説明

浴槽用手摺り

【課題】一般の浴槽をそのまま使え、かつ着脱自在でありながら浴槽の側壁にしっかりと固定できるようにする。
【解決手段】浴槽1の側壁2を挟み込むための下向きコ字状の挟持部材3と、この挟持部材3に立設した上下方向に伸縮自在のつっかい棒部材5と、このつっかい棒部材5に固定された把持部材6とを含んでいる。つっかい棒部材5の上端部が、浴室10の天井11に押し付けられて受け止められることで、つっかい棒部材5が、挟持部材3を確りと突っ張り固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身体障害者などが浴槽への出入りの際につかんで体を支えるための浴槽用手摺りに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、浴槽の側壁の上端部を内外から挟み込む下向きコ字状の挟持部材と、その挟持部材に立設した把持部とを含む浴槽用手摺りが開示されている。この浴槽用手摺りは、挟持部材で浴槽の側壁の上端部を挟み込んで固定したのち、高齢者などが把持部材をつかんで浴槽への出入りを行うことになる。この浴槽用手摺りでは、挟持部材による浴槽の側壁の挟み込みが不十分であると、把持部材をつかんだ際に横揺れして浴槽の側壁から外れるおそれがある。
【0003】
これに対して、特許文献2・3には、浴室の天井と、浴槽の側壁の上面との間で上下方向に掛け渡されて固定される浴槽用手摺りが開示されている。この浴槽用手摺りでは、浴槽の側い壁の上面に、浴槽用手摺りの下端を着脱自在に嵌合固定する嵌合凹部を設けてあるとともに、浴室の天井には、浴槽用手摺りの上端をスライド移動可能に支持するレールを設けてある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−95492号公報(図1−4)
【特許文献2】特開平10−25874号公報(図1)
【特許文献3】特開平10−80452号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2・3の浴槽用手摺りは、浴槽への出入りの際につかんでも浴槽の側壁から外れることはないが、浴槽に前記嵌合凹部などを備えておく必要があるために、一般の浴槽をそのまま使用することができない。したがって、浴槽用手摺りを配する際に必要なコストが高くなるところに問題がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、一般の浴槽をそのまま使え、かつ着脱自在でありながら浴槽の側壁にしっかりと固定できる浴槽用手摺りを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る浴槽用手摺りは、図1に示すごとく、浴槽1の側壁2を挟み込むための下向きコ字状の挟持部材3と、この挟持部材3に立設した上下方向に伸縮自在のつっかい棒部材5と、このつっかい棒部材5に設けた把持部材6とを含んでいる。つっかい棒部材5の上端部が、浴室10の天井11に押し付けられて受け止められることで、つっかい棒部材5が挟持部材3を突っ張り固定する。
【0008】
詳しくは、つっかい棒部材5は、図1および図2に示すごとく、下端部が挟持部材3に固定される下側の径大パイプ7と、この径大パイプ7に対して上下スライド自在に嵌合する上側の径小パイプ9と、この径小パイプ9の上端に配されて浴室10の天井11に受け止められる天井受け部材12と、この天井受け部材12が浴室10の天井11に押し付けられた際の反発力を受け止めるばね手段15とを備えている。径大パイプ7と径小パイプ9との間には、径大パイプ7に対して径小パイプ9を上下動不能にロック保持するためのロック具13を有する。
【0009】
