説明

液中用電気ヒーター

【課題】導線保持部付近への液の浸透だけでなく、発熱体付近への液の浸透も確実に検知して、電源を遮断する。
【解決手段】本発明は、耐熱性絶縁体のボビンとその上に捲回される発熱線によって構成される発熱体と、該発熱体を収納する外管と、外管内部へ導かれる導線を保持する断熱材からなる導線保持部とを備える。外管は、非金属製の材質により構成される。ボビンは、中央貫通孔を有する全体的には筒状体形状を有して、この中央貫通孔内に金属線を配置して固定する。金属線全体が漏洩電流を検知するセンサーとして機能する構成にして、外管内部に液が浸入したときに金属線に流れる漏洩電流を検知して電源を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体付近への液の浸透を確実に検知して電源を遮断することを可能にした液中用電気ヒーターに関する。
【特許文献1】特開2005−44740
【背景技術】
【0002】
水よりも高温に加熱する必要があるメッキ液等の加熱のために、液中に浸漬して使用する発熱線を内蔵した電気ヒーターが知られている(特許文献1参照)。図4は、特許文献1に開示の液中用電気ヒーター装置を説明する図である。図示したように、液中用ヒーターは、液槽内に設置されて用いられる。液面レベルセンサーは液面レベルを検知し、また、液温センサーは液温を検知する。制御部は、液温センサーの検知した温度等に基づいて液中用ヒーターの電源を制御する。
【0003】
図5は、従来より用いられている液中用ヒーターの一例を示す図である。液中用ヒーターが適正な使用状態で液槽に設置され、適正な条件で動作している場合には、発熱体は600〜800℃程度の温度で動作し、外管の表面温度が60〜100℃の液中で使用されたとき、外管の内側付近の温度は200〜300℃となって安定している。このような液中用ヒーターには、内部に液が浸透したことを検出して電源を遮断するための漏電検知センサーが備えられている。このセンサーとして、断熱材付近に漏洩電流を検知するための接地金属線を配置し、断熱材が液の浸透により電源導線と接地金属線の間の絶縁低下により漏電電流が増加することを利用して、一定値以上の電流値で漏電ブレーカーを遮断していた。
【0004】
しかし、この方法では、導線保持部付近への液の浸透は検知することができるものの、発熱体付近のみの液の浸透では漏電検知センサーが機能しないケースがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題点を解決して、導線保持部付近への液の浸透だけでなく、発熱体付近への液の浸透も確実に検知して、電源を遮断することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液中用電気ヒーターは、耐熱性絶縁体のボビンとその上に捲回される発熱線によって構成される発熱体と、該発熱体を収納する外管と、外管内部へ導かれる導線を保持する断熱材からなる導線保持部とを備える。外管は、非金属製の材質により構成される。ボビンは、中央貫通孔を有する全体的には筒状体形状を有して、この中央貫通孔内に金属線を配置して固定する。金属線全体が漏洩電流を検知するセンサーとして機能する構成にして、外管内部に液が浸入したときに金属線に流れる漏洩電流を検知して電源を遮断する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発熱体を構成するボビン内部の中心部に、ボビンを貫通するように金属線を配置しているため、発熱体と断熱材を配置した導線保持部のどちらに液が浸透して絶縁低下が生じても漏洩電流を感知して漏電ブレーカーをトリップすることが可能となる。発熱線に電源が通じていれば直ちに接地金属線に電源からの電流が流れて接地端子を通じて接地回路に挿入された漏電ブレーカーを作動してヒーターの電源を遮断することが出来、漏電による感電事故を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、例示に基づき本発明を説明する。図1は、本発明を具体化する液中用電気ヒーターの全体構成図である。非金属製の外管は、液との接触面積を広くするとともに、液と発熱体が直接的に接触することを防止するために、長い筒状の形状をしており、その先端部は閉塞された形状をしている。この外管としては、石英ガラス、テフロン(登録商標)樹脂等の非金属製の材質を用いる。発熱体を収納する外管が金属製であれば、外管を直接接地することで内部発熱体の異常による事故の検知が可能であるが、液の組成によっては、非金属製外管を使用せざるを得ない。このように、外管が石英ガラス、テフロン(登録商標)樹脂等の非金属性の場合、外管を直接接地することでは、液の浸透による発熱体の異常の検知が出来ない。
【0009】
発熱体は、筒状体ボビンと、その上に捲回されて液を加熱するためのニクロム線などの発熱線によって構成されている。発熱線は、筒状体ボビンの外周に複数の発熱線をそれぞれ間隔をおいて捲回して、全体としては密に筒状体の表面を被覆するように捲回する。ボビンの入り口(ボビンの鍔部の外側)で発熱線と接続される電源導線は、外管の外方に設けた電源と電源コード及び電源接続端子を介して連結される。断熱材を用いた導線保持部は、外管の開口部を閉鎖する耐熱性碍子等からなるものであって、電源導線だけでなく、接地導線を保持している。
【0010】
