説明

液中着脱コネクタ

【課題】ボーリング用の泥水中や海水中などでも、ケーブルと各種機器との間でコネクタの着脱が可能で、それによって電気的な接続・切離を行うことができるようにする。
【解決手段】外周面に複数のコンタクト16が軸方向に並設されているプラグ10と、該プラグが嵌入する空洞18の壁面に複数のコンタクト20が軸方向に並設されているレセプタクル12との組み合わせからなる。レセプタクルは、空洞内で軸方向に摺動自在の内部ライナー22と、それに入口方向への弾撥力を付与するバネ24と、空洞内に充填される絶縁オイルと、空洞内外の圧力差を吸収するベローズ26と、Oリング28を具備している。接続時に、プラグを内部ライナーに押し当ててバネの弾撥力に抗してレセプタクル内に押し込むことによりOリングでプラグ側コンタクト表面が拭われ、プラグとレセプタクルのコンタクト同士が絶縁オイル中で接触して電気的導通が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中のみならず、海水中、あるいはボーリング用泥水中などでも、プラグとレセプタクルとの着脱が可能な電気接続用コネクタに関し、更に詳しく述べると、プラグ側及びレセプタクル側の複数のコンタクトがいずれも軸方向で間隔をおいて配設され、レセプタクル側コンタクトは絶縁オイルに浸され、プラグ側コンタクトは接続時にOリングで拭われるようにした液中着脱コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球科学の研究などの分野では、信号や電力を伝送するケーブルと各種観測・計測機器などとを、液中(例えば海水中やボーリング用泥水中など)で着脱し電気的な接続・切離を行いたい場合がある。
【0003】
例えば深部ボーリングにおいて、ボーリング孔底の方位、圧力、ビット圧、トルクなどのデータをリアルタイムで地表に伝送し、それらに応じて掘削制御を行ったり、あるいは掘削中に地下の地層の状態、例えば密度、磁気、比抵抗、弾性波伝播速度、自然ガンマ線スペクトルなどの様々な物理量をリアルタイムで計測するなどのMWD技術(Measuring While Drilling)、LWD技術(Logging While Drilling)、LWC技術(Logging While Coring) が開発されている。その際のデータ伝送などに用いるケーブルは、掘削ビット付近に設置される計測機器との間で、電気的な接続・切離が行えるように構成することが好ましい。接続・切離が自由に行えれば、計測したいときだけ接続することなどが可能となり、装置の保守などが容易になる。
【0004】
あるいは、海底に設置された地震計のデータは、ケーブルによって地上(海上)観測装置に伝送される。地震計やケーブルの修理・交換等のために、それらの間で電気的な接続・切離が行えるようにすることが望ましい。また、必要なときのみ海底地震計とケーブルを接続して電源供給を行い内部電池に充電し、メモリに蓄積されたデータを適宜回収するような使用法もある。そのような場合、従来技術では、海底地震計を地上(海上)に一旦引き上げて電気的な接続・切離を行うことで対応している。勿論、接続部(コネクタ)は防水構造とする。従来、様々な水中ケーブル用コネクタが開発されているが、それらはあくまでも接続後に防水構造となるように設計されたものであり、電気的な接続・切離は地上(海上)で行うことを前提としている。その他、接続部を密封容器に封入したり、樹脂で固める方法などもある。しかし、いずれにしても、接続・切離の都度、ケーブルを地上(海上)に引き上げねばならないため、不便であるばかりでなく、作業が煩瑣となり、作業効率も悪い。
【0005】
水中でケーブルの切離や接続を行う方法として、導線に設けた接続部を絶縁性の液体で被う手段を講じ、接続部の漏電を防止する技術が提案されている(特許文献1参照)。具体的には、水よりも比重が大きい絶縁性の液体を満たした容器中で、コネクタを用いてケーブルを着脱する手法などが開示されている。しかし、このような手法は、ボーリング孔内での作業、あるいは海中でのロボットによる遠隔操作などには到底対応できない。
【0006】
更に、ボーリング孔内でのコネクタの接続では、様々な粒体や金属粉、薬品などが添加された泥水中での操作となり、そのままではコネクタのコンタクト(接点)にそれらの異物が付着し、接触不良が生じる。特に、多芯ケーブルの接続のように、コンタクトが多数設けられる場合、通常、コンタクトはピンとピン穴との組み合わせであるが、前記のような異物がピン穴に入り込めば、電気的接続など到底不可能であり、何らかの対策が必要となる。
