説明

流量制御装置

【課題】ウォータハンマ現象を緩和する。
【解決手段】ポート19を開閉する主弁20を備えた弁ケーシング16と、プランジャ31を組み込んだソレノイドユニット32との間に、主弁20の背圧室27に連通する作動室33を備えた拡張ユニットEUが介在されている。拡張ユニットEUには副弁37が備えられている。副弁37と主弁20には共に脱圧路28,39と給圧路30,42とが形成されている。閉弁時にプランジャ31によって両弁20,37の脱圧路28,39が閉じられると、作動室33のうちの第2室33Bがまず圧力上昇してから、副給圧路42を通じて第1室33A内の圧力が上昇する。これによって、作動室33全体はゆっくりと圧力上昇するため、主弁20の閉弁速度もゆっくりと行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、一次圧流路から二次圧流路へと通じるポートを開閉して流体の流量を制御するパイロット式ダイアフラム弁が知られている(例えば、下記特許文献1)。この特許文献1におけるダイアフラム弁にはプランジャによって開閉される通路(背圧室と二次圧流路とを連通させる通路)が形成されることに加え、閉弁時に発生するウォータハンマの影響を緩和するために、ダイアフラム弁に一次圧流路と背圧室とを連通させる小径のオリフィス通路も形成されている。また、このオリフィス通路における一次圧流路側には遮蔽部材が設けられている。そして、閉弁動作の間、遮蔽部材との当接具合によってオリフィス通路の一次圧流路側の開口量が徐々に絞り込まれるようになっている。こうすることでダイアフラム弁の閉弁速度を遅くし、もってウォータハンマが効果的に抑制される、というものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−119863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のものでは、オリフィス通路の開口端部に対する遮蔽部材の当接具合によってオリフィス通路の開口量を制御するものであるため、遮蔽部材の取り付け状況のばらつきによっては流量制御の状況がばらつきやすい、という問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、流量制御を安定的に行なうことができる流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<請求項1の発明>
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、一次圧流路と、二次圧流路と、前記一次圧流路と前記二次圧流路とを連通させるポートを開閉するダイアフラム式の主弁と、この主弁における前記ポートを閉止する側と反対側に設けられた背圧室と、この背圧室側に配置されコイルへの励磁の有無によって軸方向へ移動可能なプランジャと、前記一次圧流路と前記背圧室とを連通する給圧路と、前記主弁に形成され前記二次圧流路と前記背圧室とを連通可能で前記プランジャの移動に伴って同プランジャによって直接あるいは間接的に開閉される脱圧路と、前記背圧室に通じるとともに、前記プランジャの移動に起因した容積変化を伴いつつ前記主弁に前記ポートを開閉させるための圧力を生じる作動室とを備えてなるところに特徴を有する。
【0007】
<請求項2の発明>
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、プランジャと前記背圧室との間には前記作動室が形成され、この作動室内には前記プランジャの移動に起因して移動可能なダイアフラム式の副弁が前記主弁に対して直列で積層して配置され、かつこの副弁によって前記作動室は第1・第2の室に区画されかつ両室は副給圧路を介して連通可能となっており、また前記副弁にはその一端側が前記プランジャによって開閉される副脱圧路が前記プランジャおよび前記主弁の脱圧路と同軸で貫通して形成され、さらに副弁は前記プランジャの移動に伴って前記副脱圧路が前記主弁の脱圧路と連続する状態と離間する状態との間で移動可能とされることにより、前記プランジャの移動に起因して各作動室に生じる圧力変動状況が、前記ポートの開閉状況に応じて第1室から第2室あるいは第2室から第1室へと進行する構成であるところに特徴を有する。
【0008】
<請求項3の発明>
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、副弁は、前記主弁とほぼ同一構造にて形成されているところに特徴を有する。
【0009】
<請求項4の発明>
