説明

海水淡水用正浸透膜及びその製造方法

本発明は海水淡水用正浸透膜及びその製造方法に関する。本発明による正浸透膜は、不織布層と、親水性高分子層と、ポリアミド層とからなる複合膜構造であって、前記不織布層に形成された親水性高分子層によって膜を介して原水部から誘導溶液へ円滑に水が流入されて、浸透方向への高い水透過性及び流量が向上し、前記ポリアミド層によって耐汚染性及び耐化学性が確保されるとともに逆浸透方向への誘導溶液の溶質の逆拡散性が最小化されて高濃度の海水淡水用として有用に活用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海水淡水用正浸透(Forward Osmosis)膜及びその製造方法に関し、より詳しくは原水部から誘導溶液への円滑な水の流入を可能にして高い水透過性及び優れた膜の耐汚染性を有し、特に、逆浸透方向への誘導溶液の溶質の逆拡散が防止される物性を満たすことで、高濃度の海水分離に好適な海水淡水用正浸透膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正浸透膜の分離とは、二つの溶液間の濃度差によって発生した浸透圧を駆動力として用いて膜を介して低い濃度の溶液が高い濃度の溶液の方へ移動することで、膜分離を行うことをいう。逆浸透(reverse osmosis)と反対の概念である正浸透膜は、製造も逆浸透膜とは区別される特徴がある。
【0003】
正浸透膜は、膜を介して原水部から誘導溶液への水の流入を円滑にし、かつ逆に誘導溶質の濃度を一定に維持させるとともに、高い浸透圧を維持させるのが重要である。このために正浸透膜は浸透方向への高い水透過性を持たなければならず、逆浸透方向へ誘導溶液の溶質が拡散しないように設計することが最も重要である。また、膜汚染の少ない正浸透膜の製造が先行されなければならない。以下、正浸透膜が備えなければならない特徴をまとめてみれば、次のようである。
【0004】
第一、内部濃度分極(internal concentration polarization)を最小化させて耐汚染性を高めるためには正浸透膜内における支持層の気孔度は高くなければならなく、気孔の屈曲度は低くなければならない。
【0005】
第二、透過する水の流量を高めるために、正浸透膜の厚さは最小化されなければならない。
【0006】
第三、水との透過抵抗を最小化するためには親水性素材を用いる。
【0007】
第四、誘導溶液を高い濃度で維持するために、高い濃度の溶液から低い濃度の溶液へ溶質が拡散してはならない。
【0008】
従来の正浸透膜の製造方法に関して、特許文献1では、親水性素材であるセルローストリアセテートを用いて正浸透膜を製造しているが、具体的には25〜75μm厚さの支持層上に、前記支持層と同一の材料に濃度を異にした溶液をコーティングして8〜18μmの選択層の膜を製造し、前記膜に誘導溶液を用いて正浸透(FO)モードで評価した時、流量が11gfd水準の高流量の正浸透膜を提示している。しかし、前記の方法で製造された膜は高い濃度の誘導溶液が低い濃度の原水方向へ溶質が拡散するという短所があると報告されており、海水のような高い濃度の塩を含む原水条件下では誘導溶液の濃度が原水濃度以上に維持されなければならないので、現実的に適用しにくいという問題がある。
【0009】
また、特許文献2によると、不織布にポリスルホン溶液をキャスティングして限外ろ過膜水準の膜を製造して、前記製造された膜表面上に多官能性アミンと多官能性アシルハライドを界面重合させてポリアミド逆浸透膜を製造し、前記膜から不織布だけを取り外した膜を正浸透(FO)システムに適用した。正浸透(FO)モードで膜の物性を評価した結果、流量0.5gfd及び塩除去率を99%以上を満たす塩除去率の正浸透膜を提示したことがある。しかし、前記正浸透膜は海水のように高濃度の原水を分離する程度の塩除去率は確保できるが、流量が低いため現実的に膜使用が制限される。
【0010】
また、従来のポリスルホン系重合体で製造された膜は機械的強度、熱的・化学的安定性に優れており、膜素材として用いられる。しかし、ポリスルホン系重合体からなる膜は、疎水性膜の特性によって汚染源が吸着されやすく、これによって膜の分離機能を失って寿命が短縮されるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0226067号明細書
【特許文献2】国際公開第2008/137082号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、高濃度の海水分離に好適な正浸透膜を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、海水淡水用正浸透膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明は望ましい具現のための第1の実施の形態として、親水性高分子層と、ポリアミド層とからなる海水淡水用正浸透膜を提供する。
【0015】
また、本発明の望ましい具現のための第2の実施形態として、不織布層と、親水性高分子層と、ポリアミド層とが順次積層された複合膜構造とからなる海水淡水用正浸透膜を提供する。
【0016】
本発明の海水淡水用正浸透膜は、膜面積(24cm2)であり、分当たり9.0μS/cm以下の伝導度値を有する低い塩の逆拡散性及び2M NaClの誘導溶液または前記と同一の水準の浸透圧条件下で3〜20gfdの流量を満たす。
【0017】
本発明の海水淡水用正浸透膜において、不織布層は2cc/cm2・sec以上の空気透過量を有し、1〜600μmの平均気孔を有することが好ましく、最小0.1以上最大74度未満の接触角を有することを特徴とする。この場合、不織布層の厚さは20〜150μmが望ましい。
【0018】
本発明の第1の実施の形態または第2の実施の形態において、親水性高分子層は、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンイミド、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリスルホン系重合体、ポリエチレンオキサイド及びポリ酢酸ビニルからなる群から選ばれる単独またはこれらの混合形態の親水性高分子からなるものである。
【0019】
ここで、前記混合形態の親水性高分子は、ポリアクリロニトリルに、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールまたはセルロースアセテートの中で選ばれるいずれか一つが0.1〜5重量%で混合した形態である。
【0020】
より好ましくは、前記混合形態の親水性高分子が、ポリスルホン系重合体に、下記化1で表されるスルホン化されたポリスルホン系重合体0.1〜10重量%が含有された形態である。
【0021】
【化1】

【0022】
ここで、前記ポリスルホン系重合体は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及び
ポリアリルエーテルスルホンからなる群から選ばれるものを単独または混合して用いられ、より好ましくは前記スルホン化されたポリスルホン系重合体が下記化2で表される化合物である。
【0023】
【化2】

