説明

海水の淡水化装置

【課題】効率よくコンスタントに海水から塩類を除去することができ、海水を蒸発させて凝縮させるエネルギ−投入量の少ない、電気脱塩装置と遠心式圧縮機を用いた低造水コストの海水淡水化装置を低価格で提供する。
【解決手段】縦方向に設置した二重管内側の真空雰囲気の蒸発室の下部に設けた、噴射ノズルからマイクロバブルを混入して加圧した海水を上向に噴霧し、下部ガイドベ−ンで旋回上昇させながら遠心力や電気脱塩装置で塩類を分離して蒸発させ、水蒸気を上部ガイドベ−ンから遠心式圧縮機に吸引して加圧し、水蒸気導入管から加圧雰囲気の凝縮室に流入させて撒水ノズルで淡水と気液接触させながらヘチマ状構造体と冷却管に撒水し凝縮させて淡水を造水して淡水は外部に排出し、防水キャップで分離された気体を内管下部の冷気噴出管より蒸発室の中に循環させることで、連続して海水を淡水化させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧法と蒸発法を用い海水から真水を得るための海水淡水化に関し、特に、温度差を利用して効率よく淡水化が行える海水淡水化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海水から淡水を得る方法としては、蒸発法、逆浸透法、冷凍法、透過気化法及び電気透析法などの様々な方法がある。海水を加熱して減圧雰囲気で蒸発させて水蒸気とし、冷やして凝縮し淡水を造水する海水淡水化装置が従来から多く用いられていた。
【0003】
その処理方法の一つとして、減圧雰囲気で海水をスプレ−噴射して蒸発させ、冷却して凝縮し淡水を造水する装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。然し乍ら、この装置は、個々に設けた蒸発器や凝縮器とドレンセパレ−タ−などを複雑な配管によって接続しているため、熱損失が多く、装置製作費も高額となるため、低コストで淡水化させるための大幅な改良や技術改善が要求されていた。
【0004】
又、海水をタンク内で電気ヒ−タ−と熱電素子で加熱し、減圧雰囲気の中で蒸発させ、熱電素子で冷やした冷却液を循環させて水蒸気を凝縮する装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。然し乍ら、この方法は実験用の装置であり、海水タンク下部を熱電素子で水平に区画し、上側で海水を加熱し、下側の吸熱部で冷却液を造るためエネルギ−効率も悪く、大量に海水を淡水化させることが困難であった。
【0005】
又、中空円筒の中に塩水を満たし下部に封水した調整室を設けて減圧した内部に、海水をスプレ−フラッシュして蒸発させ凝集する装置が知られている(例えば、特許文献3参照。)。然し乍ら、この装置は、減圧効率が悪く、装置も複雑で熱損失も多く、低コストで海水を淡水化させることが困難であった。
【0006】
更に、真空ポンプを使用することなくエゼクタ−を用いた減圧雰囲気の中て淡水化させる装置が知られている(例えば、特許文献4参照。)。然し乍ら、この装置は、夫々の蒸発装置、凝集器、抽水タンクをポンプを用いて配管で結ぶため装置も大型となりエネルギ−コストも悪く、大量に海水を淡水化させることが困難であった。
【0007】
更に又、複数個の平板状のヒ−トパイプ素子を縦方向で平行に配置した蒸留装置が知られている(例えば、特許文献5参照。)。然し乍ら、この方法はパイプ素子の中間部を仕切部材で区画し上部で加熱し下部で凝縮させるため構造も複雑で、多数のヒ−トパイプ素子を必要とするためその大幅な改善が要求されていた。
【0008】
その他、超音波素子により海水から霧を発生させ、サイクロン機能をもった凝集室で液化するものが知られている(例えば、特許文献6参照。)。然し乍ら、この蒸留装置では熱交換効率が悪く、装置も複雑で製作費も高額となりその改善が求められていた。
【0009】
【特許文献1】特許第2878296号公報
【特許文献2】特開平10−230246号公報
【特許文献3】再公表特許WO2004/069370号公報
【特許文献4】特開2002−254066号公報
【特許文献5】特開平11−316094号公報
【特許文献6】特開2005−131543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上述べた如く、減圧法による従来公知の海水の淡水化装置では、減圧した蒸発室の内部に海水のみを供給して海水の蒸発作用を行わせているために、減圧容器内の海水が蒸発潜熱により次第に冷やされることにより、飽和水蒸気の圧力が次第に低下するため真空ポンプの負荷が増大して海水の造水効率が悪いためその改善が要求されていた。
【0011】
又、スプレ−フラッシュによる淡水化方法では、蒸発に多大のエネルギ−を必要とする真空蒸発部と凝縮装置を別個に設けた構造のため、接続管路が複雑になり熱損失が多く発生することと、造水工程が増大するため製造価格が大幅にアップする他、造水コストもアップするなどの様々な問題点があった。
【0012】
更に、逆浸透膜法による造水は装置自体も大型であるだけでなく、水を選択的に通す半透膜を用いて、海水を加圧して反対側から淡水を回収する方法であるため、海水を浸透圧以上に加圧するための動力費、目詰まりで交換する高価な逆浸透膜の交換費や廃棄物処理費などランニング費用が極めて大きく、総合的な造水コストが高額である。
【0013】
