説明

液位計測装置

【課題】超音波の反射率を用いた従来の水位計測では、計測対象となる配管の表面状態により、計測の信頼性が低下する。
【解決手段】水位計測管4に超音波送受信手段11a、11b、11c、12a、12b、12cを取り付け、各超音波送受信手段の受信信号から水位計測管4の内壁4a、4bからの反射波、対向する超音波送受信手段からの透過波、水位計測管4の反対側で高さが異なる位置に取り付けられた超音波送受信手段からの斜角透過波の有無を特定して、超音波の反射点/透過点が気相か液相かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉圧力容器等の液体を収容した容器の液位を計測するシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
一般に、沸騰水型原子炉の原子炉水位計測には差圧式水位計が用いられており、高い安全性及び信頼性が確保されている。また、原子炉の安全性を更に向上させるため、差圧式水位計と異なる方式の水位計を併設して、複数の方式によって原子炉水位を計測する方法がある。
【0003】
差圧式以外の水位計の一例として、超音波式水位計が用いられている(例えば、特許文献1参照)。従来の超音波式水位計による水位計測について、図11を用いて説明する。図11は水位計測対象である液槽に取り付けられた超音波探触子と、その近傍を拡大した部分拡大縦断面図である。
【0004】
液槽100の表面に、超音波送信用の探触子101aと超音波受信用の探触子101bが取り付けられている。探触子101a、101bはそれぞれ、液槽壁102の外壁102aの、高さが異なる位置に配置されている。探触子101aから液槽100内部へ超音波を送信すると、送信された超音波は経路103や経路104のように液槽壁100の外壁102aと内壁102bの間で反射を繰り返して伝播する。この時、内壁102bの超音波の反射点が液相にあると、反射点が気相にある場合と比較して超音波の反射率が低下する。したがって、超音波を探触子101bで受信し、探触子101aが送信した超音波と探触子101bが受信した超音波の強度を比較し、強度の減少の度合いから反射点が液相か気相かを判定することができる。このような原理により、水位レベルの測定が可能となる。そして、経路103や経路104だけではなく、さらに多くの反射を繰り返す経路の超音波を検出することにより、多数の反射点を用いて水位レベルを判定することができ、水位を細かく測定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3732642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の超音波式水位計は、液槽壁の内壁の反射点における超音波の反射率の減少から反射点が液相か気相かを判定する。しかし、液槽壁の内壁や外壁の反射点における超音波の反射率は、内壁及び外壁の表面状態による影響も大きい。したがって、環境変化や経年劣化、反射点の移動などによる表面状態の変化が水位の計測精度に影響するという課題があった。
【0007】
また、一般的に、原子炉の状態監視を行う機器は、その信頼性を高めるべく冗長性や計測精度向上の要求が恒常的に存在する。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、環境変化や経年劣化、射点の移動などが原因となる液槽壁の表面状態の変化による影響が大きい場合でも信頼性が高い液位計測装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明による液位計測装置は、配管の外壁に取り付けられ、超音波の送受信を行なう超音波送受信手段と、前記超音波送受信手段に、前記配管内へ超音波を送信させる指示信号を送信する制御手段と、前記超音波送受信手段の超音波受信信号を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した前記超音波受信信号に基づき、前記超音波送受信手段が受信した超音波に前記超音波送受信手段が対向する側の前記配管内壁で反射した透過波が含まれるかを判定する演算手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明による液位計測装置は、配管の外壁に取り付けられ、超音波の送受信を行なう超音波送受信手段と、前記超音波送受信手段と対向する側の前記配管外壁に取り付けられた第2超音波送受信手段と、前記超音波送受信手段に、前記配管内へ超音波を送信させる指示信号を送信する制御手段と、前記第2超音波送受信手段の超音波受信信号を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した前記超音波送受信信号に基づき、前記第2超音波送受信手段が受信した超音波に前記超音波送信手段から送信され前記配管を透過した超音波である透過波が含まれるかを判定する演算手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明による液位計測装置は、配管の外壁に取り付けられ、超音波の送受信を行なう第1超音波送受信手段と、前記配管を挟んで前記第1超音波送受信手段と対向する位置に取り付けられた第2超音波送受信手段と、前記第1超音波送受信手段と前記配管軸方向に異なる位置に取り付けられた第3超音波送受信手段と、前記配管を挟んで前記第3超音波送受信手段と対向する位置に取り付けられた第4超音波送受信手段と、前記第1超音波送受信手段、前記第2超音波送受信手段、前記第3超音波送受信手段、前記第4超音波送受信手段の各々に前記配管内へ超音波を送信させる指示信号を送信する制御手段と、前記第1超音波送受信手段、前記第2超音波送受信手段、前記第3超音波送受信手段、前記第4超音波送受信手段の各々の超音波受信信号を受信する受信手段と、前記超音波受信信号に基づき、前記第1超音波送受信手段、前記第2超音波送受信手段、前記第3超音波送受信手段、前記第4超音波送受信手段の各々について、前記配管の対向する側の内壁からの反射波の有無、対向する位置の超音波送受信手段からの透過波の有無、前記配管の対向する側の外壁に取り付けられ前記配管軸方向に位置が異なる超音波受信手段からの透過波の有無を判定する演算手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液位計測装置によれば、水位計測管における反射波等の有無を用いて液相か気相かを判定することにより、計測対象の表面状態の変化による影響が小さく、信頼性が高い計測を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1による液位計測装置が取り付けられる水位計測管の概略を示す縦断面図。
