説明

浄水装置

【課題】菌類汚染の問題がなく、小型で安全な浄水装置を提供する。
【解決手段】逆浸透膜2を備えた浄水手段により、原水から透過水と濃縮水とを分離生成し、そのうちの透過水を供給する浄水装置において、逆浸透膜2に原水を供給する原水供給路11と、透過水を外部に供給する透過水供給路12とが設けられ、原水供給路11の開閉により、透過水供給路12からの給水の開始及び停止をさせる水栓13が、一カ所に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水を処理して生成した浄水を供給する浄水装置に係り、特に、逆浸透膜を利用して高品質な水を提供する浄水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康や環境に対して関心が高まっており、浄水や純水を製造する水処理システムの研究、開発が進んでいる。水処理システムとは水道法上の上水や井水などを原水としてそこから不純物を取除いて純度の高い水を得るシステムであり、海水の淡水化プラントや、水不足時あるいは災害時の飲料水供給システムなどに不可欠である。
【0003】
なかでも、原水から不純物を除去する手段として、逆浸透膜(ReverseOsmosis、ROとも呼ばれている)を利用した水処理システムは、医療施設や食品加工施設、さらには半導体の洗浄を行う工場など、高度な衛生管理が要求される施設において高い需要を得ている。
【0004】
この逆浸透膜とは、0.0001〜0.0005ミクロンという超微細孔を有する人工的な半透膜であり、水分子だけを選択的に透過させることができるものである。そのため、原水に含まれるダイオキシンや重金属、ウィルスといった非常に微細な不純物までも、高い除去率で除去することができ、極めて安全性の高い純水を作り出すことが可能である。
【0005】
一般的に、逆浸透膜を利用してRO水を吐水する浄水装置は、逆浸透膜の前に、前処理を施した上で、最終的にRO水を得る仕組みであった。例えば、特許文献1には、プリフィルター、カーボンフィルターを経由して、逆浸透膜による浄化を行う浄水装置が提案されている。
【0006】
ところで、旧来の逆浸透膜は、膜素材にセルロース系の素材が使われており、バクテリアによって侵食されてしまう可能性があった。そこで、新たな膜素材の研究が進み、ポリアミド系の素材が開発された。このポリアミド系の新素材の採用によって、逆浸透膜は、透過水量が増して除去性能も向上し、バクテリアに侵されることも無くなった。しかし、その反面、水中に存在する塩素によって、膜素材が侵食されてしまうという問題が生じてきた。
【0007】
これに対処するため、原水である水道水中の塩素除去を行う必要が出てきた。そこで、原水に存在する粗ゴミを除去するためにマイクロフィルターを採用し、塩素を除去するために活性炭フィルター等を採用することが、一般的な前処理方法として定着している。
【0008】
ところが、マイクロフィルターや活性炭フィルター等の多数のフィルターが、逆浸透膜の前処理として装備されると、装置の大型化を招き、家庭用の浄水装置には好ましくない。したがって、逆浸透膜本体に対しては、小型化が要求されることになった。
【0009】
装置の小型化を優先すると、逆浸透膜の単位時間当たりの透過水量は、一般的な家庭用装置では毎分100ccから200cc程度しか得られないことになる。そこで、透過水量の不足分を補うため、専用貯水タンクの併設が考案されている。
【0010】
貯水タンクとしては、開放型と空気圧型の2種がある。開放型の場合は、貯留中の水質の安全性の担保に問題が発生する可能性を否定できず、また、貯留する水量の制御と、タンクから給水するための送水用ポンプ等の併設が不可避であり、更なる装置の大型化につながり、経済性を損ねる。
【0011】
一方、空気圧型の場合は、オートシャットオフバルブと呼ばれる装置の開発により、タンク内圧力と、供給水圧力とのバランスにより、自動的に供給水が遮断されることから、従来の装置では多く採用されることとなった。
【0012】
このように、給水開始直後のRO水の水量確保を目的としてタンクを併設し、オートシャットオフバルブを採用した浄水装置の一例を、図10に示す。この浄水装置1は、逆浸透膜2の前にオートシャットオフバルブ3の一方の経路32を経由させ、透過水の経路に、他方の経路31を経由させるものである。かかる浄水装置1においては、透過水の経路には、オートシャットオフバルブ3の後流から分岐して、透過水貯水用のタンク4が設けられている。
【0013】
