる。これまでに記載された実施態様のダイナミックレンジは、特定の流体と適合性がある材料を使用することが必要であるので、望まれるほど大きくはないであろう。
【0063】
次の実施態様は更に多くの範囲の液体と関連して使用されうる。次の実施態様の主たる適用例はよって作動流体が分離のタイプに影響を受けるクロマトグラフィーに対するものである。
図12に示された実施態様は、それ自体では動電学的なアクティビティを支援しない作動流体と関連して使用することができる。圧力Pの供給源102からの作動流体1203は第三流れ部材201を通過して、それぞれ第一及び第二流れ部材205及び100との接続点202まで流れる。圧力P1Aの第二圧力供給源1201からの第二流体1204は第一流れ部材205を通過してまた接続点202まで流れる。第二流れ部材100は動電学的にアクティブであり(つまり、部材がゼータ電位を示し、外部電位が部材に印加される)、P及びP1Aより低い圧力Pの終端1205までそれぞれ二つの流体1203及び1204の混合物を運ぶ。図12に示される構造は直列モード配置と称することができる。
【0064】
圧力P1Aで供給される第二流体1204は作動流体1203とは必ずしも同じではない。むしろ第二流体1204は作動流体1203と混合されてpH又はイオン強度又は流体組成を変更するものであり、よって動電学的にアクティブな第二流れ部材100の適切な操作を提供する。
ゲージに対する圧力を再び測定する場合、第二部材100を通る流量はQ=ak+kP'であり、ここでP'は接合部202の圧力であり、aの符号は、電気浸透流が第二部材を通る圧力推進流と同じ方向になるように構成される。aの符号は、印加される電位の符号とゼータ電位の符号を、積が正になるように選択することによって正にされる。
【0065】
第三部材を通過する流量は、
【数1】

によって与えられ、ここでx=P1A/Pである。
一群の条件が部材のコンダクタンスの選択を導くために課せられうる。課せられうる二つの条件はaの全ての正値に対してQ及びQの両方を正に維持するように1+k/k>x及び1+k/k>1/xと設定することである。更なる条件は、あるとすれば、第三部材を通る流量の範囲に対する要求によって導き出され得;最小は印加電位ゼロで、よってa=0であり、最大はゼロの接合部圧で、よってQ3max=kである。接合部圧力がゼロである場合、a=(k+xk)/kである。
【0066】
更なる条件は、第二部材に高性能動電学に適した性質を有する混合物を生じる第一及び第三部材を通る流量を必要とすることによって誘導されうる。二つの流体の混合は第一及び第三部材を通る流量の比によって特徴付けることができ、Q13=Q/Qであり、
【数2】

によって与えられる。
当業者であれば、他の設計条件が与えられた場合、自分自身の知識とこの明細書の開示を考慮して、流れ部材パラメータの他の群を選択し最適化することに困難はない。
【0067】
次の例は例証目的のみのものであり、発明を限定するものとみなしてはならない。作動流体は約2.5のpHを生じる10mMの水性トルフルオロ酢酸「TFA」でありうる。この例では、第二部材はアクティブな材料としてシリカ、特に中性から塩基性条件下でボルト当たり5psiを越える性能を生じる名目0.6ミクロンの非多孔質シリカビーズの充填を利用する。シリカは約2.5のpHにおいてゼータ電位を示さないか少ししか示さない。第二流体は100mMの水性イミダゾールと、pHが約7.15の弱塩基及び1mMのHClの混合物である。HClは必須ではないが、純粋な第二流体さえ運転させる第二部材の操作を保証するために添加される。
【0068】
第二流体に入る流体のpHは、Hイオン濃度、つまりCについて、
【数3】

を解くことによって、よく確立された関係式を使用して推定することができる。ここで、CTFA、CIMD及びCHClは第一及び第二流体中のTFA、イミダゾール及びHClの濃度であり、K及びKIMDは水及びイミダゾールのそれぞれに対する平衡定数である。
例証のためで、本発明の作用範囲を限定するものではないが、P=P1Aの場合、よってx=1の場合、流量比はaの全ての値に対して、Q13=k/kである。kの25%であるkの値を用いる設計により、シリカから高性能の動電学性を生じる条件である第二部材100の入口101の約pH7.2に作動流体を緩衝する混合物が得られる。更なる利点は、酸性液体中の高移動度Hイオンが第二部材100を流れる液体中の有意に低い移動度のイミダゾールイオンによって置き換えられているので、液体混合物の伝導度が大幅に低減される点にある。
【0069】
pHの関係を調べることにより、約7より大きいpH値を得るには積CIMD13の値はCTFAより約2倍大きくなければならないことが理解される。よって、Q13の小さい値を使用することを可能にするために第二流体において濃縮弱塩基(作動液体の酸濃度よりも実質的に高い濃度)を用いることが好ましい。明らかに、非常に低い平衡定数の強塩基又は弱塩基を用いることができるであろう。しかし、濃縮形のこれらは材料を損傷するかもしれない高pHの第二液体を生じる。例えば、1mMのHCl及び100mMの水性トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン「TRIS」又はイミダゾールでは、pH値はそれぞれ約10.4又は9.15である。濃縮TRISのpHはシリカの解離を促進させるのに充分に高い。一方、シリカは約9.5未満のpH値ではかなり安定しており、イミダゾールを実施可能な候補にする。他の弱塩基を等しく用いることもできる。
【0070】
複数の流体が使用される本発明の先の実施態様のような流量コントローラシステムは次の利点の一又は複数を有しうる:
(a)単一の電気浸透的にアクティブな部材を使用して広範囲の流体組成及び流体条件で運転する能力。第二流体の組成は異なった作動流体に対処しうるが物理的装置/システムへの変化は必要とはされない。
(b)電気浸透流に適していない作動流体を用いる能力。作動流体と第二流体の混合物は電気浸透流を支援する。よって、潜在的な「作動」液体の数は既に検討したものを含むが、また有意に増加される。作動液体は好ましくは第二液体に混和性でありそれに反応性ではない。例えば、ベンゼン、置換ベンゼン、長鎖脂肪族化合物ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、及び四塩化炭素は相対的に低い誘電率及び/又は双極子モーメントを有し、よって動電学的流れを支援しない。しかし、これらは例えばイソプロピルアルコールに混和性であり、混合物は動電学的流れを支援することができる。
【0071】
(c)更に多くの数の作動流体に対して動電学的にアクティブな部材としてシリカを用い、よって高動電学的性能を有する良好に特徴付けされ広く利用され容易に形成される材料を利用する能力。