挟持部材3は、図9に示すごとく、径大パイプ7の下端部が固定される固定具60と、この固定具60に対して浴槽1の内外方向にスライド移動可能な可動具61とを有していて、固定具60と可動具61とで浴槽1の側壁2を挟み込んでいる。固定具60は、浴槽1の側壁2の上側に位置する跨設部62と、この跨設部62から下方へ延びて浴槽1の側壁2の外面に臨む垂下部63とを含む。可動具61は、浴槽1の側壁2の内面に臨むとともに、固定具60側へ延びるガイド棒67を有しており、ガイド棒67が、固定具60の可動具61に形成したガイド孔69に挿入されることで、可動具61が移動可能になっており、長尺ボルト71を、ガイド孔69の奥壁に設けたボルト通孔69aを介して、可動具61のガイド棒67に設けたねじ孔72に締め込むことで固定具60と可動具61とが連結され、かつ固定具60と可動具61とで浴槽1の側壁2が挟み込まれる。
【0010】
可動具61は、自在継手75を介して揺動板76を配しており、固定具60と可動具61とで浴槽1の側壁2を挟み込んだ際には、揺動板76が、浴槽1の側壁2の内面に沿う姿勢で押し当たる。
【0011】
径小パイプ9の下端に空気弁機構を配してあり、空気弁機構は、図14に示すごとく、径小パイプ9の下端開口を塞ぐ弁座83と、この弁座83に設けた貫通孔85に挿通する弁軸86と、この弁軸86を上方へ付勢するばね手段87と、弁軸86の下端に固定された弁体89とを有している。径小パイプ9の下降の際には、ばね手段87の付勢力で弁体89が弁座83の下面に密着しており、径小パイプ9の上昇の際には、ばね手段87の付勢力に抗して弁体89が押し下げられるようにした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、挟持部材3で浴槽1の側壁2を挟み込むことで、その側壁2に取り付けられるので、浴槽用手摺りを浴槽1に配するにあたって、一般の浴槽1を改造などしなくてもそのまま使用することができ、浴槽用手摺りを配する際に必要なコストを抑えることができる。しかも、つっかい棒部材5で挟持部材3を突っ張り固定するので、浴槽1への出入りを行うために把持部材6やつっかい棒部材5をつかんでも、挟持部材3が浴槽1の側壁2から外れることがない。つまり、浴槽用手摺りは、着脱自在でありながら浴槽1の側壁2にしっかりと固定できる。
【0013】
長尺ボルト71で固定具60と可動具61とを連結すると、長尺ボルト71のヘッドは小さいために、長尺ボルト71が浴槽1への出入りの邪魔になることが低減されるうえ、長尺ボルト71はスパナなどの道具がなければ操作できないために、いたずらで長尺ボルト71が緩められたりすることがない。
【0014】
可動具61の揺動板76が揺動して、浴槽1の側壁2の内面に沿う姿勢で押し当たると、浴槽1の側壁2の内面が傾斜していても、挟持部材3が、固定具60と可動具61とで浴槽1の側壁2をより確りと挟み込むことができる。
【0015】
径小パイプ9の下降の際に空気弁機構の弁体89が弁座83の下面に密着すると、径小パイプ9内と径大パイプ7内とを接続する貫通孔85が閉じられて、径大パイプ7内の空気が径小パイプ9の下降に対するエアクッションとして作用し、径小パイプ9が急激に下降することが防止される。径小パイプ9の上昇の際には、その上昇に伴って径大パイプ7内の空気圧が低下して弁体89が押し下げられるので、貫通孔85が開いて、径小パイプ9内と径大パイプ7内との空気圧の差がほとんどなく、前記上昇に伴う径大パイプ7内の空気圧の低下によって径小パイプ9が下方へ引っ張られることが低減し、径小パイプ9を容易に上昇させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1ないし図14は、本発明が対象とする浴槽用手摺りの実施例を示しており、図1に示すごとく、浴槽1の側壁2の上端部2aを浴槽1の内外から挟み込むための下向きコ字状の挟持部材3と、この挟持部材3に立設した上下方向に伸縮自在のつっかい棒部材5と、このつっかい棒部材5の中間部に設けた把持部材6とを含む。
【0017】
つっかい棒部材5は、下端部が挟持部材3に固定される下側の径大パイプ7と、この径大パイプ7に対して上下スライド自在に嵌合する上側の径小パイプ9と、この径小パイプ9の上端に配されて浴室10の天井11に受け止められる天井受け部材(上端部)12とを備えている。径大パイプ7と径小パイプ9との間には、径大パイプ7に対して径小パイプ9を上下動不能にロック保持するためのロック具13を有する。
