説明

浮床を利用したユニットバスの支持構造

【課題】 支持構造の安定性と遮音性を確保した上で、階高の増加を抑えつつ配管等のスペースを確保でき、かつ施工性、経済性に優れたユニットバスの支持構造を提供する。
【解決手段】 躯体スラブ1上に、グラスウールなどの緩衝材12を敷設し、その上に遮水シート16を介して軽量コンクリートパネル13を敷設して浮床11を構成する。ユニットバス2の浴槽下部位置については、軽量コンクリートパネル13が直接ユニットバス2の荷重を支持し、それ以外の部分については軽量コンクリートパネル13上に、高さ調整可能な支持脚17を設置してユニットバス2の荷重を支持する。ユニットバス2の下部に配置される配管近傍またはユニットバス下部からの突出物近傍については、浮床欠落部14を形成し、躯体スラブ2上に設置した防振支持脚15でユニットバス2の荷重を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮床を用いたユニットバスの支持構造に関するもので、適用対象は主としてSI(スケルトン・インフィル)建築物、高層建築物等、階高の抑制が求められる建築物であるが、これらに限定されず、一般の建築物にも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
SI建築物の場合、自由な間取りが可能である反面、例えば下階の居室の上に上階の浴室がくる場合など、遮音性が重要となる。その上で、階高の抑制が求められ、また給排水設備の配置スペースの問題などもある。また、一般の建築物の場合においても、リフォームの際、同様の理由で、ユニットバスの位置を変更するのが困難であるという問題がある。
【0003】
遮音性の解決手段の一つとしては、浮床構造の利用が考えられる。従来の浮床の構造としては、建物躯体の床スラブ上にグラスウール、ポリスチレン系あるいはポリプロピレン系の樹脂発泡体などの板状に成形した緩衝材を敷設し、その上に二重床を構成する床パネルを敷設するもの(例えば、特許文献1参照)や、建物躯体の床スラブに防振性能を備えた支持脚を分散配置し、その上に二重床を構成する床パネルを設けるものなど(例えば、特許文献3参照)がある。その他、遮音性、防振性を向上させるための種々の構造が工夫されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−294997号公報
【特許文献2】特開2004−183319号公報
【特許文献3】特開2006−321964号公報
【特許文献4】特開2006−328715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
緩衝材を敷設し、その上に床パネルなどを敷設する形式は、浮床自体の厚さは比較的薄く、上載荷重についても応力が均等にかかり、一般的には安定しているという利点がある。
【0006】
しかしながら、緩衝材の層厚が薄いと遮音効果や防振効果が十分得られず、逆に緩衝材の層厚が厚いと、上載荷重の重みや緩衝材の劣化などにより部分的なへこみが生じ、不陸の原因となったり、支持構造自体が不安定となる恐れがある。
【0007】
また、SI建築物などにおいて、給排水の配管や各種配線が住戸の床下にくる場合、配管等のスペースが必要になるため、浮床の層厚を薄くしても階高の減少につながらない。
【0008】
一方、床材を防振性能を備えた支持脚で支持する形式では、支持脚に組み込む防振ゴムなどの性能に応じて、防振性能は比較的得やすく、また支持脚の高さの調整で配管等のスペースを確保できるという利点がある。
【0009】
しかしながら、この形式では上載荷重が支持脚位置に集中するため、支持脚の個数、配置なども含め設計が難しくなり、施工性、コストの面でも不利となる。また、防振性能は得やすい反面、上階の騒音に対する遮音効果は得難い。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術における課題の解決を図ったものであり、支持構造の安定性と遮音性を確保した上で、階高の増加を抑えつつ配管等のスペースを確保でき、かつ施工性、経済性に優れたユニットバスの支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1に係る発明は、躯体スラブ上に形成される浮床を利用したユニットバスの支持構造であって、前記浮床を所要厚の緩衝材と該緩衝材の上に敷設され床強度を発揮する硬質のパネル体で構成し、前記ユニットバスの荷重を直接または支持具を介して前記浮床で支持するとともに、前記ユニットバスの下部に配置される配管近傍またはユニットバス下部からの突出物近傍については、前記浮床を形成しない浮床欠落部を形成し、該浮床欠落部については前記躯体スラブ上に設置した防振機構を備える複数の支持脚で前記ユニットバスの荷重を支持することを特徴とするものである。
【0012】
緩衝材としては、グラスウールなど、防振性の面での緩衝材としての機能の他、遮音性や断熱性の得られるものが望ましいが、目的とする機能が得られ、劣化しにくいものであれば特に限定されない。例えば、従来技術の項で述べたポリスチレン系あるいはポリプロピレン系の樹脂発泡体や、特許文献1に記載されているような樹脂発泡体にゴムなどの弾性体を組み込んだものを使用することもできる。
【0013】
硬質のパネル体というのは、緩衝材の変形に追従して容易に変形するようなものではなく、床としての平面形態を保てる強度および剛性を備えたパネル体であることを意味する。具体的にはコンクリートパネルや鋼板などの金属パネル、FREなどの硬質パネルなどを例示することができる。
【0014】
