浮体式免震構造物の付加減衰機構
【課題】浮体の固有周期に近い周期帯域の浮体に作用する水平外力に対しても、浮体の水平挙動を抑制する。
【解決手段】浮体構造物本体2は底部に形成された凹部9に気密性の空気室6を設けており、浮体構造物本体2が液体4の配された免震ピット3の内方に配設される際には、気密性空気室6の底面には液体室4aの液体4が接している。付加減衰機構10aは凹部9と気密性の空気室6と液体4aを備えており、地震等が発生して浮体構造物2が水平移動すると凹部9内で液体4aの液面に波が生じて、この波の波力が浮体構造物本体2の揺れと反対方向に揺れて浮体構造物本体2の水平挙動を抑制する。
【解決手段】浮体構造物本体2は底部に形成された凹部9に気密性の空気室6を設けており、浮体構造物本体2が液体4の配された免震ピット3の内方に配設される際には、気密性空気室6の底面には液体室4aの液体4が接している。付加減衰機構10aは凹部9と気密性の空気室6と液体4aを備えており、地震等が発生して浮体構造物2が水平移動すると凹部9内で液体4aの液面に波が生じて、この波の波力が浮体構造物本体2の揺れと反対方向に揺れて浮体構造物本体2の水平挙動を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式免震構造物の付加減衰機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、構造物本体を液体中に浮かべることで、固有周期の長周期化を図る完全浮体構造の浮体式免震構造物は、水平地震動に対して高い免震効果を得ることのできる構造として、一般に広く知られている。
また、これら完全浮体構造の浮体式免震構造物と同等の免震性能を確保しながら、構造物本体の変動荷重による水平軸から見た傾きや、液体の液面変動に追随する鉛直方向の挙動を抑制でき、固定構造物と同等の居住性及び使用性を確保できるものとして構造物本体を完全に液体中に浮揚させることなく、構造物本体自身の固定荷重の一部を、免震装置などの低せん断構造体を介して地盤で支持する、図10に示すような部分浮体式構造の浮体式免震構造物11も提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
このような浮体式免震構造は、完全浮体式構造及び部分浮体式構造の何れにおいても、構造物本体の固有周期を地震動の卓越周期帯域から長周期側にずらすことにより、地震に対してほぼ揺れない構造を実現するものである。しかし、実際の地震動は長周期成分を含む場合があり、また、地震動のみならず長周期成分を多く含む風外力が構造物本体に作用することがあるので、構造物本体の固有周期を長周期側にずらすだけでは構造物の揺れが大きくなることや、免震性能が悪化して強風時の居住性の確保が困難となることが考えられる。
【0004】
そこで、例えば図11に示す浮体式免震構造物21では、液体中に配置することにより、液体粒子と相対速度に応じた液体の粘性に起因して、液体によって運動エネルギーを低減させる減衰構造体17が浮体構造物本体12の側壁と免震ピット13の側壁との間に配置されるとともに、少なくとも液面の上限高さと免震ピット底面との間の高さ範囲に配置されているので、浮体構造物本体12に作用する流体力が浮体構造物本体12の水平方向の減衰力として機能することとなり、浮体構造物本体12の固有周期に近い周期帯域の浮体構造物本体12に作用する水平外力に対しても浮体構造物本体12の水平挙動を抑制できる(特許文献2参照)。
また、図12に示す浮体式免震構造物31では、浮体構造物本体12の底面に減衰構造体17が配置されているので、特許文献2に示す浮体式免震構造物21と同様に浮体構造物本体12の固有周期に近い周期帯域の浮体構造物本体12に作用する水平外力に対しても浮体構造物本体12の水平挙動を抑制できる(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−27732号公報
【特許文献2】特開2005−61598号公報
【特許文献3】特開2004−353257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の浮体式免震構造物では以下のような問題があった。特許文献2による減衰構造体17を浮体構造物本体12の側壁と免震ピット13の側壁との間に設置する浮体式免震構造物21では、地震や強風時に減衰構造体17が構造物と衝突しないように十分な間隔が必要であることや、浮体式免震構造物21の平面形状に関し長辺と短辺の比が異なる場合では減衰構造体17を均等に設置できず、減衰効果に均一性がなく減衰効果が十分に発揮できないなどの問題があった。
また、特許文献3による減衰構造体17を浮体構造物本体12の底部に設置する浮体式免震構造物31では、減衰構造体17を浮体構造物本体12の側壁と免震ピット13の側壁との間に設置する場合に比べて、地震等による浮体構造物本体12の水平移動によって減衰構造体17が浮体構造物本体12と衝突するといった問題がなく、浮体式免震構造物31の平面形状に関し長辺と短辺の比が異なる場合であっても、減衰効果に均一性が出るように減衰構造体17の形状を調整して浮体構造物本体12の底部に減衰構造体17を配置することができるが、同量の減衰構造体17を浮体構造物本体12の側壁と免震ピット13の側壁との間に設置した場合に比べて減衰効果は低いという問題があった。このように浮体に作用する浮体の固有周期に近い周期帯域の水平外力に対して浮体の水平挙動を効率的に抑制する手段がなかった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、浮体の固有周期に近い周期帯域の、浮体に作用する水平外力に対しても、浮体の水平挙動を抑制することができ、効率的に設置できる浮体式免震構造物の付加減衰機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る浮体式免震構造物の付加減衰機構では、地盤を掘削して構築する免震ピットと、免震ピットの内方に収容された液体と、液体中に設置された浮体構造物本体と、免震ピットの内側または外側の地盤に支持され、浮体構造物本体に生じる鉛直方向の変動荷重と浮力で相殺された残りの固定荷重を支持し、浮体構造物本体と地盤との水平挙動を絶縁する低せん断剛性構造体とを備える浮体式免震構造物であって、浮体構造物本体の底部に形成された凹部と、凹部内に設けられた空気室と、凹部内で空気室の下面に接する液体を有する液体室とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、浮体免震構造物の付加減衰機構は、凹部内に空気室と液体室とが設けられており、地震等により浮体構造物本体が水平移動すると凹部内で液体室の液体が動揺して波を生じるので、その波力を利用して浮体構造物本体の水平挙動を抑制することができる。
また、浮体式免震構造物の付加減衰機構は、浮体構造物本体の底部に形成されているので、付加減衰機構が浮体構造物本体の周囲に設けられた従来の浮体式免震構造物に比べて、地震等により浮体構造物本体が水平移動する際の付加減衰機構と浮体構造物本体とが衝突しないための所定幅のスペースを取る必要がなく、付加減衰機構を効率的に配置することができる。また、浮体構造物本体が浮力を得るための液体を付加減衰機構に使用することができる。
【0009】
また、本発明に係る浮体式免震構造物の付加減衰機構では、空気室は気密に封止されていることが好ましい。
本発明では、浮体式免震構造物の付加減衰機構では、空気室は気密性があり凹部内から空気室の空気が外部へ逃げ出さないので、付加減衰機構の減衰性能を決める要因の一つである空気量が一定に保たれて、付加減衰機構の減衰性能が安定する。また、空気室は気密性があるので、凹部内の液体室が有する液体の液面の高さを免震ピットに収容された浮体構造物本体の周囲の液面の高さに関わらず適宜設定できるので、付加減衰機構の設置高さも適宜設定できて、付加減衰機構を浮体構造物本体の任意の場所に設置することができる。
