説明

海底地盤上に沈められたトンネルの建設工法および装置

地上および水中での作業に適し、海底地盤上で水中を変位させる建設機械Mを用いて、つながった複数の部分構成体としてトンネルが建設される。この建設機械は、構築に必要な人員と設備とを収容する流体密の作業スペース(6)を備え、このスペースは、建設機械の後方で部分構成体の建設と組み立てを行うための後方を向いた開口部を有する。建設機械は、その前方部に、部分構成体の組み立てに備えて地盤の事前整備および地均しを行う手段(21−23)を備えるバラスト用チャンバー(7)を有する。水底上でのトンネル建設に適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底下に沈められたトンネルの構築に関する。
【背景技術】
【0002】
水底下、一般には海底下にトンネルを建設することについては、非常に多くの技術が提案されてきた。
【0003】
いくつかの技術は、例えば特許文献1〜8に示されるように、本質的に水底の下層地盤内にトンネルが建設される場合に関わっている。
【0004】
実際、この場合におけるよく知られた解決工法は、トンネル掘削機(トンネルボーリングマシン)を用いて、地盤を掘削し、掘り出された物質をそのトンネル掘削機の後方へ排除し、トンネル掘削機が進むにつれて、連続してつながる複数の部分構成体(トンネルの部分構造物、セグメント)としてトンネルを建設することからなる工法であり、山を貫通するトンネルの構築と同様である。
【0005】
水底下にこのようにして建設されたトンネルは、水上交通(船舶の航行)に対してなんら障害をなさない点で有利であるが、反対に、とりわけ大きな難点として、水底下への進入路を構築する必要があり、その長さは水底下に位置するトンネルの深さに比例するであろう。
【0006】
本発明は、自然または人口の海底または河川底の地盤上で、部分的にまたは全体として水中に沈む状態でトンネルが建設される場合に関するものであり、以降の「海底地盤」との表現は、このような場合全体を意味するものと解釈されるべきものである。
【0007】
トンネルを、プレキャストにより作製された連続する部分構成体として流体密の掘削孔内に建設し、水中の設置場所へと徐々に押し込む技術が、特許文献9に記載されている。
【0008】
別の標準的な技術は、環状のトンネル部分構成体を(陸上や運搬船の)表面で建設し、それらを設置すべき場所に運搬し、それらを海底地盤上の最終設置場所に沈めて、そこでそれらを組み立てることから構成される。
【0009】
このような技術は、部分構成体の建設が可能なキャスティング(流し込み)作業場に適した場所、または地上でプレキャストされた部分構成体を沈めるための施設が必要であり、特に、部分構成体は一般にとても長く、数十メートルまたは100メートルもしくはそれ以上の長さになるため、水上交通に対して重大な障害となる。
【特許文献1】DE 50882
【特許文献2】JP 9316901
【特許文献3】GB 348204
【特許文献4】EP 0899422
【特許文献5】JP 09−273382
【特許文献6】JP 2024489
【特許文献7】US 1441698
【特許文献8】US 4889448
【特許文献9】DE 3333850
【発明の開示】
【0010】
本発明の目的の一つは、複雑な地上での基盤整備(キャスティング作業場や水沈設置用施設)を構築することを回避し、航行上の障害を大幅に減少させ、そして構築費と準備期間を短縮することにある。
【0011】
本発明の態様の一つは、下記を特徴とする工法である。標準的な水沈された部分構成体(トンネルの部分構造物)を、海底地盤(自然のままものであってもよいし、事前整備されたものであってもよく、また、人口のものであってもよいし、あらかじめ浚渫や埋め戻し作業がなされたものであってもよい)上で、水中での作業に適していて、必要に応じてトンネルの設定路線に沿って水中で海底地盤上を進むように製作された建設機械を用いて建設することを含み、この建設機械は、トンネル部分構成体の構築とその場での組み立てに必要な人員および設備を収容するのに適した、大気圧の流体密作業スペース(空間)を備えている。トンネルはその建設中は流体密に保持される。トンネルのすでに建設された部分と該建設機械内の作業スペースとの間には、新たな部分構成体の構築と組み立てとを可能にする十分な大きさの連絡スペースを備えている。トンネルが建設されている期間中、トンネルは、必要に応じて部分構成体の作製素材を作業スペース内に輸送するために使用される。
【0012】
