説明

海難事故防止システム

【課題】GPS受信機、無線通信機を紛失した場合や、サーフボード及びカヤックから離れてしまった場合の緊急事態でも緊急信号の発信と遭難者の位置特定を可能とする。
【解決手段】海難事故防止システムは、地図情報表示処理部と、通信受信部と、位置情報解析処理部と、解析結果表示部とを備える監視装置と、海上に出る人が装着する位置情報通信装置1号機と、海上スポーツ用具に装着される位置情報通信装置2号機とからなる。これら二つの位置情報通信装置は、GPS受信機を双方とも備え、互いの装置が正常機能しているか、通信可能範囲にあるかの検知を可能として、他方の装置が通信可能範囲外にある場合、異常事態として通信手段部から監視装置側の通信受信部へ危険信号を発信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーフィンやカヤック等(以下、「海上スポーツ用具」という。)で海上に出る人が海上スポーツ用具と本人との両方にGPS(Global Positioning System)受信機を装着して、「波浪警報時に人が海にいないか」、「沖に流されてる人はいないか」、「海底に沈んでいる人はいないか」等を陸上から監視するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サーフィンやカヤックは、用具があれば手軽に楽しめるスポーツであり参加人口が増加傾向にある。一方、安全対策としては、サーフィンの場合は軟らかいゴム・フィンでサーフボードと本人の足の結び付けることであり、カヤックの場合はライフジャケットの着用程度である。しかし、何れも海上でのスポーツ故に、突然の高波や海流の変化が発生した場合には、沖へ漂流して陸に戻れなくなる海難事故も有り得る。
【0003】
従来の海難事故の捜索に関するシステムは、本人がGPS受信機を保持することにより遭難者の位置を特定するものである。例えば公知技術文献として特許文献1があげられる。特許文献1には、サーフィンやカヤックを行う本人がGPS受信機を持つことで遭難者の位置情報を検出するGPS受信機を用いた救助システムが開示されている。また、緊急時の場合は、無線送信機により緊急信号を発信することで救助までの時間が短縮化して救助活動を効率的に行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−304506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1では、サーフィンやカヤックを行う本人がGPS受信機と無線通信機を保持する為、海上でGPS受信機と無線通信機を紛失した場合は、遭難者の位置情報を正確に検知出来なくなる。また、何らかの要因により海上で意識を失い、さらにサーフボード及びカヤックから離れてしまった場合は、陸地から海上の緊急事態を検知することが不可能となる。
【0006】
本発明の目的は、前記課題を解決する為のものであり、本人が保持するGPS受信機と無線通信機を紛失した場合やサーフボード及びカヤックから離れてしまった場合の緊急事態でも緊急信号の発信と遭難者の位置特定を可能とする海難事故の救援を支援するシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、GPS受信機と無線通信機をサーフィンやカヤックを行う本人が保持するのみならず、サーフボード又はカヤックの用具の側にも備え付けて、常時、両方の無線通信機から平常であることの電波を発信する。
さらに、海上で片方の無線通信機から電波が発信しなくなった場合は、異常事態の発生として検知する手段を備える。
さらにまた、本人の保持する無線通信機と、サーフボード又はカヤックの用具の側に備える無線通信機との間で通信が出来ない状況が発生した場合は、片方の無線通信機から緊急信号を発信する手段を備える。
【発明の効果】
【0008】
以上の構成により、本発明では、海上でGPS受信機と無線通信機を紛失した場合でも、自動的に片方の無線通信機が緊急信号を発信することが出来る為、遭難者の位置情報の検知をさせることが可能となる。また、サーフボード又はカヤックと本人との間が離れてしまった場合でも自動的に無線通信機が緊急信号を発信することが出来る為、遭難者の位置情報を検知させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る海難事故防止システムを説明するブロック図である。
【図2】本発明に係る海難事故防止システムを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る海難事故防止システムについて、図面に基づき説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る海難事故防止システムの概略構成を示すブロック図である。
監視装置100は、地図情報表示処理部101と、通信受信部102と、位置情報解析処理部103と、解析結果表示部104とから構成されている。
また、海難事故防止システムに必要な情報として、地図情報105と個人情報106が予め定義されており、また、海上に出ている人が身に付ける位置情報通信装置1号機107とサーフボード及びカヤックに設置する位置情報通信装置2号機110とを備える。
【0012】
位置情報通信装置1号機107と位置情報通信装置2号機110とは、GPS衛星111からの電波を受信する位置情報検出部108と通信受信部102へ信号を送信する通信手段部109とから構成されている。
