説明

消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチ

【課題】 磁界等によりアークを引き伸ばして消孤する方式の不安定要因を排除して確実にアークを消孤することができる、消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチを提供する。
【解決手段】
消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、固定接点4と可動接片6の可動接点8との間に絶縁性と耐熱性の高い材質からなる遮断板11を挿入し、機械的にアークを引く方向を制御することにより、直流電流を遮断する際に発生するアークを確実に消弧して遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチに係り、特に、直流電流の遮断時に発生するアークの消弧性能が優れた直流電流遮断用小形スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図14は従来の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの直流電流の遮断部を示す斜視図、図15はその直流電流の遮断部の平面図、図16はその直流電流の遮断部の側面図である。
従来、消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいては、図14に示すように、固定接点101と可動接点102からなる直流電流回路において、直流電流の遮断部103の近傍に永久磁石104を配置しておき、図15及び図16に示すように、直流電流の遮断時に発生するアーク105を永久磁石104の磁気により引き伸ばし消弧するようにしている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−320375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチでは、開閉機構とは別個に永久磁石を用いた消弧装置を配置して発生したアークを引き伸ばして消孤しており、接点間に流れる電流値によってアークが変化し、その変化するアークを引き伸ばす方向を磁界によってコントロールしなければならないといった磁界等によりアークを引き伸ばして消孤する方式の不安定要因を排除するためには、複雑な設計が必要であり、場合によっては大型化する必要があった。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みて、小型化を図るとともに、磁界等によりアークを引き伸ばして消孤する方式の不安定要因を排除して確実にアークを消孤することができる、消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、固定接点と可動接片の可動接点との間に絶縁性と耐熱性の高い材質からなる遮断板を挿入し、機械的にアークを引く方向を制御することにより、直流電流を遮断する際に発生するアークを確実に消弧して遮断することを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記遮断板を駆動する速度を、スイッチの操作部の速度に因らず一定であり、かつ高速とするスプリング反転駆動機構を具備することを特徴とする。
〔3〕上記〔2〕記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記遮断板は、先端部がテーパ形状の底部と、この底部の両側に形成される先端が傾斜状の立ち上がり部とを具備し、この立ち上がり部により前記可動接片の先端部両側に形成される耳状の突部を押し上げて前記固定接点から前記可動接点を開き、その開かれた箇所に前記遮断板の先端部をさらに挿入するようにしたことを特徴とする。
【0008】
〔4〕上記〔2〕記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記固定接点と前記可動接点との間に生じるアークが、前記遮断板の先端部側で引き伸ばされ、前記固定接点の周辺から前方へ延びる筐体の底板に形成される狭い長溝の中へ押し込まれるように押し出され、前記狭い長溝の終端段部で前記遮断板にて阻まれて断ち切られるようにしたことを特徴とする。
【0009】
〔5〕上記〔4〕記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記遮断板は、前記固定接点と前記可動接点とが完全に開かれた状態のときには前記遮断板の先端部が小形スイッチの筐体側壁の空間部のひさしに挟み込まれるように構成し、前記筐体の底板と前記遮断板との僅かな隙間に引き続けたアークが存在する場合にもアークを前記空間部へ閉じ込め完全に消弧するようにしたことを特徴とする。
【0010】
〔6〕上記〔2〕記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記可動接片は、前記可動接点の前方から上部に折り返される厚めの板状体からなる折曲部と、この折曲部に連設される、滑動棒により押し下げられるやはり厚めの板状体からなる滑動部とをさらに具備することを特徴とする。
〔7〕上記〔6〕記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記出力端子は折曲部と上方へ突出した直立支点とからなるクランク形状であり、前記直立支点は前記可動接片のアーチ頂点に近接して位置するように固定されていることを特徴とする。
