説明

消臭およびVOC除去機能を有する繊維布帛。

【課題】
本発明の課題は、光触媒と吸着剤をバインダー樹脂で繊維布帛に固着させ、繊維布帛の柔らかな風合いを維持したままで、光触媒の酸化作用による繊維布帛の変色や劣化、二次汚染を完全に防ぎ、消臭およびVOC除去機能に優れた性能を発揮する繊維布帛を提供することにある。
【解決手段】
光透過率が波長300〜500nmにおいて50%以上あるバインダー樹脂を用い、光触媒と吸着剤を繊維布帛に固着することによって、屋内においてでも、消臭およびVOC除去機能に優れた柔らかな風合いの繊維布帛を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテン、カーペット、壁紙、椅子張り地等のインテリア用繊維布帛や、自動車、車両、船舶、航空機などの内装用繊維布帛として広く応用でき、消臭およびVOC除去機能を有するようにした繊維布帛に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
近年、シックハウス症候群に代表されるように、住宅建材から生じる有害物質による生活環境汚染問題が急速に深刻化しており、ホルムアルデヒドだけでなくトルエンやキシレンなどの芳香族環を有する難分解性のVOC(揮発性有機化合物)も、室内空気環境ガイドラインによって規制されてきている。
【0003】
VOC除去、消臭、抗菌等の機能に関する技術は多く開示されており、光触媒は、水中のハロゲン含有有機物を炭酸ガスと水に分解したり、たばこ臭や、人体の汗の臭いであるイソ吉草酸等の悪臭を消臭したり、その強力な酸化力によって、大腸菌などを殺す機能もあることは確認されている。また、光触媒には、VOC(揮発性有機化合物)を炭酸ガスと水に分解する能力もあることも知られており、例えば、カーテン、カーペット、壁紙、椅子張り地等の繊維布帛に光触媒を担持させ、紫外線や可視光を利用して悪臭や有害物質を分解する試みが広く行われている。
【0004】
しかしながら、光触媒はそのような有益な機能を有する反面、光触媒を直接繊維布帛にバインダー樹脂によって担持させると、光触媒の強い酸化分解力によって、バインダー樹脂や繊維布帛が有機質の炭化水素を含む樹脂であるために分解されたり、着色したり、異臭が発生するなどの諸問題が生じていた。そのため、光触媒は使用が限定され、酸化に強いタイルやガラス等の無機の担持素材へ応用され、屋外で使用されることが多かった。
【0005】
また、光触媒を屋内で使用した場合、室内に存在する紫外線量は非常に少なく、トルエンやキシレンなどの難分解性の物質を完全に炭酸ガスと水に分解することは難しく、様々な中間体を生成することになり、二次的に有害物質を作り出し、二次汚染する可能性もある。また、可視光で応答する光触媒を使用した場合でも、可視光ではエネルギーが弱く、VOC(揮発性有機化合物)を一挙に炭酸ガスと水に分解することは難しく、中間体を生成し二次汚染することになる。
【0006】
これらを改善するため特許文献1においては、繊維布帛に酸化チタン光触媒をシリコーン架橋型樹脂で固定することにより、使用に際して繊維布帛に変色や劣化がなく、持続性のある優れた消臭、抗菌および防汚機能を有する繊維布帛の技術を開示している。
【0007】
特許文献2においては、繊維布帛の表面にアルキルシリケート系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂から選ばれるバインダーと光触媒を有する室内内装材料が提案され、耐久性ある着臭防止性、消臭性、抗菌性、防汚性に優れた室内内装材料の技術を開示している。
【0008】
しかしながら、これらのバインダー樹脂を使用した方法では、光触媒表面をバインダー樹脂が覆ってしまうことから、触媒能力が低下し、十分な効果を発揮できない方法となっていた。
【0009】
【特許文献1】特開平10−1879
【特許文献2】特開2001−254281