【0024】
本発明の正浸透膜における親水性高分子層は、フィンガー型(finger−like)の気孔を有することを特徴とし、この時、親水性高分子層の厚さは30〜250μmに形成されることが望ましい。
【0025】
また、本発明の正浸透膜において、ポリアミド層は多官能性アミン含有またはアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に、多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液が界面重合されて形成されたものである。
【0026】
より好ましくは、多官能性アミンまたはアルキル化された脂肪族アミン含有水溶液に、ポリアミン塩化合物0.01〜2重量%がさらに含有された水溶液と多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液が界面重合されて形成される。
【0027】
この時、ポリアミン塩化合物は、3級ポリアミンと強酸とが0.5〜2:1の反応モル比で製造されたものであり、3級ポリアミンは1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン(DBN)、1,4−ジメチルピペラジン、4−[2−(ジメチルアミノ)エチル]モルホリン、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N、N、N´,N´−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン(TMBD)、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン(TMHD)、1,1,3、3−テトラメチルグアニジン(TMGU)及びN,N,N´,N´,N´´−ペンタメチルジエチレントリアミンからなる群から選ばれるいずれか一つである。
【0028】
そこで、本発明は、
1)不織布層上に、親水性高分子10〜25重量%が含有された親水性高分子含有溶液をドーピングして親水性高分子層を形成し、2)前記親水性高分子層の表面上に、多官能性アミン含有またはアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に、多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液を接触させて前記化合物間の界面重合反応によってポリアミド層を形成させる工程を行うことにより、不織布層/親水性高分子層/ポリアミド層の3層構造になっている海水淡水用正浸透膜の製造方法を提供する。
【0029】
また、本発明は、
1)親水性高分子10〜25重量%が含有された親水性高分子含有溶液を支持体上にドーピングして親水性高分子層を形成し、2)前記親水性高分子層の界面上でポリアミド層を連続的に形成させた後、前記支持体を膜から分離することで形成された、親水性高分子層/ポリアミド層の2層構造になっている海水淡水用正浸透膜の製造方法を提供する。
【0030】
前記本発明の正浸透膜の製造方法において、親水性高分子層を構成する親水性高分子は、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンイミド、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリスルホン系重合体、ポリエチレンオキサイド及びポリ酢酸ビニルからなる群から選ばれるものを単独またはこれらを混合して用いる。
【0031】
また、前記混合形態の親水性高分子は、ポリアクリロニトリルに、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールまたはセルロースアセテートから選ばれるいずれか一つが0.1〜5重量%で混合した形態が望ましい。
【0032】
また、他の混合形態の親水性高分子層は、ポリスルホン系重合体に、下記化1で表されるスルホン化されたポリスルホン系重合体0.1〜10重量%が含有された親水性高分子からなる。
【0033】
【化1】

【0034】
前記ポリスルホン系重合体は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリアリルエーテルスルホンからなる群から選ばれる単独または混合形態であり、好ましくは前記スルホン化されたポリスルホン系重合体が下記化2で表される化合物である。
【0035】
【化2】

【0036】
本発明の海水淡水用正浸透膜の製造方法において、ポリアミド層は、多官能性アミン含有またはアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に、ヒドロキシ基、スルホン化基、カルボニル基、トリアルコキシシラン基、アニオン基及び3級アミノ基からなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの親水性官能基を有する親水性化合物がさらに含有された水溶液と多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液とを接触させて、前記化合物間の界面重合反応によって形成されることができる。
【0037】
より好ましくは、多官能性アミン含有またはアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に、水溶性添加剤としてポリアミン塩化合物0.01〜2重量%をさらに含ませて用意した水溶液と多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液とを接触させて前記化合物間の界面重合反応によってポリアミド層を形成する。
【0038】
この時、前記ポリアミン塩化合物は、3級ポリアミンと強酸が0.5〜2:1の反応モル比で製造されるものであり、前記3級ポリアミンは、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン(DBN)、1,4−ジメチルピペラジン、4−[2−(ジメチルアミノ)エチル]モルホリン、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、 N,N、N´,N´−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン(TMBD)、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン(TMHD)、1,1,3、3−テトラメチルグアニジン(TMGU)及びN,N,N´,N´,N´´−ペンタメチルジエチレントリアミンロからなる群から選ばれるいずれか一つを用いる。
【0039】
また、前記水溶液は、エチレングリコール誘導体、プロピレングリコール誘導体、1,3−プロパンジオール誘導体、スルホキサイド誘導体、スルホン誘導体、ニトリル誘導体、ケトン誘導体及びウレア誘導体からなる群から選ばれるいずれか一つの極性溶媒0.01〜2重量%をさらに含む。
【発明の効果】
【0040】
本発明による正浸透膜は、親水性が付与された支持体上にポリアミド層が順次積層された複合膜構造であって、より具体的には親水性高分子層及びポリアミド層からなる正浸透膜または不織布層、親水性高分子層及びポリアミド層が順次積層された構造の正浸透膜を提供することができる。
【0041】
本発明の正浸透膜は気孔度及び親水性度が高い不織布層に親水性高分子層が形成されるので、膜の水透過性及び流量が向上し、特にポリアミド層が積層されることで、膜の耐汚染性、耐化学性及び逆浸透方向へ誘導溶液の溶質が逆拡散することを防止することができるので、高濃度の海水分離に好適である。
【0042】
また、本発明の正浸透膜製造方法によって、高い気孔度及び低い気孔の屈曲度を備えた親水性高分子層を最適な条件下で形成することにより、膜を介して原水部から誘導溶液への水の流入を円滑にし、浸透方向への高い水透過性を提供し、更に、前記ポリアミド層によって膜汚染の少ない正浸透膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例1による正浸透膜における親水性高分子層の断面を示す図である。
【図2】本発明の比較例1によるポリスルホン多孔性支持体の断面を示す図である。
【図3】本発明の実施例5による正浸透膜の一つの構成である不織布層の正面を示す図である
【図4】図3の不織布層上に形成された親水性高分子層の断面を示す図である。
【図5】本発明の実施例11による正浸透膜の一つの構成である不織布層の正面を示す図である。
【図6】図5の不織布層上に形成された親水性高分子層の断面を示す図である。
【図7】本発明の実施例12によるスルホン化されたポリスルホン系重合体が含有されてなる親水性高分子層の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0045】
本発明の望ましい第1の実施の形態として、親水性高分子層と、ポリアミド層とからなる海水淡水用正浸透膜(forward osmosis membrane for seawater desalination)を提供する。
【0046】
また、本発明の望ましい第2の実施の形態として、不織布層と、親水性高分子層と、ポリアミド層とが順次積層された複合膜構造からなる海水淡水用正浸透膜を提供する。
【0047】
前記第1の実施の形態または第2の実施の形態の構造において、本発明の正浸透膜の特徴は原水部から誘導溶液への水の流入が円滑であり、かつ浸透方向への高い水透過性を有するように、気孔度及び親水性度の高い親水性高分子層が形成された構造である。本発明の実施例として挙げられた親水性高分子層の断面を観察した結果、従来の逆浸透膜で観察されるビーズ(bead)型の気孔ではない(図2)、フィンガー型の気孔タイプ(finger−like pore)が観察される(図1、図4、図6及び図7)。
【0048】
そこで、本発明の正浸透膜は、2M NaClの誘導溶液または前記と同等水準の浸透圧条件下で3〜20gfd、より好ましくは7〜20gfdの流量を満たす。
【0049】
本発明の正浸透膜の構造において、また他の特徴は、前記親水性高分子層上でポリアミド層を積層することで、膜の耐汚染性及び耐化学性が付与され、特に、逆浸透方向へ誘導溶液の溶質が拡散することを防止して、高い浸透圧を維持させることができるので、高濃度の海水分離に好適な膜を具現することである。
【0050】
したがって、本発明の正浸透膜は、優れた流量を維持しながらも、特に誘導溶液として2M NaCl(浸透圧約100atm)含有溶液、原水として超純水を用いて正浸透モードで行うと、分当たり9.0μS/cm以下(膜面積24cm2基準)の伝導度値を示す。すなわち、前記実施された膜面積(24cm2)に対して伝導度値を換算すれば、0.375(μS/cm)/min・cm2以下の低い塩拡散挙動を示す。そこで、高い濃度の誘導溶液が低い濃度の原水方向への溶質拡散を防止することができる。このため、本発明の正浸透膜は高濃度の海水分離に好適である。なお、正浸透モード遂行時、膜面積(24cm2)において、分当たり9.0μS/cmを超える伝導度値を見せれば、誘導溶液内の多量の塩が原水部へ流入されることを意味し、逆拡散の程度が高くなり、その結果、膜の分離性能が低くなる結果をもたらす。 本発明の明細書で鹽の逆拡散は高濃度の誘導溶液の溶質が相対的に低い濃度の原水方向へ移動することを意味する。 また、誘導溶液内に塩の損失によって浸透圧が低くなって透過流量が急速に減るだけでなく、一定の水準の浸透圧を維持するために誘導溶液内の塩を補充し続けなければならない。これにより、膜面積(24cm2)において分当たり9.0μS/cm以下の値を満たす時や単位換算された伝導度0.375(μS/cm)/min・cm2以下の値を満たす時、海水での脱塩効果を具現することができる。
【0051】
また、前記ポリアミド層は、単一膜構造において除去されにくい1価イオンまで除去することができるので、ポリアミド層を備えた正浸透膜は90%以上の高塩排除率を確保する。