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のものにおいて、給圧路は前記主弁に形成され、かつ前記副給圧路は前記副弁に形成されているところに特徴を有する。
【0010】
<請求項5の発明>
請求項5の発明は、請求項2乃至請求項4のいずれかに記載のものにおいて、一次圧流路、前記二次圧流路、前記ポート、前記主弁および前記背圧室が配された弁ケーシングと、前記プランジャを組み込んだソレノイドユニットとを備え、前記弁ケーシングと前記ソレノイドユニットとの間には、前記副弁とこの副弁によって区画された前記第1室および前記第2室とを配することで、全体がユニット化された拡張ユニットが介在されるところに特徴を有する。
【0011】
<請求項6の発明>
請求項6の発明は、請求項1に記載のものにおいて、一次圧流路、前記二次圧流路、前記ポートおよび前記主弁が配された弁ケーシングと、前記プランジャを組み込んで前記弁ケーシングとの間に前記背圧室を形成した状態で前記弁ケーシングに装着されるソレノイドユニットと、前記弁ケーシングおよび前記ソレノイドユニットの外部に配置された作動部とを備え、この作動部内にはダイアフラム弁と、前記背圧室とは第1連通路を介して連通する前記作動室とが設けられることにより、前記プランジャの移動に起因して前記背圧室内に生じる圧力変動に応じて前記作動室内の容量が拡張・収縮する構成であるところに特徴を有する。
【0012】
<請求項7の発明>
請求項7の発明は、請求項6に記載のものにおいて、作動部内は、前記ダイアフラム弁によって前記作動室と背圧空間とに区画され、前記作動室内には前記ダイアフラム弁を前記背圧室側へ移動させるよう作用するばねが設けられる一方、前記背圧空間は前記一次圧流路に対して第2連通路を介して接続されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
<請求項1の発明>
請求項1の発明によれば、プランジャの移動に起因して作動室には主弁に対しポートの開閉を行なうに必要な圧力が生じる。その場合において、作動室は容積変化を伴って圧力変動を生じるため、圧力変動は緩速度でなされる。このことによって、主弁の開閉動作をゆっくりと行わせることができ、もってウォータハンマ等の現象を有効に緩和することができる。
【0014】
また、請求項1の発明では作動室の容積を拡張させることにより圧力調整を行なうものであるため、従来のような組付けの際に微妙な調整がなく、その分、組付け作業の精度も厳格さが要求されず、また流量調整も安定化させやすい。
【0015】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によれば、主弁がポートを開放している状態でプランジャの移動がなされると、プランジャによって副脱圧路が閉じられ、さらに副脱圧路が主弁の脱圧路と連続する。このことによって、まず、給圧路を通じて背圧室と連通する第2室内へと流体の流入が開始するため、第2室内の圧力が徐々に高まる。しかし、その場合においても第2室からは給圧路を通じて第1室へと流体が流出するため、その分、第2室および背圧室内の圧力上昇は進行が遅れる。つまり、閉弁動作時には、背圧室に通じる第2室から第1室へと容積を拡張しつつ内部の圧力上昇を進行させていると言える。最終的には、第1室内への流体の流出が停止し、第1室内の圧力と第2室および背圧室内の圧力とがバランスして圧力変動が停止するが、第2室および背圧室内の圧力が徐々にしか上昇しないため、主弁はゆっくりとポートを閉弁することになる。
【0016】
逆に、ポートが閉止されている状況からポートを開弁する際には、プランジャが上記とは逆方向に移動する。これにより、プランジャが副弁から離間し、副脱圧路の一端側を開放するため、まず第1室内から副脱圧路および脱圧路を通じて二次圧流路へと流出する。その間、第2室側から副給圧路を通じて第1室内へ流体の流入があるため、第1室内の圧力低下はゆっくりとしたものとなる。そして、副弁に作用する第1・第2室の圧力差によって、副弁が主弁から離れると、脱圧路を通じて第2室および背圧室から流体が流出するため、背圧室および第2室内の圧力は徐々に低下してゆく。つまり、開弁動作時には当初一次圧で保持されていた作動室全体が、第1室から第2室および背圧室へとあたかも容積変化を伴いつつ圧力低下していくことをもって、主弁の開弁動作をゆっくりと行わせることができる。
【0017】
<請求項3の発明>
請求項3の発明によれば、副弁と主弁とが共通化されているため、部品種を減らしてコスト低減に寄与することができる。
【0018】
<請求項4の発明>
