説明

浮体およびその運転方法

【課題】浮体を簡素に構成して遠隔操作を可能とするとともに、浮体に搭乗する操作者がいなくても自力で水上移動を可能にする浮体を提供する。
【解決手段】浮体10は、水面に浮かされ連結可能な浮体ブロック41〜43と、この浮体ブロックに搭載され遠隔からの指令を受信する遠隔操作装置6と、この浮体を航走させるプロペラ63を有する複数の船外機50,60と、遠隔操作装置が受信した指令信号に基づいて複数の船外機を制御する制御部と、複数の船外機を旋回させる旋回機構58,68とを有する。複数の船外機は浮体ブロックの両端部に配置されており、制御部は旋回機構を用いて船外機を浮体ブロックに対して旋回させ、この旋回させた状態でプロペラを制御部が回転駆動することを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体およびその運転方法に係り、特に連結されて稼動しかつ遠隔装置および航送装置を有する場合に好適な浮体ならびにその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洪水などの災害により河川に架けられた橋が破壊され、臨時の橋の架設が必要なときに架橋手段として使用される浮橋の例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載の浮橋では、浮橋本体を水よりも十分比重の小さい複数の板状の浮橋ブロックで構成し、輸送中等の使用前の状態では、この浮橋ブロックをw字型に折り曲げて保持している。そして、架橋時には、折り曲げて保持した浮橋ブロックを水面上に置き、折り曲げ部から展開して浮橋を形成している。
【0003】
従来の架橋の他の例が、特許文献2に記載されている。この明細書に記載の浮橋では、水陸両用の移動体の上面に、特許文献1に記載の浮橋と類似の浮橋を搭載し、陸上走行時には、浮橋ブロックを折り曲げて車体の上面形状とほぼ同じにしておき、河川等の架橋が必要な場所に移動体が到着すると、そのまま河川に乗り込むとともに上面に搭載した浮橋ブロックを展開するようにしている。また、浮橋の両側面には、スロープが形成されており、他の移動体に搭載された浮橋と連結できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−126808号公報
【特許文献2】米国特許明細書第7、690、957号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の浮橋では、浮橋全体または浮橋ブロックをトラックに載置し、架橋する位置まで輸送し終えたら、トラックの後部からウインチ等で河川へ浮橋全体または浮橋ブロックを投入することが記載されている。しかしながら、この浮橋では、河川への投入位置が架橋位置から離れている場合に、架橋することについては、記載されていない。河川に通常架橋する場合には、河川の両岸のうち、アクセスしやすい場所を選んで浮橋を搭載したトラックが近づき、その場で浮橋ブロックを投入した後、実際に架橋に必要な場所まで浮橋を移動させる。この特許文献1では、このような架橋位置まで浮橋を移動させることについては、考慮されていない。
【0006】
特許文献2に記載の水陸両用車に搭載した浮橋の場合には、浮橋の下面側に水陸両用車が位置するので、水陸両用車の河川へのアクセス位置と架橋位置が異なっていても、水陸両用車で浮橋を架橋位置まで運ぶことが可能になり、上記特許文献1に記載の不具合は解消される。しかしながら、この浮橋は水陸両用車と一体になっており、構造が複雑化し高価にならざるを得ない。しかも、連結使用する場合には、複数台そろえる必要があり、災害はどこで発生するか予見不可能であるから、全国に分散配置することが困難になる。また、特殊車両である各水陸両用車を操作できる人の養成も必要となる。
【0007】
本発明は、上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は浮体を簡素に構成して遠隔操作を可能とするとともに、浮体に搭乗する操作者がいなくても自力で水上移動を可能にすることにある。本発明の他の目的は、無人の浮体を遠隔操作可能としたときに、その移動操作を容易とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の特徴は、浮体が、水面に浮かされ連結可能な浮体ブロックと、この浮体ブロックに搭載され遠隔からの指令を受信する遠隔操作装置と、この浮体を航走させるプロペラを有する複数の船外機と、前記遠隔操作装置が受信した指令信号に基づいて前記複数の船外機を制御する制御部と、前記複数の船外機を旋回させる旋回機構とを有し、前記複数の船外機は前記浮体ブロックの両端部に配置されており、さらに前記制御部は前記旋回機構を用いて前記船外機を前記浮体ブロックに対して旋回させ、この旋回させた状態で前記プロペラを前記制御部が回転駆動可能にしたことにある。
【0009】
そしてこの特徴において、前記制御部は、前記プロペラの回転方向と回転速度を制御し、前記旋回機構は、前記船外機を旋回可能にする旋回手段を有するのがよく、前記旋回手段は、前記船外機に取付けられた第1の旋回用歯車と、この第1の旋回用歯車と噛み合う第2の旋回用歯車と、この第2の旋回用歯車が取り付けられた旋回用モータとを有するものであってもよい。また、前記遠隔操作手段に遠隔から指令を送信する遠隔操作手段を有し、この遠隔操作手段は2個の操作棒と、前記操作棒の操作内容と前記旋回機構の操作内容を切替える複数の切替ボタンを備えるものが好ましい。
【0010】