以上の課題を解決するため本発明はなされたものであり、減圧法を用いる海水淡水化装置の消費電力を削減して省エネルギ−化と造水効率の向上を図り、塩水の凝縮器への流入を防止して、造水工程で雑菌類は繁殖せず而も殺菌処理されて造水した淡水の水質を向上させた低価格の海水淡水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記の目的を達成するために、減圧した真空雰囲気で縦方向に設置した二重管の蒸発室内部の壁面にヘチマ状構造体を内張りし、海水を噴射ノズルで霧化して旋回させながら水蒸気蒸発させ、上部ガイドベ−ンから水蒸気導入管のディフュ−ザ−を介して凝縮室に導入させ、ディフュ−ザ−に内装した撒水ノズルから撒水する淡水と気液接触させながら凝縮室の中に充填したヘチマ状構造体に降水させて凝縮させ、中段部の撒水ノズルで更に撒水して冷却管で完全に凝縮させて淡水を製造し、下部の冷気噴射管から気水分離した気体を蒸発室の加熱コイル管に噴射し加熱して循環させたものである。
【0015】
第2の課題解決手段は、海水供給管に極性が任意に変換できる不溶性金属電極Aと不溶性金属電極Bを内装した電解処理室を設置し、直流電流を印加して陽極側の不溶性金属電極Aで海水中の水素イオンと塩素イオンで次亜塩素酸を生成して殺菌作用を付加し、陰極側の不溶性金属電極Bで海水中の水酸イオンとナトリウムイオンでアルカリ電解水を生成して塩類の分離作用を付加させて水蒸気の蒸発を促進させたものである。
【0016】
第3の課題解決手段は、蒸発室の内管壁面の中間位置に、極性が任意に変換できる炭素被覆電極Aと炭素被覆電極Bを交互にセパレ−タ−を介して数珠状に繋いだ円筒状の電気脱塩装置を設置し、直流電流を印加して陽極側の炭素被覆電極Aに噴霧した海水中の塩素イオンを吸着させ、陰極側の炭素被覆電極Bに噴霧した海水中のナトリウムイオンを吸着させ、直流電流を解除することで吸着した塩素イオンやナトリウムイオンを放出させたことで電気的に脱塩処理したものである。
【0017】
第4の課題解決手段は、二重管の内管にヒ−トパイプを設置し、噴射ノズルから加熱した海水を噴射して霧化した水蒸気の蒸発を促進させるヒ−トパイプの加熱部を蒸発室内に露出し、蒸発した海水の凝縮を促進させるヒ−トパイプの冷却部を凝縮室内に露出させ、海水の水蒸気の蒸発と凝縮による熱交換をヒ−トパイプで促進させたものである。
【0018】
第5の課題解決手段は、蒸発室の頂部に循環用の遠心圧縮機を設置し、海水を噴射ノズルから噴射して霧化した水蒸気を旋回させながら、遠心圧縮機の中心部から吸引して羽根車で圧縮しながら凝縮させて水蒸気導入管から凝縮室の中に強制的に排出させて、旋回上昇による遠心力で塩類の分離と蒸発を促進させたものである。
【0019】
第6の課題解決手段は、凝縮室に水平隔壁を設けて多室に区画し、水平隔壁に減圧弁と逆碗付トラップ弁を縦方向に接管して減圧弁と逆碗付トラップ弁の封水で凝縮室を加圧状態に保ち、設定圧力以上の場合は減圧弁を開弁させて減圧し、逆碗付トラップ弁から溢れた淡水は排出し、一定の加圧状態を維持して水蒸気を効率良く凝縮させたものである。
【0020】
第7の課題解決手段は、蒸発室と凝縮室の内部に波長がUV−C185nmのオゾンを発生する紫外線オゾン灯を、紫外線の透過が良い高純度の石英ガラス保護管に内装して設置し、発生したオゾンで噴霧した海水に混入したプランクトンや藻類により発生したカビ臭や硫化水素臭などの消臭と各種細菌類の殺菌をオゾンで処理したものである。
【0021】
第8の課題解決手段は、海水タンク内の冷却コイル管で凝縮室で吸熱した冷却水を冷やすことで海水を温めて、交互に加熱される複数の海水加熱タンクの加熱される側に供給して加熱された海水を加圧ポンプでマイクロバブルを混入しながら加圧して噴射ノズルに供給する。一方、加熱が停止されている側の海水加熱タンク内の濃縮された海水を濃縮塩水タンクに排出させる交互加熱により、効率良く熱交換したものである。
【0022】
第1の課題解決手段による作用は、縦方向に設置した二重管3の蒸発室9壁面にヘチマ状構造体10を内張りし、海水41を噴射ノズル20から霧化して旋回させながら水蒸気蒸発させ、上部ガイドベ−ン74から水蒸気導入管14のディフュ−ザ−15を介して凝縮室8に導入し、ディフュ−ザ−15に内装した撒水ノズル21で淡水43と気液接触させながら凝縮室8に充填したヘチマ状構造体10に撒水して凝縮させ、更に中段部の撒水ノズル21で撒水して冷却管22で完全に凝縮させて淡水43を製造し、下部の冷気噴射管16から気水分離した気体を加熱コイル管31で加熱して循環させたものである。
【0023】
第2の課題解決手段による作用は、海水を噴射ノズル20に供給する海水供給管24に極性が任意に変換できる不溶性金属電極A63と不溶性金属電極B64を内装した電解処理室71を設置し、直流電流を印加して陽極側の不溶性金属電極A63で海水41中の水素イオンと塩素イオンで次亜塩素酸を生成して殺菌作用を付加させ、陰極側の不溶性金属電極B64で海水41中の水酸イオンとナトリウムイオンでアルカリ電解水を生成して界面活性作用を付加させて水蒸気の蒸発と造水を促進させたものである。
【0024】
第3の課題解決手段による作用は、蒸発室9の内管壁面12の中間位置に、極性が任意に変換できる炭素被覆電極A72と炭素被覆電極B73を交互にセパレ−タ−65を介して数珠状に繋いだ円筒状の電気脱塩装置62を設置し、直流電流を印加して陽極側の炭素被覆電極A72に噴霧した海水41中の塩素イオンを吸着させ、陰極側の炭素被覆電極B73に噴霧した海水41中のナトリウムイオンを吸着させ、直流電流を解除することで吸着した塩素イオンやナトリウムイオンなとを電気的に脱塩処理することができる。
【0025】
第4の課題解決手段による作用は、二重管3の内管7にヒ−トパイプ77を設置し、噴射ノズル20から加熱した海水41を噴射して霧化した水蒸気を蒸発させるヒ−トパイプ77の加熱部2を蒸発室9内に露出し、蒸発した海水の水蒸気を凝縮させるヒ−トパイプ77の冷却部4を凝縮室8内に露出させて、海水41の水蒸気の蒸発と凝縮による熱交換をヒ−トパイプ77で促進させて熱エネルギ−の削減を図ることができる。
