説明

液体カートリッジ、液滴吐出装置および電気光学装置の製造方法

【課題】 液体が外部に漏れ出ることを確実に防止可能な液体カートリッジ、この液体カートリッジを用いた液滴吐出装置、およびこの液体カートリッジから供給される液体を用いた電気光学装置の製造方法を提案すること。
【解決手段】 液体カートリッジ100は、液体パックからなる液体容器110と、硬質の密封ケース120の2重になっているため、たとえ液体容器110から液体が漏れ出しても、カートリッジ外に漏れることがない。また、液体容器110および密封ケース120の各々に液供給口130、140が形成され、第2の液供給口140の内部管体413を第1の液供給口130に接続し、第2の液供給口140に外部管体67を接続すれば、液体容器110内の液体を液滴吐出ヘッドのノズルに供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液滴を吐出する液滴吐出装置に用いられる液体カートリッジ、この液体カートリッジを用いた液滴吐出装置、およびこの液滴吐出装置を用いた電気光学装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタなどの液滴吐出装置においては、可撓性の液体パック内からインクなどの液体を供給し、ノズルから吐出する。また、可撓性の液体パックは、外部からの衝撃に弱いため、液体パックを硬質のケース体に収納してカートリッジを構成するとともに、液体パックに構成されている液供給口をケース体の開口から露出させておき、この液供給口に供給針を突き刺すようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−16377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されているカートリッジでは、液体パックの液供給口が露出しているため、落下時の衝撃などによって液体パックの液供給口が破損すると、液体がカーリッジ外に漏れ、周辺を汚してしまうという問題点がある。
【0004】
また、近年、有機EL(エレクトロルミネセンス)表示装置の製造工程において、ノズルから電気光学装置用基板に液滴を吐出して有機EL素子の正孔注入層や発光層を形成することが提案されている。また、カラー液晶装置の製造工程において、ノズルから電気光学装置用基板に液滴を吐出してカラーフィルタを形成することが提案されている。このような画素構成要素を形成する場合には、液体として、シクロヘキシルベンゼンなどの有機溶剤を主溶媒として用いるため、カートリッジから液体が漏れると、大変危険である。また、ノズルから溶剤系のインクを吐出する場合にも、有機溶剤を溶媒として用いたインクが液体パックに収納されているので、かかる溶剤系のインクがカートリッジから漏れると、大変危険である。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、液体が外部に漏れ出ることを確実に防止可能な液体カートリッジ、この液体カートリッジを用いた液滴吐出装置、およびこの液体カートリッジから供給される液体を用いた電気光学装置の製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明では、液滴吐出装置においてノズルに供給する液体が収納された液体カートリッジであって、前記液体が封入された液体容器と、該液体容器が収納された密封ケースとを有し、前記液体容器は、未使用時に閉塞状態にある第1の液供給口を備え、前記密封ケースは、未使用時に閉塞状態にある第2の液供給口を備え、使用時には、前記液体が前記液体容器から前記第1の液供給口および第2の液供給口を介して前記ノズルに供給されることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る液体カートリッジは、液体容器と密封ケースの2重になっているため、たとえ液体容器から液体が漏れ出しても、密封ケース内に溜まるだけである。従って、液体が外部に漏れることがないので、周辺を汚すことがない。また、液体容器および密封ケースの各々に液供給口が形成されているので、これらの液供給口に管体を接続すればノズルに液体を供給することができる。
【0008】
本発明は、前記液体が、有機溶剤を主溶媒とする液状組成物である場合に特に効果的である。液体が有機溶剤を主溶媒としている場合、液体が外部に漏れると、火災などの面で危険であるが、本発明によれば、液体が外部に漏れることがないので、かかる危険を確実に回避することができる。
【0009】
本発明において、前記液体容器は、例えば、袋状の液体パックであり、前記密封ケースは、例えば、硬質のケース体である。このように構成すると、外側が硬質のケース体であるので、衝撃などから液体パックを保護することができる。それ故、内側の液体容器として安価な袋状の液体パックを用いることができるので、液体カートリッジのコストを低減することができる。
【0010】
本発明において、前記第2の液供給口は、使用時に前記第1の液供給口を介して前記液体容器内に接続される内部管体を備える場合があり、この場合、前記第2の液供給口には、使用時、前記液体容器から前記内部管体を介して供給される前記液体を前記ノズルに供給するための外部管体が外側から接続される。
【0011】
このように構成した場合、前記密封ケースは、ケース本体と、該ケース本体の開口を開閉可能なケース蓋と、前記ケース本体と前記ケース蓋の間をシールするシール部材とを備えていることが好ましい。このように構成すると、液体カートリッジを使用しない時には、液体パックを密封ケース内に収納しておき、液体カートリッジを使用する際、ケース蓋を開けて第2の液供給口に形成されている内部管体を液体容器内に接続することができる。また、ケース蓋でケース本体の開口を開閉可能にした場合でも、ケース本体とケース蓋の間にシール部材が配置されているので、液体パックから液体が漏れた場合でも、液体はカートリッジ外に漏れることがない。
【0012】