以下、本発明の正浸透膜を構成別で詳細に説明する。
【0052】
1)不織布層
本発明の正浸透膜における不織布層は、膜の支持体の役割を果たす。
【0053】
本発明の不織布層に用いられる望ましい素材は、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン及びポリエチレンからなる群から選ばれる合成纎維、またはセルロース系を含む天然纎維が挙げられ、このような不織布層は素材の気孔率及び親水性度によって膜の物性を調節することができる。
【0054】
前記不織布層の気孔率は2cc/cm2・sec以上の空気透過量を満たすと、使用可能であり、より好ましくは2〜20cc/cm2・secの空気透過量を満たす素材であれば、特に制限されることなく用いられる。この時、本発明の不織布層の平均孔径は1〜600μmが望ましく、より好ましくは5〜300μmを満たす時、正浸透膜に要求される水の円滑な流入及び水透過性を高めることができる。
【0055】
図3は本発明の一実施例で用いられた2〜10cc/cm2・sec空気透過量を満たす不織布ウェブに対する表面写真であり、図5は本発明の一実施例で用いられた10cc/cm2・sec以上の空気透過量を満たす不織布ウェブに対する表面写真であって、不織布層の気孔率が高いほど、原水部から誘導溶液への水の流入が円滑であり、かつ浸透方向への高い水透過性を確保することができる。
【0056】
一方、図2は通常の逆浸透膜に用いられるポリスルホン多孔性支持体の断面を観察した写真であって、前記図3及び図5で観察された気孔率に比べて粗密な構造を有する。
【0057】
また、一般的に逆浸透膜に用いられる不織布の場合、74〜90度の水準の接触角を示すが、本発明の実施例で用いられる不織布は表面に水が触れる5秒以内に5度以内にすぐ吸収される程度高い親水性度を見せる。ここで、好ましくは本発明で不織布層として用いられる素材の親水性度は、0.1〜74度未満、より好ましくは0.1〜60度の接触角を有する。
【0058】
したがって、本発明の不織布層が高い親水性度を満たすことで、水に対する抵抗を減少させ、内部濃度分極(ICP)による膜汚染を低減することができる。前記内部濃度分極(ICP)は膜内部において発生された汚染であって、膜の透過度を低下させ、特に自然に発生する濃度差に起因する浸透圧だけで運転する正浸透膜において、ICPのような膜汚染が生じると、流量が遥かに減少するようになる。
【0059】
本発明の不織布層の厚さは20〜150μmが好ましく、この時、20μm未満であれば、全体としての膜の強度と支持の役割が不十分となり、150μmを超えると、流量低下の原因となる。
【0060】
2)親水性高分子層
本発明の正浸透膜において、親水性高分子層は、水との透過抵抗を最小化させるために、親水性素材を用いる。
【0061】
好ましくは、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンイミド、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリスルホン系重合体、ポリエチレンオキサイド及びポリ酢酸ビニルからなる群から選ばれる単独またはこれらの混合形態の親水性高分子からなる。
【0062】
より好ましくは前記混合形態の親水性高分子がポリアクリロニトリルに、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールまたはセルロースアセテートから選ばれるいずれか一つが0.1〜5重量%で混合された形態である。この時、前記混合割合において、0.1重量%未満であれば、添加された高分子の物性の改善効果が不十分であり、5重量%を超えると、親水性高分子溶液の粘度があまり高くなって支持層を製造し難い。
【0063】
また、他の親水性高分子の形態としては、ポリアクリロニトリル(PAN)と親水性官能基を有する高分子とが共重合された合成高分子を用いる。この時、前記親水性官能基を有する高分子は、ポリアクリロニトリルと相溶性のある高分子ではなければならないし、ヒドロキシ基、スルホン化基、カルボニル基、酢酸塩基及びエステル基から選ばれるいずれか一つの官能基を有する高分子である。合成高分子の望ましい一例としては、PAN−ビニル酢酸塩共重合体、PAN−アクリルリックエステル共重合体などが挙げられる。
【0064】
さらに、前記した水性高分子への塩基(OH)処理の際に、親水性が増加するはずなので、本発明で用いる親水性高分子は前記親水性高分子に対する親水性処理済みの化合物を含む。
【0065】
また、本発明の親水性高分子層は、ポリスルホン系重合体に、下記化1で表されるスルホン化されたポリスルホン系重合体0.1〜10重量%が含有された混合形態の親水性高分子に形成される。
【0066】
【化1】

【0067】
本発明の実施例ではスルホン化されたポリスルホン系重合体に対する望ましい一例として、下記化2で表される化合物を用いて具体的に説明しているが、これらに限定されるものではない。
【0068】
【化2】

