説明

浮き床構造

【課題】床仕上げ板を用いるシート防水工法の浮く床構造において防水構造を2重にして雨水による防水シートの劣化、支持架台等部材のサビや劣化を防止し防水性を長期間確保すると共に、支持架台の防水下地への固定の信頼性を高め、施工コストを低減することができる浮き床構造。
【解決手段】防水下地1に熱可塑性樹脂製防水シート2を敷き並べ、該熱可塑性樹脂製防水シート上の所定位置に、台座31及び該台座から立設したボルト部32からなり台座及びボルト部下部を熱可塑性樹脂で被覆した支持架台3を防水下地に固定し、増し張りシート5で上記支持架台の台座を覆い、該増し張りシートと上記熱可塑性樹脂製防水シート及び上記支持架台の台座とを溶着し、パネル受け具6を上記支持架台のボルト部に螺合し、表面に溶着樹脂層81を有する複合パネル8を該パネル受け具に固定し、隣り合う上記複合パネルの間を防水処理する浮き床構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コンクリート系防水下地のシート防水工法において、床仕上げ板(本発明では複合パネルに該当する)を防水シート上に浮かして施工する浮き床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルの屋上はアスファルト防水の上に、コンクリートを流し込んだシンダー押さえ工法が主流であったが、近年の石油価格高騰と環境問題から、アスファルト防水シンダー押さえ工法が敬遠されつつあり、それに変わる塩ビシート防水シンダー押さえ工法が増える方向にある。また、最近では防水層の上に保護層としてのコンクリートを打設しない乾式の押さえ工法、浮き床工法などが提案されている。
【0003】
一般に、シート防水工事ではコンクリート系防水下地に防水シートを接着剤により接着固定、或いは固定金具を用いて機械的固定した後、隣り合った防水シート同士を接合して防水シートが施工される。上記乾式の押え工法は、施工された防水シート上に、1〜5mm厚みの発泡ポリエチレンシート、ポリエステル繊維やポリプロピレン繊維系の不織布、ポリエチレンを発泡させた格子状ネット等の緩衝材を敷設後、その上に、コンクリート系成形品、セラミック系焼成品、木質系品等の化粧兼歩行保護用床仕上げ板を、複数枚敷き並べていくものである。この乾式の押え工法で、防水シートを機械的固定する場合は、その固定金具の位置に上記床仕上げ板が載ると、段差によりガタツキが生じその調整をするために過大な手間が掛かり、さらに歩行等により床仕上げ板が損傷するなどの問題点も生じる。また、防水シートを機械的固定する押え工法では、下地の不陸を拾いやすく仕上がり状態も好ましいものではないという問題点がある。
【0004】
上記浮き床工法は、上述のように施工した防水シート上の所定位置に床仕上げ板設置用の高さ調整付き支持架台を載置或いは固定し、その支持架台に床仕上げ板を固定するものである。図5の如く支持架台は防水シート上に碁盤目のように配置され、1つの支持架台には4つの床仕上げ板の隅が載り、床仕上げ板の4隅がすべて別の支持架台に載るようにする。この浮き床工法では、表面はフラットとなり上述の押え工法に比べてきれいに仕上がるが、この工法は押え工法と比べると、防水シートを防水下地に施工して、それから支持架台を防水下地に固定し、さらに床仕上げ板を支持架台に固定するため、使用する部材、施工の工数が増えてコスト的に割高に成ってしまうという欠点があり、さらに、床仕上げ板面での防水は考慮されておらず、降雨時には防水シート面まで雨水が入ってくるため、防水シートと床仕上げ板との空間は高湿の状態になり易く、防水シートの劣化、支持架台等部材のサビや劣化が懸念され耐久性に課題が残る。
【0005】
浮き床工法では、床仕上げ板の固定部が仕上げ板の上面を突出しない固定工法(特許文献1)、防水シートに穴を開けずに支持部材を固定する方法(特許文献2)が提案されている。特許文献1の方法は床仕上げ板の側面に溝を設け、この溝に固定部を収納して固定部が仕上げ板の上面を突出しないようにしたものであり、特許文献2の方法は支持架台の下面に接合部材を設け、下地に施工された防水シートにこの接合部材を溶着して防水シートに孔を開けることなく支持架台を下地に固定する方法である。上述したような浮き床工法の問題点、すなわち使用する部材の削減、施工工数の低減、雨水による防水シートの劣化、支持架台等部材のサビや劣化については検討されておらず、開発が望まれている。
