説明

浄水供給装置

【課題】不純物を効果的に除去することができる。
【解決手段】浄水供給装置は、取水部と、浄水部と、給水部とを備える。取水部は、原水を取り入れる。浄水部は、取水部によって取り入れられた原水を処理して浄水を生成する。給水部は、浄水部によって生成された浄水を供給する。浄水部は、カーボンフィルターを有するカーボンフィルターユニットと、イオン交換膜を有するイオン交換膜ユニットと、逆浸透膜を有する逆浸透膜ユニットと、から選択される少なくとも2種類のユニットが直列に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1(特許第3420202号)に開示されるように、水道水などの原水を処理して浄水を生成する浄水装置として、原水を逆浸透膜に透過させて浄水(透過水)と濃縮水(非透過水)とに分離する逆浸透膜式の濾過手段を備える浄水装置が広く用いられている。逆浸透膜式の浄水装置は、孔径が一般的に2nm以下の逆浸透膜を用いる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、原水に多量の不純物が含まれている場合、逆浸透膜式の浄水装置を用いて生成された浄水に、許容量以上の不純物が依然として含まれている可能性がある。例えば、放射性降下物によって汚染されている原水を、逆浸透膜式の浄水装置を使用して濾過処理する場合、放射性物質が法定基準値未満まで除去された浄水を確実に生成することは難しい。そこで、そのような場合に備えて、従来の浄水装置と比べて、原水に含まれている不純物を除去する効果が高い浄水装置の開発が求められてきた。
【0004】
本発明の目的は、不純物を効果的に除去することができる浄水供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る浄水供給装置は、取水部と、浄水部と、給水部とを備える。取水部は、原水を取り入れる。浄水部は、取水部によって取り入れられた原水を処理して浄水を生成する。給水部は、浄水部によって生成された浄水を供給する。浄水部は、カーボンフィルターを有するカーボンフィルターユニットと、イオン交換膜を有するイオン交換膜ユニットと、逆浸透膜を有する逆浸透膜ユニットと、から選択される少なくとも2種類のユニットが直列に連結される。
【0006】
本発明に係る浄水供給装置では、浄水部は、原水を濾過して浄水を生成するフィルターを有するユニットが、少なくとも2種類、直列に連結されている。従って、本発明に係る浄水供給装置は、原水に含まれる種種の不純物を効果的に除去することができる。
【0007】
また、本発明に係る浄水供給装置では、浄水部は、逆浸透膜ユニットを有し、かつ、逆浸透膜ユニットは、逆浸透膜を透過する直前の原水の導電率を測定する第1メータと、逆浸透膜を透過した直後の原水の導電率を測定する第2メータとを有することが好ましい。
【0008】
この態様の浄水供給装置では、第1メータおよび第2メータは、原水の導電率を測定することによって、原水に溶解している不純物の濃度を計測することができる。従って、この態様の浄水供給装置は、逆浸透膜ユニットによる不純物の除去効果を検知することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る浄水供給装置は、不純物を効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る浄水供給装置の概略構成図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る浄水供給装置の概略構成図。
【図3】本発明の第3実施形態に係る逆浸透膜ユニットの概略構成図。
【図4】本発明の変形例Aに係る浄水供給装置の概略構成図。
【図5】本発明の実施例Aに係る浄水部の概略構成図。
【図6】本発明の実施例Aに係る濃縮装置の概略構成図。
【図7】本発明の実施例Bに係る浄水部の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
(1)構成
本発明の第1実施形態に係る浄水供給装置10の概略構成図を図1に示す。浄水供給装置10は、原水である水道水を取り入れ、水道水から不純物を除去して浄水を生成し、浄水を浄水供給装置10の利用者に供給する。水道水に含まれる不純物は、例えば、イオン、塩類、細菌およびウイルスである。浄水供給装置10は、例えば、オフィスおよび家庭内に設置されるウォーターサーバー、および、スーパーマーケットに設置される業務用の浄水自動販売機として使用される。
【0012】
