説明

液体の滴下法

少なくとも滴下プレートの下面が少なくとも部分的に、滴下されるべき液体に対して少なくとも60゜の接触角を有する、滴下プレートを用いた液体の滴下法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滴下プレート(Vertropferplatte)を用いた液体の滴下法に関し、その際、少なくとも滴下プレートの下面は少なくとも部分的に、滴下されるべき液体に対して少なくとも60゜の接触角を有し、ならびに吸水性ポリマー粒子の製造法の使用に関する。
【0002】
殊に吸水性ポリマーは、(共)重合された親水性モノマーからのポリマー、適切なグラフトベース上の1つ以上の親水性モノマーのグラフト(共)重合体、架橋されたセルロースエーテルまたはデンプンエーテル、架橋されたカルボキシメチルセルロース、部分的に架橋されたポリアルキレンオキシドまたは水性液体中で膨潤可能な天然製品、例えばグアール誘導体である。そのようなポリマーは、おむつ、タンポン、生理帯およびその他の衛生用品を製造するための、水溶液を吸収する製品として使用されるが、しかしまた農業園芸における保水剤としても使用される。
【0003】
吸水性ポリマーの製造は、例えば研究論文"Modern Superabsorbent Polymer Technology", F.L.BuchholzおよびA.T.Graham, Wiley-VCH, 1998、またはUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版 , 第35巻, 第73頁〜第103頁に記載される。
【0004】
吸水性ポリマーの特性は、架橋度を介して調整されうる。架橋度が増すにつれてゲル強度は増しかつ吸収容量は低下する。このことは、加圧下での吸収性(Absorption unter Druck)(AUL)が増すにつれて遠心保持容量(Zentrifugenretentionskapazitaet)(CRC)が減少することを意味する(架橋度があまりに高すぎると、加圧下での吸収性も再び減少する)。
【0005】
適用特性、例えばおむつ中での液体誘導性(Fluessigkeitsleitfaehigkeit)(Saline Flow Conductivity)(SFC)および加圧下での吸収性の改善のために、吸水性ポリマー粒子は一般的に後架橋される。それによって粒子表面の架橋度のみが増し、そのことによって加圧下での吸収性(AUL)と遠心保持容量(CRC)とは少なくとも部分的に関連づけが解かれうる。この後架橋は水性ゲル相中で実施されうる。しかし有利には、粉砕されたおよび篩分されたポリマー粒子(ベースポリマー)は表面が後架橋剤で被覆され、熱的に後架橋されかつ乾燥される。そのために適した架橋剤は、親水性ポリマーのカルボキシレート基と共有結合を形成しうる少なくとも2つの基を含有する化合物である。
【0006】
後架橋は、研究論文"Modern Superabsorbent Polymer Technology", F.L.BuchholzおよびA.T.Graham, Wiley-VCH, 1998, 第97頁〜第103頁に記載される。通常、吸水性ポリマー粒子は後架橋剤で湿らされかつ熱的に後架橋され、その際、ポリマー粒子は熱風を用いてまたは接触乾燥を用いて加温されえかつ同時に乾燥されうる。後架橋剤を均一に粒子表面上で分散させるために、後架橋剤は一般には溶媒中、有利には水中または水溶液中に溶解されて使用される。通常、溶媒は後架橋後に再び除去される。
【0007】
噴霧重合によって、方法工程の重合および乾燥が一つにまとめられえた。付加的に、粒度は適切な方法処理によって一定の限度内で調整されえた。
【0008】
噴霧重合による吸水性ポリマー粒子の製造は、例えばEP−A−0348180、WO−A−96/40427、DE−A−10314466ならびにDE−A−10340253に記載される。
【0009】
反応は、モノマー溶液が単分散液滴の形で自由落下しうる装置中でも実施されうる。そのために適しているのは、例えば特許文献US−A−5,269,980、第3段、第25行目〜第32行目に記載されている装置である。単分散液滴の重合により、狭い粒度分布を有するポリマー粒子が生じる。
【0010】
本発明の課題は、狭い粒度分布を有する、殊に小さい粒子を低い割合で有する吸水性ポリマー粒子の改善された製造法を供給することであった。
【0011】
本発明に従う課題は、滴下プレートを用いた液体の滴下法において、少なくとも滴下プレートの下面が少なくとも部分的に、液体に対して少なくとも60゜の接触角を有することを特徴とする、滴下プレートを用いた液体の滴下法によって解決された。