【0007】
データの伝送や電源の供給を行うケーブルを水中で接続・切離する他の方法として、電磁誘導方式によるカップリングを用いる技術が提案されている(特許文献2)。この方法では、近接する1組のコイルを通じて、非接触式でデータを伝送する。しかし、このような方式をボーリング孔内でのデータ伝送ケーブルの接続・切離に適用しようとすると、掘削用の鉄やステンレス等の電気良導体からなる孔内機器類の影響を受け、動作が不安定となる恐れがある。また、送信・受信用の電子回路を必要とするが、特に深部ボーリングにおいては地温が200度を超える場合もあり、高圧、高温の環境下で安定的に動作するシステムを構築することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−145955号公報
【特許文献2】特開平7−254097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ボーリング用泥水中や海水中などでも、ケーブルと各種機器との間でコネクタを着脱でき、それによって電気的な接続・切離を行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、外周面に複数のコンタクトが互いに絶縁された状態で間隔をおいて軸方向に並設されているプラグと、該プラグが嵌入する空洞の壁面にプラグ側コンタクトに対応して複数のコンタクトが並設されているレセプタクルとの組み合わせからなり、前記レセプタクルは、空洞内で軸方向に摺動自在の内部ライナーと、該内部ライナーに空洞入口方向への弾撥力を付与するバネと、内部ライナーで塞がれた空洞内に充填される絶縁オイルと、内部ライナーの摺動に伴う空洞内外の圧力差を吸収するベローズと、少なくとも前記空洞の入口部に装着されているOリングとを具備し、接続時に、プラグを内部ライナーに押し当ててバネの弾撥力に抗してレセプタクル内に押し込むことにより前記Oリングでプラグ表面が扱かれプラグ側コンタクト表面が拭われるようにし、プラグとレセプタクルのコンタクト同士が絶縁オイル中で接触して電気的導通が達成され、切離時には、内部ライナーがバネの弾撥力で前記空洞の入口部に戻るようにし、それによって液中での着脱を可能としたことを特徴とする液中着脱コネクタである。
【0011】
例えばプラグの外周面に設けられる複数のコンタクトはリング状で外周壁に埋設され、他方、レセプタクルの空洞の壁面に設けられる複数のコンタクトもリング状で壁面に埋設されており、レセプタクル側の各コンタクトに近接してそれぞれOリングが配設され、内部ライナーには、空洞内の絶縁オイルを入口部に装着されているOリング近傍に導くオイル流路が形成されている構成が好ましい。
【0012】
ここで、プラグを円柱状、それに対応してレセプタクルの空洞を円柱形状としてもよいが、プラグを円筒状、それに対応してレセプタクルの空洞を円筒形状とし、プラグとレセプタクルが中空構造をなすように設計することも可能である。そのように中空構造にすると、内側に液状物質の軸方向通路が形成されることになり、MWD技術、LWD技術、LWC技術など、ボーリング孔内において、掘削のため回転する掘管に取り付けたセンサから地表に信号を伝送する場合、あるいは別の回転しない信号線にデータを伝送する必要がある場合などに有用である。具体的には、プラグをボーリング掘削用の掘管に固着して、プラグの各コンタクトの配線を掘管外側に導き、レセプタクルはケーブルに吊り下げ、該ケーブルの芯線がレセプタクルの各コンタクトに結線され、プラグとレセプタクルの内側がボーリング用泥水の通路を形成しているような構成となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る液中着脱コネクタでは、レセプタクルの空洞が絶縁オイルで満たされ入口部は内部ライナーで封止されているためレセプタクル側コンタクトは常に清浄に保持される。また接続時には、Oリングによりプラグ表面が扱かれ、コンタクト表面が拭われるためプラグ側コンタクトも清浄化される。そのため、たとえ泥水中でプラグとレセプタクルを接続しても、コンタクト間で接触不良が生じる恐れはなく、確実な電気的導通が達成できる。更に、内部ライナーの摺動に伴いベローズが伸縮するために空洞内外の圧力差が生じず、そのため絶縁オイルの漏出及び外部の泥水などの浸入を最小限に抑えることができる。