なお、図10中、SFはセディメントフィルタ、CFはカーボンフィルタ、PFはポストカーボンフィルタ、B1はボールバルブ、B2は逆止弁、B3は定流量弁である。また、SWは検出圧力に応じてON/OFFを切り替える圧力スイッチ、Pは圧力スイッチによってON/OFFされる加圧ポンプ、ADは加圧ポンプPを圧力スイッチSWを介して電源へ接続するためのACアダプター、CN1,CN2はコネクタである。
【0014】
かかる構成では、タンク4に一時貯水されたRO水が吐出利用された後、吐水口を閉とした直後において、装置内部における原水濾過工程は止まらず、浄化動作を続け、透過水はタンク4に流れ込み、タンク4が満杯になった時点で、圧力上昇のため、オートシャットオフバルブ3により原水給水が閉となり、機器全体が休止状態となる。そして、給水再開時には、まず、タンク4からの浄水が吐出利用されることにより、一定の水量が得られる。
【0015】
なお、タンク4の内圧が上昇するに従って、透過水がタンク4に流入する比率と、濃縮排水との比率において、透過水が流入する比率が少なくなり、タンク4が満杯となる直前では、ほとんどの原水は排出されることになる。
【0016】
また、加圧ポンプPは、低水圧の場合や、逆浸透膜2の性能を更に向上させるために、加圧装置として内蔵されている。この加圧ポンプPは、加圧ポンプP以降の内圧が一定圧力まで増大(タンク4が満杯となった場合も含む)したことが、圧力スイッチSWによって検知されると自動停止して、圧力が上がりすぎることによる装置への影響を防ぐ仕組みとなっている。
【特許文献1】特許2620574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記のように、タンクを併設することで、利用開始時に、タンク内貯留水を一気に利用できることになった。しかし、オートシャットオフバルブを機能させるためには、常に装置内に供給水圧をかけ続けなければならない。また、圧力ポンプを内蔵したとしても、タンク内が満水になり内圧が上昇するまでは、ポンプが運転し続ける構造であり、内水圧の上昇下降とオンオフの繰り返しによる部品類の劣化並びに漏水の可能性が、常に内包されていた。
【0018】
そして、タンク内に貯留される水についても、貯留中にタンク内側素材から溶出発生する臭気を除去するために、後処理活性炭フィルター(ポストカーボンフィルター)が併設される必要があった。このようなポストカーボンフィルターは、タンク内貯留時に発生する臭気の除去には効果が認められるものの、活性炭の細孔内や原水に混入する空気に生息する微生物、蛇口に残留している水滴からRO水に逆流して混入する微生物等が繁殖する可能性が大きくなり、最終的に蛇口から吐水する水質にも細菌汚染という大きな影響がでてしまう懸念があった。
【0019】
以上をまとめると、逆浸透膜を利用した浄水装置は、その分離性能を活かし、良質の透過水を得ることができる利点があったが、家庭用の浄水装置として適用するためには、以下のような問題があったといえる。
(1)タンクを装備していたので、臭気の溶出、臭気対策のために設置した後処理フィルターに起因する菌類汚染の可能性がある。
(2)後処理フィルターを別途備えるために、装置の大型化を招く。
(3)オートシャットオフバルブにより給水を停止させるため、常時内圧が上昇し、全ての部品類に常時内圧が掛かり続けるため、部品類の劣化、漏水の可能性がある。
(4)タンクを有しない装置においても、吐水口まで内圧がかかった構造である。
【0020】
本発明は、このような従来技術が有する課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、小型で菌類汚染の問題がなく、部品類の劣化や漏水の可能性が低い安全な浄水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、逆浸透膜により原水から透過水と濃縮水とを分離生成し、そのうちの透過水を供給する浄水装置において、前記逆浸透膜に原水を供給する原水供給路と、前記透過水を外部に供給する透過水供給路とを備え、前記原水供給路の開閉により、前記透過水供給路からの給水の開始及び停止をさせる開閉手段が、一カ所に設けられていることを特徴とする。
【0022】
以上のような発明では、給水停止時には、ユーザが一箇所の開閉手段を用いて原水の流入を停止させると、これに同期して透過水の供給も停止するので、装置内部には圧力がかからずに、停止状態となる。このため、圧力は全て開閉装置にのみかかり、開閉装置以降においては、装置は内圧から解放されるので、漏水の危険等を防止できる。タンク及びオートシャットオフバルブ、ポストカーボンフィルターを不要とすることにより、菌類汚染を防止しつつ、設備の小型化、低コスト化が可能となる。
【0023】