【0012】
滴下プレートは少なくとも1つの孔を有するプレートであって、その際、液体は上方から孔を通って入る。滴下プレートもしくは液体は揺動され、そのことによって滴下プレートの下面では単分散液滴鎖が生み出される。滴下プレートの機能の仕方は、US−5,269,980でも第3段、第37行目〜第54行目で説明される。
【0013】
孔の数は、所望された容量および液滴径に従って選択される。通常、滴下プレートは、少なくとも1個、有利には10個、とりわけ有利には少なくとも50個、および通常、10000個まで、有利には5000個まで、とりわけ有利には1000個まで孔を有し、その際、通常、孔は均一に滴下プレートにわたって、有利にはいわゆる三角ピッチにおいて分布されており、すなわちそのつど3個の孔が正三角形の角を形成する。
【0014】
孔の直径は、所望された液滴径に合わせられる。通常、孔の直径は、少なくとも50μm、有利には少なくとも75μm、とりわけ有利には少なくとも100μm、および通常、1000μmまで、有利には600μmまで、とりわけ有利には300μmまでである。
【0015】
滴下プレートをキャリアプレート上に置くことが有利でありえ、その際、キャリアプレートは同様に孔を有する。その際、キャリアプレートの孔は滴下プレートの孔より大きい直径を有しかつ、滴下プレートの各々の孔の下にキャリアプレートの同心の孔が存在するように配置されている。この配置により滴下プレートの迅速な交換が、例えば他の大きさの液滴を生み出すために可能となる。滴下プレートとキャリアプレートとからのこのようなシステムは本発明の意味における滴下プレートに適用され、すなわちこのシステムの滴下プレート/キャリアプレートの下面は滴下プレートの下面ということになる。
【0016】
接触角は、表面に対する液体、殊に水の濡れ挙動の度合いであり、かつ通常の方法により、例えばASTM D 5725に従って測定されうる。低い接触角は良好な濡れを、そして高い接触角は乏しい濡れを意味する。
【0017】
有利には、滴下されるべき液体に対する滴下プレートの全下面の接触角は少なくとも60゜である。しかしまた滴下プレートは、滴下されるべき液体に対して少なくとも60゜の接触角を有する材料から完全に成っていてもよい。
【0018】
滴下されるべき液体に対する接触角は、有利には少なくとも70゜、とりわけ有利には少なくとも80゜、極めて有利には少なくとも90゜である。
【0019】
有利には水溶液は滴下され、すなわち滴下プレートはこの場合、水に対して少なくとも60゜の、有利には少なくとも70゜の、とりわけ有利には少なくとも80゜の、極めて有利には少なくとも90゜の接触角を有する。
【0020】
しかしまた、滴下プレートは滴下されるべき液体に対してより低い接触角を有する材料、例えば材料番号1.4571の鋼から成り、かつ滴下されるべき液体に対してより大きい接触角を有する材料で被覆されることも可能である。
【0021】
適切な被覆は、例えばフッ素含有ポリマー、例えばペルフルオロアルコキシエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン−コポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン−コポリマーおよびフッ素化ポリエチレンである。
【0022】
被覆剤は分散液としてサブストレートに塗布されえ、その際、引き続き溶媒は蒸発されかつ熱処理される。ポリテトラフルオロエチレンに関して、これは例えばUS−3,243,321に記載されている。
【0023】
さらに他の被覆法は、"Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry"(Updated Sixt Edition, 2000 Electronic Release)の電子版における見出し語"Thin Films"の下で見つけることができる。
【0024】
さらに、被覆剤は化学ニッケルめっきの分野においてもニッケル層に組み込まれうる。
【0025】
滴下プレートの濡れ性が乏しいことから、狭い液滴径分布を有する単分散液滴が得られる。
【0026】
本発明に従う滴下法は、狭い液滴径分布が所望されている全ての適用に適している。このための例は、溶融物の調製 (Konfektionierung)、噴霧乾燥および噴霧重合である。
【0027】
そうして例えばステアリン酸溶融物が滴下されえ、その際、液滴の凝固後に狭い粒度分布が得られる。
【0028】
同様に溶液は乾燥されえ、その際、同様に狭い粒度分布を有する乾燥された粒子が得られる。
【0029】