【特許文献1】特開2001−173204号公報
【特許文献2】特開2004−285614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、床仕上げ板を用いるシート防水工法において防水構造を2重にすることにより、雨水による防水シートの劣化、支持架台等部材のサビや劣化を防止し防水性を長期間確保すると共に、使用される部材及び施工工数を削減し、結果として施工コストを低減することができる浮き床構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる目的を達成するために本発明の講じた手段は、防水下地に熱可塑性樹脂製防水シートを敷き並べ、該熱可塑性樹脂製防水シート上の所定位置に、台座及び該台座から立設したボルト部からなり台座及びボルト部下部を熱可塑性樹脂で被覆した支持架台を、架台固定ビスで該熱可塑性樹脂製防水シートを貫通して防水下地に固定すると共に該熱可塑性樹脂製防水シートを防水下地に固定し、
増し張りシートで上記支持架台の台座を覆い、該増し張りシートと上記熱可塑性樹脂製防水シート及び上記支持架台の台座とを溶着し、
内側にメネジ部を有するパネル受け具を上記支持架台のボルト部に螺合し、表面に溶着樹脂層を有する複合パネルを該パネル受け具に固定し、
隣り合う上記複合パネルの間を防水処理することを特徴とする浮き床構造としたことであり(請求項1)、
防水下地に熱可塑性樹脂製防水シートを敷き並べ、該熱可塑性樹脂製防水シート上の所定位置に、台座及び該台座から立設したボルト部からなり台座及びボルト部下部を熱可塑性樹脂で被覆した支持架台を、架台固定ビスで該熱可塑性樹脂製防水シートを貫通して防水下地に固定すると共に該熱可塑性樹脂製防水シートを防水下地に固定し、
増し張りシートで上記支持架台の台座を覆い、該増し張りシートと上記熱可塑性樹脂製防水シート及び上記支持架台の台座とを溶着し、
パネル用長尺受け具を複数の上記支持架台のボルト部に固定し、表面に溶着樹脂層を有する複合パネルを該パネル用長尺受け具に固定し、隣り合う上記複合パネルの間を防水処理することを特徴とする浮き床構造としたことである(請求項2)。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来のように防水シートを下地に接着剤、固定金具などで固定してから、支持架台を下地に固定する2工程は必要なく、1工程で済む。すなわち、支持架台の台座で防水シートを固定するので、防水シートと支持架台の下地への固定を1工程で同時に行うことができ、部材の削減、工数の低減が図れる。また、支持架台の台座とボルト部下部が熱可塑性樹脂で被覆されているため、増し張りシートで支持架台の台座及び防水シートとに加熱溶着または溶剤溶着することができ、その接合は強化され、防水性が充分に確保できる。加えて、隣り合う複合パネルの間を防水処理することにより、防水シート面での防水、複合パネル表面での防水と防水構造を2重にし、雨水による防水シートの劣化、支持架台等部材のサビや劣化を防止し防水性を長期間確保することができる。
さらに、複数の支持架台とパネル用長尺受け具が連結する形態においては、浮き床構造の局所に風圧などの負圧がかかったとしても、複数の支持架台がパネル用長尺受け具により連結しているため、負圧は複数の支持架台に分散されるので、防水下地への支持架台固定の信頼性が高まる。また、パネル用の受け具が長尺であるため、複合パネルはパネル用長尺受け具のどの位置にも固定できて支持架台部分で固定する必要はなくなり、施工が容易にできるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の浮き床構造ついて実施の形態を、図面を参照して詳しく説明する。
【0010】
[実施の形態1]
図1に実施の形態1を示す。