請求項4の発明によれば、背圧室および作動室に対する給圧あるいは脱圧の機能を主弁あるいは副弁に対してそれぞれ集約化させることができる。
【0019】
<請求項5の発明>
請求項5の発明によれば、作動室および副弁をユニット化して単一部材化したため、取り扱いが容易になるとともに、既存装置への組み込みも可能となる。
【0020】
<請求項6、7の発明>
請求項6、7の発明によれば、プランジャの移動に起因して背圧室に通じる作動部内の作動室には主弁を開閉させるための圧力が生じる。その場合において、作動室は容積変化を伴って圧力変動を生じるため、圧力変動は緩速度でなされる。このことによって、主弁の開閉動作をゆっくりと行わせることができ、もってウォータハンマ等の現象を有効に緩和することができる。
【0021】
また、請求項6,7の発明では、作動部を弁ケーシングやソレノイドユニットの外部に別個に設けたため、作動室の容積の設定等、弁ケーシングなどに対する組み込み上の制約を受けずに済むため、設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】給湯システムの全体図
【図2】実施形態1における開弁状態を示す断面図
【図3】閉弁動作初期を示す断面図
【図4】同じく閉弁動作途上を示す断面図
【図5】閉弁状態を示す断面図
【図6】開弁動作初期を示す断面図
【図7】同じく開弁動作途上を示す断面図
【図8】実施形態2における開弁状態を示す断面図
【図9】閉弁動作途上を示す断面図
【図10】閉弁状態を示す断面図
【図11】開弁動作途上を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
図1は本実施形態における給湯システムの全体を示している。図中、1は上水道の給水管であり、流量センサ2の下流側において分岐し、一方には熱交換器3が接続され、他方にはバイパス弁4が接続されている。熱交換器3で加熱された湯はバイパス弁4を経由した水と合流するようになっている。その際に、バイパス弁4の開度が調整されることによって湯水の混合比が調整可能である。また、合流した後の下流側には給湯管5が接続されこの給湯管5に接続された調整弁6にて出湯流量が調整される。給湯管5は下流側で2つの配管7,8に分岐し、一方の配管7は台所その他の給湯設備へと接続され、他方の配管8は浴槽9へと接続されている。配管8の途中にはその開度によって浴槽9へ供給される湯量が調整可能な流量制御装置10が設けられている。
【0024】
流量制御装置10の下流側には第1・第2の逆止弁11,12が直列に配されており、その間にはフローセンサ13が配されている。第1逆止弁11とフローセンサ13との間には分岐配管14を介して排水弁15が接続されている。上記した第1・第2の逆止弁11,12および排水弁15は浴槽9から上水道への逆流を阻止する逆流防止装置として機能する。
【0025】
次に、本実施形態1の流量制御装置10を主として図2から図7によって詳細に説明する。本実施形態の流量制御装置10は弁ケーシング16を有し、その一側には給湯管5側に通じる導入部16Aが側方へ向けて延出している。弁ケーシング16の内部には軸芯に沿って中空の筒部16Bが同軸で形成されている。この筒部16Bの外壁と弁ケーシング16の内壁との間には環状の空間が形成され、同環状空間と導入部の内部の流路によって一次圧流路17が形成される。筒部16Bの下方には導出部16Cが形成されており、浴槽9側へと通じている。筒部16Bの内部と導出部16Cの内部の流路は二次圧流路18を形成する。
【0026】
筒部16Bの先端開口縁には主弁20によって開閉されるポート19が形成され、このポートを通じて一次圧流路と二次圧流路とが連通する。主弁20はダイアフラム式であり、合成樹脂材にて略円盤状に形成された弁体21を有している。弁体21は中心軸上に軸部22を備え、この軸部22は弁体21の表裏両方向へ突出形成されている。また、軸部22の外周面において軸方向(高さ方向)の略中央部には環状に装着溝23が形成され、この装着溝23によってダイアフラム24の取り付けがなされている。ダイアフラム24は可撓性を有し、ポート19より大径の円盤状に形成され、ポート19を開放したり、密着して閉止することができる。また、ダイアフラム24の外周縁部には弛み部24Aが形成され、さらにその周縁部には厚肉部24Bが形成されている。本実施形態においては、厚肉部24Bが弁ケーシング16の段差部16Dの上面に載置され、上面側から拡張ユニットEUにおけるユニットハウジング25の下面に突出する圧着筒26によって挟み付けられることによって、ダイアフラム24全体の取り付けがなされている。
【0027】