しかしとりわけ有利なのは、噴霧重合のための、殊に吸収性ポリマー粒子の製造のための本発明に従う滴下の使用である。
【0030】
本発明に従う方法によって製造可能な吸収性ポリマー粒子は、
a)少なくとも1つのエチレン性不飽和の、酸基を有するモノマー、
b)少なくとも1つの架橋剤、
c)選択的に、少なくとも1つのモノマーa)と共重合可能なエチレン性のおよび/またはアリル性の不飽和モノマーおよび
d)選択的に、モノマーa)、b)および場合によりc)が少なくとも部分的にグラフトされうる少なくとも1つの水溶性ポリマー
を含有するモノマー溶液の重合によって製造されうる。
【0031】
適切なモノマーa)は、例えばエチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸、またはそれらの誘導体、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルである。とりわけ有利なモノマーは、アクリル酸およびメタクリル酸である。極めて有利なのは、アクリル酸である。
【0032】
通常、モノマーa)の酸基は部分的に中和されており、有利には25〜85モル%に、有利には27〜80モル%に、とりわけ有利には27〜30モル%または40〜75モル%に中和されており、その際、通常の中和剤が使用されえ、有利にはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩ならびにそれらの混合物が使用されうる。アルカリ金属塩の代わりにアンモニウム塩も使用されうる。ナトリウムおよびカリウムはアルカリ金属としてとりわけ有利であるが、しかしながら極めて有利なのは水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムならびにそれらの混合物である。通常、中和は、水溶液としての、溶融物としての、または有利には同様に固体としての中和剤をモノマー溶液中へ混和することによって達成される。例えば、明らかに50質量%を下回る水割合を有する水酸化ナトリウムは、23℃を上回る融点を有するろう状の材料として存在してよい。このケースにおいては、高められた温度にて反物(Stueckgut)または溶融物としての計量供給が可能である。
【0033】
モノマーa)、殊にアクリル酸は、有利にはヒドロキノン半エーテルを0.025質量%まで含有する。有利なヒドロキノン半エーテルは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)および/またはトコフェロールである。
【0034】
トコフェロールは以下の式
【化1】

[式中、Rは、水素またはメチルであり、Rは、水素またはメチルであり、Rは、水素またはメチルであり、かつRは、水素または炭素原子1〜20個を有する酸基を意味する]の化合物と理解される。
【0035】
のための有利な基は、アセチル、アスコルビル、スクシニル、ニコチニルおよびその他の生理学的に許容性のカルボン酸である。カルボン酸は、モノ−、ジ−またはトリカルボン酸であってよい。
【0036】
有利なのは、R=R=R=メチルであるアルファ−トコフェロール、殊にラセミ体のアルファ−トコフェロールである。Rは、とりわけ有利には水素またはアセチルである。殊に有利なのは、RRR−アルファ−トコフェロールである。
【0037】
有利にはモノマー溶液は、そのつどアクリル酸に対してヒドロキノン半エーテル130質量ppm未満を、とりわけ有利には70質量ppm未満を、有利には少なくとも10質量ppmを、とりわけ有利には少なくとも30質量ppmを、殊に50質量ppmを含有し、その際、アクリル酸塩もアクリル酸として考慮される。例えばモノマー溶液の製造のために、ヒドロキノン半エーテルの相応する含有率を有するアクリル酸が使用されうる。
【0038】
架橋剤b)は、ポリマーネットワーク中にラジカル重合により導入されうる少なくとも2つの重合性基を有する化合物である。例えば適切な架橋剤b)は、EP−A−0530438に記載されたエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、EP−A−0547847、EP−A−0559476、EP−A−0632068、WO−A−93/21237、WO−A−03/104299、WO−A−03/104300、WO−A−03/104301に、およびDE−A−10331450に記載されたジアクリレートおよびトリアクリレート、DE−A−10331456および文書番号10355401.7の比較的昔のドイツ国出願に記載された、アクリレート基以外にさらに他のエチレン性不飽和基を含有する混合されたアクリレート、または例えばDE−A−19543368、DE−A−19646484、WO−A−90/15830およびWO−A−02/32962に記載された架橋剤混合物である。