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上述の事情に鑑み、繊維布帛の柔らかな風合いを維持し、光触媒の酸化作用による変色や劣化、二次汚染を完全に防ぎ、バインダーによって光触媒の能力低下を招かない、消臭およびVOC除去機能に優れた繊維布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、繊維布帛の柔らかな風合いを維持し、変色や劣化、二次汚染を完全に防いだ消臭、抗菌およびVOC除去機能を有する繊維布帛を提供すべく検討を行なった結果、光透過率が波長300〜500nmにおいて50%以上あるバインダー樹脂で、可視光応答型光触媒と吸着剤を繊維布帛に担持させることによって、屋内においてでも、消臭およびVOC除去機能に優れた柔らかな風合いの繊維布帛が得られることを見出し、本発明に至ったものである。上記課題を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1]光触媒と吸着剤が、バインダー樹脂により固着されている繊維布帛であって、前記バインダー樹脂の光透過率が波長300〜500nmにおいて50%以上あることを特徴とする、消臭およびVOC除去機能を有する繊維布帛。
【0013】
[2]前記光触媒の液体中の見かけ平均粒径が80nm〜3μmであって、前記吸着剤の平均粒径が20nm〜30μmであることを特徴とする前項1に記載の消臭およびVOC除去機能を有する繊維布帛。
【0014】
[3]前記バインダー樹脂がウレタン樹脂またはポリビニルアルコール樹脂であることを特徴とする前項1または2に記載の消臭およびVOC除去機能を有する繊維布帛。
【0015】
[4]前記光触媒がアパタイト被覆の可視光応答型光触媒であって、前記吸着剤が疎水性ゼオライトであることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の消臭およびVOC除去機能を有する繊維布帛。
【0016】
[5]前記光触媒の繊維布帛への付着量が、繊維布帛100重量部に対し、0.5〜25重量%、前記吸着剤の繊維布帛への付着量が、繊維布帛100重量部に対し、0.1〜15重量%、であることを特徴とする前項1〜4のいずれかに記載の消臭およびVOC除去機能を有する繊維布帛。
【発明の効果】
【0017】
[1]光透過率が波長300〜500nmにおいて50%以上あるバインダー樹脂によって、繊維布帛に光触媒と吸着剤が固着されているので、バインダー樹脂による光触媒の触媒反応への影響が少なくなり、触媒反応が十分行われ、光触媒反応の過程で生成される中間体も効率的に吸着剤に吸着されるので、中間体による二次汚染が抑制された、消臭およびVOC除去機能を発揮する繊維布帛とすることができる。
【0018】
[2]前記光触媒の液体中の見かけ平均粒径が80nm〜3μmであって、前記吸着剤の平均粒径が20nm〜30μmであるので、ザラツキ感のない柔らかな繊維布帛にすることができる。
【0019】
[3]さらに、前記光触媒と吸着剤が、ウレタン樹脂またはポリビニルアルコール樹脂により固着されているので、柔らかな風合の繊維布帛とすることができる。
【0020】
[4]前記光触媒がアパタイト被覆タイプの可視光応答型光触媒であるので、バインダー樹脂が光触媒反応の影響を受け劣化するのが防がれ、前記吸着剤が疎水性ゼオライトであるので、水分の吸着が少なく、湿度の高い雰囲気下においても悪臭や光触媒反応の過程で生成される中間体等を素早く効果的に吸着することができる。
【0021】
[5]前記光触媒の繊維布帛への付着量が、繊維布帛100重量部に対し、0.5〜25重量%、前記吸着剤の繊維布帛への付着量が、繊維布帛100重量部に対し、0.1〜15重量%であるので、中間体による二次汚染が抑制され、十分な消臭およびVOC除去機能を有する繊維布帛を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、カーテン、カーペット、壁紙、椅子張り地等のインテリア用布帛や、自動車、車両、船舶、航空機などの内装用繊維布帛として広く有用に使用することができる。繊維布帛の形態としては、織物、編物、不織布、タフテッドカーペットやモケットのような立毛布帛等特に限定されない。繊維布帛の繊維としても、特に限定されずポリエステル、ポリアミド、アクリルなどの合成繊維、アセテート、レーヨンなどの半合成繊維、羊毛、絹、木綿、麻などの天然繊維などから選ばれる、1種または複数の繊維を使用することができる。
【0023】
光触媒は、紫外線の照射によって消臭およびVOC除去機能を発揮するが、バインダー樹脂で覆われて繊維布帛に固着されるので、紫外線の光触媒への照射量が減少し、光触媒能力が十分に発揮されないことがあった。本発明においては、光透過率が波長300〜500nmにおいて50%以上あるバインダー樹脂によって、光触媒と吸着剤が、繊維布帛に固着されるので、光触媒への照射量が確保され、光触媒能力が十分に発揮されるものである。光透過率が波長300〜500nmにおいて50%以上であれば、光触媒の励起エネルギーが確保され、十分な消臭およびVOC除去機能を有する繊維布帛を得ることができる。