(d)材料の化学的安定性及び高性能をもたらす液体条件下で他の高性能のアクティブな材料(例えばある種のポリマー又は他の金属酸化物)を使用する能力。
(e)タンパク質及び小分子のHPLCにおいて緩衝液を流すのにしばしば使用される、低い作動流体pH値で負のゼータ電位材料としてシリカを用いる能力。
(f)よく定まった範囲のpHにわたる動電学的操作で、多価イオンを有する液体での予想可能な操作とそれに対する許容性を付与するもの。
【0072】
(g)高イオン強度、よって高電気伝導度の作動流体を使用する能力。ゼータ電位、よって性能は、作動流体のイオン強度の増加と共に減少し、電力損失、よってジュール加熱が増加する。そのような場合、第二流体は好ましくは低イオン強度(名目的に0.1から1ミリモル)であり、好ましくは比較的低い比導電率の塩又はバッファーを含むものが選択される。二流体の混合によりアクティブな部材中の流体の伝導率が低減され、ゼータ電位が増加し、ジュール加熱が減少する。使用することができるイオン性流体の強度には絶対的な制限はない。任意のイオン強度の流体を、動電学的流れを支援するのに充分に希釈することができるようにシステムを設計することができる。しかしながら、作動流体のための最大流量は割合がそのイオン強度まで減少する。
【0073】
(h)純粋な溶媒作動流体を使用する能力。ある程度のイオン含量が合理的な電気浸透性能を達成するために必要となる。純粋な溶媒はよって、特に電荷層がオーバーラップする問題のために小孔径の媒体においては劣った電気浸透流体である。そのような場合、第二流体は好ましくは中程度のイオン強度(例えば10から100mM)となるように選択される。二流体の混合により高性能の動電学性のために必要なイオン含量が得られる。
(i)純粋な有機作動流体を使用する能力。多くの場合、適切なイオン含量を持つものでさえ、純粋な有機溶媒は、更に少ないパーセントの水を含む同じ溶媒よりも顕著に低い動電学的性能をもたらす。そのような場合、第二流体は好ましくは水性であり、中程度のイオン強度を有する。二流体の混合により、高性能の動電学性のために必要な水含有量が得られる。
【0074】
シャントモードの構成の他の別の実施態様が図13に示される。図13の第一、第二及び第三部材205、100、及び201は、それぞれ、図12の第一、第二及び第三部材205、100、及び201と同じ役割を果たす。作動流体1203は圧力Pで第四流れ部材608の入口609に供給される。第四流れ部材608の出口611は第二接続点610で第三流れ部材201の入口203と第五流れ部材625の入口626に接続される。第二流体1204は圧力P1Aで第一流れ部材205の入口206に供給される。第一流れ部材205の出口207は第一接続点202で第二及び第三流れ部材100及び201にそれぞれ接続される。第二流れ部材100は動電学的にアクティブであり、P1A及びPより低い圧力Pのリザーバ1205で終わる。第二流体1204は接続点202で作動流体1203と混合され、コントローラの許容可能な電気浸透性能を提供する混合物を生じる。第五流れ部材625は、P1A及びPより低い圧力Pの例えばクロマトグラフである終点1301で終わる。目的は第五部材625を通る作動流体1203の流量を制御することである。
【0075】
それぞれ第一及び第二接続点202及び610の圧力であるP'及びP”は、
【数4】

の解によって決定され、ここで、これらの関係は一般性を失わないでPゲージ圧に対して表される。幾つかの条件が流れ部材の様々なコンダクタンス間の関係を支配又は示唆する。
多くの適用例に対して、特に化学分析において、目標は第五部材625を通って流れる流体の汚染を避けることである。そのような場合、好適な設計では、流れコンダクタンスは流れを第三部材201を通って第二接続点610から第一接続点202まで向けるように選択される。これには、aの全ての正の値に対して、
【数5】

となることが必要である。この不等式が少なくとも1.2倍、より好ましくは2から3倍大きくなることが好ましい。より高い値は、成分部材の部分対部分の変動によるシステム対システムの性能変動を最小にする傾向がある。
【0076】
加えて、第三部材201は、第二流体1204が第五部材625を通って流れる流体を汚染するのを防止するために使用できる。これはできるだけ少ないヘッドロスの場合に好ましくなされる。よって、第三部材201のコンダクタンスは好ましくは他の部材のそれよりは更に大きい。好ましくはkは他の部材のコンダクタンスの少なくとも100倍、より好ましくは約1000から5000倍大きい。
【0077】
好ましくは、それぞれ第一及び第三部材205及び201を通る流量の比が設定され、それによって第二部材100に到達する混合物中の二流体の比が設定される。ついでこの比から、pHや希釈量のような、動電学的性能に影響を及ぼす流体の性質を計算することが可能になる。P1A=P(この等式はここでは例示のために課せられるもので本発明の一般的な作用又は利用性を制限するものではない)の場合、
【数6】

【0078】
場合によっては、例えば流量コントローラは、第五部材625に対する入口626に利用できる最大圧が、第五部材を通して最大又は最小の流量が、及び/又は第五部材の最大のコンダクタンスが得られるように設計されうる。上述のようにして決定されたコンダクタンスが与えられると、第五部材を通る最小流量を設定することによりaの最大値が得られる。
特定の実施例では、P1A=Pで、作動流体1203は10mMの水性TFAであり、第二流体1204は500mMの水性イミダゾール及び3mMのTFAであり、第二部材100であるアクティブな部材には名目上0.6ミクロンの非多孔質シリカ粒子が充填されている。第三部材201を通る正の流れに対しては、k>kである。式を調べると、最も酸性のpHを生じる条件である混合物に加えられる第二流体1204の最も低い割合が、第一接続点202にゼロのゲージ圧を生じる印加電圧を第二部材100に生じさせることが明らかになる。この限界において、流量の比は次の通りである:
【数7】

【0079】
=0のこの実施例での設計選択は、それぞれkからkに対して約0.19、0.14、3000及び2.7の、kの値に対するコンダクタンス値を示唆する。全集合は第五部材625を通過する流量の要求に合致するようにスケール変更できる。これらの値で、第三部材201を通過する正の流れに対する条件は十分に満たされる。それぞれ第一及び第三部材205及び201を通過する流量の比は操作範囲全体にわたって約7.2より大きい第二部材100の入口101にpH値を生じるのに充分であり、よってシリカでの高性能な動電学性を提供する。この値群はまた第五部材625の入口626に作動流体供給源圧力の約70%の最大値を提供する。