弁ケーシング16内において主弁20の上面側、つまりポート19を閉止する面の反対側には背圧室27が形成されている。前記した軸部22の軸芯には背圧室27側と二次圧流路18とを連通させるための脱圧路28が形成されている。脱圧路28は、背圧室27側の端部に小径の細孔部28Aが形成され、その他の部分は大径の太孔部28Bとなっている。また、弁体21の下面であって、主弁20がポート19を閉止しているときの筒部16Bより径方向外側に位置する部位には給圧管29が一体に突出して形成されダイアフラム24を密着状態で貫いている。給圧菅29の一端側は一次圧流路17内に開口し、他端側は弁体21内において径方向に沿って形成された流路と連通している。この流路は弁体21の上面に通じることで、給圧菅29内の通路と共に給圧路30を構成する。この給圧路30は背圧室27と一次圧流路17とを常時連通させ、背圧室27内に一次圧が常に導入されるようにしてある。なお、給圧路30における背圧室27側の端部の孔径は、脱圧路28における背圧室27側の端部の孔径よりも小径に設定されている。
【0028】
ところで、従来の装置であれば、上記した弁ケーシング16側とプランジャ31を組み込んでなるソレノイドユニット32とによって構成可能であるが、本実施形態においては、弁ケーシング16とソレノイドユニット32との間に拡張ユニットEUを介在させ、内部に設定された作動室33によって背圧室27の容積の拡張化が図られている。
【0029】
拡張ユニットEUの説明の前にソレノイドユニット32の構成を簡単に説明すると、ソレノイドユニット32はコイル35、主弁20と同軸をなすようにして縦向きに配置されたプランジャ31およびプランジャ31を戻し方向(図示下方)へ付勢する戻しばね36とから構成されている。プランジャ31は、コイル35が通電の有無によって励磁あるいは非励磁の状態になったときに軸線方向に沿った双方向へ所定ストローク分、移動するようになっている。
【0030】
拡張ユニットEUはソレノイドユニット32と弁ケーシング16との間に介在されるユニットハウジング25を備えている。ユニットハウジング25の内部にはプランジャ31の移動に伴ってプランジャ31の先端と当接あるいは離間可能な副弁37が設けられている。ユニットハウジング25内の空間は作動室33となっていて、この作動室33は副弁37によって縦方向に第1・第2の両室33A,33Bに区画されている。
【0031】
本実施形態における副弁37は主弁20とほぼ同一構成のものが使用されており、プランジャ31および主弁20と同軸をなすようにして配置されている。副弁37の軸部38には軸線に沿って副脱圧路39が貫通して形成され、この副脱圧路39のプランジャ31側の端部は主弁20と同様に細孔部39Aが形成されているが、太孔部39Bには端部側から中空のスリーブ部材40が同心で嵌め込まれ、同スリーブ材40には軸芯に沿って貫通孔41が形成されている。この貫通孔41は主弁20および副弁37の細孔部39Aとほぼ同一の孔径をもって形成されている。スリーブ部材40は副弁37の下端面に露出して円盤状のシール部40Aが形成されていて、主弁20に対して密接状態で当接しうる。副弁37の副脱圧路39におけるプランジャ31側の端部はプランジャ31の先端によって開閉可能であり、主弁20側の端部は、副弁37と主弁20との接離に伴って主弁20の脱圧路28の端部とほぼシール状態で連続したり、離間して両弁20,37の端部を共に開放する。
【0032】
なお、副弁37には主弁20と同様にして副給圧路42が形成されていて、第1室33Aと第2室33Bとを常時連通させている。副給圧路42が第1室33A内に開口する孔径が、副脱圧路39におけるプランジャ31側の端部の孔径よりも小径である点も、主弁20と同様である。また、図示では主弁20の給圧路30における背圧室27側の端部の開口の位置と、副弁37の副給圧路42における第2室33B側の端部の開口の位置とは主弁20および副弁37の軸芯を中心として点対称となる位置(対角位置)に配置され相互が位置的に遠ざけられている。
【0033】
次に、上記のように構成された実施形態1に係る流量制御装置10の作用効果を具体的に説明する。
【0034】
まず、閉弁動作について説明する(図2から図5参照)。図2は主弁20がポート19を開放している状態を示している。このときには、第1室33A、第2室33Bおよび背圧室27は、いずれも一次圧に比較して低圧の状態となっている。
【0035】