請求項2の発明は、請求項1の浄水装置において、前記開閉手段は、前記原水供給路を開閉する単一の操作手段を備えることを特徴とする。
【0024】
以上のような発明では、単一の操作手段によって、原水の供給の開始及び停止と給水の開始及び停止とを同期させることができるので、ユーザの操作性が向上する。
【0025】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の浄水装置において、、所定の水圧、流量若しくは水質によって開閉するスイッチと、前記スイッチによって作動を切り替える加圧ポンプとが設けられていることを特徴とする。
【0026】
以上のような発明では、開閉手段を開にすると、原水圧、原水量若しくは原水質が所定の値となったことがスイッチに検知され、加圧ポンプが動作して逆浸透膜への水圧が確保される。開閉手段を閉にすると、原水圧、原水量若しくは原水質が所定の値となったことがスイッチに検知され、加圧ポンプが停止する。タンク及びオートシャットオフバルブを用いた場合のように、高圧となるまで待って加圧ポンプを停止させる場合に比べて、装置への影響が少ない。
【0027】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項の浄水装置において、前記逆浸透膜への原水の流入口が、前記逆浸透膜の断面方向から見て、水流が環状の一方向となるように、複数設けられていることを特徴とする。
【0028】
以上のような発明では、複数の流入口を、水流が一方向となるように設けることによって、水流の干渉を防止しつつ、高水量を確保することができる。
【0029】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項の浄水装置において、原水の流入口から前記逆浸透膜への流路が、前記逆浸透膜の方向に傾斜していることを特徴とする。
【0030】
以上のような発明では、流入口からの原水が、少ない圧力損失で、逆浸透膜へ効率良く流れ込むので、高水量を維持できる。
【0031】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項の浄水装置において、前記原水供給路における前記逆浸透膜の手前には、活性炭フィルターが設けられ、前記活性炭フィルターは、活性炭の外周表面が不織布で覆われ、前記不織布は、細孔の口径が外側から内側にかけて小さくなる複層構造であることを特徴とする。
【0032】
以上のような発明では、不織布が活性炭の外周表面を覆うため、表面積が最大となり、混濁物質の捕捉面積が最大となる。また、不織布の細孔が、外側から内側にかけての口径が小さくなる複層構造であるため、混濁物質の捕捉効率が落ちにくくなる。
【0033】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項の浄水装置において、前記逆浸透膜を収容した筒状の容器と、前記容器の開口を閉止する蓋と、前記蓋を前記容器に固定する固定位置と、前記蓋を前記容器から解放する解放位置との間で、変位可能な固定具と、前記固定具を固定位置に付勢する付勢位置と、付勢を解除する解除位置との間で、変位可能な操作部と、を有することを特徴とする。
【0034】
以上のような発明では、固定具によって、容器に対して蓋を確実に固定できるとともに、操作部によって、簡単に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、小型で菌類汚染の問題がなく、部品類の劣化や漏水の可能性が低い安全な浄水装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)について、図面を参照して具体的に説明する。本実施形態は、本発明の逆浸透膜を利用した水処理システムを、家庭用の浄水装置に適用したものである。なお、上記の従来技術で説明した部材と同様の部材、一般的な部材等については、説明を省略する。
【0037】
〔実施形態の構成〕
まず、本実施形態の構成を説明する。すなわち、図1の系統図に示すように、本実施形態の浄水装置10は、水道水(原水)の供給路(原水供給路11)に、圧力スイッチSW、活性炭フィルターCF、逆浸透膜2、加圧ポンプPを設置したものであり、逆浸透膜2からの透過水の経路(透過水供給路12)には逆止弁B2、濃縮水の経路には定流量弁B3が設けられている。
【0038】
逆浸透膜2の前処理フィルターとして、活性炭フィルターCFのみを用いたのは、次の理由による。すなわち、経済産業省家庭用品品質表示法による家庭用浄水器の法的定義は、原水が水道水であると規定されている。この水道水は、混濁物質の混入は極めて少ない。このように、混入の少ない混濁物資の除去用に、大きな容積の前処理フィルターを装備する必要はない。