【0024】
光透過率が波長300〜500nmにおいて50%以上あるバインダー樹脂としては、ウレタン樹脂またはポリビニルアルコール樹脂が好適で、シリコーン系バインダー樹脂等と比較しても優れた光透過率を示している。(図1参照)なお、光透過率は分光光度計(UV−1700島津製作所製)で測定した。
【0025】
光触媒としては、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化第二鉄等を挙げることができる。光触媒は、紫外線により励起されて水や酸素が・OHや・Oとなり、強い酸化作用で有機物を、水と二酸化炭素に分解し、消臭するものである。また、光触媒の触媒活性を高めるため、白金、パラジウム、ロジウムなどの白金族金属を担持させたものや、銀、銅、亜鉛などの殺菌性のある金属を担持させたものを使用することもできる。
【0026】
本発明に使用される光触媒としては、可視光応答型光触媒が好適である。中でも可視光応答型酸化チタン光触媒は、その酸化力により、黄色ブドウ球菌などに殺菌力があることは知られており、菌が人体代謝物などを分解する時に発生する悪臭を抑制し、抗菌効果も得ることができる。また、可視光応答型酸化チタン光触媒は、紫外線の照射量の少ない屋内においても強い酸化作用が得られ、従来消臭が困難であったタバコ臭、汗臭などを簡単に消臭することができ、また付着したタバコのヤニなどの着色物質を分解するような防汚効果も得ることができ、VOC除去機能も得ることができるものである。
【0027】
可視光応答型酸化チタン光触媒は、可視光域で励起するようにしたもので、例えば、アナターゼ型酸化チタン光触媒、ルチル型酸化チタン光触媒、ブルカイト型酸化チタン光触媒等を挙げることができ、中でも、アナターゼ型の可視光応答型酸化チタン光触媒が特に好適である。
【0028】
また、本発明においては、可視光応答型酸化チタン光触媒としてアパタイト被覆可視光応答型酸化チタン光触媒を用いることもできる。アパタイト被覆可視光応答型酸化チタン光触媒は、酸化チタン光触媒の表面がリン酸カルシウムアパタイト等により被覆された複合材料である。アパタイト被覆可視光応答型酸化チタン光触媒は、可視光応答型酸化チタン光触媒が直接繊維布帛やバインダー樹脂と接合するのを防ぎ、強い酸化作用によって繊維布帛やバインダー樹脂が侵されることから守るものである。
【0029】
本発明のメカニズムは十分解明されていないが、可視光応答型光触媒はバインダー樹脂により繊維布帛に固定され、消臭性能を発揮し、VOCを分解するが、炭酸ガスと水に分解できずにできた中間体は、可視光応答型光触媒と同様にバインダー樹脂によって繊維布帛に担持された吸着剤が捕捉することから、中間体を大気中に逃がすことなくVOC除去機能を発揮することができる。また、吸着剤によって一旦捕捉された中間体は、可視光応答型光触媒によって最終的に炭酸ガスと水に分解される。
【0030】
光触媒の液体中の見かけ平均粒径は80nm〜3μmであることが好ましい。光触媒の粒径は酸化作用の効果から小さいほど好ましく、また繊維径の10分の1以下の粒径のものが、脱落のし易さの面から好ましく、2μm以下が推奨される。また、酸化チタン光触媒の粒径が3μmを越えると悪臭の分解速度が遅くなり好ましくない。また、80nmを下回る粒径とすることは、コスト的にも採算が合わず好ましくない。より好ましくは100nm〜2μmがよく、さらに好ましくは100nm〜1μmがよい。
【0031】
光触媒の繊維布帛への付着量は、繊維布帛100重量部に対し、0.5〜25重量%が好ましい。光触媒の繊維布帛への付着量が25重量%を越えると風合いが硬くなり、また繊維布帛が白化して好ましくない。また、0.5重量%を下回ると悪臭やVOCの分解速度が遅くなり好ましくない。より好ましくは0.7〜10重量%である。
【0032】
次に、吸着剤としては、ゼオライト、活性炭、シリカゲル、酸化珪素等を挙げることができる。中でも疎水性ゼオライトは白色であるので、色彩やデザインを重要視するインテリア用繊維布帛には好ましい。一般的にゼオライトは親水性であるが、本発明では疎水性ゼオライトが好ましい。疎水性ゼオライトは、水分の吸着が少ないため、湿度の高い雰囲気においても悪臭や光触媒反応の過程で生成される中間体等も素早く効果的に吸着する。
【0033】