この浮き床構造は、コンクリート系の防水下地1に熱可塑性樹脂製防水シート2を敷き並べ、熱可塑性樹脂製防水シート2上の所定位置において、台座31と熱可塑性樹脂製防水シート2との間に粘着テープ4を貼り合わせた状態で、架台固定ビス312により熱可塑性樹脂製防水シート2を貫通して台座31及び台座から立設したボルト部32からなる支持架台3を防水下地1に固定し、
図8のように、略中央にボルト部32の外径より大きな穴51の開いた増し張りシート5を、穴51にボルト部32を通して台座31を覆うように載せ、増し張りシート5を台座31と熱可塑性樹脂製防水シート2とに加熱溶着、溶剤溶着等で溶着し、
パネル受け具6のナット部62のメネジを支持架台3のボルト部32に螺合して、パネル受け具6の高さ調整を行い、パネル受け具6の受け部61に複合パネル7を載せ、パネル固定ビス63で表面に溶着樹脂層81を有する複合パネル8を該パネル受け具6に固定し、
隣り合う複合パネル8の突合せ目地部に増し張り防水シート9より幅の狭い緩衝目地テープ91を貼った後、増し張り防水シート9で覆い増し張り防水シート9と複合パネル8とを溶着して防水処理を施した構成である。
支持架台3は熱可塑性樹脂製防水シート2の上に図5の如く碁盤目状に所要位置に所要個数載置され、それぞれ防水下地1に固定される。図5では、支持架台3の縦方向と横方向の間隔は同寸法になっているが、複合パネル8が長方形状の場合に対応できるように縦方向と横方向の間隔を異なった設定にしてもよい。複合パネル8は4隅を4つの支持架台3で固定され、1つの支持架台3には4つの複合パネル8のそれぞれ1隅が固定されるようにする。
【0011】
上記熱可塑性樹脂製防水シート2としては、塩化ビニル樹脂系防水シート、オレフィン樹脂系防水シート、アクリル樹脂系防水シート等が使用できる。塩化ビニル樹脂系防水シートが、施工性、シート同士の溶着性、防水シート固定金具との密着性の点から好ましい。熱可塑性樹脂製防水シートの厚さとしては、0.5〜5.0mmのものが使用でき、1.0〜2.5mmが好ましい。
【0012】
上記支持架台3は図8に示すように、台座31及び台座31から立設したボルト部32からなり、台座31には防水下地に固定するためのビス穴311を複数個設けてある。台座31とボルト部32は接着剤、溶接等で簡単に一体化することができるが、台座31にネジ切りしボルト部32を螺合してから溶接すると強度が向上する。
支持架台3の材質としては、金属、高強度の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが使用でき、強度面からは金属がよく、中でも鋼材が良い。鋼材を使用する場合、ボルト部32の径は5〜30mmがよく、強度とコストを考慮すると10〜20mmがより好ましい。ボルト部32の長さは50〜100mmのものが使用される。台座31の厚さは、鋼材を使用する場合、1.0〜10mmがよく、強度とコストを考慮すると1.6〜6.0mmがより好ましく、2.0〜4.0mmがさらに好ましい。台座31の外径は50〜150mmのものが使用される。台座31の外径が50mmより小さいと支持架台3の収まりが不安定となり、150mmを越えると溶着の手間が掛かり強度的にも飽和し意味が無くなる。
被覆樹脂層33として、支持架台3及びボルト部32下部の5〜10mm部分を熱可塑性樹脂で被覆する必要があり、被覆樹脂層33の厚みは0.1〜3mmがよい。被覆する熱可塑性樹脂は、増し張りシート5、熱可塑性樹脂製防水シート2と同質または同種の溶着しやすい樹脂がよく塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。台座31は図8には円形のものを示すが、円形に限定されるものではなく多角形その他の形状でも構わない。
架台固定ビス312により熱可塑性樹脂製防水シート2を貫通して支持架台3を防水下地1に固定する際、必ずしも必要とするものではないが図1に示すごとく台座31と熱可塑性樹脂製防水シート2との間に粘着テープ4を貼り合わせることがよく、このことにより防水性が一段と向上する。粘着テープ4としては、ブチル系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)系などの片面又は両面粘着テープがあるが、防水性の点ではブチル系両面粘着テープが好ましい。