【0039】
一方、水道水には、0.1ppm以上の塩素混入が義務付けられている。上記のように、逆浸透膜2の性能と寿命に大きく影響するのは、水道水中の残留塩素である。そこで、残留塩素除去のための前処理フィルターとして、塩素除去用の活性炭フィルターCFを備えている。
【0040】
かかる活性炭フィルターCFにおいては、活性炭自体やその外周表面を覆う不織布によって、混濁物質を捕捉できる性能も期待できる。したがって、本実施形態においては、マイクロフィルターを割愛し、不織布と活性炭自体にその役目を負わせることにより、装置全体の小型化を図っている。
【0041】
なお、活性炭フィルターCFにおいては、混濁物質の捕捉面積が最大となるように、不織布が活性炭の外周表面を覆う筒状であり、表面積が最大となっている。また、活性炭の外周表面を覆う不織布は、外側から内側にかけての細孔に至るまで、口径が小さくなる(密度が高くなる)複層構造を採用することにより、混濁物質の捕捉効率が落ちにくい構造とすることができる。
【0042】
次に、逆浸透膜2としては、大型化を抑えつつも、水量を十分に確保できるものを採用する。例えば、業務用に利用されている大型の逆浸透膜を、最小限の長さに切断加工して利用する等が考えられる。
【0043】
また、逆浸透膜2を内蔵するためのベッセル(ハウジング=容器)としては、逆浸透膜2への給水をスムーズに、且つ逆浸透膜2までに至る水路において、減圧されることが極めて少ない構造とする。ベッセルの端部における蓋部分は、充分な圧力に耐える物理的構造とし、その素材は柔軟性且つ強度を保持する材質とする。
【0044】
例えば、水流を妨げない構造の一例を、図2及び図3に示す。図2及び図3において、21は逆浸透膜2を内蔵した筒状のベッセル、22は円形状の蓋であり、2aは逆浸透膜2の内部の透過水集水部である。蓋22に形成された逆浸透膜2への複数の流入口22aは、図2に示すように、水流が同一方向(図中、時計回り)となるように設けて、互いに干渉することがないようにする。
【0045】
この方向は、自然界の法則を応用し、北半球か南半球かに合わせて、時計回りにしても、反時計回りとしてもよく、最大限にその渦巻き力を応用できるようにする。また、図3に示すように、逆浸透膜2への流入口22a及びこれに続く流路の断面としては、やや逆浸透膜2の方向に傾斜し、圧力損失を軽減できる構造とする。
【0046】
また、材質の工夫としては、例えば、ベッセル21を、ステンレス素材において製造し、上記要件を満たしつつ、容積増大を最低限に抑える。さらに、ベッセル21端部の外周を補強する補強部材を設ける。
【0047】
さらに、ベッセル21の端部の開口を塞ぐ蓋22を、確実に固定するとともに、脱着作業を容易とするために、固定具23を設ける。この固定具23は、図4に示すように、その一部が破断されたリング状の部材である。固定具23は、樹脂、金属等の弾性を有する材質で形成されており、図3及び図4(A)に示すように、ベッセル21に形成された溝21aに嵌め込まれる方向(外側)へ、その弾性力が働いている。
【0048】
そして、固定具23における破断部には、内側へ突出した一対の操作部23aが設けられている。この操作部23aは、ユーザが指で摘んで近接する方向に寄せると、図4(B)に示すように、固定具23がその弾性力に抗して内側に変位するので、溝21aから外れて蓋22を取り外し可能となるように解放することができる。
【0049】
圧力スイッチSWは、加圧ポンプPをON/OFFさせるための最低水圧が0.01MPa付近の低い値に設定されている。これにより、圧力スイッチSWは、原水の流下が始まって最低水圧まで圧力が高まったことを持って、加圧ポンプPを作動させ、供給水の水圧が低下して最低水圧以下の圧力となったときに、加圧ポンプPを停止させることができる。
【0050】
さらに、原水供給路11の配管と透過水供給路12の配管の一部は、所定の一カ所においてまとめられ、水栓13に接続されている。この水栓13は、それぞれの配管に逆止弁を内蔵するとともに、図示はしない単一の操作手段(例えば、レバー、ハンドル等)によって、原水供給路11を開閉できる開閉手段である。この操作手段は、家庭のキッチン、洗面所、トイレ、風呂等における蛇口若しくはその近傍に設けられている。
【0051】
〔実施形態の作用〕
次に、上記のような構成からなる本実施形態の作用について説明する。まず、ユーザが逆浸透膜2による浄水を得る場合を説明する。初期状態においては、水栓13の操作手段は、止水状態にあり、その他の弁は開放されているものとする。
【0052】