浄水供給装置10は、主として、取水部20と、浄水部30と、給水部40とから構成される。取水部20は、水道水を供給する水道管22に接続される。水道管22は、水道水の供給を開始または停止するバルブ22aを有する。取水部20は、水道水を水道管22から浄水部30に送るための管路である。浄水部30は、取水部20から送られた水道水を処理して浄水を生成する装置である。給水部40は、浄水部30によって生成された浄水を、浄水供給装置10の利用者に供給する装置である。給水部40は、浄水保存用の容器42を載置する載置台41と、載置台に載置された容器42に浄水を注水する注水装置43とを有する。
【0013】
浄水部30の詳細な構成について説明する。浄水部30は、カーボンフィルターユニット31、イオン交換膜ユニット32および逆浸透膜ユニット33をそれぞれ1基有する。カーボンフィルターユニット31は、取水口31aから原水を取り入れ、カーボンフィルターで濾過された原水を送水口31bから送出する。カーボンフィルターユニット31では、原水に含まれる不純物が、カーボンフィルターに含まれる活性炭に吸着される。イオン交換膜ユニット32は、取水口32aから原水を取り入れ、イオン交換膜で濾過された原水を送水口32bから送出する。イオン交換膜ユニット32では、陽イオン交換膜フィルターと陰イオン交換膜フィルターとが交互に配置された容器内の原水に電圧を印加することで、原水が、イオン濃度が薄い濾過された原水と、イオン濃度が濃い濃縮された原水とに分離される。逆浸透膜ユニット33は、取水口33aから原水を取り入れ、逆浸透膜で濾過された原水を送水口33bから送出する。逆浸透膜ユニット33では、加圧ポンプにより圧送された原水が、逆浸透膜を透過して濾過された原水と、逆浸透膜を透過せずに濃縮された原水とに分離される。
【0014】
浄水部30では、図1に示されるように、カーボンフィルターユニット31、イオン交換膜ユニット32および逆浸透膜ユニット33が、この順番で直列に連結されている。すなわち、取水部20はカーボンフィルターユニット31の取水口31aに接続され、カーボンフィルターユニット31の送水口31bはイオン交換膜ユニット32の取水口32aに接続され、イオン交換膜ユニット32の送水口32bは逆浸透膜ユニット33の取水口33aに接続され、逆浸透膜ユニット33の送水口33bは給水部40に接続される。取水部20から送られた原水である水道水は、浄水部30において、カーボンフィルターユニット31、イオン交換膜ユニット32および逆浸透膜ユニット33を順に通過する濾過処理過程で不純物が除去されて、給水部40において、浄水供給装置10の利用者に浄水として供給される。
【0015】
(2)特徴
(2−1)
本発明の第1実施形態では、原水である水道水は、カーボンフィルターユニット31、イオン交換膜ユニット32および逆浸透膜ユニット33を順に通過する濾過処理過程で不純物が除去される。従って、逆浸透膜ユニット33のみを備える浄水供給装置と比べて、本実施形態に係る浄水供給装置10は、原水から不純物を効果的に除去することができる。
【0016】
(2−2)
本発明の第1実施形態では、浄水部30は、カーボンフィルターユニット31、イオン交換膜ユニット32および逆浸透膜ユニット33を有する。カーボンフィルターユニット31は、カーボンフィルターの網目の孔径が、ヨウ素131およびセシウム137などの一部の放射性物質の原子半径より小さい。そのため、カーボンフィルターによる濾過処理によって、水道水に含まれている一部の放射性物質を除去することができる。また、イオン交換膜ユニット32は、水道水中にイオンとして溶解している放射性物質を、イオン交換膜を用いた電気分解によって除去することができる。また、逆浸透膜ユニット33は、逆浸透膜の孔径が放射性物質の原子半径よりも小さいので、水道水を逆浸透膜に透過させることによって、水道水に含まれている放射性物質を除去することができる。従って、浄水供給装置10は、放射性降下物などの放射性物質で汚染されている水道水から、放射性物質を効率的に除去することができる。
【0017】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る浄水供給装置について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0018】
(1)構成