【0011】
〔8〕上記〔6〕又は〔7〕記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記固定接点と前記可動接点の接触時(ON時)には、小形スイッチの転換子が回転し、この転換子の滑動棒が前記アーチ頂点を前方へと通過して前記可動接点側に移動すると、前記可動接片の前記折曲部と前記滑動部が前記アーチ頂点を支点として前記可動接点を押し下げることにより、前記滑動棒を介してバネの力を十分に前記可動接点に加えるようにしたことを特徴とする。
【0012】
〔9〕上記〔6〕、〔7〕又は〔8〕記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記固定接点と前記可動接点の開時(ON時)には、前記アーチ頂点の後方へと前記滑動棒を移動させることにより前記可動接片に掛かる力を低減し、前記固定接点から前記可動接点が開きやすくなるような機構としたことを特徴とする。
〔10〕上記〔6〕、〔7〕、〔8〕又は〔9〕記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記可動接片の片側は出力端子に固定されるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
(1)磁界等によりアークを引き伸ばして消孤する方式の不安定要因を排除し、確実にアークを消孤することができる。
(2)消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの低コスト化、小型化を図ることができる。
【0014】
(3)開閉機構と一体化させた機構的な装置により、的確にアークを消弧することができる。
(4)固定接点と可動接点との閉時(ON時)には十分な接触圧力が得られ、一方、開時(OFF時)には可動接片に掛かる力をより少なくし、固定接点から可動接点が開きやすくなるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの要部断面図である。
【図2】本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの固定接点回りの構造を示す図である。
【図3】本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの可動接片の拡大部分構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの遮断板の拡大斜視図である。
【図5】本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの開閉動作(その1)を示す模式図である。
【図6】本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの開閉動作(その2)を示す模式図である。
【図7】本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの開閉動作(その3)を示す模式図である。
【図8】本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの駆動機構と小形スイッチの開閉動作(その1)を示す図である。
【図9】本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの駆動機構と小形スイッチの開閉動作(その2)を示す図である。
【図10】本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの初期の固定接点に対する可動接点の接触状態を示す模式図である。
【図11】本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの固定接点に対する可動接点の挙動を示す模式図である。
【図12】本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの全体構成を示す断面図である。
【図13】本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの分解斜視図である。
【図14】従来の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの直流電流の遮断部を示す斜視図である。
【図15】従来の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの直流電流の遮断部の平面図である。