ユニットバスの荷重を直接または支持具を介して浮床で支持するというのは、浮床の上面で支持するのが最も安定するが、ユニットバスの下面は、通常、平坦でなく傾斜や凹凸があるため、必要に応じ、必要箇所に支持具を介在させて高さ調整を行って支持する。また、ユニットバスの下部に配置される給配水管などの設備配管のための必要スペースとの関係では、浮床の上面で直接支持する部分がなく、全て支持具を介在させて支持する場合もある。その場合も、浮床部分の防振機能や、遮音性能は発揮される。
【0015】
浮床欠落部は、後から形成するのではなく、床スラブ上における浮床の配置設計として形成される。この部分において、防振機構を備える複数の支持脚による支持機構を併用することで、階高に関しては浮床の高さ分を抑えることができ、防振性能および遮音性能に関しては浮床と支持脚という異なる制振新機構の組み合わせにより、広い周波数域での相乗効果が期待できる。
【0016】
請求項2は、請求項1に係るユニットバスの支持構造において、前記緩衝材と前記硬質のパネル体との間に遮水シートを介在させることを特徴とするものである。
【0017】
緩衝材の種類にもよるが、緩衝材が水に濡れることで、防振性や遮音性が低下したり、劣化したり、変形する恐れがある場合には、遮水シートを介在させるなどして、緩衝材が水を吸収するのを防止することが望ましい。
【0018】
請求項3は、請求項1または2に係るユニットバスの支持構造において、前記硬質のパネル体がコンクリートパネルである場合を限定したものである。
【0019】
コンクリートパネルの場合、5〜10cm程度の厚みのものが用いられるが、軽量骨材あるいは超軽量骨材などを用いた軽量コンクリートパネルを用いれば、実質的に強度を落とすことなく、軽量化が図れる。
【0020】
請求項4は、請求項1または2に係るユニットバスの支持構造において、前記硬質のパネル体が金属パネルである場合を限定したものである。
【0021】
金属パネルとしては、鋼板が一般的であるが、アルミニュウム合金その他のパネルでもよい。金属パネルの場合、コンクリートパネルに比べ、浮床としての厚さは大幅に低減でき、また端部の欠けなどの問題もない。
【0022】
ただし、コストが高く付き、遮音性ではコンクリートパネルが勝ることから、もともと設備配管などとの関係で、階高抑制に寄与しない場合には、コンクリートパネルが望ましい。
【0023】
請求項5は、請求項1〜4に記載のユニットバスの支持構造において、前記躯体スラブの前記浮床の外周部位置および前記浮床欠落部の外周部位置に、前記浮床の面内方向の移動を抑制するための側部緩衝材を配置してあることを特徴とするものである。
【0024】
本発明では、特に、浮床の上面については、硬質のパネル体を用いているため、地震等により水平方向に振動すると、下側の緩衝材と分離したり、硬質のパネル体の端部が躯体と衝突することが考えられるが、側部緩衝材を配置して、水平方向の移動をある程度拘束することにより、そのような問題を解決することができる。
【0025】
側部緩衝材としては、例えば板状の防振ゴムなどを用いることができ、アングル状の金具などを躯体の床スラブ上面に固定し、立上り面に防振ゴムなどを貼り付けるなどして、硬質のパネル体の水平移動を抑制することができる。また、その際の側部緩衝材によるエネルギー吸収効果も期待できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、浮床を緩衝材とその上に敷設され床強度を発揮する硬質のパネル体で構成し、ユニットバスの荷重を浮床で支持するとともに、配管近傍またはユニットバス下部からの突出物近傍については、浮床欠落部を形成し、浮床欠落部については防振機構を備える複数の支持脚支持するようにしたため、支持構造の安定性と遮音性を確保した上で、階高の増加を抑えつつ配管等のスペースを確保することができる。
【0027】
また、硬質のパネル体を用いた浮床と、浮床欠落部に設置した防振機構を備える支持脚による支持機構の併用により、階高に関しては浮床の高さ分を抑えることができ、防振性能および遮音性能に関しては浮床と支持脚という異なる制振新機構の組み合わせにより、広い周波数域での相乗効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、本発明の一実施形態を示したもので、(a)は水平断面図、(b)はそのA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【0029】
本実施形態において、浮床11は、躯体スラブ1上に、グラスウールなどの緩衝材12を敷設し、その上に遮水シート16を介して軽量コンクリートパネル13を敷設したものである。
【0030】
寸法例を挙げると、緩衝材12として厚さ12.5mmの板状に成形したグラスウールのパネルを2枚重ねて厚さ25mmの断熱緩衝層を形成し、遮水シート16として厚さ0.15mmのポリエチレンフィルムを敷き、その上に厚さ75mm(だだし、ユニットバス2の浴槽下部位置については50mm)の軽量コンクリートパネル13を敷設する。なお、ここで挙げた材質および寸法はあくまで代表例であり、これに限定されるものではない。
【0031】
また、本実施形態では、ユニットバス2の浴槽下部位置については、軽量コンクリートパネル13が直接ユニットバス2の荷重を支持し、それ以外の部分については軽量コンクリートパネル13上の、主としてユニットバス2の外周部位置下部および後述する浮床欠落部14位置近傍に、高さ調整可能な支持脚17を設置してユニットバス2の荷重を支持している。
【0032】