本実施形態では、第1実施形態と同様に、浄水部30は、カーボンフィルターユニット31、イオン交換膜ユニット32および逆浸透膜ユニット33をそれぞれ1基有するが、浄水部30の逆浸透膜ユニット33、および、給水部40は、浄水自動販売機50を構成する。浄水自動販売機50は、逆浸透膜ユニット33および給水部40をケーシング内に有する、独立して稼動可能な浄水供給装置である。浄水自動販売機50は、スーパーマーケットなどに設置され、利用者が所定の金額を支払うことで、利用者が支払った金額に応じた量の浄水を、利用者が所有する専用の容器に注水する装置である。
【0019】
本実施形態における浄水自動販売機50の概略構成図を、図2に示す。図2において、第1実施形態と同一の構造および機能を有する要素には、同一の参照符号が用いられている。浄水自動販売機50は、逆浸透膜ユニット33および給水部40から構成される。カーボンフィルターユニット31およびイオン交換膜ユニットは、浄水自動販売機50の外部に設置されるユニットである。浄水自動販売機50は、一般的な飲料の自動販売機と同様の外観を有し、正面に容器42を置くための載置台41を備え、載置台41の前面に扉51が設けられている。また、浄水自動販売機50の正面に、コイン投入口52、および、注水ボタン53が設けられている。浄水自動販売機50の利用者は、扉51を開けて載置台41に容器42を載せ、コイン投入口52に所定の金額のコインを投入し、注水ボタン53を押す。これにより、注水装置43は、載置台41上の容器42内に、浄水部30によって生成された浄水を所定の量だけ注入する。注水装置43は、電子制御される自動バルブなどである。
【0020】
(2)特徴
本発明の第2実施形態では、逆浸透膜式の浄水自動販売機50の取水口に、カーボンフィルターユニット31およびイオン交換膜ユニット32を連結することで、水道水に含まれる不純物の除去効果を向上させることができる。
【0021】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る浄水供給装置について、第1および第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0022】
(1)構成
本発明の第3実施形態では、浄水部30が有する逆浸透膜ユニット33は、2基のTDSメータを有する。TDS(total dissolved solid)メータは、水の導電率の測定値に基づいて、水中に溶解している不純物の濃度を計測する装置である。図3に示されるように、逆浸透膜ユニット33は、第1TDSメータ33c1および第2TDSメータ33c2が、逆浸透膜からなる逆浸透膜フィルター33cの近傍の配管に取り付けられている。第1TDSメータ33c1は、逆浸透膜フィルター33cを透過する直前の原水の不純物の濃度を計測する。第2TDSメータ33c2は、逆浸透膜フィルター33cを透過した直後の浄水の不純物の濃度を計測する。
【0023】
(2)特徴
本発明の第3実施形態では、逆浸透膜フィルター33cを透過する直前の原水、および、逆浸透膜フィルター33cを透過した直後の浄水に含まれる不純物の濃度を測定することができる。従って、本実施形態では、逆浸透膜による不純物の除去効果を検知することができる。
【0024】
<変形例>
以上、本発明の第1乃至第3実施形態について説明したが、本発明の具体的構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で変更可能である。次に、本実施形態に係る浄水供給装置に対する適用可能な変形例について説明する。
【0025】
(1)変形例A
本発明の実施形態では、浄水部30は、カーボンフィルターユニット31、イオン交換膜ユニット32および逆浸透膜ユニット33をそれぞれ1基有するが、浄水部30は、カーボンフィルターユニット31、イオン交換膜ユニット32および逆浸透膜ユニット33の内、少なくとも2種類のユニットが直列に連結される構成であれば、各ユニットの台数およびユニット間の接続形態に制限はない。
【0026】
本発明の実施形態とは異なるユニット構成の例を、図4に示す。図4に示される浄水供給装置110では、浄水部130は、並列に接続された2基のイオン交換膜ユニット32と、1基の逆浸透膜ユニット33とが直列に接続された構成を有する。
【0027】
(2)変形例B
本発明の実施形態では、浄水部30は、カーボンフィルターユニット31、イオン交換膜ユニット32および逆浸透膜ユニット33を有するが、これらのユニットが有する交換可能な濾過部材は、ケーシングによって覆われていてもよい。
【0028】