また、前記シール部材は、フッ素系エラストマーであることが好ましい。フッ素系エラストマーからなるシール部材であれば、液体カートリッジを長期間、保存した場合でもシール部材が劣化せず、かつ、液体パックから有機溶剤系の液体が漏れた場合でも、シール部材が有機溶剤で劣化しないので、液体がカートリッジ外に漏れない。
【0013】
本発明において、前記液体容器は、前記密封ケース内に前記第1の液供給口と前記第2の液供給口が対向するように収納され、使用時には、外側から前記第2の液供給口および前記第1の液供給口を通って前記液体容器内に外部管体が接続されることが好ましい。このように構成すると、液体カートリッジを使用する際、密封ケースを開ける必要がないので、取り扱いが容易である。
【0014】
本発明において、前記密封ケースは、該密封ケースの内部を外側から視認可能とする透明部分を備えていることが好ましい。このように構成すると、密封ケース内で液体容器から液体が漏れているか否かを外側から確認できる。
【0015】
本発明において、前記第1の液供給口および前記第2の液供給口はそれぞれ、管体が突き通される可撓性の栓体、あるいは管体が接続される逆止弁から構成することができる。
【0016】
本発明に係る液体カートリッジを液体供給源として用いた液滴吐出装置は、例えば、電気光学装置の製造に用いられる。この場合、前記液体カートリッジから供給された前記液体を前記ノズルから電気光学装置用基板上に吐出して、当該電気光学装置用基板上に画素構成要素を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した液体カートリッジを備えた液滴吐出装置の一例を説明する。
【0018】
[実施の形態1]
(液滴吐出装置の全体構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る液滴吐出装置の全体構成を示す斜視図である。
【0019】
図1において、液滴吐出装置10は、各種液体を基板などのワーク上の所望位置に液滴として吐出するものである。液滴吐出装置10は、液体を各種ワーク上に液滴として吐出するノズルを備える複数の液滴吐出ヘッド22と、これらの液滴吐出ヘッド22を保持する共通のキャリッジ26とを有している。また、図2などを参照して後述する液滴吐出ヘッド22のノズルに液体を供給する液体供給機構を有している。さらに、液滴吐出装置10は、液滴吐出ヘッド22の位置を制御するヘッド位置制御装置17と、ワークとしての基板12の位置を制御する基板位置制御装置18と、液滴吐出ヘッド22を基板12に対して主走査移動させる主走査駆動手段としての主走査駆動装置19と、液滴吐出ヘッド22を基板12に対して副走査移動させる副走査駆動手段としての副走査駆動装置21と、基板12を液滴吐出装置10内の所定の作業位置へ供給する基板供給装置23と、液滴吐出装置10の全般の制御を司るコントロール装置24とを有しており、ヘッド位置制御装置17、基板位置制御装置18、主走査駆動装置19、および副走査駆動装置21によって、液滴吐出ヘッド22(キャリッジ26)と基板12とを相対移動させる移動手段が構成されている。ヘッド位置制御装置17、基板位置制御装置18、主走査駆動装置19、および副走査駆動装置21はベース9の上に設置され、それらの各装置は必要に応じてカバー14によって覆われる。
【0020】
ヘッド位置制御装置17は、詳細な図示および説明を省略するが、液滴吐出ヘッド22を面内回転させるαモータ、液滴吐出ヘッド22を副走査方向Yと平行な軸線回りに揺動回転させるβモータ、液滴吐出ヘッド22を主走査方向と平行な軸線回りに揺動回転させるγモータ、そして液滴吐出ヘッド22を上下方向へ平行移動させるZモータなどを備えている。基板位置制御装置18は、電気光学装置用基板12を載せるテーブル49を備え、そのテーブル49に対しては、それを面内回転させるθモータを備えている。主走査駆動装置19は、主走査方向Xへ延びるXガイドレール52と、パルス駆動されるリニアモータを内蔵したXスライダ53とを備えている。Xスライダ53は、内蔵するリニアモータが作動するときにXガイドレール52に沿って主走査方向へ平行移動する。副走査駆動装置21は、副走査方向Yへ延びるYガイドレール54と、パルス駆動されるリニアモータを内蔵したYスライダ56とを備えている。Yスライダ56は、内蔵するリニアモータが作動するときにYガイドレール54に沿って副走査方向Yへ平行移動する。
【0021】
Xスライダ53およびYスライダ56内においてパルス駆動されるリニアモータは、該モータに供給するパルス信号によって出力軸の回転角度制御を精細に行うことができ、従って、Xスライダ53に支持された液滴吐出ヘッド22の主走査方向X上の位置やテーブル49の副走査方向Y上の位置などを高精細に制御できる。なお、液滴吐出ヘッド22やテーブル49の位置制御は、パルスモータを用いた位置制御に限られず、サーボモータを用いたフィードバック制御や、その他任意の制御方法によって実現することもできる。
【0022】
基板供給装置23は、電気光学装置用基板12を収容する基板収容部57と、電気光学装置用基板12を搬送するロボット58とを備えている。ロボット58は、床、地面などといった設置面に置かれる基台59と、基台59に対して昇降移動する昇降軸61と、昇降軸61を中心として回転する第1アーム62と、第1アーム62に対して回転する第2アーム63と、第2アーム63の先端下面に設けられた吸着パッド64とを備えており、吸着パッド64は、空気吸引などによって電気光学装置用基板12を吸着できる。
【0023】
主走査駆動装置19によって駆動されて主走査移動する液滴吐出ヘッド22の軌跡下であって副走査駆動装置21の一方の脇位置には、キャッピング装置76およびクリーニング装置77が配置され、他方の脇位置には電子天秤78が配置されている。クリーニング装置77は、液滴吐出ヘッド22を洗浄するための装置である。電子天秤78は、液滴吐出ヘッド22内の個々のノズルから吐出される液滴の重量をノズル毎に測定する機器である。キャッピング装置76は、液滴吐出ヘッド22が待機状態にあるときにノズルの乾燥を防止するための装置である。
