説明

浸透促進素材並びにこれを含む皮膚外用剤

【課題】薬効成分の皮膚浸透促進性に優れるだけでなく、油剤や皮膚吸収促進剤との併用により、一定の浸透力を保ちながらも、みずみずしさからなじみ感まで等の幅広い使用感を可能とし、安全性や経時安定性にも優れる浸透促進剤並びにこれを含む化粧料などの皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】緑茶抽出物、白茶抽出物、青茶抽出物、黄茶抽出物、黒茶抽出物等などの茶(やぶきた及びべにふうきなど)の抽出物を有効成分とする浸透促進剤並びにこれを含む皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬効成分の経皮吸収を促進させる親水性成分を含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料には美白、シワ予防、育毛等、その目的に合わせた様々な薬効成分が配合されており、これら薬効成分を皮膚に効率よく浸透させるために油剤や皮膚吸収促進剤が用いられている。例えば、特許文献1では、油剤としての性質を有するグリセリルエーテル系化合物が毛髪への浸透促進剤として作用することを報告している。また、特許文献2では、特定のイミダゾリジノン誘導体等が毛髪化粧料において皮膚吸収促進剤として作用することを報告している。
【特許文献1】特開2001−172134号公報
【特許文献2】特開平10−1426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これら浸透促進剤において、油剤は親水性溶液と比較し、みずみずしさ等の使用感の面で劣り、皮膚吸収促進剤は使用感、安全性、安定性の面で劣るため、化粧料などの皮膚外用剤に使用する際に多くの問題を解決しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、かかる実情に鑑み検討した結果、茶抽出物が安全性や安定性に優れた親水性の浸透促進剤であることを見出し、本発明を完成するに至った。なお、茶抽出物は化粧料として一般に使用されているが、これが浸透促進剤の有効成分として作用し、上述した格別の作用効果を発揮することは本発明者の新知見である。また、現在までに親水性成分で浸透促進に優れる化粧料成分は知られていない。
【0005】
すなわち、本発明は茶抽出物を有効成分とする浸透促進剤に関するものであり、その茶抽出物が緑茶抽出物であることを特徴とする浸透促進剤に関する。また、その茶抽出物が、やぶきた及びべにふうきのうち少なくとも一つから得られる浸透促進剤に関する。さらに、これら浸透促進剤が含まれる皮膚外用剤に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に用いられる浸透促進剤は、親水性成分であるため、みずみずしい使用感を有する皮膚浸透促進皮膚外用剤を提供することができる。このため、本浸透促進剤と油剤及び皮膚吸収促進剤との量を調整することにより、一定の浸透力を保ちながらも、みずみずしさからなじみ感まで幅広い使用感を得ることを可能とする。また、安全性や経時安定性も高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定して解釈すべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0008】
本発明に用いられる茶抽出物は特に限定されないが、具体例として緑茶抽出物、白茶抽出物、青茶抽出物、黄茶抽出物、黒茶抽出物等が挙げられる。
【0009】
茶抽出物に使用される茶品種は特に限定されず、例えばやぶきた、べにふうき、べにほまれ、あさつゆ、みよし、たまみどり、さやまみどり、まきのはらやせ、こやにし、ろくろう、やまとみどり、たかちほ、いんど、はつもみじ、べにたちわせ、あかね、なつみどり、やえほ、あさぎり、きょうみどり、はつみどり、べにかおり、べにふじ、ひめみどり、いずみ、さつまべに、おくむさし、やまなみ、べにひかり、うんかい、かなやみどり、さやまかおり、おくみどり、とよか、おくゆたか、めいりょく、ふくみどり、しゅんめい、みねかおり、みなみかおり、さえみどり、ふうしゅん、みなみさやか、ほくめい、りょうふう、むさしかおり、さきみどり、はるみどり等が挙げられるが、好ましくはやぶきた、べにふうきが用いられる。
【0010】
また、本発明の対象となる皮膚外用剤は、一般の化粧料や皮膚外用剤に限定されるものではなく、医薬部外品、外用医薬品等を含有しうるものであり、その剤型もクリーム、乳液、化粧水、洗顔料、育毛溶液、パック、ローション状、ゲル状、溶液状、スティック状等、その目的に応じて任意に選択することができる。
【実施例】
【0011】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこの実施例により制限されないことはいうまでもない。
【0012】
(実施例1:茶抽出物の調製)
やぶきた及びべにふうきの茶葉を各々熱水抽出し、定法に従って調製を行い、乾燥・粉末化させた。
【0013】
(実施例2:皮膚浸透性の評価)
やぶきた抽出物及びべにふうき抽出物の皮膚浸透促進効果を、テープストリッピングを用い、リボフラビン(ビタミンB2)の角層内浸透性を評価することにより検討した。この方法は、リボフラビンという身体に安全でかつ蛍光を放出する物質を使用することで、ヒト皮膚角層内への物質の浸透性を非侵襲的に測定することを可能とする(奥田ら、日皮会誌、vol.109、13、2103−2109、1999)。
【0014】
被験物質は、やぶきた抽出物またはべにふうき抽出物を1%(w/v)となるよう100μg/mLのリボフラビン水溶液で溶解したものを用いた。また、コントロールとして10μg/mLのリボフラビン水溶液を用いた。
【0015】
健常成人15名の被験者の左腕皮膚に、各々の被験物質を含ませたキッチンペーパーを5分間接触させ、取り外すと同時に水を張った桶に被験部位を瞬間的に浸し、皮膚表面に残る水滴をペーパータオルで軽く押すようにしてふき取った。2cm×2cmに切り取ったセロハンテープを用いてストリッピングを5回行い、角層中に浸透したリボフラビンを角層ごと採取した。エッペンチューブに1%SDS溶液1.5mLと採取したセロハンテープを入れ超音波処理によりリボフラビンを抽出回収した。抽出リボフラビン濃度は、マイクロプレートリーダ(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を用いて励起波長486nm、測定波長526nmで測定した。皮膚浸透量は塗布面積当たりの値(μg/cm)で表した。
検量線は、5μg/mLのリボフラビン溶液から2倍希釈を繰返し、78ng/mLまでの7つの濃度を調製して作成した。
【0016】
各被験物質中のリボフラビンの皮膚浸透量を表1及び図1に示す。
【表1】

【0017】
表1より明らかなように、コントロールと比較し、リボフラビンの皮膚透過量がやぶきたやべにふうき等の茶抽出物において著しく高く、また同じ緑茶抽出物の中でもべにふうきにおいて高い皮膚浸透効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の浸透促進剤を含有する皮膚外用剤は、一定の浸透力を保ちながらも幅広い使用感を可能とし、安全性や安定性にも優れている。
【0019】
したがって、本発明は、美白、シワ予防、育毛等の様々な使用感や形態が求められる化粧品などの皮膚外用剤に好適に用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】リボフラビンの皮膚浸透量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶抽出物を有効成分とする浸透促進剤。
【請求項2】
上記茶抽出物が緑茶抽出物である請求項1記載の浸透促進剤。
【請求項3】
上記茶抽出物がやぶきた及びべにふうきのうち少なくとも一つから得られる請求項1または2に記載の浸透促進剤。
【請求項4】
請求項1から3に記載の浸透促進剤を含む皮膚外用剤。

【図1】
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【公開番号】特開2009−249318(P2009−249318A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97570(P2008−97570)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】