浸漬型膜分離装置、散気装置の洗浄方法および膜分離方法
【課題】 浄水、下水、し尿、産業廃水等を効率的に浄化処理する際に有用である、簡易な構成の装置でもって散気装置の効率的な洗浄が可能な膜分離方法、それに用いられる浸漬型膜分離装置、さらにそれに用いられる散気装置の洗浄方法を提供する。
【解決手段】 被処理液を貯留した処理槽1内に浸漬設置される分離膜モジュール2と、該分離膜モジュールの下方に配設される散気装置4と、該散気装置へ気体供給管を介して気体を供給する気体供給装置7とを備えた浸漬型膜分離装置であって、前記散気装置4が枝分かれ構造を有していない主管のみからなり、該散気装置の主管4は1以上の折り返し部を有し、該散気装置の主管4の両端部に前記気体供給管5及び6が各々接続し、該気体供給管の両方もしくは片方に弁(開閉弁10及び11)が配されている浸漬型膜分離装置とする。この浸漬型膜分離装置を用い、前記弁の開閉もしくは切替えを行うことにより、気体供給管から散気装置へ気体が供給される方向を変化させることにより、散気装置の洗浄を行う。
【解決手段】 被処理液を貯留した処理槽1内に浸漬設置される分離膜モジュール2と、該分離膜モジュールの下方に配設される散気装置4と、該散気装置へ気体供給管を介して気体を供給する気体供給装置7とを備えた浸漬型膜分離装置であって、前記散気装置4が枝分かれ構造を有していない主管のみからなり、該散気装置の主管4は1以上の折り返し部を有し、該散気装置の主管4の両端部に前記気体供給管5及び6が各々接続し、該気体供給管の両方もしくは片方に弁(開閉弁10及び11)が配されている浸漬型膜分離装置とする。この浸漬型膜分離装置を用い、前記弁の開閉もしくは切替えを行うことにより、気体供給管から散気装置へ気体が供給される方向を変化させることにより、散気装置の洗浄を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水、下水、し尿、産業廃水等の処理などにおいて好適に使用することができる浸漬型膜分離装置と、それに用いられている散気装置の洗浄方法および膜分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水、下水、し尿、産業廃水等を膜によりろ過処理する水処理装置として、図10に示すものがある。図10において、浸漬型膜分離装置は、処理槽1に浸漬し複数枚の平板状ろ過膜(膜エレメント)を平行に配置した分離膜モジュール2と、分離膜モジュール2の透過側に連通した処理水配管3とを有している。また、分離膜モジュール2の下方には散気装置4を配置し、気体供給管5を介してエア供給のためのブロア7を設けている。処理槽1の上方には被処理液供給管8が開口している。そして、ろ過の駆動力として吸引ポンプ9を使用して、処理槽内の被処理液を分離膜モジュール2によってろ過し、ろ液を処理水配管3を介して処理槽外に取り出す。
【0003】
ここで、運転時には、ブロア7から気体供給管5を介して散気装置4にエアを供給し、散気装置4の散気孔から処理槽(曝気槽)1内にエアを噴出させ、噴出するエアのエアリフト作用によって生起する気液混合の上向流をろ過膜の膜面に掃流として作用させて、ろ過を行いつつも膜面に対するケーキ層の付着を抑制する事で安定したろ過運転を行っている。
【0004】
ところで、散気装置4においては、エアが噴出する散気孔から槽内の被処理液が侵入し、被処理液に含まれる固形物が散気孔を塞いでしまったり、エアによって乾燥され散気孔の内側を乾燥物が覆ってしまったりして噴出するエアの減少やムラとなり、上向流による膜面洗浄が十分に行われなくなるという問題があった。
【0005】
そのため、散気孔の閉塞を防止する技術として、散気装置を、散気管主管と、気体吐出穴を有する散気管枝管とを接続した構造とし、主管の断面積と枝管の断面積との関係を特定範囲に規定する装置が提案されている(特許文献1)。しかしながらこの散気装置では、一旦枝管の内部が固形物で閉塞すると、エアが、閉塞されていない他の枝管ばかり通過するようになり、閉塞された枝管を洗浄することが困難という問題があった。これは、給気管の片側のみからエアを供給する場合でも、給気管の両側からエアを供給する場合でも、同様であった。
【0006】
また、散気孔の閉塞を防止する他の技術として、散気装置を、基端側が空気供給源であるブロアに連通し、先端側が散気ドレン管に連通し、散気ドレン管は散気装置の上方位置で排気口として開口しており、さらにドレンバルブを有する装置が提案されている(特許文献2)。しかしながらこの散気装置では、片側のみからしか加圧、給気できず、内部を閉塞した固形物は、一方にしか排出できない。このため、閉塞物が排出口から排出されるまでに、滞留、閉塞した場合には、それ以上洗浄を行うことができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−107791号公報([請求項1]および[図3])
【特許文献2】特開2002−166290号公報([請求項2]および[図1])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、簡易な構成の装置でもって散気装置の効率的な洗浄が可能な浸漬型膜分離装置、散気装置の洗浄方法および膜分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用するものである。
【0010】
すなわち、
(1)被処理液を貯留した処理槽内に浸漬設置される分離膜モジュールと、該分離膜モジュールの下方に配設される散気装置と、該散気装置へ気体供給管を介して気体を供給する気体供給装置とを備えた浸漬型膜分離装置であって、前記散気装置が枝分かれ構造を有していない主管のみからなり、該散気装置の主管は1以上の折り返し部を有し、該散気装置の主管の両端部に前記気体供給管が各々接続し、該気体供給管の両方もしくは片方に弁が配されていることを特徴とする浸漬型膜分離装置。
【0011】
(2)気体供給装置から延びる気体供給管が枝分かれし、該枝分かれ部と散気装置の主管の両端部との間に開閉弁が配されていること、もしくは、枝分かれ部に切替え弁が配されていることを特徴とする前記(1)に記載の浸漬型膜分離装置。
【0012】
(3)弁と気体供給装置との間の気体供給管に、洗浄液を流入させる洗浄液流入口が接続していることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の浸漬型膜分離装置。
【0013】
(4)散気装置と弁との間の気体供給管に、開閉可能な分岐管が接続していることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の浸漬型膜分離装置。
【0014】
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の浸漬型膜分離装置の散気装置を洗浄する際、前記弁の開閉もしくは切替えを行うことにより、気体供給管から散気装置へ気体が供給される方向を変化させることを特徴とする散気装置の洗浄方法。