本発明に係る工法は、一態様として、次の有利な特徴を一つまたはそれ以上有していてもよく、それらは独立で用いられてもよいし、組み合わせて用いられていてもよい。
【0013】
・数メートル以下しかない、好ましくは3メートル未満の単位長さの、短い部分構成体の連続体としてトンネルが建設される。
【0014】
・建設機械は、前進するときに、トンネルを設置する準備として、その建設機械内に組み込まれた作業機材を用いて海底地盤の一部または全体を事前整備するのに使用される。
【0015】
・地盤または地盤上に載置された層を地均しすることにより地盤を事前整備する。
【0016】
・建設計画の設定路線に沿ってトレンチが浚渫され、必要に応じて基礎材料が加えられ、この掘削部が地均しされる。
【0017】
・建設機械が前進するときに、建設機械に組み込まれた、またはすでに建設されたトンネル内から運搬された機材を用いて、地盤の強化や地耐力の改善が行われる。
【0018】
・建設機械は、海底地盤上を、直前に(最後に)構築された部分構成体の前方に段階的に移動(変位)させられ、それぞれの移動時に、後続する部分構成体の組み立てとその部分構成体の恒久的な基礎材料の注入に必要な場所が作られる。
【0019】
・建設機械は、トンネルのすでに建設された部分から押し出されて、前方に突き出されることによって、海底地盤上を前進するように製作されている。
【0020】
・前方への突き出しが液圧ラムによってもたらされる。
【0021】
・建設機械に加えられる正面静水圧押し付け力が不十分な場合には、必要に応じて、建設機械の誘導を容易にし、トンネル軸横断方向のシール部を圧縮し、さらに直前に組み立てられた部分構成体の一時的な安定性を確保するために、トンネルのすでに建設された部分の方向に向かう後方の保持引張力が建設機械に加えられる。
【0022】
・この引張力は、トンネルのすでに建設された部分を貫通するケーブルによって建設機械と接続された引張装置によって加えられる。
【0023】
・建設機械が、地盤上での建設機械の耐力(支持力)を調整し、鉛直面内でのその誘導を容易にするためのバラスト用区画を備える。
【0024】
・バラスト用区画の内部に、地盤の事前整備用および/または地盤の強化もしくは地耐力の向上のため地質改良処理用の機材が設置される。
【0025】
・建設機械は、水沈部のない、一部水沈の、および/またはごくわずかだけ水沈した、トンネル・アプローチ部分(進入部)を建設するためにも使用される。
【0026】
トンネルの各部分構成体は、プレキャスト部材の組み立ておよびその場のコンクリート流し込みを含む、任意の適切な手法により建設されうる。
【0027】
ある特定の一手法においては、各部分構成体の建設は、流体密の作業スペース内に設置された固定または可動の装置を用いて部分構造体のセグメントを組み立てることにより得られたリング(環状体)として行われ、セグメント間にはトンネル軸方向(長手方向)のシール部材が設置される。
【0028】
本発明によると、トンネルが水中に全くまたはわずかしか沈んでいないアプローチ部において、トンネルまたは建設機械の前方部分に加わる静水圧の局所的な欠如や不足を補うため、および前記標準的な部分構成体の個々の安定性を向上させるために、組み立て後の部分構成体に対してトンネル軸横断方向にプレストレシングすることによって部分構成体のセグメント間のシール部材を圧縮するようにする。
【0029】
本発明は、こうした工法を実施する建設装置にも関連する。
【0030】
本建設装置は次の構成部材を備える:
【0031】
・水中での作業に適した建設機械であって、1つの部分構成体の構築に必要な人員及び設備を保護するのに適した、大気圧下で流体密になっている作業スペースを内部に備え、そのスペースはトンネルのすでに建設された部分に対して開放されていて、新しい部分構成体の建設を可能にする建設機械;
【0032】
・作業スペースと直前に建設された部分構成体との間の開口部の周囲で流体密を確保するための手段;
【0033】
・トンネルの基礎部を事前整備するための手段;
【0034】
・必要に応じて新しい部分構成体を建設するために必要なスペースを作り出すように、海底地盤上で建設機械の制御された前方への移動を生じさせる手段;
【0035】
・トンネルの建設中にその流体密を確保するための手段;
【0036】
・海底地盤上においてトンネルに対して建設機械が加える力を制御する手段;
【0037】
・部分構成体の構築に必要な構成部品と動力源とをトンネルを通じて建設機械に送り込むための手段。
【0038】
特定の実施例においては、本建設装置は次の特徴を一つ又は複数を、単独又は組み合わせて有することが有利である:
【0039】
・建設機械は、トンネル部分構成体の構築のために必要に応じて、局所的に海底地盤の状態を改善するような地盤の事前整備手段を備える。
【0040】
・地盤事前整備手段は、地均し手段するおよび/または地盤強化手段を備え、これらはロボットまたは他の形式のいずれでもよい。
【0041】
・地均し手段は、もともとの地盤またはあらかじめ地盤上に載置された層を均すための機材を備え、また地均し作業の状態を制御室で確認および/または観察するための手段を有していてもよい。
【0042】
・地均し手段は、一つまたはそれ以上の水平方向の梁(ビーム)上の摺動部に装着されたアームに取付けられた地均し用機材を備える。
【0043】
・海底地盤上の建設機械の耐力を調整するために、建設機械はバラスト用区画(安定化可能な区画)を有する。
【0044】
・そのバラスト用区画は底部が開口しており、地均し手段はバラスト用区画内部に格納されているか、またはその内部に引き込み可能であり、さらに、建設機械は必要に応じてバラスト用区画内に圧縮空気を噴射するための手段を有する。
【0045】
・建設機械は、正面静水圧押し付け力が不十分であるときに、建設機械をトンネルに押し付けるように保持する力を付与するための手段を備える。
【0046】
・その手段は、建設機械に後方への引っ張り力を負荷する牽引手段である。
【0047】
・牽引手段は、建設機械の後方に所定の距離を置いて設置され、トンネルのすでに建設された部分を貫通するケーブルによって建設機械に接続される引っ張り装置を備える。
【0048】
・建設機械は、これを前方に移動させてトンネル組み立てのための設定路線に沿って建設機械の軌道を制御するために推進力を建設機械に与える手段を備える。
【0049】
・作業スペースは、各トンネル部分構成体を構築するためにプレキャストされた部分構成体セグメントを取り扱う手段を備える。
【0050】
・建設機械は、直前に建設された部分構成体を押しやることで建設機械に推進力を与えるように設置されたラムを備える。
【0051】
・流体密の作業スペースは、建設機械が前進するときに地盤とトンネルを形作る部分構成体の下側との間で該機械が残してしまう空隙部内に充填材料を注入するための手段を備える。
【0052】
・建設機械は、釣り合い重り(カウンターウェイト)用区画を備える。
【0053】
・建設装置は、単位長さがせいぜい数メートルのプレキャストされたトンネル部分構成体、またはそのような部分構成体を建設するための部分構成体のセグメントを有する。
【0054】
・建設装置は、単位長さがほぼ約3メートル未満のプレキャストされたトンネル部分構成体、またはそのような部分構成体を構築するための部分構成体のセグメントを有する。
【0055】
したがって、その最も多くの構成を有する詳細構造においては、本発明は、下記の機能を満たした特殊な水沈建設機械を用いて海底地盤上に段階的にトンネルを建設することにある:
【0056】
・将来のトンネルを構成する外殻、またはその外殻の外部ケーシングの構築のための保護(必要に応じてさらに支持);
【0057】
・トンネルが前進するにつれて人員および設備を段階的に移動させること;
【0058】
・任意の補助的作業(基礎の地均し、浚渫、インバート(トンネル最下部)下方の充填、後方充填、保護、地盤改質など)を行うための作業基地;
【0059】
・トンネルのすでに建設された部分と建設機械自体の本体部との間の一時的な流体密。
【0060】
制約条件が同じではないので、トンネルの構造は従来の水沈チューブ型トンネルの構造とは異なっていてもよく、下記の態様が可能である:
【0061】
・トンネルは全部または一部が、プレキャスト構成要素から、または現場流し込み構成要素から作製されたものでよく、その構成要素はプレストレスされたものであってもよいし、他のものでもよい;
【0062】
・一列またはそれ以上の列の柱または隔壁が、1本またはそれ以上のラインの中間支持体および/または隔壁の場合には気密分離を与えるために建設されてもよい;
【0063】
・従来のトンネルの場合と同様に、トンネルは、トンネルへのいかなる種類の変形に対しても流体密および柔軟性を確保するシール部材によって一体に接続された部分構成体から作製されうる;
【0064】
・第二のトンネル壁部が防水または剛性確保のために建設されていてもよい;
【0065】
・従来のトンネルの場合と同様に、トンネルは、位置ずれに対して流体密および柔軟性を確保するシール部材によって一体に接続された部分構成体から作製されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下、本発明を用いたトンネル構築の1例について、添付図面を参照しながら概要を説明する。