図13に示された実施態様では、第二流体1204と作動流体1203を第一接続点202で組み合わされ、第二部材100内に直接流れる。これは二流体1203及び1204のかなり完全な混合を確実にするのに充分な滞留時間をもたらさないかもしれない。ある量の混合が、より高い電気浸透性能を得るためには好ましい。
【0080】
図14に示された実施態様では、第二流体1204と作動流体1203が第三接続点1401で組み合わされる。ついで組み合わされた流体は、入口1405と出口1407を持つ第六部材1403を通って、第二部材100の入口101まで流れる。第六部材1403における組み合わされた流体の有限の滞留時間は二流体1203及び1204の混合を促進する。
流れは「クリーピング」又は「ストークス」限界にある。このように、二流体の側方混合は拡散による。よって、第六部材1403の長さは好ましくはQ/2πDより、実質的に大きい、より好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは100倍から500倍である。第六部材1403が円形断面形状ではない場合には、「直径」には好ましくは非円形形状の外径が取られる。
【0081】
この混合を促進させるために別法を用いることができる。例えば、撹拌を増大させるのに役立つ構造、例えば当該分野でよく知られているパッシブ又はアクティブミキサー1409を第六部材1403内に含めることができる。
一対の圧力センサ301及び311が第五部材625を通る流量を決定するために配設される。ついで、これらの信号はアクティブな部材に対する電位をアクティブに調節することにより流量を制御するためのサーボ・ループの一部として用いることができる。
多くの事象が明らかな圧縮性(圧力変化に対する部分的体積変化)をシステム中に導入し得、よって流量と流れの方向に影響を及ぼす。そのような事象は電気浸透システムに限られるものではなく、限定されるものではないが、気体の泡の存在;流体の等温圧縮;及びセンサダイアフラムの撓みが含まれる。
【0082】
システムの最初の加圧のときに生じるかもしれないような、大幅な圧力変化の間、明らかな圧縮性の存在、例えば第五部材625の入口に直接接続されたセンサが図13に示された実施態様の第三部材201を通過する流れの方向を一時的に変えうる。そのような一時的な流れの逆転は第二流体1204で第二接続点610を一時的に汚染しうる。
最初の加圧時に、第二流体1204は第一部材205を通って流れた後、いくらかが第三部材201を流れて接続点610の圧縮性容積を満たしうる。これらの流れは、センサ容積が加圧されるまで続き、その後、第三部材201を流れる全体の流れは第二接続点610から第一接続点202まで向けられる(正の流れ)。
が他の流れ部材のコンダクタンスよりも実質的に大であるように選択される場合、起動の過渡期において第三部材201が正しい流れ方向になるようにするには、α/kは好ましくはα/kより大きく、より好ましくはα/kより少なくとも2倍大きく、最も好ましくはα/kより5から10倍大きい。ここで、α=θvであり、vは接続点プラス任意の付随容積又はセンサの内部容積、θは容積内の見かけの圧縮率の合計、α及びαは第二及び第三接続点に付随するα値である。α/kの比は時間の次元を持っており、電子回路におけるRC時定数と同じように時間応答性を反映することが理解される。
【0083】
より速やかなシステムの時間応答を得るためにシステム全体にわたってα値を最小にすることが一般には好ましい。よって、αを大きくすることによって上記の条件を満たすことは好ましくなく、むしろ、k>kを選択することと組み合わせてαを小さくすることが好ましく、後者は第三及び第六部材201及び1403をそれぞれ通る正の定常状態流に対する要件と完全に一致している。
加圧過渡状態において第三及び第六部材201及び1403をぞれぞれ通る正の流れを確保する別の方法には、限定されるものではないが、次のものが含まれる:
(a)システムの加圧中に、圧力P1Aより前に圧力Pを開始し、システムの減圧中に、圧力Pを除く前に圧力P1Aを除く;
(b)PとP1Aが同じ圧力供給源から誘導される場合、第一部材の加圧を遅らせるアキュムレータとして作用する圧縮性容積が、206の入口において第一部材205に加えられうる;
(c)第一アキュムレータ1411として作用する圧力トランスデューサを用いて、第二接続点に、第二アキュムレータ1413として作用する圧縮性容積を導入し、第三接続点で適切なα値を提供する;
(d)第二接続点の圧力トランスデューサを用いて、第二から第三接続点まで流れを向ける逆止弁を導入する。
【0084】
正の流れを確保するこれらの方法は電気浸透システム並びに電気浸透活性を持たないシステムに使用されうる。
これまでに示された装置は単一の活性部材100を用い、活性部材に達する混合物中の流体比を受動的に制御するためにコンダクタンスの賢明な選択に依存する。他の成分コンダクタンスと推進圧のアクティブな制御は自由度を付加し設計の拘束条件を緩くすることができる。図15はシャントモードの流量コントローラの一部として直列の二つの動電学的にアクティブな部材を示している。
【0085】
混合を伴うシャントモードコントローラに対して、式を調べると、比Q/Qの最も低い値は第一接続点202の圧力が最も低い値のときに生じることが明らかになる。図13に示されているもののような混合システムに含まれた図15のシャントモードのコントローラを考える。本発明を限定するものではなく、例証のためであるが、第一接続点202における最も低い操作圧をゼロとし、圧力Pをゼロとし、P1AをPに等しくする。kが他のk値よりも大幅に大きい限界において、流量比はそのときQ/Q=(1+a1max)k/kであり、ここでa1maxは第一接続点202においてゼロ圧に達するのに必要な電圧での第一部材205に対するa値である。第三部材201を通る正の流れに対する条件(この例で考えられた場合に対する)はk>kであり、一般にダイナミックレンジを考慮するとkより少ないかおよそkに等しいk値を生じる傾向がある。よって、流量の有限比をもたらす必要性は、この例では、k/kの有限値を必要とする一方、第三部材201を通る正の流れに対する条件はこの例ではk/kの値を減じることを必要とする。a1maxの有限の正値を用いて流量比を増強することができ、よってkとkの相対値についてこれらの反対の条件を満たすことが可能になる。aの値がaの値より少なく、好ましくは5から10倍少ないことが好ましく、さもないと第一部材205を通る電気浸透流が第二部材100を通るものに打ち克ち、システムは第五部材625を通る流量を制御することができない。
【0086】