【0010】
また、本発明に係る浮体構造物本体の付加減衰機構では、空気室は浮体構造物本体の居室スペースに開放されていてもよい。
本発明では、浮体構造物本体は例えば基礎などの基部とその上方の例えば居室空間やオフィス空間などの居室機能を持つ居室スペースで構成されていて、空気室は居室スペースに開放されて連通しているので、メンテナンスが行いやすい。
【0011】
また、本発明に係る浮体式免震構造物の付加減衰機構は、凹部に位置する液体室中に、液体の運動エネルギーを低減させる透水減衰材が備えられていることが好ましい。
本発明では、透水減衰材が備えられているので、付加減衰機構に流体抵抗による減衰効果と消波効果が付与されて減衰性能がより向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、浮体式免震構造物の付加減衰機構は浮体構造物本体の底部に形成した凹部と、凹部内に設けられた空気室及び液体室とを備えているので、地震等により浮体構造物本体が免震ピット内を水平移動した際に、液体室の液体の波力を利用して、浮体の固有周期に近い周期帯域の浮体に作用する水平外力に対して、浮体の水平挙動を効率的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第一の実施の形態による浮体式免震構造物の付加減衰機構について、図1に基づいて説明する。
図1は本発明の第一の実施の形態による浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【0014】
図1に示すように、第一の実施の形態による浮体式免震構造物1aは、地盤を掘削して構築する免震ピット3の底面に免震装置5が配設され、免震ピット3に液体4が収容されて、底部に設けられた凹部9に気密性の空気室6を備えた浮体構造物本体2が免震装置5の上部に配設された構成とする。
【0015】
免震ピット3は地盤を所望の深さまで掘削することにより形成され、土圧を受けるための側壁を備え、底面には床を備えている。また、免震ピット3は、浮体構造物本体2が免震ピット3の内方に配置された際に、浮体構造物本体2の側壁と免震ピット3の側壁との間に所定幅のクリアランスが全周にわたって確保できる大きさの平面視形状に構築されており、地震等により浮体構造物本体2が水平方向に移動した場合にも、免震ピット3の側壁に浮体構造物本体2が接触しない形状である。このような免震ピット3は、その内方に液体4が収容されることを目的として設けられるスペースであり、免震ピット3の内方に収容された液体4が免震ピット3外部に移動しない構成とする。液体4は例えば水などが採用できる。
【0016】
浮体構造物本体2は、例えば居住空間やオフィス空間等の居室機能を有する上方の部分を居室スペース2aとし、下方の基礎部分を基部2bとする。浮体構造物本体2は液体4が配された免震ピット3の底部に配設された免震装置5の上部に設置される。ここで、浮体構造物本体2の浮体荷重Wは、浮体構造物本体2の固定荷重W1と内装等による積載荷重及び利用者の移動などにより生じる活荷重を含む鉛直下方向に作用する正値の変動荷重W2とを足しあわせたもの(W=W1+W2)である。
しかし、本実施の形態では浮体構造物本体2の浮体荷重Wの全てを浮力により相殺することなく、浮体構造物本体2の固定荷重W1の一部(ΔW1)を除いた荷重(W1−ΔW1)を浮力Bにより相殺する深さまで浮体構造物本体2を液体4に浸漬する構成としている。このため、浮体構造物本体2は変動荷重W2及び固定荷重W1の一部(ΔW1)が鉛直下方向に生じることとなるが、この荷重W2+ΔW1は、免震装置5を介して地盤に支持する構成としている。
【0017】
免震装置5は、例えばせん断弾性係数の小さい積層ゴムで構成されており、免震ピット3の底部に所定の距離を持って複数配置されて、上部に浮体構造物本体2が配設される。このように配置される免震装置5は、浮体構造物本体2が液体4より受ける浮力Bを除いた浮体構造物本体2に生じる固定荷重の一部(ΔW1)と変動荷重W2を支持する機能と、浮体構造物本体2と免震ピット3との水平挙動を絶縁し長周期化する機能とを有するアイソレーターとして機能するものである。
これにより、浮体式免震構造物1aは浮体構造物本体2に対して、高い免震効果を付与できるとともに、変動荷重による浮体構造物本体2の傾きも制御して、固定構造物と同じ居住性、使用性を確保できるものである。
【0018】
凹部9は、浮体構造物本体2の底部に形成された例えば直方体形状の空間であり、上面と側面は浮体構造物本体2の基部2bに区画され、底面は開放されている形状である。
空気室6は、凹部9内に設けられた所定量の空気が配された空間であり、液体4の収容された免震ピット3に浮体構造物本体2が設置される際には、空気室6の下面は凹部9内に貯留された一部の液体4(これを便宜上液体室4aとする)に接しており、気密性のある空間となる。空気室6は気密性があるので液体室4aが有する液体4の液面の高さを、免震ピット3の内の浮体構造物本体2の周囲の液体4の液面の高さよりも低く設定する。
【0019】
凹部9内では液体室4aの液体4は動揺して液面に波を立てることが可能な構成とする。また、液体室4aが有する液体4の液面に生じる波が揺れる周期は浮体構造物本体2の固有周期と近い周期帯域となるように、空気室6の空気量や凹部9の形状を設定する。地震等で浮体構造物本体2が水平移動して液体室4aが有する液体4が動揺して液面に波が立つ際には、空気室6の所定量の空気が凹部9内から外部に逃げない程度の形状とする。
【0020】
第一の実施形態の浮体式免震構造物1aの付加減衰機構10aは、上述した凹部9と所定量の空気が配された気密性の空気室6と凹部9内に貯留されて空気室6の下面に接する液体4を有する液体室4aとで構成される。
【0021】
次に、上述した第一の実施形態による浮体式免震構造物の付加減衰機構の作用について図面を用いて説明する。
付加減衰機構10aを構成する凹部9と空気室6と液体室4aとは、凹部9内の空気室6の下面は液体室4aの液体4に接する構成なので、地震等によって浮体構造物本体2が水平移動すると、凹部9内で液体室4aの液体4は動揺して液面に波を生じ、その波は浮体構造物本体2の揺れと反対方向に揺れて浮体構造物本体2を押す。そして、液体室4aの液体4が揺れる周期は、浮体構造物本体2の固有周期に近い周期帯域となるように空気室6の空気量や凹部9の形状を設定しているので、付加減衰機構10aは液体室4aが有する液体4の液面に生ずる波が浮体構造物本体2の水平挙動を効果的に抑制するように作用して浮体構造物本体2の水平方向の揺れと反対方向に押すので、浮体構造物本体2の揺れを低減する作用を奏する。
【0022】
また、空気室6は気密性があり凹部9内から空気室6の空気が外部へ逃げ出さないので、付加減衰機構10aの減衰性能を決める要因の一つである空気量を一定に保つことができ、付加減衰機構10aの減衰性能を安定させることができる。また、付加減衰機構10aに備えられた空気室6は気密性があるので、液体室4aが有する液体4の液面の高さを、浮体構造物本体2の周囲の液体4の液面の高さよりも低く又は高くすることが可能で、空気室6の設置高さを適宜設定できる。そして、付加減衰機構10aの設置高さを適宜設定できるので、付加減衰機構10aは浮体構造物本体2の任意の場所に設置でき配置計画がしやすい。また、付加減衰機構10aは浮体構造物本体2の底部に形成されているので、付加減衰機構が浮体構造物本体の周囲に設けられた従来の浮体式免震構造物に比べて、地震等により浮体構造物本体2が免震ピット3内を水平移動した際の付加減衰機構10aと浮体構造物本体2の側壁や免震ピット3の側壁とが衝突しないための所定幅のスペースを取る必要がなく、付加減衰機構10aを効率的に配置することができる。