【0069】
前記ポリスルホン系重合体の望ましい一例として、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリアリルエーテルスルホンからなる群から選ばれる単独または混合形態を用いる。
【0070】
この時、望ましい混合形態は、ポリスルホンに、化1で表されるスルホン化されたポリスルホン系重合体0.1〜10重量%が含有された混合形態である。この時、前記混合割合において、スルホン化されたポリスルホン系重合体が0.1重量%未満に含有されれば、添加された高分子の親水化の効果が劣り、10重量%を超過すれば、溶液製造時、親水性の程度の顕著な増加によって製造自体が難しく、ポリアミド層の製造時に高い親水性の増加によって膜製造が困難である。
【0071】
そこで、前記の親水性高分子層は、ポリスルホン系重合体に、親水化された素材であるスルホン化されたポリスルホン重合体を用いることで、水との透過抵抗を最小化させることができる。図7は、前記スルホン化されたポリスルホン系重合体が含有されてなる親水性高分子層の断面写真であって、高い気孔度と均一な気孔(finger−like)形態によって低い気孔の屈曲度を確認することができる。また、親水性高分子を選択することによって、親水性の増加による気孔率を制御することができる。
【0072】
前記親水性高分子層の厚さは、流量増加のために最小化されるほど望ましく、
これを満たすための望ましい厚さは30〜250μmである。
【0073】
3)ポリアミド層
本発明の正浸透膜において、ポリアミド層は、前記親水性高分子上に、多官能性アミン含有またはアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に、多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液を接触させて前記化合物間の界面重合によって形成されるものである。
【0074】
具体的には不織布層上に形成された親水性高分子層の表面上に、メタフェニルジアミン、パラフェニルジアミン、オルトフェニルジアミン、ピペラジンまたはアルキル化されたピペリジンから選ばれる多官能性アミンとアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に、多官能性アシルハライド、多官能性スルホニルハライドまたは多官能性イソシアネートから選ばれる多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液を接触させて前記化合物間の界面重合によってポリアミド層を形成する。
【0075】
また、前記多官能性アミン含有またはアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に親水性化合物をさらに含ませた後、これを多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液を親水性高分子層の表面上で接触させて前記化合物間の界面重合によって耐汚染性が向上したポリアミド層を形成させることができる。この時、前記親水性基を含む化合物は、水溶液上に0.001〜8重量%で存在し、より好ましくは0.01〜4重量%で存在する。
【0076】
前記多官能性アミン含有またはアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に添加される親水性化合物は、ヒドロキシ基、スルホン化基、カルボニル基、トリアルコキシシラン基、アニオン基及び3級アミノ基からなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの親水性官能基を有する親水性化合物である。より好ましくは親水性アミノ化合物である。
【0077】
より具体的に、ヒドロキシ基を有する親水性化合物の望ましい一例としては、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−1−ブタノールからなる群から選択される。
【0078】
カルボニル基を有する親水性化合物は、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール、アミノ−ブチロラクトン、3−アミノベンズアミド、4−アミノベンズアミド及びN−(3−アミノプロピル)−2−ピロリジノンからなる群から選択される。
【0079】
また、トリアルコキシシラン基を含む親水性化合物は、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン及び(3−アミノプロピル)トリメトキシシランからなる群から選択されて用いられる。
【0080】
前記アニオン基を有する親水性化合物としては、グリシン、タウリン、3−アミノ−1−プロペンスルホン酸、4−アミノ−1−ブテンスルホン酸、2−アミノエチルハイドロゼン硫酸塩、3−アミノ−ベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、4−アミノ−ベンゼンスルホン酸、3−アミノ−プロピルホスホン酸、3−アミノ−4−ヒドロキシベンゼン酸、4−アミノ−3−ヒドロキシベンゼン酸、6−アミノ−ヘキサン酸、3−アミノブタン酸、4−アミノ−2−ヒドロキシブテン酸、4−アミノブテン酸及びグルタミン酸からなる群から選択される。
【0081】
また、少なくとも一つ以上の3級アミノ基を有する親水性化合物としては、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、4−(2−アミノエチル)モルホリン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、3、3´−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン及び1−(3−アミノプロピル)イミダゾールからなる群から選択される。
【0082】
より好ましくは本発明のポリアミド層は、前記不織布層及び高分子層からなる支持体上に、多官能性アミンまたはアルキル化された脂肪族アミン含有水溶液に水溶性添加剤としてポリアミン塩0.01〜2重量%がさらに含有された水溶液に、多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液を接触させて前記化合物間の界面重合によって形成されたものである。
【0083】
この時、前記アミン含有水溶液にポリアミン塩がさらに含有されることにより、ポリアミド層の気孔形成に有利であり、それによる流量向上及び界面反応過程で生成された酸の酸受容体(acid acceptor)として作用することで界面反応を促進させる。前記ポリアミン塩化合物の含量は0.01〜2重量%が好ましく、前記含量において、0.01重量%未満であれば、流量向上のための気孔形成が充分でない反面、2重量%を超過すればポリアミド鎖の形成に影響を及ぼし、コーティング層の欠点を誘発するため好ましくない。
【0084】
より好ましくは、前記ポリアミン塩は、3級ポリアミンと強酸とが0.5〜2:1の反応モル比で製造される3級ポリアミン塩化合物であり、この時、3級ポリアミン塩の反応モル比が0.5未満で反応すると、流量向上のための3級ポリアミン塩の効果が不十分であるため望ましくなく、反応モル比が2を超過して反応すると、反応後に残留するポリアミンがポリアミド鎖の形成に影響を及ぼすために望ましくない。
【0085】
前記強酸の一例としては、芳香族スルホン酸、脂肪族スルホン酸、シクロ脂肪族スルホン酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、塩酸及びスルホン酸からなる群から選ばれるいずれか一つまたはこれらの混合形態である。
【0086】
また、本発明に用いられるポリアミンは1価または2価アミン基が2つ以上結合されている化合物であって、脂肪族ポリアミンまたは芳香族ポリアミンを使用することができるが、より好ましくは3級ポリアミンであって、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン(DBN)、1,4−ジメチルピペラジン、4−[2−(ジメチルアミノ)エチル]モルホリン、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン(TMBD)、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン(TMHD)、1,1,3、3−テトラメチルグアニジン(TMGU)及びN,N,N´,N´,N´´−ペンタメチルジエチレントリアミンからなる群から選ばれるいずれか一つを用いる。
【0087】
また、本発明は膜の流量増加の目的のために、前記の多官能性アミン水溶液にポリアミン塩化合物以外にも1種または2種以上の極性溶媒0.01〜2重量%をさらに添加して製造することができる。前記極性溶媒はエチレングリコール誘導体、プロピレングリコール誘導体、1,3−プロパンジオール誘導体、スルホキシド誘導体、スルホン誘導体、ニトリル誘導体、ケトン誘導体、ウレア誘導体及びこれらの混合物を用いることができる。
【0088】
前述したように、前記ポリアミド層の構成によって、高い塩排除率、耐化学性及びpH安定性の確保だけではなく、特に、ポリアミド層の形成時、水溶性添加剤としてポリアミン塩化合物をさらに含むことで、膜の流量向上及び逆浸透方向へ誘導溶液の溶質が逆拡散することを防止することができる。
【0089】
また前記複合膜構造の正浸透膜は、単一膜構造の場合には除去されにくい1価イオンまで除去することができるので、高い塩排除率を確保することができる。
【0090】
本発明は前記複合膜構造の海水淡水用正浸透膜の製造方法を提供する。
【0091】
より具体的には、
1)不織布層上に、親水性高分子10〜25重量%が含有された親水性高分子含有溶液をドーピングして親水性高分子層を形成し、
2)前記親水性高分子層の表面上に、多官能性アミン含有またはアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に、多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液を接触させて前記化合物間の界面重合反応によってポリアミド層を形成させる工程を行って不織布層/親水性高分子層/ポリアミド層の3層構造になっている海水淡水用正浸透膜の製造方法を提供する。
【0092】