【0039】
適切な架橋剤b)は、殊にN,N'−メチレンビスアクリルアミドおよびN,N'−メチレンビスメタクリルアミド、ポリオールの不飽和のモノカルボン酸またはポリカルボン酸のエステル、例えばジアクリレートまたはトリアクリレート、例えばブタンジオールジアクリレートまたはエチレングリコールジアクリレートもしくはブタンジオールメタクリレートまたはエチレングリコールメタクリレートならびにトリメチロールプロパントリアクリレートおよびアリル化合物、例えばアリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリルエステル、ポリアリルエステル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルアミン、テトラアリルエチレンジアミン、リン酸のアリルエステルならびにビニルホスホン酸誘導体であり、それらは例えばEP−A−0343427に記載されている。さらに適切な架橋剤b)は、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテルおよびペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテルおよびグリセリントリアリルエーテル、ソルビトールをベースとするポリアリルエーテル、ならびにエトキシル化されたその変形である。本発明に従う方法において使用可能なのはポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレートであり、その際、使用されるポリエチレングリコールは300から1000の間の分子量を有する。
【0040】
しかしながらとりわけ有利な架橋剤b)は、3〜15回(-fach)エトキシル化されたグリセリンの、3〜15回エトキシル化されたトリメチロールプロパンの、3〜15回エトキシル化されたトリメチロールエタンのジアクリレートおよびトリアクリレート、殊に、2〜6回エトキシル化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパンの、3回プロポキシル化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパンの、ならびに3回混合エトキシル化またはプロポキシル化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパンの、15回エトキシル化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパンの、ならびに40回エトキシル化されたグリセリン、トリメチロールエタンまたはトリメチロールプロパンのジアクリレートおよびトリアクリレートである。
【0041】
極めて有利な架橋剤b)は、例えばWO−A−03/104301に記載されている、アクリル酸またはメタクリル酸でジアクリレートまたはトリアクリレートにエステル化された繰り返しエトキシル化および/またはプロポキシル化されたグリセリンである。とりわけ有利なのは、3〜10回エトキシル化されたグリセリンのジアクリレートおよび/またはトリアクリレートである。極めて有利なのは、1〜5回エトキシル化されたおよび/またはプロポキシル化されたグリセリンのジアクリレートまたはトリアクリレートである。最も有利なのは、3〜5回エトキシル化および/またはプロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートである。これらは吸水性ポリマー中のとりわけ低い残留物含有率(一般に10質量ppmを下回る)によって特徴づけられ、かつそれを用いて製造された吸水性ポリマーの水性抽出物は、同じ温度の水と比較してほぼ無変化の表面張力(一般に少なくとも0.068N/m)を有する。
【0042】
架橋剤b)の量は、そのつどモノマーa)に対して、有利には少なくとも0.001モル%、とりわけ有利には少なくとも0.01モル%、極めて有利には少なくとも0.1モル%および有利には10モル%まで、とりわけ有利には5モル%まで、極めて有利には2モル%までである。
【0043】
モノマーa)と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーc)は、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、クロトン酸アミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノブチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノネオペンチルアクリレートおよびジメチルアミノネオペンチルメタクリレートである。