【0015】
(6)散気装置を洗浄する際、さらに、散気装置内に洗浄液を流入させることを特徴とする前記(5)に記載の散気装置の洗浄方法。
【0016】
(7)前記(5)または(6)に記載の散気装置の洗浄方法を間欠的に実施しながら被処理液の膜分離を行うことを特徴とする膜分離方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、散気装置が枝分かれ構造を有していない主管のみからなり、気体供給管が気体供給装置と散気装置との間における気体供給管に弁を有し、かつ散気装置の主管の両端部と接続しているという簡易な構成の装置でありながら、散気管を洗浄させる際に、散気装置への気体供給の方向を変化させることができ、散気装置内部に存在する固形物を容易に取り除くことができ、さらに、散気装置からの気体噴出の偏りを生じさせることなく、膜分離装置の運転を長期間安定して継続することができる。
【0018】
また、気体供給管を気体供給装置と弁との間で枝分かれ構造とすることにより、少ない台数の気体供給装置で散気装置への気体供給方向を切り替えることができ、装置構成を簡素化できる。
【0019】
さらに、散気装置内に洗浄液を流入させることで、散気装置内部に存在する固形物をさらに容易に取り除くことができ、散気装置からの気体噴出の偏りを生じさせることなく膜分離装置の運転をさらに長期間安定して継続することができる。
【0020】
さらにまた、気体供給管が散気装置と弁との間に分岐管を開閉可能に配することにより、散気管内の固形物を散気孔のみならず分岐管からも排出することができ、特に効果的な洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る浸漬型膜分離装置の一実施態様を示す概略フロー図である。
【図2】本発明に係る浸漬型膜分離装置の別の一実施態様を示す概略フロー図である。
【図3】本発明に係る浸漬型膜分離装置のさらに別の一実施態様を示す概略フロー図である。
【図4】本発明に係る浸漬型膜分離装置で用いる散気装置の一実施態様を示す概略図である。
【図5】本発明に係る浸漬型膜分離装置で用いる散気装置の別の一実施態様を示す概略図である。
【図6】本発明に係る浸漬型膜分離装置で用いる散気装置のさらに別の一実施態様を示す概略図である。
【図7】実施例1で用いた散気装置を示す概略図である。
【図8】実施例1で用いた浸漬型膜分離装置を示す概略フロー図である。
【図9】実施例5で用いた浸漬型膜分離装置を示す概略フロー図である。
【図10】従来の浸漬型膜分離装置の一実施態様を示す概略フロー図である。
【図11】比較例1で用いた浸漬型膜分離装置を示す概略フロー図である。
【図12】比較例1で用いた散気装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明における浸漬型膜分離装置を、図1、図2及び図3等に示す実施態様に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る浸漬型膜分離装置の一実施態様を示す概略フロー図である。
【0024】
図1において、浸漬型膜分離装置は、処理槽1に浸漬され複数枚の平板状ろ過膜(膜エレメント)を平行に配置した分離膜モジュール2と、分離膜モジュール2の透過側に連通した処理水配管3とを有している。また、分離膜モジュール2の下方には、枝分かれ構造を有していない主管のみからなる散気装置4が配置されている。散気装置4の主管の両端部にはそれぞれ気体供給管5および6が接続されており、気体供給管5および6には、それぞれ開閉弁(バルブ)10および11が配設され、枝分かれ部23で1本の供給管となり、気体供給装置であるブロア7と接続されている。処理槽1の上方には被処理液供給管8が開口している。そして、処理水配管3は、吸引ポンプ9と接続されている。また、ブロア7と開閉弁10及び11との間における気体供給管には、枝分かれ構造(枝分かれ部23)が設けられている。枝分かれ構造があることで、少ない台数のブロアによって、散気装置への気体の供給方向を切り替えることができる。
【0025】
気体供給管5および6内部にそれぞれ設けられる開閉弁(バルブ)10および11は、それら気体供給管の内部の気体の流れの方向や流量を制御するための開閉ができれば、開閉弁でも切替弁でも特に問題はない。例えば、図2に示すように、バルブ10およびバルブ11の代わりに、気体供給管5および6の枝分かれ構造部分(枝分かれ部23)に、3方コック13を設けることでもよい。また図3のような構成であれば、バルブを逆止弁とすることで、切替え機能を不要とできるため、好ましい。
【0026】
別の実施態様を示す図3では、散気装置4の主管の両端側に気体供給管5および6が接続してあり、それぞれの気体供給管がバルブ10および11を介して気体供給装置である2台のブロア7と接続されている。気体の供給方向は、一方のブロアを停止させたり、バルブを閉止することで、切り替えられる。このように複数台のブロアを用いても気体の供給方向を切り替えて運転することは可能である。
【0027】
さらに、図2に示すように、気体供給管5および6の枝分かれ部23とブロア7との間に、洗浄液を流入させる洗浄液注入口14が接続していることも、好適に用いられる。洗浄液注入口14としては、洗浄液を注入しないときに気体が漏れないように、枝バルブが好適に用いられる。
【0028】
本発明で用いる散気装置4は、枝分かれ構造を有していない主管のみからなっている。散気装置4は、その形状を処理槽1の大きさに応じて、あるいは分離膜モジュール2の大きさに応じて形成することが好ましく、例えば図4に示すように一字状に形成しても良く、図5に示すようにU字状に形成しても良く、図6に示すようにつづら折れ状に形成しても良い。散気部の構造は、処理槽1内に空気を供給できれば特に問題はなく、主管に1〜10mm径程度の散気孔12を多数設けたものや、主管の周りに弾性体を巻き付け、弾性体にスリットを多数設け、空気圧で弾性体がふくらむことによって、スリットから微細な気泡が多数発生できるようにしたものなどが、好ましく用いられる。また、散気孔12やスリットの位置は、主管の上側に開いていても、下側に開いていても、さらには全周部に開いていても特に問題はないが、主管の下側に開いている方が、散気孔やスリットから槽内の被処理液が侵入しにくく、特に好ましい。
【0029】
ブロア7は、散気装置4に気体を供給することができれば良く、コンプレッサー、ファン、ボンベなども用いることができる。
【0030】
処理槽1は、廃水および活性汚泥混合液を貯えることができれば特に問題はなく、コンクリート槽、繊維強化プラスチック槽などが好ましく用いられる。
【0031】