【0026】
第5の課題解決手段による作用は、蒸発室9内の頂部に循環用の遠心圧縮機54を設置し、海水41を噴射ノズル20から噴射して霧化した水蒸気を旋回させながら、遠心圧縮機54の中心部から吸引して羽根車56で圧縮しながら凝縮させて水蒸気導入管14から凝縮室8の中に強制的に排出させ、真空雰囲気で蒸発を促進させることができる。
【0027】
第6の課題解決手段による作用は、凝縮室8を仕切る水平隔壁6に減圧弁78と逆碗付トラップ弁79を設け、減圧弁78と逆碗付トラップ弁79の封水で凝縮室8内の密閉を保持し、設定圧以上の場合は減圧弁78を開弁して減圧し、逆碗付トラップ弁79から淡水を排出し、一定の加圧状態に維持して水蒸気を効率良く凝縮させることができる。
【0028】
第7の課題解決手段による作用は、蒸発室9上部と凝縮室8内部に、波長がUV−C185nmのオゾンを発生する紫外線オゾン灯23を、紫外線の透過が良い高純度の石英ガラス保護管58に内装して設置し、発生したオゾンで噴霧した海水41に混入したプランクトンや藻類により発生したカビ臭や硫化水素臭などの消臭と各種細菌類の殺菌を、紫外線オゾン灯23を照射して処理することができる。
【0029】
第8の課題解決手段による作用は、海水タンク44内の冷却コイル管32で凝縮室8で吸熱した冷却水49を冷やすことで海水を温めて、交互に加熱される複数の海水加熱タンク46の加熱側に供給して加熱された海水を加圧ポンプ40でマイクロバブルを混入しながら加圧した噴射ノズル20に供給する。一方、加熱が停止中の海水加熱タンク46内の濃縮された海水を濃縮塩水タンク47に排出させることによる交互加熱により、効率良く熱交換することで海水を淡水化処理できる。
【発明の効果】
【0030】
上述したよう本発明の海水の淡水化処理装置は、以下のような優れた効果が得られる。
【0031】
真空状態に減圧され加熱コイル管により加熱された蒸発室の上下にガイドベ−ンを設けて旋回する上昇気流を発生させ、下部の噴射ノズルから海水を噴霧して海水中の塩類を遠心力により蒸発室の壁面に内張りしたヘチマ状構造体に付着させて効率良く分離し、淡水の水蒸気だけを凝縮室に導入して充填したヘチマ状構造体に付着させ水滴とし、更に冷却管で凝縮させたことにより、効率良く海水を淡水化できる装置が低価格で提供できる。
【0032】
電解処理室で海水に直流電流を印加してプラスイオンとマイナスイオンにより界面活性作用を付加し、噴射ノズルから噴霧して旋回する上昇気流にしたことで海水の蒸発促進と次亜塩素酸の生成による殺菌作用、更に紫外線オゾン灯の暴露よる消臭作用と殺菌作用が付加されて、HACCPに対応した衛生的で安全な淡水を造水することができる。
【0033】
蒸発室の中間位置に電気脱塩装置を設置し、下部の噴射ノズルから海水を噴霧して海水中に含まれた塩類を遠心力により分離して電気脱塩装置に付着させて直流電流による電気分解で塩素やナトリウムを完全に吸着させて除去し、塩類が分離された水蒸気を頂部の遠心圧縮器により加圧して凝縮室に強制的に流入させ、淡水の撒水による気液接触と冷却管により凝縮して淡水化するため、小型の淡水化装置で大量に造水することができる。
【0034】
外部に設置したエジェクタ−ポンプと蒸発室の上部に設置した遠心式圧縮機により減圧した真空状態にしたことにより噴霧した海水の蒸発を促進させることにより、蒸発に必要な加熱エネルギ−が大幅に削減された。更に、凝縮室の内部を多室に仕切りボ−ルバルブを設けて加圧状態で蒸発した海水を冷却して凝縮させたことにより、凝縮に必要な冷却エネルギ−も大幅に削減することができ、純度の高い淡水が低コストで造水できる。
【0035】
交互運転する複数の海水加熱タンクに、蒸発した海水を凝縮する循環水を冷却した海水を供給して加熱し、海水加熱タンクの濃縮した海水を濃縮塩水タンクに排出することで噴射する海水の塩分濃度を下げて蒸発室の中に噴霧したことと、蒸発室と凝縮室の間にヒ−トパイプを装着したことで熱交換が促進され、海水の淡水化に必要な外部から供給する加熱と冷却の熱エネルギ−の使用量を大幅に削減することができる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の海水の淡水化方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。本発明はこれに限定されるものでなく水質の状況に応じて適宜事由に変更できるものである。
【実施例1】
【0037】
海水の淡水化装置の実施形態は図1のように、縦方向に設置した外管5と内管7により構成された二重管3による海水淡水化装置1は、蒸発室9内に加圧した海水41を噴射ノズル20から噴射し霧撒させて真空雰囲気により沸点を下げて蒸発させるため、二重管3内を真空化する必要があるため、蒸発室9内で発生した分離塩水51を外部に排出する濃縮塩水排出管27の先端がエジエクタ−ポンプ(図示せず)に接続されている。
【0038】
濃縮塩水排出管27の先端を、別途に設置した濃縮塩水タンク47(図示せず)の中に設置したエジエクタ−ポンプの吸引側に接続して、エジエクタ−ポンプが分離塩水51を吸引してオリフィス部(絞り部)で流速を高められて排出するとき発生する吸引効果により、蒸発室9内の分離塩水51をエジエクタ−ポンプで排出すると同時に二重管3内部の空気を吸引しながら排出することで二重管3の内部は、真空化されることにより、噴射ノズル20から噴射して霧化した水蒸気の沸点が下がり急速に気化される。
【0039】
