説明

流量制御装置

【課題】 生産用装置の稼働状況に応じて冷却水を供給することで冷却水の供給動力を省くことができるとともに、容易且つ安価に生産用装置に組み込むことができる流量制御装置を提供する。
【解決手段】 生産用装置の一部をなすドライポンプ11に供給された冷却水を回収する回収管P2には、冷却水の温度を検出する冷却水温度検出部21及び流量連続制御バルブ23が設けられている。バルブコントローラ22は、ドライポンプ11の動作を制御するドライポンプコントローラ24からドライポンプ11の動作開始を示す旨の状態信号S2が出力された場合に、予め設定されたプログラムに従って流量連続制御バルブ23の開口度を制御する。また、状態信号S2が出力されてから所定時間経過後は、冷却水温度検出部21の検出結果に基づいて流量連続制御バルブ23の開口度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御装置に係り、特に半導体素子等のデバイスの生産に関わる生産用装置を冷却する冷却水の流量を制御する流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、液晶表示素子、その他のデバイスは、エピタキシャル装置、スパッタ装置、エッチング装置等の各種装置を用いて成膜処理、エッチング処理等の各種処理を施すことにより生産される。これらの装置は、ウェハ等の基板に対して所定の処理を施すチャンバ内を減圧するためのドライポンプ(真空ポンプ)等の補機を備えている。この補機を含めたデバイスの生産に関わる生産用装置は、動作に伴って発熱するものがあるため、冷却水を循環させて温度上昇を抑えつつ動作させるものが多い。
【0003】
デバイスの生産はほぼ連続して行われるため、上記の生産用装置は連続して稼働されることが殆どである。このため、従来は、冷却水供給装置の供給量を一定にして、生産用装置の稼働状況に拘わらず常時一定量の冷却水を生産用装置に供給していた。また、以下の特許文献1には、真空ポンプの温度に応じて真空ポンプに供給する冷却水の流量を制御する制御装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−285992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年においては生産されるデバイスの種類が多岐に亘っており、しかも生産量がまちまちなことが多い。このため、生産用装置は常時稼働状態にある訳ではなく、稼働状態の生産用装置と停止状態の生産用装置とが混在する状況が増えている。生産用装置の装置状況に拘わらず、常時一定量の冷却水を生産用装置に供給する運用においては、仮に全ての生産用装置が停止状態にあったとしても一定の冷却水が生産用装置に常時供給される。このため、冷却水供給装置は常時駆動している状態であり、この冷却水供給装置を駆動するための動力が無駄になっているという問題があった。
【0005】
また、上述の特許文献1に開示された制御装置を生産用装置毎に設ければ、生産用装置毎の発熱量に応じた冷却水を各生産用装置に供給することができるが、温度コントローラと制御弁が高価であるためコストが高くなってしまうという問題がある。更に、冷却水の流量を制御する制御弁として冷却水の温度に応じて開口度が変化するサーモスタット方式の制御弁も案出されているが、この制御弁は動作が緩慢であるため生産用装置が効率的に冷却されているとは言い難く、またこの方式の制御弁はコストが高いという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、生産用装置の稼働状況に応じて冷却水を供給することで冷却水の供給動力を省くことができるとともに、容易且つ安価に生産用装置に組み込むことができる流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点による流量制御装置は、デバイスの生産に関わる生産用装置(7〜9、11)を冷却する冷却水の流量を制御する流量制御装置において、前記生産用装置の稼働状況に応じて、前記生産用装置に供給する前記冷却水の供給量を制御する制御装置(22、32)を備えることを特徴としている。
この発明によると、生産用装置に供給される冷却水の供給量は、生産用装置の稼働状況に応じて制御される。
【0008】
また、本発明の第1の観点による流量制御装置は、前記制御装置が、前記生産用装置の動作開始後における発熱特性に応じた前記冷却水の制御量を予め記憶しており、前記生産用装置の動作を制御する制御部(23)から前記生産用装置の動作を開始させる動作開始信号が出力された場合に、前記制御量に基づいて前記冷却水の供給量を制御することを特徴としている。
また、本発明の第1の観点による流量制御装置は、前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を段階的に調整する流量調整機構(33a〜33c、34b、34c)を備え、前記制御装置が、前記制御量に基づいて前記流量調整機構を制御して前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を階段状に制御することを特徴としている。
また、本発明の第1の観点による流量制御装置は、前記流量調整機構が、前記制御装置から出力される制御信号に基づいて開口度が連続的に変化する制御弁(23)を含むことを特徴としている。
また、本発明の第1の観点による流量制御装置は、前記流量調整機構が、前記冷却水の流路を開状態とするか又は閉状態とする複数の制御弁(34b、34c)を含み、当該複数の制御弁の開閉状態の組み合わせにより前記冷却水の流量を段階的に調整することを特徴としている。
また、本発明の第1の観点による流量制御装置は、前記流量調整機構が、少なくとも1つの定流量弁(33a〜33c)を含むことを特徴としている。
また、本発明の第1の観点による流量制御装置は、前記制御装置が、前記制御部から前記生産用装置の動作を停止させる動作停止信号が出力された場合に、前記冷却水の供給量を必要最小限に設定する制御を行うことを特徴としている。
また、本発明の第1の観点による流量制御装置は、前記制御装置が、前記冷却水の供給量を必要最小限に設定する制御を、前記制御部から前記動作停止信号が出力されてから所定時間経過後に行うことを特徴としている。
更に、本発明の第1の観点による流量制御装置は、前記制御装置が、前記制御部から前記生産用装置の異常を知らせる異常信号が出力された場合に、前記冷却水の供給量を最大に設定する制御を行うことを特徴としている。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第2の観点による流量制御装置は、デバイスの生産に関わる生産用装置(1〜9、11)を冷却する冷却水の流量を制御する流量制御装置において、前記生産用装置から排出される前記冷却水の温度を検出する検出装置(21、31)と、前記生産用装置の動作開始後における発熱特性に応じた前記冷却水の制御量を予め記憶しており、前記生産用装置の動作を制御する制御部から前記生産用装置の動作を開始させる動作開始信号が出力されてから所定時間経過するまでは前記制御量に基づいて前記冷却水の供給量を制御し、前記所定時間経過後は前記検出装置の検出結果に基づいて前記冷却水の供給量を制御する制御装置(22、32)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、生産用装置の動作が開始されると生産用装置の動作開始後における発熱特性に応じて冷却水の供給量が制御され、生産用装置の動作が開始されてから所定時間経過後は検出装置の検出結果に基づいて冷却水の供給量が制御される。