分離膜モジュール2は、複数枚の平板状ろ過膜(膜エレメント)を平行に配置してなる。この膜エレメントは、ろ過膜の取り扱い性や物理的耐久性を向上させるために、たとえばフレームの両面に濾過水流路材を挟んで濾過膜を接着した平膜エレメント構造をしている。この構造は特に限定されるものではなく、中空糸膜を用いたエレメントであってもかまわないが、平膜エレメント構造は、膜面に平行な流速を与えた場合の剪断力による汚れの除去効果が高いことから、本発明に好適に用いられる。なお、本発明において、前記平膜エレメント構造には、回転平膜構造も含まれる。
【0032】
ろ過膜の膜構造としては、多孔質膜や、多孔質膜に機能層を複合化した複合膜などが挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの膜の具体例としては、ポリアクリロニトリル多孔質膜、ポリイミド多孔質膜、ポリエーテルスルホン多孔質膜、ポリフェニレンスルフィドスルホン多孔質膜、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜、ポリフッ化ビニリデン多孔質膜、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜等の多孔質膜が挙げられるが、ポリフッ化ビニリデン多孔質膜やポリテトラフルオロエチレン多孔質膜が耐薬品性が高いため、特に好ましい。さらに、これら多孔質膜に機能層として架橋型シリコーン、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリルブタジエン、エチレンプロピレンラバー、ネオプレンゴム等のゴム状高分子を複合化した複合膜を挙げることができる。
【0033】
ろ過膜の種類としては、活性汚泥混合液から処理水を膜分離できるほど小さい細孔を有していれば特に問題はないが、あまりに細孔径が小さすぎてもろ過圧力が高くなりすぎて好ましくはなく、マイクロフィルトレーション(MF)膜や、ウルトラフィルトレーション(UF)膜などが好ましく用いられる。
【0034】
吸引ポンプ9は、処理水配管3内を減圧状態にすることができれば特に問題はない。吸引ポンプ9の代わりに、サイホンによる水頭圧差を用いることもできる。
【0035】
上述の浸漬型膜分離装置において、散気装置の洗浄方法は次のように行われる。すなわち、バルブ10を開、バルブ11を閉とすることにより、散気装置4の気体供給管5側からのみ気体が供給されるようにし、散気装置4内部に存在する固形物を気体供給管6側に押し出す。次にバルブ10を閉、バルブ11を開とすることにより、散気装置4の気体供給管6側からのみ気体が供給されるようにし、上述とは逆に散気装置4内部に存在する固形物を気体供給管5側に押し出す。これらを繰り返すことにより、散気装置4内部に存在していた固形物には逆方向からのエア圧力が交互にかかり、散気装置4内での往復運動を生じて散気装置4の内壁で破砕され、散気装置4外へと移送されて排出され、散気装置が洗浄される。この時のバルブ10および11の開閉を繰り返す周期および回数は特に限定されるものではないが、固形物の破砕効果を高めるために、0.1秒〜10秒周期で3〜10回繰り返すことが好ましい。
【0036】
バルブ10および11は、一方を完全に閉、もう一方を完全に開とする上記した方法以外でも、バルブ10および11の開閉度に差を設けることによって気体供給管5と6の間に圧力差を設け、これにより散気装置4への気体供給の方向を変えることによる方法でもって、上述と同様の効果を得ることでもよい。
【0037】
また、バルブ10および11による開閉の代わりに、図2に示す三方コック13を用いてエア流れを切替えることでも、散気装置4への気体供給の方向を変えることができ、上述と同様の効果を得ることができる。
【0038】
さらに、図2に示す洗浄液流入口14を通じて洗浄液を散気装置4内に流入させることと、上述のように散気装置4への気体供給の方向を変えることを併用することで、固形物を湿潤化することができ、さらに固形物の破砕効果を高めることができ、好ましい。洗浄液としては、水道水、被処理水、処理水や、それらに酸、アルカリ、酸化剤を溶解させたものを、好適に用いることができる。酸としては塩酸、硫酸、シュウ酸、クエン酸などを、アルカリとしては水酸化ナトリウムなどを、酸化剤としては過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウムなどを、好適に用いることができる。洗浄液の流入方法としては、水道水の蛇口と洗浄液流入口14とをホースで接続し、蛇口をひねることで水道水を流入させたり、洗浄液流入口14よりも高い位置に設けた洗浄液タンクと洗浄液流入口14とを配管で接続し、自然流下で洗浄液を流入させたり、洗浄液タンクと洗浄液流入口14とをポンプを介して配管で接続し、ポンプの駆動圧を用いて洗浄液を流入させたりすることができるが、水道水の蛇口と洗浄液流入口14とをホースで接続し、水道水を流入させる方法が簡便で、洗浄液も安価であることから、好ましく用いられる。
【0039】
図9に示す実施態様のように、散気装置4の主管の両端部とバルブ10および11との間の気体供給管5および6に、分岐管21がバルブ22を介して接続されていると、散気装置4内の固形物がある程度細かく破砕できた時にエアによって気体供給管5内へ押し出され、その破砕物が分岐管を通して系外に排出され易くなる。この場合、分岐管21用のバルブ22は、開閉弁10を閉にした時に開とすればよい。
【0040】
また、膜分離方法として、間欠的に上述の散気装置の洗浄方法を実施しながら被処理液の膜分離を行うことで、散気装置内部の閉塞防止を安定に行うことができ、散気装置からの気体噴出の偏りを生じさせることなく、膜分離装置の運転を長期間安定して継続することができ、好ましい。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
ポリエステル不織布にポリフッ化ビニリデン膜がコーティングされた複合平膜(細孔径0.08μm、厚さ200μm)をフレームの両面に貼り付けた膜エレメント(縦1,608mm、幅515mm、有効膜面積1.4m2)50枚を、隣り合う膜エレメント同士の空隙が7mmとなるように平行に配置して分離膜モジュール2を作製した。分離膜モジュール2の下部に、図7に示すようにU字状に形成した散気装置4を設置した。
【0042】
散気装置4は、外径42.7mmφ、厚さ3mmのステンレス製パイプを、図7のようにU字状に形成したものである。散気孔12を設けているU字状のお互いに平行に形成した管同士の中心距離は230mm、散気孔12は孔径6mmφで、片側の管に2箇所ずつ17組、計68箇所設けた。1組の散気孔は、中心角40度でお互いに管の円周方向に離れた箇所に設け、散気孔の隣合った組同士の中心距離(散気孔のピッチ)は42mmとした。散気装置4は散気孔側を下側になるようにし、分離膜モジュール2および散気装置4を処理槽1内に設置し、浸漬型膜分離装置とした。
【0043】