【図16】従来の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの直流電流の遮断部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチは、固定接点と可動接片の可動接点との間に絶縁性と耐熱性の高い材質からなる遮断板を挿入し、機械的にアークを引く方向を制御することにより、直流電流を遮断する際に発生するアークを確実に消弧して遮断する。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの要部断面図、図2はその固定接点回りの構造を示す図であり、図2(a)はその平面図、図2(b)はその断面図である。図3はその可動接片の拡大部分斜視図(可動接点より先に延びる部分は図示していない)、図4はその遮断板の拡大斜視図、図5〜図7はその小形スイッチの開閉動作(その1〜3)を示す模式図(出力端子5の上端方向は図示していない)、図8及び図9はその小形スイッチの駆動機構と小形スイッチの開閉動作(その1〜2)を示す図、図10はその小形スイッチの初期の固定接点に対する可動接点の接触状態を示す模式図、図11はその小形スイッチの固定接点に対する可動接点の挙動を示す模式図であり、図11(a)は固定接点に対する可動接点の初期の接触状態を示す模式図、図11(b)は続いて固定接点に対して摺動する接触状態を示す模式図である。図12は本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの全体構成を示す断面図、図13はその小形スイッチの分解斜視図である。
【0018】
これらの図において、1は筐体側壁、1Aは筐体側壁の受け部、1Bは筐体側壁の空間部、1Cは空間部1Bのひさし、2は筐体の底板、2Aは底板の床面、2Bは固定接点4を固定するための穴、2Cは後述する凹部(ザグリ部)に連設される狭い長溝、2Dは固定接点4の径とほぼ同寸法の径で形成される凹部(ザグリ部)、2Eは狭い長溝2Cの終端段部であり、3は固定接点4を固定する固定端子であり、固定接点4の下部を固定するための穴2Bを介してリベットで固定される。5は出力端子であり、その出力端子5の上部の曲折部5Aと直立支点5Bを有する。6はアーチ状に曲げられた可動接片であり、その可動接片6の一端部6Aが固定端子5に接続され、そのアーチ状に曲げられた可動接片6の先端部の両側に半円弧状の耳状の突部7が形成され、その先に可動接点8が取り付けられている。11は丸ピン13が形成される摺動体12の両側に配置される遮断板であり、その遮断板11の底部11Aの先端部11Bはテーパー形状を有し、その遮断板11の底部11Aの両側端には立ち上がり部11Cが形成され、その立ち上がり部11Cの幅は、可動接片6の耳状の突部7を受け止めるのに十分な幅を有し、その立ち上がり部11Cの先端部には先端から後端に向かう傾斜部11Dが形成されている。21は第1の転換子(上部の転換子)であり、レバー22が挿入されるレバー装着用穴21Aと、ピン24が装着されるピン装着用穴21Bが形成されており、その下部空間には、レバー装着用穴21Aの位置の両側にコイルスプリング25が装着された滑動棒26が装着されるとともに、レバー装着用穴21Aの位置に対応する中央部には、レバー22の下端部22Bに係合する受部27とそれに係合するスプリング28とが装着される。29は第1の転換子21の下方に配置される第2の転換子であり、ピン24を受入れる円弧状の受部29Bが上部に形成されたコの字形状の本体29Aと、このコの字形状の本体29Aの下部に設けられる遮断板11を水平方向に駆動する二股の腕29Cとで構成される。なお、ピン24の両端は筐体側壁1の受部1Aに係合させるようにしている。したがって、ピン24の回転による二股の腕29Cの回転運動を、丸ピン13との係合により遮断板11の水平方向へ転換する。なお、レバー22の上部には操作ボタン23が取り付けられる。だだし、この操作部材としての操作ボタン23に替えてレバーとするようにしてもよい。
【0019】
したがって、レバー22の操作による第1の転換子21の回転速度に関わらず、スプリング反転駆動機構による一定の高速動作を行うような水平運動に変換することができる。
そこで、さらに、本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチの動作について詳細に説明する。
【0020】
本発明は、(1)直流電流を遮断する際に発生するアークを、固定接点4と可動接点8との間に絶縁性と耐熱性の高い材質からなる遮断板11を挿入することによりアークを消弧して遮断する。(2)遮断板11を駆動する速度は、スイッチの操作部の速度に因らず一定で、かつ高速となる駆動機構を有する。(3)固定接点4と可動接点8との閉時(ON時)には十分な接触圧力が得られ、一方、接点の開時(OFF時)には可動接片6に掛かる力をより少なくし、固定接点4から可動接点8が開きやすくなるような機構を有し、確実性を得るために出力端子5に片側固定された片持ちバネ型の可動接片6を有する。
【0021】
以上により、磁界等によりアークを引き伸ばして消孤する方式の不安定要因を排除して確実にアークを消孤することができる。
以下、更に本発明の特徴について詳細に説明する。
まず、アーク遮断機構について説明する。
図1に示すように、スイッチ筐体の底板2に固定された固定接点4と、同じく筐体の底板2に固定された出力端子5に片側が固定されたアーチ状の可動接片6が、距離をもって配置されている。図2に示すように、固定接点4には筐体の底板2に形成された固定接点4を固定するための穴2Bが設けられ、この穴2Bに連設する狭い長溝2Cが形成される凹部(ザグリ部)2Dが形成され、この凹部2Dに連設する狭い長溝2Cが形成されている。凹部2Dの深さは固定接点4の高さより僅かに深く、その幅は固定接点4の径とほぼ同寸法である。アークの消弧に機能する狭い長溝2Cは、筐体の底板2における可動接片6の固定部と反対方向に一定の長さで設けられる。
【0022】