この状態で、ユーザが、水栓13の操作手段を操作して、原水供給路11が通水するように水栓13を開く。すると、原水が原水供給路11に流入するので、活性炭フィルターCFを通過した原水から塩素等が除去される。圧力スイッチSWが、最低水圧まで内圧が高まったことを検知すると、加圧ポンプPが作動する。原水は、加圧ポンプPにより所定の圧力を得て逆浸透膜2を透過することにより、重金属類、化学物質類、溶解物質等が除去された透過水と、濃縮水とに分離される。透過水は蛇口に供給され、濃縮水は、濃縮水排出路を通って、排水される。
【0053】
次に、ユーザが逆浸透膜2による浄水の供給を停止する場合を説明する。すなわち、ユーザが、水栓13の操作手段を操作して、水栓13を閉じると、原水供給路11が遮断される。すると、原水供給路11の内圧が急激に低下して、最低水圧以下となったことが圧力スイッチSWに検出されると、加圧ポンプPが停止する。これにより、逆浸透膜2への圧力がなくなり、透過水供給路12が止水される。また、濃縮水は、濃縮水排出路を通って、排水される。
【0054】
さらに、再び、ユーザが逆浸透膜2による浄水を得る場合を説明する。すなわち、ユーザが、水栓13の操作手段を操作して、原水供給路11が通水するように水栓13を開くと、上記のように、加圧ポンプPが作動して、原水が活性炭フィルターCF、逆浸透膜2を透過することにより、透過水と、濃縮水とに分離される。透過水は蛇口に供給され、濃縮水は、濃縮水排出路を通って、排水される。
【0055】
〔実施形態の効果〕
以上のような本実施形態によれば、給水停止時には、ユーザが一箇所の水栓13を用いて原水の流入を停止させると、これに同期して透過水の供給も停止する。このため、原水の圧力は全て水栓13のみにかかり、水栓13以降においては、装置全体が内圧から解放されるので、部品類の劣化や漏水の危険等を防止できる。
【0056】
また、タンク及びオートシャットオフバルブを不要とすることにより、菌類汚染を防止しつつ(蛇口からの逆流による混入も含む)、設備の小型化、簡素化、低コスト化が可能となる。これは、特に、家庭内のようなスペースが制約された環境において、適したものとなる。加圧ポンプPは、タンク及びオートシャットオフバルブを機能させるために内圧を上昇させる必要がなくなり、空運転が避けられ、過熱による火災発生等のリスクから開放される。
【0057】
また、蓋22に形成された逆浸透膜2への複数の流入口22aから流入した原水流は、互いに干渉することがないので、高水量を確保できる。そして、流入口22aから逆浸透膜2への流路は、圧力損失が軽減できる構造なので、高水量を維持できる。
【0058】
また、水栓13が閉となっているとき、水栓13以降には水圧が掛からない構造であるため、蛇口部分は、日本水道協会が認定する給水器具を採用することにより、給水装置としての認証自体が不要となる。
【0059】
さらに、水栓13は、原水供給路11を開閉する単一の操作手段によって、原水の供給の開始及び停止と、給水の開始及び停止とを同時に実現できるので、ユーザの操作性が向上する。
【0060】
〔他の実施形態〕
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。開閉手段としては、原水供給路を開閉できる構造のものであれば、周知のあらゆる弁、栓等を使用可能である。同期とは、必ずしも同時でなくてもよく、比較的短時間に順次双方の開動作若しくは閉動作が行われるものであればよい。
【0061】
その操作手段も、レバー若しくはハンドルが一般的であるが、他の構造であってもよい。例えば、電磁弁や電動弁のように、ボタンスイッチの操作や、センサーによる対象検知に応じて、開閉する開閉手段を採用してもよい。
【0062】
この場合、例えば、開閉手段を、コンピュータ、タイマ等の制御装置に接続し、給水停止時においても、制御装置の記憶部にあらかじめ設定された時刻、時間若しくはタイミングで開閉手段を開くように、制御装置の指示部が指示することによって、原水を逆浸透膜に供給し、膜の乾燥と劣化を防止することも可能である。この時、透過水供給路12から透過水が供給されるようにしてもよいし、透過水供給路12にも、制御装置に接続された開閉手段を設け、これを原水供給路の通水に同期して閉じるようにしてもよい。
【0063】
圧力スイッチに設定する最低水圧についても、どのような値とするかは自由であり、上記の具体的な数値例には限定されない。上記の実施形態においては、所定の圧力を検出して加圧ポンプを動作させる構成であったが、所定の流量若しくは水質を検出して、加圧ポンプを動作させる構成であってもよい。すなわち、圧力スイッチの代わりに、流量スイッチを設け、流量スイッチに所定の水量を設定することにより、所定の水量になったことを待って、加圧ポンプを作動させ、所定の水量以下となったときに、加圧ポンプを停止させることができる。