【0014】
プラグが円柱状もしくは円筒状で、その外周面に設けられる複数のコンタクトをリング状とし、他方、レセプタクルの空洞も円柱状もしくは円筒状で、その空洞を形成する壁面に設けられる複数のコンタクトもリング状とすれば、プラグとレセプタクルを軸方向で相対的に近づけ、円周方向の位置合わせをすることなく単に挿入するだけで確実に電気的な接続が達成されるため、ロボットなどによる接続・切離の操作も容易となる。
【0015】
プラグを円筒状、レセプタクルの空洞も円筒状とすると、中空構造となり内側をボーリングの際の泥水循環の流路として利用可能となる。プラグを掘管に固定すれば、該掘管に取り付けるトルクや荷重測定用の歪ゲージと収録部とを電気的に接続できる。また、掘管外壁に電極パッドを付けて地層に直接電気を流して行う比抵抗検層を実施することもできる。更に、ワイヤーライン掘削工法において、回転する掘管に取り付けると、各種センサへの電源供給と信号受信をケーブルで伝送できるので、掘削作業中にセンサで検出したデータをリアルタイムで地上の観測装置に伝送することが可能となる。これによって、石油や天然ガスの開発、地熱開発、地球科学的研究目的で実施する大深度のボーリングの品質の向上、掘削能率の改善、トータルコストの削減に寄与しうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る液中着脱コネクタの基本構成を示す説明図。
【図2】本発明に係る液中着脱コネクタの一実施例を示す説明図。
【図3】その応用例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る液中着脱コネクタの基本構成を図1に示す。ここでAは切離状態を表し、Bは接続状態を表している。
【0018】
この液中着脱コネクタは、プラグ10とレセプタクル12との組み合わせからなる。プラグ10は、円柱状のプラグ本体14と、その一端に連続しているフランジ15とからなり、プラグ本体14の外周面には、複数のリング状のコンタクト16が、互いに絶縁された状態で間隔をおいて軸方向に並設されている。レセプタクル12は、前記プラグ本体14が嵌入する空洞18を備え、該空洞18を形成する壁面には複数のリング状のコンタクト20が間隔をおいて軸方向に並設されている。ここでプラグ及びレセプタクルの材料は金属でも非金属でもよいが、金属の場合には、表面処理、ライニング、塗装などを施し、それによってコンタクト間を絶縁する。この例では8芯ケーブルとの接続を想定し、プラグ側及びレセプタクル側ともに8個のコンタクトを並設している。
【0019】
前記レセプタクル12の空洞18には、円柱状の内部ライナー22が軸方向に摺動自在に組み込まれると共に、該内部ライナー22に入口方向(図面では下方向)への弾撥力を付与するバネ24が組み込まれる。そして、内部ライナー22で塞がれた空洞内には絶縁オイルが充填され、内部ライナー22が摺動しても空洞内の絶縁オイルと外部液体との間で圧力差が生じないように一端が塞がったメタルベローズ26が前記空洞18に連通するように設けられている。また、空洞壁面の各リング状のコンタクト20に近接してそれぞれOリング28が装着されている(軸方向でコンタクトを挟むようにOリングとコンタクトが交互に配列されている)。
【0020】
図1において、Aに示すような切離状態から、Bに示すような接続状態にするには、プラグ10とレセプタクル12を軸方向で相対的に近づけ(ここではレセプタクル12を下向き矢印方向に移動させる)、プラグ本体14を空洞18に押し込む。その際、円周方向の位置合わせは不要である。
【0021】
接続時には、まず、プラグ10の先端面がレセプタクル12の内部ライナー22の端面(露出している下端面)に当接し、バネ24の弾撥力に抗して押し込むことにより前記Oリング28でプラグ表面が扱かれプラグ側コンタクト16の表面が拭われ清浄化される。完全に挿入されれば(フランジ15がストッパの機能を果たす)、プラグ側の各コンタクト16は、対応するレセプタクル側の各コンタクト20にそれぞれ接触する。つまり、プラグ10とレセプタクル12のコンタクト同士が絶縁オイル中で(接点以外が絶縁オイルでカバーされた状態で)接触し導通状態になる。その際、内部ライナー22の摺動によってレセプタクル内部の絶縁オイル圧力が増加するが、メタルベローズ26が伸長するため内外圧力差は生じない。