上記目的を達成する本発明の特徴は、水面に浮かされ連結可能な浮体ブロックの両端側に搭載された2個の船外機を、遠隔にある操作棒形の操作手段からの指令で操作する浮体の運転方法において、前記2個の船外機を前進方向の基準位置に位置決めして左右2個の操作棒の傾き角と傾き方向でそれぞれの船外機が有するプロペラの回転方向と回転速度を個別に定める第1の運転モードと、一方の操作棒の傾き角と傾き方向で前記2個の船外機の旋回方向と旋回量を決定し他方の操作棒の傾き角と傾き方向で双方の前記プロペラの回転方向と回転速度を決定する第2の運転モードと、前記2個の船外機を互いに逆方向に位置決めし、一方の操作棒の傾き角と傾き方向でその場回転方向と双方の前記プロペラの回転速度を定める第3の運転モードと、前記2個の船外機を左右いずれか90度だけ旋回させた状態を基準位置に位置決めし、一方の操作棒の傾き角と傾き方向で前記2個の船外機の旋回方向と旋回量を決定し他方の操作棒の傾き角と傾き方向で双方の前記プロペラの回転方向と回転速度を決定する第4の運転モードとを有することにある。
【0011】
そしてこの特徴において、前記操作手段は前記4個の運転モードを切替えるための複数の切替ボタンを有しており、運転開始時には、各切替ボタンがオフ状態または中立状態であって前記第1の運転モードとなることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水面に浮かぶ浮体において、遠隔からの指示により浮体の両側部に配置した航送装置の浮体に対する姿勢および速度を可変にしたので、浮体を簡素に構成して遠隔操作が可能になるとともに、浮体に搭乗する操作者がいなくても自力で水上移動が可能になる。また、無人の浮体が遠隔操作可能であるとともに、その移動操作も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る浮体本体の一実施例の斜視図である。
【図2】図1に示した浮体本体が備える旋回機構の模式図であり、その正面図である。
【図3】図2に示した遠隔操作装置および浮体の概略上面図である。
【図4】図1に示した浮体本体および遠隔操作装置の主要部のブロック図である。
【図5】遠隔操作装置の操作による、運転モード切替えを説明する図である。
【図6】運転モード1を説明する図である。
【図7】運転モード2を説明する図である。
【図8】運転モード3を説明する図である。
【図9】運転モード4を説明する図である。
【図10】本発明に係る浮体の運転方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る浮体の一実施例を図面を用いて説明する。図1は、浮体10の斜視図であり、河川48中に供用した様子を示している。浮体10は、陸上に配置した遠隔操作手段1からの操作指令でその位置を変化させる。
【0015】
浮体10は、陸上輸送に便利なように、直方体状の3個の浮体ブロック41〜43を折り曲げ部33で接続して形成されている。陸上輸送時には、この折り曲げ部で、中央に位置する走行部となる浮体ブロック43の上方に、両側に位置する浮体ブロック41、42が折り重ねられる。中央に位置する浮体ブロック43の幅が、両側に位置する浮体ブロック41、42の幅の2倍程度あるので、折り重ねて運ぶことが可能になる。
【0016】
両側の浮体ブロック41、42の幅方向端部には、河川48などで浮体ブロック41〜43を展開したときに、浮体ブロック41〜43上へ波が押し寄せるのを防止するために、波除け44が立設されている。また、中央の浮体ブロック43の前後端部には連結部32が設けられており、他の浮体10と連結するための図示しない連結装置が取り付け可能になっている。
【0017】
本発明の浮体10の特徴として、浮体10は無人で移動できるようになっている。そのため、浮体10の下方であって左右の浮体ブロック41、42の部分には、モータ54、64で駆動されるプロペラ53、63が配置されている。これらモータ54、64およびプロペラ53、63は、船外機50、60を構成している。
【0018】
つまり、図2に詳細を示すように、浮体10の進行方向に対して左側に位置する左船外機50は、左側の浮体ブロック41を貫通して配置されている。なお、図2は、船外機50、60の正面図(同図(a))および側面図(同図(b))である。浮体10を推進するためのプロペラ53、63が水平軸モータ54、64の先端に取り付けられている。モータ54、64は、垂直に延びる回転軸55、65の先端部に取り付けられて、水中に保持される。
【0019】
回転軸55、65の中間部は、浮体ブロック41、42に下端部を固定した船外機固定フレーム71、72に保持された軸受52、62で回転自在に支持されている。回転軸55、65の軸受52、62よりも下方には、歯車56a、66aが取り付けられており、この歯車56a、66aは旋回用モータ57、67の先端部に取り付けた歯車56b、66bと噛み合っている。旋回用モータ57、67を駆動することにより、回転軸55、65が垂直軸回りに回転する。軸受52、62や歯車56a、56b、66a、66b、旋回用モータ57、67は、旋回機構58、68を構成する。なお、本実施例では、符号の50番台は左船外機50に関する部分を、60番台は右船外機60に関する部分を指示している。また本実施例では、旋回用モータ57、67の動力伝達に歯車を使用したが、ベルト等を用いてもよい。
【0020】
軸受52、62や歯車56、66、旋回用モータ57、67等は、図示しないカバーで気密に覆われており、浮体10への河川水の侵入を防止している。また、カバーを突き抜けて回転軸は55、65上方に延びていて、その上部先端側には、横木が取り付けられている。横木の先端部にはハンドル51、61が取り付けられており、この浮体10に人が搭乗したときに、マニュアル操作で回転軸55、65の向き(船外機50、60の旋回)とプロペラ駆動モータ54、64を操作できるようになっている。