【0010】
また、本発明の第2の観点による流量制御装置は、前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を段階的に調整する流量調整機構(33a〜33c、34b、34c)を備え、前記制御装置が、前記検出装置の検出結果及び前記制御量の何れか一方に応じて前記流量調整機構を制御して前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を階段状に制御することを特徴としている。
また、本発明の第2の観点による流量制御装置は、前記流量調整機構が、前記制御装置から出力される制御信号に基づいて開口度が連続的に変化する制御弁(23)を含むことを特徴としている。
また、本発明の第2の観点による流量制御装置は、前記流量調整機構が、前記冷却水の流路を開状態とするか又は閉状態とする複数の制御弁(34b、34c)を含み、当該複数の制御弁の開閉状態の組み合わせにより前記冷却水の流量を段階的に調整することを特徴としている。
また、本発明の第2の観点による流量制御装置は、前記流量調整機構が、少なくとも1つの定流量弁(33a〜33c)を含むことを特徴としている。
また、本発明の第2の観点による流量制御装置は、前記制御装置が、前記検出装置で検出される前記冷却水の温度が上昇する場合と、下降する場合とで、前記冷却水の流量を階段状に制御する温度設定値が個別に設定されていることを特徴としている。
更に、本発明の第2の観点による流量制御装置は、前記制御装置が、前記制御部から前記生産用装置の異常を知らせる異常信号が出力された場合に、前記冷却水の供給量を最大に設定する制御を行うことを特徴としている。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第3の観点による流量制御装置は、デバイスの生産に関わる生産用装置を冷却する冷却水の流量を制御する流量制御装置において、前記生産用装置から排出される前記冷却水の温度を検出する検出装置(31)と、前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を段階的に調整する流量調整機構(33a〜33c、34b、34c)と、前記検出装置の検出結果に応じて前記流量調整機構を制御して前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を階段状に制御する制御装置(32)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、検出装置の検出結果に応じて流量調整機構が制御され、生産用装置に供給される冷却水の流量が階段状に制御される。
また、本発明の第3の観点による流量制御装置は、前記制御装置が、前記検出装置で検出される前記冷却水の温度が上昇する場合と、下降する場合とで、前記冷却水の流量を階段状に制御する温度設定値が個別に設定されていることを特徴としている。
【0012】
本発明の第1の観点による流量制御装置においては、前記冷却水を複数の前記生産用装置に供給する供給管(4)を備え、前記制御装置は、前記供給管に供給する前記冷却水の流量を制御することにより、少なくとも2個以上の生産用装置の各々に供給する前記冷却水の流量を一括して制御することを特徴としている。
【0013】
本発明の第2,第3の観点による流量制御装置においては、前記冷却水を複数の前記生産用装置に供給する供給管(4)を備え、前記制御装置は、前記供給管に供給する前記冷却水の流量を制御することにより、少なくとも2個以上の生産用装置の各々に供給する前記冷却水の流量を一括して制御することを特徴としている。
ここで、本発明の第2,第3の観点による流量制御装置においては、複数の前記生産用装置から排出される冷却水を回収する回収管(5)を備え、前記検出装置は、前記回収管で回収される前記冷却水の温度を検出し、前記制御装置は、前記検出装置の検出結果が所定温度以下となるように前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を制御することが好ましい。
また、本発明の第2,第3の観点による流量制御装置においては、前記生産用装置は、所定数毎にグループ化されており、前記供給管及び前記回収管は、前記グループ化された前記生産用装置を単位として分岐していることを特徴としている。
また、本発明の第2,第3の観点による流量制御装置においては、前記検出装置は、複数の前記生産用装置の各々から排出される冷却水の温度を検出し、前記制御装置は、前記検出装置の検出結果のうち最も高い温度を示すものが所定温度以下となるように前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を制御することを特徴としている。
また、本発明の第2,第3の観点による流量制御装置においては、前記制御装置は、前記検出装置の検出結果の何れかが予め設定された最大温度を超えた場合に、前記供給管に対する前記冷却水の供給量を最大に設定する制御を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、生産用装置に供給される冷却水の供給量が生産用装置の稼働状況に応じて制御されるため、常時一定量の冷却水を生産用装置に供給する場合に比べて冷却水の供給動力を省くことができる。
本発明によれば、生産用装置の動作が開始されてから所定時間が経過するまでは生産用装置の動作開始後における発熱特性に応じて冷却水の供給量を制御し、所定時間経過後は検出装置の検出結果に基づいて冷却水の供給量を制御しているため、常時一定量の冷却水を生産用装置に供給する場合に比べて冷却水の供給動力を省くことができるとともに、生産用装置の発熱によって冷却水の温度上昇が現れるまでにタイムラグがある場合であっても、内部発熱が許容温度を超えないように制御することができる。
本発明によれば、検出装置の検出結果に応じて流量調整機構を制御して、生産用装置に供給する冷却水の流量を階段状に制御しているため、常時一定量の冷却水を生産用装置に供給する場合に比べて冷却水の供給動力を省くことができる。また、流量調整機構は冷却水の流量を段階的に調整するものであるため安価にすることができる。更に、これらの組み込みも容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による流量制御装置について詳細に説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による流量制御装置が用いられる送水系の構成を示すブロック図である。図1に示す送水系は、熱交換器1、冷却水供給管2、冷却水搬送ポンプ3、供給管4、回収管5、及び冷水管6を含んで構成される。熱交換器1には冷却水供給管2、回収管5、及び冷水管6が接続されており、熱交換器1は回収管5を介して回収される冷却水を、冷水管6を介して供給される冷水で冷却して冷却水供給管2に供給する。冷却水搬送ポンプ3は、冷却水供給管2と供給管4とに接続されており、冷却水供給管2を介して供給される冷却水を加圧して供給管4に供給する。