また、本実施形態では、位置情報通信装置1号機107と位置情報通信装置2号機110との間で、信号の送受信を常時行うことで、互いの装置が正常機能しているか通信可能範囲にあるかの検知を可能としている。互いの装置が正常機能しない場合、又は他方の装置が通信可能範囲外にある場合、異常事態として通信手段部109から通信受信部102へ危険信号を発信する。異常事態以外では、通信手段部109から通信受信部102へ正常信号を発信する。
【0013】
また、地図情報表示処理部101は、地図情報105に基づき警戒海域の地図情報を操作端末に表示する。通信受信部102は、位置情報通信装置1号機107と位置情報通信装置2号機110の通信手段部109から信号を受信する。位置情報解析処理部103では、通信受信部102で受信した位置情報を警戒海域の地図情報上に表示する。解析結果表示部104では、個人情報106に基づき通信受信部102で受信する位置情報の信号発信者の特定を行う。
【0014】
以上のように構成された海難事故防止システムの行う海難事故防止処理の概要について説明する。
【0015】
図2は、海難事故防止システムの概要を示すフローチャートである。
まず、地図情報表示処理部101は、警戒海域の地図情報を表示する(ステップS201)。
通信受信部102は、通信手段部109から発信する信号を受信(ステップS202)して、危険信号か否かを判定する(ステップS203)。
位置情報解析処理部103では、受信する信号が危険信号である場合、信号の発信者の位置情報を地図情報上に赤色で表示する(ステップS204)。また、受信する信号が正常信号である場合、信号の発信者の位置情報を地図情報上に緑色で表示する(ステップS205)。
解析結果表示部104では、通信受信部102で受信する信号の発信者を個人情報106を基にして個人名を検索して(ステップS206)、操作画面上に、位置情報通信装置の機器No、利用者名、住所、電話番号の表示を行う(ステップS207)。
【0016】
位置情報通信装置1号機と位置情報通信装置2号機との間の通信は、海上スポーツをする者が、海上に出る際に、互いの通信を開始し、所定の周期で相手の装置が正常に動作していること及び所定の距離内にあることを確認しあう。そして、それぞれが監視装置100に向けて、所定の周期で平常信号又は危険信号を送る。平常信号は、互いの装置が正常に通信できており、かつ所定の距離内にあることを意味する。危険信号については、相手の装置との通信が確立できないレベル、相手の装置の通信が確立できるが所定の距離以上に離れているレベルと、レベルの違いを設けることも可能である。
【0017】
さらに、この危険信号を受け取る監視装置100の側では、二つの位置情報通信装置107,110から送信される信号が、両方とも危険信号である場合、片方から危険信号が送られており他方からは信号が送られてこない場合、などバリエーションがあるので、通信装置が一つのみの場合に比べて、より細やかな対応が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
陸上に設置する海難事故防止システムとして利用可能である。船舶に搭載して海上から監視するシステムとしても応用可能である。
【符号の説明】
【0019】
100 監視装置
101 地図情報表示処理部
102 通信受信部
103 位置情報解析処理部
104 解析結果表示部
105 地図情報
106 個人情報
107 位置情報通信装置1号機
108 位置情報検出部
109 通信手段部
110 位置情報通信装置2号機
111 GPS衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上スポーツをする者に装着する位置情報通信装置1号機と海上スポーツ用具に装着する位置情報通信装置2号機との双方にGPS受信機を有して、それら二つの装置から発信される信号を受信して安全を監視する監視装置とからなる海難事故防止システムであって、
前記位置情報通信装置1号機と前記位置情報通信装置2号機とは、それぞれが、
GPS受信機と、
互いに相手の装置との間で信号の送受信を行う相互通信手段と、
互いに相手の装置が正常機能しているか検知する相互検証手段と、
互いの装置が通信可能範囲にあるか検知する相互距離検出手段と、
前記相互検証手段で相手の装置が正常機能しないと検知した場合又は前記相互距離検出手段で相手の装置が通信可能範囲外にあると検知した場合に、前記GPS受信機で検出した位置情報を含む危険信号を発信する危険信号発信手段と、
前記相互検証手段で相手の装置が正常機能していると検知し、かつ前記相互距離検出手段で相手の装置が通信可能範囲内にあると検知した場合に、前記GPS受信機で検出した位置情報を含む正常信号を発信する正常信号発信手段と
を備え、
前記監視装置は、
監視範囲の地図情報を表示する地図情報処理部と、
前記位置情報通信装置1号機及び2号機から送られる信号を受信する通信受信部と、
該通信受信部が受信した信号に基づいて前記位置情報通信装置1号機及び2号機の位置を解析し、前記地図情報処理部が表示する地図との対応付けを行う位置情報解析処理部と、
前記通信受信部が受信した信号の発信者の個人情報を表示する解析結果表示部と
を備えることを特徴とする海難事故防止システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−31784(P2011−31784A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181142(P2009−181142)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000233055)株式会社日立ソリューションズ (1,610)
【Fターム(参考)】