図15(a)において、二つのアクティブな部材100及び205はそれぞれ、直列に電気的に接続されている別個の電源装置107及び1501を有している。従って、各電気浸透的流量は独立に制御される。この制御は場合によっては供給電流を測定して又は様々なセンサ入力を使用して増強される様々なアルゴリズムを用いることができる。
図15(b)では、単一の電源が、共通の電流が、直列に電気的に接続される二つの活性部材100及び205をそれぞれ通して運ばれるように用いられる。この構成では、akP=sIであり、ここでs=v/σであり、σは存在する任意の多孔質媒体によって変更される流体の電気伝導度であり、Iは電流である。共通の電流では、k/k=s/sである。aより小さいaとするための要件は第二部材100のものについて適切なゼータ電位を生じるような材料を第一部材205に選択することによって満たすことができる。
【0087】
複数のアクティブな部材を有する流量コントローラは明らかにされた流体混合構造の観点から記載した。しかし、そのようなアクティブな制御スキームはまた単一の流体を持つ流量コントローラシステムの実施態様及び複数の流体供給源を持つ他のフローコントローラシステム実施態様において増加した操作範囲に適用可能であり、それを提供可能である。
図16は、第六及び第七流れ部材1602及び1607がそれぞれ、圧力P及びP1Aよりも低い圧力P2Aの排液管路1601及び圧力P1Aで供給された第二流体1204の供給源1201の間に直列に接続されている受動的な設計を示す。第一部材205の入口206は第六及び第七部材1602及び1607それぞれの共通の接続点1610に接続されている。この組合せにより、第一部材205の入口206の圧力を抵抗分圧器を使用する場合に非常に類似した形で第二流体供給源圧力から減じることが可能になる。この構成は、異なった圧力を持つ二つのシステムを駆動するために単一の圧力供給源を使用することが望まれる場合に有用である。
【0088】
あるいは、第六部材1602は動電学的にアクティブでありうる。この構成により、第六部材1602に印加される電位を変化させることによって接続点1610の圧力が変調される。この実施態様の二つのアクティブな部材は好ましくは各電気浸透的流量を独立に制御することを可能にする別個の電源装置を有している。この実施態様は場合によっては供給電流を測定し又は様々なセンサ入力を使用することにより様々なアルゴリズムを使用することができる。
これまでに記載された複数の流体と関連して使用される流量コントローラの実施態様では、作動流体は動電学的活性を支持する第二流体と混合される。しばしば、作動流体は他の流体とは混合しないことが望ましい。
図17に示された実施例は、これがその場合に使用できる。ある分量の作動流体1203がしばしば流体ストレージ部材又はカートリッジとも称される第五部材625の容積内に保存される。作動流体1203は、第三部材201を通して供給される第二液体1204と第五流体625内の作動流体1203を置き換えることにより、第四部材608を通過した後、終点1301まで供給される。作動流体1203の流量はよって第三部材201を通して第二液体1204の流量を制御することによって制御される。
【0089】
第一、第二及び第三部材205、100及び201はそれぞれシャントモードの電気浸透流量コントローラを構成する。この第二液体1204は作動流体1203と必ずしも同じではなく、第二部材100におけるゼータ電位の生成を支持するように選択される。この構成では、作動液体は第二液体と混和性である必要はないので、潜在的な作動液体の数は劇的に増加する。混合物も動電学的流れを支持する必要はないものではない。しかしながら、好ましくは、作動液体は第二液体と反応性ではない。
作動流体には、限定されるものではないが、既に列挙された作動流体の全て、油、油圧流体、気体、スラリー(つまり、粒子状物質を含む液体)、エマルジョン、冷媒、CFC、超臨界液体又はそれらの混合物が含まれる。
【0090】
図17のシステムは第五部材625内に保存された作動流体1203の量によって制限される操作時間(time-of-operation)を有する。この操作時間は第五部材625内での二流体1203及び1204の混合によって減少させることができる。このためには、第五部材625における流れが層流であり第五部材625の幾何構造が部材長さ、つまり微小穴管路の長さよりも大幅に小さい油圧径に対して選択されることが好ましい。ハイドロリック径が、一流体から他の流体への拡散係数の2倍によって割られた平均流速とハイドロリック径の積にほぼ等しい、0.5から20のオーダーの小さい値のペクレ数を生じるように選択されることが更に好ましい。液体ストレージ容積としての微細穴管路の使用と液体を分配する手段としての流れ内に挿入されたそのような管路の使用はよく知られており、液体クロマトグラフィー技術において広く使用されている。例えばA. Weston及びP.R. Brown, HPLC and CE: Principles and Practice, Academic Press, San Diego, CA, 1997, pp.83-84を参照のこと。このタイプの流れと幾何構造において混合の程度を評価し混合を制御する詳細は機械工学技術においてよく知られている。例えば、V. Ananthakrishnan, W.N. Gill及びA.J. Barduhn, 'Laminar Dispersion in Capillaries, Part 1. Mathematical Analysis,' AIChE J. Vol.11 pp.1063-1072 (1965). G.I. Taylor,'Dispersion of a solute flowing through a tube,' Proc. Roy. Soc. (London) Vol. 219A, pp.186-203 (1953). R.Aris, 'On the dispersion of soluble matter in solvent flowing slowly through a tube,' Proc.Roy.Soc. (London) Vol.235A, pp.67-77 (1956). P.C. Chatwin及びP.J. Sullivan 'The effect of aspect ratio on the longitudinal diffusivity in rectangual channels,' J. Fluid Mech. Vol. 120, pp.347-358 (1982). M.R. Doshi, P.M. Daiya及びW.N. Gill,'Three dimensional laminar dispersion in open and closed rectangular ducts,' Chem. Eng. Sci. Vol 33, pp.795-804 (1978)を参照のこと。