【0023】
また、第一の実施形態の付加減衰機構10aは、液体の動揺により構造物の揺れを低減させるスロッシングダンパーと同様の機能を有するが、構造物の上部に専用の水槽を設置して内部に液体を封入する場合が多い一般的なスロッシングダンパーと比べると、第一の実施の形態による付加減衰機構10aでは浮体構造物本体2が浮力を得るための液体4を利用し、浮体構造物本体2の底部の形状を変形させることでスロッシングダンパーと同等の機能を得ることができるので、経済的でありメンテナンス性も優れている。
【0024】
上述した第一の実施の形態による浮体式免震構造物の付加減衰機構では、地震等により浮体構造物本体2が水平移動する際に、付加減衰機構10aに備えられた液体室4aの液体4に生じる波の波力が、浮体構造物本体2の水平方向の復元力に加え減衰力として効率的に機能するので、浮体構造物本体2の固有周期に近い周期帯域の水平外力に対しても、浮体構造物本体2の水平挙動を抑制し、快適な居住性及び使用性を確保できる効果を奏する。
【0025】
次に、第二の実施の形態について、図2に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図2は、本発明の第二の実施の形態による浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【0026】
図2に示すように、第二の実施の形態による浮体式免震構造物1bは、第一の実施の形態による浮体式免震構造物1aの付加減衰機構10aに備えられた液体室4aが有する液体4の液面に重ねて液体の運動エネルギーを低減させる透水減衰材7を配置したものである。
図3に示すように、透水減衰材7は、例えば糸状のポリプロピレン材を立体網目状に織り込んで空隙に液体を透水させてなる透水体で構成されており、所定の厚さ及び面積を有する立体構造体に形成されている。
【0027】
次に、上述した第二の実施の形態による浮体式免震構造物1bの付加減衰機構10bの作用について説明する。
付加減衰機構10bは第一の実施形態による浮体式免震構造物1aの付加減衰機構10aと同様に、地震等により浮体構造物本体2が水平移動した際には、凹部9内では空気室6の底面に接する液体室4aが有する液体4の液面に波が生じて浮体構造物本体2を浮体構造物本体2の揺れと反対に押すので、浮体構造物本体2の揺れを低減する作用を奏する。
そして付加減衰機構10bには透水減衰材7が備えられているので、地震等が発生して浮体構造物本体2が免震ピット3内を水平方向に移動することにより液体室4aの液体4の液面に生じる波のエネルギーを減衰させる作用がある。これは、液体室4aが有する液体4の液面に生じる波が地震などによる浮体構造物本体2の振動を減衰させた後にも、液体室4aの液体4が揺れることで浮体構造物本体2を振動させることを抑えるためのものである。また、透水減衰材7は液体の粘性に起因したエネルギーの減衰を利用して、地震などによる浮体構造物本体2の振動を減衰させる作用もあり、上述した波のエネルギーを減衰させる作用と併せて浮体構造物本体2に快適な居住性及び使用性を確保できる。
【0028】
また、透水減衰材7は糸状のポリプロピレン材を立体網目状に織り込んで隙間に透水させてなる透水体で構成されており、糸状のポリプロピレン材の空隙率によって透水性能を調整することができて、透水減衰材7の体積や形状で減衰性能を制御することができるので、透水減衰材7による減衰性能の調整が容易である。
【0029】
次に、第三の実施の形態について、図4に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図4は、本発明の第三の実施の形態による浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【0030】
図4に示すように、第三の実施の形態による浮体式免震構造物1cの付加減衰機構10cは、第二の実施の形態による浮体式免震構造物1bの付加減衰機構10bに備えられた凹部9を、上面が開放されて浮体構造物本体2の居室スペース2aに連通する凹部9cに変形させたものである。
凹部9cは、浮体構造物本体2の底面に形成された例えば直方体形状の空間で、側面は浮体構造物本体2に区画され、上面、底面は開放されている形状である。
空気室8は、凹部9cに設けられた空気が配された空間であり、液体4の収容された免震ピット3に浮体構造物本体2が設置される際には、空気室8の下面は液体室4aに接している。空気室8の上面は浮体構造物本体2の居室スペース2aに開放されて連通しており、居室スペース2aを介して外気に通じているので空気室8は非気密性の空間となる。空気室8の下面に接する液体室4aが有する液体4の液面の高さは浮体構造物本体2の周囲の免震ピット3内の液体4の液面の同じ高さとなる。液体室4aが有する液体4の液面に重ねて液体の運動エネルギーを低減させる透水減衰材7が設置される。付加減衰機構10cは凹部9cと非気密性の空気室8と液体室4aと、透水減衰材7とで構成される。
【0031】
第三の実施の形態による付加減衰機構10cは、地震等により浮体構造物本体2が水平移動した際に、凹部9c内で液体室4aが有する液体4の液面に波が生じる構成で、この波が揺れる周期が浮体構造物本体2の固有周期に近い周期帯域となるように空気室8や凹部9の形状を設定しており、また、液体室4aの液体4に透水減衰材7が設置されているので、第二の実施の形態による浮体式免震構造物の付加減衰機構10bと同等の地震などによる浮体構造物本体2の振動を減衰させる作用がある。また、空気室8の上方が開放されて浮体構造物本体2の居室スペース2aに連通しているので、浮体構造物本体2の居室スペース2aの面積を狭くしてしまうことがあるが、透水減衰材7の点検や破損時の修復などが行いやすく、メンテナンス性が第二の実施の形態による付加減衰機構10bに比べてより優れている。
【0032】
第一の実施の形態による浮体式免震構造物1aと第二の実施の形態による浮体式免震構造物1bについて図10に示す従来の浮体式免震構造物11との比較による減衰性能のシュミレーションを行った。これについて、図5乃至図8に基づいて説明する。
図5はタフト波(最大加速度496Gal)の地盤加速度と時間の関係を示す図、図6は図5に示すタフト波を入力した場合の従来の浮体式免震構造物と第一の実施の形態による浮体式免震構造物の応答加速度と時間の関係を示す図、図7は図5に示すタフト波を入力した場合の第一の実施の形態による浮体式免震構造物と第二の実施の形態による浮体式免震構造物の応答加速度と時間の関係を示す図、図8は入力地震波と、従来の浮体式免震構造物と第一及び第二の実施形態による浮体式免震構造物の最大応答加速度の関係を示す図である。
【0033】
すべての浮体式免震構造物は単位奥行きあたりの浮体構造物本体の重量を77.4t/m、単位奥行きあたりの没水部体積を39.8m3 /m、浮体構造物重量に対する浮力の割合を50.8%、単位奥行きあたりの免震装置5の積層ゴムの等価水平剛性を182kN/m/m、免震装置5の積層ゴムの水平減衰定数を5.0%とし、液体4は水を採用し、第一の実施の形態による浮体式免震構造物1aと第二の実施の形態による浮体式免震構造物1bの浮体構造物本体の周辺の水面高さと空気室6の水面高さの差を1.8m、第二の実施形態による浮体式免震構造物1bの透水減衰材7の体積を2.0m2 とし付加減衰機構10a、10bの有無と透水減衰材7の有無以外は同じ条件である。
【0034】