【0022】
切離時には、プラグ10がレセプタクル12の空洞18から抜け出るにつれて、内部ライナー22がバネ24の弾撥力で前記空洞18の入口方向へ移動し、プラグ10が完全に抜け出れば、内部ライナー22が空洞18の入口部へ戻り該空洞18が封止される。その際、メタルベローズ26が収縮するため、レセプタクル内の絶縁オイルと外部液体とで圧力差は生じない。なお、内部ライナー22がレセプタクル12から脱落しないように、両者の間には図示されていないが何らかのストッパ機構を設けておく。
【0023】
従って、切離時も接続時も、レセプタクル内部の絶縁オイルは外部との間で常に圧力差がなく、オイルの漏洩や外部液体の浸入を最小限に抑えることができる。なお、内部ライナー22には、空洞18に充填されている絶縁オイルを該空洞入口部のOリング近傍に導くオイル流路30が形成されている。そのオイル流路30によってOリング溝に絶縁オイルを供給し、プラグを円滑に且つ液密状態で着脱できるようにしている。
【実施例】
【0024】
図2は、本発明に係る泥水中着脱コネクタの一実施例を示している。この実施例は、内部が空洞構造をなしている例である。ここでも、Aは切離状態を表し、Bは接続状態を表している。
【0025】
この泥水中着脱コネクタは、プラグ40とレセプタクル42との組み合わせからなる。プラグ40は、円筒状のプラグ本体44と、その一端に連続するフランジ45からなり、前記プラグ本体44の外周面に複数(この例では8個)のリング状のコンタクト46が互いに絶縁された状態で間隔をおいて軸方向に並設されている構造である。レセプタクル42は、プラグ40(厳密にはプラグ本体44)が嵌入する円筒状の空洞48を備え、該空洞48の壁面には、プラグ側コンタクト46と対向できるように、複数のリング状のコンタクト50が軸方向に間隔をおいて並設されている。ここで、プラグ及びレセプタクルの材料は金属でも非金属でもよいが、金属の場合には表面処理、ライニング、塗装などを施し、コンタクト間を絶縁する。この実施例では、レセプタクル側コンタクト50の幅を、プラグ側コンタクト46の幅よりも広く設定し、対向する各コンタクト同士に多少の位置ずれがあっても確実に接触できるようにしている。なお、プラグ側コンタクト46は、その表面がプラグ本体44の外周壁面より若干突出するように埋設するのが好ましい。
【0026】
レセプタクル42の円筒状の空洞48には、円筒状の入口部を塞ぐように、円筒状の内部ライナー52が軸方向に摺動自在に組み込まれると共に、該内部ライナー52に入口方向(図面では下方向)への弾撥力を付与するバネ(コイルスプリング)54が組み込まれる。そして、内部ライナー52で塞がれた空洞48には絶縁オイルが充填され、内部ライナー52が摺動しても空洞の絶縁オイルと外部液体との間で圧力差が生じないように、一端が塞がったメタルベローズ56が連通するように設けられている。また、前記空洞壁面に並設されている各リング状のコンタクト50に近接してそれぞれOリング58が装着されている。なお、レセプタクルの内側を泥水流路とするには、レセプタクル上部に貫通孔を形成しておけばよい。
【0027】
図2において、Aに示すような切離状態から、Bに示すような接続状態にするには、プラグ40とレセプタクル42を軸方向で相対的に近づけ、プラグ40を空洞48に押し込めばよい。その際、円周方向の位置合わせは不要である。
【0028】
接続時には、プラグ40の円環状先端面が内部ライナー52の円環状端面(露出している端面)に当接し、バネ54の弾撥力に抗して押し込むことにより各Oリング58でプラグ表面が扱かれプラグ側コンタクト46の表面が拭われる。従って、プラグ側コンタクト46が泥水中で露出していても、接続時には拭われて清浄化される。フランジ45まで完全に挿入されれば、プラグ側の各コンタクト46は、レセプタクル側の各コンタクト50に絶縁オイル中で接触し、電気的な導通状態が達成される。その際、メタルベローズ56が伸長するため、レセプタクル内部の絶縁オイルと外部の泥水との間で内外圧力差は生じない。
【0029】