この浸漬型膜分離装置の構成を、図8に示す。処理槽1内の固形分濃度(MLSS)は12,000mg/Lとし、吸引ポンプ9により、膜ろ過流束(LV)を0.5m/d、吸引/停止間隔を8分間/2分間の間欠運転にて6カ月間吸引ろ過を実施し、ろ液を処理槽外に排出した。散気条件は、通常はバルブ10および11を開、洗浄液流入口14を閉にし、ブロア7を用いて空気を750L/minの条件で、散気装置4の両側から供給した。散気管の洗浄時には、水道水の蛇口と洗浄液流入口14とをホースで接続し、ブロア7を止め、水道水蛇口を開とし、洗浄液流入口14を開にし、水道水10Lを散気装置4に供給した後、洗浄液流入口14を閉にし、バルブ10を閉にして、ブロア7によるエア供給を再開し空気を750L/minの条件で、散気装置4の気体供給管6側からのみ空気を3秒間供給し、続いてバルブ10を開にするのと同時にバルブ11を閉にし、散気装置4の気体供給管5側からのみ空気を3秒間供給するエア交互供給を5回繰り返すという散気装置の洗浄方法を、1週間に1回行った。
【0044】
本実施例において、6カ月後に散気装置の散気孔を確認したところ、散気孔の閉塞は認められなかった。
【0045】
(実施例2)
洗浄液として、水道水10Lを用いた代わりに、有効塩素濃度5,000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を10L用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で散気装置の洗浄を行った。ここで、洗浄液流入口14よりも1m高い位置に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を入れた洗浄液タンクを設け、洗浄液タンクと洗浄液流入口14とを配管で接続し、自然流下で次亜塩素酸ナトリウム水溶液を散気装置4内に供給した。本実施例において、6カ月後に散気装置の散気孔を確認したところ、散気孔の閉塞は認められなかった。
【0046】
(実施例3)
散気装置4を散気孔側を上側になるように設置したこと以外は、実施例1と同様の方法で散気装置の洗浄を行った。本実施例において、6カ月後に散気装置の散気孔を確認したところ、散気孔1箇所の閉塞が認められた。
【0047】
(実施例4)
洗浄液を散気装置4内に供給しなかったこと以外は実施例1と同様に散気装置の洗浄方法を行った。本実施例において、6カ月後に散気装置の散気孔を確認したところ、散気孔2箇所の閉塞が認められた。
【0048】
(実施例5)
図9のように気体供給管に分岐管を設けた装置構成とし、実施例4の散気装置の洗浄方法を時間を変えて実施した。すなわち、散気装置4の気体供給管6側からのみ空気を3秒間供給し、続いてバルブ10を開にするのと同時にバルブ11を閉にし、散気装置4の気体供給管5側からのみ空気を3秒間供給するエア交互供給を5回繰り返した後に、バルブ10を開、バルブ11を閉の状態で分岐管のバルブ22を開として、散気装置内の固形物を15秒間排出する洗浄方法を、1週間に1回行った。本実施例において、6カ月後に散気装置の散気孔を確認したところ、散気孔の閉塞は認められなかった。
【0049】
(比較例1)
分離膜モジュール2に関しては、膜エレメントの枚数を25枚にしたこと以外は実施例1と同じ分離膜モジュールを用いた。散気装置4には、図12に示すように、2本の主管15および16と、散気孔12を有する枝管17とが接続された構造の散気装置を用いた。
【0050】
散気装置の主管15および16は、外径42.7mmφ、厚さ3mmのステンレス製パイプ、枝管17は、外径27.2mmφ、厚さ3mmのステンレス製パイプを4本用いた。隣り合った枝管同士の中心距離は114.7mm、枝管1本に10箇所ずつ、計40箇所の散気孔12を設けた。散気孔12は孔径4mmφで、隣り合った散気孔同士の中心距離(ピッチ)は36mmとした。気体供給管5および6を、図12に示すように散気装置のそれぞれの主管15および16の最も離れた位置に接続した。散気装置4は散気孔側を下側になるようにし、分離膜モジュール2および散気装置4を処理槽1内に設置し、浸漬型膜分離装置とした。
【0051】
この浸漬型膜分離装置の構成を、図11に示す。処理槽1内の固形分濃度(MLSS)は12,000mg/Lとし、吸引ポンプ9により、膜ろ過流束(LV)を0.5m/d、吸引/停止間隔を8分間/2分間の間欠運転にて6カ月間吸引ろ過を実施し、ろ液を処理槽外に排出した。散気条件は、ブロア7を用いて空気を375L/minの条件で、散気装置4の両側から供給した。本比較例において、6カ月後に散気装置の散気孔を確認したところ、4本ある枝管のうち、内側の2本で、それぞれ散気孔が7箇所と3箇所、計10箇所の閉塞が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、浄水、下水、し尿、産業廃水等を浄化処理するための膜分離方法、それに用いられる浸漬型膜分離装置、さらにそれに用いられる散気装置の洗浄方法に、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1:処理槽
2:分離膜モジュール
3:処理水配管
4:散気装置
5、6:気体供給管
7:ブロア
8:被処理液供給管
9:吸引ポンプ
10、11:バルブ(開閉弁)
12:散気孔
13:3方コック(切り替え弁)
14:洗浄液流入口
15、16:主管
17:枝管
21:分岐管
22:バルブ
23:枝分かれ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水、下水、し尿、産業廃水等の処理などにおいて好適に使用することができる浸漬型膜分離装置と、それに用いられている散気装置の洗浄方法および膜分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水、下水、し尿、産業廃水等を膜によりろ過処理する水処理装置として、図10に示すものがある。図10において、浸漬型膜分離装置は、処理槽1に浸漬し複数枚の平板状ろ過膜(膜エレメント)を平行に配置した分離膜モジュール2と、分離膜モジュール2の透過側に連通した処理水配管3とを有している。また、分離膜モジュール2の下方には散気装置4を配置し、気体供給管5を介してエア供給のためのブロア7を設けている。処理槽1の上方には被処理液供給管8が開口している。そして、ろ過の駆動力として吸引ポンプ9を使用して、処理槽内の被処理液を分離膜モジュール2によってろ過し、ろ液を処理水配管3を介して処理槽外に取り出す。
【0003】
ここで、運転時には、ブロア7から気体供給管5を介して散気装置4にエアを供給し、散気装置4の散気孔から処理槽(曝気槽)1内にエアを噴出させ、噴出するエアのエアリフト作用によって生起する気液混合の上向流をろ過膜の膜面に掃流として作用させて、ろ過を行いつつも膜面に対するケーキ層の付着を抑制する事で安定したろ過運転を行っている。
【0004】
