説明

海藻食品の製造方法

【課題】海藻から得た材料と天然の色素、艶、味が得られる色付け、艶出し、味付け及び香り付けし、熟成させて所定の形状に成型した、食しやすい海藻食品を提供する。
【解決手段】天然の色素、艶、味が得られる特定の材料からの抽出液に水を加えた材料を用意する。撹拌機に温水を準備し、前記材料とアルギン酸ナトリウムを混合、撹拌する。撹拌機から熟成タンクに移動し、8〜12時間熟成させ、ゲル液を得る。一方、成型タンクに食品添加物明礬0.05〜0.3%と塩化カルシウム0.5〜1.0%(上記ゲル液100%に対する比率)を溶解する。上記ゲル液を成型タンク内の混合液中に落下させ、麺或いはビーズの形態に成型させる。成型の終了後、ジェリ状態の成型品を精製水に5〜7時間沈下させ、弾力性を付与させる。5〜7時間経過した成型品を、精製水で洗い、ざる等の網状体に入れて自然脱水し、発酵酒精を少量噴射し、包装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新鮮で良質の天然材料から色素、艶及び味を抽出し、該色素、艶及び味と海藻成分とを混合し、長時間の熟成後、ゲル状にし、所定形状に加工した海藻食品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の多くの食品は、一般的に脂肪分や糖分が多いためカロリーが高く、昨今の健康志向を満足させるものではなかった。他方、健康食品も多く見かけられるが、その多くは見た目が悪く或いは味のない無味無臭のものであった。
【0003】
また、ミネラル等の栄養分が高くヘルシーな食品として海藻を主材料とした食品があるが、それらは海藻そのものとなる海苔のように乾燥した食品であったり、味噌汁やスープの具として直接用いたり、或いはワカメやモズクのように直接味付けをした食品であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2899255号公報
【特許文献2】特開平9−65839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2は、海藻加工食品の製造方法に関する文献ではあるが、色素や艶出し工程、溶解した海藻を熟成する工程等はなく、また、凝固した海藻食品に対して弾力性を持たせるための工程もなかった。更に、味付け工程もないか、有っても撹拌混合の終了した後の最後の工程で行っている。従って、ゼリー菓子のような単に海藻が凝固しただけの食品となり、色鮮やかなしゃきしゃき感を持った弾力性に富んだ海藻食品を得ることはできなかった。また、天然果汁の味も海藻食品の中心部にまで浸透することなく、表面のみに付着しているだけであり、海藻及びそれ以外の天然の味及び風味を全体に醸し出すことはできなかった。
【0006】
上記のように、海藻を利用した食品は、海藻そのものであったり、海藻に味付けをした程度の食品であり、海藻の持つ形状や独特の臭いがそのまま残っており、人によっては食しにくいという欠点があった。本発明は、それらを解決したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の工程よりなる海藻食品の製造方法を特徴とする。
1.天然の色素、艶、味が得られる特定の材料からの抽出液に水を加えた材料を用意する。
2.撹拌機に温水70〜80℃を準備し、上記工程1で選定した材料とアルギン酸ナトリウムを混合し、80〜160分間撹拌し、その後、完全溶解を確認し、撹拌を終了する。
3.撹拌機から熟成タンクに移動し、8〜12時間熟成させ、ゲル液を得る。
4.成型タンクに食品添加物明礬0.05〜0.3%(容積比)と塩化カルシウム0.5〜1.0%(上記ゲル液100%に対する比率)(容積比)を溶解して準備する。
5.成型準備の終了後、上記ゲル液を成型タンク内の上記工程4で得た混合液中に落下させ、麺或いはビーズの形態に成型させる。