図1は、水(3)底下の地盤(2)上に設置された水沈トンネル(1)をごく概念的に示している。このトンネルは、たとえば(4)および(5)で示される水(3)の土手や岸上の表面(地面)に到達する二つのアプローチ部(1a,1b)、ならびに主要部である水沈部(1c)を備える。構築された後は、トンネルは保護用充填材料(K)によって覆われてしまっている(この採用は選択自由である)。
【0067】
トンネルの水沈部と、好ましく水面に達するアプローチ部およびわずかに水没した部分も、連続する複数の部分構成体から作製され、その断面形状はそれ自体が公知のようにトンネルの用途に従って決定される。
【0068】
実施例として、図2から6の断面図では、断面が横8字型形状をなす複々線・二セル式のトンネルの標準的な部分構成体を示している。
【0069】
本発明によれば、トンネルは単位長さが約1メートルのつながった複数の部分構成体として建設される。
【0070】
図2は、すでに設置されたT1−T6の6つの部分構成体と新しい部分構成体の組み立て開始を示している。
【0071】
本発明に従って使用される建設機械(M)は、図3において、ごく概念的にのみ、しかしながら当業者には十分な程度に示されている。
【0072】
図7で概念的に示される複数のトレーラー(R)が建設機械の後方に設置され、建設機械に連結されている。これらのトレーラーは、それ自体陸上のトンネル掘削機の技術において知られているものであり、建設機械の操作に必要とされる補助的設備、例えば空洞部充填材料(キャビティグラウト)、圧縮空気、電源、水、換気設備、トンネル構成セグメントなどの全ての種類の供給物のためのロジスティックスを保有している。
【0073】
水没状態での作業に適しているこの建設機械は、作業スペース(6)およびバラスト用チャンバー(7)、さらに必要であればLとして概念的に示される釣り合い重りを備える。釣り合い重りは、浮力に対するよるトンネル荷重の不足を局所的および一時的に補うためのものである。
【0074】
作業スペース(6)は、周辺および(トンネル進行方向の)前方が流体密となっており、トンネルのすでに建設された部分に流体密の最後尾部(テイルスキン)(27)によって接続されている。作業スペースは、少なくとも建設予定の標準的な部分構成体を建設するのに必要な人員および全てのものを収容するように設計される。
【0075】
例えば、トンネルの標準的な部分構成体は、プレキャストされた複数のセグメントから構成されたリング状構造体であり、それらのセグメントは、必要に応じてトンネルのすでに建設された部分を通って、土手や岸から作業スペースに運搬され、作業スペースは、これらのセグメントを把持してそれらを環状の部分構成体を建設するように設置するための適切な手段(例えば、組み立て用アーム)を備える。
【0076】
これらの手段は、岩盤に穿かれた穴内でトンネル用のリング状構造体の複数セグメントを建設および組み立てるように設計された、陸上のトンネル掘削機に使用されるものと同様でよい。
【0077】
したがって、図2は、1個の部分構成体の1個のセグメントを把持して、それをその所定位置に設置するように設計され、軸方向支持部(8’)に頑丈に装着されているトンネル軸横断方向の旋回アーム(8)を使用した、これらの構築および組み立て手段を単に概念的に示すにすぎない。
【0078】
図面が煩雑にならないように、把持と組み立てを待っているセグメント群のストックは図示されていない。
【0079】
図2の断面図では、リング状構造体T7の複数セグメントのうちの一つ、Vのみが示されている。
【0080】
例示される構築物では、各環状構造体は、図5において(V1)から(V11)まで番号を付された11個のセグメントV、およびトンネルの二つのセルを分割している垂直方向の中央壁部(12)から構成される。
【0081】
(図示されない)シール部材が、セグメント間、および部分構成体間の流体密を確保しており、それら自体は陸上トンネルの分割構築技術において公知なものである。
【0082】
作業スペース(6)は以下の目的で複数のラムPを備える:
【0083】
・トンネルの環状の部分構成体の組み立てに必要なスペースを作り出すために建設機械を前方に押し出すこと;
【0084】
・地盤上での建設機械の操縦および誘導(案内);
【0085】