また、本発明は1)親水性高分子10〜25重量%が含有された親水性高分子含有溶液をガラス板、不織布などの表面が滑らかな支持体上にドーピングして親水性高分子層を形成し、
2)前記親水性高分子層の界面上でポリアミド層を連続的に形成させた後、
前記支持体を膜から分離し、親水性高分子層/ポリアミド層の2層構造になっている海水淡水用正浸透膜の製造方法を提供する。
【0093】
前記段階1)は正浸透膜を介して原水部から誘導溶液への水の流入が円滑になるようにし、浸透方向への高い水透過性を有するように設計される。
【0094】
段階1)の設計の目的を達成するために、親水性高分子含有溶液を用いて親水性高分子層を形成する。
【0095】
この時、親水性高分子層は水の円滑な流れと浸透方向への高い水透過性のために、親水性素材を用いる。望ましい一例としてはポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンイミド、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリスルホン系重合体、ポリエチレンオキサイド及びポリ酢酸ビニルからなる群から選ばれる単独またはこれらの混合形態を用いる。
【0096】
また、前記親水性高分子との混合形態または前記親水性高分子に親水性官能基を有する親水性化合物が共重合された合成高分子を使うことができる。
【0097】
また、前述した親水性高分子の一例としては、塩基処理によって親水性を増加させることができる親水性処理工程を経た化合物が挙げられる。
【0098】
前述した具体的な親水性高分子に対する一例は、前記正浸透膜について記載したものと同一であるので、具体的な説明は省略する。
【0099】
本段階1)で親水性高分子含有溶液において、親水性高分子含量は10〜25重量%、より好ましくは13〜20重量%が含有されるように製造する。この時、親水性高分子の含量が10重量%未満であれば、気孔が大きく形成されて塩を除去することができる気孔構造が形成されず、膜分離能力が劣り、逆に、 親水性高分子の含量が25重量%を超過すれば、あまり粘度が高くなって除膜が困難であったり、あるいは気孔が小さいか形成されなかったりして膜分離能力が劣る恐れがある。
【0100】
本発明の親水性高分子層は親水性高分子の選択及び含量によって決められる親水性基が増加するほど気孔率増加の傾向を確認することができ、形成された気孔は均一な気孔(finger−like)の形態のため、低い気孔の屈曲度を有する(図1、図4、図6及び図7)。
【0101】
また、親水性高分子層の厚さは流量増加のために最小化されるほど望ましく、本発明の親水性高分子層の厚さは30〜250μmを満たす。
【0102】
また、段階1)では膜の支持の役割及び粗い気孔度と高い親水性によって水の流れを円滑にさせるために、不織布層が導入する。
【0103】
この時、不織布層に使われることができる材料は、2cc/cm2・sec以上の空気透過量を満たす気孔率を見せることなら制限なしに用いられる。より好ましくは空気透過量が2〜20cc/cm2・sec範囲を満たすことを用いることができる。不織布は従来に公知された製造方法の中で特に限定されることなく製造されることができるが、より好ましくは抄紙法(papermaking process)によって製造された湿式不織布を用いることができる。この時、不織布層は最終の正浸透膜構造に含まれるか、剥離されることができる。
【0104】
本発明の製造方法において、段階2)は段階1)で形成された親水性高分子層上に、ポリアミド層を形成する段階である。
【0105】
前記ポリアミド層はメタフェニルジアミン、パラフェニルジアミン、オルトフェニルジアミン、ピペラジンまたはアルキル化されたピペリジンから選ばれる多官能性アミンとアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に、多官能性アシルハライド、多官能性スルホニルハライドまたは多官能性イソシアネートから選ばれる多官能性酸ハロゲン化合物有機溶液を接触させて前記化合物間の界面重合によって形成される。
【0106】
また、本発明の製造方法ではポリアミド層の形成の際に、多官能性アミン含有またはアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に、ヒドロキシ基、スルホン化基、カルボニル基、トリアルコキシシラン基、アニオン基及び3級アミノ基からなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの親水性官能基を有する親水性化合物がさらに含有された水溶液と多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液を接触させて前記化合物間の界面重合反応によって形成することができる。
【0107】
より望ましい一例としては、多官能性アミン含有またはアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に、水溶性添加剤としてポリアミン塩化合物0.01〜2重量%をさらに含有させて用意した水溶液と多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液を接触させて前記化合物間の界面重合反応によってポリアミド層を形成する。
【0108】
この時、前記ポリアミン塩化合物は3級ポリアミンと強酸とが0.5〜2:1の反応モル比で製造され、前記で3級ポリアミンは1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン(DBN)、1,4−ジメチルピペラジン、4−[2−(ジメチルアミノ)エチル]モルホリン、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N、N、N´,N´−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン(TMBD)、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン(TMHD)、1,1,3、3−テトラメチルグアニジン(TMGU)及びN,N,N´,N´,N´´−ペンタメチルジエチレントリアミンロからなる群から選ばれるいずれか一つを用いる。
【0109】
また、生成された膜の流量の増加のために、前記の多官能性アミン水溶液にポリアミン塩化合物以外にも1種または2種以上の極性溶媒0.01〜2重量%をさらに添加して製造することができる。そこで、極性溶媒はエチレングリコール誘導体、プロピレングリコール誘導体、1,3−プロパンジオール誘導体、スルホキサイド誘導体、スルホン誘導体、ニトリル誘導体、ケトン誘導体及びウレア誘導体からなる群から選ばれるいずれか一つを用いることができる。
【0110】
本発明の製造方法において、前記段階2)を通じて多孔性支持の役割をする親水性高分子層上にポリアミド層が積層された複合膜を完成する。前記ポリアミド層から耐汚染性及び耐化学性が確保される。また、単一膜の構造は気孔のサイズが大きくて、1価イオンのような小さな塩を除去し難いが、ポリアミド層を備えた本発明の複合膜構造の膜は1価イオンまで除去できる。すなわち、高い塩排除率を奏することができ、逆浸透方向へ誘導溶液の溶質が逆拡散することを防止することができる。
【0111】
本発明の正浸透膜の製造方法で、安定した層形成のために支持体として、不織布層を含んで親水性高分子層を形成し、前記親水性高分子層の界面上でポリアミド層を連続的に形成して最終膜を形状化することができる。
【0112】
または前記の不織布層を剥離して全体としての膜構造において排除することもできる。この時、前記膜から支持体を分離する工程は別途の言及なしに遂行されることができる。
【0113】
前記支持体としては、平滑な表面を有するものであれば、特に限定されることなく使用可能であり、好ましくはガラス板、不織布などが用いられる。
【実施例】
【0114】
以下、本発明を実施例により詳しく説明する。
下記実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0115】
1.2層構造になっている海水淡水用正浸透膜の製造
(実施例1)
親水性高分子としてポリアクリロニトリル17.5重量%が有機溶媒に含有された親水性高分子含有溶液をガラス板に50μm厚さに塗布した後、室温の非溶媒である水で相転移させて親水性高分子層を形成した。その後、形成された親水性高分子層を超純水に一日程度保管して溶媒を抽出した。溶媒が抽出された膜表面上に2重量%のメタ−フェニレンジアミン(MPD)が含有された水溶液とISOPAR溶媒(Exxon Corp.社製)にトリメゾイルクロライド(TMC)0.1重量%を含む有機溶液を界面接触させて前記化合物間の重合反応によってポリアミド層を形成して複合膜を製造した。
(実施例2〜4)
下記表1で提示された膜構成からなることを除き、前記実施例1と同様な方法で行って複合膜を製造した。
(比較例1)
前記実施例1と同様に遂行するが、ポリスルホンの多孔性支持体上に、ポリアミド層が形成された複合膜を製造した。
(比較例2)
セルローストリアセテート単独素材からなる膜を製造した。
(実験例1)流量の測定
前記で製造された膜を介して原水から誘導溶液方向への水の流れを誘導し、時間による誘導溶液の前後の重量を測定して時間あたりの水の量を測定した。この時、誘導溶液は2M NaClを使用し、原水として超純水(浸透圧約100atm)を使用した。
(実験例2)逆拡散変化の測定
前記で製造された膜に対して、原水として超純水(浸透圧約100atm)を使用し、誘導溶液としては塩水(2M NaCl)を使用して、誘導溶液から原水側(超純水)へ流入された塩の電気伝導度の変化を電導率計(conductivity meter)を用いて一定の膜面積(24cm2)で分当たり伝導度(μS/cm)の変化量の単位で逆拡散の程度を評価した[水中に溶解された固形粉の値はμS/cm×0.5〜0.6=TDS(Total Dissolved Solids、mg/L)]。
【0116】
また、前記で得られた分当たり伝導度値((μS/cm)/min)について、実施された膜面積(24cm2)に対して伝導度値を換算した結果を下記表1に示した。その結果から塩の逆拡散の程度を評価した。
(実験例3)塩排除率の測定
前記で製造された膜の塩除去率は、投入された原水の塩の量と、膜を透過した透過水の塩の量とを測定し、原水対透過水の塩の割合を百分率で示した。この時、原水と透過水に含まれた塩の量をICで測定して、原水対透過水の割合で膜の塩除去率を測定した。