【0018】
径小パイプ9を径大パイプ7の上方に引き出して、天井受け部材12を浴室10の天井11に押し付け、次いでロック具13を操作すると、径小パイプ9が所定量だけ垂直姿勢を維持したまま押し上げられて天井11に受け止められ、この状態でロック保持される。天井受け部材12は、径小パイプ9に対して上下動自在に支持されていて、図2に示す圧縮コイルばね(ばね手段)15で押し上げ付勢される。これにより、天井受け部材12が天井11に押し付けられた際の反発力を、圧縮コイルばね15の弾性力が受け止める。
【0019】
図2に示すごとく、径小パイプ9の上端には、圧縮コイルばね15が納まるばね受け筒16を内嵌して固定してある。ばね受け筒16は、下端近くに圧縮コイルばね15の下端を受け止める底壁17を有しており、外周の下向き段面19が径小パイプ9の上端開口周縁で受け止められて、下向き段面19より下側部分が径小パイプ9の内部に嵌入する。ばね受け筒16の下端部は、ビス16a・16aで径小パイプ9に固定される。
【0020】
天井受け部材12は、円形状の上面に二つの凹み20を有するベース部21と、このベース部21の下端に一体に垂設した円筒部22とを有するプラスチック成形品であり、円筒部22の内周面に密着して円筒状のばね受け座23が配される。このばね受け座23が径小パイプ9の上端部、および径小パイプ9より上側に突出するばね受け筒16の上端部に上下スライド自在に外嵌する。
【0021】
ばね受け座23の上端には、圧縮コイルばね15の上端を受け止める上壁25を有しており、その上壁25の上面に、2本のスタッドボルト26が立直姿勢で固定されている。ばね受け座23の上壁25の下面中央には、圧縮コイルばね15が外嵌するばね軸27が垂下姿勢で固定されている。
【0022】
天井受け部材12のベース部21には、各凹み20の底面から下方へ向けてそれぞれ貫通する二つのボルト挿通孔を設けてある。各ボルト挿通孔に各スタッドボルト26をそれぞれ通して、各ボルト26の上端を各凹み20内に突出させ、各ボルト26の突出上端部にナット30を上面側からそれぞれ螺合することにより、天井受け部材12にばね受け座23が固定される。
【0023】
ばね軸27の下端は、ばね受け筒16の底壁17に設けた通孔31に挿通しており、該通孔31の下方においてばね軸27の下端に、ロックナットなどからなる止め部材32を取り付ける。これにて、ばね軸27は、ばね受け筒16に対して上下動自在に組み込まれ、止め部材32で上方への抜け止めが図られる。天井受け部材12のベース部21の上面には、シリコンゴムなどからなるクッション材33を貼り付ける。
【0024】
図3においてロック具13は、径大パイプ7の上端に受け止め支持される縦長円筒状の固定リング35と、径小パイプ9の外周に遊嵌して締結作用をする縦長円筒状の締結リング36と、この締結リング36に枢結されて径小パイプ9を上下方向に揺動操作できるハンドル37と、固定リング35とハンドル37とを連結する左右一対のリンク39と、締結リング36の外周面を覆う縦長円筒状のカバー40と、ハンドル37の外周面を覆う合成ゴム製のハンドルカバー41とを含む。カバー40の下部は縮径していて、この下部が固定リング35の上端部に嵌まり込んで保持される。
【0025】
固定リング35は、円筒壁の一個所に縦方向の割り42を入れてあり、この割り42に臨む開離端の外側に、左右一対のリンク連結片45・45を上下方向にわたって一体に設ける。固定リング35の内周面の上端寄り部位には、図4に示すごとく、下向きの段面35aを周回状に設けてあり、固定リング35を径大パイプ7の外周に上方から嵌合することで、前記下向き段面35aが、パッキン43を介して径大パイプ7の上端開口周縁で受け止められる。
【0026】
そのうえで、両リンク連結片45・45の上下をボルト46・46で締結することにより、径大パイプ7の上端に固定リング35が固定される。径小パイプ9は、下端側から固定リング35を介して径大パイプ7の内部へ上下スライド自在に嵌合できる。
【0027】