【0013】
上記増し張りシート5は、支持架台部分の熱可塑性樹脂製防水シート2の防水性を確保するために増し張りされるシートで、支持架台3の台座31と熱可塑性樹脂製防水シート2とに溶着されるシートであるため、台座31及びボルト部32下部の被覆樹脂層33及び熱可塑性樹脂製防水シート2と同質または同種の溶着しやすい樹脂(塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等)から形成することが好ましい。増し張りシート5を台座31と熱可塑性樹脂製防水シート2とに溶着した後、図1に示すように増し張りシート5とボルト部の隙間、熱可塑性樹脂製防水シート2に接する増し張りシート5端部をシーラーA52で防水処理するとよい。シーラーA52としては、被覆樹脂層33、熱可塑性樹脂製防水シート2、増し張りシート5と同質または同種の樹脂からなるシーラー、或いはウレタン系、変性シリコン系、シリコン系、ブチル系などのシーラーが挙げられる。
【0014】
上記パネル受け具6は、内側にメネジを有するナット部62と受け部61とからなり、複合パネル8を受け部61で直接支える部材であり、ナット部62が支持架台のボルト部32に螺合し高さ調整することが可能になっている。パネル受け具6の受け部61とナット部62の形状は円形、多角形のものがよく、他の形状のものも使用できる。
パネル受け具6は、ナット部62として30〜100mmの長尺ナットを用い受け部61としての厚さ1〜5mmで適宜大きさの鋼板をナット部に溶接して形成してもよく、鋼板をビスでナット部62のメネジに螺合して形成してもよく(図1はこの形状のパネル受け具6を示す)、ビスで螺合した上に溶接しても良い。また、他の方法でも同形状に形成できればよい。
パネル受け具6の受け部61には、パネル固定ビス用のネジ切が少なくとも4箇所施されており、複合パネル8を固定できるようになっている。
【0015】
パネル受け具6の緩み防止のため、支持架台3のボルト部32又はパネル受け具6のナット部62のメネジにエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤などの接着剤を塗布してパネル受け具6の高さ調整をすることが好ましい。
【0016】
上記複合パネル8は、熱可塑性樹脂製防水シート2の保護と仕上げ材として用いられるものであり、増し張り防水シート9と溶着しやすくするため複合パネル8の表面は溶着樹脂層81が積層されていることが必要である。溶着樹脂層81の材質としては、後述する増し張り防水シート9と溶着するため、増し張り防水シート9と同質または同種の樹脂(塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等)であることが好ましい。
複合パネル8の溶着樹脂層81を積層する基材としては、セメント板,ケイカル板などの無機板、硬質塩化ビニル,ポリカーボネート,ナイロン,アクリル,ポリプロピレン,フェノール,メラミン,エポキシなど硬質の合成樹脂板、鋼板などの金属板などが挙げられ、これらは単独でも2種以上併用して使用してもよい。好ましくは、スチレンフォーム、硬質ウレタンフォームなどの樹脂製フォームを樹脂被覆した金属板で挟み一体的に形成したものがよい。このような構造の複合パネルを使用すれば、軽量でありながら高い強度も得られ断熱性も高くなる。この場合、複合パネルの金属板として、表面側金属板は樹脂被覆された金属板が増し張りシートとの接合及び耐候・耐蝕上必要であるが、裏面側金属板は亜鉛メッキ鋼板やアルミ・亜鉛・マグネシウム複合メッキ鋼鈑やステンレス鋼鈑やこれらに塗装した鋼鈑でも良い。更には、表面側の樹脂被覆鋼鈑の樹脂は日射反射率の高い樹脂組成のものを使用することが好ましい。
複合パネル8の形状は矩形状であるが長方形のものが好ましく、複合パネル8の寸法は短辺×長辺で300×1200〜1200×2500mmがよく、600×1350〜900×1800mmがより好ましい。複合パネル8の厚さは20〜70mmがよく、30〜50mmがより好ましい。