【0064】
また、圧力スイッチの代わりに、水質スイッチを設け、水質スイッチに所定の水質を設定することにより、所定の水質となったことを待って、加圧ポンプを作動させ、所定の水質以下となったことを待って、加圧ポンプを停止させることができる。スイッチを動作させための圧力、水量、水質等、上記の各種の設定値に対する検出値の関係は、設定値よりも大きい、小さいとするか、以上、以下とするかは自由である。
【0065】
なお、圧力スイッチ、流量スイッチ、水質スイッチは、圧力、流量、水質を検出する検出器、所定の圧力、流量、水質を設定する設定部、切り替えを行うスイッチを、それぞれ別体で構成してもよいし、一体に構成してもよい。設定部については、コンピュータのメモリ等の記憶部によって構成し、コンピュータの指示部が、検出器からの検出値と記憶手段に設定された設定値に応じて、スイッチを切り替えるように構成してもよい。
【0066】
また、加圧ポンプ等を省略して、一般の水道の圧力のみで、通水させる装置であってもよい。活性炭フィルターを省略する等により、逆浸透膜のみの浄水装置としてもよい。
【0067】
逆浸透膜を収容したベッセルの蓋を固定する構造も、上記の実施形態で例示したものには限定されない。例えば、図5及び図6に示すように、固定具24を、溝21aに嵌め込まれる一対の円弧状の部材によって構成することも可能である。この一対の固定具24の対向部には、円弧状のガイド部24aが形成されている。ガイド部24aには、図7に示すように、付勢部25a及び腕部25bから成る操作部25が設けられている。
【0068】
付勢部25aは長円形の部材であり、ガイド部24a内に入り、回動することにより、ガイド部24aを外側に付勢する付勢位置と、付勢を解除する解除位置との間を変位可能に設けられている。腕部25bは、付勢部25aよりも長い長円形の部材である。
【0069】
かかる一対の固定具24は、図6及び図8(A)に示すように、付勢部25aが解除位置にある場合には、両者が接近して、溝21aから外れるので、蓋22を取り外し可能となる。そして、ユーザが腕部25bを使って、付勢部25aを回動させると、図5及び図8(B)に示すように、一対のガイド部24aが離れる方向に付勢されるので、一対の固定具24が外側に付勢されて、溝21aに嵌まるので、蓋22が固定される。なお、付勢部25aを柔軟な材質、弾力性のある材質とすれば、振動によるずれや外れが防止される。なお、操作部25とこれによる固定具24の付勢位置は、図9に示すように一カ所でもよいし、2より多くてもよい。
【0070】
また、ガイド部24a内を付勢部25aを回動させる代わりに、図10(A)に示すように、一対の固定具24のガイド部24aに、ネジ溝24bを形成し、このネジ溝24b内に、図10(B)に示すように、操作部26としてのネジをねじ込む構成とすることも可能である。この場合には、操作部26をねじ込むと、一対の固定具24が外側に付勢されて、溝21aに嵌まるので、蓋22が固定される。操作部26を緩めると、一対の固定具24が接近して、溝21aから外れるので、蓋22を取り外し可能となる。
【0071】
また、図11に示すように、一対の固定具24が、三角形状等の連結部によって連結されており、連結部の一部の破断部に、それぞれ対照なネジ溝を形成し、これを内部にネジが切られたスリーブ状の操作部27によって接続した構造としてもよい。かかる場合に、操作部27を一方向へ回転させると、連結部の当該辺が延びて外側へ圧力が加わるので、固定具24は外れない。他方向へ回転させると、当該辺は縮んで固定具24が内側へ撓むので、蓋22を取り外し可能となる。
【0072】
また、図12及び図13に示すように、一対の固定具24の内縁と、リング状の操作部28の外縁にネジが切られ、互いのネジが噛み合うように、操作部27をねじ込むことによって、固定具24が外側へ広がって固定されるようにしてもよい。固定具24には、例えば、図12(A)に示すように、左回転用の突起28a、右回転用の突起28bを形成することにより、回転操作をし易くすることも可能である。また、回転操作に工具を用いる場合には、例えば、図12(B)に示すように、円弧状に連続した突起28cを形成して、強度を高めてもよい。なお、一対の固定具24の分離部分は、上記の各実施形態では、左右の二カ所としているが、固定具23のように一カ所としもよい。
【0073】