【0024】
液滴吐出ヘッド22の近傍には、その液滴吐出ヘッド22と一体に移動する関係でヘッド用カメラ81が配置されている。また、電気光学装置用基板12に対しては基板用カメラ82が配置され、基板用カメラ82は、電気光学装置用基板12を撮影可能である。
【0025】
なお、液滴吐出装置10は、1種類の液滴を吐出するように構成される場合の他、1台で複数種類の液滴を吐出するように構成される場合もある。後者の場合には、液滴吐出ヘッド22、および液体供給機構は各々、吐出する液滴の種類毎に構成されるが、基本的な構成が同様なものが搭載されることになる。それ故、以下の説明では、1台の液滴吐出装置10から1種類の液滴を吐出するものとして説明する。
【0026】
(液体供給機構)
図2(A)、(B)は、本発明の実施の形態1に係る液滴吐出装置の液体供給機構を模式的に示す説明図、およびこの液体供給機構に用いた液体カートリッジの斜視図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る液体カートリッジの分解斜視図である。図4(A)、(B)は、本発明の実施の形態1に係る液体カートリッジの未使用状態の説明図、およびその使用状態の説明図である。
【0027】
図2(A)に示すように、液滴吐出装置10には、液滴吐出ヘッド22のノズルに液体を供給する液体供給機構85が構成されており、この液体供給機構85は、液滴吐出ヘッド22のノズルに対する液体供給源としての液体カートリッジ100と、この液体カートリッジ100から供給される液体を液滴吐出ヘッド22まで導く供給管86とを有している。供給管86の先端には、液体カートリッジ100に突き刺さる供給針からなる外部管体87が取り付けられている。
【0028】
本形態の液滴吐出装置10において、液滴吐出ヘッド22のノズルから液滴として、水を主溶媒とする液滴を吐出する場合には、液体カートリッジ100に水を主溶媒とする液体が収納され、有機溶剤を主溶媒とする液滴を吐出する場合には、液体カートリッジ100に有機溶剤を主溶媒とする液体が収納される。液滴吐出ヘッド22のノズルから、有機溶剤を主溶媒とする液滴を吐出する例としては、有機溶剤を主溶媒として用いた溶剤系のインクを吐出する場合、液晶装置の製造工程において電気光学装置用基板に対してカラーフィルタを形成するために、色材を有機溶剤で溶解させた液状物を吐出する場合、後述するように、有機EL装置の製造工程において電気光学装置用基板に対して正孔注入層や発光層を形成する形成するために、これらの有機機能材料を有機溶剤で溶解させた液状物を吐出する場合などがある。ここで、液体カートリッジ100に有機溶剤を主溶媒とする液体を収納すると、それが外部に漏れたとき危険であるため、本形態において、液体カートリッジ100は、以下の構成を有している。
【0029】
図2(B)および図3に示すように、本形態の液体カートリッジ100は、液滴吐出ヘッド22のノズルから液滴として吐出される液体が封入された液体容器110と、この液体容器110が収納された密封ケース120とを有している。本形態において、液体容器110は、内側のポリエチレン層と外側のナイロン層との間に金属層を挟んだラミネートフィルムなどを用いた袋状の液体パックから構成されている。密封ケース120は、有底矩形筒状のケース本体121と、このケース本体121の上面に被せられた矩形のケース蓋122とを有しており、ケース蓋122の下面には、ケース本体121とケース蓋122の間をシールする矩形枠状のシール部材123が取り付けられている。ケース本体121およびケース蓋122は、いずれも硬質ポリプロプレンなどの樹脂成形品などからなる硬質プラスチック製であり、シール部材123は、フッ素系エラストマーなどといった耐候性および耐溶剤性の優れた材質からなる。ケース蓋122は、ケース本体121の上面にビス124などにより着脱可能であり、ケース本体121の上面開口を開閉可能である。
【0030】
本形態の液体カートリッジ100において、液体容器110は、未使用時に閉塞状態にある第1の液供給口130を備えており、この第1の液供給口130は、プラスチック製あるいは金属製の筒体131と、この筒体131の内側に固着されているゴム製の栓体132とを備えている。また、密封ケース120のケース本体121は、液体容器110の第1の液供給口130と対向する位置に第2の液供給口140を備えており、この第2の液供給口140は、プラスチック製あるいは金属製の筒体141と、この筒体141の内側に固着されているゴム製の栓体142とを備えている。また、第2の液供給口140は、筒体141から液体容器110の第1の液供給口130に向けて突き出た供給針からなる内部管体143を備えている。
【0031】
このように構成した液体カートリッジ100では、未使用時、ノズルから液滴として吐出される液体が封入された液体容器110をケース本体121の内部に収納した状態で、ケース本体121の上面にはシール部材123を介してケース蓋122がビス124により固定される。この状態では、第2の液供給口140に形成されている内部管体143は、液体容器110の第1の液供給口130に接続されていない。また、外部管体87も、第2の液供給口140に接続されていない。このような状態で液体カートリッジ100が保管される。
【0032】
そして、液体カートリッジ100を使用する際には、まず、ビス124を外してケース蓋122をケース本体121から外し、第2の液供給口140に形成されている内部管体143を液体容器110の第1の液供給口130に突き刺す。その結果、内部管体143は、液体容器110内に接続される。次に、外部管体87を第2の液供給口140に突き刺す。その結果、外部管体87は、第2の液供給口140および第1の液供給口130を介して液体容器110内に接続される。
【0033】
従って、図1に示す液滴吐出装置10において、液滴吐出ヘッド22のノズルから液滴が吐出される際、その内部に形成されている圧力発生室が負圧になるたびに、液体容器110の液体は、第1の液供給口130、第2の液供給口140(内部管体143)、外部管体87、および供給管86を通って液滴吐出ヘッド22に向けて吸引され、供給される。