図1及び図3に示すように、可動接片6はバネ性を持つ導電性の板材をアーチ状に曲げたアーチ形状部を有しており、出力端子5に固定される一端部6Aは反対側に可動接点8を有し、スイッチ筐体に取り付けられた状態では、そのバネ性によって固定接点4に押し当てられて、電気回路の導通が行われる。
また、可動接片6は可動接点8の位置のやや後方の両側に耳状の突部7を有し、その耳状の突部7は側方から見ると半円弧状をなしている。
【0023】
更に、図1及び図4に示すように、絶縁性と耐熱性の高い材質でできた遮断板11は、接点の開時(OFF時)には固定接点4と可動接点8との間に位置し、接点閉時(ON時)には固定接点4と可動接片6が固定される出力端子5との間に位置し、スイッチ非操作時は必ずそのどちらかに位置するように構成される。
図4に示すように、遮断板11の底部11Aの先端部11Bはテーパー形状をなし、底部11Aの両側には立ち上がり部11Cを有する。立ち上がり部11Cの幅は、前記可動接片6の耳状の突部7を受け止めるのに十分な幅を有し、側方から見ると先端から後端に向って高くなっている傾斜部11Dを有している。
【0024】
固定接点4と可動接点8とが閉じた状態(ON状態)から開いた状態(OFF状態)に移行する場合、図5に示すように、遮断板11が固定接点4と可動接点8に向かって移動し、遮断板11の両側端の立ち上がり部11Bが耳状の突部7を押し上げ、閉じている固定接点4と可動接点8とを開かせる。それと同時に遮断板11のテーパー形状の先端部11Bを固定接点4と可動接点8との間に滑り込ませ、図6に示すように、必要最低限の距離だけ開いた固定接点4と可動接点8との間に発生するアークを前方へ押し出すように遮断板11が水平方向に移動する。アークは、スイッチ筐体の底板2の狭い長溝2Cの中へ押し込まれるように押し出されこの狭い長溝2Cの終端段部2Eで遮断板11にて阻まれ断ち切られる。
【0025】
更に、遮断板11と筐体の底板の床面2Aとの僅かな隙間に引き続けたアークが存在する場合は、図7に示されるように、最終的に遮断板11が筐体側壁1に当接し、遮断板11の先端部11Bの上面が筐体の空間部1Bのひさし1Cに挟み込まれることによって完全に断ち切られる。
以上のように、機械的にアークを引く方向を制御することにより、最小の状態で素早くアークを断ち切るようにし、従来のように永久磁石などに頼らずに、不安定要因を排除し、確実にアークを消弧することができる。
【0026】
次に、遮断板11及び可動接片6の駆動機構について説明する。
遮断板11を動作させるために、スプリング反転機構を用いることにより、固定接点4と可動接点8との開閉に関わる遮断板11の動作速度を操作部(レバー22)の操作速度と無関係とし、遮断板11の水平方向への高速動作を実現するようにした。
スプリング反転機構は、操作部であるレバー22の操作部分と反対端は反対側の端部(下端部22B)を、それとは別の回転軸を持つ第2の転換子29のコの字形状の本体29Aの内側部分とコイルスプリング28で結び、レバー22を操作することによってコイルスプリング28の圧縮力を解放して第2の転換子29が回転する機構である。操作部としてのレバー22と第2の転換子29は直接固定連結されていないので、レバー22の操作速度と第2の転換子29の駆動速度は無関係となり、また、コイルスプリング28の圧縮力が解放される速度が第2の転換子29の回転速度となるため、第2の転換子29の駆動速度は高速運動となる。
【0027】
また、このスプリング反転機構においては、レバー22の操作によって圧縮されたコイルスプリング28は操作部であるレバー22の倒れる方向に第2の転換子29を付勢し、操作終了時にはレバー22と第2の転換子29は常にくの字又は逆くの字の位置関係となる。
更に、その第2の転換子29のコの字形状の本体29Aの下部には、二股の腕29Cが突出しているので、その二股の腕29Cに遮断板11の一部に設けた丸ピン形状部13を挟み込ませることによって、レバー22の操作に伴って第2の転換子29が円弧運動すると、遮断板11が水平運動するようになる。なお、遮断板11は、操作部であるレバー22の倒れる方向と同じ方向に水平運動し、したがって、レバー22の操作終了時には常にレバー22が倒れている方向と同じ方向に位置する。
【0028】
以上が本発明の消弧装置付き直流電流遮断用スイッチの基本的な動作の説明であるが、可動接点8を遮断板11が持ち上げる構造であるため、可動接片6のバネ圧力は軽くすることが望ましいので、ON時には可動接点8を押さえ込む圧力に不足を生じる恐れがある。そのために以下の対応策を講じることにした。
以下、ON時の接点間圧力の確保について説明する。
【0029】
図10に示すように、可動接点8から延びて上方へ折り返された折曲部9と滑動棒26がその上を滑動する滑動部10からなるへの字形状の可動接片6に比べると厚めの板状体が、滑動部10に押し付けられる絶縁体からなる滑動棒26を介して可動接点8を押し下げることによって、可動接点8の接触圧力が確保される。滑動棒26とそのバネ25は、上記した操作部(レバー)22に取り付けられている第1の転換子21に収容されている。第1の転換子21はレバー22の動きと連動して、その回転軸(ピン)24を中心にして円弧運動する。それに伴い、滑動棒26はそのバネ25のバネ力によって可動接片6を押し下げながら滑動部10上を滑動する。
【0030】