・リング状構造体間のシール部材を圧縮状態に保持し、直前に(最後に)設置されたリング状構造体のトンネル軸方向の安定性に寄与するように、トンネル壁部に軸方向のプレストレスを加えること。
【0086】
これらのラムは、一方で、作業スペースの前方でシールドを構成する正面壁面(14)を押し、他方では、直前に組み立てられた部分構成体を押している。部分構成体内で新たなセグメントを組み立てるために、ラムは、それまでに組み立てられた部分構成体セグメントに当たるように動作させるが、ラムP1がセグメントVの組み立てのために引っ込められてしまった図2に示すように、組み立てを行う新たなセグメントの後方にあるラムはそのようにしない。
【0087】
実際には、図4に示すように、部分構成体のセグメントあたり少なくとも二つのラムが存在することが好ましい。
【0088】
作業スペース(6)の前方では、建設機械は、前方および底部が開口しているバラスト用チャンバー(20)を有し、このバラスト用チャンバーは前方および後方ならびに側方への旋回運動が可能なように取り付けられたアーム(21)を含み、このアームは一つまたはそれ以上の梁(22)上で変位(移動)させることができる。
【0089】
これらのアームは地均し用機材を保有する。
【0090】
最も一般的には、図6によってよりよく理解されるように、例えば、表面からの浚渫によってトレンチの底部(2)が準備された後、その底部上に過剰に厚い基礎層(24)を設置し、建設機械の地均し機材を使用して、図2に示すように、この基礎層の上面の過剰の堆積物(24a)をすくい取ってその側方に寄せることにより、基礎層を形づくる。
【0091】
1つの部分構成体の組み立てが完了すると、建設機械が前進するのと同時に、建設機械からその部分構成体の下側にトンネル支持層(25)が注入され(図5)、建設機械の最後尾部(27)の厚みを補う(図7参照)。建設機械はこのための装備を有する(設備は図示されていない)。
【0092】
作業スペース(6)には、圧縮空気をバラスト用チャンバー内に、その内部の水より上方位置に注入するための装置(26)がある。
【0093】
この圧縮空気の注入は、垂直面(鉛直面)における建設機械の傾斜および誘導を制御し、地盤上での建設機械の前方部の耐力を調整する働きをする。
【0094】
トンネルに対する建設機械の圧力、およびトンネル部分構成体間のシール部材の圧縮を確実にするため、建設機械の前面での静水圧による十分な押し付けが存在しないとき(トンネルの深さが浅い場合、ならびに、トンネルが全くまたはごくわずかしか水没していない、全てのトンネルのアプローチ部)には、ラムまたはウインチ型の装置(28)を用いてトンネル方向の引っ張り力が建設機械に負荷される。これら装置はトンネル内または進入用の土手もしくは岸上に設置され、例えばケーブル(29)によって建設機械に接続される。
【0095】
これらの手段は、図7に概念的にのみ示されている。
【0096】
部分構成体に加えられる静水圧が不十分なときには、図6においてケーブル(30)の形式で概念的に示されるように、部分構成体は横方向(トンネル軸横断方向)にプレストレスされる。
【0097】
部分構成体は、例えば連結コネクター、ボルトおよび/または一時的もしくは恒久的なプレストレス用の棒、もしくは図6に概念的に示されるようなケーブル(31)によって互いに結びつけられていてもよい。
【0098】
二つの岸や土手をつなぐことを普通には意図しているので、トンネルは二つのアプローチ部を有し、これらの部位も本建設機械で建設されることが好ましい。
【0099】
本発明は説明された実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に従って建設されるトンネルの一例の長手方向概念図である。
【図2】トンネルのすでに建設された部分および本発明に従ってトンネル建設のために設計され使用される建設機械の長手方向断面図である。
【図3】図2における1−1平面での断面図である。
【図4】図2における2−2平面での断面図である。
【図5】図2における3−3平面での断面図である。
【図6】完成したトンネルの標準的な部分構成体の断面図である。
【図7】建設中のトンネルにおける後方への牽引システムを示す長手方向概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然または人工の海底地盤上で複数のつながっているトンネル部分構成体として建設される、全体または一部が水沈したトンネルの建設工法であって、
必要に応じてトンネルの設定路線に沿って海底地盤上を水中で前進させる水沈状態での作業に適した建設機械を用いて、標準的な沈埋部分構成体を海底地盤上で建設し、前記建設機械は、部分構成体の構築及びその場での組み立てに必要な人員および設備を収容するのに適した大気圧で流体密の作業空間を備えており、