ユニットバス2の下部に配置される配管近傍またはユニットバス下部からの突出物近傍については、浮床欠落部14を形成し、躯体スラブ2上に設置した防振支持脚15でユニットバス2の荷重を支持している。
【0033】
防振支持脚15は、一例を挙げると、ヤクモ株式会社製の製品名「ボールダンパー」に高さ調整用のボルトを組み合わせたものなどを使用することができるが、それに限定されるものではない。
【0034】
また、本実施形態において、図2に示すように、浮床11の外周部位置および浮床欠落部14の外周部位置には、躯体スラブ2との間に、浮床11の面内方向の移動を抑制するための側部緩衝材18を配置し、地震等により水平方向の振動に対し、水平方向の移動を拘束できるようにしている。
【0035】
図3は、側部緩衝材18の一例として、アングルピース18aを躯体スラブ1上面に固定し、その立上り面に防振ゴム18bを取り付けた場合を示したものである。
【0036】
図4は、本発明の他の実施形態を示したもので、(a)は水平断面図、(b)はそのA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【0037】
本実施形態において、浮床11は、躯体スラブ1上に、グラスウールなどの緩衝材12を敷設し、その上に遮水シート16を介して鋼板23を敷設したものである。
【0038】
寸法例を挙げると、緩衝材12として厚さ12.5mmの板状に成形したグラスウールのパネルを2枚重ねて厚さ25mmの断熱緩衝層を形成し、遮水シート16として厚さ0.15mmのポリエチレンフィルムを敷き、その上に厚さ25mmの鋼板23を敷設する。なお、ここで挙げた材質および寸法はあくまで代表例であり、これに限定されるものではない。
【0039】
また、本実施形態では、ユニットバス2の浴槽下部位置も含め、鋼板23上の、主としてユニットバス2の外周部位置下部および後述する浮床欠落部14位置近傍に、高さ調整可能な支持脚17を設置してユニットバス2の荷重を支持している。
【0040】
ユニットバス2の下部に配置される配管近傍またはユニットバス下部からの突出物近傍については、浮床欠落部14を形成し、躯体スラブ2上に設置した防振支持脚15でユニットバス2の荷重を支持している。防振支持脚15については、図1の実施形態の場合と同様である。
【0041】
図5は、図4の実施形態における側部緩衝材18の例を示したもので、基本的な構成は図3のものと同様であるが、浮床11部分に、軽量コンクリートパネル13に代え鋼板23を用いているため、アングルピース18aの立上りが、図3のものに比べ、低くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態(硬質のパネル体として軽量コンクリートパネルを用いた場合)を示したもので、(a)は浮床部平面図、(b)はそのA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【図2】図1の実施形態における側部緩衝材の配置例を示す平面配置図である。
【図3】図1の実施形態における側部緩衝材部分の鉛直断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態(硬質のパネル体として鋼板を用いた場合)を示したもので、(a)は浮床部平面図、(b)はそのA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【図5】図4の実施形態における側部緩衝材部分の鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1…躯体スラブ、2…ユニットバス、
11…浮床、12…緩衝材、13…軽量コンクリートパネル、14…浮床欠落部、15…防振支持脚、16…遮水シート、17…支持脚、18…側部緩衝材、18a…アングルピース、18b…防振ゴム、
23…鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体スラブ上に形成される浮床を利用したユニットバスの支持構造であって、前記浮床を所要厚の緩衝材と該緩衝材の上に敷設され床強度を発揮する硬質のパネル体で構成し、前記ユニットバスの荷重を直接または支持具を介して前記浮床で支持するとともに、前記ユニットバスの下部に配置される配管近傍またはユニットバス下部からの突出物近傍については、前記浮床を形成しない浮床欠落部を形成し、該浮床欠落部については前記躯体スラブ上に設置した防振機構を備える複数の支持脚で前記ユニットバスの荷重を支持することを特徴とするユニットバスの支持構造。
【請求項2】
前記緩衝材と前記硬質のパネル体との間に遮水シートを介在させることを特徴とする請求項1記載のユニットバスの支持構造。
【請求項3】
前記硬質のパネル体がコンクリートパネルである請求項1または2記載のユニットバスの支持構造。
【請求項4】
前記硬質のパネル体が金属パネルである請求項1または2記載のユニットバスの支持構造。
【請求項5】
前記躯体スラブの前記浮床の外周部位置および前記浮床欠落部の外周部位置に、前記浮床の面内方向の移動を抑制するための側部緩衝材を配置してあることを特徴とする請求項1、2、3または4記載のユニットバスの支持構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−24373(P2009−24373A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187770(P2007−187770)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)
【Fターム(参考)】