切離時には、プラグ40がレセプタクル42の空洞48から抜け出るにつれて、内部ライナー52がバネ54の弾撥力で空洞入口方向へ移動し、プラグ40が完全に抜け出れば内部ライナー52が空洞44の入口部へ戻り、該空洞48が封止される。その際、メタルベローズ56が収縮することによって、レセプタクル42の内部を満たしている絶縁オイルと外部泥水との内外圧力差は生じない。
【0030】
従って、切離時も接続時も、レセプタクル内外で圧力差がなく、そのためオイルの漏洩や外部泥水の浸入を最小限に抑えることができる。なお、内部ライナー52には、空洞48に充填されている絶縁オイルを空洞入口部のOリング近傍に導くオイル流路60が形成されており、Oリング溝にオイルを供給し、プラグを円滑に且つ液密状態で着脱できるようにする。
【0031】
図3は、その応用例を示している。この応用例では、内部が軸方向に貫通している構造を明瞭に示しており、ワイヤーライン掘削工法などに好適な構成である。軸方向の貫通孔が泥水路を形成し、従って周囲には泥水が存在する状態である。ここでも、Aは切離状態を表し、Bは接続状態を表している。コネクタ自体の基本的な構造は図2の実施例の場合と同様である。説明を簡略化するため、共通の構造については、一部説明を省略する。
【0032】
この泥水中着脱コネクタは、プラグ70とレセプタクル72との組み合わせからなる。プラグ70は、円筒状のプラグ本体74とフランジ75からなり、プラグ本体74の外周面には、複数のリング状のコンタクト76が互いに絶縁された状態で間隔をおいて軸方向に並設されている。レセプタクル72は、プラグ70(厳密にはプラグ本体74)が嵌入する円筒状の空洞78を備え、該空洞78を形成する壁面にはプラグ側コンタクト76と対向するように複数のリング状のコンタクト80が並設されている。プラグ70は、掘管92の内側に同軸上に固定されており、各コンタクト78の配線94が掘管外側に引き出され、各種センサ(図示せず)などに接続される。レセプタクル72は、多芯ケーブル96などに連結部材98を介して吊り下げられる。
【0033】
レセプタクル72の円筒状の空洞78には、入口部を塞ぐように円筒状の内部ライナー82が軸方向に摺動自在に組み込まれると共に、該内部ライナー82に入口方向(図面では下方向)への弾撥力を付与するバネ(コイルスプリング)84が組み込まれる。内部ライナー82で塞がれた空洞78には絶縁オイルが充填されており、内部ライナー82が摺動しても、メタルベローズ86が伸縮するために空洞内の絶縁オイルと外部泥水との間で圧力差は生じない。メタルベローズ86は、その径と長さによって必要な個数設置すればよい。更に、この例でも、前記空洞78の壁面に埋設されている各リング状のコンタクト80を軸方向で挟むようにOリング88が装着されている。
【0034】
レセプタクル72の空洞内部には絶縁オイルが封入され、入口部は内部ライナー82で塞がれている。従って、レセプタクル側コンタクト80は絶縁オイル中で露出しており、レセプタクル72が泥水中にあっても表面が清浄な状態が維持される。前記のようにメタルベローズ86は、内部の絶縁オイルと外部泥水とを等圧力とする機能を果たす。バネ84は、その弾撥力により内部ライナー82を外側に押し、泥水圧により内部ライナー82がレセプタクル内部に入り込まないようにしている。
【0035】
図3において、Aに示すような切離状態から、Bに示すような接続状態にするには、プラグ70に対してレセプタクル72を降下させ、プラグ70(厳密にはプラグ本体74)を空洞78に押し込めばよい。
【0036】
接続時には、ケーブル先端のレセプタクル72を降下し、レセプタクル72の内部ライナー82の下端面をプラグ70の円環状の上端面に密着させる。このとき、プラグ70の上端面とレセプタクル72の内部ライナー82の下端面との間の泥水は排除される。
【0037】
更に、レセプタクル72を降下させる(図3のB参照)。すると、プラグ70は、その先端面がレセプタクル72の内部ライナー82の下端面に密着したまま該内部ライナー82と共に押し込まれ、Oリング88によってプラグ50の外周面の泥水が排除される。またOリング溝は絶縁オイルにより満たされているので、外部からの泥水の浸入を防ぐことができる。このため、泥水中で着脱しても、プラグ70とレセプタクル72のコンタクト同士が絶縁オイル中で接触し、電気的な導通状態が達成される。その際、メタルベローズ86が伸長することによってレセプタクル内の絶縁オイルの圧力は外部泥水の圧力と等しく維持される。