締結リング36は、図3に示すごとく、円筒壁の一個所に縦方向の割り49を入れてあり、この割り49に臨む締結リング36の開離端の外側に、左右一対のハンドル連結片50・50を上下方向にわたって一体に設けてある。このハンドル連結片50・50は、自由状態において所定の間隔を置いて対向している。
【0028】
ハンドル37は、前後方向に長い主面壁の左右に側壁を有して下面が開口する下向きコ字状に形成されており、左右側壁の各基端部37aが、主面壁より締結リング36側に突出している。ハンドル37は、前記左右の各基端部37aがそれぞれハンドル連結片50・50にこれの外側面に接合する状態で、水平の枢軸51を介して枢結されている。これにて、ハンドル37は、締結リング36に対して略水平姿勢(図4)と、下方に倒れた略垂直姿勢(図5)とにわたって、枢軸51まわりに上下揺動自在に連結される。枢軸51はボルトなどからなる。
【0029】
左右の各リンク39は、図3に示すごとく、一端がハンドル37の基端寄りに固定軸52を介して連結され、他端が固定リング35のリンク連結片45・45に可動軸53を介して上下動自在に連結されている。各リンク39の一端および固定軸52は、一対のビス52a・52aでハンドル37に連結される。可動軸53は、一対のビス53a・53aでリンク連結片45・45および各リンク39の他端に連結されており、リンク連結片45・45に設けた縦長のガイド溝55・55に沿って上下移動する。締結リング36の各ハンドル連結片50の外側面と、これに対面するハンドル37の左右側壁の各基端部37aの内側面との間には、締結リング36の径を拡縮変形させるためのカム機構が設けられている。
【0030】
カム機構は、図6に示すごとく、締結リング36の各ハンドル連結片50の上端寄り外側面に設けた受動側の固定カム面50aと、ハンドル37の各基端部37aの内側に固定したカム部材56の操作側の可動カム面56aとからなる。固定カム面50aは、凹面と凸面とこれら凹凸面どうしをつなぐ傾斜面とからなり、可動カム面56aは、前記固定カム面50aに対応する凸面と凹面とこれら凹凸面どうしをつなぐ傾斜面とからなる。固定リング35の両リンク連結片45・45は、これの一方を肉厚に形成してあり、この肉厚側のリンク連結片45にこれの下端面から前記ガイド溝55に到るねじ孔を上下方向に刻設し、このねじ孔に下方からねじ込まれる調節ボルト59を備えている。
【0031】
ハンドル37が略水平姿勢にあるときは、可動カム面56aの凸面が固定カム面50aの凹面に嵌り込み、可動カム面56aの凹面が固定カム面50aの凸面に嵌まり込んで、図7に示すごとく締結リング36のハンドル連結片50・50間の間隔が大きくなっており、締結リング36が拡径状態にある。したがって、径小パイプ9は、これの下端側を締結リング36内に、次いで径大パイプ7内に上下移動が自由な状態で差し込むことができる。
【0032】
ハンドル37を枢軸51まわりに下方へ揺動操作すると、可動カム面56aの凸面が、固定カム面50aの凹面から脱して傾斜面を介して凸面に乗り上がる。この両凸面どうしの接合により、図8に示すごとく締結リング36のハンドル連結片50・50間の間隔が小さくなり、締結リング36が縮径して径小パイプ9を上下方向へは移動不能に締結固定する。
【0033】
このロック状態からハンドル37は、なお略垂直姿勢になるまで回動操作可能である。すなわち、ハンドル37が先の水平姿勢にあるとき、リンク39の可動軸53はガイド溝55の上端に位置しており、この状態からハンドル37を下降操作すると、可動軸53がガイド溝55の下方へ移動して行く。
【0034】
ハンドル37を下降操作する途中において、締結リング36が径小パイプ9を上下動不能に締結固定し、その後の状態で可動軸53がガイド溝55の下端側において、前記調節ボルト59の上端で受け止められる(図5参照)。そのうえでハンドル37を更に下方へこれが垂直姿勢になるまで揺動操作すると、固定リング35に対して締結リング36が、径小パイプ9をロック保持したまま径小パイプ9ごと上方へ持ち上げられる。ハンドル37とリンク39とは、ハンドル37の垂直姿勢を保持した状態で固定ビス47によって締結される。