6.成型の終了後、ジェリ状態の成型品を精製水に5〜7時間沈下させ、弾力性を付与させる。
7.5〜7時間経過した成型品を、精製水で洗い、ざる等の網状体に入れて自然脱水させる。
8.脱水の終了した成型品に対し、発酵酒精を少量噴射し、包装する。
【0008】
上記工程1における特定の材料を、新鮮で質の良い寒天とした海藻食品の製造方法を特徴とする。
【0009】
上記工程1における特定の材料を、新鮮で質の良い百年草の実と茎、パプリカの実、クチナシの実と種子、山イチゴの実のいずれかとし、それら材料1〜2(重量比)に対して水4〜6(重量比)の割合で抽出機に混入し、100〜150℃で90〜150分加熱し、濃縮したものとした海藻食品の製造方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の海藻食品の製造方法は、海藻から得た材料と天然の色素、艶、味が得られる色付け、艶出し、味付け及び香り付け工程を先行し、熟成させて所定の形状に成型することができ、たいへん食しやすい海藻食品を得ることが可能となった。
【0011】
また、本発明の製造方法により得られた海藻食品は、低カロリーで且つ便秘に対して有効で、ダイエット食品として極めて優れたものを得ることが可能となった。
【0012】
更に、しゃきしゃきとした食感を得ることができ、様々な食品に添えて食することができるし、麺の形状にしたものにおいては、サラダ、しゃぶしゃぶ、マヨネーズ和え、キムチ和え等にして食することが可能となった。
【0013】
また、ビーズの形状にしたものにあっては、アイス、各種飲み物、ヨーグルト、かき氷、カクテル等のトッピングとして使用することが可能となった。
【0014】
更に、色が鮮やかで艶があって綺麗であり、且つ人口着色料を一切使用していない天然の食物材料を基とした植物色素を使用しているので、自然の味覚と香りを得ることができ、且つ自然食品として極めて安全なものを得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】全体の工程を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
新鮮で質の良い百年草(サボテン)の実と茎を準備して洗浄し、その後、水5(重量比)に対してサボテン1(重量比)の比率で抽出機に混入し、約130℃で2時間加熱し、濃縮液を用意する。
【0018】
次に、撹拌機に温水70〜80℃を準備し、サボテン濃縮液とアルギン酸ナトリウムを一緒に混入し、約100分撹拌し、完全溶解を確認後、撹拌を終了する。その際の成分比は、百年草(サボテン)濃縮液3に対し、アルギン酸ナトリウム4(容積比)の割合とした。
【0019】
次に、撹拌機から上記混合物を熟成タンクに移動し、約10時間熟成させ、ゲル液を得る。
【0020】
次に、成型タンクに食品添加物明礬0.1%(容積比)と塩化カルシウム0.75%(上記工程で得られるゲル液100%に対する比率)(容積比)を溶解して準備する。
【0021】
次に、成型準備の終了後、ゲル状態の溶液を成型タンク内の明礬と塩化カルシウムとの混合液中に落下させ、麺或いはビーズの形態に成型させる。
【0022】
次に、成型の終了後、ジェリ状態の成型品を精製水に約6時間沈下させ、弾力性を付与させる。
【0023】
次に、約6時間経過した成型品を、精製水で洗い、ざる等の網状体に入れて自然脱水させる。
【0024】
次に、脱水の終了した成型品に、500g当たり0.5g程度の割合となる少量の発酵酒精を噴射し、その後、包装する。
【0025】
上記工程により、鮮やかな紫色の色彩と食物繊維、カルシウム、鉄分等の無機質成分の豊富な海藻食品を得ることができた。
【実施例2】
【0026】
新鮮で質の良いパプリカの実を準備して洗浄し、その後、水5(重量比)に対してパプリカ1(重量比)の比率で抽出機に混入し、約130℃で2時間加熱し、濃縮液を用意する。