上記の開弁状態において、コイル35に対する通電が停止されてコイル35が非励磁状態になると、プランジャ31は戻しばね36のばね力および自重によって副弁37側へ復帰移動する。これにより、プランジャ31が副弁37に当接し副脱圧路39がシール状態で閉じられる(図3状態)。副弁37はさらに下降し、主弁20に当接する(図4状態)。これにより、副脱圧路39を通した第1室33Aからの流体の流出は停止するとともに、主弁20の脱圧路28を通した背圧室27および第2室33Bからの流体の流出も停止する。ただし、この時には主弁20に作用する一次圧は、背圧室27および第2室33B内の圧力と、副弁37が主弁20を押し下げようとする力(戻しばね36のばね力、プランジャ31の自重、第1室33A内の圧力および副弁37の自重)を合算した値よりも大きいため、主弁20はポート19から浮いて同ポート19を開放したままの状態にある。
【0036】
この間、主弁20の給圧路30を通じて一次圧側から背圧室27および第2室33Bへと流体の流入が継続する一方で、第1室33A内へは副給圧路42を通じて第2室33B側から流体が抜け出るため、第2室33Bおよび背圧室27内の圧力は徐々にしか高まらない。第2室33Bおよび背圧室27内の圧力上昇からやや遅れ気味にして第1室33A内も徐々に圧力が高まるため、その結果、主弁20を下降させるための力が徐々に増してゆき、主弁20はゆっくりと下降を始める。そして最終的に第1室33A内の圧力および第2室33Bおよび背圧室27内の圧力が一次圧に達する頃には主弁20はポート19に密着して閉止する(図5状態)。
【0037】
このように、作動室33内の圧力上昇は、まず第2室33Bおよび背圧室27において生じ、続いて第1室33A側へと移行していく過程は、作動室33が容積変化を伴いつつ圧力上昇していることと同視することができる。このことをもって、本実施形態1は主弁20の閉弁動作をゆっくりと行なわせることができるのであって、もってウォータハンマ現象を有効に緩和することができる。
【0038】
図5に示す閉弁状態から開弁状態へと移行するときの動作を説明すると、閉弁状態の間は主弁20の給圧路29を通じて背圧室27および第2室33B内の圧力は一次圧と同圧で高く保持されている。また、副弁37の副給圧路42を通じて第1室33A内の圧力も同様に一次圧に保持されている。
【0039】
この状態でコイル35に対する通電がなされると、コイル35が励磁されプランジャ31が吸引される(図6状態)。これにより、プランジャ31の先端が副弁37から離れて副脱圧路39の開口端を開放するが、このときには副弁37は主弁20に当接して副脱圧路39と主弁20の脱圧路28とは連続した連通状態にあるため、第1室33A内の流体は両脱圧路28,39を通じて二次圧流路18へと流出する。その一方で、第1室33A内へは副弁37の副給圧路42から第2室33Bおよび背圧室27内から流体の流入が常時継続するものの、両弁20,37の脱圧路28,39からの流出量の方が孔径の相違によって僅かに上回るため、第1室33A内の圧力は徐々に低下してゆく。これに伴い、副弁37の上下面で所定の圧力差が生じると、副弁37は主弁20から離れプランジャ31側へ移動する。これにより、副弁37の副脱圧路39における第2室33B側の端部が開放するとともに、主弁20の脱圧路28における第2室33B側の端部が開放する(図7状態)。
【0040】
すると、背圧室27および第2室33B内から脱圧路28を通して二次圧流路18へと流体が抜け出る。その一方で、背圧室27および第2室33B内へは給圧路30を経て一次圧流路17から流体が流入するが、孔径の相違から背圧室27および第2室33B内はゆっくりとした圧力低下の傾向となる。これによって、主弁20は上下面の圧力差に基づいてゆっくりと上昇し、ポート19を緩速にて開放する(図2状態)。
【0041】
このように、作動室33内の圧力低下は、まず第1室33Aにおいて生じ、続いて第2室33B側へと移行していく。この過程は、作動室33が容積変化を伴いつつ圧力低下していることと同視することができる。このことをもって、本実施形態1は主弁20の開弁動作をゆっくりと行なわせることができる。したがって、浴槽への湯張りを行なう際に、同時に使用している給湯側の湯取られによる出湯温度の変動を抑制することができる。
【0042】
また、実施形態1では作動室33の容積変化を利用して主弁20の開閉速度を調整するものであるため、従来の開口面積を絞り込むような微妙な調整作業も要しないため、組付け作業が容易であり、その分機能も安定化させやすい。
【0043】
さらに、副弁37等を拡張ユニットEUとしてユニット化しているため、それ自体の取り扱い性に優れるとともに、既存装置への適用も容易である。また、このような拡張ユニットEUを組み込んで装置全体が一つのユニットとして構成されるようにしたため、全体としての取り扱い性にも優れる。
【0044】