例えば、カーボンフィルターユニット31のカーボンフィルター、イオン交換膜ユニット32のイオン交換膜、および、逆浸透膜ユニット33の逆浸透膜のような交換可能な濾過部材は、防錆剤が塗布された金属板、および、ステンレス鋼などで成形されたケーシングに収容されていてもよい。本発明に係る浄水供給装置では、長期間の使用によって、濾過部材に有害物質が付着している可能性がある。本変形例では、濾過部材の交換時に、濾過部材をケーシングごと取り出すことができるので、濾過部材に付着した有害物質に触れることなく濾過部材を交換することができる。
【0029】
また、本変形例の他の態様として、浄水部30は、イオン交換膜ユニット32および逆浸透膜ユニット33による濾過処理過程において生成される、原水中の不純物が濃縮された濃縮水を、上述のケーシング内に貯留する機構を有してもよい。これにより、有害な不純物が濃縮された濃縮水を、ケーシングごと安全に処分することができる。
【0030】
(3)変形例C
本発明の第3実施形態では、逆浸透膜ユニット33は、第1TDSメータ33c1および第2TDSメータ33c2を有するが、カーボンフィルターユニット31、イオン交換膜ユニット32がTDSメータを有してもよい。
【0031】
例えば、図1に示される本発明の実施形態において、カーボンフィルターユニット31の送水口31bとイオン交換膜ユニット32の取水口32aとを接続する配管、および、イオン交換膜ユニット32の送水口32bと逆浸透膜ユニット33の取水口33aとを接続する配管に、TDSメータを取り付けて、各ユニットを通過した水道水に含まれる不純物の濃度を測定してもよい。これにより、各ユニットが有する不純物の除去能力を定期的に検知することができるので、異常が発生したユニットを容易に特定することができる。
【0032】
(4)変形例D
本発明の第3実施形態では、逆浸透膜ユニット33は、第1TDSメータ33c1および第2TDSメータ33c2を有するが、カーボンフィルターユニット31、イオン交換膜ユニット32および逆浸透膜ユニット33は、各ユニット内部の配管を流れる原水および浄水の水質を測定するための他の種類のメータを有してもよい。
【0033】
例えば、水道水に含まれている放射性物質を除去する目的で、本発明に係る浄水供給装置を使用する場合、水中の放射線量を計測するメータを、各ユニット内部の配管に取り付けてもよい。これにより、各ユニットが有する放射性物質の除去能力を検知することができる。
【0034】
(5)変形例E
本発明の実施形態では、浄水部30は、カーボンフィルターユニット31、イオン交換膜ユニット32および逆浸透膜ユニット33を有するが、浄水部30は、これらのユニットによって濾過処理される原水の流量を測定する流量計を有してもよい。
【0035】
例えば、逆浸透膜ユニット33内部の配管に取り付けられた流量計を用いて、逆浸透膜によって濾過処理された原水の流量を監視し、当該流量に応じて、逆浸透膜ユニット33内部の加圧ポンプおよびバルブなどの自動制御を行ってもよい。また、この流量計を用いて、所定の量以上の原水が、浸透膜ユニット33の浸透膜を透過したことを検知した場合に、浸透膜フィルターを交換する旨の報知を行ってもよい。
【0036】
<実施例>
本発明に係る浄水供給装置を用いて、原水に含まれる放射性物質を除去して浄水を製造するための2種類の実験を行った。次に、これらの実験の詳細について説明する。
【0037】
(1)実施例A
第1の実験では、イオン交換膜ユニット、カーボンフィルターユニットおよび逆浸透膜ユニットが、この順番で直列に連結された浄水部を備える浄水供給装置を用いた。図5は、この浄水部130の概略構成図である。なお、浄水部130を除く浄水供給装置の構成は、第1実施形態と同様である。浄水部130では、後述する第2貯水タンク152bに貯留された原水が、イオン交換膜ユニット132、カーボンフィルターユニット131および逆浸透膜ユニット133を順に通過する。そして、逆浸透膜ユニット133から、浄水である濾過水と、排水とが生成される。
【0038】
本実施例では、水道水から原水を作成した。具体的には、図6に示されるように、2つの逆浸透膜ユニット151a,151bおよび2つの貯水タンク152a,152bを備える濃縮装置150を用いて、極微量の放射性物質を含む水道水から、放射性物質が濃縮された原水を作成した。最初に、濃縮装置150では、水道水は、第1逆浸透膜ユニット151aの逆浸透膜を通過する。第1逆浸透膜ユニット151aは、水道水に含まれる極微量の放射性物質を濾過して、第1濾過水と第1排水とを生成する。第1濾過水は、水道水よりも放射性物質の濃度が低い水である。第1排水は、水道水よりも放射性物質の濃度が高い水である。次に、第1排水は、第1貯水タンク152aに貯留され、第2逆浸透膜ユニット151bの逆浸透膜を通過する。第2逆浸透膜ユニット151bは、第1排水に含まれる放射性物質を濾過して、第2濾過水と第2排水とを生成する。第2濾過水は、第1排水よりも放射性物質の濃度が低い水である。第2排水は、第1排水よりも放射性物質の濃度が高い水である。次に、第2排水は、第2貯水タンク152bに貯留され、浄水部130に供給される原水として用いられる。