また、疎水性ゼオライトの平均粒径は20nm〜30μmであることが好ましい。疎水性ゼオライトの粒径が30μmを越えると繊維布帛が固くなり好ましくない。また、20nmを下回る粒径とすることは技術的に製造することは困難で、コスト的にも採算が合わず好ましくない。より好ましくは100nm〜10μmがよい。
【0034】
次ぎに、吸着剤の繊維布帛への付着量は、繊維布帛100重量部に対し、0.1〜15重量%が好ましい。吸着剤の繊維布帛への付着量が15重量%を越えると風合いが硬くなり、また繊維布帛が白化して好ましくない。また、0.1重量%を下回ると、中間体や悪臭の吸着能力が不足し好ましくない。より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0035】
バインダー樹脂によって光触媒と吸着剤を繊維布帛に担持させる方法は、浸漬法とコーティング法を例示できる。ウレタン系バインダー樹脂やポリビニルアルコール樹脂は水溶性であるので、容易に光触媒と吸着剤の混合液を得ることができる。
【0036】
浸漬法は、繊維布帛をバインダー樹脂と光触媒と吸着剤の混合液に浸漬した後マングルで絞り、これを乾燥させることによって繊維布帛に光触媒と吸着剤を担持させるもので均一に担持することができる。
【0037】
コーティング法は、繊維布帛にバインダー樹脂と光触媒と吸着剤の混合液をコーティングした後乾燥させることによって繊維布帛に光触媒と吸着剤を担持させるもので、生産性を顕著に向上でき、担持量も精度高く制御できる。前記コーティング方法は、特に限定されるものではないが、例えばグラビアロール加工、スプレー加工、ロールコーター加工、ジェットプリント加工、転写プリント加工、スクリーンプリント加工等を例示することができる。
【0038】
また、コーティング法は、バインダー樹脂を繊維布帛上に皮膜状に層となって全面接着するよりも、網目状に接着させることが可能な加工方法として有用な加工である。これは、バインダー樹脂が層となって全面接着するのではなく、網目状に接着させることにより、繊維布帛を構成する糸が相対的に動きうることから、繊維布帛の柔軟性が確保されることと、繊維布帛に消臭、抗菌、防汚以外の機能性を付与する部分としての場所を残すことができ、難燃、撥水、撥油等の機能をさらに付与することができる。
【0039】
光触媒と吸着剤とバインダー樹脂の配合割合は特に限定しないが、光触媒の配合量が増えると、光触媒の繊維布帛に結合する確率が増え、繊維布帛を劣化させる傾向にあり、また、バインダー樹脂配合量が増えると、光触媒とバインダー樹脂と結合する割合が増加し、光触媒の表面を覆う確率が増え、消臭、抗菌、防汚の機能性が低下する傾向にあることから、光触媒と吸着剤とバインダー樹脂の3者の配合バランスを決めるのがよい。
【0040】
次ぎに実施例により、本発明を具体的に説明する。なお実施例における各種消臭性能の測定は次のように行った。
(アンモニア消臭性能)
光触媒と吸着剤を担持した繊維布帛(10×10cm角)を内容量2リットルのテトラバッグ袋内に入れた後、袋内において濃度が100ppmとなるようにアンモニアガスを注入し、この袋を蛍光灯ランプ(東芝製10W FL10N)の直下30cmに設置し、2時間経過後にアンモニアガスの残存濃度を測定し、この測定値よりアンモニアガスを除去した総量を算出し、これよりアンモニアガスの除去率(%)を算出した。
【0041】
(硫化水素消臭性能)
アンモニアガスに代えて硫化水素ガスを用いて袋内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にして硫化水素ガスの除去率(%)を算出した。
【0042】
(メチルメルカプタン消臭性能)
アンモニアガスに代えてメチルメルカプタンガスを用いて袋内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてメチルメルカプタンガスの除去率(%)を算出した。
【0043】
(酢酸消臭性能)
アンモニアガスに代えて酢酸ガスを用いて袋内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にして酢酸ガスの除去率(%)を算出した。
【0044】
(アセトアルデヒド消臭性能)
アンモニアガスに代えてアセトアルデヒドガスを用いて袋内において濃度が20ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてアセトアルデヒドの除去率(%)を算出した。
【0045】
(ホルムアルデヒド消臭性能)