【0017】
供給管4は複数の供給管に分岐しており、分岐した各々の供給管には生産用装置としての複数の処理装置が接続されている。図1においては、供給管4が3つの供給管4a〜4cに分岐しており、供給管4aには複数の処理装置7が接続され、供給管4bには複数の処理装置8が接続され、供給管4cには複数の処理装置9が接続されている構成を例に挙げて図示している。尚、ここでは、供給管4が3つの供給管4a〜4cに分岐している構成を例に挙げて説明するが、分岐数は任意で良い。
【0018】
また、図1に示す例では、供給管4a〜4cの各々に種類の異なる処理装置7〜9が接続されている構成を例に挙げており、例えば処理装置7はエピタキシャル装置であり、処理装置8はスパッタ装置であり、処理装置9はエッチング装置である。尚、ここでは、供給管4a〜4cの各々に種類の異なる処理装置9〜10が接続された構成を例に挙げて説明するが、同種の処理装置が接続された構成であっても良い。また、冷却水は、処理装置7〜9の本体にも供給されるが、ここでは説明の簡単のために処理装置7〜9に付随する補機としてのドライポンプに供給される冷却水の流量を制御する場合を例に挙げて説明する。このドライポンプは、駆動時に吸引ガスの圧縮又はモータの駆動に伴って発熱するため、冷却水でドライポンプ及び排気ガスを冷却しつつ運転が行われる。
【0019】
処理装置7〜9の各々に設けられたドライポンプには流量制御装置10がそれぞれ接続されている。これらの流量制御装置10は、各ドライポンプを介した冷却水の流量を、対応するドライポンプの稼働状況に応じて制御するものである。この流量制御装置10によって、ドライポンプに稼働状況に応じてそのドライポンプへの冷却水の供給量が制御されることになる。
【0020】
回収管5は複数の回収管に分岐しており、分岐した各々の回収管によって回収された冷却水は回収管5に集められて熱交換器1に回収される。図1においては、回収管5が3つの回収管5a〜5cに分岐しており、回収管5aには処理装置7のドライポンプに対応して設けられた流量制御装置10が接続され、回収管5bには処理装置8のドライポンプに対応して設けられた流量制御装置10が接続され、回収管5cには処理装置9のドライポンプに対応して設けられた流量制御装置10が接続されている構成を例に挙げて図示している。尚、供給管4と同様に回収管5の分岐数は任意で良い。
【0021】
図1では本実施形態の流量制御装置が用いられる送水系の構成を模式的に図示しているが、処理装置7〜9、ドライポンプ、及び流量制御装置10は、実際には図2に示す配置とされる。図2は、処理装置7〜9、ドライポンプ、及び流量制御装置10の配置例を示す図である。尚、図2においては、図示を簡略化して処理装置7、ドライポンプ、及び流量制御装置10を各々1つ図示しており、図1に示す構成と同一のものには同一の符号を付してある。
【0022】
図2に示す通り、処理装置7等が配置される建物(工場)は複数の階を有する建物であり、1つの階(例えば、3階)がクリーンルームR2とされ、その下の階(例えば、1階)が準備室R1とされている。クリーンルームR2の床FL上には処理装置7の本体が設置されており、準備室R1には熱交換器1、冷却水供給管2、冷却水搬送ポンプ3、供給管4、ドライポンプ11、流量制御装置10、回収管5、及び冷水管6等が配置されている。ドライポンプ11は、配管12を介して処理装置7に設けられたチャンバ7aと接続されており、チャンバ7a内を真空引きした際の排気を排気管13から排出する。
【0023】
ここで、ドライポンプ11は処理装置7に付随する補機であるが、発熱源であることから、ドライポンプ11を所定の温度に温調されたクリーンルームR2に配置するのは望ましくない。このため、ドライポンプ11は準備室R1に配置される。尚、ここでは、補機としてのドライポンプ11に供給される冷却水の流量を制御する場合を例に挙げているため、冷却水の供給管4、回収管5等は準備室R1内にのみ設けられているが、処理装置7の本体を冷却する必要がある場合には、クリーンルームR2内にも配管される。
【0024】
以上、送水系の構成について説明したが、次に流量制御装置10の構成について説明する。図3は、流量制御装置10の第1構成例を示すブロック図である。図3に示す通り、ドライポンプ11には供給管P1及び回収管P2の一端が接続されており、供給管P1を介して供給される冷却水がドライポンプ11を介して回収管P2に回収される構成となっている。尚、供給管P1及び回収管P2の他端は、例えば供給管4a及び回収管5aにそれぞれ接続されている。
【0025】
流量制御装置10は、冷却水温度検出部21、バルブコントローラ22、及び流量連続制御バルブ23を含んで構成される。冷却水温度検出部21は、回収管P2の途中に設けられて、ドライポンプ11を介した冷却水の温度を検出する。バルブコントローラ22は、ドライポンプ11の動作を制御するドライポンプコントローラ24から出力される状態信号S2、又は冷却水温度検出部21から出力される検出信号S3に従って制御信号S4を出力して流量連続制御バルブ23の開口度を制御する。
【0026】
バルブコントローラ22には、ドライポンプ11が動作を開始してからの発熱特性に応じた冷却水の制御量を予め設定したプログラムが記憶されており、ドライポンプコントローラ24からドライポンプ11の動作開始を示す旨の状態信号S2が出力された場合に、そのプログラムに従って流量連続制御バルブ23の開口度を制御する。尚、ドライポンプコントローラ24は処理装置(例えば、処理装置7)のメインコントローラ(不図示)から出力される制御信号S1に基づいてドライポンプ11の動作を制御する。
【0027】
流量連続制御バルブ23は、回収管P2の途中であって冷却水温度検出部21よりも下流側に設けられる。つまり、供給管P1を介して供給される冷却水は、ドライポンプ11を介して回収管P2に排水され、冷却水温度検出部21及び流量連続制御バルブ23を順に介することになる。この流量連続制御バルブ23は、バルブコントローラ22から出力される制御信号に応じて連続的に開口度が可変するバルブである。
【0028】
次に、上記構成における流量制御装置10による流量制御について説明する。図4は、図3に示す流量制御装置10による流量制御を説明するための図である。尚、本実施形態では、予めバルブコントローラ22に、冷却水の最低温度としてT1が、最高温度としてT5がそれぞれ設定されており、また冷却水の最小流量としてF1が、最大流量としてF3がそれぞれ設定されているとする。
【0029】