さらに、副弁37は主弁20とほぼ同じ構成であって、主弁20をほぼそのまま利用することができるため、副弁37が専用部品とならずに済む分、部品種を減らしてコスト低減を期待することができる。
【0045】
<実施形態2>
図8から図11は本発明の実施形態2を示している。上記した実施形態1ではソレノイドユニット32と弁ケーシング16との間において、拡張ユニットEUをほぼ同軸で介在させるようにしたが、実施形態2では従来の流量制御装置と同様、弁ケーシング16にソレノイドユニット32に直接組み付けるようにし、実施形態1の拡張ユニットEUに相当する作動部43を弁ケーシング16やソレノイドユニット32の外部に配置している。
【0046】
本実施形態の作動部43は、内部にダイアフラム弁44と同ダイアフラム弁44に対するばね45とを備えている。そして、作動部43の内部空間はダイアフラム弁44によって作動室46と背圧空間47とに区画されている。このうち、作動室46と背圧室27とは第1連通路48を介して接続され、背圧空間47は第2連通路49を介して弁ケーシング16内における一次圧流路17と接続されている。なお、ばね45はダイアフラム弁44に対し背圧空間47側へ押圧する方向に所定のばね力を作用させる。また、給圧路30の孔径は脱圧路28の孔径よりも小径に設定されている。
【0047】
他の構成は実施形態1と同様であるため、図面中に同一符号を付して説明は省略する。
【0048】
まず、実施形態2における閉弁動作について説明する。図8はポート19が開放された状態であり、このときには作動部43の背圧空間47は一次圧であり、作動室46および背圧室27はこれより低い低圧状態となっている。このため、ダイアフラム弁44はその表裏の圧力差により、ばね45に抗して作動室46内の容積を縮小した位置に保持されている。
【0049】
図8の状態からコイル35に対する通電が停止され、コイル35が非励磁状態になると、プランジャ31は戻しばね36のばね力によって下降しその先端にて脱圧路28の開口端部を密閉する(図9状態)。ただし、このときには一次圧流路17内の圧力が相対的に高いため、主弁20はポート19を開放したままの状態に保持されている。
【0050】
上記したようにプランジャ31が脱圧路28を閉止した後は、背圧室27からの流体の流出は停止されるが、給圧路30による流体の流入はそのまま継続する。そして、流体は背圧室27内へ流入した流体は作動室46へも流入するため、作動室内は背圧室27および作動室46内の圧力上昇を受け、ばね45のばね力にも助勢されてダイアフラム弁44を背圧空間側へ押しやる。このことによって、作動室46は容積を徐々に拡張しながら圧力を高めていくため、作動室46および背圧室27内の圧力上昇の速度はゆっくりとしたものとなる。したがって、主弁20の表裏両面に作用する圧力はゆっくりとその差が大きくなるため、主弁20はゆっくりとした速度で下降してポート19を閉じる(図10状態)。かくして、閉弁時のウォータハンマ現象を有効に緩和することができる。
【0051】
次に、開弁動作を説明する。図10に示す閉弁状態からコイル35に対する通電が行なわれると、コイル35が励磁状態となってプランジャ31が主弁20から離間する(図11状態)。これにより脱圧路28が開放するため、背圧室27内の圧力(高)と二次圧流路18内の圧力(低)の関係から、背圧室27内の流体は脱圧路28を通じて流出する。なお、給圧路30は背圧室27内に常時開放しているが、給圧路30と脱圧路28の孔径の差から、背圧室27内からの流出量が流入量を上回るため、背圧室27内の圧力低下を受け作動室33内においても作動室33の容積を縮小させつつ圧力が低下してゆく。かくして、主弁20の表裏面に作用する圧力はその差が徐々に大きくなるため、主弁20はゆっくりとした速度で浮き上がり、ポート19が開放される(図11状態)。
【0052】
かくして、実施形態2においても実施形態1と同様、ゆっくりとした開弁動作が得られ、もって同様の効果が得られる。
【0053】
また、実施形態2におけるソレノイドユニット32と弁ケーシング16とを組み付けたものは既存の流量制御装置そのものであり、本実施形態ではこの既存装置を利用して作動部43を付設して構成されるため、既存装置の有効利用を図ることができる、という効果も得られる。また、作動部を外部に設置するため、作動室を含む内部の容積に制約を受け難いため、設計の自由度が高められる。
【0054】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では給圧路を主弁に形成したが、これに代えて弁ケーシングに形成してもよい。副給圧路も同様に副弁に形成しなくてもよく、これに代えてユニットハウジングに形成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