トンネルは、その建設中は流体密に保持され、
すでに建設されたトンネル部分と前記建設機械の作業スペースとの間が、新たな部分構成体の構築と組み立てとが可能な十分な大きさの連絡スペースによって開放状態に保持され、
トンネルが建設されている間は、必要に応じて部分構成体の構成部品を前記建設機械に輸送するためにトンネルが使用される、
ことを特徴とする工法。
【請求項2】
前記トンネルは、好ましくは長さ3メートル未満の、短い、複数の連続した部分構成体として建設される請求項1記載の工法。
【請求項3】
海底地盤が、組み立ての設定路線に沿ったトレンチを浚渫した後、このトレンチの底部を地均しすることによって事前整備される請求項1または2に記載の工法。
【請求項4】
海底地盤の事前整備のために基礎部材が設置される請求項3記載の工法。
【請求項5】
前記建設機械は、前進する時に、当該建設機械内に組み込まれた機材を用いて、トンネルの組み立てのために海底地盤の一部または全体を事前整備するためにも使用される請求項3記載の工法。
【請求項6】
前記建設機械が前進する時に、当該建設機械内に組み込まれているか、またはすでに建設されたトンネルの内部からの手段を用いて、地盤が強化されるか、または地盤の耐力が改善される請求項1から5のいずれかに記載の工法。
【請求項7】
前記建設機械は、すでに建設されたトンネルからの突き出しによって海底地盤上を前方に推進される請求項1から6のいずれかに記載の工法。
【請求項8】
前記前方への推進は液圧ラムによって実施される請求項7記載の工法。
【請求項9】
前記建設機械に加えられる正面静水圧押し付けが不十分な場合には、該建設機械の誘導を容易にし、横方向の連結部を圧縮し、さらに直前に組み立てられた部分構成体の一時的な安定性を確保するために、必要に応じて、トンネルのすでに建設された部分へ向いた拘束引張力が前記建設機械に付与される請求項1から8のいずれかに記載の工法。
【請求項10】
当該引張力は、トンネルのすでに建設された部分を貫通するケーブルによって前記建設機械と接続された引張装置によってもたらされる請求項9記載の工法。
【請求項11】
前記建設機械は、地盤上での当該建設機械の耐力を調整し、鉛直面内での誘導を容易にするためのバラスト用の区画を備える請求項1から10のいずれかに記載の工法。
【請求項12】
前記バラスト用区画の内部には、地盤の地均し用および/もしくは強化のため、または地耐力の向上のための機材が設置される請求項11記載の工法。
【請求項13】
各部分構成体は、流体密の前記作業スペース内に設置された固定または可動の装置を用いて、該部分構成体のセグメントを組み立てて、トンネル軸方向の流体密シール部材を該セグメント間に設置することにより、その場で建設される請求項1から12のいずれかに記載の工法。
【請求項14】
組み立て後の部分構成体に対する軸横断方向のプレストレシングにより、標準的な部分構成体の単独での安定性を向上させ、かつ部分構成体のセグメント間の流体密シール部材を圧縮する請求項13記載の工法。
【請求項15】
前記建設機械を海底地盤上において直前に構築された部分構成体の前方に段階的に移動させることにより、それぞれの移動時に、後続する部分構成体の組み立てと該部分構成体の恒久的な基礎の注入を行うのに必要なスペースを作るようにする請求項1から14のいずれかに記載の工法。
【請求項16】
前記建設機械は、水沈部のない、一部水沈の、および/またはごく一部のみが水沈した、トンネル・アプローチ部分を建設するために使用される請求項1から15のいずれかに記載の工法。
【請求項17】
下記を備える請求項1から16のいずれかに記載の工法を実施するためのトンネル建設装置:
・水沈状態での作業に適した建設機械(M)であって、1つの部分構成体の建設に必要な人員及び設備を収容するのに適した、内部が大気圧である、流体密の作業スペース(6)を備え、このスペースは、トンネルのすでに建設された部分に対して開放されていて、新たな部分構成体の建設を可能にする建設機械;
・前記作業スペースと直前に建設された部分構成体との間の開口部の周囲の流体密を確保するための手段(27);
・トンネルの基礎部を事前整備するための手段(21−23);
・必要に応じて新しい部分構成体を建設するのに必要なスペースを作り出すように、海底地盤上で前記建設機械の制御された前方への移動を生じさせる手段(P);
・前記建設機械の海底地盤上でのおよびトンネルに対する耐力を制御するための手段(28,29);