【0021】
図1において、側部に配置される浮体ブロック41、42の一方(図1では浮体ブロック41)には、河岸に位置する操作者が所持する遠隔操作手段1からの指示を受信するための遠隔装置6が搭載されている。遠隔装置(受信部)6は、受信回路6aとこの受信回路6aに接続されたアンテナ6bとを有している。遠隔操作装置6や左右両船外機50、60等へ電力を供給するために、左右側部に配置した浮体ブロック41、42内に、電源(電池)31が格納されている。遠隔操作装置6の近傍であって、浮体41内には、遠隔操作装置6に接続され、左右両船外機50、60および左右旋回機構58、68を制御する制御部7(図3参照)も搭載されている。
【0022】
図3に、浮体を遠隔操作するときに用いる遠隔操作手段1の一例を正面図(同図(a))で、遠隔操作手段1により無人で遠隔操作される浮体10の一例を上面図(同図(b))で示す。遠隔操作手段1は、左側に2個の操作棒A、B(12、22)が、右側に5個の操作ボタン3a〜3eを有する運転モード切替手段3とを有している
ジョイスティック等で構成される2個の操作棒A、B(12、22)は、後述する運転モードによりその操作内容が異なるが、左側の操作棒A(12)は、主としてプロペラ53、63の回転数を制御するのに用いられる。一方、右側の操作棒B(22)は、主として左右の旋回機構58、68を制御するのに用いられる。操作ボタン3a〜3eの作用については、後述する。
【0023】
次に、遠隔操作手段1と浮体10側の設備との電気的接続関係を、図4を用いて説明する。図4は、遠隔操作手段1と浮体10の電気的設備のブロック図である。遠隔操作手段1では、左側操作棒A(12)を操作したときに、その操作棒A(12)の上下方向および左右方向の傾き角と傾き方向とを検出するために、左操作棒電圧センサ13が設けられている。傾き角の大きさは、ほとんどの運転モードにおいて、プロペラ53、63の回転速度の大きさに対応する。また、傾き方向(上、下、左、右方向)の別により、プロペラ53、63の回転方向が異なってくる。
【0024】
右側の操作棒B(22)は上述したように、運転モードによりその指示内容が異なってくる。しかしながら、左操作棒A(12)と同様に、傾き角と傾き方向とを検出するための、右操作棒電圧センサ23が設けられている。なお、運転モードによっては、これらの検出値は無視される。左操作棒電圧センサ13と右操作棒電圧センサ23の出力は、操作信号として信号変換部24に送信される。運転モード切替手段3が有する5つのボタン3a〜3eの信号は、送信部4が備える送信回路4aに送信される。なお、送信部4はアンテナ4bを有している。
【0025】
送信部4のアンテナ4bから送信された無線信号は、浮体10側の遠隔操作装置6のアンテナ6bで受信される。そして受信回路6aで受信処理された後、制御部7へ送信される。制御部7では、初めにA/D入力部7bでアナログデータからデジタルデータにデータ変換され、演算部7aへ入力される。演算部7aでは、操作信号に応じて左船外機50または/および右船外機60のプロペラ53、63の回転方向及びプロペラ53、63の回転速度を演算し、D/A出力部7cへ出力する。
【0026】
D/A出力部7cでは、デジタル信号をアナログ信号にデータ変換し、左船外機制御部59または/および右船外機制御部69に、プロペラ53、63の回転方向とプロペラ53、63の回転速度を動作信号として出力する。なお、左右両船外機50、60とも、正転/逆転の双方向の動作が可能である。
【0027】
本実施例では、操作棒12を上側へ傾けたときに、プロペラ53、63が正転方向に動作し、操作棒12を下側へ傾けたときに、プロペラ53、63が逆転方向に動作させている。操作棒12とプロペラ53、63の回転方向はこれに限るものではなく、操作棒12を上側に傾けたときにプロペラ53、63を逆転方向に動作させ、操作棒12を下側に傾けたときにプロペラ53、63を正転方向動作とすることも可能である。これらは、操作者が任意に選択できる。
【0028】
ところで、後述するいくつかの運転モードでは、遠隔操作手段1の右操作棒22の操作により、旋回機構58、68を動作させることが可能になる。その場合、遠隔操作手段1の右操作棒22を左右方向に変位させると、旋回機構58、68が動作する。例えば、右操作棒22を右方向へ傾けると、操作棒22の傾き角と傾き方向が右操作棒電圧センサ23により操作信号として信号変換部24へ入力される。この入力信号は、送信部4から浮体10側の遠隔操作装置6に無線通信される。
【0029】
浮体10側では、受信した信号をA/D入力部7bでデジタル信号にデータ変換し、操作信号に応じた左旋回機構58および右旋回機構68の旋回角度を演算部7aで演算する。演算された左右旋回機構58、68の旋回角度は、左右両船外機50、60が同期して旋回するような旋回動作信号としてD/A出力部7cに入力される。D/A出力部7cは、アナログデータにデータ変換し、左旋回用モータ57および右旋回用モータ67へ指令値を出力する。
【0030】
つまり、上記右操作棒22の右方向への傾きにより、左旋回用モータ57および右旋回用モータ67はともに右転動作を行い、左船外機50と右船外機60が右旋回する。このように、右操作棒22の操作に対して制御部7が逐次演算および信号を出力するので、自走式浮体の人力による旋回動作に比べて、左右同期した精度が良くかつ高速な旋回操作が可能になる。
【0031】