【図2】実施例1による液位計測装置が取り付けられた水位計測管の部分拡大縦断面図。
【図3】実施例1による液位計測装置の作用を説明するための水位計測管の部分拡大縦断面図。
【図4】(a)反射点が気相の場合の受信信号を示した図。(b)反射点が液相の場合の受信信号を示した図。
【図5】実施例1による液位計測装置の作用を説明するための水位計測管の部分拡大縦断面図。
【図6】実施例1による液位計測装置の作用を説明するための水位計測管の部分拡大縦断面図。
【図7】実施例2による液位計測装置が取り付けられた水位計測管の部分拡大縦断面図。
【図8】(a)反射板24の正面図、(b)図8(a)に示すA−A線矢視断面図。
【図9】実施例3による液位計測装置が取り付けられた水位計測管の部分拡大縦断面図。
【図10】実施例4による液位計測装置が取り付けられた水素計測管の横断面図。
【図11】従来の液位計測装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1について、図面を用いて以下説明する。図1は、本実施例による液位計測装置が取り付けられる原子炉圧力容器の水位計測管を簡略的に示した縦断面図である。図1に示すように、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器1に、圧力容器の水位を計測するための上部配管2、下部配管3、および上部配管2と下部配管3を接続する水位計測管4が設けられている。この水位計測管4の側面に複数の超音波送受信手段11、12が取り付けられる。また、原子炉圧力容器1には冷却材である水が注入されている。
【0016】
図2を用い、本発明による液位計測装置の構成について説明する。図2は、本実施例による液位計測装置が取り付けられた水位計測管を拡大した拡大縦断面図である。水位計測管4の側部表面に超音波送受信手段11a、11b、11cが水位計測管4の軸方向に並べて取り付けられている。また、超音波送受信手段11a、11b、11cと反対側の水位計測管4側部表面に超音波送受信手段12a、12b、12cが取り付けられている。超音波送受信手段11a、11b、11cと超音波送受信手段12a、12b、12cとは、水位計測管4を挟んで対向するように配置されている。
【0017】
これら超音波送受信手段11a、11b、11c、12a、12b、12cは、水位計測管4の内部に超音波パルスを送信し、送信した超音波パルスが水位計測管4の内壁4a及び反対側の内壁4bで反射した反射波を受信する。また、超音波送受信手段11a、11b、11c、12a、12b、12cは、対向する超音波送受信手段から送信され水位計測管4を透過した超音波パルスの透過波を受信する。例えば、超音波送受信手段11aは、超音波送受信手段11aが送信した超音波パルスが内壁4a及び内壁4bで反射した反射波を受信し、また超音波送受信手段12aが送信した超音波パルスの透過波を受信する。なお、図2では3対の超音波送受信手段11a、11b、11c、12a、12b、12cのみ示しているが、超音波送受信手段の個数制限はなく、さらに多数の超音波送受信手段を設置することが可能である。例えば、超音波送受信手段の軸方向の設置間隔が水位の測定精度を表し、軸方向の設置数が水位の測定範囲を表わすことから、水位の測定精度と測定範囲から超音波送受信手段の個数を決定することも可能である。また、別の例として、水位計測管4に設定された水位線の数から超音波送受信手段の個数を決定することもできる。さらには、現在の水位の上側及び下側に超音波送受信手段をそれぞれ1個だけ設置する方法もある。
【0018】
また、超音波送受信手段11a、11b、11c、12a、12b、12cは、各超音波送受信手段に電気信号を送信し、また各超音波送受信手段から電気信号を受信する制御手段21と接続されている。また、各超音波送受信手段と制御手段21の間には変調手段22が設置されている。変調手段22は、制御手段21が各超音波送受信手段に送信する電気信号について、振幅強度、時間幅、サイクル数を変調して伝送する。また、制御手段21は、制御手段21が各超音波送受信手段から受信した信号に基づいて、水位計測管4内が気相か液相かを判定する水位演算手段23と接続されている。
【0019】
制御手段21が各超音波送受信手段に送信する電気信号は、各超音波送受信手段に超音波の送信を指示する信号(以下、指示信号と呼称する。)である。また、制御手段21が各超音波送受信手段から受信する電気信号は、各超音波送受信手段が超音波を受信した場合に発する信号(以下、受信信号と呼称する。)である。
【0020】
これらの制御手段21、変調手段22、水位演算手段23は、原子力発電所の中央制御室や管理区域外等の原子炉格納容器の外部に設置される。制御手段21、変調手段22、水位演算手段23と各超音波送受信手段は格納容器貫通部配管を介して電気的に接続され、電気信号の送受信を行う。
【0021】
上部配管2、下部配管3、水位計測管4は、例えばステンレス鋼、ニッケル基合金、低合金鋼、炭素鋼等の材料で構成される。また、水位計測管4の全長は、水位を測定する所望の範囲に基づいて決定される。水位計測管4の内径には指定は無く、どのような大きさでも良い。また、水位計測管4の外径は、異常時に想定される高温高圧条件においても損傷や破断が起きない肉厚となるように設定される。上部配管2と下部配管3は、外径及び内径、長さに指定は無い。また、上部配管2と下部配管3は、内部に非凝縮性気体が蓄積しないように傾斜している。なお、本実施例では、水位計測管4、上部配管2と下部配管3の断面形状はいずれも円形であるが、内外面の形状を楕円形や多角形とすることも可能である。具体的には、例えば内面の断面形状を円形、外面の形状を正六角形等とすることが可能である。また、水位計測管4、上部配管2や下部配管3の内外面の断面形状を場所によって変えることもできる。例えば、円形の水位計測管4を用い、超音波送受信手段11a、11b、11c、12a、12b、12cを取り付ける部位の外表面を多角形とし、超音波送受信手段11a、11b、11c、12a、12b、12cを多角形の平面に取り付ける方法がある。