以下、表1に示したように、2M NaCl/超純水の溶液条件下で正浸透モードで評価された膜の物性の測定結果を示した。
【0117】
【表1】

【0118】
前記表1から分かるように、従来の逆浸透膜の構成であるポリスルホン多孔性支持体上にポリアミド層が形成された比較例1の膜を正浸透モードに適用する場合、塩の逆拡散変化が非常に低い結果を示したが、流量が遙かに劣る結果を見せた。しかし、前記比較例1の膜構造でポリアミド層の形成は膜の塩拡散変化を最小化する可能性があることを確認した。
【0119】
また、親水性素材であるセルローストリアセテートの単独素材で構成された単一膜構造の比較例2の膜は流量の側面では非常に高い流量結果が見られたが、塩の逆拡散変化の側面で大きい変化の幅を見せるので、正浸透膜として活用することができない。
【0120】
これに対し、本発明の実施例で製造された膜は親水性高分子層を構成する高分子及びその含量によって、気孔率及び親水性度を調節することができることがわかる。そこで、本発明の実施例で製造された膜は優れた流量、すなわち、16.0gfd以上の水準を満たしながら、分当たり9.0μS/cm以下(膜面積24cm2基準)の伝導度値を有する低い塩の逆拡散変化の挙動を同時に満たすことで、逆浸透方向へ誘導溶液の溶質の拡散する問題が解消された正浸透膜を提供する。
【0121】
図1は前記実施例1による正浸透膜において親水性高分子層の断面を700倍拡大した写真であって、形成された親水性高分子層は気孔度が高く、均一な気孔(finger−like)の形態による気孔の屈曲度が低い結果を確認した。反面、図2は前記比較例1によるポリスルホン多孔性支持体の断面を観察した写真であって、通常の逆浸透膜に用いられるポリスルホン多孔性支持体の断面は前記実施例1の膜の気孔率に比べて粗密な構造を有する。
【0122】
2.3層構造になっている海水淡水用正浸透膜の製造
(実施例5)
抄紙法によって製造された6.3cc/cm2・sec空気透過量の気孔度を有する不織布1に親水性高分子としてポリアクリロニトリル17重量%が有機溶媒に含有された親水性高分子含有溶液を50μm厚さに塗布した後、室温の非溶媒である水から相転移させて親水性高分子層を形成した。この時、不織布1の接触角の測定結果、接触時間4秒間で80度から1度に変化し、不織布1の平均孔径は7.5μmであった。その後、不織布層上に形成された親水性高分子層を超純水に一日程度保管して溶媒を抽出した。溶媒が抽出された膜表面上に2重量%のメタ−フェニレンジアミン(MPD)が含有された水溶液とISOPAR溶媒(ExxonCorp.社製)にトリメゾイルクロライド(TMC)0.1重量%を含む有機溶液を界面接触させて前記化合物間の重合反応によってポリアミド層を形成して複合膜を製造した。
【0123】
図3は、前記複合膜の不織布層の正面を走査電子燎微鏡で700倍拡大した写真であり、図4は前記複合膜において、親水性高分子層の側面に700倍拡大した写真である。前記図3及び図4から実施例1の複合膜の一つの構成である不織布層及び親水性高分子層は気孔道が高く、均一な気孔(finger−like)の形態による気孔の屈曲度が低い結果を確認した。
(実施例6〜10)
下記表2に示された膜構成からなることを除き、前記実施例5と同様な方法で行い複合膜を製造した。
(実施例11)
図5に示されたように空気透過量が10cc/cm2・sec以上の粗い気孔度を有する不織布2を用いることを除き、前記実施例5と同様に行って複合膜を製造した。この時、不織布2の接触角の測定結果、接触時間1秒間で114度から4度に変化し、不織布2の平均孔径は293μmであった。図6は図5の不織布2に形成された親水性高分子層の側面を観察した写真である。
【0124】
前記製造された実施例5乃至実施例11で製造された膜に対して、前記実験例1及び実験例2と同様な方法で膜の流量及び逆拡散の変化を測定した。その結果を下記表2に示した。
【0125】
【表2】

【0126】
前記表2からわかるように、本発明の実施例で製造された膜は不織布により、または親水性高分子層を構成する高分子及びその含量に応じて、気孔率及び親水性度を調節することができることを示した。そこで、本発明の実施例で製造された膜は、優れた流量水準を満たしながら、分当たり1.8μS/cm以下(膜面積24cm2基準)の伝導度や0.0750(μS/cm)/min・cm2以下の面積当たり伝導度を有するので、低い塩の逆拡散の結果を示すことにより、逆浸透方向へ誘導溶液の溶質が拡散しない正浸透膜を提供する。
【0127】
また、実施例5及び11に示しているように、同一の構成の膜で不織布層の気孔度が高いほど(不織布1<不織布2)、比較例2で提示された流量水準の程度に極めて向上したが、塩拡散の変化は比較例2に比べて割合低い数値であることが確認された。かかる結果から、本発明の正浸透膜は、高い流量を維持するとともに、逆浸透方向へ誘導溶液の溶質が逆拡散することを防止することができる。
(実施例12)
1.スルホン化されたポリスルホン系重合体の製造
100mlの4口フラスコに機械式攪拌機、窒素注入器を設置し、モノマーとしてポリスルホン5g、ジクロロメタン50mlを投入して室温で8時間攪拌させた後、20℃まで冷凍させて用意した。その後、前記溶液にクルロロスルホン酸0.5mlをジクロロメタンに希釈した後、徐々に注入して5時間攪拌して共重合体を形成した。前記反応が終了すると、残留溶媒を除去と沈殿物を中和剤(1N NaOH)で中和させた。中和後、洗浄工程を経て、濾過して得られた共重合体を80℃の減圧オーブンで24時間乾燥して、下記化2で表される重量平均分子量69,000であり、スルホン化度が50%であるスルホン化されたポリスルホン系重合体を製造した。
【0128】
【化2】

【0129】
2.正浸透膜の製造
6.3cc/cm2・sec以上の空気透過量の気孔度を有する不織布層にポリスルホン17重量%と前記段階で製造されたスルホン化されたポリスルホン系重合体1重量%とを含んだ親水性高分子含有溶液を150μm厚さに塗布した後、室温の非溶媒である水から相転移させて親水化された高分子支持層を形成した。その後、不織布層上に形成された親水性高分子支持層を超純水に一日程度保管して溶媒を抽出した。溶媒が抽出された膜表面で2重量%のメタ−フェニレンジアミン(MPD)が含有された水溶液とトリメゾイルクロライド(TMC)0.1重量%がISOPAR溶媒(Exxon Corp.社製)に含有された有機溶液を界面接触させて前記化合物間の重合反応によってポリアミド層を形成して複合膜を製造した。
(実施例13)
下記表3に示したように、ポリスルホン18重量%にスルホン化されたポリスルホン1重量%を含む親水性高分子含有溶液で用いて膜を構成することを除き、前記実施例12と同様な方法で行って複合膜を製造した。
【0130】
前記製造された実施例12乃至実施例13で製造された膜に対して、前記実験例1及び実験例2と同様な方法で膜の流量及び逆拡散の変化を測定した。その結果を下記表3に示した。
【0131】
【表3】