また、旋回動作に限らず従来の自走式浮体では、左右船外機の各々の近傍に操作者を配置し、指令者からの発令により、前後進方向やプロペラ回転数の制御、旋回動作をマニュアルで実行していた。そのため、発令から浮体の動作までに多くの時間を要し、直感的な浮体の操作や動作が困難になっていた。本実施例によれば、操作者は浮体に搭乗することなく、遠隔操作手段を遠隔で操作するだけで済み、瞬時の操作が可能になる。また、荒天時など操作がマニュアルでは困難な場合でも、確実に操作できる。
【0032】
さらに、左右操作棒と船外機の動作は予め設定されているので、従来の自走式浮体のように指令の聞き間違いによる誤操作や周囲の騒音により指令を聞き取れないと言った不具合が発生しない。これら遠隔操作手段1と船外機の動作により、浮体10は遠隔操作により水上を自走可能となる。
【0033】
次に、図5ないし図10を用いて、本発明に係る浮体10の運転モードについて説明する。図5は、運転モードを切替える運転モード切替手段3の運転モードによる動作の違いを説明する図であり、図6ないし図9は、各運転モードにおける遠隔操作手段1の操作と浮体10の動きをまとめた図である。また、図10は、遠隔操作手段1を用いた運転モード切替のフローを示すフローチャートである。
【0034】
本実施例では、基本的に4個の運転モードを有している。「運転モード1」は、デフォルトして設定されるモードであり、左右両操作棒A、B(12、22)をそれぞれ両船外機50、60の運転動作の操作に使用する運転モードである。「運転モード2」は、左の操作棒A(12)で、左右両船外機50、60の運転動作を同期して制御するモードであり、右の操作棒B(22)は、左右の旋回機構58、68の制御に用いられる運転モードである。「運転モード3」は、信地旋回に適した運転モードであり、「運転モード4」は運転モード2の変形であり、旋回機構58、68の基準位置(新原点)を、前後進方向ではなく、前後進方向に対し90度の方向、すなわち横方向とする運転モードである。
【0035】
この4個の運転モードを切替えるために、図5に示すように運転モード切替手段3を操作する。運転モード切替手段3は、通常方向切替ボタン3aおよび超信地旋回ボタン3b、垂直運行切替ボタン3c、復帰モード切替ボタン3d、緊急停止ボタン3eを備えている。
【0036】
ここで、すべてのボタン3a〜3eがオフであれば、同図(a)に示す運転モード1のデフォルト状態になる。上述したようにこの状態では、左操作棒A(12)の傾き角と傾き方向に従って、左プロペラ53の回転速度と正転/逆転が設定される。操作棒A(12)の左右方向への傾きは、無視される。同様に、右操作棒B(22)の傾き角と傾き方向に従って、右プロペラ63の回転速度と正転/逆転が設定される。操作棒B(22)の左右方向への傾きは、無視される。また、左右いずれの操作棒A、B(12、22)でも、上方向に傾けるとプロペラ53、63は正転し、下方向に傾けるとプロペラ53、63は逆転する。
【0037】
通常方向切替ボタン3aだけがオンでその他のボタン3b〜3eがオフ状態になると、運転モード2に切り替わる。この運転モード2では、左操作棒A(12)の上下方向への傾きで、左右両プロペラ53、63の回転速度と回転方向が設定される。左操作棒A(12)の左右の傾きは、無視される。右操作棒B(22)の左右への傾きで、左右の旋回機構58、68が同期して動作する。右操作棒B(22)の上下方向の傾きは、無視される。
【0038】
超信地旋回ボタン3bのみがオンで、他のボタン3a、3c〜3eがオフの状態になると、運転モード3に切り替わる。右旋回機構68が作用して、右のプロペラ駆動モータ64と右プロペラ63の前後方向の配置が逆になる。右操作棒B(22)の傾きは、無視される。左操作棒A(12)の前後方向の動作のみ有効で、その傾きに応じて左右両プロペラ53、63の正転/逆転の切替と回転速度が設定される。
【0039】
垂直運行ボタン3cが「切」状態から、「左」「右」のいずれかに切替えられ、その他のボタン3a、3b、3d、3eがオフ状態であれば、運転モード4に切替わる。垂直運行ボタン3cの「左」「右」の切替方向に応じて、左右両旋回機構58、68が動作して、プロペラ53、63の推進方向を左横方向または右横方向に設定する。この方向が、新原点となる。
【0040】
さらに、左の操作棒A(12)では、操作棒A(12)の上下方向の傾きにより、左右両プロペラ53、63の同期した回転速度および正転/逆転が設定される。操作棒A(12)の左右方向の傾きは無視される。また、右操作棒B(22)の左右方向の傾きにより、横方向(90度ずれた位置)からの左右両旋回機構58、68の回動量が決定される。右操作棒B(22)の上下方向の傾きは、無視される。
【0041】
各運転モードにおけるさらに具体的な運用を、図6〜図9を用いて説明する。
(運転モード1)
運転モード1における特徴的な運転状態を、図6に6種類示す。
運転モード1では、左操作棒12が左の船外機50を、右操作棒22が右船外機60を制御するのに用いられる。そして、左右の操作棒12、22の傾き角が等量であれば、まっすぐ前進または後退し、左右の操作棒12、22の傾きが異なると、より多く傾けた側へ、浮体10は旋回しながら移動する。一方の操作棒12または22が、中立位置にあれば、独楽のように浮体は旋回のみする。
【0042】
操作棒12、22の傾き角を左右操作棒電圧センサ13、23(図4参照)が検出して、制御部7が左右操作棒12、22の傾き角に応じて左右船外機50、60のプロペラ53、63の回転方向を決定するとともに、プロペラ53、63の回転速度を演算し、左船外機制御部59と右船外機制御部69へ信号出力する。制御部7からの信号出力により、プロペラ53、63が回転し、浮体10を推進させる。左右操作棒12、22の傾き角により速度が調整されるので、左右操作棒12、22が中立位置から遠ざかれば遠ざかるほど、速度が速くなる。