ところで、散気装置4においては、エアが噴出する散気孔から槽内の被処理液が侵入し、被処理液に含まれる固形物が散気孔を塞いでしまったり、エアによって乾燥され散気孔の内側を乾燥物が覆ってしまったりして噴出するエアの減少やムラとなり、上向流による膜面洗浄が十分に行われなくなるという問題があった。
【0005】
そのため、散気孔の閉塞を防止する技術として、散気装置を、散気管主管と、気体吐出穴を有する散気管枝管とを接続した構造とし、主管の断面積と枝管の断面積との関係を特定範囲に規定する装置が提案されている(特許文献1)。しかしながらこの散気装置では、一旦枝管の内部が固形物で閉塞すると、エアが、閉塞されていない他の枝管ばかり通過するようになり、閉塞された枝管を洗浄することが困難という問題があった。これは、給気管の片側のみからエアを供給する場合でも、給気管の両側からエアを供給する場合でも、同様であった。
【0006】
また、散気孔の閉塞を防止する他の技術として、散気装置を、基端側が空気供給源であるブロアに連通し、先端側が散気ドレン管に連通し、散気ドレン管は散気装置の上方位置で排気口として開口しており、さらにドレンバルブを有する装置が提案されている(特許文献2)。しかしながらこの散気装置では、片側のみからしか加圧、給気できず、内部を閉塞した固形物は、一方にしか排出できない。このため、閉塞物が排出口から排出されるまでに、滞留、閉塞した場合には、それ以上洗浄を行うことができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−107791号公報([請求項1]および[図3])
【特許文献2】特開2002−166290号公報([請求項2]および[図1])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、簡易な構成の装置でもって散気装置の効率的な洗浄が可能な浸漬型膜分離装置、散気装置の洗浄方法および膜分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用するものである。
【0010】
すなわち、
(1)被処理液を貯留した処理槽内に浸漬設置される分離膜モジュールと、該分離膜モジュールの下方に配設される散気装置と、該散気装置へ気体供給管を介して気体を供給する気体供給装置とを備えた浸漬型膜分離装置であって、前記散気装置が枝分かれ構造を有していない主管のみからなり、該散気装置の主管は1以上の折り返し部を有し、該散気装置の主管の両端部に前記気体供給管が各々接続し、該気体供給管の両方もしくは片方に弁が配されていることを特徴とする浸漬型膜分離装置。
【0011】
(2)気体供給装置から延びる気体供給管が枝分かれし、該枝分かれ部と散気装置の主管の両端部との間に開閉弁が配されていること、もしくは、枝分かれ部に切替え弁が配されていることを特徴とする前記(1)に記載の浸漬型膜分離装置。
【0012】
(3)弁と気体供給装置との間の気体供給管に、洗浄液を流入させる洗浄液流入口が接続していることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の浸漬型膜分離装置。
【0013】
(4)散気装置と弁との間の気体供給管に、開閉可能な分岐管が接続していることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の浸漬型膜分離装置。
【0014】
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の浸漬型膜分離装置の散気装置を洗浄する際、前記弁の開閉もしくは切替えを行うことにより、気体供給管から散気装置へ気体が供給される方向を変化させることを特徴とする散気装置の洗浄方法。
【0015】
(6)散気装置を洗浄する際、さらに、散気装置内に洗浄液を流入させることを特徴とする前記(5)に記載の散気装置の洗浄方法。
【0016】
(7)前記(5)または(6)に記載の散気装置の洗浄方法を間欠的に実施しながら被処理液の膜分離を行うことを特徴とする膜分離方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、散気装置が枝分かれ構造を有していない主管のみからなり、気体供給管が気体供給装置と散気装置との間における気体供給管に弁を有し、かつ散気装置の主管の両端部と接続しているという簡易な構成の装置でありながら、散気管を洗浄させる際に、散気装置への気体供給の方向を変化させることができ、散気装置内部に存在する固形物を容易に取り除くことができ、さらに、散気装置からの気体噴出の偏りを生じさせることなく、膜分離装置の運転を長期間安定して継続することができる。
【0018】
また、気体供給管を気体供給装置と弁との間で枝分かれ構造とすることにより、少ない台数の気体供給装置で散気装置への気体供給方向を切り替えることができ、装置構成を簡素化できる。
【0019】
さらに、散気装置内に洗浄液を流入させることで、散気装置内部に存在する固形物をさらに容易に取り除くことができ、散気装置からの気体噴出の偏りを生じさせることなく膜分離装置の運転をさらに長期間安定して継続することができる。
【0020】
さらにまた、気体供給管が散気装置と弁との間に分岐管を開閉可能に配することにより、散気管内の固形物を散気孔のみならず分岐管からも排出することができ、特に効果的な洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る浸漬型膜分離装置の一実施態様を示す概略フロー図である。
【図2】本発明に係る浸漬型膜分離装置の別の一実施態様を示す概略フロー図である。
【図3】本発明に係る浸漬型膜分離装置のさらに別の一実施態様を示す概略フロー図である。
【図4】本発明に係る浸漬型膜分離装置で用いる散気装置の一実施態様を示す概略図である。
【図5】本発明に係る浸漬型膜分離装置で用いる散気装置の別の一実施態様を示す概略図である。
【図6】本発明に係る浸漬型膜分離装置で用いる散気装置のさらに別の一実施態様を示す概略図である。
【図7】実施例1で用いた散気装置を示す概略図である。
【図8】実施例1で用いた浸漬型膜分離装置を示す概略フロー図である。
【図9】実施例5で用いた浸漬型膜分離装置を示す概略フロー図である。
【図10】従来の浸漬型膜分離装置の一実施態様を示す概略フロー図である。
【図11】比較例1で用いた浸漬型膜分離装置を示す概略フロー図である。
【図12】比較例1で用いた散気装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明における浸漬型膜分離装置を、図1、図2及び図3等に示す実施態様に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る浸漬型膜分離装置の一実施態様を示す概略フロー図である。
【0024】