さらに、本発明において、上記に例示した浄水手段の他、どのような浄水手段を追加、省略するかも自由である。また、逆浸透膜、ベッセル、蓋等の材質、大きさ、形状等も特定のものには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の浄水装置の一実施形態の構成を示す系統図である。
【図2】図1の実施形態に用いる逆浸透膜のベッセルの蓋を示す平面図である。
【図3】図2の逆浸透膜への水の流入口を示す断面図である。
【図4】図2の蓋の固定具を示す平面図であり、固定位置(A)、解除位置(B)を示す。
【図5】他の実施形態の蓋の固定具を示す平面図であり、固定位置を示す。
【図6】図5の固定具を示す平面図であり、解除位置を示す。
【図7】図5の固定具を付勢する操作部を示す斜視図である。
【図8】図6の操作部を示す平面図(A)、図5の操作部を示す平面図(B)である。
【図9】他の実施形態の蓋の固定具を示す平面図であり、固定位置を示す。
【図10】他の実施形態の蓋の固定具を付勢する操作部を示す断面図であり、解除位置(A)、固定位置(B)を示す。
【図11】他の実施形態の蓋の固定具を示す平面図である。
【図12】他の実施形態の蓋の固定具を示す平面図である。
【図13】図12の断面図である。
【図14】従来のオートシャットオフバルブを用いた浄水装置の一例を示す系統図である。
【符号の説明】
【0075】
1,10…浄水装置
2…逆浸透膜
2a…透過水集水部
3…オートシャットオフバルブ
4…タンク
11…原水供給路
12…透過水供給路
13…水栓
21…ベッセル
21a…溝
22…蓋
22a…流入口
23,24…固定具
23a,25,26,27,28…操作部
24a…ガイド部
24b…ネジ溝
25a…付勢部
25b…腕部
28a,28b,28c…突起
31,32…経路
AD…ACアダプター
B1…ボールバルブ
B2…逆止弁
B3…定流量弁
CN1,CN2…コネクタ
P…加圧ポンプ
SW…圧力スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜により原水から透過水と濃縮水とを分離生成し、そのうちの透過水を供給する浄水装置において、
前記逆浸透膜に原水を供給する原水供給路と、前記透過水を外部に供給する透過水供給路とを備え、
前記原水供給路の開閉により、前記透過水供給路からの給水の開始及び停止をさせる開閉手段が、一カ所に設けられていることを特徴とする浄水装置。
【請求項2】
前記開閉手段は、前記原水供給路を開閉する単一の操作手段を備えることを特徴とする請求項1記載の浄水装置。
【請求項3】
前記原水供給路には、所定の水圧、流量若しくは水質によって開閉するスイッチと、前記スイッチによって作動を切り替える加圧ポンプとが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の浄水装置。
【請求項4】
前記逆浸透膜への原水の流入口が、前記逆浸透膜の断面方向から見て、水流が環状の一方向となるように、複数設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の浄水装置。
【請求項5】
原水の流入口から前記逆浸透膜への流路が、前記逆浸透膜の方向に傾斜していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の浄水装置。
【請求項6】
前記原水供給路における前記逆浸透膜の手前には、活性炭フィルターが設けられ、
前記活性炭フィルターは、活性炭の外周表面が不織布で覆われ、
前記不織布は、細孔の口径が外側から内側にかけて小さくなる複層構造であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の浄水装置。
【請求項7】
前記逆浸透膜を収容した筒状の容器と、
前記容器の開口を閉止する蓋と、
前記蓋を前記容器に固定する固定位置と、前記蓋を前記容器から解放する解放位置との間で、変位可能な固定具と、
前記固定具を固定位置に付勢する付勢位置と、付勢を解除する解除位置との間で、変位可能な操作部と、
を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の浄水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−64032(P2010−64032A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234319(P2008−234319)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(500161443)株式会社環境向学 (8)
【Fターム(参考)】