【0022】
超音波送受信手段11a、11b、11c、12a、12b、12cは、ニオブ酸リチウム等の耐熱性及び耐放性を有する振動子で構成された超音波プローブである。各超音波送受信手段は金属や液体のカプラントを用いて水位計測管4の側部表面に取り付けられる。超音波パルスの周波数は、水位計測管4及び液相中を伝播するように数百KHz〜数百MHzの範囲で設定される。超音波プローブは、個別の振動子を並べてもよいし、フェーズアレイセンサ等のような配列された振動子を用いてもよい。
【0023】
制御手段21は、超音波送受信手段11a、11b、11c、12a、12b、12cに対する指示信号を生成する高電圧生成回路、超音波送受信手段11a、11b、11c、12a、12b、12cの受信信号を検出する電圧増幅回路で構成される。
【0024】
変調手段22は、制御手段21の高電圧生成回路に接続され、電気信号の電圧、時間幅、サイクル数を変えてパルス出力する電圧変調回路である。超音波送受信手段11a、11b、11c、12a、12b、12cから送信される超音波パルスは、指示信号の電圧等によって決定される。したがって、変調手段22が指示信号を変調することにより、超音波送受信手段11a、11b、11c、12a、12b、12cから送信される超音波パルスが変調される。変調手段22は各超音波送受信手段に送信される指示信号を個別に変調することができる。したがって、超音波送受信手段11a、11b、11c、12a、12b、12cの各々から発せられる超音波パルスの周波数や振幅等を、超音波送受信手段毎に異なるものとすることができる。
【0025】
水位演算手段23は、制御手段21の電圧増幅回路により検出される受信信号に基づいて演算を行い、各超音波送受信手段が受信した超音波に反射波や透過波の有無を特定することにより、水位計測管4内部が気相か液相かを判定する。例えば、超音波送受信手段11aの受信信号について演算処理し、超音波送受信手段11aが受信した超音波が、超音波送受信手段11aが送信して内壁4aまたは内壁4bで反射した反射波か、超音波送受信手段12aが送信して水位計測管4を透過した透過波なのかを特定する。なお、受信信号に含まれるノイズが多い場合は、アナログやデジタルのフィルタ回路、またはソフトウエアによる周波数フィルタリング処理によりノイズ除去や波形抽出を前処理として行った後で、反射波や透過波の有無を特定する。
【0026】
超音波パルスは、水位計測管4の管壁中や水位計測管4の内部液相などにおいて多重反射やモード変換を起こすが、この多重反射やモード変換した反射波や透過波を用いて判定することもできる。本実施例では、多重反射やモード変換がない反射波や透過波を用いるものとして説明する。
【0027】
水位演算手段23としては、一般的なパーソナルコンピュータに演算用のプログラムを組み込んで用いても、専用のハードウェアを製作して用いてもよい。
【0028】
次に、本実施例による液位計測装置の作用について具体的に説明する。まず、超音波送受信手段11aを用いて、内壁4aと内壁4bにおける反射波を用いた水位計測について、図3を用いて説明する。図3は図2をさらに拡大した図であり、超音波送受信手段11aから送信される超音波パルスと、その反射波の経路について図示している。また、図3(a)と図3(b)では水位が異なっている。また、いくつかの構成要素は図示を省略している。
【0029】
制御手段21の指示信号は、変調手段22で変調されて超音波送受信手段12bに送信され、超音波受信手段11aは水位計測管4に超音波パルス31aを送信する。
【0030】
図3(a)で示すように、超音波パルス31aが内壁4aにおける反射点が水位計測管4内部において気相である場合、超音波パルス31aは内壁4aを透過せず、超音波送受信手段11aは内壁4aからの反射波31bを受信する。なお、反射点とは超音波パルス31aが水位計測管4の内壁で反射する位置を意味する。
【0031】
図3(b)で示すように、超音波パルス31aの内壁4aにおける反射点が水位計測管4内部において液相である場合、超音波パルス31aの一部は内壁4aで反射し、一部は内壁4aを透過して液相に入射する。液相に入った超音波パルス31aは内壁4bに到達し、反射する。超音波送受信手段11aは内壁4aからの反射は31bと、内壁4bからの反射波31cを受信する。
【0032】
水位演算手段23は、制御手段21が超音波送受信手段11aから受信した受信信号を演算処理し、超音波送受信手段11aが受信した超音波に反射波31b、反射波31cが含まれるかを特定する。具体的には、まず、受信信号に周波数フィルタリング処理を行ってノイズを除去する。次に、超音波パルスの変調状態や観測時間に基づいて反射波31b及び反射波31cを特定する。超音波パルスは超音波送受信手段毎に変調されているため、超音波の周波数等から、反射波が何れの超音波送受信手段から送信された超音波パルスに起因するものか判別することが出来る。また、反射波31b、反射波31cは、超音波送受信手段11aから送信されてから超音波送受信手段11bに受信されるまでの経路長さが異なるため、反射波31cは反射波31bの後に受信される。したがって、超音波パルスの変調状態や観測時間から、反射波31b及び反射波31cを特定することができる。
【0033】
このような受信信号の一例を図4に示す。図4(a)は反射点が気相であり、反射波31bのみ存在する場合の受信信号を、図4(b)は反射点が液相であり、反射波31b、31cが存在する受信信号を示している。図4(a)(b)ともに、縦軸が信号の振幅強度、横軸が時間を示している。
【0034】
反射点が気相の場合、図4(a)に示すように1回だけ超音波の受信を示す振幅が現れる。これに対して、図4(b)では超音波の受信を示す振幅が2回現れている。先に現れたのが反射波31b、後に現れたのが反射波31cに対応している。また、それ以外の部分で現れている信号はノイズである。図4(b)では、図4(a)に比べて反射波31bの受信による振幅が小さいことがわかる。
【0035】