【0132】
前記表3からわかるように、実施例12及び13で製造された膜は優れた流量の水準を満たしながら、分当たり0.36μS/cmで最大1.54μS/cm以下(膜面積24cm2基準)の伝導度値を有するので、低い塩の逆拡散の結果を見せた。また面積対比換算された伝導度値が0.0150〜0.0642(μS/cm)/min・cm2を示す。これにより、実施例12及び13で製造された膜は逆浸透方向へ誘導溶液の溶質が拡散しない正浸透膜としての要件を満たした。また、高分子支持層を構成する高分子及びその含量によって、気孔率及び親水性度を調節することができることを提示した。より詳しくは、実施例12及び13で示したように、同一の構成の高分子の組成や親水化された高分子であるスルホン化されたポリスルホンの含量によって、顕著な流量増加の変化の結果を確認することができた。
【0133】
すなわち、比較例2の親水性高分子からなる膜で提示された流量水準の程度に顕著に向上したし、スルホン化されたポリスルホンの含量による親水化された高分子含量が高いほど流量の改善効果が確認され、前記親水化された高分子含量に対する適正の濃度が存在することが確認された。そこで、本発明の正浸透膜は高流量を維持するとともに塩拡散の変化が顕著に低くて逆浸透方向へ誘導溶液の溶質が逆拡散することを防止することができる。
【0134】
また、本発明の実施例13の膜の場合、原水の流れを順方向又は逆方向へ誘導して流量変化を測定した結果、原水が逆方向である不織布層からポリアミド層に流入される際(Pressure Retarded Osmosis モード)、原水が順方向であるポリアミド層から不織布層内へ流入される際よりも正浸透モード(Forward Osmosis モード)で向上した流量の結果を確認した。
【0135】
また、図7はポリスルホン高分子にスルホン化されたポリスルホン系重合体が含有されて形成された親水性高分子支持層が備えられた正浸透膜の断面写真である。その結果、親水性高分子支持層は均一なフィンガー型(finger−like)の気孔構造により高い気孔度が付与される。同時に、前記フィンガー型(finger−like)の均一な気孔によって低い気孔の屈曲度を形成させることができる。本発明の実施例で提示しているように、本発明の親水性高分子支持層は用いられる親水化された高分子の濃度の変化によって、気孔率を制御することができる。
(実施例14)
空気透過量6.3cc/cm2・secの気孔度を有し、平均孔径7.5μmの特性を有するポリエステル素材の不織布(不織布1)上に、ポリアクリロニトリル(PAN)17.5重量%が含有されたジメチルホルムアミド溶液を50±10μm厚さにキャスティングして、直ちにこれを室温の蒸留水浴(bath)に浸漬して固形化させた後、十分に水洗いして不織布補強ポリアクリロニトリル(PAN)からなる正浸透分離膜支持体を製造した。前記製造された正浸透分離膜支持体はフィンガー型(finger−like)であるから、気孔の低い屈曲度の特性を確認した。その後、超純水に一日程度保管して溶媒を抽出した。溶媒が抽出された支持体をメタ−フェニレンジアミン(MPD)2重量%と水溶液添加剤としてN,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン(TMHD)0.1重量%を含んだ水溶液に20秒間浸漬後、圧搾方法で表面の水層を除去した。前記基材をISOPAR溶媒(Exxon Corp.社製)に0.1重量%トリメゾイルクロライド(TMC)を含む有機溶液に40秒間界面接触させた後、前記化合物間の重合反応によってポリアミド層を形成したし1分間大気乾燥した。かかる方法で得られた正浸透膜を0.2重量%炭酸ナトリウムと同じ塩基性水溶液に室温で2時間浸漬させた後、蒸留水で水洗いして複合膜構造の正浸透分離膜を製造した。
(実施例15〜19)
前記実施例14で水溶液添加剤であるN,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン(TMHD)の濃度を異にして行ったことを除き、前記実施例14と同様な方法で複合膜構造の正浸透分離膜を製造した。
(実施例20〜23)
前記実施例17で水溶液添加剤である水溶液添加剤としてN,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン(TMHD)にトルエンスルホン酸(TSA)を追加して濃度を異にして行ったことを除き、前記実施例14と同様な方法で複合膜構造の正浸透分離膜を製造した。
(実施例24〜25)
高分子層素材として、ポリアクリロニトリル(PAN)の代わりに、ポリアクリロニトリル−ビニル酢酸塩共重合体(P−CO−PAN)を使用して、その濃度を異にして行ったことを除き、前記実施例14と同様な方法で複合膜構造の正浸透分離膜を製造した。
(実施例26〜27)
空気透過量10cc/cm2・sec以上の気孔度を有し、平均孔径300μm以上の特性を有するポリエステル素材の不織布(不織布2)を使用し、ポリアクリロニトリル−ビニル酢酸塩共重合体(P−CO−PAN)の濃度を異にして行ったことを除き、前記実施例24と同様な方法で複合膜構造の正浸透分離膜を製造した。
(比較例3)
前記実施例14の膜構成でポリアミド層の形成時、水溶液添加剤を使わないで行ったことを除き、前記実施例14と同様な方法で複合膜構造の正浸透分離膜を製造した。
【0136】
前記製造された実施例14〜実施例27で製造された膜の構成を表4に示し、前記膜に対して、前記実験例1及び実験例2と同様な方法で膜の流量及び逆拡散変化を測定した。その結果を下記表5に示した。
【0137】
【表4】

【0138】
【表5】

【0139】
前記表4及び表5からわかるように、水溶液に添加剤なしにポリアミド層を形成した正浸透分離膜の場合(比較例3)、実施例で製造された膜に比べて流量が顕著に低下する結果を確認した。しかし、セルローストリアセテート(CTA)単独素材で構成された分離膜(比較例2)に比べて塩の逆拡散変化が有利であった。
【0140】
また、従来の逆浸透膜の支持体構成であるポリスルホン多孔性支持体上に、ポリアミド層が形成された分離膜(比較例1)の物性測定結果、優れた塩の逆拡散抑制効果を確認したが、流量が顕著に低くて濃度勾配差によって駆動される正浸透分離膜で使われることができない。
【0141】
これに対し、本発明の実施例で製造された正浸透分離膜はポリアミド層の形成の時、水容液上に添加剤を用いて優れた塩の拡散阻止と同時に流量向上の結果を確認した。また、不織布によって、または支持体を構成する高分子及びその含量によって誘導溶液の塩拡散阻止と流量を調節することができることを確認した。
【0142】
そこで、本発明の実施例で製造された正浸透分離膜は、優れた流量水準を満たしながら、セルローストリアセテート素材からなる分離膜(塩拡散評価、9.12(μS/cm)/minの伝導度)に比べて、9.0(μS/cm)/min以下の伝導度値または0.375(μS/cm)/min・cm2以下の伝導度値を示すことで、誘導溶液内溶質の拡散が最小化された低い塩拡散性を満たす正浸透分離膜を提供する。
【0143】
また、実施例24及び27から分かるように、気孔度の差がある不織布を用いることを除き、同一の膜構成で気孔度が大きい不織布2(空気透過量10cc/cm2・sec以上)を適用した場合、流量向上の結果を示すとともに、優れた塩の拡散阻害性能を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0144】
前述したように、
第一、本発明は親水性高分子層とポリマイド層とが順次積層された複合膜構造の海水淡水用正浸透膜を提供した。
【0145】
第二、本発明は不織布層上に親水性高分子層とポリマイド層とが順次積層された複合膜構造の海水淡水用正浸透膜を提供した。
【0146】
第三、膜を介して原水部から誘導溶液への水の流入が円滑になるようにして、浸透方向への高い水透過性を有するように親水性高分子層を最適の条件下で形成して、前記親水性高分子層上に界面重合によってポリアミド層を形成して膜の耐汚染性が備えられた正浸透膜の製造方法を提供した。
【0147】
以上、本発明を具体的な実施例について詳しく説明したが、本発明の技術思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であることは当業者にとって自明なことであり、かかる変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属することは当たり前である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性高分子層と、
ポリアミド層とが順次積層された複合膜構造からなる海水淡水用正浸透膜。
【請求項2】
不織布層と、
親水性高分子層と、
ポリアミド層とが順次積層された複合膜構造からなる海水淡水用正浸透膜。
【請求項3】
前記正浸透膜が膜面積(24cm2)において分当たり9.0μS/cm以下の伝導度値または0.375(μS/cm)/min・cm2以下の伝導度値を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の海水淡水用正浸透膜。
【請求項4】
前記正浸透膜は、原水と2M NaClの誘導溶液または前記誘導溶液と同等の水準の浸透圧条件下で3〜20gfdの流量を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の海水淡水用正浸透膜。
【請求項5】
前記不織布層が2cc/cm2・sec以上の空気透過量を有することを特徴とする請求項2に記載の海水淡水用正浸透膜。
【請求項6】
前記不織布層が1〜600μmの平均気孔を有することを特徴とする請求項2に記載の海水淡水用正浸透膜。
【請求項7】
前記不織布層が最小0.1以上最大74度未満の接触角を有することを特徴とする請求項2に記載の海水淡水用正浸透膜。
【請求項8】
前記不織布層の厚さが20〜150μmであることを特徴とする請求項2に記載の海水淡水用正浸透膜。
【請求項9】
前記親水性高分子層は、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンイミド、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリスルホン系重合体、ポリエチレンオキサイド及びポリ酢酸ビニルからなる群から選ばれる単独またはこれらの混合形態からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の海水淡水用正浸透膜。
【請求項10】
前記混合形態は、ポリアクリロニトリルに、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールまたはセルロースアセテートの中で選ばれるいずれか一つを0.1〜5重量%含有させたことを特徴とする請求項9に記載の海水淡水用正浸透膜。
【請求項11】
前記混合形態は、ポリスルホン系重合体に、下記化1で表されるスルホン化されたポリスルホン系重合体0.1〜10重量%が含有されたことを特徴とする請求項9に記載の海水淡水用正浸透膜。
【化1】