【0035】
挟持部材3は、図9に示すごとく、径大パイプ7の下端部が固定される固定具60と、この固定具60に連結された可動具61とを有するプラスチック成形品である。固定具60は、図9および図10に示すごとく、浴槽1の側壁2の上側に位置する跨設部62と、この跨設部62における浴槽1の外側端部から下方へ延びて浴槽1の側壁2の外面に臨む垂下部63とを含む。跨設部62には、径大パイプ7の下端部が筒状のパッキン70を介して取り付けられる。垂下部63において、浴槽1の側壁2に臨む内面側はカバー65で覆われており、カバー65の外側に、シリコンゴムなどからなるクッション材66が貼り付けられる。カバー65は、垂下部63にビス63a・63aで固定される。
【0036】
可動具61は、浴槽1の側壁2の内面に臨んでおり、その上端の左右両端から固定具60側へ一対のガイド棒67・67が延びている。固定具60の跨設部62には、図11に示すごとく、可動具61側が開口する一対のガイド孔69・69を設けてあり、前記跨設部62の端面側には、スペーサ79を挟んでカバー80が配される。
【0037】
スペーサ79およびカバー80には、固定具60の各ガイド孔69に繋がってガイド孔69と一体化した連通孔79a・80aをそれぞれ設けてある。可動具61の各ガイド棒67は、カバー80の各連通孔80aおよびスペーサ79の各連通孔79aを介して固定具60の各ガイド孔69にそれぞれ挿入される。スペーサ79において固定具60側の端部は、固定具60の跨設部62の端面側に形成した凹部に嵌合し、カバー80において固定具60側の端部は、スペーサ79に形成した凹部に嵌合する。
【0038】
スペーサ79の両連通孔79a・79aの間、およびカバー80の両連通孔80a・80aの間には、ボルト81が挿通する挿通孔79b・80bをそれぞれ設けてあり、ボルト81を、カバー80の挿通孔80bとスペーサ79の挿通孔79bとを通して、固定具60の跨設部62に設けたねじ孔62aに締め込むことで、カバー80およびスペーサ79が固定具60に固定される。
【0039】
固定具60の各ガイド孔69の奥壁には、ボルト通孔69aがそれぞれ設けられており、各ボルト通孔69aには、六角穴ボルトなどからなる長尺ボルト71が挿通する。可動具61の各ガイド棒67には、固定具60側の端面にねじ孔72がそれぞれ形成されており、各長尺ボルト71が、前記ボルト通孔69aを介して可動具61のねじ孔72に締め込まれることで、固定具60と可動具61とが連結され、かつ固定具60と可動具61とで浴槽1の側壁2が挟み込まれる。
【0040】
可動具61において浴槽1の側壁2の内面に臨む面は、図10に示すごとく、カバー73で覆われており、そのカバー73よりも浴槽1の側壁2側には、十字軸の自在継手75を介して上下左右に揺動自在な揺動板76を配している。揺動板76は、シリコンゴムなどからなるクッション材77が貼り付けられており、そのクッション材77を介して浴槽1の側壁2に押し当たる。
【0041】
自在継手75の横軸75aは、図12および図13に示すごとく、可動具61に設けた一対の軸受け凹部61a・61aに係合しており、自在継手75の縦軸75bは、揺動板76に設けた一対の軸受け部76a・76aに係合している。カバー73の下側には、自在継手75との干渉を防ぐために切り欠き73aが形成される。
【0042】
長尺ボルト71・71をそれぞれ緩めて、固定具60の垂下部63と可動具61の揺動板76との間を広げた状態で、浴槽1の側壁2の上端部2aに挟持部材3を跨がせたのち、長尺ボルト71・71をそれぞれ締め込むことで、浴槽1の側壁2が固定具60と可動具61とで挟み込まれて、挟持部材3が浴槽1の側壁2に取り付けられる(図10の状態)。この際、可動具61の揺動板76が揺動して、浴槽1の側壁2の内面の傾斜に沿った姿勢で、その側壁2の傾斜面にクッション材77を介して押し当たる。なお、浴槽1の側壁2の厚さが薄い場合には、スペーサ79を除いた状態で固定具60の跨設部62にカバー80がボルト81で固定される。