【0038】
次に、切離時には、プラグ70がレセプタクル72の空洞78から抜け出るにつれて、内部ライナー82がバネ86の弾撥力で空洞入口方向へ移動し、プラグ70が完全に抜け出れば、内部ライナー82が空洞78の入口部へ戻り該空洞78が封止される。その際、メタルベローズ86が収縮するため、レセプタクル72の空洞内外で圧力差は生じない。
【0039】
従って、切離時も接続時も、レセプタクル内の絶縁オイルは外部泥水との間で圧力差がなく、オイルの漏洩や外部泥水の浸入を最小限に抑えることができる。なお、内部ライナー82には、空洞78に充填されている絶縁オイルを空洞入口部のOリング近傍に導くオイル流路90が形成されており、オイルをOリング溝に供給し、プラグを円滑に且つ液密状態で着脱できるようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0040】
ケーブル側のレセプタクルを掘管側のプラグに接続すれば、掘管に取り付けたトルクや荷重測定用の歪ゲージと収録部とを電気的に接続できる。また、掘管外壁に電極パッドを付けて地層に直接電気を流して行う比抵抗検層を実施できる。MWD技術、LWD技術、LWC技術等、掘削のため回転する掘管に取り付けたセンサから信号をリアルタイムで地表に高速伝送できる。更に、必要に応じてプラグをレセプタクルから切離することもできる。その他、海底地震計とのケーブル接続などにも適用できる。
【符号の説明】
【0041】
10 プラグ
12 レセプタクル
16 コンタクト
18 空洞
20 コンタクト
22 内部ライナー
24 バネ
26 ベローズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に複数のコンタクトが互いに絶縁された状態で間隔をおいて軸方向に並設されているプラグと、該プラグが嵌入する空洞の壁面にプラグ側コンタクトに対応して複数のコンタクトが並設されているレセプタクルとの組み合わせからなり、前記レセプタクルは、空洞内で軸方向に摺動自在の内部ライナーと、該内部ライナーに空洞入口方向への弾撥力を付与するバネと、内部ライナーで塞がれた空洞内に充填される絶縁オイルと、内部ライナーの摺動に伴う空洞内外の圧力差を吸収するベローズと、少なくとも前記空洞の入口部に装着されているOリングとを具備し、接続時に、プラグを内部ライナーに押し当ててバネの弾撥力に抗してレセプタクル内に押し込むことにより前記Oリングでプラグ表面が扱かれプラグ側コンタクト表面が拭われるようにし、プラグとレセプタクルのコンタクト同士が絶縁オイル中で接触して電気的導通が達成され、切離時には、内部ライナーがバネの弾撥力で前記空洞の入口部に戻るようにし、それによって液中での着脱を可能としたことを特徴とする液中着脱コネクタ。
【請求項2】
プラグの外周面に設けられる複数のコンタクトはリング状で外周壁に埋設され、他方、レセプタクルの空洞の壁面に設けられる複数のコンタクトもリング状で壁面に埋設されており、レセプタクル側の各コンタクトに近接してそれぞれOリングが配設され、内部ライナーには、空洞内の絶縁オイルを入口部に装着されているOリング近傍に導くオイル流路が形成されている請求項1記載の液中着脱コネクタ。
【請求項3】
プラグは円筒状であり、それに対応してレセプタクルの空洞も円筒状であって、プラグとレセプタクルが中空構造をなし、内側が外部液状物質の軸方向通路を形成している請求項2記載の液中着脱コネクタ。
【請求項4】
プラグは、そのフランジ部でボーリング掘削用の掘管に固着され、該プラグの各コンタクトの配線が掘管外側に導かれており、レセプタクルは多芯ケーブルに吊り下げられ該多芯ケーブルの各芯線がレセプタクルの各コンタクトに結線され、プラグとレセプタクルの内側がボーリング用泥水の通路を形成している請求項3記載の液中着脱コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−257824(P2010−257824A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107781(P2009−107781)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(509068219)株式会社浦和デザインセンター (2)
【Fターム(参考)】