【0044】
水溶性ポリマーd)として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、デンプン誘導体、ポリグリコールまたはポリアクリル酸、有利にはポリビニルアルコールおよびデンプンが使用されうる。
【0045】
通常、モノマー溶液中のモノマーa)の濃度は、2〜80質量%、有利には5〜70質量%、とりわけ有利には10〜60質量%である。
【0046】
モノマーa)の水中での溶解度は、23℃で一般に少なくとも1g/水100g、有利には少なくとも5g/水100g、とりわけ有利には少なくとも25g/水100g、極めて有利には少なくとも50g/水100gである。
【0047】
有利な重合禁止剤は、最適な作用のために溶存酸素を必要とする。それゆえ重合禁止剤から溶存酸素を重合前に、不活性化、すなわち不活性ガス、有利には窒素を用いた貫流によって除去してよい。有利には、重合前のモノマー溶液の酸素含有率は1質量ppm未満に、とりわけ有利には0.5質量ppm未満に下がる。
【0048】
モノマー溶液は、開始剤の存在において重合される。
【0049】
開始剤は通常の量で使用され、例えば重合されるべきモノマーに対して0.001〜5質量%、有利には0.01〜1質量%の量で使用される。
【0050】
開始剤として、重合条件下でラジカルに分解する全ての化合物、例えば過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ化合物およびいわゆるレドックス開始剤が使用されうる。有利なのは水溶性開始剤の使用である。たいていのケースにおいては、種々の開始剤の混合物、例えば過酸化水素とペルオキソ二硫酸ナトリウムまたはペルオキソ二硫酸カリウムとからの混合物を使用することが有利である。過酸化水素とペルオキソ二硫酸ナトリウムとからの混合物は、そのつど任意の比において使用されうる。
【0051】
生成物の要求に相応して、本発明に従う方法によって製造可能なポリマー粒子のpH値はモノマー溶液のpH値を介して所望された範囲に調整されうる。例えば、化粧品適用のためのポリマーは通常、5〜6のpH値を有するべきである。
【0052】
有利には、反応は不活性のキャリアガスの存在において実施され、その際、不活性とは、キャリアガスがモノマー溶液の成分と反応条件下で反応しないことを意味する。不活性のキャリアガスは、有利には窒素である。不活性のキャリアガスの酸素含有率は、有利には5体積%を下回り、有利には2体積%を下回り、とりわけ有利には1体積%を下回る。
不活性のキャリアガスは、モノマー溶液の自由落下する液滴に対して等しい流でまたは逆流で、有利には逆流で反応室を通過しうる。有利には、キャリアガスは一回の通過後に少なくとも部分的に、有利には少なくとも50%が、とりわけ有利には少なくとも75%が循環ガスとして反応室中に返送される。通常、キャリアガスの部分量は各々の通過後に排出され、有利には10%まで、とりわけ有利には3%まで、極めて有利には1%まで排出される。
【0053】
有利にはガス速度は、流が反応器中で、例えば全体の流方向に向き合った対流渦が存在しないように整えられており、かつ例えば0.02〜1.5m/s、有利には0.05〜0.4m/sとなるように調整される。
【0054】
有利には反応室中の温度は、有利には70〜250℃、とりわけ有利には80〜190℃、極めて有利には90〜140℃である。
【0055】
反応は過圧でまたは低圧で実施されえ、周囲圧力に対して100mbarまでの低圧が有利である。
【0056】
通常、重合速度および乾燥速度は種々の温度依存性を有する。例えばこれは、噴霧された液滴が所望された反応率に達する前に乾くことを意味しうる。それゆえ反応速度と乾燥速度とに切り離して影響を及ぼすことが有利である。
【0057】
乾燥速度は不活性ガスの相対湿度を介して影響を及ぼされうる。不活性ガスの相対湿度は、一般的に90%未満、有利には60%未満、とりわけ有利には30%未満である。その際、相対湿度は、所定の温度での水蒸気分圧と最大水蒸気分圧(飽和)とからの100%を掛けた商である。
【0058】
重合速度は、使用される開始剤系の種類および量によって調整されうる。
【0059】
重合速度の制御のために有利なのは、開始剤としてのアゾ化合物またはレドックス開始剤の使用である。重合の開始特性は、アゾ化合物またはレドックス開始剤を用いて、開始剤の選択、開始剤濃度および反応温度を介して、例えば純粋な過酸化物開始剤より良好に制御されうる。