電源導線及び接地導線の一般的な材料である銅線等は長期の信頼性に欠けるので、発熱線に接続する電源導線は、例えば、導線として錫メッキ軟銅線を用い、ガラス2重横巻きシリコーンワニス焼付けの下側絶縁層と、ガラス1重編組シリコーンワニス焼付けの上側絶縁層の2重被覆線を用いる。耐熱は180℃である。ボビン内部に入る接地金属線部分は、発熱線に使用されている耐熱性の高いNi-Cr系またはFe-Cr-Al系の材料を使うことが必要となるが、ボビンの外では通常使用時では150℃以下であるので、接地金属線に繋がる接地導線については、2重被覆の錫メッキ軟銅線のような普通の絶縁被覆導線を用いるか、或いは絶縁用のチューブを被せて絶縁する。ボビン内部では裸の状態の接地金属線とボビン外部の接地導線の接続は、ボビンに巻かれた発熱線と電源導線の接続と同様に、ボビンの鍔部の外側で行われる。
【0011】
このように、電源導線及び接地導線として、絶縁被覆導線を用いるので、乾燥状態では絶縁層で相互の電源導線間及び接地導線間は絶縁されているが、液または水が浸入して断熱材に浸透したとき絶縁層に簡単に浸透して電源導線と接地導線間の絶縁が低下することになる。
【0012】
ボビン内部では裸の状態の接地金属線は、ボビン内部を貫通してボビンの先端側で絶縁シートに固定される。接地金属線は、先端側ではどこにも電気的には接続されない。ボビン内部の接地金属線全体が漏洩電流を検知するセンサーとして機能することになる。ボビン両側にそれぞれ備えられている絶縁シートは、発熱線のリード線と接地金属線が接触しないように分離、絶縁するためのものであり、例えば、マイカを使用することができる。
【0013】
図2は、セラミック製ボビンの構成を示す側面図(A)及び正面図(B)である。ボビンの材料については、動作時に800℃程度まで上昇するので、発熱時の絶縁性を保証するため高温時に絶縁抵抗の低下の少ない耐熱性の絶縁体であるアルミナ系、シリカ系のセラミック材料を選定する。図示のボビンは、外表面に発熱線用溝を形成すると共に、ボビン両側に鍔部を備え、ここには、3相として例示した3本の電源導線が導入される電源導線用穴、及び接地金属線が導入される中央貫通孔が備えられている。
【0014】
図3は、発熱体への電源供給を説明する図(A)、及び漏洩電流検知を説明する図(B)である。ヒーターは、工業用で通常AC200V3相で動作させるが、単相電源を用いることも可能である。3相電源の場合、3本の電源供給線と1本の接地導線、及びこれら導線のための4本の接続端子を有している。3相ヒーターの場合、図示したように、発熱線はスター結線とΔ結線のいずれの接続も可能である。図1の発熱線は、スター接続として例示している。
【0015】
ヒーターの内部で発熱線を含む電源回路と接地金属線は完全に絶縁されている。もし何等かの事故でヒーターの発熱体内部に薬液(又は水)が浸透した場合、絶縁が急激に低下することになる。本発明は、発熱体のボビン内部に接地金属線を装着し且つ金属線に接続された接地導線を通じて外部の電源の接地端子に接続しておくことにより、ボビン内部への液の浸入による漏電の感知が極めて迅速に検知して、安全確保に貢献することが出来る。発熱線とボビン内部の接地金属線(センサー)は通常時、ボビンで絶縁されているが、ヒーター内部に液が浸入したときボビンの絶縁は一気に低下して発熱線から接地金属線に電流が通じ、これが、漏洩電流検知センサーにより検知されて漏電ブレーカーを作動して電源を遮断する。漏電ブレーカー自体は、従来より用いられている公知のものを用いることができる。
【0016】
また、導線保持部(図1参照)に液が浸透しても、電源導線と接地導線の間の絶縁が低下し、ボビン内部で発生した絶縁低下と同様に電流が流れて漏電ブレーカーを作動することが出来る。接地導線も電源導線と同様に絶縁被覆構成となっているので、液が浸透した場合、直ちに絶縁が低下することになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を具体化する液中用電気ヒーターの全体構成図である。
【図2】セラミック製ボビンの構成を示す側面図(A)及び正面図(B)である。
【図3】発熱体への電源供給を説明する図(A)、及び漏洩電流検知を説明する図(B)である。
【図4】従来技術の液中用電気ヒーター装置を説明する図である。
【図5】従来より用いられている液中用ヒーターの一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性絶縁体のボビンとその上に捲回される発熱線によって構成される発熱体と、該発熱体を収納する外管と、外管内部へ導かれる導線を保持する断熱材からなる導線保持部とを備える液中用電気ヒーターにおいて、
前記外管は、非金属製の材質により構成され、
前記ボビンは、中央貫通孔を有する全体的には筒状体形状を有して、この中央貫通孔内に金属線を配置して固定し、
前記金属線全体が漏洩電流を検知するセンサーとして機能する構成にして、前記外管内部に液が浸入したときに前記金属線に流れる漏洩電流を検知して電源を遮断することを特徴とする液中用電気ヒーター。
【請求項2】
発熱線に接続されるリード線と前記金属線が接触しないように分離して絶縁するための絶縁シートを、前記ボビンの両側に備えた請求項1に記載の液中用電気ヒーター。
【請求項3】
前記発熱線に供給する電源として3相電源を用い、3本の電源導線が導入される電源導線用穴を有する鍔部を、前記ボビンの両側に備えた請求項2に記載の液中用電気ヒーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−117581(P2008−117581A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298488(P2006−298488)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(598073383)谷口ヒーターズ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】