【0034】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の液体カートリッジ100は、液体容器110と密封ケース120の2重になっているため、衝撃が液体容器110の第1の液供給口130や液体容器110の袋部分に直接、加わらない。従って、液体容器11から液体が漏れにくい。また、たとえ液体容器110から液体が漏れ出しても、密封ケース120内に溜まるだけである。従って、液体がカートリッジ外に漏れることがないので、周辺を汚すことがない。特に本形態では、有機溶剤を主溶媒とする液体を液体カートリッジ100に収納しているが、かかる有機溶剤系の液体がカートリッジ外に漏れることがないので、安全である。
【0035】
また、本形態では、液体容器110および密封ケース120の各々に液供給口130、140が形成されているので、これらの液供給口130、140を介してノズルに液体を供給することができる。
【0036】
また、本形態では、液体容器110として液体パックを用いたが、外側の密封ケース120が硬質であるので、衝撃などから液体パック110を保護することができる。従って、液体容器110として、安価な液体パックを用いても、液体パック110内の液体がカートリッジ外に漏れることがないので、液体カートリッジ100のコストを低減することができる。例えば、500ccの液を充填した液体パックからなる液体容器110をそれ単独で1.5mの高さから落下させると、液体容器110が破損してしまうが、本形態のように、液体容器110を密封ケース120に収納すると、1.5mの高さから落下させても液体容器110は破損することがない。
【0037】
さらに、本形態において、密封ケース120は、ケース本体121と、このケース本体121の上部開口を開閉可能なケース蓋122と、ケース本体121とケース蓋122の間をシールするシール部材123とを備えているため、液体カートリッジ100を使用しない時には、液体パック110を密封ケース120内に収納しておき、液体カートリッジ100を使用する際、ケース蓋122を開けて第2の液供給口140に形成されている内部管体143を液体容器110内に接続する操作を容易に行うことができる。また、ケース蓋122でケース本体121の上部開口を開閉可能にした場合でも、ケース本体121とケース蓋122の間にシール部材123が配置されているので、液体容器110から液体が漏れた場合でも、液体は外部に漏れない。しかも、シール部材123は、フッ素系エラストマーなどといった耐候性および耐溶剤性の優れた材質からなるため、液体カートリッジ100を長期間、保存した場合でも劣化せず、かつ、液体容器110から有機溶剤系の液体が漏れた場合でも、シール部材123が劣化しないので、液体が外部に漏れない。
【0038】
[実施の形態2]
図5(A)、(B)は、本発明の実施の形態2に係る液滴吐出装置の液体供給機構を模式的に示す説明図、およびこの液体供給機構に用いた液体カートリッジの斜視図である。図6は、本発明の実施の形態2に係る液体カートリッジの分解斜視図である。図7(A)、(B)は、本発明の実施の形態2に係る液体カートリッジの未使用状態の説明図、およびその使用状態の説明図である。なお、本形態の液滴吐出装置や液体カートリッジは、基本的な構成が実施の形態1と同様であるため、共通する部分については同一符号を付してそれらの説明を省略する。
【0039】
図5(A)に示すように、本形態の液滴吐出装置10も、実施の形態1と同様、液滴吐出ヘッド22のノズルに液体を供給する液体供給機構85が構成されており、この液体供給機構85は、液滴吐出ヘッド22のノズルに対する液体供給源としての液体カートリッジ100と、この液体カートリッジ100から供給される液体を液滴吐出ヘッド22まで導く供給管86とを有している。供給管86の先端には、液体カートリッジ100に突き刺さる供給針からなる外部管体87が取り付けられている。本形態の液滴吐出装置10も、有機溶剤を主溶媒として用いた溶剤系のインクを吐出する場合、液晶装置の製造工程において電気光学装置用基板に対してカラーフィルタを形成するために、色材を有機溶剤で溶解させた液状物を吐出する場合、後述するように、有機EL装置の製造工程において電気光学装置用基板に対して正孔注入層や発光層を形成する形成するために、これらの有機機能材料を有機溶剤で溶解させた液状物を吐出する場合に使用される。従って、液体カートリッジ100には、有機溶剤を主溶媒とする液体を収納するが、それが外部に漏れたときに危険であるため、液体カートリッジ100は、以下の構成を有している。
【0040】
図5(B)および図6に示すように、液体カートリッジ100は、ノズルから液滴として吐出される液体が封入された液体容器110と、この液体容器110が収納された密封ケース120とを有している。本形態において、液体容器110は、内側のポリエチレン層と外側のナイロン層との間に金属層を挟んだラミネートフィルムなどを用いた袋状の液体パックから構成されている。密封ケース120は、有底矩形筒状のケース本体121と、このケース本体121の上面に被せられた矩形のケース蓋122とを有しており、ケース蓋122の下面には、ケース本体121とケース蓋122の間をシールする矩形枠状のシール部材123が取り付けられている。ケース本体121およびケース蓋122は、いずれも硬質ポリプロプレンなどの樹脂成形品などからなる硬質プラスチック製であり、シール部材123は、フッ素系エラストマーなどからなる。ケース蓋122は、ケース本体121の上面にビス124などにより固定されている。
【0041】
本形態の液体カートリッジ100において、液体容器110は、未使用時に閉塞状態にある第1の液供給口130を備えており、この第1の液供給口130を密封ケース120の側面に対向させた状態で、密封ケース120内に固定されている。ここで、第1の液供給口130は、プラスチック製あるいは金属製の筒体131と、この筒体131の内側に固着されているゴム製の栓体132とを備えている。