次に、受信信号の振幅に閾値を設定し、波形振幅が閾値よりも大きければ超音波が受信された、閾値に満たなければ超音波が受信されなかったとする2値判定を行なう。閾値は、ノイズを受信信号として受信することなく、かつ反射波を受信した際の受信信号を適切に受信信号として判定できるように、適切な値を設定する。換言すれば、ノイズが閾値を超えることなく、かつ反射波の受信信号は閾値を超えるような値に設定する。2値判定の結果、反射波31cが存在しない場合は反射点が気相であると判定する。また、2値判定の結果、反射波31cが存在する場合は反射点が液相であると判定する。なお、閾値の設定に関して、反射点が液相の場合の反射波31bの振幅が図4(b)に示すように反射波31cの信号より小さい場合は、反射点が液相の場合の反射波31bの振幅よりも閾値が高い設定であっても良い。反射波31cの有無を判定することが重要であり、反射波31cの振幅が閾値を越える設定であれば充分だからである。
【0036】
このような2値判定を行なうことにより、ノイズや他の超音波に起因する微弱な信号を反射波31b、31cであると誤認することを回避することができる。
【0037】
また、上述した2値判定とは別の判定方法として、反射波31bおよび反射波31cの受信信号を比較して判定することもできる。具体的には、反射波31bの受信信号の振幅をUa、反射波31cの受信信号の振幅をU’aとし、下記の式(1)で信号の振幅比Vを求める。
【数1】

【0038】
さらに、求めた振幅比Vについて、閾値を設定して2値判定を行い、V=0の場合は反射点が気相と判定し、V=1の場合は反射点が液相と判定する。この受信信号の振幅比を用いた判定は、上述した反射波31bおよび反射波31cの有無を判定する方法と併用することができ、複数の判定指標を用いることで計測の信頼性を高めることができる。
【0039】
このように、超音波送受信手段11aが内壁4a及び反対側の内壁4bからの反射波を受信したか特定することにより、反射点が液相であるか気相であるかを判定することができる。超音波の反射率を用いないため、従来方式のように水位計測管4の内壁面に凹凸がある場合等、内壁面状態による影響が小さく、信頼性が高い判定が可能である。
【0040】
上述した反射波を用いた判定は、単独の超音波送受信手段によって行なうことが可能である。また、反射波31cに変え、内壁4bを透過して水位計測管4の外側表面で反射する反射波を用いることも可能である。
【0041】
超音波送受信手段12a、12b、12cについても、水位演算手段23の演算処理の結果、内壁4a、または内壁4aを透過して水位計測管4の外側表面における反射波を受信しなかった場合は気相、受信した場合は液相と判定する。
【0042】
最終的には、水位演算手段23が水位計測管4の軸方向に複数取り付けられた各超音波受信手段について判定し、その結果を用いて水位を計測する。例えば、超音波送受信手段11a、12aで気相、超音波送受信手段11b、11c、12b、12cで液相であるとの判定結果が得られた場合、水位は超音波送受信手段11aと超音波送受信手段11bの間となる。したがって、超音波送受信手段を軸方向に多数取り付けるほど、精度の高い水位計測が可能となる。すなわち、超音波送受信手段の軸方向の設置間隔が水位の測定精度を表わし、さらに設置数が測定範囲を表わすことになる。また、目的に応じて水位計測管4に設定された水位線に合わせて超音波送受信手段11a、11b、11c、12a、12b、12cを設置した場合は、設定された水位レベルを検出する液位計測方法となる。さらには、水位の上方及び下方に超音波送受信手段11a、11b、12a、12bを設置した場合は、水位変動の有無を検出する液位計測方法となる。水位変動の有無の検出精度は、超音波送受信手段11a、11b、12a、12bの軸方向の設置間隔となる。
【0043】
次に、対向する超音波送受信手段からの透過波を用いた水位計測について、超音波送受信手段11a、12aを用いて説明する。図5(a)は図2をさらに拡大した図であり、超音波送受信手段11aから送信される超音波パルスの経路について図示している。また、図5(a)と図5(b)では水位が異なっている。また、いくつかの構成要素は図示を省略している。
【0044】
超音波送受信手段11aは水位計測管4に超音波パルス31aを送信する。特に、超音波送受信手段11aがフェーズアレイセンサの場合は、フェーズアレイセンサの各センサの位相を制御することにより、超音波パルス31aの送信角度を制御することができる。
【0045】
図5(a)で示すように、超音波パルス31aの内壁4aにおける透過点が気相の場合、超音波パルス31aは内壁4aを透過せず超音波送受信手段12aに到達しない。なお、透過点とは超音波パルス31aが水位計測管4の内壁を透過する位置を意味する。実質的に上述した反射点と同じ位置を意味する。
【0046】
他方、図5(b)に示すように、超音波パルス31aの内壁4aにおける透過点が液相の場合、超音波パルス31aの一部が内壁4a、内壁4bを透過して超音波送受信手段12aに到達する。超音波送受信手段11aから超音波送受信手段12aに到達した超音波パルスを透過波31dとする。なお、超音波パルスの内壁4a、内壁4bで反射による反射波は、図5(b)においては図示を省略している。
【0047】
水位演算手段23は、制御手段21が超音波送受信手段12aから受信した信号から、透過波31dの有無を特定する。具体的には、受信信号について周波数フィルタリング処理によりノイズを除去し、超音波パルスの変調状態や観測時間から透過波31dを特定する。
【0048】
上述した反射波を用いた判定のでは、超音波送受信手段11aが受信する内壁4a、内壁4bからの反射波は何れも超音波送受信手段11aが送信した超音波パルスに起因するものであった。しかし、透過波を用いた判定の場合、超音波送受信手段11aから送信された超音波パルスに起因し超音波送受信手段12aに到達する超音波は透過波31dのみである。また、水位計測管4の径は既知であるから、超音波送受信手段12aが超音波パルスを送信してから超音波送受信手段11aが透過波31dを観測するまでの時間は推定することが可能である。したがって、変調状態あるいは観測時間のみで透過波31dを特定することが可能である。さらに、変調状態と推定観測時間を併用することで透過波31dを確実に特定することが可能である。
【0049】
次に、受信信号の振幅に2値判定の閾値を設定する。2値判定の結果、透過波31dが存在する場合は透過点を液相と判定する。他方、透過波31dが存在しない場合は透過点を気相と判定する。
【0050】
さらに、上述した2値判定とは別の判定方法として、透過波31dの受信信号の振幅をU’’aとし、Uaとの振幅比V’を求めて2値判定を行い、V’=0の場合は透過点が気相、逆にV’=1の場合は透過点が液相と判定することもできる。