【0039】
本実施例では、濃縮装置150を用いて、検出下限値未満の放射性物質を含む水道水から、放射性物質が濃縮された第2排水を生成および貯留して、浄水部130に供給する原水として用いた。なお、検出対象の放射性物質は、ヨウ素131、セシウム134およびセシウム137である。濃縮装置150によって放射性物質が濃縮された「原水」、および、浄水部130によって放射性物質が除去された原水である「浄水」の実験による測定結果を、次の表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1において、131I、134Csおよび137Csの列のデータは、それぞれ、ヨウ素131、セシウム134およびセシウム137に由来する放射能の量を表す。なお、表中の「ND」は、放射能を検出できなかったことを表す。表1から、浄水部130は、原水の放射能を検出下限値未満まで低下させる効果を有することが確認された。
【0042】
また、表1において、「電気伝導率」は、放射性物質やミネラル等の水中における含有量に応じて変化するパラメータである。純水、または、不純物をほとんど含まない水は、電気を通しにくいので低い電気伝導率を示し、一方、不純物を多く含む水は、電気を通しやすいので高い電気伝導率を示す。本実施例では、浄水の電気伝導率は、原水の電気伝導率に比べて、著しく低い値を示した。従って、浄水部130は、原水に含まれる放射性物質等の不純物のほとんどを除去できる効果を有することが確認された。
【0043】
(2)実施例B
第2の実験では、イオン交換膜ユニット(軟水器)および逆浸透膜ユニットが、この順番で直列に連結された浄水部を備える浄水供給装置を用いた。図7は、この浄水部230の概略構成図である。なお、浄水部230を除く浄水供給装置の構成は、第1実施形態と同様である。浄水部230では、原水である水道水が、イオン交換膜ユニット232および逆浸透膜ユニット233を順に通過して、浄水が生成される。なお、逆浸透膜ユニット233は、浄水と共に排水を生成する。イオン交換膜ユニット232は、通水により、イオン交換膜のイオン吸着能力が低下して濾過機能を失う。そこで、本実施例では、イオン交換膜ユニット232に水素イオンまたは水酸化物イオンを含む水を通過させることで、イオン交換膜ユニット232を定期的に再生させる処理を行った。
【0044】
また、浄水部230は、第1TDSメータ233c1、第2TDSメータ233c2および第3TDSメータ233c3の3つのTDSメータを備える。図7に示されるように、第1TDSメータ233c1は、イオン交換膜ユニット232の取水口に接続される配管に取り付けられる。第2TDSメータ233c2は、イオン交換膜ユニット232の送水口と、逆浸透膜ユニット233の取水口とを接続する配管に取り付けられる。第3TDSメータ233c3は、逆浸透膜ユニット233の送水口に接続される配管に取り付けられる。TDSメータ233c1〜233c3は、イオン交換膜ユニット232または逆浸透膜ユニット233を通過する直前の水、および、通過した直後の水の電気伝導率を測定して、水中に含まれる不純物の濃度を測定する。
【0045】
実施例Aで使用された原水に含まれる放射性物質の量は、摂取制限値と比べて微量であった。本実施例では、原水として、摂取制限値を超える放射性物質を含む水を使用することを試みた。しかし、安全上の観点から、放射性物質を含む水の代わりに、ヨウ化カリウム(KI)および硝酸セシウム(CsNO3)を溶解させた水道水を原水として用いた。そして、原水に含まれるヨウ素イオンおよびセシウムイオンを、擬似的な放射性物質とみなして、浄水部230がヨウ素イオンおよびセシウムイオンを原水から除去する効果を測定した。擬似的な放射性物質を含む「原水」、および、本実施例に係る浄水部230のイオン交換膜ユニット232によって擬似的な放射性物質が除去された原水である「濾過水」の実験による測定結果を、次の表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2から、イオン交換膜ユニット232によって、原水に含まれるヨウ素イオンは、約45%除去され、原水に含まれるセシウムイオンは、約99%除去された。すなわち、イオン交換膜ユニット232は、原水に含まれる放射性セシウム(134Csおよび137Cs)のほとんどを除去する効果を有することが確認された。