ここで、本実施形態の流量制御は以下の点に着目したものである。図1に示す処理装置7〜9の稼働率は実際は余り高くないため、ドライポンプ11の発熱が小さくドライポンプ11に流入する冷却水の温度とドライポンプ11から排出される冷却水の温度との差ΔTが小さい状態にある時間が長くなることが分かっている。このドライポンプ11の発熱が小さい時間帯は、冷却水の流量を絞ることによって上記の差ΔTを許容値まで大きくすることができる。本実施形態では、ドライポンプ11の発熱が小さい時間帯において、上記の差ΔTが長時間に亘って許容値となるように流量を絞ることで、冷却水の供給量を減らして、冷却水搬送ポンプ3による冷却水の供給動力を極力削減している。
【0030】
次に、冷却水の流量制御について具体的に説明する。いま、ドライポンプ11が停止状態にあり、ドライポンプ11に流入する冷却水の温度とドライポンプ11から排出される冷却水の温度との差ΔTが殆どない状態にあるとする。この状態では、ドライポンプ11に流入する冷却水の温度、及びドライポンプ11から排出される冷却水の温度がほぼ最低温度T1である。また、この状態では、冷却水搬送ポンプ3(図1参照)による冷却水の供給動力を極力削減するために冷却水の流量は最小流量F1に設定されている。
【0031】
この状態において、処理装置に設けられた不図示のメインコントローラからドライポンプ11の駆動開始を示す制御信号S1が出力されると、ドライポンプコントローラ24は、この制御信号に基づいてドライポンプ11の駆動を開始するとともに、バルブコントローラ22に対してドライポンプ11の動作開始を示す旨の状態信号S2を出力する。この状態信号S2が入力されると、バルブコントローラ22は、流量連続制御バルブ23に対して制御信号S4を出力し、ドライポンプ11に供給される冷却水の流量が最小流量F1と最大流量F3との間の中間流量F2となるよう流量連続制御バルブ23の開口度を制御する。これにより、ドライポンプ11に供給される冷却水の流量は最小流量F1から中間流量F2に急激に変化する(ステップST1)。しかしながら、駆動開始直後においてはドライポンプ11の発熱量はさほど大きくないため、ドライポンプ11から排出される冷却水の温度は殆ど変化しない。
【0032】
また、ドライポンプ11内部の発熱による冷却水の温度上昇が現れるまでにタイムラグが生ずることから、バルブコントローラ22はドライポンプ11の動作開始を示す旨の状態信号S2が入力されてから一定時間の間はドライポンプ11に強制的に中間流量F2が流れるよう流量連続制御バルブ23の開口度を維持する(ステップST2)。この時間は、バルブコントローラ22に記憶されるプログラムに予め設定されている。尚、ドライポンプ11の発熱特性が変化した場合には、後からのプログラムの変更も可能である。
【0033】
ドライポンプ11の動作開始を示す旨の状態信号S2が入力されてから一定時間経過すると、バルブコントローラ22は、冷却水温度検出部21の検出結果に応じた制御信号を流量連続制御バルブ23に出力し、冷却水温度検出部21の検出結果に応じて流量連続制御バルブ23の開口度を制御する(ステップST3)。つまり、冷却水温度検出部21の温度が上昇するとその上昇分に応じて流量連続制御バルブ23の開口度を大にして冷却水の流量を増加する制御を行う。尚、ここで行う制御は比例制御(P制御)、積分制御(I制御)、及び微分制御(D制御)の何れであっても良く、またこれらの制御を組み合わせた制御であっても良い。
【0034】
冷却水温度検出部21の検出結果が最高温度T5に達すると、バルブコントローラ22は、ドライポンプ11から排出される冷却水の温度(冷却水温度検出部21の検出結果)が最高温度T5に維持されるように、流量連続制御バルブ23の開口度を絞る制御を行う(ステップST4)。これにより、ドライポンプ11に流入する冷却水の温度とドライポンプ11から排出される冷却水の温度との差ΔTが許容値まで最大に維持される。このとき、ドライポンプ11に供給される冷却水の流量は、最小流量F1と最大流量F3との間で変化することになる。
【0035】
ドライポンプ11の発熱が減少すると流量連続制御バルブ23の開口度は更に絞られることになるが、バルブコントローラ22は、ドライポンプ11に供給される冷却水の流量が最小流量F1を下回らないように流量連続制御バルブ23の開口度を制御する。これにより、ドライポンプ11に供給される冷却水は最小流量F1が確保され、冷却水の流量が零になることはない。尚、ドライポンプ11へ供給される冷却水の流量が最小流量F1であるときに、ドライポンプ11の発熱量が減少すると、ドライポンプ11から排出される冷却水の温度は、最低温度T1と最高温度T5との間の温度になる(ステップST5)。
【0036】
ドライポンプ11が駆動している状態において、処理装置に設けられた不図示のメインコントローラから処理装置の異常を示す制御信号S1が出力された場合、又はドライポンプコントローラ24がドライポンプ11の異常を検出した場合には、ドライポンプコントローラ24は、バルブコントローラ22に対して異常が生じた旨の状態信号S2を出力する。この状態信号S2が入力されると、バルブコントローラ22は、流量連続制御バルブ23に対して制御信号S4を出力し、流量連続制御バルブ23の開口度を最大としてドライポンプ11に最大流量F3の冷却水が供給されるよう制御する。
【0037】
また、ドライポンプ11が駆動している状態において、処理装置に設けられた不図示のメインコントローラからドライポンプ11の駆動停止を示す制御信号S1が出力されると、ドライポンプコントローラ24は、この制御信号に基づいてドライポンプ11の駆動を停止するとともに、バルブコントローラ22に対してドライポンプ11の動作停止を示す旨の状態信号S2を出力する。この状態信号S2が入力されると、バルブコントローラ22は、流量連続制御バルブ23に対して制御信号S4を出力し、ドライポンプ11に供給される冷却水の流量が必要最小限の最小流量F1となるよう流量連続制御バルブ23の開口度を制御する。尚、この制御は状態信号S2が入力されてから直ちに行っても良く、所定時間経過した後に行っても良い。
【0038】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態による流量制御装置について説明する。本実施形態の流量制御装置が用いられる送水系は、図1及び図2に示す送水系と同様の構成の送水系に適用される。図5は、流量制御装置10の第2構成例を示すブロック図である。図5に示す通り、本実施形態においても、ドライポンプ11には供給管P1及び回収管P2の一端が接続されており、供給管P1を介して供給される冷却水がドライポンプ11を介して回収管P2に回収される構成となっている。但し、回収管P2はその途中において回収管P21〜P23に3分岐されている。尚、供給管P1及び回収管P2の他端は、例えば供給管4a及び回収管5aにそれぞれ接続されている。
【0039】