凝縮室8で水蒸気導入管14に内装した撒水ノズル21で気液接触させてヘチマ状構造体10に撒水し、更に冷却管22に撒水することで熱交換されて冷やされた気水を、冷気噴射管16の管頭部に設置した防水キャップ17により気水分離された冷気を、冷気噴射管16により蒸発室9内に旋回するように噴射して、加熱コイル管31で30℃前後に加熱することで、蒸発室9の内部は常に真空雰囲気で高温度に維持されている。
【0040】
噴射ノズル20から噴射する海水の温度を40℃前後に(例えば、電気ヒ−タ−又は灯油バ−ナ−など。)を用いて外部より加熱させる。更に、海水供給管24の途中に設置した渦流タ−ビンポンプ(図示せず)で蒸発室9の内部から吸引した空気を混入しながらマイクロバブルを発生させることにより、蒸発室9の内部はマイクロバブルの混入によることで空気量には変化なく減圧された真空状態を維持することができる。
【0041】
海水41にマイクロバブルを混入して加圧する方法は、渦流タ−ビンポンプ(例えば株式会社ニクニ、タ−ボ式気体溶解ポンプなど。)で海水を吸引すると同時に、蒸発室9の内部から吸引した空気を渦流タ−ビンポンプに流入させ、外周に放射状の溝を持つ羽根車(インペラ−)の回転によってポンプ内の内壁に沿って渦流を発生させながら繰り返して加圧することで、海水と空気が高速度で攪拌されてマイクロバブル混入の海水を発生させ、噴出圧力を0.7MPa乃至1.5MPa前後に加圧して噴射ノズル20に供給される。
【0042】
海水41にマイクロバブルを混入したことで、気泡の比表面積が大きく自己加圧効果を保持したことと、マイクロバブルの表面がマイナスに帯電していることにより溶解効果が極めて優れた水蒸気となり、真空雰囲気中で霧化した海水の水蒸気は溶存したマイクロバブルが急激に圧壊することにより気化される。そのことは、加圧時に発生した急激な縮小による自己加圧効果で気泡内の圧力は反比例して増加する圧縮作用で高温度となり、消滅時に数千気圧の領域を形成する極限反応により海水から脱塩処理させることができる。
【0043】
海水41は噴射ノズル20から下部ガイドベ−ン75を介して上向き方向に、海水41のスプレ−噴射角度を10°前後の狭角度で霧状に噴射され、加熱コイル管31で加熱された空気を吸引させながら下部ガイドベ−ン75と上部ガイドベ−ン74で右巻きの旋回上昇流となり蒸発室9中を上昇する過程で噴射された海水41の水蒸気は、真空雰囲気による低い沸点とマイクロバブルが急激に圧壊されることに起因して急速に蒸発しながら上昇し、水蒸気導入管14からディフュ−ザ−15を介して凝縮室8に導入される。
【0044】
蒸発室9を旋回上昇する過程で海水41の水蒸気に含まれたミネラル類や塩分は、上部ガイドベ−ン74に到達するまでに旋回上昇で発生した遠心力で、比重の重いミネラル類や塩類は、内管壁面12に厚さ4cm前後で内張りされたポリエステル繊維のヘチマ状構造体10(例えば、前田工繊株式会社、エンドレンマットなど。)に付着して分離塩水51となり、ヘチマ状構造体10内を流下して下部の分離塩水貯留タンク50内に分離塩水51として一定量貯留され、溢れた液が濃縮塩水排水管27を介して外部に排出される。
【0045】
凝縮室8に流入した海水41の水蒸気は、下部の淡水貯留タンク48の淡水43が、外部に設置された撒水ポンプ39により凝縮室8の頂部に設けた水蒸気導入管14のデイフュ−ザ−15に内装した撒水ノズル21から撒水される淡水と気液接触しながら凝縮室8に充填されたヘチマ状構造体10に撒水することで、ヘチマ状構造体10に付着し表面張力により凝縮して水滴となり、更に中段部の撒水ノズル21でも撒水されて気液接触して淡水の水滴となり降下して下部の冷却管22に接触して冷却されることで、蒸発した海水41の霧は完全に凝縮され淡水43として下部の淡水貯留タンク48に貯えられる。
【0046】
又、冷却されて落下する淡水43は、凝縮室8の内管7に施した断熱材11と外管5との間設置した冷却管22に落下する淡水43の蒸発室9内への流入を防止するため冷気噴射管16の管頭に設けた防水キャップ17により気水が完全に分離され、冷気噴射管16より蒸発室9に冷気だけを噴射して循環させることで効率よく海水を淡水化することができる。逆U字形状に配管された封水トラップ管30により一定の貯水面18を保持することで、真空を保ちながら貯水面18より溢れた淡水43だけが外部に排出される。
【実施例2】
【0047】
海水を電解処理させた淡水化装置の実施形態は図1の蒸発室の下部に図示したように、冷気噴射管16から蒸発室9に流入する気水分離された冷気を、外部に別途設置した加熱水タンク(図示せず)により加熱水の水温を40℃前後に加熱し加熱コイル管31に供給して、冷気噴射管16で旋回流入する冷気を加熱させて、海水41を噴射ノズル20に供給する海水供給管24の途中に電解イオンを発生させる電解処理室71を設ける。
【0048】
下部ガイドベ−ン75直下の央部に設けた噴射ノズル20から、海水加熱タンクに海水タンク(図示せず)で凝縮室8の冷却による熱交換で昇温した海水41を供給して、噴射する海水の温度を40℃前後に(例えば、電気ヒ−タ−又は灯油バ−ナ−など。)を用いて外部より加熱し、更に、海水供給管24の途中に設置した加圧ポンプ(図示せず)で、マイクロバブルを混入しながら噴射する海水の噴出圧力を0.7MPa乃至1.5MPa前後に加圧して蒸発室9の下部から電解処理室71を介して噴射ノズル20に供給させる。
【0049】
電解処理室71の内部では、外部の直流電源装置(図示せず)から直流電流の極性を定期的に変換して供給され、電気分解により発生したガスで不溶性金属電極A63及び不溶性金属電極B64の消耗を防ぐため2V前後の直流電流を5分から8分前後で極性変換して印加し、陽極側の不溶性金属電極A63で海水41中の水素イオンと塩素イオンで次亜塩素酸を生成して殺菌作用が付加され、陰極側の不溶性金属電極B64で海水41中の水酸イオンとナトリウムイオンでアルカリ電解水を生成して界面活性作用が付加される。
