説明

浄水発生土を利用したブロック及びその製造方法

【課題】 本発明は、浄水場から排出される浄水発生土を利用して、一定強度を保つと共に透水性等に優れるブロック体を提供する。
【解決手段】 本発明浄水発生土を利用したブロックは、天日乾燥又は強制乾燥させて水分含量10wt%以下とした浄水発生土と山砂とを、約6:4〜4:6の割合で混合した土粒子と、総重量割合で5〜15%としたポルトランドセメントと、ノニオン系界面活性剤及び顔料等の添加剤とを混合、固化させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場から排出される浄水発生土を利用して、一定強度を保つと共に透水性等に優れるブロック体に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場では、河川から引いて飲み水にする過程で沈降した土砂と分離した土、即ち浄水発生土が多量に発生する。
そして、この浄水発生土は、従来、一部は農園芸用の倍土や、道路埋め戻し材や、セメント原料に利用されるが、残りは産業用廃棄物として処分場で埋め立て処理されている。
例えば、特許文献1には、浄水場発生土を乾燥して粉体化、造粒し、これに加水硬化材料として硫酸カルシウム1/2水和物を加えて混合し、透水性簡易舗装材料とする技術が提案されている。
又、特許文献2には、浄水発生土を対象としたものではないが、土系舗装材と、フライアッシュと、セメントを混合したものを表面層とした雑草防止舗装構造が提案されている。
【特許文献1】特開2005−127070
【特許文献2】特開2002−275814
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の技術では、硫酸カルシウム水和物を硬化材料とする固化物は耐久性に乏しく、構造材としては不適である。
又、特許文献2のセメント原料として混合させる処理では、10%以下程度しか対象物を混入できず、それ以上の混合割合とすると、セメントとしての強度が発揮できないという欠点を残していた。
更に、農園芸用の倍土や、道路埋め戻し材としての用途は限定的であり、多くは埋め立て処理されるのが現状で、しかしこの埋め立て処理は、費用が甚大であると共に環境的にも好ましい処理ではなかった。
そこで、本発明は、この浄水発生土の利用を研究し、50%程度の高い割合で混入でき、且つ、歩道用ブロック等の使用に耐え得る強度の発揮できるブロック体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、請求項1記載の浄水発生土を利用したブロックは、天日乾燥又は強制乾燥させて水分含量10wt%以下とした浄水発生土と山砂とを約6:4〜4:6の割合で混合した土粒子と、総重量割合で5〜15%としたポルトランドセメントと、ノニオン系界面活性剤及び顔料等の添加剤とから成ることを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の浄水発生土を利用したブロックは、浄水発生土と山砂とを、約1:1の割合で混合させて成る。
【0006】
請求項3記載の浄水発生土を利用したブロックの製造方法は、浄水発生土を熱風乾燥破砕機にかけて水分60wt%以下の含水率で粒径を10〜30mmとし、これをキルンにかけて水分15wt以下の含水率とし、さらに粉砕機にかけて水分10wt%以下の粉粒体とし、上記粉粒体と山砂とを約6:4〜4:6の割合で混合し、これに総重量割合で5〜15%としたポルトランドセメントと、ノニオン系界面活性剤及び顔料等の添加剤とを混合し、固化させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のブロックは、浄水発生土を、適正に処理して水分10wt%以下の粉粒体としているので、その結果、山砂、ポルトランドセメント、ノニオン系界面活性剤とが有機的に関連して、浄水発生土を山砂との混合割合が6:4〜4:6となる高い割合で含めても、ブロック体として固化させることができ、浄水発生土を極めて有効に活用できる。
又、ブロック体としての適度な強度を保つことができ、例えば車道等には耐えられないが、歩道等には充分耐えられる強度を発揮し、且つ、透水性と保水性を備えて歩道用ブロックとした場合の排水性と冷却効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
そこで、この発明の実施の形態を説明する。
本発明は、保水性と透水性を兼備した無機質組成物として一体化するが、その構成は、山砂、ポルトランドセメントに、ノニオン系界面活性剤及び顔料等の添加剤から成る。
以下、該材料の特徴について記述した後、該材料で構成されるブロック1を説明する。
【0009】
浄水場からの処理土とは、河川から引いた水を原水とし、この原水を飲み水にするため土砂を薬品等で沈降、分離させ、これを濃縮、脱水、粉砕等したものをいう。
【0010】
例えば、埼玉県新三郷浄水場発生土の成分を示すと以下の通りである。
【表1】