支持架台3は複合パネル8の寸法に合わせて所定位置に固定するため、複合パネル8の短辺の寸法が300mm未満又は複合パネル8の長辺の寸法が1200mm未満では支持架台3の必要数が増しコストアップになり、複合パネル8の短辺の寸法が1200mmを越えるか又は複合パネル8の長辺の寸法が2500mmを越えると複合パネル8の強度を確保するため複合パネル8を厚くする必要がありコストアップにつながり好ましくない。
【0017】
増し張り防水シート9は、図7に示すように隣り合う複合パネル8の短辺側、長辺側の隙間を隠すように複合パネル8上に載置し複合パネル8と溶着し浮き床構造の表面を防水構造とするものである。
増し張り防水シート9を固定する前に、必ずしも必要とするものではないが隣り合う図1に示すように複合パネル8の突合せ目地部に厚みが0.1〜0.2mm、幅が20〜50mmの片面粘着剤付きのポリエチレン、ポリプロピレン製等のフィルムや該フィルムにポリエステル繊維等でクロス補強した緩衝目地テープ91を貼ることが好ましく、このことにより複合パネル8の動きによって増し張り防水シート9に亀裂が生じることを抑制できる。
増し張り防水シート9の材質としては、熱可塑性樹脂製防水シート2と同様に、塩化ビニル樹脂系、オレフィン樹脂系、アクリル樹脂系等のものが使用でき、増し張り防水シート9は、厚みが1.0〜3.0mmで、幅が80〜120mmで長尺シート状ものが使用される。
【0018】
上記の架台固定ビス312は、熱可塑性樹脂製防水シート2と支持架台3を同時に防水下地に固定するものであり、パネル固定ビス63は複合パネル8をパネル受け具6に固定するものであり、それぞれ皿、平頭形状等の市販のビスが使用できる。防錆を考慮するとステンレス製のものがよい。
【0019】
[実施の形態2]
図2に実施の形態2を示す。実施の形態2では、実施の形態1で使用した増し張り防水シート9の替わりに樹脂被覆鋼板10を使用して防水処理を施す構成である。
パネル受け具6のナット部62のメネジを支持架台のボルト部32に螺合し高さ調整し、パネル受け具6の受け部61に複合パネル8を載せる工程までは実施の形態1と同じであるが、その後は、実施の形態1において増し張り防水シート9を載せた位置と同位置の複合パネル8上に樹脂被覆鋼板10を載置し、パネル固定ビス63で樹脂被覆鋼板の上から複合パネル8をパネル受け具6の受け部61に固定し、樹脂被覆鋼板10端部とパネル固定ビスの頭部周りをシーラーB101で防水処理する構成である。
図2では、パネル受け具6は、鋼板をナット部に溶接した形状になっている。もちろん実施の形態1に記載したものを使用することができる。
複合パネル8上に、厚みが0.5〜2mm、幅が樹脂被覆鋼板10より狭く40〜60mmの粘着テープ4を張り合わせた後、樹脂被覆鋼板10を固定することが好ましい。粘着テープ4を貼り合わせることにより防水性が一段と向上する。粘着テープ4としては、ブチル系、アクリル系、EVA系などの片面又は両面粘着テープがあるが、防水性の点ではブチル系両面粘着テープが好ましい。
【0020】
上記樹脂被覆鋼板10は、厚み1.0〜2.0mm、幅50〜70mmのものが使用でき、被覆される樹脂は、複合パネル8の溶着樹脂層と同質または同種の樹脂がよい。
【0021】
上記シーラーB101としては、シーラーA52と同様に、樹脂被覆鋼板10の被覆樹脂層と同質または同種の樹脂からなるシーラー、或いはウレタン系、変性シリコン系、シリコン系、ブチル系などのシーラーが挙げられる。
【0022】
[実施の形態3]
図3に実施の形態3を示す。実施の形態3では、実施の形態1で使用したパネル受け具6の替わりに、パネル用長尺受け具7を用いるもので、支持架台3を取り付ける工程までは実施の形態1と同じため図3では、防水下地に固定するまでの増し張りシート等の部材は省略してある。この形態は支持架台3のボルト部32に高さ調整しながら、パネル用長尺受け具7を固定し、パネル用長尺受け具7上に複合パネル8を載置し、ドリルビス75で複合パネル8の上から複合パネル8をパネル用長尺受け具7に固定し、隣り合う複合パネル8の目地部を増し張り防水シート9で覆い防水処理を施す構成である。1本のパネル用長尺受け具7は複数個の支持架台3に固定される。複合パネル8の幅に見合う間隔を開けて複数のパネル用長尺受け具7を平行に固定できるように、支持架台3を位置決めして防水下地1に固定しておく必要がある。