流量制御装置10は、冷却水温度検出部31、バルブコントローラ32、流量設定バルブ33a〜33c、及び流量開閉バルブ34b,34cを含んで構成される。冷却水温度検出部31は、分岐した回収管P21〜P23の上流側の回収管P2の途中に設けられて、ドライポンプ11を介した冷却水の温度を検出する。バルブコントローラ32は、ドライポンプ11の動作を制御するドライポンプコントローラ24から出力される状態信号S2、又は冷却水温度検出部31から出力される検出信号S3に従って制御信号S41,S42を出力して流量開閉バルブ34b,34cの開閉を制御する。
【0040】
バルブコントローラ32には、上述した第1実施形態で説明したバルブコントローラ32と同様に、ドライポンプ11が動作を開始してからの発熱特性に応じた冷却水の制御量を予め設定したプログラムが記憶されており、ドライポンプコントローラ24からドライポンプ11の動作開始を示す旨の状態信号S2が出力された場合に、そのプログラムに従って流量開閉バルブ34b,34cの開閉を制御する。尚、ドライポンプコントローラ24は処理装置(例えば、処理装置7)のメインコントローラ(不図示)から出力される制御信号S1に基づいてドライポンプ11の動作を制御する。
【0041】
流量設定バルブ33a〜33cは、分岐した回収管P21〜P23にそれぞれ設けられており、回収管P21〜P23の各々を流れる冷却水の流量を設定するバルブである。この流量設定バルブ33a〜33cには開口度を調整するためのハンドルが設けられており、作業者が手作業でハンドルを操作することにより、流量設定バルブ33a〜33cの各々を流れる冷却水の流量が設定される。つまり、流量設定バルブ33a〜33cは定流量弁である。これら流量設定バルブ33a〜33cの開口度は作業者によって再調整されるまで、直前に設定された開口度に固定される。ここでは、説明の簡単のために、流量設定バルブ33a〜33cの開口度は同一に設定されているとする。
【0042】
流量開閉バルブ34bは、回収管P22の途中であって、流量設定バルブ33bの下流側に設けられ、流量開閉バルブ34cは、回収管P23の途中であって、流量設定バルブ33cの下流側に設けられる。これら流量開閉バルブ34b,34cは、バルブコントローラ32から出力される制御信号に応じて開状態又は閉状態となるバルブであり、流量開閉バルブ34bが閉状態になると回収管P22の流路が遮断され、流量開閉バルブ34cが閉状態になると回収管P23の流路が遮断される。
【0043】
次に、上記構成における流量制御装置10による流量制御について説明する。図6は、図5に示す流量制御装置10による流量制御を説明するための図である。尚、本実施形態では、予めバルブコントローラ32に、冷却水の温度が上昇する場合における流量開閉バルブ34b,34cの開閉状態を切り替えるT3と、冷却水の温度が下降する場合における流量開閉バルブ34b,34cの開閉状態を切り替える温度設定値T2,T4(T2<T3<T4)とが設定されているとともに、最低温度としてT1(T1<T2)が、最高温度としてT5(T4<T5)がそれぞれ設定されているとする。尚、上記の流量設定バルブ33a〜33cの開口度の設定により、冷却水の最小流量がF1に、最大流量がF3に、中間流量がF2にそれぞれ設定されているとする。
【0044】
ここで、本実施形態の流量制御は以下の点に着目したものである。図7は、ドライポンプ11によりチャンバ内を減圧する場合の消費電力と吸気圧力との関係の一例を示す図である。チャンバ(例えば、図2に示すチャンバ7a)内の圧力が大気圧K2にあるときからドライポンプ11により減圧を開始し、所定時間後にドライポンプ11の到達真空度K1に達したとする。図7を参照すると、ドライポンプ11の消費電力は、チャンバ内が大気圧K2である減圧開始時が最も大きく、チャンバ内の真空度が高くなるにつれて消費電力が減少し、チャンバ内が到達真空度K1にあるときに最も小さくなることが分かる。
【0045】
処理装置が稼働状態にあると、ドライポンプ11は24時間連続稼働されることが多い。かかる稼働状況においては、チャンバ内が到達真空度K1に維持される時間が長いため、ドライポンプ11に供給する冷却水を削減するには、ドライポンプ11の吸気圧力が到達真空度K1又はその付近の真空度にある場合にのみ、ドライポンプ11の発熱に応じた流量制御をすることが最も効果的である。
【0046】
次に、冷却水の流量制御について具体的に説明する。いま、ドライポンプ11が停止状態にあるとすると、バルブコントローラ32により流量開閉バルブ34b,34cが閉状態とされており、ドライポンプ11から排出された冷却水は回収管P21に設けられた流量設定バルブ33aのみ介して回収されることになる。この状態では、ドライポンプ11に流入する冷却水の温度、及びドライポンプ11から排出される冷却水の温度がほぼ最低温度T1であり、冷却水の流量は最小流量F1に設定されている。
【0047】
この状態において、処理装置に設けられた不図示のメインコントローラからドライポンプ11の駆動開始を示す制御信号S1が出力されると、ドライポンプコントローラ24は、この制御信号に基づいてドライポンプ11の駆動を開始するとともに、バルブコントローラ32に対してドライポンプ11の動作開始を示す旨の状態信号S2を出力する。この状態信号S2が入力されると、バルブコントローラ32は、流量開閉バルブ34bに対して制御信号S41を出力して流量開閉バルブ34bを開状態にし、ドライポンプ11に供給される冷却水の流量を中間流量F2にする。これにより、ドライポンプ11に供給される冷却水の流量は最小流量F1から中間流量F2に急激に変化する(ステップST11)。
【0048】
ここで、冷却水の流量を最小流量F1から中間流量F2に急激に変化させるのは、ドライポンプ11内部の発熱による冷却水の温度上昇が現れるまでにタイムラグが生ずるため、ドライポンプ11の内部発熱が許容温度を超えないためには先行して大きな流量を流す必要があるからである。また、バルブコントローラ32はドライポンプ11の動作開始を示す旨の状態信号S2が入力されてから一定時間の間は流量開閉バルブ34bを開状態として強制的にドライポンプ11に中間流量F2を供給する(ステップST12)。この時間は、バルブコントローラ32に記憶されるプログラムに予め設定されている。尚、ドライポンプ11の発熱特性が変化した場合には、後からのプログラムの変更も可能である。
【0049】
この一定時間が経過する前に、冷却水温度検出部31から出力される検出信号S3で示される温度が温度設定値T3を超えた場合には、バルブコントローラ32は、流量開閉バルブ34cに対して制御信号S42を出力して流量開閉バルブ34cを開状態にし、ドライポンプ11に供給される冷却水の流量を最大流量F3にする。これにより、ドライポンプ11に供給される冷却水の流量は中間流量F2から最大流量F3に急激に変化する(ステップST13)。一方、上記の一定時間が経過しても冷却水温度検出部31から出力される検出信号S3で示される温度が温度設定値T3を超えない場合には、バルブコントローラ32は、流量開閉バルブ34bに対して制御信号S41を出力して流量開閉バルブ34bを開状態にし、ドライポンプ11に供給される冷却水の流量を最小流量F1にする。
【0050】