【0043】
図6の最上段に示した状態[1−1]は、左右の操作棒12、22ともに、上側に傾けた場合であり、その傾き角は左右等量である。プロペラ53、63はともに正転し、かつ回転速度が等しいので、各プロペラ53、63からは符号53a、63a方向に推進力が発生し、浮体10は符号10a方向に推進されて、前進する。
【0044】
状態[1−2]は、右操作棒22を中立位置(停止)にし、左操作棒12のみ上側に傾けた場合である。制御部7が、左操作棒12の傾き角に応じて、プロペラ53の回転方向およびプロペラ53の回転速度を算出し、左船外機制御部59へ信号出力するので、浮体10にはプロペラ53による推進力のみ作用し、浮体10は符号10bで示すように右旋回する。旋回速度の大きさは、左操作棒12の傾き角に依存する。
【0045】
状態[1−3]は、左操作棒12を上側に、右操作棒22を下側に傾けた場合である。、制御部7は左操作棒12が上側に傾いているので、プロペラ53の回転方向を正転方向とし、さらに左操作棒12の傾き角に応じたプロペラ53の回転速度を算出する。この情報を、左船外機制御部59に信号出力する。さらに、制御部7は右操作棒22が下側に傾いているので、プロペラ63の回転方向を逆転方向とし、右操作棒22の傾き角に応じたプロペラ63の回転速度を算出する。そしてこの情報を、右船外機制御部69に信号出力する。左操作棒12と右操作棒22の傾き方向が逆であるので、左右プロペラの回転方向が逆となり、各プロペラ53、63の推進方向も逆となる。そこで浮体10は、浮体10の中心位置を旋回中心として、その場右旋回する。旋回速度の大きさは、左右操作棒12、22の傾き角による。
【0046】
状態[1−4]は、左操作棒12を中立位置(停止)にし、右操作棒22のみ上側に傾けた場合である。状態[1−2]とは逆に、浮体10は左旋回する。制御部7が、右操作棒22の傾き角に応じて、プロペラ63の回転方向および回転速度を演算し、右船外機制御部69へ信号出力するので、浮体10にはプロペラ63による推進力のみ作用し、浮体10は左旋回する。旋回速度の大きさは、右操作棒22の傾き角に依存する。
【0047】
状態[1−5]は、状態[1-3]の逆の場合である。すなわち、右操作棒22を上側に、左操作棒12を下側に傾けた場合である。、制御部7は左操作棒12が下側に傾いているので、プロペラ53の回転方向を逆転方向とし、さらに左操作棒12の傾き角に応じたプロペラ53の回転速度を算出する。この情報を、左船外機制御部59に信号出力する。さらに、制御部7は右操作棒22が上側に傾いているので、プロペラ63の回転方向を正転方向とし、右操作棒22の傾き角に応じたプロペラ63の回転速度を算出する。そしてこの情報を、右船外機制御部69に信号出力する。左操作棒12と右操作棒22の傾き方向が逆であるので、左右プロペラの回転方向が逆となり、各プロペラ53、63の推進方向も逆となる。そこで浮体10は、浮体10の中心位置を旋回中心として、その場左旋回する。旋回速度の大きさは、左右操作棒12、22の傾き角による。
【0048】
状態[1−6]は、状態[1−1]の逆の場合である。すなわち、左操作棒12と右操作棒22を等量だけ、下側へ傾けた場合である。制御部7が左右操作棒12、22の傾き角に応じて左右のプロペラ53、63を逆転させ、さらに左右プロペラ53、63の回転速度を算出する。左船外機制御部59および右船外機制御部69へこの情報を、信号出力する。制御部7からの信号出力により、左右のプロペラ53、63が逆方向に回転し、浮体10を後退(後進)させる。後退速度の大きさは、左右操作棒12、22の傾き角による。
(運転モード2)
運転モード2における特徴的な運転状態を、図7に4種類示す。運転モード2では、左操作棒12が、左右双方のプロペラ53、63を同期して制御するのに用いられる。右操作棒22は、左右双方の船外機50、60の姿勢を制御する、すなわち旋回させるのに用いられる。
【0049】
状態[2−1]は、左操作棒12を上方向に、右操作棒22を中立位置にした場合である。右操作棒22が中立位置にあるので、左右の旋回機構58、68は、左右の船外機50、60を、基準位置である浮体10の前後方向に位置させる。一方、左操作棒が上方向に傾けられているので、制御部7は左操作棒12の傾き角に応じて左右のプロペラ53、63の回転方向を正転とするとともに、左右のプロペラ53、63の回転速度を演算して左船外機制御部59と右船外機制御部69へ同じ信号を出力する。制御部からの指令信号により左右の船外機50、60のプロペラ53、63が正転方向へ同一速度で回転するので、浮体10は前進する。前進速度の大きさは、左操作棒12の傾き角に基づく。
【0050】
状態[2-2]は、左操作棒12を上側に、右操作棒22を右側へ傾けた場合である。制御部7は右操作棒22が右側に傾いているので、左右の旋回機構58、68を用いて、左右両船外機50、60を右方向に旋回させる。旋回させる角度は0〜90度の範囲であり、その大きさは、右操作棒22の傾き角による。
【0051】
制御部7は、また左操作棒12の傾き角に応じて左右のプロペラ53、63の回転方向を正転とするとともに左右のプロペラ53、63の回転速度を算出して左船外機制御部59と右船外機制御部69へ同じ信号を出力する。制御部7からの指令信号により、左右の船外機50、60のプロペラ53、63の回転方向が正転方向となり、左右のプロペラ53、63が同期して同じ回転速度で回転する。左右のプロペラ53、63の回転速度の大きさは、左操作棒12の傾き角による。左右船外機50、60のプロペラ53、63が正転し左右船外機50、60が右旋回しているので、浮体10は右方向に転回しながら移動する。右操作棒22が右方向に最大まで傾いている場合には、浮体10には前進方向の推力が働かず、浮体10は真横方向(右方向)に移動する。