【0091】
図17の第五部材625は、第五部材のフラッシングと作動流体1203の補充を可能にするように流れ回路の内外へ第五部材を切り替える手段として何れかの端部に弁装置を備えていてもよい。図18は弁1801構造を示す。弁1801はロータリバルブ又は独立した弁の集合又は従来から知られている任意の他の構成でありうる。弁1801は一又は二又はそれ以上のストレージ容積を含み得、一を越える流量コントローラに類似の作用を提供するように連動されていてもよい。
図18に示された実施態様では、二の作動流体ストレージ容積625及び1602は弁1801と操作を関連させている。これらの二つの部材625及び1602は同一である必要も同じ内部容積を持つ必要もない。これらの二つの部材625及び1602における作動流体1203は同じである必要はない。
【0092】
第三部材201を通る流れは第五部材625を通り、ついで第四部材608を通るように方向を決められる。第六部材1602は作動流体1203の排液路1804と供給源1803の間に接続されていることが示されている。この構成では、第五流体625からの作動流体1203は第四部材608の入口609に供給される一方、第六部材1602は洗い流され、新しい作動流体1203が満たされる。ある選択された時間に弁1801が作動され、図18の装置では反時計回りに1/8回転されて、それぞれ第五及び第六部材625及び1602の役割を切り替える。ある選択された後の時間にプロセスを逆にして進める。これにより、弁作動時の僅かな中断を伴って、作動流体1203の連続の移送又は作動流体の切替が可能になる。
【0093】
貯留された液体の容積と流量が操作の最大時間を決定する一方、容積のサイズと接続された部材のコンダクタンスが装置の応答時間を決定する。よって、ストレージ容積のサイズを最小にすることが望ましく、新しく満たされたストレージ容積の切替え手段を提供する。
例えば、化学合成のための作動流体の移送に使用される図18に示されたようなロータリーバルブが装備された、図17に示されたシステムでは、作動流体は、少量の有機酸、例えば蟻酸、又は酢酸を場合によっては含むアセトニトリルでありうる。ゼロから25psiを越える周囲圧の範囲の負荷圧における100から500nL/分の範囲の作動流体の制御流量が例えば望ましい。第二液体1209は10ミリモルの水性TRIS及び約5ミリモルの酢酸であり得る。供給源圧力Pは約500及び600psiの間でありうる。第二部材100は、名目上0.7ミクロンの直径の非多孔質シリカビーズが充填された3cm長、150ミクロン内径「ID」のキャピラリーでありうる。第一、第三及び第四部材205、201及び608はそれぞれ簡単なキャピラリーでありうる。第五部材625及び使用されるならば第六部材1602は、0.03インチのIDの長さのチュービングでありうる。第四部材608に対する圧力差を、流量をモニターするために使用できる。
【0094】
約1.8及び5nl/分・psi、よって約6.2及び5.7cmの10ミクロンIDキャピラリーの長さの第一及び第四部材205及び608に対するコンダクタンスを使用する設計は、約0.95及び2.5kVの範囲の第二部材100に印加される電位を使用して所望の範囲の移送圧及び流量をもたらす。第三部材201は、単にそれぞれ第一、第二及び第四部材205、100、及び608より実質的に大きいコンダクタンスを有するキャピラリー又は管の長さでありうる。第三部材201は幾つかの役割を提供し得る:第一接続点202と弁1801の間の管継手;ブリッジ接続108と弁1801の間の電気的隔離を提供し;弁1801の切替え又は始動の間に生じるかもしれない第一接続点202中への作動流体1203の混合又は逆拡散を最小にする。第五部材625の長さは約110cmであるように選択でき、それによってこの実施例において最大の移送流量で約16時間の中断しない実行時間を提供する。この実施例に対する時定数は約15秒である。この設計では、それぞれ第三及び第四部材201及び608の役割は逆転されうる。
【0095】
別の実施態様では、ストレージ部材はアクティブな流量コントローラ部材の前に配することができる。そのような構造は図19に示されている。作動流体1203は圧力Pで供給され、第一及び第四部材205及び608をそれぞれ通過する。流体ストレージ部材625は電気浸透的にアクティブな第二部材100の前に配され、第二部材の電気浸透機能を支持するように設計された第二流体1204で満たされている。装置を作動させると、作動流体1203が第五部材625に保存された第二流体1204を移動させる。この実施態様は既に検討した実施態様と同じ時間応答及び操作時間の制約を受ける。それはまた切替可能な弁と複数のストレージ部材と共に使用できる。この実施態様の一つの利点は、第二流体1204が作動流体1203の移送システムには決して存在せず、よって出力流体を汚染し得ないことである。代わりに、偶発的な汚染の可能性は第二部材100に移り、その方がある適用例では許容しうる。
ストレージ部材の電気浸透的にアクティブな部材の前への配置は、また図20に示されているように、直列モードのコントローラ形式で容易に実現される。第五部材625は電気浸透的にアクティブな第二部材100を支持する流体1204のストレージ部材となる。
【0096】
本発明の上記の開示において、添付図面における本発明の開示において、及び特許請求の範囲と上記の発明の開示において、本発明の特定の特徴が参照される。この明細書における本発明の開示はそのような特定の特徴のあらゆる可能な組合せを含むことが理解される。例えば、特定の特徴が本発明の特定の側面又は実施態様、又は特定の図面又は特定の請求項の内容に開示されている場合、その特徴は他の特定の側面、実施態様、図面又は請求項の内容に、及び本発明一般に使用することがまたできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の点から第二の点まで作動流体を流す方法において、第一の点で作動流体に推進圧をかけることを含み、推進圧の少なくとも一部が、流量が
(i)静水圧成分と
(ii)電気浸透成分
を含む推進流体によって与えられる、方法。
【請求項2】
推進流体と作動流体が同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
作動流体が、
(i)第一の点のストレージ部材に貯留され、
(ii)推進流体によってストレージ部材から排出される
流体を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
推進流体流が、
(1)静水圧Pによって流体の流れを供給し、
(2)電気浸透圧流によって上記流体の流量を変化させる、