17…一次圧流路
18…二次圧流路
19…ポート
20…主弁
27…背圧室
28…脱圧路
30…給圧路
31…プランジャ
33,46…作動室
37…副弁
39…副脱圧路
42…副給圧路
43…差胴部
44…ダイアフラム弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次圧流路と、二次圧流路と、前記一次圧流路と前記二次圧流路とを連通させるポートを開閉するダイアフラム式の主弁と、この主弁における前記ポートを閉止する側と反対側に設けられた背圧室と、この背圧室側に配置されコイルへの励磁の有無によって軸方向へ移動可能なプランジャと、前記一次圧流路と前記背圧室とを連通する給圧路と、前記主弁に形成され前記二次圧流路と前記背圧室とを連通可能で前記プランジャの移動に伴って同プランジャによって直接あるいは間接的に開閉される脱圧路と、前記背圧室に通じるとともに、前記プランジャの移動に起因した容積変化を伴いつつ前記主弁に前記ポートを開閉させるための圧力を生じる作動室とを備えてなることを特徴とする流量制御装置。
【請求項2】
前記プランジャと前記背圧室との間には前記作動室が形成され、この作動室内には前記プランジャの移動に起因して移動可能なダイアフラム式の副弁が前記主弁に対して直列で積層して配置され、かつこの副弁によって前記作動室は第1・第2の室に区画されかつ両室は副給圧路を介して連通可能となっており、また前記副弁にはその一端側が前記プランジャによって開閉される副脱圧路が前記プランジャおよび前記主弁の脱圧路と同軸で貫通して形成され、さらに副弁は前記プランジャの移動に伴って前記副脱圧路が前記主弁の脱圧路と連続する状態と離間する状態との間で移動可能とされることにより、前記プランジャの移動に起因して各作動室に生じる圧力変動状況が、前記ポートの開閉状況に応じて第1室から第2室あるいは第2室から第1室へと進行する構成であることを特徴とする請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項3】
前記副弁は、前記主弁とほぼ同一構造にて形成されていることを特徴とする請求項2に記載の流量制御装置。
【請求項4】
前記給圧路は前記主弁に形成され、かつ前記副給圧路は前記副弁に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項5】
前記一次圧流路、前記二次圧流路、前記ポート、前記主弁および前記背圧室が配された弁ケーシングと、前記プランジャを組み込んだソレノイドユニットとを備え、
前記弁ケーシングと前記ソレノイドユニットとの間には、前記副弁とこの副弁によって区画された前記第1室および前記第2室とを配することで、全体がユニット化された拡張ユニットが介在されることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項6】
前記一次圧流路、前記二次圧流路、前記ポートおよび前記主弁が配された弁ケーシングと、前記プランジャを組み込んで前記弁ケーシングとの間に前記背圧室を形成した状態で前記弁ケーシングに装着されるソレノイドユニットと、前記弁ケーシングおよび前記ソレノイドユニットの外部に配置された作動部とを備え、
この作動部内にはダイアフラム弁と、前記背圧室とは第1連通路を介して連通する前記作動室とが設けられることにより、前記プランジャの移動に起因して前記背圧室内に生じる圧力変動に応じて前記作動室内の容量が拡張・収縮する構成であることを特徴とする請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項7】
前記作動部内は、前記ダイアフラム弁によって前記作動室と背圧空間とに区画され、前記作動室内には前記ダイアフラム弁を前記背圧室側へ移動させるよう作用するばねが設けられる一方、前記背圧空間は前記一次圧流路に対して第2連通路を介して接続されていることを特徴とする請求項6に記載の流量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−67791(P2012−67791A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210780(P2010−210780)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000108557)タイム技研株式会社 (15)
【Fターム(参考)】