【0050】
電解処理室71に用いる不溶性金属電極は、チタンを電極の基盤としてその表面に粉末の平均粒径50μm前後の不溶性金属粉末(例えば、酸化イリジュウムと酸化タンタルや酸化マンガン、二酸化マンガンとタングステン、酸化チタン粉末など。)を溶射条件としての電流500A、電圧60から70Vでアシストガスとしてアルゴンと水素の混合ガスを用いて、溶射ガンとチタンを電極基盤との距離を10cmとしてプラズマ溶射によりチタン電極基盤の全面に厚さ100μmの溶射皮膜層の形成したものである。
【0051】
電解処理した海水41は、噴射ノズル20から下部ガイドベ−ン75を介して上向き方向にスプレ−噴射角度を8°乃至10°前後の狭角度で霧状に噴射し、加熱コイル管31で加熱された空気を吸引させながら下部ガイドベ−ン75と上部ガイドベ−ン74により右巻きの旋回上昇流となり蒸発室9内を上昇する過程で噴射された海水41の水蒸気は、減圧された真空雰囲気による低い沸点とマイクロバブルが急激に圧壊されることに起因して、内管7中を急速に水分が蒸発されながら上部ガイドベ−ン74により旋回させながら吸引され、内管7の上端部に設置した水蒸気導入管14から凝縮室8に流入される。
【0052】
蒸発室9の中の上昇する過程で海水41の水蒸気に含まれたミネラル類や塩分は、上端部に設置した遠心圧縮機54に到達するまでに旋回上昇により発生した遠心力で、比重の重いミネラル類や塩類は、内管壁面12に結晶塩類42となり、次々と付着するミネラル類や塩類で結晶が増殖されて、下部の分離塩水貯留タンク50内に分離塩水51として一定量貯留され、溢れた液がエジエクタ−ポンプ(図示せず)で外部に排出される。
【0053】
凝縮室8に流入した海水41の水蒸気は、凝縮室8下部の淡水貯留タンク48の冷却された淡水43が、二重管3の外部に設置された撒水ポンプ39で淡水43を吸引して揚程され、凝縮室8の頂部に設けた撒水ノズル21から下方向に散水して気液接触して冷却され下降気流を発生させながら降水し、中段部の撒水ノズル21で撒水され気液接触して冷却される。そして更に、外部に別途設置した海水タンク(図示せず)の冷却コイル管により水温を15℃乃至20℃前後に海水41との熱交換により冷却された冷却水49を冷却水循環ポンプ(図示せず)により冷却管22に供給して循環させることで、蒸発した海水41の霧は完全に凝縮されて淡水43となり下部の淡水貯留タンク48に貯えられる。断面図では撒水ノズル21が頂部と中間位置の2段であるが、この撒水ノズル21の段数は限定されたものでなく、淡水化装置の規模に応じて任意に増設することができる。
【0054】
又、冷却されて落下する淡水43は、凝縮室8の内管7に施した断熱材11と外管5との間に設置した冷却管22に落下する淡水43の蒸発室9内への流入を防止するために設けた、防水キャップ17により淡水と冷気とに完全に気水分離され冷気噴射管16から、蒸発室9の中に冷気だけを噴射して循環させることで効率よく海水を淡水化することができる。逆U字形の上端部を貯水面18と同じ位置に設置することで封水を保ち、外側の封水トラップ管30に上方向に通気管33を接続して大気中に開放することで、二重管3に外部から空気の進入を遮断して内部の真空を保ちながら、封水トラップ管30により一定の貯水面18を保持して、貯水面18より溢れた淡水43だけが外部に排出される。
【実施例3】
【0055】
海水の淡水化装置の蒸発室の最下部に電気脱塩装置62を装着した実施形態を図2で説明する。エジエクタ−ポンプ(図示せず)で減圧された真空雰囲気中の蒸発室9下部に設けた噴射ノズル20に、加熱タンク(図示せず)で加熱された海水41を加熱海水供給管26の途中に配置した加圧ポンプ40によりマイクロバブルを混入しながら、下部ガイドベ−ン75の中心位置より噴射する海水41の噴射圧力を淡水化する海水の性状に応じて0.7MPa乃至1.5MPa前後に加圧して、スプレ−する噴射角度を8°乃至10°前後の狭角度で霧状に噴射する。
【0056】
凝縮室8下部の冷気噴射管16から流入する冷気を、蒸発室9下部の加熱コイル管31で加熱した暖気を吸引させながら下部ガイドベ−ン75と上部ガイドベ−ン74により右旋回する上昇気流中に噴射された海水41の霧は、減圧した真空雰囲気による低い沸点に起因して内管7中を急速に蒸発しながら旋回上昇により発生した遠心力で、水蒸気中の比重の重いミネラル類や塩類は、蒸発室9の中間位置に設けた電気脱塩装置62に遠心力により上部ガイドベ−ン74に到達するまでに比重分離されて次々と電気脱塩装置62に付着して脱塩された水蒸気だけが頂部に到達する。
【0057】
電気脱塩装置の詳細な構造の説明は図4の平面図で説明する。炭素被覆電極A72と炭素被覆電極B73を交互にセパレ−タ−65を介して数珠状に繋いだ円筒状の電気脱塩装置62を設置する。セパレ−タ−65として(例えば、多孔質高分子膜、不織布など。)の液体の通過が容易で且つ電気絶縁性を有するものと、電極の基盤となる材料として(例えば、銅、チタン、カ−ボン板など。)に粉粒状の活性炭をバインダ−(例えば、ポリテトラフルオロエチレンなど。)により被覆したことで炭素被覆電極となる。
【0058】
他の炭素被覆電極として(例えば、カ−ボンブラックをフエノ−ル樹脂及び溶媒と混合し板状に成形し熱処理した。)炭素被覆したものを用いる。又、外部から直流電流の極性を任意又は定期的に変換できる直流電源装置(図示せず)から電気分解による理論電流値は1.3V前後であるが、電圧降下があるためと、電気分解により発生したガスによる炭素被覆電極A72及び炭素被覆電極B73の消耗を防ぐために平均値2V前後の直流電流が供給される。
【0059】