【0051】
このように、対向する超音波送受信手段からの透過波を用いた判定を、反射波を用いた判定と併用することで、より多数の判定指標を得ることが可能となり判定の信頼性を高めることが可能である。
【0052】
上述した透過波を用いた判定は、対になった超音波送受信手段の各組について行なうことが可能である。また、1対の超音波送受信手段のそれぞれについて行うことが可能である。つまり、例えば超音波送受信手段12aからの透過波の有無に加えて、超音波送受信手段11aからの透過波の有無を特定して判定することができる。すなわち、一対の超音波送受信手段で2つの判定指標を得ることができる。
【0053】
なお、上述した反射波を用いた判定手法と透過波を用いた判定手法を併用すると、反射点/透過点が液相か気相かは、反射波及び透過波の波形振幅による判定、上述したV及びV’による判定の計4手法による判定結果が得られる。これらの判定結果については、最優先の判定を選択して決定する、各判定に重みを付けて判定する、多数の判定結果を採択する、サポートベクターマシン等のニューラルネットワークにより分類判定する、などの手法により、気相か液相かの最終的な判定を行う。
【0054】
次に、斜角透過波を用いた水位計測について、超音波送受信手段11a、12bを用いて説明する。図6は図2をさらに拡大した図であり、超音波送受信手段11aから発せられる超音波パルスについて図示している。また、図6(a)と図6(b)では水位が異なっている。また、いくつかの構成要素は図示を省略している。
【0055】
超音波送受信手段11aは水位計測管4に超音波パルス31aを送信する。図6(a)で示すように、超音波パルス31aの内壁4aにおける反射点が気相の場合、超音波パルス31aは内壁4aを透過せず、超音波送受信手段12bに到達しない。
【0056】
他方、図6(b)に示すように、超音波パルス31aの内壁4aにおける反射点が液相の場合、超音波パルス31aの一部が内壁4a、内壁4bを透過して液相に入射し、超音波送受信手段12bに到達する。この斜角透過波を31eとする。水位演算手段23は、制御手段21が超音波送受信手段12bから受信した信号から、斜角透過波31eを特定する。
【0057】
具体的には、上述した超音波送受信手段11a、12aの透過波についての判定と同様であり、まず受信信号について周波数フィルタリング処理によりノイズを除去し、超音波パルスの変調状態と観測時間から斜角透過波31eを特定する。上述した透過波31dの場合と同様に、変調状態と観測時間の何れかのみで斜角透過波31eを特定可能であるが、変調状態と観測時間を併用することでより確実に斜角透過波31eを特定することが可能である。次に、斜角透過波の振幅に2値判定の閾値を設定する。2値判定の結果、斜角透過波31eが存在する場合は反射点/透過点を液相と判定する。逆に、斜角透過波31eが存在しない場合は透過点及び反射点を気相と判定する。
【0058】
斜角透過波を用いた判定を行なう場合、斜角透過波の内壁4a、4bにおける透過点は、上述した反射波31b、31cや透過波31dと反射点/透過点が異なる。上述した反射波や透過波を用いた判定では、反射点/透過点は各超音波送受信手段の取り付けられた高さに位置する。しかし、斜角透過波を用いた判定の場合は、反射点/透過点は判定に用いる1組の超音波送受信手段の中間の高さに位置する。したがって、内壁4a、4bの反射波や透過波の反射点/透過点における表面状態の影響が大きい場合であっても、斜角透過波は表面状態に影響されず判定をすることができる。
【0059】
また、上述した通り、斜角透過波は1組の超音波送受信手段のおよそ中間高さについて判定を行うことができる。したがって、超音波送受信手段の取り付け高さと異なる高さについても判定を行なうことが可能である。なお、上述した実施例では超音波送受信手段11a、12bを用いるものとして説明したが、例えば超音波送受信手段11a、12cを用いる等、さらに高さ位置が異なる組合せで判定を行なうことも可能である。したがって、超音波送受信手段の組合せにより、多数の高さ位置について判定を行なうことが可能である。図2に示すように3対の超音波送受信手段を備える場合は、6通りの組合せで、かつ双方向について判定が行なえるため、合計12の斜角透過波を用いた判定結果が得られる。
【0060】
以上述べたように、本実施例による液位計測装置によれば、水位計装管内の内壁及び反対側の内壁による超音波パルスの反射波を用い、液相か気相かを判定して水位を求めることにより、液槽壁の表面状態の変化による影響を受けることがなく、信頼性の高い水位計測が可能となる。
【0061】
また、1対の超音波送受信手段について、対抗する超音波送受信手段からの透過波を用い、液相か気相かを判定して水位を求めることにより、液槽壁の表面状態の変化による影響を受けることがなく、信頼性の高い水位計測が可能となる。
【0062】
また、斜角透過波を用いた判定では、超音波送受信手段が取り付けられた高さと異なる高さについて判定することができ、精度の高い水位計測が可能である。
【0063】
また、斜角透過波を用いた判定では、超音波送受信手段の組合せに応じた多数の判定結果を得ることができ、信頼性の高い水位計測が可能である。
【0064】
また、これらの反射波/透過波/斜角透過波を用いた判定は併用することが可能であり、判定の冗長化および多重化によって信頼度の高い水位計測を行なうことが可能である。さらに幾つかの超音波送受信手段が壊れた場合や感度低下が起きた場合であっても水位計測が可能である。
【0065】
また、各超音波送受信手段が送信する超音波パルスを個別に変調することにより、受信した反射波/透過波/斜角透過波が何れの超音波送受信手段から送信されたのか識別でき、超音波送受信手段の近接設置による高精度の水位計測、多数の超音波送受信手段による水位計測、透過波や斜角透過波を用いた信頼性の高い水位計測が可能となる。
【0066】
また、送受信手段及び変調手段、水位演算手段を中央制御室や管理区域外等の原子炉格納容器の外部に設置できるため、故障の恐れなく水位計測を行なうことが可能である。
【0067】