図6に示すように、図5に示すタフト波を入力した図10に示す従来の浮体式免震構造物11の最大応答加速度は126Galであり、図1に示す付加減衰機構10aが備えられた第一の実施の形態による浮体式免震構造物1aの最大応答加速度は109Galである。浮体式免震構造物1aの最大応答加速度は浮体式免震構造物11の最大応答加速度よりも小さい値となるので、浮体式免震構造物1aの付加減衰機構10aに備えられた液体室4aが有する液体4の液面に生じる波の波力による減衰効果が確認できる。ただし、地震波到達後の自由振動(時刻40秒以降)に関しては、付加減衰機構10aの液体室4aが有する液体4の液面の共振周波数に対応した周期の揺れが残存するため、浮体式免震構造物1aの揺れが若干大きな振幅となることがわかる。
【0035】
次に図7に示すように、図5に示すタフト波を入力した図1に示す透水減衰材7を備えていない浮体式免震構造物1aの最大応答加速度は109Galであるが、図2に示す透水減衰材7を備えた浮体式免震構造物1bの最大応答加速度は104Galである。浮体式免震構造物1bの最大応答加速度は浮体式免震構造物1aの最大応答加速度よりも小さい値となるので、透水減衰材7による減衰効果が確認できる。また浮体式免震構造物1bでは時刻40秒以降の自由振動を速やかに減衰しているので透水減衰材7による液体室4aが有する液体4の波のエネルギーを減衰させる効果も確認できる。
【0036】
また図8に示すように、3つの浮体式免震構造物11、1a、1b、についてタフト波に加えエルセントロ波、八戸波を入力し計算した最大応答加速度はいずれの場合でも、浮体式免震構造物1bが小さい値となり、もっとも良好な免震性を備えていることがわかる。特にタフト波は浮体構造物本体2の固有周期に近い周期帯域の成分が多く、他の地震波よりも相対的に大きな振幅を持つため、図10に示す従来の浮体式免震構造物11ではかなり相対変位が大きくなっているが、図2に示す浮体式免震構造物1bでは、相対変位が大幅に低減されており付加減衰機構による減衰効果が顕著に現れている。
【0037】
以上、本発明による浮体式免震構造物の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、低せん断剛性構造体は積層ゴムを使用した免震装置5を使用しているが、その他に例えば、免震装置5に代えて球状物体などの滑り支承を免震ピット3の底面の上に所定の間隔をもって複数離間配置し、これらの上方に浮体構造物本体2を設置する構成としてもよい。要は、低せん断剛性構造体は、浮体構造物本体2の変動荷重と固定荷重の一部を支持し、浮体構造物本体2と地盤との水平挙動を絶縁し、浮体構造物本体2の固有周波数を長周期化する機能を有するものであればよいのである。
【0038】
例えば、本実施の形態では低せん断性構造体の免震装置5は免震ピット3の底面に設置して上部に浮体構造物本体2を配設しているが、図9に示す浮体式免震構造物1dのように免震装置5を免震ピット3の外部の外周縁近傍の地盤上に所定の距離を持って複数配置して、浮体構造物本体2の免震ピット3よりも上方にある居室スペース2dを平面視形状を免震ピット3より張り出す程度の大きさに形成して配設してもよい。また、図9に示す浮体式免震構造物1dは第一の実施の形態による浮体式免震構造物1aの変形例であるが、付加減衰機構10aに代えて付加減衰機構10b又は10cを設置してもよい。要は浮体構造物本体2と地盤の水平挙動を絶縁し長周期化する機能を有すればよいのである。
例えば、上述した実施の形態では、液体4は水を採用しているが、その他の液体でもよい。
例えば、上述した実施の形態では、付加減衰機構10a、10b、10cに備える凹部9、9cは直方体の形状をしているが、例えば円柱形などその他の形状でもよく、また付加減衰機構10a、10b及び10cは1ヶ所でなく複数に分割して設置してもよい。
例えば、第三の実施の形態では、凹部9cは上面が開放されて浮体構造物本体2の居室スペース2aに連通して居室スペース2aを介して外気に通じているが、居室スペース2aを介して外気に通じていなくてもよく、上面は全面が開放されていなくてもよい。要は付加減衰機構10cが居室スペース2aよりメンテナンスが行うことができればよいのである。
例えば、上述した第二及び第三の実施の形態では、透水減衰材7は糸状のポリプロピレン材を立体網目状に織り込んで隙間に透水させてなる透水体を採用しているが、例えば他に立体不織布やアスファルトなどのれき材料やモルタル及びコンクリート等のセメント系材料で構成される透水性を有するマット、あるいは軽石などを収納したスリット状の収納装置など、空隙率が高く、透水係数の高い材料であればいずれを用いてもよい。
要は、本発明において所期の機能が得られればよいのである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第一の実施の形態による浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【図2】本発明の第二の実施の形態による浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【図3】本発明の第二及び第三の実施の形態による浮体式免震構造物に備える透水減衰材の一例を表す図である。
【図4】本発明の第三の実施の形態による浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【図5】タフト波(最大加速度496Gal)の地盤加速度と時間の関係を示す図である。
【図6】図6に示すタフト波を入力した場合の従来の浮体式免震構造物と第一の実施の形態による浮体式免震構造物の応答加速度と時間の関係を示す図である。
【図7】図6に示すタフト波を入力した場合の第一の実施の形態による浮体式免震構造物と第二の実施の形態による浮体式免震構造物の応答加速度と時間の関係を示す図である。
【図8】入力地震波と、従来の浮体式免震構造物と第一及び第二の実施形態による浮体式免震構造物の最大応答加速度の関係を示す図である。
【図9】本発明の第一の実施の形態による浮体式免震構造物の変形例である。
【図10】従来の浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【図11】従来の他の浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【図12】従来の更に他の浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1a、1b、1c 浮体式免震構造物
2 浮体構造物本体
3 免震ピット
4 液体
4a 液体室
5 免震装置(低せん断剛性構造)
6、8 空気室
7 透水減衰材
9、9c 凹部
10a、10b、10c 付加減衰機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式免震構造物の付加減衰機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、構造物本体を液体中に浮かべることで、固有周期の長周期化を図る完全浮体構造の浮体式免震構造物は、水平地震動に対して高い免震効果を得ることのできる構造として、一般に広く知られている。
また、これら完全浮体構造の浮体式免震構造物と同等の免震性能を確保しながら、構造物本体の変動荷重による水平軸から見た傾きや、液体の液面変動に追随する鉛直方向の挙動を抑制でき、固定構造物と同等の居住性及び使用性を確保できるものとして構造物本体を完全に液体中に浮揚させることなく、構造物本体自身の固定荷重の一部を、免震装置などの低せん断構造体を介して地盤で支持する、図10に示すような部分浮体式構造の浮体式免震構造物11も提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