【0042】
密封ケース120は、液体容器110の第1の液供給口130と対向する位置に、ゴム製の栓体からなる第2の液供給口150を備えている。
【0043】
このように構成した液体カートリッジ100では、未使用時、ノズルから液滴として吐出される液体が封入された液体容器110をケース本体121の内部に収納した状態で、ケース本体121の上面にはシール部材123を介してケース蓋122がビス124により固定される。この状態では、外部管体87は、第2の液供給口150に接続されていない。このような状態で液体カートリッジ100が保管される。
【0044】
そして、液体カートリッジ100を使用する際には、外部管体87を第2の液供給口150に突き刺す。その結果、外部管体87は、第2の液供給口150を貫通した後、第1の液供給口130も貫通し、液体容器110内に接続される。
【0045】
従って、図1に示す液滴吐出装置において、液滴吐出ヘッド22のノズルから液滴が吐出される際、その内部に形成されている圧力発生室が負圧になるたびに、液体容器100内の液体は、外部管体87内を通って、第1の液供給口130および第2の液供給口150を介して液滴吐出ヘッド22に向かって供給される。
【0046】
以上説明したように、本形態の液体カートリッジ100は、実施の形態1と同様、液体容器110と密封ケース120の2重になっているため、衝撃が液体容器110の第1の液供給口130や液体容器110の袋部分に直接、加わらない。従って、液体容器11から液体が漏れにくい。また、たとえ液体容器110から液体が漏れ出しても、密封ケース120内に溜まるだけである。従って、液体がカートリッジ外に漏れることがないので、周辺を汚すことがない。特に本形態では、有機溶剤を主溶媒とする液体を液体カートリッジ100に収納しているが、かかる有機溶剤系の液体がカートリッジ外に漏れることがないので、安全であるなど、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0047】
また、本形態において、液体容器110は、密封ケース120内に第1の液供給口130と第2の液供給口150が対向するように固定されているため、使用時には、外側から外部管体87を第2の液供給口150に突き刺すと、外部管体87は第1の液供給口130にも突き刺さるので、外部管体87を液体容器110内に接続することができる。従って、液体カートリッジ100を使用する際、密封ケース120を開ける必要がないので、取り扱いが容易である。
【0048】
また、密封ケース120では、ケース本体121とケース蓋122の間にシール部材123が配置されているので、液体容器110から液体が漏れた場合でも、液体は外部に漏れない。しかも、シール部材123は、フッ素系エラストマーなどといった耐候性および耐溶剤性の優れた材質からなる。それ故、液体カートリッジ100を長期間、保存した場合でも劣化せず、かつ、液体容器110から有機溶剤系の液体が漏れた場合でも、シール部材123が劣化しないので、液体が外部に漏れない。
【0049】
[その他の実施の形態]
図8に示すように、密封ケース120のケース蓋122に対して密封ケース120の内部を外側から視認可能とする透明部分125を形成してもよい。また、図示を省略するが、密封ケース120のケース本体121の底部に密封ケース120の内部を外側から視認可能とする透明部分を形成してもよい。このように構成すると、密封ケース120内で液体容器110から液体が漏れたか否かを外側から確認できるという利点がある。
【0050】
また、上記のいずれの形態においても、液体容器110の第1の液供給口130にゴム製の栓体を用いたが、第1の液供給口120については、液体通路が内側の弁体で塞がれて閉塞状態にある逆止弁で構成してもよい。この場合、液体通路に外側から管体を差し込めば、弁体が変位し、液体通路に差し込まれた管体を通って液体を外部に供給することができる。同様に、密封ケース120の第2の液供給口140、150にゴム製の栓体を用いたが、これらの液供給口140、150についても、液体通路が内側の弁体で塞がれて閉塞状態にある逆止弁で構成してもよい。この場合、液体通路に外側から管体を差し込めば、弁体が変位し、液体通路に差し込まれた管体を通って液体を外部に供給することができる。
【0051】
なお、上記形態では、ノズルから有機溶剤系の液滴を吐出する場合を説明したが、ノズルから水系の液滴を吐出する場合も本発明を適用することができる。
【0052】
[電気光学装置の構成、および製造方法の例]
電気光学装置の一例として、有機EL表示装置の構成およびその製造工程を説明する。図9は、電気光学物質として電荷注入型の有機薄膜を用いたEL素子を備えた有機EL表示装置のブロック図である。図10〜図12は、有機EL表示装置の製造工程の手順を示す製造工程断面図であり、有機EL表示装置の1画素分の断面に相当する。
【0053】
図9において、有機EL表示装置500pは、有機半導体膜に駆動電流が流れることによって発光するEL素子をTFTで駆動制御する表示装置であり、このタイプの表示装置に用いられる発光素子はいずれも自己発光するため、バックライトを必要とせず、また、視野角依存性が少ないなどの利点がある。ここに示す電気光学装置500pでは、複数の走査線563pと、この走査線563pの延設方向に対して交差する方向に延設された複数のデータ線564と、これらのデータ線564に並列する複数の共通給電線505と、データ線564と走査線563pとの交差点に対応する画素515pとが構成され、画素515pは、画像表示領域100にマトリクス状に配置されている。データ線564に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、アナログスイッチを備えるデータ線駆動回路551pが構成されている。走査線563pに対しては、シフトレジスタおよびレベルシフタを備える走査線駆動回路554pが構成されている。また、画素515pの各々には、走査線563pを介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング薄膜トランジスタ509と、このスイッチング薄膜トランジスタ509を介してデータ線564から供給される画像信号を保持する保持容量533pと、この保持容量533pによって保持された画像信号がゲート電極に供給されるカレント薄膜トランジスタ510と、カレント薄膜トランジスタ510を介して共通給電線505に電気的に接続したときに共通給電線505から駆動電流が流れ込む発光素子513とが構成されている。発光素子513は、画素電極の上層側には、正孔注入層、有機EL材料層としての有機半導体膜、リチウム含有アルミニウム、カルシウムなどの金属膜からなる対向電極が積層された構成になっており、対向電極は、データ線564などを跨いで複数の画素515pにわたって形成されている。