なお、本実施例においては3対の超音波送受信手段を用いるものとして説明するが、前述の通り数量や設置間隔に制限はない。また、超音波送受信手段を上下に移動する、すなわち超音波送受信手段を走査することにより、少数(例えば1個)の超音波送受信手段で水位を計測することが可能である。単独の超音波送受信手段を水位計測管4の軸方向に走査させて判定を複数回行なうことにより、単独の超音波送受信手段で水位を高精度に計測することが可能である。超音波送受信手段の走査は、例えばロボットアームを用いて水位計測管4から離して上下に移動させて再度接触させる、あるいはボールネジ等を用いて超音波走査手段を水位計測管4に接触させたまま上下に移動させることによって行なう。
【0068】
また、水位計測管4に固定された超音波送受信手段と、水位計測管4を軸方向に走査可能に取り付けられた超音波送受信手段とを併用することも可能である。
【実施例2】
【0069】
本発明の実施例2について、図面を用いて以下説明する。なお実施例1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図7は、本実施例による液位計測装置が取り付けられた水位計測管を拡大して示している。
【0070】
本実施例においては、水位計測管4に超音波送受信手段11a、11b、11cが取り付けられている。また、水位計測管4の内壁4bに反射板24が取り付けられている。反射板24は超音波送受信手段11a、11b、11cからの超音波パルスを反射する反射手段であり、配管内壁4bよりも超音波の反射率が高い。また、水位計測管4の下端に超音波送受信手段13が取り付けられている。この超音波送受信手段13は、制御手段21と別途に設置された第2制御手段25と接続されている。この第2制御手段25は、第2水位演算手段26と接続されている。また、制御手段21及び第2制御手段25と接続された音速演算手段27が設けられている。
【0071】
反射板24は、水位計測管4と同様、ステンレス鋼、ニッケル基合金、低合金鋼、炭素鋼等の材料で構成される。形状は、超音波パルスを正反射するべく、水位計測管4の軸方向に平行な平面を有する平板を用いる。反射板24は溶接により内壁4bに取り付けられる。また、この平板から円錐や多角錐をくりぬいた形状として用いても良い。平板から円錐をくりぬいて反射板24として用いた一例を図8に示す。図8(a)は反射板24の正面図、図8(b)は図8(a)に示したA−A線の矢視断面図である。円錐状にくりぬかれた凹部24aは、円錐の底面積を超音波送受信手段11a、11b、11cの送受信面と同程度の寸法とすることが望ましい。また、水位計測管4の内壁表面を研磨して反射手段とする、内壁を平面に加工して反射手段とする、或いは内壁から直接円錐または多角錐をくりぬいて反射手段とすることもできる。
【0072】
本実施例では水位計測管4の軸方向に長い平板を反射板24として取り付けた用いるものとして、以下説明する。
【0073】
超音波送受信手段13は、超音波送受信手段11a、11b、11cと同様、ニオブ酸リチウム等の耐熱性及び耐放性を有する振動子で構成され、金属や液体のカプラントを用いて水位計測管4の下端表面に取り付けられる。超音波パルスの周波数については、水位計測管4及び液相中を伝播するように数百kHz〜数百MHzの範囲で設定される。
【0074】
第2制御手段25は、制御手段21と同様に、超音波送受信手段13において超音波パルスを発生させる電気信号を生成する高電圧生成回路、超音波送受信手段13において受信された超音波パルスによる電気信号を検出する電圧増幅回路で構成される。
【0075】
なお、第2制御手段25、第2水位演算装置26、音速演算手段27は、制御手段21等と同様に原子力発電所の中央制御室や管理区域外等の原子炉格納容器の外部に設置され、格納容器貫通部配管を介して超音波送受信手段13等と接続される。
【0076】
第2水位演算手段26は、第2制御手段25により検出される電気信号の中から、水位計測管4内部の液面5で反射する反射波を特定する。すなわち、超音波送受信手段13が水位計測管4内に送信し、液面5で反射して超音波送受信手段13が受信した反射波を特定する。
【0077】
反射波の特定は、実施例1で説明した反射波や透過波の特定と同様に、電気信号の振幅に閾値を設定して2値判定を行なう。また、検出される電気信号にノイズが多い場合は、アナログやデジタルのフィルタ回路、またはソフトウエアによる周波数フィルタリング処理によりノイズ除去や波形抽出を前処理として行い、液面からの反射波を検出する。
【0078】
音速演算手段27は、制御手段21の電圧増幅回路により検出される電気信号、すなわち超音波送受信手段11a、11b、11cが超音波を受信した際の受信信号の中から、水位計測管4の内壁4aでの反射波と、反対側の内壁4bに取り付けた反射板24からの反射波とを特定する。特定は、実施例1と同様に、電気信号の振幅に閾値を設定した2値判定により行なう。
【0079】
さらに、音速演算手段27は、内壁4aからの反射波と反射板24からの反射波との観測時間差Δtを求め、既知である内壁4aと反射板24の間隔を用い、以下の式(2)によって超音波パルスの音速vを求める。
【数2】

【0080】
なお、反射波は、水位計測管4の管壁や内部液相などにおいて多重反射やモード変換を起こすため、反射波の有無や、超音波パルスの音速vを、多重反射やモード変換した反射波を用いて求めることもできる。
【0081】
次に、本実施例による液位計測装置の作用について説明する。超音波送受信手段11a、11b、11cについて、水位計測管4内部からの反射波を用いて液相か気相かを判定する点については実施例1と同様である。本実施例では反射板24が取り付けられているため、内壁4bからの反射波よりも振幅の大きい高S/N比を有する受信信号が得られる。このため、水位演算手段23における反射波31cの特定が容易になる。また、反射波31cの波形振幅や、振幅比Vを用いた気相と液相の判定についても信頼性が高くなる。
【0082】
また、音速演算手段27は上述した式(2)により超音波の音速vを求める。ここで、超音波パルスの音速vと液相温度の関係が既知であることから液相温度が分かる。したがって、超音波送受信手段11a、11b、11c等の機器が仕様の温度範囲内で使用されているか確認可能である。
【0083】
また、超音波送受信手段13が送信した超音波パルスの反射波は超音波送受信手段13により受信される。この液面での反射波は、第2制御手段25により検出され、超音波パルスの音速vの値と一緒に第2水位演算手段26へ伝送される。超音波送受信手段13が超音波パルスを送信してから液面での反射波を受信するまでの時間差から、超音波の液相中の伝播時間tが求められる。第2水位演算手段26は下記の式(3)を用いて、水位lを算出する。