方法によってつくり出される、請求項1ないし3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
推進流体流が、静水圧によって第一流体と第二流体の混合物を、電気浸透圧流が該混合物中に生じさせられる流路に流通させる方法によってつくり出される、請求項1ないし4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
推進流体流が、
(i)部分的又は全体的に静水圧である圧力に流量が依存する作動流体と、
(ii)混合前に部分的又は全体的に静水圧である圧力に流量が依存する第二流体とを、混合することを含み、
ここで、電気浸透圧流が生じる流路を通って流れる混合物がつくり出される、方法によりつくり出される、請求項1ないし4の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
(i)作動流体が、
(a)静水圧Pの第一供給源から供給され、
(b)第二流体と混合される前に第一流量制御部材を通過し;
(ii)第二流体が、
(a)静水圧Pの第二供給源から供給され、
(b)第二流量制御部材を通過し、
ここで、第一流量制御部材がコンダクタンスkを有し、第二流量制御部材がコンダクタンスkを有し、流路がコンダクタンスkを有し;1+k/kはP/Pより大きく、1+k/kはP/Pより大きい、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
電気浸透成分が、電気浸透圧流が動電学的流体に生じる流路に動電学的流体を流通させることによりつくり出され、動電学的流体の少なくとも一部が、
(i)ストレージ部材に貯留され、
(ii)静水圧がかかった流体によって、流路を通過する前にストレージ部材から排出される、請求項1ないし4の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
推進流体の少なくとも一部が流量制御部材を通過する、請求項1ないし8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
(a)圧力トランスデューサ、流量計、温度センサ、熱流計、変位センサ、ロードセル、歪みゲージ、導電率センサ、選択性イオンセンサ、pHセンサ、フロー分光光度計、及び濁度センサの一又は複数によって少なくとも一つの変数をモニターし、
(b)上記のモニターに応答して、電気浸透成分の少なくとも一部を生じる電位を変化させることを含む、請求項1ないし9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
電気浸透成分の変動が静水圧成分の変動を少なくとも部分的に補償する、請求項1ないし10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
第二の点における作動流体の流量が50マイクロリットル/分未満である、請求項1ないし11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
作動流体が、次の特性:
(a)少なくとも25ミリモルのイオン強度を有する液体を含む;
(b)0.5ミリモル未満のイオン強度を有する液体を含む;
(c)5センチポアズより大なる動粘度を有する液体を含む;
(d)実質的に純粋な有機液体を含む;
(e)20未満の誘電率を有する液体を含む;
(f)多価イオンを含む液体を含む;
(g)7未満のpH値を有する液体を含む;及び
(h)4未満のpH値を有する液体を含む;
の少なくとも一つを有している、請求項1ないし12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
第二の点からの流体がクロマトグラフに流入する、請求項1ないし13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
第一群の条件下で作動する装置が第一の期間の間に作動可能な装置によって作動流体を第一の点から第二の点まで流れさせ、その後、第二群の条件下で作動する同じ装置が第二の期間の間に作動可能な装置によって作動流体を第一の点から第二の点まで流れさせ;第一の期間中の作動流体が第二の期間中の作動流体とは異なり、及び/又は第一の期間中の作動可能な装置の作動条件が第二の期間中の作動可能な装置の作動条件とは異なり、及び/又は第一の期間中の作動可能な装置が第二の期間中の作動可能な装置とは異なる、請求項1ないし14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れか1項に記載の方法における使用に適した装置であって、
(1)入口と出口を含み、圧力がかけられた流体が通過して入口から出口まで流れる流路と、
(2)流路の入口と出口の間に位置せしめられた多孔質誘電材料と、
(3)圧力がかかった動電学的流体が流路の入口と出口の間を流れるときに、流体が流れる速度を、電極に接続された電源装置の電位を変化させることによって変化させることができるように、位置せしめられた電極と、を具備する装置であり、次の特性:
(a)圧力がかけられた流体が入口に達する前に流れる流量制御部材を具備する;
(b)圧力がかけられた流体が出口を離れた後に流れる流量制御部材を具備する;
(c)作動状態で加圧流体を用い、(i)加圧流体が出口から流れ出るときに装置を通過するように出口に、
あるいは(ii)流路に接続された第二の出口と加圧流体の供給源に接続可能な入口を有する導管の第一の出口に、接続されている作動可能な装置を具備する;
(d)第一流体の第一供給源と第二流体の第二供給源とを具備し、第一供給源と第二供給源の双方が該供給源からの加圧流体が入口を通って流路中に流入可能なように入口に接続されている;
(e)電極に接続された可変電源装置を具備する;
(f)制御信号をモニターするための少なくとも一つのセンサとセンサに作動可能に接続されたフィードバック制御機構を具備し、よって装置が電極に接続された電源装置を具備する場合、フィードバック制御機構が電源装置から供給される電位を変調する;
(g)(i)入口に接続されている第一導管出口と、(ii)一つの作動可能な装置又は複数の作動可能な装置に接続可能な第二導管出口と、(iii)加圧流体の供給源に接続可能な導管入口を有する導管を具備し、よって加圧流体が導管に流入するとき、加圧流体の一部が流路を通って流れ、加圧流体の残りが一又は複数の装置を通って流れる;
(h)二以上の上記の流路と、(i)上記流路の各々の入口又は出口に接続された複数の導管入口と(ii)一又は複数の作動可能な装置に接続可能な導管出口を有する導管を具備する;
(i)二以上の上記の流路を具備し、流路内の誘電材料が互いに異なっている;