冷却水温度検出部31から出力される検出信号S3で示される温度が最高温度T5に達した後に温度設定値T4よりも下がると、バルブコントローラ32は、流量開閉バルブ34cに対して制御信号S42を出力して流量開閉バルブ34cを閉状態にし、ドライポンプ11に供給される冷却水の流量を中間流量F2にする。これにより、ドライポンプ11に供給される冷却水の流量は最大流量F3から中間流量F2に急激に変化する(ステップST14)。バルブコントローラ32は、流量開閉バルブ34cを閉状態にしてから一定の時間の間は中間流量F2がドライポンプ11に供給されるよう制御状態を維持する。
【0051】
この一定時間が経過する前に、冷却水温度検出部31から出力される検出信号S3で示される温度が温度設定値T2よりも下がると、バルブコントローラ32は、流量開閉バルブ34bに対して制御信号S41を出力して流量開閉バルブ34bを閉状態にし、ドライポンプ11に供給される冷却水の流量を最小流量F1にする。これにより、ドライポンプ11に供給される冷却水の流量は中間流量F2から最小流量F1に急激に変化する(ステップST15)。
【0052】
尚、ドライポンプ11が駆動している状態において、処理装置に設けられた不図示のメインコントローラから処理装置の異常を示す制御信号S1が出力された場合、又はドライポンプコントローラ24がドライポンプ11の異常を検出した場合には、ドライポンプコントローラ24は、バルブコントローラ32に対して異常が生じた旨の状態信号S2を出力する。この状態信号S2が入力されると、バルブコントローラ32は、流量開閉バルブ34b,34cに対し制御信号S41,S42をそれぞれ出力し、流量開閉バルブ34b,34cを共に開状態として、ドライポンプ11に最大流量F3の冷却水が供給されるよう制御する。
【0053】
また、ドライポンプ11が駆動している状態において、処理装置に設けられた不図示のメインコントローラからドライポンプ11の駆動停止を示す制御信号S1が出力されると、ドライポンプコントローラ24は、この制御信号に基づいてドライポンプ11の駆動を停止するとともに、バルブコントローラ32に対してドライポンプ11の動作停止を示す旨の状態信号S2を出力する。この状態信号S2が入力されると、バルブコントローラ32は、流量開閉バルブ34b,34cに対し制御信号S41,S42をそれぞれ出力し、流量開閉バルブ34b,34cを共に閉状態として、ドライポンプ11に必要最小限の最小流量F1の冷却水が供給されるよう制御する。尚、この制御は状態信号S2が入力されてから直ちに行っても良く、所定時間経過した後に行っても良い。
【0054】
〔第3実施形態〕
図8は、本発明の第3実施形態による流量制御装置が用いられる送水系の構成を示すブロック図である。尚、図1に示した送水系の構成と同一の構成については同一の符号を付してある。図1に示す送水系は、処理装置7〜9の各々に対応して流量制御装置10を設けて、各処理装置7〜9に設けられたドライポンプ11に供給される冷却水を個別に制御する構成であった。
【0055】
これに対し、図8に示す本実施形態の流量制御装置が用いられる送水系は、各処理装置7〜9に設けられたドライポンプ11から排出される冷却水の温度を検出する冷却水温度検出部42を処理装置7〜9の各々に対応して設けると共に、供給管4から分岐している供給管4a〜4cの各々に対して流量制御装置41a〜41cを設けた構成である。供給管4aに接続されている複数の処理装置7に対応して設けられた冷却水温度検出部42の検出信号は流量制御装置41aに出力され、供給管4bに接続されている複数の処理装置8に対応して設けられた冷却水温度検出部42の検出信号は流量制御装置41bに出力され、供給管4cに接続されている複数の処理装置9に対応して設けられた冷却水温度検出部42の検出信号は流量制御装置41cに出力されている。
【0056】
流量制御装置41a〜41cは、入力される複数の検出信号のうちの最も高い温度を示す検出信号を選択する最大値選択部と、この最大値選択部で選択された検出信号に基づいて供給管4a〜4cを流れる冷却水の流量を制御するコントローラと、コントローラの制御に基づいて供給管4a〜4cの流量を制限する制御バルブとを含んで構成される。流量制御装置41a〜41cは上述した第1実施形態の流量制御装置10に設けられるバルブコントローラ22又は第2実施形態の流量制御装置10に設けられるバルブコントローラ32と同様の制御を行って、複数の処理装置7〜9(ドライポンプ11)に供給される冷却水の流量を制御する。このとき、コントローラは、最大値選択部で選択された検出信号で示される温度が所定温度以下となるように冷却水の流量を制御する。また、この制御を行っている最中に、最大値選択部で選択された検出信号で示される温度が予め設定された最大温度を超えた場合には、冷却水の流量を最大にする制御を行うことが望ましい。
【0057】
また、流量制御装置41a〜41cに設けられる制御バルブは、上述した第1実施形態の流量制御装置10に設けられる流量連続制御バルブ23であっても良く、第2実施形態の流量制御装置10に設けられる流量開閉バルブ34b,34c及び流量設定バルブ33a〜33cからなる構成であっても良い。本実施形態の構成にすることで、制御バルブを備える流量制御装置を処理装置7〜9の各々に設ける必要が無く、供給管4a〜4cのみに設ければよいため、装置構成を安価にすることができるとともに、これらの組み込みも容易に行うことができる。
【0058】
尚、図8では、供給管4から分岐している供給管4a〜4cに流量制御装置41a〜41cを備える構成について説明したが、供給管4のみに流量制御装置41a〜41cと同様の流量制御装置を備えても良い。かかる構成の場合には、処理装置7〜9の各々に供給される冷却水の流量が一括して制御される。また、図8に示す例では処理装置7〜9の各々に対応させて冷却水温度検出部42を設けた構成であったが、回収管5により回収される冷却水の温度を検出する冷却水温度検出部を回収管5に設けて、この検出結果が所定の温度以下となるように処理装置7〜9に供給される冷却水の水量を制御しても良い。
【0059】
以上説明した流量制御装置10又は流量制御装置41a〜41cにより、処理装置8に対応して設けられたドライポンプに供給される冷却水の水量がドライポンプの稼働状況に応じて制御される。図1又は図8に示す通り、冷却水搬送ポンプ3によって供給管4に供給された冷却水が分岐した供給管4a〜4cを介して個々のドライポンプに供給される訳であるが、流量制御装置10又は流量制御装置41a〜41cがバルブの開口度を制御することにより流量が変動する。
さて、冷却水を配管系に流した場合の圧力損失は、冷却水の流量の2乗に比例する。つまり、冷却水の流量が1/2になると、圧力損失は1/4に減少することになる。
【0060】
冷却水の流量減少により圧力損失が減少すると、この圧力損失の減少に合わせて冷却水搬送ポンプ3から送出する冷却水の圧力を減少させることができる。このため、本実施形態では、冷却水搬送ポンプ3にインバータ(回転数制御装置)を取り付けた構成とし、インバータの制御により冷却水搬送ポンプ3の回転数を低下させて冷却水の送出圧力を制御している。冷却水を供給するために必要な冷却水搬送ポンプ3の供給動力は、冷却水の流量の3乗に比例するため、仮に冷却水の流量を1/2にすることができれば、冷却水搬送ポンプ3の供給動力を1/8に減じることができる。