【数3】

【0084】
このように、水位計測管4の横方向からの水位計測の際に音速を求め、水位計測管4下端に設けた超音波受信手段13の受信信号と音速vを用いることにより、水位を連続的に測定することが可能である。
【0085】
以上述べたように、本実施例の液位計測装置によれば、内壁4bに反射率の高い反射板24を取り付けることにより、波形振幅が大きい高S/Nの反射波が得られるため、反射波を用いた液相/気相の判定が容易になり、計測の信頼性を高めることが可能である。
【0086】
また、内壁4aからの反射波と反射板24からの反射波を用いて液相温度を求めることが可能である。液相温度を求めることにより、超音波送受信手段11a、11b、11cが仕様温度範囲内で超音波送受信手段が使用されていることが確認でき、信頼性の高い水位計測が可能となる。
【0087】
また、液相下端から液相中を伝播して液面で反射する超音波パルスの反射波を用いて連続的な水位測定を行なうことができる。また、液槽壁の表面状態の変化による影響を受けることがなく、信頼性の高い水位計測が可能となる。
【実施例3】
【0088】
本発明の実施例3について、図面を用いて以下説明する。なお実施例1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図9は、本実施例による液位計測装置が取り付けられた水位計測管を拡大して示している。本実施例においては、変調手段22に代えて遅延手段28が設けられている。遅延手段18は制御手段21等と同様、中央制御室や管理区域外等の原子炉格納容器の外部に設置される。
【0089】
遅延手段28は、制御手段21の高電圧生成回路に接続され、制御手段21から出力された電気信号を設定時間だけ時間遅延して各超音波送受信手段へ入力する遅延回路である。
【0090】
遅延手段28は、制御手段21から各超音波送受信手段へ送信される指示信号について、対向設置される一対の超音波送受信手段を単位として時間間隔をあけて超音波パルスが送信されるように、遅延時間を設定して指示信号を伝送する。例えば、図9に示した例では、まず超音波送受信手段11a、12aから超音波パルスを送信させ、次に時間間隔をあけて超音波送受信手段11b、12bから超音波パルスを送信させ、次に時間間隔をあけて超音波送受信手段11c、12cから超音波パルスを送信させ・・・となるように遅延時間を設定する。
【0091】
このように超音波パルスを送信するタイミングを制御することにより、例えば超音波送受信手段11a、12aを用いる場合はその他の超音波送受信手段から超音波パルスが送信されないため、超音波送受信手段毎に超音波パルスを変調しなくとも、各超音波パルスが何れの超音波送受信手段から送信されたものか誤ることがなく、信頼性の高い水位判定が可能となる。なお、この場合、超音波送受信手段11a、12a以外の超音波送受信手段でも超音波パルスの透過波、斜角透過波が受信されるため、変調手段22を用いる場合と同様に、反射波、透過波、斜角透過波を併用して判定を行うことができる。
【0092】
上述したように、各水位について液相か気相かについて複数の判定結果が得られる。これらの判定結果について、最優先の判定を選択して決定する、各判定に重みを付けて判定する、多数の判定結果を採択する、サポートベクターマシン等のニューラルネットワークにより分類判定する、などによって液相か気相かを判定することにより、信頼性の高い水位判定が可能となる。
【0093】
以上述べたように、本実施例の液位計測装置によれば、対向設置される一対の超音波送受信手段を単位として時間間隔をあけて超音波パルスが送信されるように遅延時間を設定することにより、その他の超音波送受信手段が送信する超音波パルスを誤認して判定を誤るようなことなく、超音波パルスを個別に変調せずに信頼性の高い水位判定が可能である。
【0094】
また、反射波、透過波、斜角透過波による判定を併用することが可能であり、信頼性の高い水位計測が可能である。
【0095】
また、送受信手段及び遅延手段、さらに水位演算手段を中央制御室や管理区域外等の原子炉格納容器の外部に設置して水位計測管と隔てることにより、高温及び高放射線環境において信頼性の高い水位計測が可能となる。
【実施例4】
【0096】
本発明の実施例4について、図面を用いて以下説明する。なお実施例1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図10は、本実施例による液位計測装置が取り付けられた水位計測管4を、軸方向と垂直な断面を拡大して示した部分拡大横断面図である。本実施例においては、水位計測管4に超音波送受信手段11a、12a、14a、15aが取り付けられており、それぞれ制御手段21と電気的に接続されている。また、その他の構成は図示を省略している。
【0097】
本実施例においては、超音波送受信手段を水位計測管4の周方向に複数取り付けている。反射波や透過波を用いた気相と液相の判定については、実施例1にて説明した方法と同様である。
【0098】
本実施例の液位計測装置によれば、水位計測管の周方向に超音波送受信手段を複数設置することにより、同一の水位について、液相か気相かの判定結果が複数得られるため、液槽壁の表面状態の変化による影響を受けることがなく、信頼性の高い水位計測が可能となる。
【0099】
また、本実施例では4つの超音波送受信手段11a、12a、14a、15aを取り付けるものとしたが、例えば超音波送受信手段14aが取り付けられている側の水位計測管4の内壁に実施例2で説明した反射手段24を設け、超音波送受信手段11a、12a、14aのみ取り付けた構成とすることも可能である。当然ながら、周方向に取り付ける超音波送受信手段に数量の制限はない。
【0100】
以上本発明の実施例について図を参照して説明してきたが、上記複数の実施例に説明した特徴を任意に組み合わせたところの構成であってもよい。例えば、実施例3では変調手段22に代えて遅延手段28を用いるものとして説明したが、併用してもよい。また、超音波送受信手段は1対になっていなくとも反射波による計測は可能であるため、一部あるいは全ての超音波送受信手段が対になっていなくとも良い。また、各実施例においては原子炉圧力容器の水位計測を例に説明したが、本発明による液位計測装置の適用対象は原子炉圧力容器に限定されない。
【符号の説明】
【0101】
1 原子炉圧力容器