直流電流の極性を5分から10分前後で自動的に変換できる電気脱塩装置62は、内管壁面12からセパレ−タ−65により完全に絶縁された状態で内管7に設置されており、炭素被覆電極A72と炭素被覆電極B73を交互に電気絶縁性を有するセパレ−タ−65を介して数珠状に繋いだ円筒状の電気脱塩装置62を配置し、噴射した海水41に含まれた比重の重いミネラル類や塩類は旋回する遠心力で電気脱塩装置62に付着し、炭素被覆電極A72にプラスの直流を印加して噴霧した海水41中の塩素イオンを炭素被覆に吸着させ、炭素被覆電極B73にマイナスの直流を印加して噴霧した海水41中のナトリウムイオンを炭素に吸着させて脱塩処理させる。
【0060】
炭素被覆電極の炭素被覆が吸着飽和に達する前に直流電流を解除するか、あるいは逆接続により直流電流の極性を変換させることで、プラスの直流を印加した炭素被覆電極A72に吸着した塩素イオン、マイナスの直流を印加した炭素被覆電極B73に付着したナトリウムイオンを炭素被覆電極の炭素被覆から放出させて、下部に設けた塩水受水樋66で受けて縦樋36により分離塩水貯留タンク50内に分離塩水51として一旦貯留させながらエジエクタ−ポンプ37で外部に排水させることで、炭素被覆電極の消耗も少なく海水41から塩類を自然エネルギ−を利用した発電(例えば、太陽光発電装置、風力発電装置、海水温度差発電装置など。)による低出力の直流電源を蓄電池に貯えることで昼夜連続して脱塩処理することができる。
【実施例4】
【0061】
蒸発室9内に噴霧した海水41の蒸発を促進させ省エネルギ−化のため図2の構成図のように、蒸発室9と凝縮室8との隔壁として設けた凝縮室8側に断熱材11を施した冷却管22の位置と冷気噴射管16の下側の位置とに、内部にアルゴンなどの非凝縮性ガスを封入したヒ−トパイプ77(例えば株式会社フジクラ製などで、中空の円筒内に複数の極細線を収納して非凝縮性ガスを封入したもの。)で蒸発室8内の熱エネルギ−が直接パイプ内で大量に熱移動して凝縮室8内に冷却エネルギ−として授受されることで外部から供給される、加熱や冷却のエネルギ−を削減することができる。
【0062】
噴霧した海水41の蒸発を促進させるため加熱された内管7の蒸発室9側に、非凝縮性ガスを液化させるヒ−トパイプ77の加熱部2を露出させて蒸発を促進させる。内管7の凝縮室8側に蒸発したガス(例えば、アルゴンなどの非凝縮性ガスなど。)を蒸発させる冷却部4を露出して設置し、蒸発室9から噴霧した海水41の塩分を分離した水蒸気が凝縮室8内に流入して冷却管22による凝縮の他、ヒ−トパイプ77により冷却することで水蒸気の凝縮が促進されるためエネルギ−効率を大幅に向上させることができる。
【0063】
蒸発室9と凝縮室8との隔壁に設置したヒ−トパイプ77に代えて、ペルチェ効果を応用した電子冷却装置(例えば株式会社高木製作所など、冷却と加熱が同一の装置で同時にできるもの。)で熱電素子の最高加熱温度が200℃の発熱部を蒸発室9の内部に露出させ、熱電素子の最低冷却温度が−30℃の冷却部を凝縮室8の内部に露出して設置して、24Vの直流電流を印加することで蒸発室9の内部は加熱され、反対に凝縮室8は冷却されるため、例えば太陽熱や太陽光発電による電力を利用することで二酸化炭素の排出もなく自然エネルギ−で海水を淡水化することもできる。
【実施例5】
【0064】
蒸発室9内に噴霧した海水41の淡水化を促進させて蒸発室9の縦方向の小型化を図るために図3の断面構造図のように、蒸発室9の頂部に遠心圧縮機54を設置して駆動モ−タ−55により水平回転する羽根車56(例えば、圧縮タ−ボファンなど。)の中心部より吸引することで蒸発室9の内部は減圧されて真空状態となり、噴霧した海水41に含まれた比重の重いミネラル類や塩類は、旋回上昇により発生した遠心力で内管壁面12に付着して分離される、真空状態による低い沸点で急激に蒸発した海水41の水蒸気は、遠心圧縮機54の高速回転する羽根車56で圧縮され水蒸気導入管14から排出する過程で、水蒸気の一部は凝縮して水滴となり、凝縮室8の中に加圧状態で強制的に排出される。
【0065】
凝縮室8の内部の水平隔壁6に減圧弁78と逆碗付トラップ弁79の配管を縦方向に結管して区画密閉した凝縮室8を多室(図示では、3室に区画。)に設け、最上部の凝縮室8の中に遠心圧縮機54で加圧された水蒸気が水蒸気導入管14を介して流入することで凝縮室8の内部は加圧された状態になり、凝縮室8下部の淡水貯留タンク48の冷却された淡水43が、外部に設置された撒水ポンプ39で淡水43を吸引して凝縮室8の頂部まで揚程され、水蒸気導入管14に接続したデイフュ−ザ−15の中に内装した撒水ノズル21により海水の水蒸気は気液接触しながら冷却され、充填されたヘチマ状構造体10に撒水されて付着し表面張力により水滴となりヘチマ状構造体10の中を流下する。
【0066】
水平隔壁6に減圧弁78と逆碗付トラップ弁79の配管を縦方向に設置したことで、凝縮室8の内部が設定圧力以上になった場合には減圧弁78を開弁して減圧させることで一定の加圧状態が維持され、撒水ノズル21からの撒水と気液接触することで凝縮した淡水が逆碗付トラップ弁79の逆碗38内側の貯水面まで溜まることで封水され一定の加圧状態が維持される、凝縮室8の内部で冷却されて生成した淡水は配管を介して流下し逆碗付トラップ弁79の逆碗38から溢れて下部に排出されることで、凝縮室8の内部は常に加圧状態に維持されるため、水蒸気は効率良く凝縮されて淡水化することができる。
【0067】
直下の凝縮室8の内部では、撒水ノズル21の撒水で気液接触されて淡水になり、更に外部に設置した海水タンク(図示せず)の中に内装した冷却コイル管により水温を15℃乃至20℃前後に海水41との熱交換により冷却した冷却水49を冷却水循環ポンプ(図示せず)により冷却管22に供給して循環させることで、凝縮されなかった残りの水蒸気は加圧状態のため効率よく冷却管22で凝縮されて完全に淡水43となり、水平隔壁6に結管した配管の中を流下して逆碗付トラップ弁79を介して凝縮室8最下部の淡水貯留タンク48に排出されることで、凝縮室8の内部は常時加圧状態に維持される。