【0061】
図9は、冷却水搬送ポンプ3の制御系の構成を示す図である。尚、図9においては、図1又は図8に示した構成と同一の構成については同一の符号を付してある。図9に示す通り、冷却水搬送ポンプ3はポンプ51a,51bと、ポンプ51a,51b各々の回転数を制御するインバータ52a,52bと、冷却水の送出圧力を検出する圧力計53とを含んで構成される。尚、図9ではポンプ及びインバータを2台ずつ備える構成を例に挙げて図示しているが、ポンプ及びインバータの台数は処理装置、ドライポンプの数に応じて任意の台数に設定することができる。
【0062】
前述した流量制御装置10又は流量制御装置41a〜41cがバルブを制御することにより流路の負荷が変動する。負荷が変動すると供給管4に供給される冷却水及び回収管5に回収される冷却水の流量が変動する。回収管5には、冷却水の流量の変動を検出するための流量計53が設けられている。最適化制御装置55は、圧力計53及び流量計53の検出結果に基づいてインバータ52a,52bを制御してポンプ51a,51bの回転数を最適化するものである。
【0063】
上記構成において、流量制御装置10(又は流量制御装置41a〜41c)の制御により冷却水の各流路の負荷が変動すると、送水系全体の負荷状況に応じて供給管4及び回収管5を流れる冷却水の流量が増減する。この流量変化の増減は流量計54で検出され、その検出結果が最適化制御装置55に出力される。最適化制御装置55は流量に応じた最適送水圧力Paを算出する。図10は、冷却水の流量Qと最適送水圧力Paとの関係の一例を示す図である。前述した通り、圧力損失は冷却水の流量の2乗に比例するため、最適化制御装置55は、図10に示す通り、流量計54で検出された冷却水の流量Qの2乗に比例した最適送水圧力Paを求める。
【0064】
最適送水圧力Paを算出すると、最適化制御装置55は、圧力計53の検出結果をモニタしつつ、冷却水搬送ポンプ3から供給管4に送出される冷却水の圧力が最適送水圧力Paとなるようインバータ52a,52bを制御する。この制御により、図11に示す通り、冷却水の流量Qに応じて冷却水搬送ポンプ3の消費電力PWを変化させることができる。図11は、冷却水の流量Qと冷却水搬送ポンプ3の消費電力PWとの関係の一例を示す図である。図11に示す通り、冷却水搬送ポンプ3の消費電力PWは、冷却水の流量Qの3乗に比例する。前述した第1実施形態〜第3実施形態で説明した通り、ドライポンプの各々に供給される冷却水の水量が制御されているため、冷却水搬送ポンプ3から供給管4に供給される冷却水の流量Q(回収管5に回収される冷却水の流量)を制御することができ、この結果として冷却水搬送ポンプ3の消費電力PWを削減することができる。特に、冷却水の流量Qが少ない場合には、消費電力PWを大幅に削減することができる。
【0065】
尚、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更することができる。例えば、上記実施形態では、処理装置7〜9の種類毎に接続される供給管4a〜4c及び回収管5a〜5cを異ならせていたが、処理装置を所定数毎にグループ化し、このグループ毎に接続する供給管及び回収管を異ならせればよい。処理装置のグループ化は、処理装置の種類を基準として行っても良く、処理装置の稼働開始時を基準として行っても良く、その基準は任意である。
【0066】
また、上記第1実施形態に示す流量制御装置10は連続的に開口度が可変する流量連続制御バルブ23を備えており、第2実施形態に示す流量制御装置10は開口度が同一に設定された流量設定バルブ33a〜33c及び開状態又は閉状態になる流量開閉バルブ34b,34cを備えていたが、流量制御装置10に設けられるバルブはこれらの各種バルブを組み合わせた構成であっても良い。これは、第3実施形態についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態による流量制御装置が用いられる送水系の構成を示すブロック図である。
【図2】処理装置7〜9、ドライポンプ、及び流量制御装置10の配置例を示す図である。
【図3】流量制御装置10の第1構成例を示すブロック図である。
【図4】図3に示す流量制御装置10による流量制御を説明するための図である。
【図5】流量制御装置10の第2構成例を示すブロック図である。
【図6】図5に示す流量制御装置10による流量制御を説明するための図である。
【図7】ドライポンプ11によりチャンバ内を減圧する場合の消費電力と吸気圧力との関係の一例を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態による流量制御装置が用いられる送水系の構成を示すブロック図である。
【図9】冷却水搬送ポンプ3の制御系の構成を示す図である。
【図10】冷却水の流量Qと最適送水圧力Paとの関係の一例を示す図である。
【図11】冷却水の流量Qと冷却水搬送ポンプ3の消費電力PWとの関係の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
4 供給管
5 回収管
7〜9 処理装置(生産用装置)
11 ドライポンプ(生産用装置)
21 冷却水温度検出部(検出装置)
22 バルブコントローラ(制御装置)
23 流量連続制御バルブ(制御弁)
31 冷却水温度検出部(検出装置)
32 バルブコントローラ(制御装置)
33a〜33c 流量設定バルブ(流量調整機構、定流量弁)
34b,34c 流量開閉バルブ(流量調整機構、制御弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスの生産に関わる生産用装置を冷却する冷却水の流量を制御する流量制御装置において、
前記生産用装置の稼働状況に応じて、前記生産用装置に供給する前記冷却水の供給量を制御する制御装置を備えることを特徴とする流量制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記生産用装置の動作開始後における発熱特性に応じた前記冷却水の制御量を予め記憶しており、前記生産用装置の動作を制御する制御部から前記生産用装置の動作を開始させる動作開始信号が出力された場合に、前記制御量に基づいて前記冷却水の供給量を制御することを特徴とする請求項1記載の流量制御装置。
【請求項3】
前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を段階的に調整する流量調整機構を備え、
前記制御装置は、前記制御量に基づいて前記流量調整機構を制御して前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を階段状に制御することを特徴とする請求項2記載の流量制御装置。
【請求項4】
前記流量調整機構は、前記制御装置から出力される制御信号に基づいて開口度が連続的に変化する制御弁を含むことを特徴とする請求項3記載の流量制御装置。