図1において、浸漬型膜分離装置は、処理槽1に浸漬され複数枚の平板状ろ過膜(膜エレメント)を平行に配置した分離膜モジュール2と、分離膜モジュール2の透過側に連通した処理水配管3とを有している。また、分離膜モジュール2の下方には、枝分かれ構造を有していない主管のみからなる散気装置4が配置されている。散気装置4の主管の両端部にはそれぞれ気体供給管5および6が接続されており、気体供給管5および6には、それぞれ開閉弁(バルブ)10および11が配設され、枝分かれ部23で1本の供給管となり、気体供給装置であるブロア7と接続されている。処理槽1の上方には被処理液供給管8が開口している。そして、処理水配管3は、吸引ポンプ9と接続されている。また、ブロア7と開閉弁10及び11との間における気体供給管には、枝分かれ構造(枝分かれ部23)が設けられている。枝分かれ構造があることで、少ない台数のブロアによって、散気装置への気体の供給方向を切り替えることができる。
【0025】
気体供給管5および6内部にそれぞれ設けられる開閉弁(バルブ)10および11は、それら気体供給管の内部の気体の流れの方向や流量を制御するための開閉ができれば、開閉弁でも切替弁でも特に問題はない。例えば、図2に示すように、バルブ10およびバルブ11の代わりに、気体供給管5および6の枝分かれ構造部分(枝分かれ部23)に、3方コック13を設けることでもよい。また図3のような構成であれば、バルブを逆止弁とすることで、切替え機能を不要とできるため、好ましい。
【0026】
別の実施態様を示す図3では、散気装置4の主管の両端側に気体供給管5および6が接続してあり、それぞれの気体供給管がバルブ10および11を介して気体供給装置である2台のブロア7と接続されている。気体の供給方向は、一方のブロアを停止させたり、バルブを閉止することで、切り替えられる。このように複数台のブロアを用いても気体の供給方向を切り替えて運転することは可能である。
【0027】
さらに、図2に示すように、気体供給管5および6の枝分かれ部23とブロア7との間に、洗浄液を流入させる洗浄液注入口14が接続していることも、好適に用いられる。洗浄液注入口14としては、洗浄液を注入しないときに気体が漏れないように、枝バルブが好適に用いられる。
【0028】
本発明で用いる散気装置4は、枝分かれ構造を有していない主管のみからなっている。散気装置4は、その形状を処理槽1の大きさに応じて、あるいは分離膜モジュール2の大きさに応じて形成することが好ましく、例えば図4に示すように一字状に形成しても良く、図5に示すようにU字状に形成しても良く、図6に示すようにつづら折れ状に形成しても良い。散気部の構造は、処理槽1内に空気を供給できれば特に問題はなく、主管に1〜10mm径程度の散気孔12を多数設けたものや、主管の周りに弾性体を巻き付け、弾性体にスリットを多数設け、空気圧で弾性体がふくらむことによって、スリットから微細な気泡が多数発生できるようにしたものなどが、好ましく用いられる。また、散気孔12やスリットの位置は、主管の上側に開いていても、下側に開いていても、さらには全周部に開いていても特に問題はないが、主管の下側に開いている方が、散気孔やスリットから槽内の被処理液が侵入しにくく、特に好ましい。
【0029】
ブロア7は、散気装置4に気体を供給することができれば良く、コンプレッサー、ファン、ボンベなども用いることができる。
【0030】
処理槽1は、廃水および活性汚泥混合液を貯えることができれば特に問題はなく、コンクリート槽、繊維強化プラスチック槽などが好ましく用いられる。
【0031】
分離膜モジュール2は、複数枚の平板状ろ過膜(膜エレメント)を平行に配置してなる。この膜エレメントは、ろ過膜の取り扱い性や物理的耐久性を向上させるために、たとえばフレームの両面に濾過水流路材を挟んで濾過膜を接着した平膜エレメント構造をしている。この構造は特に限定されるものではなく、中空糸膜を用いたエレメントであってもかまわないが、平膜エレメント構造は、膜面に平行な流速を与えた場合の剪断力による汚れの除去効果が高いことから、本発明に好適に用いられる。なお、本発明において、前記平膜エレメント構造には、回転平膜構造も含まれる。
【0032】
ろ過膜の膜構造としては、多孔質膜や、多孔質膜に機能層を複合化した複合膜などが挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの膜の具体例としては、ポリアクリロニトリル多孔質膜、ポリイミド多孔質膜、ポリエーテルスルホン多孔質膜、ポリフェニレンスルフィドスルホン多孔質膜、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜、ポリフッ化ビニリデン多孔質膜、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜等の多孔質膜が挙げられるが、ポリフッ化ビニリデン多孔質膜やポリテトラフルオロエチレン多孔質膜が耐薬品性が高いため、特に好ましい。さらに、これら多孔質膜に機能層として架橋型シリコーン、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリルブタジエン、エチレンプロピレンラバー、ネオプレンゴム等のゴム状高分子を複合化した複合膜を挙げることができる。
【0033】
ろ過膜の種類としては、活性汚泥混合液から処理水を膜分離できるほど小さい細孔を有していれば特に問題はないが、あまりに細孔径が小さすぎてもろ過圧力が高くなりすぎて好ましくはなく、マイクロフィルトレーション(MF)膜や、ウルトラフィルトレーション(UF)膜などが好ましく用いられる。
【0034】
吸引ポンプ9は、処理水配管3内を減圧状態にすることができれば特に問題はない。吸引ポンプ9の代わりに、サイホンによる水頭圧差を用いることもできる。
【0035】
上述の浸漬型膜分離装置において、散気装置の洗浄方法は次のように行われる。すなわち、バルブ10を開、バルブ11を閉とすることにより、散気装置4の気体供給管5側からのみ気体が供給されるようにし、散気装置4内部に存在する固形物を気体供給管6側に押し出す。次にバルブ10を閉、バルブ11を開とすることにより、散気装置4の気体供給管6側からのみ気体が供給されるようにし、上述とは逆に散気装置4内部に存在する固形物を気体供給管5側に押し出す。これらを繰り返すことにより、散気装置4内部に存在していた固形物には逆方向からのエア圧力が交互にかかり、散気装置4内での往復運動を生じて散気装置4の内壁で破砕され、散気装置4外へと移送されて排出され、散気装置が洗浄される。この時のバルブ10および11の開閉を繰り返す周期および回数は特に限定されるものではないが、固形物の破砕効果を高めるために、0.1秒〜10秒周期で3〜10回繰り返すことが好ましい。
【0036】
バルブ10および11は、一方を完全に閉、もう一方を完全に開とする上記した方法以外でも、バルブ10および11の開閉度に差を設けることによって気体供給管5と6の間に圧力差を設け、これにより散気装置4への気体供給の方向を変えることによる方法でもって、上述と同様の効果を得ることでもよい。