【0011】
上記浄水場から排出される発生土には、天日乾燥させたものと、これに脱水処理を施したものとがある。
天日乾燥したものとは、残渣物を排水池に貯留させておき、ここに天日を当てて自然乾燥させるものをいい、一般的には80〜90%の含水率になるまでに半年程度を要する。
脱水処理した土とは、上記天日乾燥させたものを機械脱水機にかけて処理して50〜60%の含水率にしたものをいう。
そこで、上記天日乾燥させた発生土又は脱水処理した発生土を、乾燥粉砕機にかけて、例えば熱風乾燥炉と粉砕パドルを備えた乾燥粉砕機で、含水割合を約50wt%程度とし、同時に、発生土の粒径を10〜30mmとする。
【0012】
次いで、上記脱水処理した発生土にキルンでの強制乾燥を施す。一般に、キルンは、無機質廃棄物には焼結処理、有機質廃棄物には炭化処理を施すものであるが、本発明では、上記浄水発生土に対する、強制乾燥処理として活用する。
即ち、上記発生土を、キルンに投与して強制乾燥し、含水率を15wt%以下に落とす。この乾燥に際し、上記浄水発生土の粒径を10〜30mmとすることで、乾燥の効率が向上し、50wt%の高い含水率の発生土を15wt%以下の極めて低い含水率に低減させることができる。
【0013】
最後に、粉砕機にかけて、浄水発生土を粉粒体とすると共にその含水率を10wt%以下とする。
上記キルンによる強制乾燥で含水率を15wt%以下とすることで、当該粉砕機にかけるに際し、その粉砕を良好とする。即ち、含水率が20wt%以上のものをそのまま粉砕機にかけると、水分による粘り気が粉砕機への負荷を増大させ、熱を帯びさせて粉砕機の運転を困難にするが、含水率を15wt%以下とすることでこの粉砕を可能とする。
【0014】
山砂は、主として花崗岩などが風化してできた土で、火山灰などの粘土質を除いた骨材である。
その粒度は、1mmのふるい目下のものが用いられ、粗い粒径(1〜0.5mm)のものと、細かい粒径(0.5〜0.075mm)のものと、微粒径(0.075mm未満)のものとが分布し、各粒子間にランダムに僅かな空隙が形成されるので、ポーラス状で空気や水が保存できる。透水性を高めるためには、均等係数が小さく、均一で粗い粒径の骨材を多くすることが必要であるが、コスト高となるため粒度分布を持たせて透水性の確保を図った。
【0015】
ポルトランドセメントは、山砂の表面を実質的に囲繞し、山砂の各粒子を結合して、多数の空隙を形成する。ポルトランドセメントは山砂その他も一体に固化し、ブロック1をポーラス状に保持する役割を担っている。しかしながら、ポルトランドセメントは骨材間の接合力を大きく保持できるが、それ自体が団子状、塊状になり易く、空隙を埋め易いので、使用量は少量が望ましい。
【0016】
ノニオン系界面活性剤は、山砂の濡れ性を高め、山砂の表面にポルトランドセメントを均一に分散させ、水の表面張力を抑えて均一な保水と透水を可能とする性状を保有する。ポルトランドセメントが山砂の表面において均一に分散されると、ブロック体として適度な強度が現れる。一方、ポルトランドセメントが山砂の表面において不均一であると、団子状、塊状となり、強度が強くなり過ぎて破砕が困難となり、不適である。
配合剤の濡れ性や分散性を高めることを担うノニオン系界面活性剤は、例えばオーストラリアのデプコ・プティ・リミテッド社(DEBCO.PTY.LIMITED)製のサチュライドなどノニルフェニルエーテル系重合体で炭素数6〜7のものを利用することができる。
【0017】
その製造は、組成混合物に水を加えながら撹拌機で撹拌し、ブロック1に調整し、加圧成形し、約2日間養生すると、該ブロック1は自然固化し、次第に硬度を増し、ブロック体を形成する。
【0018】
以上に記述した各材料の特徴を踏まえ、本発明である保水性と透水性を兼備したブロック1の配合と成形方法について説明する。
【実施例1】
【0019】
上記三郷浄水場で排出された残土を脱水機にかけて含水率を50wt%とした浄水発生土を対象とし、これを乾燥破砕機にかけて含水率を48wt%とすると共にその粒径を10〜30mmとした。これをキルンにかけて強制乾燥し、含水率を14wt%とした。更に、粉砕機にかけて粉粒体とし、その含水率を7wt%とした。
【表2】