【0052】
状態[2-3]は、状態[2-2]と左右方向逆に浮体10を移動させる場合である。左操作棒12は、状態[2-2]と同じく上方向に傾かせ、右操作棒22は左方向に傾かせている。右操作棒22が左側に傾いているので、制御部7は左右の旋回機構58、68を用いて、左右両船外機50、60を左方向に旋回させる。旋回させる角度は0〜90度の範囲であり、その大きさは、右操作棒22の傾き角による。左操作棒12の操作による作用は状態[2-2]と同じであり、説明を省略する。左右船外機50、60のプロペラ53、63が正転し左右船外機50、60が左旋回しているので、浮体10は左方向に転回しながら移動する。右操作棒22が左方向に最大まで傾いている場合には、浮体10には前進方向の推力が働かず、浮体10は真横方向(左方向)に移動する。
【0053】
状態[2−4]は、状態[2-1]の逆の場合であり、浮体10を後退させる場合である。左操作棒12を下側に傾け、右操作棒22を中立位置にしている。右操作棒22が中立位置にあるので、左右の旋回機構58、68は作動せず、船外機50、60は基準位置であるプロペラ53、63が回転軸の後ろ側となる位置を保持する。一方、左操作棒が下側に傾いているので、制御部7は左右のプロペラ53、63の回転方向を逆転方向とし、左右のプロペラの回転速度を左操作棒12の傾き角に応じた速度として求め、左船外機制御部59と右船外機制御部69へ同一信号を出力する。制御部7からの指令信号により左右船外機50、60のプロペラ53、63が同一速度で逆回転するので、浮体10は後退する。後退速度の大きさは、左操作棒12の傾き角に応じる。
【0054】
上記した運転モード2における特徴は、左右のプロペラ53、63の制御を左の操作棒12の操作のみで実行することにある。上記運転モード1に比べきめ細かな浮体10の制御では劣るが、操作が不慣れな場合や目標位置にある程度近づくまでの素早い操作が必要な場合には、有効な手段である。例えば、浮体10を水上で連結して使用する門橋やフロート橋を構成するような場合に、浮体10同士を向き合わせて、連結作業をするような場合に、好適である。
【0055】
なお、運転モード2では、状態「2−4」から、右操作棒22を操作して浮体10を後退させながら転回させることも可能である。しかし、プロペラ53、63を正転させる場合に比べ逆転させる場合には、プロペラ53、63からの流れが船外機50、60により邪魔をされるので推力が小さくなるので、本実施例では、プロペラ53、63が正転する場合のみ示している。
(運転モード3)
運転モード3における特徴的な運転状態を、図8に基準停止状態も含めて3種類示す。運転モード3では、右の旋回機構68を用いて、右の船外機60を180度旋回させている。左操作棒12は、左右双方のプロペラ53、63を同期して制御するのに用いられる。右操作棒22は、無効化されている。
【0056】
状態[3−1]は、基準停止状態であり、超信地旋回ボタン3bをオン状態にすることにより、右の旋回機構68が右の船外機60を180度旋回させた状態である。左操作棒12は、中立位置にある。以下に説明する超信地旋回の準備段階である。
【0057】
状態[3−2]は、左操作棒12を上側に傾けた状態である。制御部7は、左操作棒12の傾き角に応じて左右のプロペラ53、63の回転方向を正転とするとともに左右のプロペラ53、63回転速度を演算し、左船外機制御部59と右船外機制御部69へ同一の信号を出力する。制御部7からの指令信号出力により、プロペラ53、63は同一の回転速度で正転運転する。右船外機60が180度旋回(反転)しているので、左船外機50からは前進方向の、右船外機60からは後退方向の推力が発生する。その結果、浮体10は浮体10の中心位置を旋回中心として、その場右旋回し、いわゆる超信地旋回をする。旋回速度の大きさは、左操作棒12の傾き角に応じる。
【0058】
状態[3−3]は、左操作棒12を下側に傾けた状態であり、状態[3-2]と逆方向に浮体10を旋回させる場合である。状態[3-2]とその場回転の回転方向が異なるだけで、制御部7やプロペラ53、63の動作は状態[3−2]と同じであり、浮体10は左回りに超信地旋回する。
【0059】
この運転モード3は、その場右旋回、その場左旋回を、より高精度に行いたい場合に使用される。例えば、狭小な場所での方向転換などに使用するのがよい。また、左右の船外機50、60およびプロペラ53、63の動作が関連付けられているので、運転モード1よりも不慣れな人でも操作しやすい。一方運転モード1は操作の自由度が高いので、操作棒動作の技術が高ければ、きめ細かな対応も可能である。
【0060】
なお、上記実施例では、反転する船外機を右船外機60としたが、左船外機50としてもよいことは言うまでもない。左船外機50を旋回させる場合には、左操作棒12で左船外機50を旋回させ、右操作棒22でプロペラ53、63を操作するようにすれば、違和感なく浮体を操作できる。
(運転モード4)
運転モード4における特徴的な運転状態を、図9に4種類示す。運転モード4は、垂直運行ボタン3cが左、右、のいずれかに切替えられると有効にとなる。今、垂直運行ボタン3cが右に切替えられたとすると、左右の船外機50、60が90度右旋回される。この状態を基準位置として、右操作棒22を左右に傾けると、−90度〜+90度の範囲で、船外機50、60が旋回する。左操作棒12は、左右双方のプロペラ53、63を同期して制御するのに用いられる。垂直運行ボタン3cを左に切替えると、上記とは逆に、左右の船外機が90度左旋回される。その他の動作は、垂直運行ボタン3cを右に切替えた場合と同じである。