【0043】
径小パイプ9の下端には、空気弁機構が配される。空気弁機構は、図14に示すごとく、径小パイプ9の下端開口を塞ぐ弁座83と、この弁座83の中央に設けた貫通孔85に挿通する弁軸86と、この弁軸86の上面に配されて弁軸86を上方へ付勢する圧縮コイルばね(ばね手段)87と、弁軸86の下端に固定された円板形状の弁体89とを有する。弁体89の上面には、円板形状の弾性板90が配される。貫通孔85の内径寸法は、弁軸86の外径寸法より大きくなっている。
【0044】
弁体89は、圧縮コイルばね87の付勢力で弾性板90を介して弁座83の下面に密着しており、貫通孔85が閉じられている。これによって径小パイプ9を下降させる際には、径大パイプ7内の空気がクッションとなって径小パイプ9がゆっくりと下降する。径小パイプ9を上昇させる際には、径大パイプ7内の空気圧が減少して弁体89が押し下げられ、貫通孔85が開いて径小パイプ9が容易に上昇する。
【0045】
把持部材6は、図1に示すごとく、つっかい棒部材5の径大パイプ7に取り付けられた上下一対のジョイント91・91と、このジョイント91・91に接続された上下縦長の手摺92とを有する。各ジョイント91は、同一形状の一対の半筒体で形成されており、径大パイプ7を左右の半筒体によって挟み込むことで径大パイプ7に固定される。手摺92は、上下端部がそれぞれL字状に湾曲して、上下のジョイント91・91にそれぞれ接続される。径小パイプ9の上端部の外周には、周方向に赤色の帯93が配されており、その赤色の帯93の下側に黄色の帯95が配されている。
【0046】
次に、浴槽用手摺りの使用要領を説明すると、まず径小パイプ9を径大パイプ7内に下降させ、長尺ボルト71・71をそれぞれ緩めて固定具60の垂下部63と可動具61の揺動板76との間を広げておく。この状態で、浴槽1の側壁2において浴槽用手摺りを配すべき位置で、挟持部材3を浴槽1の側壁2の上端部2aに跨がせたのち、長尺ボルト71・71をそれぞれ締め込んで、固定具60と可動具61とによって浴槽1の側壁2を挟み込む。
【0047】
次いで、ハンドル37を水平姿勢にして、径小パイプ9を上方に引き上げる。この径小パイプ9の引き上げに際しては、天井受け部材12で赤色の帯93がほぼ隠れるように天井受け部材12を天井11に当て付ける。この状態でハンドル37を水平姿勢から下方に揺動操作すると、前記カム機構で締結リング36が縮径して径小パイプ9を締め付け固定し、更にハンドル37をこれが垂直姿勢になるよう揺動操作して行くと、締結リング36ごと径小パイプ9が押し上げられる。このとき、黄色の帯95のみが天井受け部材12の下側に露出する。
【0048】
これで天井受け部材12が天井11に強く押し付けられ、つっかい棒部材5が挟持部材3を浴槽1の側壁2の上面側に押し付けて確りと突っ張り固定する。これにより、浴槽1への出入りの際に、手摺92をつかんで横方向に強く引っ張ったり押したりしても、挟持部材3が浴槽1の側壁2から外れることはない。なお、つっかい棒部材5の圧縮コイルばね15は、天井受け部材12が天井11に過剰に押し付けられるのを防止するように作用する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】浴槽用手摺りの平面図
【図2】天井受け部材の縦断側面図
【図3】ロック具の分解斜視図
【図4】ハンドルを水平姿勢にした状態のロック具の縦断側面図
【図5】ハンドルを垂直姿勢にした状態のロック具の縦断側面図
【図6】図5のA−A線断面図
【図7】図4のB−B線断面図
【図8】図5のC−C線断面図
【図9】挟持部材の分解斜視図
【図10】挟持部材の縦断側面図
【図11】図10のD−D線断面図
【図12】可動具の分解斜視図
【図13】可動具の要部を示す横断平面図
【図14】空気弁機構の縦断側面図
【符号の説明】
【0050】
1 浴槽
2 側壁
3 挟持部材
5 つっかい棒部材
6 把持部材
7 径大パイプ
9 径小パイプ
10 浴室
11 天井
12 天井受け部材
13 ロック具
15 圧縮コイルばね
60 固定具