【0020】
前記配合に基づき、無機質組成物のブロック体として一体化する製造方法を以下に説明する。
前記組成混合物に水を加えながら撹拌機で撹拌し、ブロック1に調整し、加圧成形し、2日間養生すると、該ブロック1は自然固化し、次第に硬度を増す。図1は固化後のブロック1である。
また、本発明ブロック体の曲げ強度は、ポルトランドセメントと山砂、ノニオン系界面活性剤の量や成形マシーンによる加圧力等で決められるが、ブロック体の廃棄時にクラッシャーなどで容易に破砕できるようにすることが望ましく、ブロック体の曲げ強度を3〜4MPaとする。
また、本発明の配合は、廃棄時には自然土に還元できる材料を使用し、そのままでも自然土に還元できるブロック体となっている。
【0021】
【表3】


上記表3は強度試験結果を表し、その結果によれば曲げ強度は 3.14Mpaを示し、耐久年数は約10年の使用に耐え、透水係数が3.0×10-4cm/secで、保水率が16.7wt%を示した。
【0022】
本発明ブロック及びその製造方法の作用効果を説明すると以下の通りとなる。
(1)本発明は、浄水発生土を、浄水発生土を熱風乾燥破砕機にかけて水分50wt%で粒径を10〜30mmとし、これをキルンにかけて水分15wt以下の含水率とし、さらに粉砕機にかけて水分10wt%以下の粉粒体としている。
その結果、山砂、ポルトランドセメント、ノニオン系界面活性剤とが有機的に関連して、浄水発生土を山砂との混合割合が6:4〜4:6となる高い割合で含めても、ブロック体として固化させることができ、浄水発生土を極めて有効に活用できる。
(2)上記ブロック体は、ブロック体としての適度な強度を保つことができ、例えば車道等には耐えられなくとも、歩道等には充分耐えられる強度を発揮する。上記強度試験にあっても、曲げ強度、3.14Mpaを示しておりこのことを裏付けている。
(3)そして、本発明ブロックは、上述の如く、ポーラス状で空気や水が保存でき、透水性と保水性を備えている。上記試験において、透水係数が3.0×10-4cm/secで、保水率が16.7wt%を示しており、透水性は歩道用ブロックとした場合、歩道の排水機能を高め、保水性は、歩道としての冷却効果を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、大きな荷重の加わる車道には適さないが、それを除いた歩道や公園等に広く応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のブロック体を示す斜視図。
【符号の説明】
【0025】
1 ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天日乾燥又は強制乾燥させて水分含量10wt%以下とした浄水発生土と山砂とを約6:4〜4:6の割合で混合した土粒子と、総重量割合で5〜15%としたポルトランドセメントと、ノニオン系界面活性剤及び顔料等の添加剤とから成ることを特徴とする浄水発生土を利用したブロック。
【請求項2】
浄水発生土と山砂を、約1:1の割合で混合させて成る請求項1記載の浄水発生土を利用したブロック。
【請求項3】
浄水発生土を熱風乾燥破砕機にかけて水分60wt%以下の含水率で粒径を10〜30mmとし、
これをキルンにかけて水分15wt以下の含水率とし、
さらに粉砕機にかけて水分10wt%以下の粉粒体とし、
上記粉粒体と山砂とを約6:4〜4:6の割合で混合し、
これに総重量割合で5〜15%としたポルトランドセメントと、ノニオン系界面活性剤及び顔料等の添加剤とを混合し、固化させたことを特徴とする浄水発生土を利用したブロックの製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−320825(P2007−320825A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155123(P2006−155123)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(596180423)日本硝子工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】