アンモニアガスに代えてホルムアルデヒドガスを用いて袋内において濃度が10ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてホルムアルデヒドの除去率(%)を算出した。
【0046】
(トルエン消臭性能)
アンモニアガスに代えてトルエンガスを用いて袋内において濃度が15ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてトルエンの除去率(%)を算出した。
【0047】
そして、除去率が95%以上であるものを「◎」、除去率が90%以上95%未満であるものを「○」、除去率が85%以上90%未満であるものを「△」、除去率が85%未満であるものを「×」と評価し85%以上を合格とした。
【0048】
(風合測定)
官能評価とし、未加工品と比較して、硬さやザラツキ感に変化がほとんど無いものを「◎」、やや変化しているが実用上差し支えないものを「○」、未加工品よりも硬くザラツキ感も増しており実用上問題のあるものを「×」と評価した。
【実施例】
【0049】
<実施例1>
粒径150nmの可視光応答型酸化チタン光触媒1重量部と、平均粒径5μmの疎水性ゼオライトを1重量部を78重量部の水に加えた後、攪拌機により攪拌を行ない、分散液を得た。この分散液にさらに20重量部のウレタン系バインダー樹脂(光透過率が波長300〜500nmにおいて50〜80%、固形分50%)を加え、良く攪拌して均一な分散液(処理液)を得た。この処理液に、ポリエステル製のスパンボンド不織布(目付40g/m)を浸漬した後、取り出してマングルで絞って乾燥させて、消臭繊維布帛を得た。可視光応答型酸化チタン光触媒のスパンボンド不織布への付着量は、消臭繊維布帛の1.5重量%、疎水性ゼオライトの付着量は1.5重量%であった。こうして得られた消臭繊維布帛を、上記の各種ガスの消臭試験をおこない除去率と風合の評価を表1に記載した。また、分散液の組成を表2に記載した。
【0050】
<実施例2>
次に、実施例1において、可視光応答型酸化チタン光触媒2重量部と、平均粒径5μmの疎水性ゼオライトを1重量部を77重量部の水に加えた以外は実施例1と同様にして、消臭繊維布帛を得た。可視光応答型酸化チタン光触媒のスパンボンド不織布への付着量は3.0重量%、疎水性ゼオライトの付着量は1.5重量%であった。
【0051】
<実施例3>
次に、実施例1において、粒径150nmの可視光応答型酸化チタン光触媒を粒径2μmのアパタイト被覆の可視光応答型酸化チタン光触媒とした以外は実施例1と同様にして、消臭繊維布帛を得た。可視光応答型酸化チタン光触媒のスパンボンド不織布への付着量は1.5重量%、疎水性ゼオライトの付着量は1.5重量%であった。
【0052】
<実施例4>
次に、実施例1において、吸着剤として粒径20μmの椰子柄活性炭を1重量部とした以外は実施例1と同様にして、消臭繊維布帛を得た。可視光応答型酸化チタン光触媒のスパンボンド不織布への付着量は1.5重量%、椰子柄活性炭の付着量は1.5重量%であった。
【0053】
<実施例5>
次に、実施例1において、可視光応答型光触媒として、粒径100nmの可視光応答型酸化亜鉛光触媒を10重量部と、平均粒径5μmの疎水性ゼオライトを5重量部を65重量部の水に加えた以外は実施例1と同様にして、消臭繊維布帛を得た。可視光応答型酸化亜鉛光触媒のスパンボンド不織布への付着量は15重量%、疎水性ゼオライトの付着量は6.5重量%であった。
【0054】
<実施例6>
実施例1において、ウレタン系バインダー樹脂(固形分50%)をポリビニルアルコール樹脂(光透過率が波長300〜500nmにおいて80〜85%、固形分50%) とした以外は実施例1と同様にして、消臭繊維布帛を得た。可視光応答型酸化チタン光触媒のスパンボンド不織布への付着量は1.5重量%、疎水性ゼオライトの付着量は1.5重量%であった。
【0055】
<比較例1>
実施例1において、ウレタン系バインダー樹脂(光透過率が波長300〜500nmにおいて50〜80%、固形分50%)をアクリルシリコン系バインダー樹脂(光透過率が波長300〜500nmにおいて0〜20%、固形分50%)とした以外は実施例1と同様にして、消臭繊維布帛を得た。可視光応答型酸化チタン光触媒のスパンボンド不織布への付着量は1.5重量%、疎水性ゼオライトの付着量は1.5重量%であった。
【0056】
<比較例2>