【0054】
このような構成の有機EL表示装置500pを製造するには、基板を用意する。ここで、有機EL表示装置500pでは、後述する発光層による発光光を基板側から取り出すことも可能であり、また基板と反対側から取り出す構成とすることも可能である。発光光を基板側から取り出す構成とする場合、基板材料としてはガラスや石英、樹脂等の透明ないし半透明なものが用いられるが、特にガラスが好適に用いられる。また、基板に色フィルター膜や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を配置して、発光色を制御するようにしてもよい。なお、基板と反対側から発光光を取り出す構成の場合、基板は不透明であってもよく、その場合、アルミナ等のセラミックス、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0055】
本例では、図10(A)に示すように、基板としてガラスからなる透明基板502を用意し、透明基板502に対して、必要に応じてTEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約200〜500nmのシリコン酸化膜からなる下地保護膜(図示せず)を形成する。
【0056】
次に、透明基板502の温度を約350℃に設定して、下地保護膜の表面にプラズマCVD法により厚さ約30〜70nmのアモルファスシリコン膜からなる半導体膜520aを形成する。次に、半導体膜520aに対してレーザアニールまたは固相成長法などの結晶化工程を行い、半導体膜520aをポリシリコン膜に結晶化する。レーザアニール法では、例えばエキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は、例えば200mJ/cmとする。ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
【0057】
次に、図10(B)に示すように、半導体膜(ポリシリコン膜)520aをパターニングして島状の半導体膜520bとし、その表面に対して、TEOSや酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約60〜150nmのシリコン酸化膜または窒化膜からなるゲート絶縁膜521aを形成する。なお、半導体膜520bは、図9に示したカレント薄膜トランジスタ510のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となるものであるが、異なる断面位置においてはスイッチング薄膜トランジスタ509のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となる半導体膜も形成されている。つまり、図10〜図12に示す製造工程では二種類のトランジスタ509、510が同時に作られるのであるが、同じ手順で作られるため、以下の説明ではトランジスタに関しては、カレント薄膜トランジスタ510についてのみ説明し、スイッチング薄膜トランジスタ509についてはその説明を省略する。
【0058】
次に、図10(C)に示すように、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属膜からなる導電膜をスパッタ法により形成した後、これをパターニングし、ゲート電極510gを形成する。次に、この状態で高濃度のリンイオンを打ち込み、半導体膜520bに、ゲート電極510gに対して自己整合的にソース・ドレイン領域510a、510bを形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域510cとなる。
【0059】
次に、図10(D)に示すように、層間絶縁膜522を形成した後、コンタクトホール523、524を形成し、これらコンタクトホール523、524内に中継電極526、527を埋め込む。次に、層間絶縁膜522上に信号線、共通給電線及び走査線(図示せず)を形成する。ここで、中継電極527と各配線とは、同一工程で形成してもよく、その場合、中継電極526は、後述するITO膜で形成されることになる。
【0060】
次に、図10(E)に示すように、各配線の上面を覆うように層間絶縁膜530を形成した後、層間絶縁膜530に対して中継電極526に対応する位置にコンタクトホール532を形成する。次に、コンタクトホール532を埋めるようにITO膜を形成し、さらにそのITO膜をパターニングして、信号線、共通給電線及び走査線に囲まれた所定位置に、ソース・ドレイン領域510aに電気的に接続する画素電極511を形成する。ここで、信号線及び共通給電線、さらには走査線に挟まれた部分が、後述する正孔注入層や発光層の形成場所となる。
【0061】