【0060】
キャリアガスは、目的に合わせて反応器の前で70〜250℃、有利には80〜190℃、とりわけ有利には90〜140℃の反応温度に予熱される。
【0061】
とりわけ有利なのは光開始剤である。光開始剤が使用される場合、乾燥速度は温度を介して所望された値に調整されえ、その際、それによって同時にラジカル形成が本質的に影響を及ぼされることはない。有利には、光重合はUV線によって反応器の上方領域において滴下プレートの付近で開始される。
【0062】
反応排ガス、すなわち反応室を通過するキャリアガスは、例えば熱交換器中で冷却されうる。適切な熱交換器はスクラバーのような直接熱交換器、および凝縮器のような間接熱交換器である。その際、水および反応されなかったモノマーが凝縮する。その後、反応排ガスは少なくとも部分的に再び加熱されかつ循環ガスとして反応器中に返送されうる。有利には循環ガスは、冷却された循環ガスが反応のために所望された割合の水蒸気を有するように冷却される。反応排ガスの一部は排出されかつ新鮮なキャリアガスに置き換えられえ、その際、反応排ガス中に含有された反応されなかったモノマーは分離されえかつ返送されうる。
【0063】
とりわけ有利なのは熱統合(Waermeverbund)であり、すなわち排ガスの冷却に際しての排熱の一部は、循環ガスの加熱のために使用される。
【0064】
反応器はトレース加熱されうる。その際、有利にはトレース加熱は、壁温度が反応器内部温度より少なくとも5℃上回りかつ反応器壁での凝縮が確実に防止されるように調整される。
【0065】
得られたポリマー粒子は、引き続き乾燥および/または後架橋されうる。
【0066】
適切な後架橋剤e)は、ヒドロゲルのカルボキシレート基と共有結合を形成しうる少なくとも2つの基を含有する化合物である。例えば適切な化合物は、EP−A−0083022、EP−A−0543303およびEP−A−0937736に記載された、アルコキシシリル化合物、ポリアジリジン、ポリアミン、ポリアミドアミン、ジグリシジル化合物またはポリグリシジル化合物、DE−C−3314019、DE−C−3523617およびEP−A−0450922に記載された二官能性アルコールまたは多官能性アルコール、またはDE−A−10204938およびUS−6,239,230に記載されたβ−ヒドロキシアルキルアミドである。
【0067】
さらに、DE−A−4020780において環状カーボネート、DE−A−198075022においてオキサゾリドンおよびその誘導体、例えば2−ヒドロキシエチル−2−オキサゾリドン、DE−A−19807992においてビス−およびポリ−2−オキサゾリジノン、DE−A−198545732においてオキサテトラヒドロ−1,3−オキサジンおよびその誘導体、DE−A−19854574においてN−アシル−2−オキサゾリドン、DE−A−10204937において環状尿素、DE−A−10334584において二環式アミドアセタール、EP−A−1199327においてオキセタンおよび環状尿素およびWO−A−03/031482においてモルホリン−2,3−ジオンおよびその誘導体が適切な後架橋剤として記載されている。
【0068】
本発明のさらに他の一対象は、本発明に従う方法により得られる吸水性ポリマー粒子である。
【0069】
一般に、本発明に従う方法により製造可能な吸水性ポリマー粒子は、少なくとも15g/g、有利には少なくとも20g/g、とりわけ有利には少なくとも25g/gの遠心保持容量(CRC)を有する。遠心保持容量(CRC)は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨された試験法No.441.2−02"Cenntrifuge retention capacity"に従って測定される。
【0070】
一般に、本発明に従う方法により製造可能な吸水性ポリマー粒子は、少なくとも10g/g、有利には少なくとも15g/g、とりわけ有利には少なくとも20g/gの0.3psi(2.07kPa)の加圧下での吸収性を有する。加圧下での吸収性(AUL)は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨された試験法No.442.2−02"Absorption under pressure"に従って測定される。
【0071】
本発明のさらに他の一対象は、本発明に従う方法により製造された吸水性ポリマー粒子の使用を包含する、衛生用品、殊におむつの製造法である。
【0072】