2 上部配管
3 下部配管
4 水位計測管
4a、4b 内壁
5 液面
11、11a、11b、11c、12、12a、12b、12c、13,14a、15a 超音波送受信手段
21 制御手段
22 変調手段
23 水位演算手段
24 反射板
24a 凹部
25 第2制御手段
26 第2水位演算手段
27 音速演算手段
28 遅延手段
31a 超音波
31b、31c 反射波
31d 透過波
31e 斜角透過波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の外壁に取り付けられ、超音波の送受信を行なう超音波送受信手段と、
前記超音波送受信手段に、前記配管内へ超音波を送信させる指示信号を送信する制御手段と、
前記超音波送受信手段の超音波受信信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記超音波受信信号に基づき、前記超音波送受信手段が受信した超音波に前記超音波送受信手段が対向する側の前記配管内壁で反射した反射波が含まれるかを判定する演算手段と、を備えることを特徴とする液位計測装置。
【請求項2】
前記超音波送受信手段を前記配管の軸方向に走査させる走査手段を備えることを特徴とする請求項1記載の液位計測装置。
【請求項3】
前記超音波送受信手段と対向する側の前記配管内壁に取り付けられた反射手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の液位計測装置。
【請求項4】
配管の外壁に取り付けられ、超音波の送受信を行なう超音波送受信手段と、
前記超音波送受信手段と対向する側の前記配管外壁に取り付けられた第2超音波送受信手段と、
前記超音波送受信手段に、前記配管内へ超音波を送信させる指示信号を送信する制御手段と、
前記第2超音波送受信手段の超音波受信信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記超音波送受信信号に基づき、前記第2超音波送受信手段が受信した超音波に前記超音波送信手段から送信され前記配管を透過した透過波が含まれるかを判定する演算手段と、を備えることを特徴とする液位計測装置。
【請求項5】
前記超音波送受信手段と前記第2超音波送受信手段は、前記配管の軸方向に異なる高さに配置されており、前記透過波は前記配管の軸方向に対して斜めに入射する斜角透過波であることを特徴とする請求項4記載の液位計測装置。
【請求項6】
前記超音波受信手段は前記配管の軸方向に複数設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の液位計測装置。
【請求項7】
前記第2超音波受信手段は前記配管の軸方向に複数設けられたことを特徴とする請求項4乃至請求項6の何れか1項記載の液位計測装置。
【請求項8】
前記指示信号を変調する変調手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項記載の液位計測装置。
【請求項9】
前記指示信号の送信に遅延時間を設定する遅延手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項記載の液位計測装置。
【請求項10】
前記超音波受信手段または前記第2超音波受信手段を前記配管の周方向に複数取り付けたことを特徴とする請求項1乃至請求項9記載の液位計測装置。
【請求項11】
前記受信信号が受信した受信信号に基づき、前記配管中の音速を求める音速演算手段と、
前記配管の下端に取り付けられた第3超音波送受信手段と、
前記第3超音波手段に前記配管内へ超音波を送信させる指示信号を送信する第2制御手段と、
前記第3超音波送受信手段の超音波受信信号を受信する第2受信手段と、
前記第3超音波送受信手段が超音波を送信してから超音波を受信するまでの時間差と前記音速演算手段が求めた音速を用いて液位を計算する液位演算手段と、を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項記載の液位計測装置。
【請求項12】
配管の外壁に取り付けられ、超音波の送受信を行なう第1超音波送受信手段と、
前記配管を挟んで前記第1超音波送受信手段と対向する位置に取り付けられた第2超音波送受信手段と、
前記第1超音波送受信手段と前記配管軸方向に異なる位置に取り付けられた第3超音波送受信手段と、
前記配管を挟んで前記第3超音波送受信手段と対向する位置に取り付けられた第4超音波送受信手段と、
前記第1超音波送受信手段、前記第2超音波送受信手段、前記第3超音波送受信手段、前記第4超音波送受信手段の各々に前記配管内へ超音波を送信させる指示信号を送信する制御手段と、
前記第1超音波送受信手段、前記第2超音波送受信手段、前記第3超音波送受信手段、前記第4超音波送受信手段の各々の超音波受信信号を受信する受信手段と、
前記超音波受信信号に基づき、前記第1超音波送受信手段、前記第2超音波送受信手段、前記第3超音波送受信手段、前記第4超音波送受信手段の各々について、前記配管の対向する側の内壁からの反射波の有無、対向する位置の超音波送受信手段からの透過波の有無、前記配管の対向する側の外壁に取り付けられ前記配管軸方向に位置が異なる超音波受信手段からの透過波の有無を判定する演算手段と、を備えることを特徴とする液位計測装置。
【請求項13】
前記配管内の水位の測定範囲または測定精度の少なくとも一方に基づいて前記超音波受信手段及び前記第2超音波受信手段の設置個数が決定されることを特徴とする請求項6乃至請求項7の何れか1項記載の液位計測装置。
【請求項14】
前記配管内に設定された水位線から前記超音波受信手段及び前記第2超音波受信手段の設置個数が決定されることを特徴とする請求項6乃至請求項7の何れか1項記載の液位計測装置。
【請求項15】
前記配管内の水位から前記超音波受信手段及び前記第2超音波受信手段をそれぞれ二つ設置することを特徴とする請求項6乃至請求項7の何れか1項記載の液位計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−276593(P2010−276593A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195818(P2009−195818)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】