このような浮体式免震構造は、完全浮体式構造及び部分浮体式構造の何れにおいても、構造物本体の固有周期を地震動の卓越周期帯域から長周期側にずらすことにより、地震に対してほぼ揺れない構造を実現するものである。しかし、実際の地震動は長周期成分を含む場合があり、また、地震動のみならず長周期成分を多く含む風外力が構造物本体に作用することがあるので、構造物本体の固有周期を長周期側にずらすだけでは構造物の揺れが大きくなることや、免震性能が悪化して強風時の居住性の確保が困難となることが考えられる。
【0004】
そこで、例えば図11に示す浮体式免震構造物21では、液体中に配置することにより、液体粒子と相対速度に応じた液体の粘性に起因して、液体によって運動エネルギーを低減させる減衰構造体17が浮体構造物本体12の側壁と免震ピット13の側壁との間に配置されるとともに、少なくとも液面の上限高さと免震ピット底面との間の高さ範囲に配置されているので、浮体構造物本体12に作用する流体力が浮体構造物本体12の水平方向の減衰力として機能することとなり、浮体構造物本体12の固有周期に近い周期帯域の浮体構造物本体12に作用する水平外力に対しても浮体構造物本体12の水平挙動を抑制できる(特許文献2参照)。
また、図12に示す浮体式免震構造物31では、浮体構造物本体12の底面に減衰構造体17が配置されているので、特許文献2に示す浮体式免震構造物21と同様に浮体構造物本体12の固有周期に近い周期帯域の浮体構造物本体12に作用する水平外力に対しても浮体構造物本体12の水平挙動を抑制できる(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−27732号公報
【特許文献2】特開2005−61598号公報
【特許文献3】特開2004−353257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の浮体式免震構造物では以下のような問題があった。特許文献2による減衰構造体17を浮体構造物本体12の側壁と免震ピット13の側壁との間に設置する浮体式免震構造物21では、地震や強風時に減衰構造体17が構造物と衝突しないように十分な間隔が必要であることや、浮体式免震構造物21の平面形状に関し長辺と短辺の比が異なる場合では減衰構造体17を均等に設置できず、減衰効果に均一性がなく減衰効果が十分に発揮できないなどの問題があった。
また、特許文献3による減衰構造体17を浮体構造物本体12の底部に設置する浮体式免震構造物31では、減衰構造体17を浮体構造物本体12の側壁と免震ピット13の側壁との間に設置する場合に比べて、地震等による浮体構造物本体12の水平移動によって減衰構造体17が浮体構造物本体12と衝突するといった問題がなく、浮体式免震構造物31の平面形状に関し長辺と短辺の比が異なる場合であっても、減衰効果に均一性が出るように減衰構造体17の形状を調整して浮体構造物本体12の底部に減衰構造体17を配置することができるが、同量の減衰構造体17を浮体構造物本体12の側壁と免震ピット13の側壁との間に設置した場合に比べて減衰効果は低いという問題があった。このように浮体に作用する浮体の固有周期に近い周期帯域の水平外力に対して浮体の水平挙動を効率的に抑制する手段がなかった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、浮体の固有周期に近い周期帯域の、浮体に作用する水平外力に対しても、浮体の水平挙動を抑制することができ、効率的に設置できる浮体式免震構造物の付加減衰機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る浮体式免震構造物の付加減衰機構では、地盤を掘削して構築する免震ピットと、免震ピットの内方に収容された液体と、液体中に設置された浮体構造物本体と、免震ピットの内側または外側の地盤に支持され、浮体構造物本体に生じる鉛直方向の変動荷重と浮力で相殺された残りの固定荷重を支持し、浮体構造物本体と地盤との水平挙動を絶縁する低せん断剛性構造体とを備える浮体式免震構造物であって、浮体構造物本体の底部に形成された凹部と、凹部内に設けられた空気室と、凹部内で空気室の下面に接する液体を有する液体室とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、浮体免震構造物の付加減衰機構は、凹部内に空気室と液体室とが設けられており、地震等により浮体構造物本体が水平移動すると凹部内で液体室の液体が動揺して波を生じるので、その波力を利用して浮体構造物本体の水平挙動を抑制することができる。
また、浮体式免震構造物の付加減衰機構は、浮体構造物本体の底部に形成されているので、付加減衰機構が浮体構造物本体の周囲に設けられた従来の浮体式免震構造物に比べて、地震等により浮体構造物本体が水平移動する際の付加減衰機構と浮体構造物本体とが衝突しないための所定幅のスペースを取る必要がなく、付加減衰機構を効率的に配置することができる。また、浮体構造物本体が浮力を得るための液体を付加減衰機構に使用することができる。
【0009】
また、本発明に係る浮体式免震構造物の付加減衰機構では、空気室は気密に封止されていることが好ましい。
本発明では、浮体式免震構造物の付加減衰機構では、空気室は気密性があり凹部内から空気室の空気が外部へ逃げ出さないので、付加減衰機構の減衰性能を決める要因の一つである空気量が一定に保たれて、付加減衰機構の減衰性能が安定する。また、空気室は気密性があるので、凹部内の液体室が有する液体の液面の高さを免震ピットに収容された浮体構造物本体の周囲の液面の高さに関わらず適宜設定できるので、付加減衰機構の設置高さも適宜設定できて、付加減衰機構を浮体構造物本体の任意の場所に設置することができる。
【0010】
また、本発明に係る浮体構造物本体の付加減衰機構では、空気室は浮体構造物本体の居室スペースに開放されていてもよい。
本発明では、浮体構造物本体は例えば基礎などの基部とその上方の例えば居室空間やオフィス空間などの居室機能を持つ居室スペースで構成されていて、空気室は居室スペースに開放されて連通しているので、メンテナンスが行いやすい。
【0011】
また、本発明に係る浮体式免震構造物の付加減衰機構は、凹部に位置する液体室中に、液体の運動エネルギーを低減させる透水減衰材が備えられていることが好ましい。
本発明では、透水減衰材が備えられているので、付加減衰機構に流体抵抗による減衰効果と消波効果が付与されて減衰性能がより向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、浮体式免震構造物の付加減衰機構は浮体構造物本体の底部に形成した凹部と、凹部内に設けられた空気室及び液体室とを備えているので、地震等により浮体構造物本体が免震ピット内を水平移動した際に、液体室の液体の波力を利用して、浮体の固有周期に近い周期帯域の浮体に作用する水平外力に対して、浮体の水平挙動を効率的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第一の実施の形態による浮体式免震構造物の付加減衰機構について、図1に基づいて説明する。
図1は本発明の第一の実施の形態による浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【0014】
図1に示すように、第一の実施の形態による浮体式免震構造物1aは、地盤を掘削して構築する免震ピット3の底面に免震装置5が配設され、免震ピット3に液体4が収容されて、底部に設けられた凹部9に気密性の空気室6を備えた浮体構造物本体2が免震装置5の上部に配設された構成とする。