【請求項12】
前記ポリスルホン系重合体は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリアリルエーテルスルホンからなる群から選ばれる単独または混合形態であることを特徴とする請求項11に記載の海水淡水用正浸透膜。
【請求項13】
前記スルホン化されたポリスルホン系重合体は、下記化2で表される化合物であることを特徴とする請求項11に記載の海水淡水用固有量正浸透膜。
【化2】

【請求項14】
前記親水性高分子層は、フィンガー型(finger−like)の気孔を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の海水淡水用正浸透膜。
【請求項15】
前記親水性高分子層の厚さが30〜250μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の海水淡水用正浸透膜。
【請求項16】
前記ポリアミド層は、多官能性アミンまたはアルキル化された脂肪族アミン含有水溶液にポリアミン塩化合物0.01〜2重量%がさらに含有された水溶液層と多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液とが界面重合されて形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の海水淡水用正浸透膜。
【請求項17】
前記ポリアミン塩化合物は、3級ポリアミンと強酸とが0.5〜2:1の反応モル比で製造された3級ポリアミン塩化合物であることを特徴とする請求項16に記載の海水淡水用正浸透膜。
【請求項18】
前記3級ポリアミンは、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン(DBN)、1,4−ジメチルピペラジン、4−[2−(ジメチルアミノ)エチル]モルホリン、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン(TMBD)、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン(TMHD)、1,1,3、3−テトラメチルグアニジン(TMGU)及びN,N,N´,N´,N´´−ペンタメチルジエチレントリアミンロからなる群から選ばれるいずれか一つであることを特徴とする請求項17に記載の海水淡水用正浸透膜。
【請求項19】
1)不織布層上に、親水性高分子10〜25重量%が含有された親水性高分子含有溶液をドーピングして親水性高分子層を形成し、
2)前記親水性高分子層の表面上に、多官能性アミン含有またはアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に、多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液を接触させて前記化合物間の界面重合反応によってポリアミド層を形成させる工程を行うことにより不織布層/親水性高分子層/ポリアミド層の3層構造になっている海水淡水用正浸透膜の製造方法。
【請求項20】
1)親水性高分子10〜25重量%が含有された親水性高分子含有溶液を支持体上にドーピングして親水性高分子層を形成し、
2)前記親水性高分子層界面上でポリアミド層を連続的に形成させた後、前記支持体を膜から分離することで形成された、親水性高分子層/ポリアミド層の2層構造になっている海水淡水用正浸透膜の製造方法。
【請求項21】
前記親水性高分子層は、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンイミド、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリスルホン系重合体、ポリエチレンオキサイド及びポリ酢酸ビニルからなる群から選ばれる単独またはこれらの混合形態からなることを特徴とする請求項19又は20に記載の海水淡水用正浸透膜の製造方法。
【請求項22】
前記親水性高分子層は、ポリアクリロニトリルに、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールまたはセルロースアセテートで選ばれるいずれか一つが0.1〜5重量%に含有されて形成されたことを特徴とする請求項19又は20に記載の海水淡水用正浸透膜の製造方法。
【請求項23】
前記親水性高分子層は、ポリスルホン系重合体に、下記化1で表されるスルホン化されたポリスルホン系重合体0.1〜10重量%が含有されて形成されたことを特徴とする請求項19又は20に記載の海水淡水用正浸透膜の製造方法。
【化1】

【請求項24】
前記ポリスルホン系重合体は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリアリルエーテルスルホンからなる群から選ばれる単独または混合形態であることを特徴とする請求項23に記載の海水淡水用正浸透膜の製造方法。
【請求項25】
前記スルホン化されたポリスルホン系重合体は、下記化2で表される化合物であることを特徴とする請求項24に記載の海水淡水用固有量正浸透膜の製造方法。
【化2】

【請求項26】
前記ポリアミド層は、多官能性アミン含有またはアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に、ヒドロキシ基、スルホン化基、カルボニル基、トリアルコキシシラン基、アニオン基及び3級アミノ基からなる群から選ばれるいずれか一つの親水性官能基を有する親水性化合物がさらに含有された水溶液と多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液とを接触させて前記化合物間の界面重合反応によって形成されたことを特徴とする請求項19又は20に記載の海水淡水用正浸透膜の製造方法。
【請求項27】
前記ポリアミド層は、多官能性アミン含有またはアルキル化された脂肪族アミンを含む水溶液に、水溶性添加剤としてポリアミン塩化合物0.01〜2重量%をさらに含んだ水溶液と多官能性酸ハロゲン化合物含有有機溶液とを接触させて前記化合物間の界面重合反応によって形成されたことを特徴とする請求項19又は20に記載の海水淡水用正浸透膜の製造方法。
【請求項28】
前記ポリアミン塩化合物は、3級ポリアミンと強酸とが0.5〜2:1の反応モル比で製造されることを特徴とする請求項27に記載の海水淡水用正浸透膜の製造方法。
【請求項29】
前記3級ポリアミンは、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン(DBN)、1,4−ジメチルピペラジン、4−[2−(ジメチルアミノ)エチル]モルホリン、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、 N、N、N´,N´−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン(TMBD)、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン(TMHD)、1,1,3、3−テトラメチルグアニジン(TMGU)及びN,N,N´,N´,N´´−ペンタメチルジエチレントリアミンロからなる群から選ばれるいずれか一つであることを特徴とする請求項28に記載の海水淡水用正浸透膜の製造方法。
【請求項30】
前記水溶液は、エチレングリコール誘導体、プロピレングリコール誘導体、1,3−プロパンジオール誘導体、スルホキサイド誘導体、スルホン誘導体、ニトリル誘導体、ケトン誘導体及びウレア誘導体からなる群から選ばれるいずれか一つの極性溶媒0.01〜2重量%をさらに含むことを特徴とする請求項27に記載の海水淡水用正浸透膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−519593(P2012−519593A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512984(P2012−512984)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/KR2011/000856
【国際公開番号】WO2011/136465
【国際公開日】平成23年11月3日(2011.11.3)
【出願人】(508239115)ウンジン ケミカル カンパニー,リミテッド (2)
【Fターム(参考)】