支持架台3の取り付け工程までは実施の形態1と同じであるが、その後は、支持架台3のボルト部32にパネル用長尺受け具7を固定するものであり、パネル用長尺受け具7の固定方法としては、図3のように支持架台3のボルト部32に長尺ナット71を螺合しながら高さ調整し、下面にビス用の穴を開けたパネル用長尺受け具7を長尺ナット上端に載せ、ビス用穴を通して固定ボルト72で固定する方法がある。また、別の態様として、図4のように支持架台3のボルト部32に支持架台3のボルト部32が突出するように第一のナット73を高さ調整しながら螺合し、ボルト部32が通るように穴を開けたパネル用長尺受け具7を第一のナット73まで差込み第二のナット74を支持架台3のボルト部32に螺合して固定する方法などがある。図4は、図3の右又は左半分を示し長尺ナット71と固定ボルト72の替わりに第一のナット73と第二のナット74を使用しており、図3と同じ符号のものは一部省略している。
パネル用長尺受け具7を固定後、平行に固定した隣り合うパネル用長尺受け具7に複合パネル8を、目地幅として2〜10mm開けながら順次置いていく。目地には発泡ポリエチレン、ゴム、ウレタン、塩ビ樹脂等の合成樹脂製やガラス不織布製等の緩衝目地材82を装填することが好ましい。
次いで、複合パネル8をドリルビス75でパネル用長尺受け具7に固定し、実施の形態1と同様に複合パネル8の目地部に前記緩衝目地テープ91を張った後、増し張り防水シート9と複合パネル8を加熱溶着、溶剤溶着等で溶着接合し、防水処理を行う。
【0023】
上記パネル用長尺受け具7には、平鋼、角パイプ、溝型鋼、リップ溝型鋼等の鋼材が使用でき、支持架台3のボルト部32又は固定ボルト72のネジ径より大きな穴を所定位置にあけてから用いる。
パネル用長尺受け具7が平鋼の場合、固定ボルト72の頭部、第二のナット74がパネル用長尺受け具7の上面に出るため、固定ボルト72の頭部、第二のナット74が収まるように複合パネル8の四隅を切除するか、複合パネル8の間隔をあける必要がある。パネル用長尺受け具7が溝型鋼、リップ溝型鋼の場合、溝を上にして使用すれば、固定ボルト72の頭部、第二のナット74は溝内に収まる。溝型鋼の場合、ドリルビス75は下面部に固定でき、リップ溝型鋼の場合、ドリルビス75はリップ部及び/又は下面部に固定できる。パネル用長尺受け具7が角パイプの場合、上面部に固定ボルト72の頭部又は第二のナット74が挿入できる穴を開ける必要がある。
パネル用長尺受け具7は施工性、強度を考慮するとリップ溝型鋼が好ましく、鋼材の厚みが1.2〜2.3mm、幅が40〜100mm、長さが1800〜4000mmのものがよい。
【0024】
上記ドリルビス75は、鋼板に下穴をあけるとともに、タップ立て、締め付けが同時にできるものでセルフドリリングスクリューとも云われ、頭部の形状にはナベ、座付六角、皿、丸皿、平、座付ナベなどがあるが、平、皿形状のものが好ましい。ドリルビス75の替わりに架台固定ビス、パネル固定ビスと同様のビスを使用することもできるが、パネル用長尺受け具7に下穴、ネジ切等を施すなどの手間が増える。
【0025】
複合パネル8の受け具を長尺にすることにより、支持架台位置で複合パネル8を固定する必要性がなくなり、パネル用長尺受け具7のどの位置での固定も可能となり、施工性が向上するばかりでなく、図6のように千鳥格子状に複合パネル8を固定でき見栄えを良くすることができる。
【0026】
[実施の形態4]