【0015】
免震ピット3は地盤を所望の深さまで掘削することにより形成され、土圧を受けるための側壁を備え、底面には床を備えている。また、免震ピット3は、浮体構造物本体2が免震ピット3の内方に配置された際に、浮体構造物本体2の側壁と免震ピット3の側壁との間に所定幅のクリアランスが全周にわたって確保できる大きさの平面視形状に構築されており、地震等により浮体構造物本体2が水平方向に移動した場合にも、免震ピット3の側壁に浮体構造物本体2が接触しない形状である。このような免震ピット3は、その内方に液体4が収容されることを目的として設けられるスペースであり、免震ピット3の内方に収容された液体4が免震ピット3外部に移動しない構成とする。液体4は例えば水などが採用できる。
【0016】
浮体構造物本体2は、例えば居住空間やオフィス空間等の居室機能を有する上方の部分を居室スペース2aとし、下方の基礎部分を基部2bとする。浮体構造物本体2は液体4が配された免震ピット3の底部に配設された免震装置5の上部に設置される。ここで、浮体構造物本体2の浮体荷重Wは、浮体構造物本体2の固定荷重W1と内装等による積載荷重及び利用者の移動などにより生じる活荷重を含む鉛直下方向に作用する正値の変動荷重W2とを足しあわせたもの(W=W1+W2)である。
しかし、本実施の形態では浮体構造物本体2の浮体荷重Wの全てを浮力により相殺することなく、浮体構造物本体2の固定荷重W1の一部(ΔW1)を除いた荷重(W1−ΔW1)を浮力Bにより相殺する深さまで浮体構造物本体2を液体4に浸漬する構成としている。このため、浮体構造物本体2は変動荷重W2及び固定荷重W1の一部(ΔW1)が鉛直下方向に生じることとなるが、この荷重W2+ΔW1は、免震装置5を介して地盤に支持する構成としている。
【0017】
免震装置5は、例えばせん断弾性係数の小さい積層ゴムで構成されており、免震ピット3の底部に所定の距離を持って複数配置されて、上部に浮体構造物本体2が配設される。このように配置される免震装置5は、浮体構造物本体2が液体4より受ける浮力Bを除いた浮体構造物本体2に生じる固定荷重の一部(ΔW1)と変動荷重W2を支持する機能と、浮体構造物本体2と免震ピット3との水平挙動を絶縁し長周期化する機能とを有するアイソレーターとして機能するものである。
これにより、浮体式免震構造物1aは浮体構造物本体2に対して、高い免震効果を付与できるとともに、変動荷重による浮体構造物本体2の傾きも制御して、固定構造物と同じ居住性、使用性を確保できるものである。
【0018】
凹部9は、浮体構造物本体2の底部に形成された例えば直方体形状の空間であり、上面と側面は浮体構造物本体2の基部2bに区画され、底面は開放されている形状である。
空気室6は、凹部9内に設けられた所定量の空気が配された空間であり、液体4の収容された免震ピット3に浮体構造物本体2が設置される際には、空気室6の下面は凹部9内に貯留された一部の液体4(これを便宜上液体室4aとする)に接しており、気密性のある空間となる。空気室6は気密性があるので液体室4aが有する液体4の液面の高さを、免震ピット3の内の浮体構造物本体2の周囲の液体4の液面の高さよりも低く設定する。
【0019】
凹部9内では液体室4aの液体4は動揺して液面に波を立てることが可能な構成とする。また、液体室4aが有する液体4の液面に生じる波が揺れる周期は浮体構造物本体2の固有周期と近い周期帯域となるように、空気室6の空気量や凹部9の形状を設定する。地震等で浮体構造物本体2が水平移動して液体室4aが有する液体4が動揺して液面に波が立つ際には、空気室6の所定量の空気が凹部9内から外部に逃げない程度の形状とする。
【0020】
第一の実施形態の浮体式免震構造物1aの付加減衰機構10aは、上述した凹部9と所定量の空気が配された気密性の空気室6と凹部9内に貯留されて空気室6の下面に接する液体4を有する液体室4aとで構成される。
【0021】
次に、上述した第一の実施形態による浮体式免震構造物の付加減衰機構の作用について図面を用いて説明する。
付加減衰機構10aを構成する凹部9と空気室6と液体室4aとは、凹部9内の空気室6の下面は液体室4aの液体4に接する構成なので、地震等によって浮体構造物本体2が水平移動すると、凹部9内で液体室4aの液体4は動揺して液面に波を生じ、その波は浮体構造物本体2の揺れと反対方向に揺れて浮体構造物本体2を押す。そして、液体室4aの液体4が揺れる周期は、浮体構造物本体2の固有周期に近い周期帯域となるように空気室6の空気量や凹部9の形状を設定しているので、付加減衰機構10aは液体室4aが有する液体4の液面に生ずる波が浮体構造物本体2の水平挙動を効果的に抑制するように作用して浮体構造物本体2の水平方向の揺れと反対方向に押すので、浮体構造物本体2の揺れを低減する作用を奏する。
【0022】
また、空気室6は気密性があり凹部9内から空気室6の空気が外部へ逃げ出さないので、付加減衰機構10aの減衰性能を決める要因の一つである空気量を一定に保つことができ、付加減衰機構10aの減衰性能を安定させることができる。また、付加減衰機構10aに備えられた空気室6は気密性があるので、液体室4aが有する液体4の液面の高さを、浮体構造物本体2の周囲の液体4の液面の高さよりも低く又は高くすることが可能で、空気室6の設置高さを適宜設定できる。そして、付加減衰機構10aの設置高さを適宜設定できるので、付加減衰機構10aは浮体構造物本体2の任意の場所に設置でき配置計画がしやすい。また、付加減衰機構10aは浮体構造物本体2の底部に形成されているので、付加減衰機構が浮体構造物本体の周囲に設けられた従来の浮体式免震構造物に比べて、地震等により浮体構造物本体2が免震ピット3内を水平移動した際の付加減衰機構10aと浮体構造物本体2の側壁や免震ピット3の側壁とが衝突しないための所定幅のスペースを取る必要がなく、付加減衰機構10aを効率的に配置することができる。
【0023】
また、第一の実施形態の付加減衰機構10aは、液体の動揺により構造物の揺れを低減させるスロッシングダンパーと同様の機能を有するが、構造物の上部に専用の水槽を設置して内部に液体を封入する場合が多い一般的なスロッシングダンパーと比べると、第一の実施の形態による付加減衰機構10aでは浮体構造物本体2が浮力を得るための液体4を利用し、浮体構造物本体2の底部の形状を変形させることでスロッシングダンパーと同等の機能を得ることができるので、経済的でありメンテナンス性も優れている。
【0024】
上述した第一の実施の形態による浮体式免震構造物の付加減衰機構では、地震等により浮体構造物本体2が水平移動する際に、付加減衰機構10aに備えられた液体室4aの液体4に生じる波の波力が、浮体構造物本体2の水平方向の復元力に加え減衰力として効率的に機能するので、浮体構造物本体2の固有周期に近い周期帯域の水平外力に対しても、浮体構造物本体2の水平挙動を抑制し、快適な居住性及び使用性を確保できる効果を奏する。
【0025】
次に、第二の実施の形態について、図2に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図2は、本発明の第二の実施の形態による浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【0026】
図2に示すように、第二の実施の形態による浮体式免震構造物1bは、第一の実施の形態による浮体式免震構造物1aの付加減衰機構10aに備えられた液体室4aが有する液体4の液面に重ねて液体の運動エネルギーを低減させる透水減衰材7を配置したものである。
図3に示すように、透水減衰材7は、例えば糸状のポリプロピレン材を立体網目状に織り込んで空隙に液体を透水させてなる透水体で構成されており、所定の厚さ及び面積を有する立体構造体に形成されている。