(j)圧力がかけられた流体が入口に達する前に通過可能な圧力トランスデューサを具備する;
(k)圧力がかけられた流体が入口に達する前に通過可能な逆止弁を具備する;及び
(l)圧力がかけられた流体が入口に達する前に通過可能なアキュムレータを具備する;
の少なくとも一つを有する装置。
【請求項17】
多孔質誘電材料が、溶融石英キャピラリー、シリカ粒子、有機ポリマー、又はリソグラフパターン化、リソグラフエッチング、直接射出成形、ゾル-ゲル法、又は電鋳法によって製造された生成物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
電極を有する電源装置を具備し、該電源装置が、次の特性;
(i)可変電源装置である、
(ii)電極がブリッジを介して流路に接続されている、
の一方又は双方を有する、請求項16又は17に記載の装置。
【請求項19】
制御信号をモニターするための少なくとも一つのセンサとセンサに作動可能に接続されたフィードバック制御機構を具備し、よって装置が電極に接続された電源装置を具備するとき、フィードバック制御機構が電源装置から供給される電位を変調することによって、制御信号を予め決まった範囲内に維持し、センサが、圧力トランスデューサ、流量計、温度センサ、熱流計、変位センサ、ロードセル、歪みゲージ、導電率センサ、選択性イオンセンサ、pHセンサ、フロー分光光度計、及び濁度センサの一又は複数である、請求項16ないし18の何れか1項に記載の装置。
【請求項20】
加圧流体を作動状態で使用する作動可能な装置に加圧作動流体が移送される速度を変更するための電気浸透圧流の使用。
【請求項21】
(a)(i)圧力Pの第一流体供給源に流通可能に連通した第一流体入口と;
(ii)第一流体入口に流通可能に連通した圧力Pの第一流体出口であって、P<Pのものと;
(iii)第一流体入口と第一節点の間に配設された第一流れ部材と
を具備する第一導管と;
(b)(i)P<Pである圧力Pの第二流体供給源に流通可能に連通した第二流体入口と;
(ii)第二流体入口と、第一導管の第一節点とに流通可能に連通した第二流体出口と;
(iii)第二流体入口と第二流体出口の間に配設された第二流れ部材と;
(iv)圧力Pの第三流体出口であって、P<P及びP<Pで、第二流れ部材出口の第二節点と流通可能に連通した第三流体出口と;
を有する第二導管とを、
具備し、ここで、
α=θ(ここで、vは第一節点の内部容積で、θはv内での見かけの圧縮率の合計である)で、α=θ(ここで、vは第二節点の内部容積で、θはv内での見かけの圧縮率の合計である)で、第一流れ部材はkのコンダクタンスを有し、第二流れ部材がkのコンダクタンスを有し、α/k>α/kである流量制御装置。
【請求項22】
(a)(i)圧力Pの第一流体供給源に流通可能に連通した第一流体入口と;
(ii)第一流体入口に流通可能に連通した圧力Pの第一流体出口であって、P<Pのものと;
(iii)第一流体入口と第一節点の間に配設された第一流れ部材と
を具備する第一導管と;
(b)(i)P<Pである圧力Pの第二流体供給源に流通可能に連通した第二流体入口と;
(ii)第二流体入口と、第一流路の第一節点とに流通可能に連通した第二流体出口と;
(iii)第二流体入口と第二流体出口の間に配設された第二流れ部材と;
(iv)圧力Pの第三流体出口であって、P<P及びP<Pで、第二流れ部材出口の圧力PN2の第2節点と流通可能に連通した第三流体出口;
を有する第二導管と、
(c)第一又は第二節点の何れかに位置せしめられた圧力トランスデューサと;
(d)圧力トランスデューサと反対の節点に位置せしめられたアキュムレータとを、
具備し、ここで、α=θ(ここで、vは第一節点の内部容積で、θはv内での見かけの圧縮率の合計である)で、α=θ(ここで、vは第二節点の内部容積で、θはv内での見かけの圧縮率の合計である)で、第一流れ部材はkのコンダクタンスを有し、第二流れ部材がkのコンダクタンスを有し、α/k>α/kである流量制御装置。
【請求項23】
(a)(i)圧力Pの第一流体供給源に流通可能に連通した第一流体入口と;
(ii)第一流体入口に流通可能に連通した圧力Pの第一流体出口であって、P<Pのものと;
(iii)第一流体入口と第一節点の間に配設された第一流れ部材と;
を具備する第一導管と;
(b)(i)圧力Pの第二流体供給源に流通可能に連通した第二流体入口であって、P<Pのものと;
(ii)第二流体入口に、また第一節点が第一導管に流通可能に連通した第二流体出口と;
(iii)第二流体入口と第二流体出口の間に配設された第二流れ部材と;
(iv)圧力Pの第三流体出口で、P<P及びP<Pのもので、第二流れ部材出口に第二節点が流通可能に連通された第三流体出口と;
を有する第二導管と、
(c)第一又は第二節点の何れかに位置せしめられた圧力トランスデューサと;
(d)第一及び第二節点の間の逆止弁とを、
具備し、ここで、α=θ(ここで、vは第一節点の内部容積で、θはv内での見かけの圧縮率の合計である)で、α=θ(ここで、vは第二節点の内部容積で、θはv内での見かけの圧縮率の合計である)で、第一流れ部材はkのコンダクタンスを有し、第二流れ部材がkのコンダクタンスを有し、α/k>α/kである流量制御装置。
【請求項24】
(a)(i)第一節点が圧力Pの第一流体供給源に、また圧力Pの第二流体供給源に流通可能に連通した第一流路流体入口と;
(ii)第一流路流体入口に、また圧力Pで流体終点に流通可能に連通した第一流体出口であって、P<P及びP<Pのものと;
(iii)第一流路に配設された多孔質誘電材料と;
を具備する第一流路と;
(b)(i)第二流体供給源に流通可能に連通した第二流路流体入口と;
(ii)第二流路流体入口に、また第一節点が第一流路入口に流通可能に連通した第二流路流体出口と;
(iii)第二流路に配設された多孔質誘電材料と;
を有する第二流路と、
(c)離間した電極に電気的に連通せしめられて電極に電位を印加するための電源装置とを具備し、電極は、電源装置が電極に電位を印加するときに流路が動電学的にアクティブであるように位置せしめられ;
ここで、電位が第一及び第二流路の少なくとも一を通して電気浸透的に駆動された流れ成分を生じ、電気浸透的に駆動された流れ成分がP−P及びP−Pの圧力差から生じる少なくとも一の圧力駆動流れ成分を変調する、流量制御装置。
【請求項25】
(a)(i)第一節点が圧力Pの第一流体供給源に、また圧力Pの第二流体供給源に流通可能に連通した第一流路流体入口と;
(ii)第一流路流体入口に、また圧力Pで流体終点に流通可能に連通した第一流体出口であって、P<P及びP<Pのものと;
(iii)第一流路に配設された多孔質誘電材料と;
を具備する第一流路と;
(b)(i)第二流体供給源に流通可能に連通した第二流路流体入口と;