【0037】
また、バルブ10および11による開閉の代わりに、図2に示す三方コック13を用いてエア流れを切替えることでも、散気装置4への気体供給の方向を変えることができ、上述と同様の効果を得ることができる。
【0038】
さらに、図2に示す洗浄液流入口14を通じて洗浄液を散気装置4内に流入させることと、上述のように散気装置4への気体供給の方向を変えることを併用することで、固形物を湿潤化することができ、さらに固形物の破砕効果を高めることができ、好ましい。洗浄液としては、水道水、被処理水、処理水や、それらに酸、アルカリ、酸化剤を溶解させたものを、好適に用いることができる。酸としては塩酸、硫酸、シュウ酸、クエン酸などを、アルカリとしては水酸化ナトリウムなどを、酸化剤としては過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウムなどを、好適に用いることができる。洗浄液の流入方法としては、水道水の蛇口と洗浄液流入口14とをホースで接続し、蛇口をひねることで水道水を流入させたり、洗浄液流入口14よりも高い位置に設けた洗浄液タンクと洗浄液流入口14とを配管で接続し、自然流下で洗浄液を流入させたり、洗浄液タンクと洗浄液流入口14とをポンプを介して配管で接続し、ポンプの駆動圧を用いて洗浄液を流入させたりすることができるが、水道水の蛇口と洗浄液流入口14とをホースで接続し、水道水を流入させる方法が簡便で、洗浄液も安価であることから、好ましく用いられる。
【0039】
図9に示す実施態様のように、散気装置4の主管の両端部とバルブ10および11との間の気体供給管5および6に、分岐管21がバルブ22を介して接続されていると、散気装置4内の固形物がある程度細かく破砕できた時にエアによって気体供給管5内へ押し出され、その破砕物が分岐管を通して系外に排出され易くなる。この場合、分岐管21用のバルブ22は、開閉弁10を閉にした時に開とすればよい。
【0040】
また、膜分離方法として、間欠的に上述の散気装置の洗浄方法を実施しながら被処理液の膜分離を行うことで、散気装置内部の閉塞防止を安定に行うことができ、散気装置からの気体噴出の偏りを生じさせることなく、膜分離装置の運転を長期間安定して継続することができ、好ましい。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
ポリエステル不織布にポリフッ化ビニリデン膜がコーティングされた複合平膜(細孔径0.08μm、厚さ200μm)をフレームの両面に貼り付けた膜エレメント(縦1,608mm、幅515mm、有効膜面積1.4m2)50枚を、隣り合う膜エレメント同士の空隙が7mmとなるように平行に配置して分離膜モジュール2を作製した。分離膜モジュール2の下部に、図7に示すようにU字状に形成した散気装置4を設置した。
【0042】
散気装置4は、外径42.7mmφ、厚さ3mmのステンレス製パイプを、図7のようにU字状に形成したものである。散気孔12を設けているU字状のお互いに平行に形成した管同士の中心距離は230mm、散気孔12は孔径6mmφで、片側の管に2箇所ずつ17組、計68箇所設けた。1組の散気孔は、中心角40度でお互いに管の円周方向に離れた箇所に設け、散気孔の隣合った組同士の中心距離(散気孔のピッチ)は42mmとした。散気装置4は散気孔側を下側になるようにし、分離膜モジュール2および散気装置4を処理槽1内に設置し、浸漬型膜分離装置とした。
【0043】
この浸漬型膜分離装置の構成を、図8に示す。処理槽1内の固形分濃度(MLSS)は12,000mg/Lとし、吸引ポンプ9により、膜ろ過流束(LV)を0.5m/d、吸引/停止間隔を8分間/2分間の間欠運転にて6カ月間吸引ろ過を実施し、ろ液を処理槽外に排出した。散気条件は、通常はバルブ10および11を開、洗浄液流入口14を閉にし、ブロア7を用いて空気を750L/minの条件で、散気装置4の両側から供給した。散気管の洗浄時には、水道水の蛇口と洗浄液流入口14とをホースで接続し、ブロア7を止め、水道水蛇口を開とし、洗浄液流入口14を開にし、水道水10Lを散気装置4に供給した後、洗浄液流入口14を閉にし、バルブ10を閉にして、ブロア7によるエア供給を再開し空気を750L/minの条件で、散気装置4の気体供給管6側からのみ空気を3秒間供給し、続いてバルブ10を開にするのと同時にバルブ11を閉にし、散気装置4の気体供給管5側からのみ空気を3秒間供給するエア交互供給を5回繰り返すという散気装置の洗浄方法を、1週間に1回行った。
【0044】
本実施例において、6カ月後に散気装置の散気孔を確認したところ、散気孔の閉塞は認められなかった。
【0045】
(実施例2)
洗浄液として、水道水10Lを用いた代わりに、有効塩素濃度5,000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を10L用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で散気装置の洗浄を行った。ここで、洗浄液流入口14よりも1m高い位置に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を入れた洗浄液タンクを設け、洗浄液タンクと洗浄液流入口14とを配管で接続し、自然流下で次亜塩素酸ナトリウム水溶液を散気装置4内に供給した。本実施例において、6カ月後に散気装置の散気孔を確認したところ、散気孔の閉塞は認められなかった。
【0046】
(実施例3)
散気装置4を散気孔側を上側になるように設置したこと以外は、実施例1と同様の方法で散気装置の洗浄を行った。本実施例において、6カ月後に散気装置の散気孔を確認したところ、散気孔1箇所の閉塞が認められた。
【0047】
(実施例4)
洗浄液を散気装置4内に供給しなかったこと以外は実施例1と同様に散気装置の洗浄方法を行った。本実施例において、6カ月後に散気装置の散気孔を確認したところ、散気孔2箇所の閉塞が認められた。
【0048】
(実施例5)
図9のように気体供給管に分岐管を設けた装置構成とし、実施例4の散気装置の洗浄方法を時間を変えて実施した。すなわち、散気装置4の気体供給管6側からのみ空気を3秒間供給し、続いてバルブ10を開にするのと同時にバルブ11を閉にし、散気装置4の気体供給管5側からのみ空気を3秒間供給するエア交互供給を5回繰り返した後に、バルブ10を開、バルブ11を閉の状態で分岐管のバルブ22を開として、散気装置内の固形物を15秒間排出する洗浄方法を、1週間に1回行った。本実施例において、6カ月後に散気装置の散気孔を確認したところ、散気孔の閉塞は認められなかった。
【0049】
(比較例1)
分離膜モジュール2に関しては、膜エレメントの枚数を25枚にしたこと以外は実施例1と同じ分離膜モジュールを用いた。散気装置4には、図12に示すように、2本の主管15および16と、散気孔12を有する枝管17とが接続された構造の散気装置を用いた。