次に、図11(A)に示すように、正孔注入層や発光層の形成場所を囲むように隔壁505を形成する。この隔壁505は、仕切り部材として機能するものであり、例えばポリイミド等の絶縁性有機材料で形成するのが好ましい。隔壁505の膜厚については、例えば1〜2μmの高さとなるように形成する。また、隔壁505は、上述した液滴吐出ヘッド22から吐出される液体に対して撥液性を示すものが好ましい。隔壁505に撥液性を発現させるためには、例えば隔壁505の表面をフッ素系化合物などで表面処理するといった方法が採用される。フッ素化合物としては、例えばCF4、SF5、CHF3などがあり、表面処理としては、例えばプラズマ処理、UV照射処理などが挙げられる。このようにして、正孔注入層や発光層の形成場所、すなわち、これらの形成材料の塗布位置とその周囲の隔壁505との間には、十分な高さの段差535が形成される。
【0062】
次に、図11(B)に示すように、透明基板502の上面を上に向けた状態で、正孔注入層の形成材料540aを、上述した液滴吐出装置10の液滴吐出ヘッド22より、前記隔壁505に囲まれた塗布位置、すなわち隔壁505内に選択的に塗布する。その際、形成材料540aは、流動性が高いため水平方向に広がろうとするが、塗布された位置を囲んで隔壁505が形成されているので、形成材料540aは隔壁505を越えてその外側に広がることがない。ここで、正孔注入層の形成材料540aとしては、ポリオレフィン誘導体である3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)を正孔注入材料として用い、これを水などの極性溶媒に分散させてなる分散液が好適に用いられる。但し、正孔注入材料としては、前記のものに限定されることなく、ポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N、N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム等を用いることもできる。
【0063】
このようにして形成材料540aを液滴吐出ヘッド34から吐出して所定位置に配置した後、熱処理装置での加熱工程で液状の形成材料540aに対して乾燥処理としての熱処理を行い、形成材料540a中の分散媒を蒸発させる。その結果、図11(C)に示すように、画素電極511上に固形の正孔注入層513a(画素構成要素)が形成される。
【0064】
次に、図12(A)に示すように、透明基板502の上面を上に向けた状態で、上述した液滴吐出装置10の液滴吐出ヘッド22より液体として発光層の形成材料540bを、前記隔壁505内の正孔注入層513a上に選択的に塗布する。発光材料としては、例えば分子量が1000以上の高分子材料が用いられる。具体的には、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、またはこれらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、例えばルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープしたものが用いられる。なお、このような高分子材料としては、二重結合のπ電子がポリマー鎖上で非極在化しているπ共役系高分子材料が、導電性高分子でもあることから発光性能に優れるため、好適に用いられる。特に、その分子内にフルオレン骨格を有する化合物、すなわちポリフルオレン系化合物がより好適に用いられる。また、このような材料以外にも、例えば特開平11−40358号公報に示される有機EL素子用組成物、すなわち共役系高分子有機化合物の前駆体と、発光特性を変化させるための少なくとも1種の蛍光色素とを含んでなる有機EL素子用組成物も、発光層形成材料として使用可能である。このような発光材料を溶解する有機溶媒としては、非極性溶媒が好適とされ、特に発光層が正孔注入層513aの上に形成されることから、この正孔注入層513aに対して不溶なものが用いられる。具体的には、キシレン、シクロへキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等が好適に用いられる。なお、形成材料540bの吐出による発光層の形成は、赤色の発色光を発光する発光層の形成材料、緑色の発色光を発光する発光層の形成材料、青色の発色光を発光する発光層の形成材料を、それぞれ対応する画素に吐出し塗布することによって行う。また、各色に対応する画素は、これらが規則的な配置となるように予め決められている。
【0065】
このようにして各色の発光層形成材料540bを吐出した後、熱処理装置での加熱工程で液状の発光層形成材料540bに対して乾燥処理としての熱処理を行い、発光層形成材料540b中の分散媒を蒸発させる。その結果、図12(B)に示すように、正孔層注入層513a上に固形の発光層513b(画素構成要素)が形成される。これにより、正孔層注入層513aと発光層513bとからなる発光素子513を得る。
【0066】
なお、形成材料540bの乾燥処理については、形成材料540bのガラス転移点未満の温度、例えば100°未満の温度で加熱することにより、乾燥するのが好ましい。このような温度で乾燥することにより、形成材料540b中の溶剤の蒸発速度を比較的低く抑えることができるとともに、形成材料540bの液状化による流動も抑えることができ、その結果、得られる発光層513bについても十分に平坦化することができる。また、発光層形成の際の乾燥処理によって生じる熱的ダメージが、発光層513bだけでなく正孔注入層513aに対しても小さくなり、初期輝度の低下などによる表示性能の低下が抑制される。
【0067】
次に、図12(C)に示すように透明基板502の表面全体に、あるいはストライプ状に、LiF/Al(LiFとAlとの積層膜)やMgAg、あるいはLiF/Ca/Al(LiFとCaとAlとの積層膜)を蒸着法等によって成膜し、対向電極512を形成する。その後、封止を行った後、さらに配線等の各種要素を形成することにより、有機EL素子を備えた有機EL表示装置500p(電気光学装置)を製造する。
【0068】
なお、乾燥処理においては、必要に応じて減圧下での熱処理(減圧乾燥)を行ってもよい。また、乾燥処理においては、熱処理と凍結乾燥処理とを行ってもよい。
【0069】
(その他の適用例)