・部分構成体の建設に必要な資材と動力源とをトンネルを通じて前記建設機械へと運搬する手段(R)。
【請求項18】
前記建設機械は、トンネル部分構成体の建設に備えた海底地盤の状態を局所的に改善するような地盤の事前整備手段(21−23)を備える請求項17記載の建設装置。
【請求項19】
その地盤事前整備手段は、地均し手段(21−23)および/または地盤強化手段を備え、これらはロボットまたは他の形式である請求項18記載の建設装置。
【請求項20】
前記地均し手段(23)は、もともとの地盤または事前に地盤上に載置された層を均すための機材を備える請求項19記載の建設装置。
【請求項21】
前記建設機械は、地均し作業の状態を確認および/または観察するための手段を備える請求項19または20に記載の建設装置。
【請求項22】
前記地均し手段は、1または2以上の梁(22)上に摺動自在に装着されたアーム(21)に取り付けられた地均し用機材(23)を備える請求項19から21のいずれかに記載の建設装置。
【請求項23】
前記建設機械は、海底地盤上の該建設機械の耐力を調整するためにバラスト用区画(7)を備える請求項17から22のいずれかに記載の建設装置。
【請求項24】
前記バラスト用区画(7)は底部と前方部とが開口しており、前記地均し手段(21−23)は前記バラスト用区画内に格納されているか、その内部に引き込み可能であり、前記建設機械は必要に応じて前記バラスト用区画内に圧縮空気を噴射する手段(26)を備えている請求項23記載の建設装置。
【請求項25】
前記建設機械の正面静水圧押し付けが不十分であるときにトンネルに対する該建設機械の押し付けを実施する手段を備える請求項17から24のいずれかに記載の建設装置。
【請求項26】
前記牽引手段は、前記建設機械の後方に設置され、トンネルのすでに建設された部分を貫通するケーブル(29)によって該建設機械に接続された引っ張り装置(28)を備える請求項25記載の建設装置。
【請求項27】
前記建設機械を前方に移動させ、かつトンネル組み立ての設定路線の方向にその軌道を制御するための推進力を該建設機械に与える手段(P)を備える請求項17から26のいずれかに記載の建設装置。
【請求項28】
前記建設機械は、直前に構築された部分構成体からの押し出しにより該建設機械に推進力を与えるように配置されたラム(P)を備える請求項27記載の建設装置。
【請求項29】
前記作業スペース(6)は、トンネル部分構成体を構築するためのプレキャスト部分構成体セグメント(V)を取り扱うための手段を備える請求項17から28のいずれかに記載の建設装置。
【請求項30】
前記流体密の作業スペースは、前記建設機械が前進するときに、地盤(2)とトンネルを形作る部分構成体の底面との間で該機械が残してしまう空隙内に充填材料(25)を注入する手段を備える請求項17から29または30のいずれかに記載の建設装置。
【請求項31】
トンネルの複数の部分構成体にトンネル軸横断方向のプレストレスを加える手段(30)を備える請求項17から30のいずれかに記載の建設装置。
【請求項32】
トンネルの複数の部分構成体にトンネル軸方向のプレストレスを加える手段(31)を備える請求項17から31のいずれかに記載の建設装置。
【請求項33】
前記建設機械は、釣り合い重り用区画(L)を備える請求項17から32のいずれかに記載の建設装置。
【請求項34】
単位長さがせいぜい数メートルのプレキャスト・トンネル部分構成体、またはかかる部分構成体を建設するための部分構成体セグメントを備える請求項17から33のいずれかに記載の建設装置。
【請求項35】
単位長さが一般に約3メートル未満のプレキャスト・トンネル部分構成体、またはかかる部分構成体を建設するための部分構成体セグメント、を備える請求項34記載の建設装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−537375(P2007−537375A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512594(P2007−512594)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001741
【国際公開番号】WO2005/111317
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(501227638)
【氏名又は名称原語表記】BOUYGUES TRAVAUX PUBLICS
【Fターム(参考)】