【0050】
散気装置の主管15および16は、外径42.7mmφ、厚さ3mmのステンレス製パイプ、枝管17は、外径27.2mmφ、厚さ3mmのステンレス製パイプを4本用いた。隣り合った枝管同士の中心距離は114.7mm、枝管1本に10箇所ずつ、計40箇所の散気孔12を設けた。散気孔12は孔径4mmφで、隣り合った散気孔同士の中心距離(ピッチ)は36mmとした。気体供給管5および6を、図12に示すように散気装置のそれぞれの主管15および16の最も離れた位置に接続した。散気装置4は散気孔側を下側になるようにし、分離膜モジュール2および散気装置4を処理槽1内に設置し、浸漬型膜分離装置とした。
【0051】
この浸漬型膜分離装置の構成を、図11に示す。処理槽1内の固形分濃度(MLSS)は12,000mg/Lとし、吸引ポンプ9により、膜ろ過流束(LV)を0.5m/d、吸引/停止間隔を8分間/2分間の間欠運転にて6カ月間吸引ろ過を実施し、ろ液を処理槽外に排出した。散気条件は、ブロア7を用いて空気を375L/minの条件で、散気装置4の両側から供給した。本比較例において、6カ月後に散気装置の散気孔を確認したところ、4本ある枝管のうち、内側の2本で、それぞれ散気孔が7箇所と3箇所、計10箇所の閉塞が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、浄水、下水、し尿、産業廃水等を浄化処理するための膜分離方法、それに用いられる浸漬型膜分離装置、さらにそれに用いられる散気装置の洗浄方法に、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1:処理槽
2:分離膜モジュール
3:処理水配管
4:散気装置
5、6:気体供給管
7:ブロア
8:被処理液供給管
9:吸引ポンプ
10、11:バルブ(開閉弁)
12:散気孔
13:3方コック(切り替え弁)
14:洗浄液流入口
15、16:主管
17:枝管
21:分岐管
22:バルブ
23:枝分かれ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液を貯留した処理槽内に浸漬設置される分離膜モジュールと、該分離膜モジュールの下方に配設される散気装置と、該散気装置へ気体供給管を介して気体を供給する気体供給装置とを備えた浸漬型膜分離装置であって、前記散気装置が枝分かれ構造を有していない主管のみからなり、該散気装置の主管は1以上の折り返し部を有し、該散気装置の主管の両端部に前記気体供給管が各々接続し、該気体供給管の両方もしくは片方に弁が配されていることを特徴とする浸漬型膜分離装置。
【請求項2】
気体供給装置から延びる気体供給管が枝分かれし、該枝分かれ部と散気装置の主管の両端部との間に開閉弁が配されていること、もしくは、枝分かれ部に切替え弁が配されていることを特徴とする請求項1に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項3】
弁と気体供給装置との間の気体供給管に、洗浄液を流入させる洗浄液流入口が接続していることを特徴とする請求項1又は2に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項4】
散気装置と弁との間の気体供給管に、開閉可能な分岐管が接続していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の浸漬型膜分離装置における散気装置を洗浄する際、前記弁の開閉もしくは切替えを行うことにより、気体供給管から散気装置へ気体が供給される方向を変化させることを特徴とする散気装置の洗浄方法。
【請求項6】
散気装置を洗浄する際、さらに、散気装置内に洗浄液を流入させることを特徴とする請求項5に記載の散気装置の洗浄方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の散気装置の洗浄方法を間欠的に実施しながら被処理液の膜分離を行うことを特徴とする膜分離方法。
【請求項1】
被処理液を貯留した処理槽内に浸漬設置される分離膜モジュールと、該分離膜モジュールの下方に配設される散気装置と、該散気装置へ気体供給管を介して気体を供給する気体供給装置とを備えた浸漬型膜分離装置であって、前記散気装置が枝分かれ構造を有していない主管のみからなり、該散気装置の主管は1以上の折り返し部を有し、該散気装置の主管の両端部に前記気体供給管が各々接続し、該気体供給管の両方もしくは片方に弁が配されていることを特徴とする浸漬型膜分離装置。
【請求項2】
気体供給装置から延びる気体供給管が枝分かれし、該枝分かれ部と散気装置の主管の両端部との間に開閉弁が配されていること、もしくは、枝分かれ部に切替え弁が配されていることを特徴とする請求項1に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項3】
弁と気体供給装置との間の気体供給管に、洗浄液を流入させる洗浄液流入口が接続していることを特徴とする請求項1又は2に記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項4】
散気装置と弁との間の気体供給管に、開閉可能な分岐管が接続していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の浸漬型膜分離装置における散気装置を洗浄する際、前記弁の開閉もしくは切替えを行うことにより、気体供給管から散気装置へ気体が供給される方向を変化させることを特徴とする散気装置の洗浄方法。
【請求項6】
散気装置を洗浄する際、さらに、散気装置内に洗浄液を流入させることを特徴とする請求項5に記載の散気装置の洗浄方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の散気装置の洗浄方法を間欠的に実施しながら被処理液の膜分離を行うことを特徴とする膜分離方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−71307(P2012−71307A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−265397(P2011−265397)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【分割の表示】特願2006−44841(P2006−44841)の分割
【原出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【分割の表示】特願2006−44841(P2006−44841)の分割
【原出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
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