なお、上記形態では、本発明を有機EL表示装置の製造工程に用いた例であったが、液晶表示装置のカラーフィルタ(画素構成要素)の形成などに本発明を適用してもよい。
【0070】
また、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能であり、実施形態で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明を適用した液滴吐出装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】(A)、(B)は、本発明の実施の形態1に係る液滴吐出装置の液体供給機構を模式的に示す説明図、およびこの液体供給機構に用いた液体カートリッジの斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る液体カートリッジの分解斜視図である。
【図4】(A)、(B)は、本発明の実施の形態1に係る液体カートリッジの未使用状態の説明図、およびその使用状態の説明図である。
【図5】(A)、(B)は、本発明の実施の形態2に係る液滴吐出装置の液体供給機構を模式的に示す説明図、およびこの液体供給機構に用いた液体カートリッジの斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る液体カートリッジの分解斜視図である。
【図7】(A)、(B)は、本発明の実施の形態2に係る液体カートリッジの未使用状態の説明図、およびその使用状態の説明図である。
【図8】本発明のその他の実施の形態に係る液体カートリッジの説明図である。
【図9】有機EL表示装置のブロック図である。
【図10】有機EL表示装置の製造工程の手順を示す断面図である。
【図11】有機EL表示装置の製造工程の手順を示す断面図である。
【図12】有機EL表示装置の製造工程の手順を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
10 液滴吐出装置、12、502 電気光学装置用基板、22 液滴吐出ヘッド、87 外部管体、100 液体カートリッジ、110 液体容器、120 密封ケース、121 ケース本体、122 ケース蓋、123 シール部材、130 第1の液供給口、140、150 第2の液供給口、143 内部管体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出装置においてノズルに供給する液体が収納された液体カートリッジであって、
前記液体が封入された液体容器と、該液体容器が収納された密封ケースとを有し、
前記液体容器は、未使用時に閉塞状態にある第1の液供給口を備え、
前記密封ケースは、未使用時に閉塞状態にある第2の液供給口を備え、
使用時には、前記液体が前記液体容器から前記第1の液供給口および第2の液供給口を介して前記ノズルに供給されることを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項2】
請求項1において、前記液体は、有機溶剤を主溶媒とする液状組成物であることを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項3】
請求項1または2において、前記液体容器は、袋状の液体パックであり、
前記密封ケースは、硬質のケース体であることを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記第2の液供給口は、使用時に前記第1の液供給口を介して前記液体容器内に接続される内部管体を備え、
前記第2の液供給口には、使用時、前記液体容器から前記内部管体を介して供給される前記液体を前記ノズルに供給するための外部管体が外側から接続されることを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項5】
請求項4において、前記密封ケースは、ケース本体と、該ケース本体の開口を開閉可能なケース蓋と、前記ケース本体と前記ケース蓋の間をシールするシール部材とを備えていることを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項6】
請求項5において、前記シール部材は、フッ素系エラストマーであることを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記液体容器は、前記密封ケース内に前記第1の液供給口と前記第2の液供給口が対向するように収納され、
使用時には、外側から前記第2の液供給口および前記第1の液供給口を通って前記液体容器内に外部管体が接続されることを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、前記密封ケースは、該密封ケースの内部を外側から視認可能とする透明部分を備えていることを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、前記第1の液供給口および前記第2の液供給口はそれぞれ、管体が突き通される可撓性の栓体、あるいは管体が接続される逆止弁から構成されていることを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに規定する液体カートリッジを液体供給源として用いたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項11】
請求項10に規定する液滴吐出装置を用いて、前記液体カートリッジから供給された前記液体を前記ノズルから電気光学装置用基板上に吐出して、当該電気光学装置用基板上に画素構成要素を形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−15644(P2006−15644A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196762(P2004−196762)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】