【請求項5】
前記流量調整機構は、前記冷却水の流路を開状態とするか又は閉状態とする複数の制御弁を含み、当該複数の制御弁の開閉状態の組み合わせにより前記冷却水の流量を段階的に調整することを特徴とする請求項3又は請求項4記載の流量制御装置。
【請求項6】
前記流量調整機構は、少なくとも1つの定流量弁を含むことを特徴とする請求項3から請求項5の何れか一項に記載の流量制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記制御部から前記生産用装置の動作を停止させる動作停止信号が出力された場合に、前記冷却水の供給量を必要最小限に設定する制御を行うことを特徴とする請求項2から請求項6の何れか一項に記載の流量制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記冷却水の供給量を必要最小限に設定する制御を、前記制御部から前記動作停止信号が出力されてから所定時間経過後に行うことを特徴とする請求項7記載の流量制御装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記制御部から前記生産用装置の異常を知らせる異常信号が出力された場合に、前記冷却水の供給量を最大に設定する制御を行うことを特徴とする請求項2から請求項8の何れか一項に記載の流量制御装置。
【請求項10】
デバイスの生産に関わる生産用装置を冷却する冷却水の流量を制御する流量制御装置において、
前記生産用装置から排出される前記冷却水の温度を検出する検出装置と、
前記生産用装置の動作開始後における発熱特性に応じた前記冷却水の制御量を予め記憶しており、前記生産用装置の動作を制御する制御部から前記生産用装置の動作を開始させる動作開始信号が出力されてから所定時間経過するまでは前記制御量に基づいて前記冷却水の供給量を制御し、前記所定時間経過後は前記検出装置の検出結果に基づいて前記冷却水の供給量を制御する制御装置と
を備えることを特徴とする流量制御装置。
【請求項11】
前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を段階的に調整する流量調整機構を備え、
前記制御装置は、前記検出装置の検出結果及び前記制御量の何れか一方に応じて前記流量調整機構を制御して前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を階段状に制御することを特徴とする請求項10記載の流量制御装置。
【請求項12】
前記流量調整機構は、前記制御装置から出力される制御信号に基づいて開口度が連続的に変化する制御弁を含むことを特徴とする請求項11記載の流量制御装置。
【請求項13】
前記流量調整機構は、前記冷却水の流路を開状態とするか又は閉状態とする複数の制御弁を含み、当該複数の制御弁の開閉状態の組み合わせにより前記冷却水の流量を段階的に調整することを特徴とする請求項11又は請求項12記載の流量制御装置。
【請求項14】
前記流量調整機構は、少なくとも1つの定流量弁を含むことを特徴とする請求項11から請求項13の何れか一項に記載の流量制御装置。
【請求項15】
前記制御装置は、前記検出装置で検出される前記冷却水の温度が上昇する場合と、下降する場合とで、前記冷却水の流量を階段状に制御する温度設定値が個別に設定されていることを特徴とする請求項11から請求項14の何れか一項に記載の流量制御装置。
【請求項16】
前記制御装置は、前記制御部から前記生産用装置の異常を知らせる異常信号が出力された場合に、前記冷却水の供給量を最大に設定する制御を行うことを特徴とする請求項10から請求項15の何れか一項に記載の流量制御装置。
【請求項17】
デバイスの生産に関わる生産用装置を冷却する冷却水の流量を制御する流量制御装置において、
前記生産用装置から排出される前記冷却水の温度を検出する検出装置と、
前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を段階的に調整する流量調整機構と、
前記検出装置の検出結果に応じて前記流量調整機構を制御して前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を階段状に制御する制御装置と
を備えることを特徴とする流量制御装置。
【請求項18】
前記制御装置は、前記検出装置で検出される前記冷却水の温度が上昇する場合と、下降する場合とで、前記冷却水の流量を階段状に制御する温度設定値が個別に設定されていることを特徴とする請求項17記載の流量制御装置。
【請求項19】
前記冷却水を複数の前記生産用装置に供給する供給管を備え、
前記制御装置は、前記供給管に供給する前記冷却水の流量を制御することにより、少なくとも2個以上の生産用装置の各々に供給する前記冷却水の流量を一括して制御することを特徴とする請求項1から請求項9の何れか一項に記載の流量制御装置。
【請求項20】
前記冷却水を複数の前記生産用装置に供給する供給管を備え、
前記制御装置は、前記供給管に供給する前記冷却水の流量を制御することにより、少なくとも2個以上の生産用装置の各々に供給する前記冷却水の流量を一括して制御することを特徴とする請求項10から請求項18の何れか一項に記載の流量制御装置。
【請求項21】
複数の前記生産用装置から排出される冷却水を回収する回収管を備え、
前記検出装置は、前記回収管で回収される前記冷却水の温度を検出し、
前記制御装置は、前記検出装置の検出結果が所定温度以下となるように前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を制御する
ことを特徴とする請求項20記載の流量制御装置。
【請求項22】
前記生産用装置は、所定数毎にグループ化されており、
前記供給管及び前記回収管は、前記グループ化された前記生産用装置を単位として分岐していることを特徴とする請求項21記載の流量制御装置。
【請求項23】
前記検出装置は、複数の前記生産用装置の各々から排出される冷却水の温度を検出し、
前記制御装置は、前記検出装置の検出結果のうち最も高い温度を示すものが所定温度以下となるように前記生産用装置に供給する前記冷却水の流量を制御する
ことを特徴とする請求項22記載の流量制御装置。
【請求項24】
前記制御装置は、前記検出装置の検出結果の何れかが予め設定された最大温度を超えた場合に、前記供給管に対する前記冷却水の供給量を最大に設定する制御を行うことを特徴とする請求項23記載の流量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−236095(P2006−236095A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51268(P2005−51268)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【出願人】(501114693)株式会社ウインズ (23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】