【0061】
なお、この運転モード4を使用すると、初期状態では、船外機50、60が左方向または右方向に90度旋回する。この運転モード4では、この船外機50、60が向いた左90度旋回方向または右90度旋回方向を前進方向とする。
【0062】
状態[4−1]は、右操作棒22を中立位置とし、左操作棒12を上側に傾けた状態である。右操作棒が中立位置なので、左右の船外機50、60を旋回駆動する旋回機構58、68は作動せず、垂直運行ボタン3cで切替えた右90度の旋回位置を保つ。左操作棒12が上側に傾けられているので、制御部7は左操作棒12の傾き角に応じて、左右両プロペラ53、63を正転させるとともにプロペラ53、63の回転速度を演算し、左船外機制御部59と右船外機制御部69に同じ信号を出力する。制御部7の指令信号によりプロペラ53、63が同一回転数で正転する。これにより、浮体10には右横向きの推力が作用し、浮体10は右横向きに進む。
【0063】
状態[4−2]は、状態[4−1]において右操作棒22を操作した状態である。すなわち、右操作棒22を右側に傾けると、旋回機構58、68は左右の船外機50、60を右方向に旋回駆動する。元々90度右旋回しているので、さらに旋回角が増し、90度から180度の範囲で旋回する。右操作棒22を右方向に最大傾けると、船外機50、60は反転状態になる。旋回角の大きさは、右操作棒22の傾き角による。左操作棒12は正転を示しているので、浮体10は後方に進む。この浮体10の動きはプロペラ53、63の正転での推進なので、運転モード1や運転モード2における逆転時(状態[1−6]、[2−4])よりも速い移動速度が得られる。
【0064】
状態[4−3]は、状態[4−2]とは反対方向の左側に右操作棒22を傾けた場合である。右操作棒22が左側に傾けられたので、船外機50、60を旋回駆動する旋回機構58、68は船外機50、60を元の方向に戻すように作用する。すなわち、0〜90度の範囲で、船外機50、60を旋回させる。旋回角は、右操作棒22の傾き角に応じて変化し、左側に最大傾けると、基準状態である浮体10の前後方向を向いた位置に船外機50、60を設定する。この状態では、左操作棒12が上側に傾けられているので、浮体10は前進する。
【0065】
状態[4−4]は、左操作棒12の傾きを状態[4−1]と逆方向にしたものである。左操作棒12が下側に傾けられているので、プロペラ53、63は逆転となる。旋回機構58、68により船外機50、60が90度右向きに旋回されているので、浮体10は左側へ移動する。ただし、この場合もプロペラ53、63が逆転動作なので、この運転モード4の説明では省略しているが、垂直運行ボタン3cを左に切替えて船外機を左側に旋回させた場合に比べて遅い速度しか達成できない。
【0066】
この運転モード4には、垂直運行ボタン3cを切替えて左右反対の動きをさせることができるが、ここでは説明を省略する。なお、上記実施例では垂直運行ボタン3cを切替えると、船外機50、60は右90度まで旋回するようにしているが、垂直運行ボタン3cを切替えたときに、船外機50、60を左右方向の90度以外の旋回位置に旋回させるようにすることも可能である。
【0067】
運転モード4は、たとえば浮体10を橋軸方向に連結してフロート橋を構成する場合であって、河川の流速が大きく浮体10が流されやすくなったときに、流れに対して抵抗が必要な場合等に適している。
【0068】
次に、上記各モードを組み合わせて遠隔操作手段1を操作し、浮体10を動作させる動作フローの一例を、図10に示す。浮体10および遠隔操作手段1の電源を入れて、どちらもスタンバイの状態になったあとの手順である。遠隔操作手段1の電源が投入されると、デフォルトで運転モード1が設定される(ステップS100)。切替ボタン3a〜3cのいずれも投入されていないと、ステップS120を実行し、左右の各操作棒12、22の傾き角に応じた速度で、左右プロペラを別々に運転する。切替ボタン3a〜3cのいずれかが投入されると、ステップS110で運転モードの変更を操作手段の制御部7が認識し、切替えたボタン3a〜3cの内容に応じて、運転モードを判定する(ステップS140、S160、S180)。運転モードが運転モード2に変更されているときは、ステップS150を実行し、右操作棒22の傾き角に応じて両船外機50、60を旋回させ、運転モード3が選択されているときはステップS170で右船外機60を180度旋回(反転)させる。運転モード4に変更されているときは、ステップS170で垂直運行ボタン3cの切替方向に応じて、左右両船外機50、60を90度旋回(新原点に設定)させ、次いでステップS200で右操作棒22の傾き角に応じて、左右両船外機を50、60を上記原点位置から旋回させる。
【0069】
運転モード2〜4が選択されているときは、左操作棒12の傾き角に応じた速度で、左右プロペラ53、63を運転するかまたは一方のプロペラ53または63を停止する。その後運転モードを変更したければ、ステップS130に戻って運転モード切替ボタン3を操作する。また、割り込み的に復帰ボタン3dがONになれば(ステップS230)、デフォルト状態に戻り、運転モード1が設定される(ステップS100)。
【0070】