【0068】
又、凝縮されて淡水貯留タンク48に排出される淡水43は、凝縮室8の内管7に施した断熱材11と外管5との間に設置した凝縮して生成された淡水43の蒸発室9内への流入を防止するために設けた、冷気噴射管16の管頭に設けた防水キャップ17により気水が完全に分離され冷気噴射管16より、凝縮室8内の気体だけが流入して循環されることで効率よく海水を淡水化することができる。逆U字形状に配管された封水トラップ管30により淡水は一定の貯水面18を保持することで、外部から空気の進入を完全に遮断して淡水貯留タンク48と蒸発室9内部の真空を保ちながら淡水は自動的に排出される。又、凝縮室8の外部を保温材で断熱することで外気の影響を受けることなく淡水化できる。
【実施例6】
【0069】
海水淡水化装置1の内部で、流入した雑菌類を紫外線照射によりオゾンを発生させて処理する方法は図2の如く、蒸発室9下部より噴射された海水41は、30℃乃至45℃前後に加熱して噴霧されたため、その内部は高温多湿の状態であり、噴射した海水に混入した雑菌の増殖に最適な温度のため急速に増殖するが、蒸発室9の最上部および凝縮室8の内部に、照射する波長がUV−C185nmの付近のオゾンを発生する紫外線オゾン灯23を、紫外線の透過が良い高純度の石英ガラス保護管58に内装して設置して噴霧した海水の水蒸気に暴露させることでオゾンが発生する。
【0070】
海水の富栄養化が進行し、淡水化する海水41に混入したプランクトンや藻類によりカビ臭が頻繁に発生するようになった、このカビ臭成分は極めて微量であるため、従来の技術では処理することが困難であったが、海水41にはカビ臭の原因物質であるメチルイソボネオ−ルとジオスミンが同化されているが、紫外線オゾン灯23でオゾンを暴露させることで、海水に含まれる藻類臭、カビ臭、硫化水素臭、フエノ−ル臭などの悪臭を完全に分解して無臭化させることと、オゾンによる殺菌力で病原性大腸菌O−157やレジオネラ菌などの殺菌や淡水化装置内部での生物付着の防止などの他、脱色や殺菌作用を付加した安全な淡水を連続して造水することができる。
【0071】
又、淡水化装置内部に設置する、紫外線オゾン灯23の石英ガラス保護管58に内装する紫外線ランプの一部を交換して、照射する波長をUV−C185nmから波長をUV−C253.7nmの殺菌線を放射する紫外線ランプに交換することで、紫外線殺菌処理の他に、海水41の中に含まれるグラム陰性菌、グラム陽性菌、サルモネラ菌、赤痢菌、病原性大腸菌O−157やレジオネラ菌などの殺菌処理の他、好気性かび類も処理することができるためHACCPに対応した飲料水を造水することができる。
【実施例7】
【0072】
海水の淡水化装置1を用いた効率的な淡水化処理システムの構成例を図5で説明する。淡水化処理する水温10℃から15℃前後の冷えた海水41を、海水供給管24を介して海水タンク44の底部から注水し、凝縮室8の内部に設置した冷却管22で水蒸気を凝縮して昇温した冷却水49を海水タンク44の内部に設置した冷却コイル管32に循環ポンプ60により循環させて熱交換させることで15℃前後に冷却されて凝縮室8の内の冷却管22に供給される。
【0073】
海水タンク44内で冷却コイル管32を冷却することで昇温した海水は、海水タンク44の両側にヒ−トパイプ77を介して設置した、2槽の海水加熱タンク46に給水する海水供給管24に設置した、連動開閉する電磁バルブA69電磁バルブB70と電磁バルブA69電磁バルブB70の切替操作により片側の海水加熱タンク46に注水され、加熱装置59(例えば、電気ヒ−タ−又は加熱バ−ナ−など。)により40℃前後に加熱され、海水加熱タンク46上部より吸入する海水を加熱海水供給管26の途中に設置した加圧ポンプ40によりマイクロバブルを混入させながら、噴射する海水の噴出圧力を0.7MPa乃至1.5MPa前後に加圧して、蒸発室9下部の噴射ノズル20に供給させる。
【0074】
海水加熱タンク46の内部に加熱側の熱エネルギ−が直接パイプ内で大量に熱移動して凝縮側に授受されるヒ−トパイプ77の非凝縮性ガスを液化させるヒ−トパイプ77の加熱部2を露出させ、海水タンク44の内部に蒸発したガスを蒸発させる冷却部4を露出して設置することで効率良く熱交換することができる。ヒ−トパイプ77は限定された物でなく、例えばヒ−トパイプ77に代えて、熱電素子の加熱部を海水加熱タンク46内に露出し、熱電素子の冷却部を海水タンク44内に露出して設置し、9Aで17Vの直流電流を印加することで蒸発室9と凝縮室8の内部は効率良く熱交換される。
【0075】
加熱を休止中の海水加熱タンク46内の加熱により塩分濃度が5%乃至7%前後濃縮された海水を、電磁バルブの開弁操作により濃縮塩水タンク47に排出することで空にして、新規な塩分濃度3%前後の海水41を海水加熱タンク46に注入して加熱する、交互加熱により、噴射ノズル20に供給される海水の塩分濃度を下げることができる。
【0076】
濃縮塩水排出管27の先端を、濃縮塩水タンク47の中に設置したエジエクタ−ポンプ37の吸引側に接続して、エジエクタ−ポンプ37が分離塩水51を吸引してオリフィス部(絞り部)で流速を高められて排出するとき発生する吸引効果により、蒸発室9内の分離塩水51をエジエクタ−ポンプ37で排出すると同時に二重管3内部の空気を吸引しながら排出することで二重管3の内部は、減圧されながら真空化される。
【0077】