【0027】
次に、上述した第二の実施の形態による浮体式免震構造物1bの付加減衰機構10bの作用について説明する。
付加減衰機構10bは第一の実施形態による浮体式免震構造物1aの付加減衰機構10aと同様に、地震等により浮体構造物本体2が水平移動した際には、凹部9内では空気室6の底面に接する液体室4aが有する液体4の液面に波が生じて浮体構造物本体2を浮体構造物本体2の揺れと反対に押すので、浮体構造物本体2の揺れを低減する作用を奏する。
そして付加減衰機構10bには透水減衰材7が備えられているので、地震等が発生して浮体構造物本体2が免震ピット3内を水平方向に移動することにより液体室4aの液体4の液面に生じる波のエネルギーを減衰させる作用がある。これは、液体室4aが有する液体4の液面に生じる波が地震などによる浮体構造物本体2の振動を減衰させた後にも、液体室4aの液体4が揺れることで浮体構造物本体2を振動させることを抑えるためのものである。また、透水減衰材7は液体の粘性に起因したエネルギーの減衰を利用して、地震などによる浮体構造物本体2の振動を減衰させる作用もあり、上述した波のエネルギーを減衰させる作用と併せて浮体構造物本体2に快適な居住性及び使用性を確保できる。
【0028】
また、透水減衰材7は糸状のポリプロピレン材を立体網目状に織り込んで隙間に透水させてなる透水体で構成されており、糸状のポリプロピレン材の空隙率によって透水性能を調整することができて、透水減衰材7の体積や形状で減衰性能を制御することができるので、透水減衰材7による減衰性能の調整が容易である。
【0029】
次に、第三の実施の形態について、図4に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図4は、本発明の第三の実施の形態による浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【0030】
図4に示すように、第三の実施の形態による浮体式免震構造物1cの付加減衰機構10cは、第二の実施の形態による浮体式免震構造物1bの付加減衰機構10bに備えられた凹部9を、上面が開放されて浮体構造物本体2の居室スペース2aに連通する凹部9cに変形させたものである。
凹部9cは、浮体構造物本体2の底面に形成された例えば直方体形状の空間で、側面は浮体構造物本体2に区画され、上面、底面は開放されている形状である。
空気室8は、凹部9cに設けられた空気が配された空間であり、液体4の収容された免震ピット3に浮体構造物本体2が設置される際には、空気室8の下面は液体室4aに接している。空気室8の上面は浮体構造物本体2の居室スペース2aに開放されて連通しており、居室スペース2aを介して外気に通じているので空気室8は非気密性の空間となる。空気室8の下面に接する液体室4aが有する液体4の液面の高さは浮体構造物本体2の周囲の免震ピット3内の液体4の液面の同じ高さとなる。液体室4aが有する液体4の液面に重ねて液体の運動エネルギーを低減させる透水減衰材7が設置される。付加減衰機構10cは凹部9cと非気密性の空気室8と液体室4aと、透水減衰材7とで構成される。
【0031】
第三の実施の形態による付加減衰機構10cは、地震等により浮体構造物本体2が水平移動した際に、凹部9c内で液体室4aが有する液体4の液面に波が生じる構成で、この波が揺れる周期が浮体構造物本体2の固有周期に近い周期帯域となるように空気室8や凹部9の形状を設定しており、また、液体室4aの液体4に透水減衰材7が設置されているので、第二の実施の形態による浮体式免震構造物の付加減衰機構10bと同等の地震などによる浮体構造物本体2の振動を減衰させる作用がある。また、空気室8の上方が開放されて浮体構造物本体2の居室スペース2aに連通しているので、浮体構造物本体2の居室スペース2aの面積を狭くしてしまうことがあるが、透水減衰材7の点検や破損時の修復などが行いやすく、メンテナンス性が第二の実施の形態による付加減衰機構10bに比べてより優れている。
【0032】
第一の実施の形態による浮体式免震構造物1aと第二の実施の形態による浮体式免震構造物1bについて図10に示す従来の浮体式免震構造物11との比較による減衰性能のシュミレーションを行った。これについて、図5乃至図8に基づいて説明する。
図5はタフト波(最大加速度496Gal)の地盤加速度と時間の関係を示す図、図6は図5に示すタフト波を入力した場合の従来の浮体式免震構造物と第一の実施の形態による浮体式免震構造物の応答加速度と時間の関係を示す図、図7は図5に示すタフト波を入力した場合の第一の実施の形態による浮体式免震構造物と第二の実施の形態による浮体式免震構造物の応答加速度と時間の関係を示す図、図8は入力地震波と、従来の浮体式免震構造物と第一及び第二の実施形態による浮体式免震構造物の最大応答加速度の関係を示す図である。
【0033】
すべての浮体式免震構造物は単位奥行きあたりの浮体構造物本体の重量を77.4t/m、単位奥行きあたりの没水部体積を39.8m3 /m、浮体構造物重量に対する浮力の割合を50.8%、単位奥行きあたりの免震装置5の積層ゴムの等価水平剛性を182kN/m/m、免震装置5の積層ゴムの水平減衰定数を5.0%とし、液体4は水を採用し、第一の実施の形態による浮体式免震構造物1aと第二の実施の形態による浮体式免震構造物1bの浮体構造物本体の周辺の水面高さと空気室6の水面高さの差を1.8m、第二の実施形態による浮体式免震構造物1bの透水減衰材7の体積を2.0m2 とし付加減衰機構10a、10bの有無と透水減衰材7の有無以外は同じ条件である。
【0034】
図6に示すように、図5に示すタフト波を入力した図10に示す従来の浮体式免震構造物11の最大応答加速度は126Galであり、図1に示す付加減衰機構10aが備えられた第一の実施の形態による浮体式免震構造物1aの最大応答加速度は109Galである。浮体式免震構造物1aの最大応答加速度は浮体式免震構造物11の最大応答加速度よりも小さい値となるので、浮体式免震構造物1aの付加減衰機構10aに備えられた液体室4aが有する液体4の液面に生じる波の波力による減衰効果が確認できる。ただし、地震波到達後の自由振動(時刻40秒以降)に関しては、付加減衰機構10aの液体室4aが有する液体4の液面の共振周波数に対応した周期の揺れが残存するため、浮体式免震構造物1aの揺れが若干大きな振幅となることがわかる。
【0035】
次に図7に示すように、図5に示すタフト波を入力した図1に示す透水減衰材7を備えていない浮体式免震構造物1aの最大応答加速度は109Galであるが、図2に示す透水減衰材7を備えた浮体式免震構造物1bの最大応答加速度は104Galである。浮体式免震構造物1bの最大応答加速度は浮体式免震構造物1aの最大応答加速度よりも小さい値となるので、透水減衰材7による減衰効果が確認できる。また浮体式免震構造物1bでは時刻40秒以降の自由振動を速やかに減衰しているので透水減衰材7による液体室4aが有する液体4の波のエネルギーを減衰させる効果も確認できる。
【0036】
また図8に示すように、3つの浮体式免震構造物11、1a、1b、についてタフト波に加えエルセントロ波、八戸波を入力し計算した最大応答加速度はいずれの場合でも、浮体式免震構造物1bが小さい値となり、もっとも良好な免震性を備えていることがわかる。特にタフト波は浮体構造物本体2の固有周期に近い周期帯域の成分が多く、他の地震波よりも相対的に大きな振幅を持つため、図10に示す従来の浮体式免震構造物11ではかなり相対変位が大きくなっているが、図2に示す浮体式免震構造物1bでは、相対変位が大幅に低減されており付加減衰機構による減衰効果が顕著に現れている。
【0037】