【0027】
次に、撹拌機に温水70〜80℃を準備し、パプリカ濃縮液とアルギン酸ナトリウムを一緒に混入し、約100分撹拌し、完全溶解を確認後、撹拌を終了する。その際の成分比は、パプリカ濃縮液3に対し、アルギン酸ナトリウム4(容積比)の割合とした。
【0028】
次に、撹拌機から上記混合物を熟成タンクに移動し、約10時間熟成させ、ゲル液を得る。
【0029】
次に、成型タンクに食品添加物明礬0.1%(容積比)と塩化カルシウム0.75%(上記工程で得られるゲル液100%に対する比率)(容積比)を溶解して準備する。
【0030】
次に、成型準備の終了後、ゲル状態の溶液を成型タンク内の明礬と塩化カルシウムとの混合液中に落下させ、麺或いはビーズの形態に成型させる。
【0031】
次に、成型の終了後、ジェリ状態の成型品を精製水に約6時間沈下させ、弾力性を付与させる。
【0032】
次に、約6時間経過した成型品を、精製水で洗い、ざる等の網状体に入れて自然脱水させる。
【0033】
次に、脱水の終了した成型品に、500g当たり0.5g程度の割合となる少量の発酵酒精を噴射し、その後、包装する。
【0034】
上記工程により、鮮やかな橙色の色彩と食物繊維、カルシウム、鉄分等の無機質成分の豊富な海藻食品を得ることができた。
【実施例3】
【0035】
新鮮で質の良いクチナシの実と種子を準備して洗浄し、その後、水5(重量比)に対してクチナシ1(重量比)の比率で抽出機に混入し、約130℃で2時間加熱し、濃縮液を用意する。
【0036】
次に、撹拌機に温水70〜80℃を準備し、クチナシ濃縮液とアルギン酸ナトリウムを一緒に混入し、約100分撹拌し、完全溶解を確認後、撹拌を終了する。その際の成分比は、クチナシ濃縮液3に対し、アルギン酸ナトリウム4(容積比)の割合とした。
【0037】
次に、撹拌機から上記混合物を熟成タンクに移動し、約10時間熟成させ、ゲル液を得る。
【0038】
次に、成型タンクに食品添加物明礬0.1%(容積比)と塩化カルシウム0.75%(上記工程で得られるゲル液100%に対する比率)(容積比)を溶解して準備する。
【0039】
次に、成型準備の終了後、ゲル状態の溶液を成型タンク内の明礬と塩化カルシウムとの混合液中に落下させ、麺或いはビーズの形態に成型させる。
【0040】
次に、成型の終了後、ジェリ状態の成型品を精製水に約6時間沈下させ、弾力性を付与させる。
【0041】
次に、約6時間経過した成型品を、精製水で洗い、ざる等の網状体に入れて自然脱水させる。
【0042】
次に、脱水の終了した成型品に、500g当たり0.5g程度の割合となる少量の発酵酒精を噴射し、その後、包装する。
【0043】
上記工程により、鮮やかな黄色の色彩と食物繊維、カルシウム、鉄分等の無機質成分の豊富な海藻食品を得ることができた。
【実施例4】
【0044】
新鮮で質の良い山イチゴの実を準備して洗浄し、その後、水5(重量比)に対して山イチゴ1(重量比)の比率で抽出機に混入し、約130℃で2時間加熱し、濃縮液を用意する。
【0045】
次に、撹拌機に温水70〜80℃を準備し、山イチゴ濃縮液とアルギン酸ナトリウムを一緒に混入し、約100分撹拌し、完全溶解を確認後、撹拌を終了する。その際の成分比は、山イチゴ濃縮液3に対し、アルギン酸ナトリウム4(容積比)の割合とした。
【0046】
次に、撹拌機から上記混合物を熟成タンクに移動し、約10時間熟成させ、ゲル液を得る。
【0047】
次に、成型タンクに食品添加物明礬0.1%(容積比)と塩化カルシウム0.75%(上記工程で得られるゲル液100%に対する比率)(容積比)を溶解して準備する。
【0048】
次に、成型準備の終了後、ゲル状態の溶液を成型タンク内の明礬と塩化カルシウムとの混合液中に落下させ、麺或いはビーズの形態に成型させる。
【0049】
次に、成型の終了後、ジェリ状態の成型品を精製水に約6時間沈下させ、弾力性を付与させる。