凝縮室8で撒水ポンプ39による淡水の気液接触と冷却管22に接触して効率よく凝縮された淡水43は、逆U字形状に配管された封水トラップ管30により一定の貯水面18を保持することで、外部空気の進入を遮断し二重管3内の真空を保ちながら、トラップ効果により貯水面18より溢れた淡水43は外部に設置した淡水貯留タンク48に自動的に排出される。
【0078】
蒸発室9の内部温度を上昇させて噴射した海水の蒸発を促進させるため、複数の海水加熱タンク46の中に設置した加熱コイル管31で、海水の加熱により昇温した冷却水49を加熱海水供給管26の循環ポンプ60を介して、蒸発室9内の加熱コイル管31に連続して循環させることで蒸発室9の内部温度は40℃前後に上昇するため、噴霧した海水の蒸発を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】 本発明の海水の淡水化装置の全体構造を示す断面図である。
【図2】 本発明のガイドベ−ンの装着を示す断面図である。
【図3】 本発明の遠心圧縮機の装着を示す断面図である。
【図4】 本発明の電気脱塩装置の電極配置を示す平面図である。
【図5】 本発明の構成例を示すシステム図である。
【符号の説明】
【0080】
8 凝縮室
10 ヘチマ状構造体
14 水蒸気導入管
16 冷気噴射管
20 噴射ノズル
54 遠心圧縮機
62 電気脱塩装置
71 電解処理室
72 炭素被覆電極A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧した真空雰囲気で縦方向に設置した二重管の蒸発室壁面にヘチマ状構造体を内張りし、海水を噴射ノズルから霧化して旋回させながら水蒸気蒸発させ、上部ガイドベ−ンから水蒸気導入管のディフュ−ザ−を介して凝縮室に導入し、ディフュ−ザ−に内装した撒水ノズルで淡水を撒水して気液接触させながら凝縮室に充填したヘチマ状構造体に撒水して凝縮させ、更に中段部の撒水ノズルで撒水して冷却管で完全に凝縮させて淡水を製造し、下部の冷気噴射管から気水分離した気体を加熱コイル管に噴射し加熱して循環させたことを特徴とする海水の淡水化装置。
【請求項2】
海水を噴射ノズルに供給する海水供給管に極性が任意に変換できる不溶性金属電極Aと不溶性金属電極Bを内装した電解処理室を設置し、直流電流を印加して陽極側の不溶性金属電極Aで海水中の水素イオンと塩素イオンで次亜塩素酸を生成して殺菌作用を付加させ、陰極側の不溶性金属電極Bで海水中の水酸イオンとナトリウムイオンでアルカリ電解水を生成して界面活性作用を付加させて水蒸気の蒸発と造水を促進させたことを特徴とする海水の淡水化装置。
【請求項3】
蒸発室の内管壁面の中間位置に、極性が任意に変換できる炭素被覆電極Aと炭素被覆電極Bを交互にセパレ−タ−を介して数珠状に繋いだ円筒状の電気脱塩装置を設置し、直流電流を印加して陽極側の炭素被覆電極Aに噴霧した海水中の塩素イオンを吸着させ、陰極側の炭素被覆電極Bに噴霧した海水中のナトリウムイオンを吸着させ、直流電流を解除することで吸着した塩素イオンやナトリウムイオンを放出させることで電気的に脱塩処理することを特徴とする海水の淡水化装置。
【請求項4】
二重管の蒸発室内に噴射ノズルから加熱した海水を噴射して霧化した水蒸気の蒸発をさせるヒ−トパイプの加熱部を露出し、反対側の凝縮室内に蒸発した海水の凝縮を促進させるヒ−トパイプの冷却部を露出させて内管に設置し、海水の水蒸気の蒸発と凝縮による熱交換を促進させることを特徴とする海水の淡水化装置。
【請求項5】
蒸発室の頂部に循環用の遠心圧縮機を設置し、海水を噴射ノズルから噴射して霧化した水蒸気を旋回上昇させながら、遠心圧縮機の中心部から吸引し羽根車で圧縮して水蒸気導入管から凝縮室の中に強制的に排出させることで、蒸発室の内部を真空状態にして水蒸気の蒸発を促進させ、凝縮室の内部を加圧状態にして水蒸気の凝縮を促進させることを特徴とする海水の淡水化装置。
【請求項6】
凝縮室の内部に水平隔壁を設けて凝縮室を多室に区画し、水平隔壁に減圧弁と逆碗付トラップ弁を縦方向に結管し、減圧弁の閉弁と逆碗付トラップ弁の封水で凝縮室の内部を一定の加圧状態に保持させ、設定圧以上の場合は減圧弁を開弁させて減圧し、逆碗付トラップ弁から溢れた淡水は下部に排出させることで凝縮室内を一定の加圧状態に維持して水蒸気を効率良く凝縮させることを特徴とする海水の淡水化装置。
【請求項7】
蒸発室上部と凝縮室内部に、波長がUV−C185nmのオゾンを発生する紫外線オゾン灯を、紫外線の透過が良い高純度の石英ガラス保護管に内装して設置し、発生したオゾンで噴霧した海水に混入したプランクトンや藻類により発生したカビ臭や硫化水素臭などの消臭と各種細菌類の殺菌を、紫外線オゾン灯を照射して処理することを特徴とする海水の淡水化装置。
【請求項8】
海水タンク内の冷却コイル管で凝縮室で吸熱した冷却水を冷やすことで海水を温めて、交互に加熱される複数の海水加熱タンクの加熱される側に供給して加熱された海水を加圧ポンプでマイクロバブルを混入しながら加圧して噴射ノズルに供給する。一方、加熱が停止されている側の海水加熱タンク内の濃縮された海水を濃縮塩水タンクに排出させる交互加熱により、効率良く熱交換させることを特徴とする海水の淡水化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−264748(P2008−264748A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131041(P2007−131041)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000183680)
【出願人】(303010681)
【出願人】(304001040)株式会社環境技術総合研究所 (7)
【Fターム(参考)】