上記したように、可撓性を有するアーチ形状の可動接片6の上に可撓性を有さないへの字形状の板材からなる折曲部9と滑動部10が配置されている。可動接片6と折曲部9及び滑動部10とは、可動接点8の取付部で可動接点8をリベットとして互いに繋ぎ合わされ、滑動部10の終端部10A付近が可動接片6のアーチ頂点6B付近と接するように曲げ加工される。
【0031】
可動接片6が接続される出力端子5は、折曲部5Aと上方へと突出した直立支点5Bとからなるクランク形状をしており、直立支点5Bの先端が可動接片6のアーチ頂点6B(以下、この点をX点という)に近接して位置するようにして、筐体の底板2に可動接片6と共にスポット溶接等で留められている。
固定接点4と可動接点8のON時は、図8に示すように、レバー22の操作によって第1の転換子21が回転し、滑動棒26がX点を通過して固定接点4および可動接点8側に移動すると、折曲部9と滑動部10がX点を支点として可動接点8を押し下げる。これによって、滑動棒26を介してバネの力を十分に可動接点8に加えることができる。
【0032】
導電回路的には、可撓性を高めるために薄くしてある板材部分をショートカットして、可撓性を有さない折曲部9および滑動部10(厚い部材)から出力端子5(厚い部材)に直接接続されるため、接触抵抗低減による発熱対策としても機能する。また、可動接片6(薄い部材)が放熱板となり発熱対策として機能する。
一方、固定接点4と可動接点8のOFF時は、図9に示すように、レバー22の操作によって、滑動棒26がX点を逆方向に通過して固定接点4および可動接点8と反対方向に移動すると、遮断板11が可動接片6を持ち上げる方向に移動し始める。このとき、滑動棒26を押し下げるコイルバネ25は伸びきって力が少なくなるので、持ち上がる方向に動く可動接片6は、そのアーチ形状の根元付近(耳状の突部7付近)が上方へと軽く撓むことになる。これにより、遮断板11がスムーズに高速で固定接点4と可動接点8との間に狭み込まれることが可能になる。
【0033】
以上のように、本発明は、可動接片6に可撓性を有する薄い板材と可撓性を有さない厚い板材からなる折曲部9および滑動部10とを組み合わせて可動接片6を構成し、固定部と接触部分との間に支点を追加することにより、ON時に十分な接触圧力を確保しつつ、OFF時には遮断板が軽く固定接点4と可動接点8間に入りアークを遮断しやすくなるようにした。
【0034】
次に、強制開離とアーク遮断時間の短縮について説明する。
図10に示すように、可動接片6の可動接点8は、先端の方が僅かに低く前のめり状態に取り付けられている。
これにより、図11(a)に示すように、固定接点4と当たる時(ON開始時)、まず先端が当たり、図11(b)に示すように、撓みやすい可動接片6の薄板のアーチ状部分が上から滑動棒26で押さえられることにより可動接点8が平らに固定接点4に接触するようになる。OFF時にはその逆になる。
【0035】
このように、摺動的な固定接点4と可動接点8の接触の仕方、開離の仕方が、溶着対策の一助となる。更には、固定接点4と可動接点8のOFF時に、遮断板11が可動接点8の後端方向から、斜めに入るので、接触部分を斜めに引き剥がすように働く強制開離機構となる。
固定接点4と可動接点8のOFF時には、可動接点8の先端部分が最後に固定接点4から離れるため、後端から固定接点4と可動接点8との間に侵入する遮断板11は、発生するアークを接点の径の最終位置で捉え押し切る態様になる。このようにオフセットした接触の仕方が、アークによる接点中央面磨耗低減と遮断時間短縮に貢献する。
【0036】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチは、磁界等によりアークを引き伸ばして消孤する方式の不安定要因を排除して確実にアークを消孤することができる、消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチとして利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 筐体側壁
1A 筐体側壁の受部
1B 筐体側壁の空間部
1C 空間部のひさし
2 筐体の底板
2A 底板の床面
2B 固定接点を固定するための穴
2C 狭い長溝
2D 凹部(ザグリ部)
2E 狭い長溝の終端段部
3 固定端子
4 固定接点
5 出力端子
5A 出力端子の上部の曲折部
5B 直立支点
6 可動接片
6A 可動接片の一端部
6B 可動接片のアーチ頂点
7 耳状の突部
8 可動接点
9 可動接片の曲折部(厚めの板状体)
10 可動接片の滑動部(厚めの板状体)
10A 滑動部の終端部
11 遮断板
11A 遮断板の底部
11B 遮断板の底部の先端部
11C 立ち上がり部
11D 立ち上がり部の傾斜部
12 摺動体
13 丸ピン
21 第1の転換子
21A レバー装着用穴
21B ピン装着用穴
22 レバー
22B レバーの下端部
23 操作ボタン
24 ピン
25 コイルスプリング
26 滑動棒
27 レバーの下端部の受部
29 第2の転換子
29A コの字形状の本体
29B ピンの受部
29C 二股の腕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点と可動接片の可動接点との間に絶縁性と耐熱性の高い材質からなる遮断板を挿入し、機械的にアークを引く方向を制御することにより、直流電流を遮断する際に発生するアークを確実に消弧して遮断することを特徴とする消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチ。