本発明のさらに他の一対象は、本発明に従う吸水性ポリマー粒子の50〜100質量%、有利には60〜100質量%、有利には70〜100質量%、とりわけ有利には80〜100質量%、極めて有利には90〜100質量%からなる吸収層を含有する衛生用品であり、その際、吸収層を覆い隠すことは考慮されない。
【0073】
本発明のさらに他の一対象は滴下プレートを含有する反応器であり、その際、少なくとも滴下プレートの下面は少なくとも部分的に水に対して少なくとも60゜の接触角を有する。
【0074】
孔同士の間隔は、有利には1〜100mm、とりわけ有利には2〜50mm、極めて有利には5〜20mmである。
【0075】
滴下プレートの厚みは、滴下プレートが十分に機械的に安定しており、しかし同時に十分に揺動しうるように選択される。
【0076】
滴下プレートの厚みは、有利には0.1〜2mm、とりわけ有利には0.2〜1.5mm、極めて有利には0.5〜1mmであり、その際、考えうるキャリアプレートは考慮されない。
【0077】
有利には、水に対する滴下プレートの全下面の接触角は少なくとも60゜である。しかしまた滴下プレートは、水に対して少なくとも60゜の接触角を有する材料から完全に成っていてもよい。
【0078】
水に対する接触角は、有利には少なくとも70゜、とりわけ有利には少なくとも80゜、極めて有利には少なくとも90゜である。
【0079】
しかしまた滴下プレートは、水に対して低い接触角を有する材料、例えば材料番号1.4571の鋼から成っており、かつ水に対してより大きい接触角を有する材料で被覆されることも可能である。
【0080】
適切な被覆は、フッ素含有ポリマー、例えばペルフルオロアルコキシエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン−コポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン−コポリマーおよびフッ素化ポリエチレンである。
【0081】
本発明のさらに他の一対象は、
i)加熱可能な反応室、
ii)反応室i)の上方領域中で液滴を発生させるための、少なくとも1つの本発明に従う滴下プレート、
iii)少なくとも1つのキャリアガス供給部、
iv)少なくとも1つのキャリアガス予熱装置、
v)少なくとも1つのキャリアガス排出部および
vi)キャリアガス排出部v)からの排出されたキャリアガスのキャリアガス供給部(iii)への少なくとも一部を返送するための選択的に少なくとも1つの装置
を包含する、ポリマー粒子を製造するための反応器である。
【0082】
装置vi)は、圧縮機、殊に換気装置、流量計および制御弁を包含する。圧縮機はキャリアガスの圧力を高めかつそうしてキャリアガス供給部iii)への返送を可能にする。流量計および弁を介して、返送されるキャリアガス量が調整されうる。
【0083】
本発明に従う方法は、とりわけ狭い粒度分布を有する吸水性ポリマー粒子の製造を可能にする。
【0084】
例:
例1(比較)
アクリル酸ナトリウム12kg(水中で37.5質量%の溶液)およびアクリル酸1.1kgを、水3kgおよび15回エトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリレート9gと混合した。溶液を、開始剤の添加後に、窒素雰囲気で満たされた加熱された噴霧塔内に滴下した(170℃、高さ12m、幅2m、等しい流におけるガス速度0.1m/s)。計量供給速度は16kg/hであった。滴下プレートは、そのつど170μmの大きさで37個の孔を有していた。滴下プレートの直径は65mmであった。開始剤として、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドおよび2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドを使用した。開始剤の濃度は、モノマーに対してそのつど0.2質量%であった。開始剤を、滴下装置(Vertropfer)の直前にスタティックミキサーを介して2%の水溶液中でモノマー溶液と混合した。
【0085】
滴下プレートをより容易に取り外しかつ洗浄することができるように、滴下プレートはキャリアプレート(ノズルプレート)上に置かれていた。キャリアプレートは滴下プレートと同じように37個の孔を有してあって、その際、キャリアプレートの孔はより大きかった。キャリアプレートの孔は、キャリアプレートの孔が滴下プレートの孔と重なり合うように配置されていた。
【0086】
キャリアプレートはステンレス鋼から成っていた。水に対する接触角は10゜未満であった。
【0087】
得られたポリマー粒子の粒度分布はレーザー回折を用いて測定した。
【0088】
100μm未満の直径を有するポリマー粒子の割合は2.3質量%であった。