上記各運転モードにおいては、浮体を遠隔操作で自走させているので、従来の浮体に比べ補助のボートや人力による牽引を必要とせず、遠隔操作手段を操作する操作者が1名いればよく、浮体を操作する人員を低減できる。そのため、緊急時であって人員確保が困難な場合にも、容易に浮体を移動させることができる。また、補助のボート及び補助のボート用運搬車を必要としないので、浮体システムをコンパクト化できる。さらに、浮体の操作を容易にするため各種運転モードを設けて操作者を補助するようにしているので、操作に不慣れな人が操作する場合でも容易に浮体を移動させることができる。
【0071】
従来の自走式浮体の運用では、指揮者の発令に基づいて、人力で船外機を操作し、それにより浮体を動作させるようにしていたが、本実施例によれば、操作者の操作(発令)により瞬時に船外機動作が可能になり、直感的な浮体の操作が可能であり、指令の聞き間違いによる誤操作や周囲の騒音により指令を聞き取れないという事態を回避できる。また、操作を補助する4つの運転モードにより、操作に不慣れな人であっても場面に適するように浮体を動作させることが可能となり、遠隔操作が容易になる。
【符号の説明】
【0072】
1…遠隔操作手段、3…運転モード切替手段、3a…通常方向切換ボタン、3b…超信地旋回ボタン、3c…垂直運行ボタン、3d…復帰モードボタン、3e…緊急停止ボタン、4…送信部、4a…送信回路、4b…アンテナ、6…遠隔操作装置(受信部)、6a…受信回路、6b…アンテナ、7…制御部、7a…演算部、7b…A/D入力部、7c…D/A出力部、10…浮体、10a…浮体の推進方向、10b…浮体の回転方向、12…左操作棒、13…左操作棒電圧センサ、22…右操作棒、23…右操作棒電圧センサ、24…信号変換部、31…電源(電池)、32…連結部、33…折り曲げ部、41、42…浮体ブロック、43…浮体ブロック(走行部)、44…波除け、48…河川、50…左船外機(航送装置)、51…ハンドル、52…軸受、53…プロペラ、53a…プロペラの推進方向、54…プロペラ駆動モータ、55…回転軸、56a、56b…(第1、第2の)旋回用歯車、57…左旋回用モータ、58…左旋回機構、59…左船外機制御部、60…右船外機(航送装置)、61…ハンドル、62…軸受、63…プロペラ、63a…プロペラの推進方向、64…プロペラ駆動モータ、65…回転軸、66a、66b…(第1、第2の)旋回用歯車、67…右旋回用モータ、68…右旋回機構、69…右船外機制御部、71、72…フレーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に浮かされ連結可能な浮体ブロックと、この浮体ブロックに搭載され遠隔からの指令を受信する遠隔操作装置と、この浮体を航走させるプロペラを有する複数の船外機と、前記遠隔操作装置が受信した指令信号に基づいて前記複数の船外機を制御する制御部と、前記複数の船外機を旋回させる旋回機構とを有し、前記複数の船外機は前記浮体ブロックの両端部に配置されており、さらに前記制御部は前記旋回機構を用いて前記船外機を前記浮体ブロックに対して旋回させ、この旋回させた状態で前記プロペラを前記制御部が回転駆動することを可能にしたことを特徴とする浮体。
【請求項2】
前記制御部は、前記プロペラの回転方向と回転速度を制御し、前記旋回機構は、前記船外機を旋回可能にする旋回手段を有することを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作装置および船外機を有する浮体。
【請求項3】
前記旋回手段は、前記船外機に取付けられた第1の旋回用歯車と、この第1の旋回用歯車と噛み合う第2の旋回用歯車と、この第2の旋回用歯車が取り付けられた旋回用モータとを有することを特徴とする請求項2に記載の浮体。
【請求項4】
前記遠隔操作手段に遠隔から指令を送信する遠隔操作手段を有し、この遠隔操作手段は2個の操作棒と、前記操作棒の操作内容と前記旋回機構の操作内容を切替える複数の切替ボタンを備えることを特徴とする請求項2に記載の浮体。
【請求項5】
水面に浮かされ連結可能な浮体ブロックの両端側に搭載された2個の船外機を、遠隔にある操作棒形の操作手段からの指令で操作する浮体の運転方法において、前記2個の船外機を前進方向の基準位置に位置決めして左右2個の操作棒の傾き角と傾き方向でそれぞれの船外機が有するプロペラの回転方向と回転速度を個別に定める第1の運転モードと、一方の操作棒の傾き角と傾き方向で前記2個の船外機の旋回方向と旋回量を決定し他方の操作棒の傾き角と傾き方向で双方の前記プロペラの回転方向と回転速度を決定する第2の運転モードと、前記2個の船外機を互いに逆方向に位置決めし、一方の操作棒の傾き角と傾き方向でその場回転方向と双方の前記プロペラの回転速度を定める第3の運転モードと、前記2個の船外機を左右いずれか90度だけ旋回させた状態を基準位置に位置決めし、一方の操作棒の傾き角と傾き方向で前記2個の船外機の旋回方向と旋回量を決定し他方の操作棒の傾き角と傾き方向で双方の前記プロペラの回転方向と回転速度を決定する第4の運転モードとを有することを特徴する浮体の運転方法。
【請求項6】
前記操作手段は前記4個の運転モードを切替えるための複数の切替ボタンを有しており、運転開始時には、各切替ボタンがオフ状態または中立状態であって前記第1の運転モードとなることを特徴とする請求項5に記載の浮体の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−171532(P2012−171532A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36925(P2011−36925)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】