【請求項2】
請求項1記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記遮断板を駆動する速度を、スイッチの操作部の速度に因らず一定であり、かつ高速とするスプリング反転駆動機構を具備することを特徴とする消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチ。
【請求項3】
請求項2記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記遮断板は、先端部がテーパ形状の底部と、該底部の両側に形成される先端が傾斜状の立ち上がり部とを具備し、該立ち上がり部により前記可動接片の先端部両側に形成される耳状の突部を押し上げて前記固定接点から前記可動接点を開き、その開かれた箇所に前記遮断板の先端部をさらに挿入するようにしたことを特徴とする消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチ。
【請求項4】
請求項2記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記固定接点と前記可動接点との間に生じるアークが、前記遮断板の先端部側で引き伸ばされ、前記固定接点の周辺から前方へ延びる筐体の底板に形成される狭い長溝の中へ押し込まれるように押し出され、前記狭い長溝の終端段部で前記遮断板にて阻まれて断ち切られるようにしたことを特徴とする消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチ。
【請求項5】
請求項4記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記遮断板は、前記固定接点と前記可動接点とが完全に開かれた状態のときには前記遮断板の先端部が小形スイッチの筐体側壁の空間部のひさしに挟み込まれるように構成し、前記筐体の底板と前記遮断板との僅かな隙間に引き続けたアークが存在する場合にもアークを前記空間部へ閉じ込め完全に消弧するようにしたことを特徴とする消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチ。
【請求項6】
請求項2記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記可動接片は、前記可動接点の前方から上部に折り返される厚めの板状体からなる折曲部と、該折曲部に連設される、滑動棒により押し下げられるやはり厚めの板状体からなる滑動部とをさらに具備することを特徴とする消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチ。
【請求項7】
請求項6記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記出力端子は折曲部と上方へ突出した直立支点とからなるクランク形状であり、前記直立支点は前記可動接片のアーチ頂点に近接して位置するように固定されていることを特徴とする消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチ。
【請求項8】
請求項6又は7記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記固定接点と前記可動接点の接触時(ON時)には、小形スイッチの転換子が回転し、該転換子の滑動棒が前記アーチ頂点を前方へと通過して前記可動接点側に移動すると、前記可動接片の前記折曲部と前記滑動部が前記アーチ頂点を支点として前記可動接点を押し下げることにより、前記滑動棒を介してバネの力を十分に前記可動接点に加えるようにしたことを特徴とする消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチ。
【請求項9】
請求項6、7又は8記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記固定接点と前記可動接点の開時(ON時)には、前記アーチ頂点の後方へと前記滑動棒を移動させることにより前記可動接片に掛かる力を低減し、前記固定接点から前記可動接点が開きやすくなるような機構としたことを特徴とする消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチ。
【請求項10】
請求項6、7、8又は9記載の消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチにおいて、前記可動接片の片側は出力端子に固定されるようにしたことを特徴とする消弧装置付き直流電流遮断用小形スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−212543(P2012−212543A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77151(P2011−77151)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000230722)日本開閉器工業株式会社 (79)
【出願人】(501470544)エヌ・ティ・ティ・データ先端技術株式会社 (29)
【Fターム(参考)】