以上、本発明による浮体式免震構造物の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、低せん断剛性構造体は積層ゴムを使用した免震装置5を使用しているが、その他に例えば、免震装置5に代えて球状物体などの滑り支承を免震ピット3の底面の上に所定の間隔をもって複数離間配置し、これらの上方に浮体構造物本体2を設置する構成としてもよい。要は、低せん断剛性構造体は、浮体構造物本体2の変動荷重と固定荷重の一部を支持し、浮体構造物本体2と地盤との水平挙動を絶縁し、浮体構造物本体2の固有周波数を長周期化する機能を有するものであればよいのである。
【0038】
例えば、本実施の形態では低せん断性構造体の免震装置5は免震ピット3の底面に設置して上部に浮体構造物本体2を配設しているが、図9に示す浮体式免震構造物1dのように免震装置5を免震ピット3の外部の外周縁近傍の地盤上に所定の距離を持って複数配置して、浮体構造物本体2の免震ピット3よりも上方にある居室スペース2dを平面視形状を免震ピット3より張り出す程度の大きさに形成して配設してもよい。また、図9に示す浮体式免震構造物1dは第一の実施の形態による浮体式免震構造物1aの変形例であるが、付加減衰機構10aに代えて付加減衰機構10b又は10cを設置してもよい。要は浮体構造物本体2と地盤の水平挙動を絶縁し長周期化する機能を有すればよいのである。
例えば、上述した実施の形態では、液体4は水を採用しているが、その他の液体でもよい。
例えば、上述した実施の形態では、付加減衰機構10a、10b、10cに備える凹部9、9cは直方体の形状をしているが、例えば円柱形などその他の形状でもよく、また付加減衰機構10a、10b及び10cは1ヶ所でなく複数に分割して設置してもよい。
例えば、第三の実施の形態では、凹部9cは上面が開放されて浮体構造物本体2の居室スペース2aに連通して居室スペース2aを介して外気に通じているが、居室スペース2aを介して外気に通じていなくてもよく、上面は全面が開放されていなくてもよい。要は付加減衰機構10cが居室スペース2aよりメンテナンスが行うことができればよいのである。
例えば、上述した第二及び第三の実施の形態では、透水減衰材7は糸状のポリプロピレン材を立体網目状に織り込んで隙間に透水させてなる透水体を採用しているが、例えば他に立体不織布やアスファルトなどのれき材料やモルタル及びコンクリート等のセメント系材料で構成される透水性を有するマット、あるいは軽石などを収納したスリット状の収納装置など、空隙率が高く、透水係数の高い材料であればいずれを用いてもよい。
要は、本発明において所期の機能が得られればよいのである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第一の実施の形態による浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【図2】本発明の第二の実施の形態による浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【図3】本発明の第二及び第三の実施の形態による浮体式免震構造物に備える透水減衰材の一例を表す図である。
【図4】本発明の第三の実施の形態による浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【図5】タフト波(最大加速度496Gal)の地盤加速度と時間の関係を示す図である。
【図6】図6に示すタフト波を入力した場合の従来の浮体式免震構造物と第一の実施の形態による浮体式免震構造物の応答加速度と時間の関係を示す図である。
【図7】図6に示すタフト波を入力した場合の第一の実施の形態による浮体式免震構造物と第二の実施の形態による浮体式免震構造物の応答加速度と時間の関係を示す図である。
【図8】入力地震波と、従来の浮体式免震構造物と第一及び第二の実施形態による浮体式免震構造物の最大応答加速度の関係を示す図である。
【図9】本発明の第一の実施の形態による浮体式免震構造物の変形例である。
【図10】従来の浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【図11】従来の他の浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【図12】従来の更に他の浮体式免震構造物の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1a、1b、1c 浮体式免震構造物
2 浮体構造物本体
3 免震ピット
4 液体
4a 液体室
5 免震装置(低せん断剛性構造)
6、8 空気室
7 透水減衰材
9、9c 凹部
10a、10b、10c 付加減衰機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削して構築する免震ピットと、
前記免震ピットの内方に収容された液体と、
前記液体中に設置された浮体構造物本体と、
前記免震ピットの内側または外側の地盤に支持され、前記浮体構造物本体に生じる鉛直方向の変動荷重と浮力で相殺された残りの固定荷重を支持し、前記浮体構造物本体と地盤との水平挙動を絶縁する低せん断剛性構造体とを備える浮体式免震構造物であって、
前記浮体構造物本体の底部に形成された凹部と、
前記凹部内に設けられた空気室と、
前記凹部内で前記空気室の下面に接する前記液体を有する液体室とを備えることを特徴とする浮体式免震構造物の付加減衰機構。
【請求項2】
前記空気室は気密に封止されていることを特徴とする請求項1に記載の浮体式免震構造物の付加減衰機構。
【請求項3】
前記空気室は前記浮体構造物本体の居室スペースに開放されていていることを特徴とする請求項1に記載の浮体式免震構造物の付加減衰機構。
【請求項4】
前記凹部に位置する前記液体室中に、液体の運動エネルギーを低減させる透水減衰材が備えられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の浮体式免震構造物の付加減衰機構。
【請求項1】
地盤を掘削して構築する免震ピットと、
前記免震ピットの内方に収容された液体と、
前記液体中に設置された浮体構造物本体と、
前記免震ピットの内側または外側の地盤に支持され、前記浮体構造物本体に生じる鉛直方向の変動荷重と浮力で相殺された残りの固定荷重を支持し、前記浮体構造物本体と地盤との水平挙動を絶縁する低せん断剛性構造体とを備える浮体式免震構造物であって、
前記浮体構造物本体の底部に形成された凹部と、
前記凹部内に設けられた空気室と、
前記凹部内で前記空気室の下面に接する前記液体を有する液体室とを備えることを特徴とする浮体式免震構造物の付加減衰機構。
【請求項2】
前記空気室は気密に封止されていることを特徴とする請求項1に記載の浮体式免震構造物の付加減衰機構。
【請求項3】
前記空気室は前記浮体構造物本体の居室スペースに開放されていていることを特徴とする請求項1に記載の浮体式免震構造物の付加減衰機構。
【請求項4】
前記凹部に位置する前記液体室中に、液体の運動エネルギーを低減させる透水減衰材が備えられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の浮体式免震構造物の付加減衰機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−293324(P2009−293324A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149928(P2008−149928)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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