【0050】
次に、約6時間経過した成型品を、精製水で洗い、ざる等の網状体に入れて自然脱水させる。
【0051】
次に、脱水の終了した成型品に、500g当たり0.5g程度の割合となる少量の発酵酒精を噴射し、その後、包装する。
【0052】
上記工程により、鮮やかな赤色の色彩と食物繊維、カルシウム、鉄分等の無機質成分の豊富な海藻食品を得ることができた。
【実施例5】
【0053】
新鮮で質の良い寒天を用意する。
【0054】
次に、撹拌機に温水70〜80℃を準備し、寒天とアルギン酸ナトリウムを一緒に混入し、約100分撹拌し、完全溶解を確認後、撹拌を終了する。その際の成分比は、寒天3に対し、アルギン酸ナトリウム4(容積比)の割合とした。
【0055】
次に、撹拌機から上記混合物を熟成タンクに移動し、約10時間熟成させ、ゲル液を得る。
【0056】
次に、成型タンクに食品添加物明礬0.1%(容積比)と塩化カルシウム0.75%(上記工程で得られるゲル液100%に対する比率)(容積比)を溶解して準備する。
【0057】
次に、成型準備の終了後、ゲル状態の溶液を成型タンク内の明礬と塩化カルシウムとの混合液中に落下させ、麺或いはビーズの形態に成型させる。
【0058】
次に、成型の終了後、ジェリ状態の成型品を精製水で約6時間沈下させ、弾力性を付与させる。
【0059】
次に、約6時間経過した成型品を、精製水で洗い、ざる等の網状体に入れて自然脱水させる。
【0060】
次に、脱水の終了した成型品に、500g当たり0.5g程度の割合となる少量の発酵酒精を噴射し、その後、包装する。
【0061】
上記工程により、透明で艶の有る色彩と特に磯の香りが豊かで食物繊維、カルシウム、鉄分等の無機質成分の豊富な海藻食品を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程よりなる海藻食品の製造方法。
1.天然の色素、艶、味が得られる特定の材料からの抽出液に水を加えた材料を用意する。
2.撹拌機に温水70〜80℃を準備し、上記工程1で選定した材料とアルギン酸ナトリウムを混合し、80〜160分間撹拌し、その後、完全溶解を確認し、撹拌を終了する。
3.撹拌機から熟成タンクに移動し、8〜12時間熟成させ、ゲル液を得る。
4.成型タンクに食品添加物明礬0.05〜0.3%(容積比)と塩化カルシウム0.5〜1.0%(上記ゲル液100%に対する比率)(容積比)を溶解して準備する。
5.成型準備の終了後、上記ゲル液を成型タンク内の上記工程4で得た混合液中に落下させ、麺或いはビーズの形態に成型させる。
6.成型の終了後、ジェリ状態の成型品を精製水に5〜7時間沈下させ、弾力性を付与させる。
7.5〜7時間経過した成型品を、精製水で洗い、ざる等の網状体に入れて自然脱水させる。
8.脱水の終了した成型品に対し、発酵酒精を少量噴射し、包装する。
【請求項2】
上記工程1における特定の材料を、新鮮で質の良い寒天としたことを特徴とする請求項1記載の海藻食品の製造方法。
【請求項3】
上記工程1における特定の材料を、新鮮で質の良い百年草の実と茎、パプリカの実、クチナシの実と種子、山イチゴの実のいずれかとし、それら材料1〜2(重量比)に対して水4〜6(重量比)の割合で抽出機に混入し、100〜150℃で90〜150分加熱し、濃縮したものを特徴とする請求項1記載の海藻食品の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−217407(P2012−217407A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87908(P2011−87908)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(511091841)株式会社天恵 (1)
【出願人】(511245411)
【Fターム(参考)】