上記実施の形態3の増し張り防水シート9の替わりに、実施の形態2と同様に樹脂被覆鋼板10を使用して防水処理を施す構成である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の浮き床構造は、支持架台の台座で熱可塑性樹脂製防水シートを固定するので、熱可塑性樹脂製防水シートと支持架台の下地への固定を同時に行うことができ、部材の削減、工数の低減が図れる。また、支持架台の台座とボルト部下部が熱可塑性樹脂で被覆されているため、増し張りシートで支持架台の台座及び防水シートに加熱溶着または溶剤溶着することができ、その接合は強化され、防水性が充分に確保できる。加えて、隣り合う複合パネルの間を防水処理することにより、防水シート面での防水、複合パネル表面での防水と防水構造を2重にし、防水性を長期間確保することができ、さらに、複数の支持架台と長尺パネル受け具が連結する構造では、浮き床構造としての下地への固定強度が増強され耐久性が増すため、ビルの屋上防水工事など広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に関する[実施の形態1]を示す断面図である。
【図2】本発明に関する[実施の形態2]を示す断面図である。
【図3】本発明に関する[実施の形態3]を示す断面図である。
【図4】本発明に関する[実施の形態3]の他の態様を示す断面図である。
【図5】本発明に関する支持架台及び複合パネルの配置を示す平面図である。
【図6】本発明に関する支持架台及び複合パネルの配置の他の態様を示す平面図である。
【図7】本発明に関する増し張り防水シート施工状況を示す説明図である。
【図8】支持架台及び増し張りシート施工の説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 防水下地
2 熱可塑性樹脂製防水シート
3 支持架台
31 台座
311 ビス穴
312 架台固定ビス
32 ボルト部
33 被覆樹脂層
4 粘着テープ
5 増し張りシート
51 増し張りシートの略中央の穴
52 シーラーA
6 パネル受け具
61 受け部
62 ナット部
63 パネル固定ビス
7 パネル用長尺受け具
71 長尺ナット
72 固定ボルト
73 第一のナット
74 第二のナット
75 ドリルビス
8 複合パネル
81 溶着樹脂層
82 緩衝目地材
9 増し張り防水シート
91 緩衝目地テープ
10 樹脂被覆鋼板
101 シーラーB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地に熱可塑性樹脂製防水シートを敷き並べ、該熱可塑性樹脂製防水シート上の所定位置に、台座及び該台座から立設したボルト部からなり台座及びボルト部下部を熱可塑性樹脂で被覆した支持架台を、架台固定ビスで該熱可塑性樹脂製防水シートを貫通して防水下地に固定すると共に該熱可塑性樹脂製防水シートを防水下地に固定し、
増し張りシートで上記支持架台の台座を覆い、該増し張りシートと上記熱可塑性樹脂製防水シート及び上記支持架台の台座とを溶着し、
内側にメネジ部を有するパネル受け具を上記支持架台のボルト部に螺合し、表面に溶着樹脂層を有する複合パネルを該パネル受け具に固定し、
隣り合う上記複合パネルの間を防水処理することを特徴とする浮き床構造。
【請求項2】
防水下地に熱可塑性樹脂製防水シートを敷き並べ、該熱可塑性樹脂製防水シート上の所定位置に、台座及び該台座から立設したボルト部からなり台座及びボルト部下部を熱可塑性樹脂で被覆した支持架台を、架台固定ビスで該熱可塑性樹脂製防水シートを貫通して防水下地に固定すると共に該熱可塑性樹脂製防水シートを防水下地に固定し、
増し張りシートで上記支持架台の台座を覆い、該増し張りシートと上記熱可塑性樹脂製防水シート及び上記支持架台の台座とを溶着し、
パネル用長尺受け具を複数の上記支持架台のボルト部に固定し、表面に溶着樹脂層を有する複合パネルを該パネル用長尺受け具に固定し、隣り合う上記複合パネルの間を防水処理することを特徴とする浮き床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−37909(P2010−37909A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205608(P2008−205608)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【Fターム(参考)】