61 可動具
62 跨設部
63 垂下部
67 ガイド棒
69 ガイド孔
69a ボルト通孔
71 長尺ボルト
72 ねじ孔
75 自在継手
76 揺動板
83 弁座
85 貫通孔
86 弁軸
87 圧縮コイルばね
89 弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽(1)の側壁(2)を挟み込むための下向きコ字状の挟持部材(3)と、この挟持部材(3)に立設した上下方向に伸縮自在のつっかい棒部材(5)と、このつっかい棒部材(5)に設けた把持部材(6)とを含み、
つっかい棒部材(5)の上端部が、浴室(10)の天井(11)に押し付けられて受け止められることで、つっかい棒部材(5)が、挟持部材(3)を突っ張り固定することを特徴とする浴槽用手摺り。
【請求項2】
つっかい棒部材(5)は、下端部が挟持部材(3)に固定される下側の径大パイプ(7)と、この径大パイプ(7)に対して上下スライド自在に嵌合する上側の径小パイプ(9)と、この径小パイプ(9)の上端に配されて浴室(10)の天井(11)に受け止められる天井受け部材(12)と、この天井受け部材(12)が浴室(10)の天井(11)に押し付けられた際の反発力を受け止めるばね手段(15)とを備えており、
径大パイプ(7)と径小パイプ(9)との間に、径大パイプ(7)に対して径小パイプ(9)を上下動不能にロック保持するためのロック具(13)を有する請求項1記載の浴槽用手摺り。
【請求項3】
挟持部材(3)は、径大パイプ(7)の下端部が固定される固定具(60)と、この固定具(60)に連結された可動具(61)とを有していて、固定具(60)と可動具(61)とで浴槽(1)の側壁(2)を挟み込んでおり、
固定具(60)は、浴槽(1)の側壁(2)の上側に位置する跨設部(62)と、この跨設部(62)から下方へ延びて浴槽(1)の側壁(2)の外面に臨む垂下部(63)とを含み、
可動具(61)は、浴槽(1)の側壁(2)の内面に臨むとともに、固定具(60)側へ延びるガイド棒(67)を有しており、
ガイド棒(67)が、固定具(60)の可動具(61)に形成したガイド孔(69)に挿入されることで、可動具(61)が移動可能になっており、
長尺ボルト(71)を、ガイド孔(69)の奥壁に設けたボルト通孔(69a)を介して、可動具(61)のガイド棒(67)に設けたねじ孔(72)に締め込むことで、固定具(60)と可動具(61)とが連結され、かつ固定具(60)と可動具(61)とで浴槽(1)の側壁(2)が挟み込まれる請求項2記載の浴槽用手摺り。
【請求項4】
可動具(61)は、自在継手(75)を介して揺動板(76)を配しており、
固定具(60)と可動具(61)とで浴槽(1)の側壁(2)を挟み込んだ際には、揺動板(76)が浴槽(1)の側壁(2)の内面に沿う姿勢で押し当たる請求項3記載の浴槽用手摺り。
【請求項5】
径小パイプ(9)の下端に空気弁機構を配してあり、
空気弁機構は、径小パイプ(9)の下端開口を塞ぐ弁座(83)と、この弁座(83)に設けた貫通孔(85)に挿通する弁軸(86)と、この弁軸(86)を上方へ付勢するばね手段(87)と、弁軸(86)の下端に固定された弁体(89)とを有しており、
径小パイプ(9)の下降の際には、ばね手段(87)の付勢力で弁体(89)が弁座(83)の下面に密着しており、径小パイプ(9)の上昇の際には、ばね手段(87)の付勢力に抗して弁体(89)が押し下げられるようにした請求項4記載の浴槽用手摺り。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−111429(P2007−111429A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308495(P2005−308495)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(505397014)DIPPERホクメイ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】