実施例1において、ウレタン系バインダー樹脂(光透過率が波長300〜500nmにおいて50〜80%、固形分50%)をエチレン酢酸ビニル系バインダー樹脂(光透過率が波長300〜500nmにおいて10〜58%、固形分50%)とした以外は実施例1と同様にして、消臭繊維布帛を得た。可視光応答型酸化チタン光触媒の付着量は1.5重量%、疎水性ゼオライトの付着量は1.5重量%であった。
【0057】
<比較例3>
実施例1において、平均粒径5μmの疎水性ゼオライトを1重量部をゼロとし、水79重量部とした以外は実施例1と同様にして、消臭繊維布帛を得た。可視光応答型酸化チタン光触媒の付着量は1.5重量%、疎水性ゼオライトの付着量は0であった。
【0058】
<比較例4>
実施例1において、150nmの可視光応答型酸化チタン光触媒をゼロとし、水79重量部とした以外は実施例1と同様にして、消臭繊維布帛を得た。可視光応答型酸化チタン光触媒の付着量は0、疎水性ゼオライトの付着量は1.5重量%であった。
【0059】
<比較例5>
実施例1において、平均粒径150nmの可視光応答型酸化チタン光触媒を粒径5μmとした以外は実施例1と同様にして、消臭繊維布帛を得た。可視光応答型酸化チタン光触媒と疎水性ゼオライトのスパンボンド不織布への付着量はそれぞれ1.5重量%であった。
【0060】
<比較例6>
実施例1において、平均粒径5μmの疎水性ゼオライトを平均粒径50μmとした以外は実施例1と同様にして、消臭繊維布帛を得た。疎水性ゼオライトの付着量は1.5重量%、可視光応答型酸化チタン光触媒の付着量は1.5重量%であった。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
表1からわかるように、本発明の消臭性能や布帛の風合等は満足のいくものであったが、光透過率が波長300〜500nmにおいて50%以上のバインダー樹脂を使用していない比較例1、2では、光触媒の能力を十分に発揮できなかった。光触媒や吸着剤を担持しない比較例3、4では消臭性能は満足されなかった。また、光触媒や吸着剤の粒径の大きい比較例5、6も風合が硬く、満足のいくものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の技術は、酸化力の強い光触媒を繊維と結合させ、吸着剤で二次汚染を防ぎながら、最終的に悪臭やVOCを炭酸ガスと水に分解するもので、利用される分野は広く、衣料や、カーテン、カーペット、壁紙等のインテリア用品、車両等のシート地、天井材等に広く利用される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】バインダー樹脂の各波長における光透過率を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒と吸着剤が、バインダー樹脂により固着されている繊維布帛であって、前記バインダー樹脂の光透過率が波長300〜500nmにおいて50%以上あることを特徴とする、消臭およびVOC除去機能を有する繊維布帛。
【請求項2】
前記光触媒の液体中の見かけ平均粒径が80nm〜3μmであって、前記吸着剤の平均粒径が20nm〜30μmであることを特徴とする請求項1に記載の消臭およびVOC除去機能を有する繊維布帛。
【請求項3】
前記バインダー樹脂がウレタン樹脂またはポリビニルアルコール樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の消臭およびVOC除去機能を有する繊維布帛。
【請求項4】
前記光触媒がアパタイト被覆の可視光応答型光触媒であって、前記吸着剤が疎水性ゼオライトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の消臭およびVOC除去機能を有する繊維布帛。
【請求項5】
前記光触媒の繊維布帛への付着量が、繊維布帛100重量部に対し、0.5〜25重量%、前記吸着剤の繊維布帛への付着量が、繊維布帛100重量部に対し、0.1〜15重量%、であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の消臭およびVOC除去機能を有する繊維布帛。

【図1】
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【公開番号】特開2010−265561(P2010−265561A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117755(P2009−117755)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】