【0048】
同様に、擬似的な放射性物質を含む「原水」、および、本実施例に係る浄水部230の逆浸透膜ユニット233によって擬似的な放射性物質が除去された原水である「濾過水」の実験による測定結果を、次の表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
表3から、逆浸透膜ユニット233によって、原水に含まれるヨウ素イオンは、約99%除去され、原水に含まれるセシウムイオンは、約95%除去された。すなわち、逆浸透膜ユニット233は、原水に含まれる放射性ヨウ素(131I)および放射性セシウム(134Csおよび137Cs)のほとんどを除去する効果を有することが確認された。従って、浄水部230では、イオン交換膜ユニット232を通過した濾過水中に残留している放射性物質は、逆浸透膜ユニット233によって再度除去されるので、最終生成物である浄水中には放射性物質はほとんど残留していないものと考えられる。
【0051】
なお、表2に示されるように、イオン交換膜ユニット232は、放射性セシウムの除去率に比べて放射性ヨウ素(131I)の除去率は低かった。しかし、ヨウ素131の半減期は8.02日であり、セシウム134の半減期2.06年およびセシウム137の半減期30.2年に比べて短く、かつ、ヨウ素131のほとんどは崩壊によって安定同位体のキセノン131に推移する。そのため、ヨウ素131に由来する放射性物質は、たとえ浄水中に残留していても、時間の経過に伴ってほとんど存在しなくなると考えられる。
【0052】
また、本実施例では、イオン交換膜ユニット232のイオン交換膜の再生を一日一回行った。これにより、原水に含まれるセシウムイオンの除去率が安定的に保たれることが確認された。なお、イオン交換膜の再生処理において生成された排水には、イオン交換膜ユニット232によって除去されたセシウムイオンが含まれていた。
【0053】
また、本実施例では、TDSメータ233c1〜233c3を用いて、イオン交換膜ユニット232および逆浸透膜ユニット233の状態を監視した。すなわち、各ユニット232,233を通過する直前、および、通過した直後の水の電気伝導率を測定することで、水に含まれるイオン濃度の変化を間接的に測定した。そして、TDSメータ233c1〜233c3による測定値に異常が見られない場合に、浄水部230から浄水が供給される機構を使用した。このように、各ユニット232,233による放射性物質の除去効果の低下をリアルタイムに監視することによって、浄水部230の保守を効率的に行うことができた。
【符号の説明】
【0054】
10 浄水供給装置
20 取水部
30 浄水部
31 カーボンフィルターユニット
32 イオン交換膜ユニット
33 逆浸透膜ユニット
33c1 第1メータ(第1TDSメータ)
33c2 第2メータ(第2TDSメータ)
40 給水部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特許第3420202号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を取り入れる取水部と、
前記取水部によって取り入れられた原水を処理して浄水を生成する浄水部と、
前記浄水部によって生成された浄水を供給する給水部と、
を備え、
前記浄水部は、カーボンフィルターを有するカーボンフィルターユニットと、イオン交換膜を有するイオン交換膜ユニットと、逆浸透膜を有する逆浸透膜ユニットと、から選択される少なくとも2種類のユニットが直列に連結される、
浄水供給装置。
【請求項2】
前記浄水部は、前記逆浸透膜ユニットを有し、
前記逆浸透膜ユニットは、前記逆浸透膜を透過する直前の原水の導電率を測定する第1メータと、前記逆浸透膜を透過した直後の原水の導電率を測定する第2メータとを有する、
請求項1に記載の浄水供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−223753(P2012−223753A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243372(P2011−243372)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】