(ii)第二流路流体入口に、また第一節点が第一流路に流通可能に連通した第二流路流体出口と;
(iii)第二流路に配設された多孔質誘電材料と;
を有する第二流路と、
(c)第一群の離間電極に電気的に連通せしめられて、第一群の離間電極に電位を印加するための第一電源装置であって、第一群の離間電極が、第一電源装置が第一群の離間電極に電位を印加するときに第一流路が動電学的にアクティブであるように位置せしめられたものと;
(d)第二群の離間電極に電気的に連通せしめられて、第二群の離間電極に電位を印加するための第二電源装置であって、第二群の離間電極が、第二電源装置が第二群の離間電極に電位を印加するときに第二流路が動電学的にアクティブであるように位置せしめられたものとを具備し;
ここで、第一電位が第一流路を通して電気浸透的に駆動された第一流れ成分を生じ、電気浸透的に駆動された第一流れ成分がP−P及びP−Pの圧力差から生じる少なくとも一つの圧力駆動流れ成分を変調し、第二電位が第二流路を通して電気浸透的に駆動された第二流れ成分を生じ、電気浸透的に駆動された第二流れ成分がP−P及びP−Pの圧力差から生じる少なくとも一つの圧力駆動流れ成分を変調する、流量制御装置。
【請求項26】
(a)(i)節点が圧力Pの流体供給源に流通可能に連通した流体入口と;
(ii)流体入口に、また圧力Pで第一流体終点に流通可能に連通した流体出口であって、P<Pのものと;
(iii)流路に配設された多孔質誘電材料と;
を具備する流路と;
(b)離間電極に電気的に連通せしめられて、離間電極に電位を印加するための電源装置であって、離間電極が、電源装置が電極に電位を印加するときに流路が動電学的にアクティブであるように位置せしめられたものと;
(c)節点とP<Pの圧力Pの第二流体終点との間に配設された第一流体ストレージ部材とを具備し、第一流体ストレージ部材は、節点が流体供給源に流通可能に連通した第一流体ストレージ部材入口を有し、第一流体ストレージ部材はまた第一流体ストレージ部材入口及び第二流体終点と流通可能に連通した第一流体ストレージ部材出口を有し;
ここで、電位が、P−P及びP−Pの圧力差から生じる少なくとも一の圧力駆動流れ成分を変調する流路を通過する電気浸透的に駆動された流れ成分を生じる、流量制御装置。
【請求項27】
(a)(i)圧力Pの流体供給源に流通可能に連通した流体入口と;
(ii)圧力Pの第一流体終点に流通可能に連通した流体出口であって、P<Pのものと;
(iii)流路に配設された多孔質誘電材料と;
を具備する流路と;
(b)離間電極に電気的に連通せしめられて、離間電極に電位を印加するための電源装置であって、離間電極が、電源装置が電極に電位を印加するときに流路が動電学的にアクティブであるように位置せしめられたものと;
(c)流体供給源と流路との間に流通可能に配設された流体ストレージ部材とを具備し、流体ストレージ部材は、流体供給源に流通可能に連通した流体ストレージ部材入口を有し、流体ストレージ部材はまた流体ストレージ部材入口及び流体入口に流通可能に連通した流体ストレージ部材出口を有し;
ここで、電位が、P−Pの圧力差から生じる圧力駆動流れ成分を変調する流路を通して電気浸透的に駆動された流れ成分を生じる、流量制御装置。
【請求項28】
流路に電気的に連通せしめられた離間電極に電位を印加し、該流路がそこに配設された多孔質誘電材料を有し、該流路がまた圧力Pの第一流体供給源と圧力Pの第二流体供給源に流通可能に連通した流体入口を有し、該流路はまた流体入口と圧力Pで終点に流通可能に連通した流体出口を有し、ここでP<P及びP<Pであり、電位がP−P及びP−Pの圧力差から生じる少なくとも一の圧力駆動流れ成分を変調する流路を通して電気浸透的に駆動された流れ成分を生じる、流体の流量を制御する方法。
【請求項29】
(a)第一節点に第一アキュムレータを配し、ここで第一節点が、圧力Pの第一流体供給源と流通可能に連通した第一流体入口、P<Pである圧力Pの第一流体出口及び第一流体入口と第一流体出口の間に配設された第一流れ部材を有する第一導管にあり;
(b)第二節点に第二アキュムレータを配し;
ここで、第二節点が、P<Pである圧力Pの第二流体供給源と流通可能に連通した第二流体入口、第一導管と第一節点で流通可能に連通した第二流体出口、第二流体入口及び第二流体出口の間に配設された第二流れ部材、及びP<P及びP<Pである圧力Pの第三流体出口を有する第二導管にあり、第三流体出口が第二流体入口と第二節点で流通可能に連通した、流体の流量を制御する方法。
【請求項30】
流路に電気的に連通せしめられた離間電極に電位を印加し、該流路がそこに配設された多孔質誘電材料を有し、該流路がまた節点が圧力Pの流体供給源に流通可能に連通した流体入口を有し、該流路はまた流体入口と圧力Pで第一流体終点に流通可能に連通した流体出口を有し、ここでP<Pであり、流体ストレージ部材が節点と圧力Pの第二流体終点との間に配設され、ここでP<Pであり、流体ストレージ部材が節点が流体供給源に流通可能に連通した流体ストレージ部材入口を有し、流体ストレージ部材はまた流体ストレージ部材入口及び第二流体終点と流通可能に連通した流体ストレージ部材出口を有し、電位がP−P及びP−Pの圧力差から生じる少なくとも一つの圧力駆動流れ成分を変調する流路を通して電気浸透的に駆動された流れ成分を生じる、流体の流量を制御する方法。
【請求項31】
流路に電気的に連通せしめられた離間電極に電位を印加し、該流路がそこに配設された多孔質誘電材料を有し、該流路がまた節点が圧力Pの流体供給源に流通可能に連通した流体入口を有し、該流路はまた流体入口と圧力Pで第一流体終点に流通可能に連通した流体出口を有し、ここでP<Pであり、流体ストレージ部材が節点と流体入口との間に配設され、流体ストレージ部材が節点が流体供給源に流通可能に連通した流体ストレージ部材入口を有し、流体ストレージ部材はまた流体ストレージ部材入口及び流体入口と流通可能に連通した流体ストレージ部材出口を有し、電位が、P−Pの圧力差から生じる圧力駆動流れ成分を変調する流路を通して電気浸透的に駆動された流れ成分を生じる、流体の流量を制御する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−94019(P2010−94019A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−248921(P2009−248921)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【分割の表示】特願2003−504171(P2003−504171)の分割
【原出願日】平成14年6月13日(2002.6.13)
【出願人】(503459408)エクシジェント テクノロジーズ, エルエルシー (12)
【Fターム(参考)】