【0089】
220μm未満の直径を有するポリマー粒子の割合は37質量%であった。
【0090】
例2
例1と同じように行った。
【0091】
一方で、キャリアプレートを試験前にフルオロアルキルアクリレート−コポリマーで被覆した。そのためにキャリアプレートを取り外し、10分間、NUVA(R)FDS(Clariant、DE)の3質量%の溶液中に浸漬させ、かつ30分間、160℃にて乾燥キャビネット内で熱処理した。
【0092】
被覆されたキャリアプレートの水に対する接触角は116゜であった。被覆されたキャリアプレートのモノマー溶液に対する接触角は93゜であった。
【0093】
得られたポリマー粒子の粒度分布はレーザー回折を用いて測定した。
【0094】
100μm未満の直径を有するポリマー粒子の割合は0.2質量%でった。
【0095】
220μm未満の直径を有するポリマー粒子の割合は12質量%であった。
【0096】
本発明に従う例は、小さい粒子の割合を、モノマー溶液に対する接触角を高めることによって明らかに減少させることができたことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滴下プレートを用いた液体の滴下法において、少なくとも滴下プレートの下面が少なくとも部分的に、液体に対して少なくとも60゜の接触角を有することを特徴とする、滴下プレートを用いた液体の滴下法。
【請求項2】
滴下プレートが少なくとも部分的に、液体に対して少なくとも60゜の接触角を有する材料で被覆されているかまたは該材料から成ることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
液体に対して少なくとも60゜の接触角を有する材料がフッ素含有ポリマーであることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
その孔が50〜1000μmの直径を有する滴下プレートを使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
滴下された液体が、調製されるべき溶融物であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
滴下された液体が、乾燥されるべき溶液であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
滴下された液体が、重合されるべきモノマー溶液であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
モノマー溶液が、部分中和された水性アクリル酸を含有する溶液であることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
その中に滴下される反応器が70〜250℃の温度を有することを特徴とする、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
不活性ガス雰囲気中に滴下することを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項7から10までのいずれか1項記載の吸水性ポリマー粒子の製造法。
【請求項12】
請求項11記載の製造法に従って製造された吸水性ポリマー粒子の使用を包含する、衛生用品の製造法。
【請求項13】
滴下プレートを含有する反応器であって、少なくとも滴下プレートの下面が少なくとも部分的に、水に対して少なくとも60゜の接触角を有する、滴下プレートを含有する反応器。
【請求項14】
滴下プレートが、水に対して少なくとも60゜の接触角を有する材料で被覆されているかまたは該材料から成ることを特徴とする、請求項13記載の反応器。
【請求項15】
水に対して少なくとも60゜の接触角を有する材料がフッ素含有ポリマーであることを特徴とする、請求項14記載の反応器。
【請求項16】
滴下プレートが50〜1000μmの直径を有する孔を有することを特徴とする、請求項13から15までのいずれか1項記載の反応器。

【公表番号】特表2009−507975(P2009−507975A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530478(P2008−530478)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066016
【国際公開番号】WO2007/031441
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】