説明

液体カートリッジ及びその製造方法

【課題】 容器本体の外側面に回路基板を装着する基板取付け部が設けられる液体カートリッジ及びその製造方法において、成形金型の単純化や組立工程数の低減により製造コストの低減及び生産性の向上を図る。
【解決手段】 容器本体31の外側面に設けられた基板取付け部41を形成する4辺のガイド壁部44a〜44dにおける3辺のガイド壁部44a〜44cが、ケース本体32の前面外側壁32bにおいて蓋体33側に開口する略コ字状に形成されると共に、残る1辺のガイド壁部44dが、蓋体33の縁部に形成される。3辺のガイド壁部44a〜44cの内、蓋体33側の1辺のガイド壁部44dに対向する中央壁部であるガイド壁部44bの両端には一対の切欠部46a,46bを設け、ケース本体32の前面外側壁上おける一対の切欠部46a,46bに対向する位置に、一対の基板固定ボス42a,42bを配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容する容器本体の外側面に、回路基板を装着するための基板取付け部が装備される液体カートリッジ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体消費装置の一例として挙げられるインクジェット式プリンタは、通常、装置内のカートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジ(液体カートリッジ)に貯留されているインクを記録ヘッドへ送り込み、この記録ヘッドが用紙等の被記録体にインク滴を噴射・塗布することで、画像や文字の記録を行う。
【0003】
インクジェット式プリンタにおける記録ヘッドは、熱や振動を利用してインク滴の噴射を制御するもので、インクカートリッジがインク切れになり、インクが供給されない状態でインク吐出動作を行う空打ちが発生すると、故障してしまう。
そこで、インクジェット式プリンタでは、記録ヘッドが空打ちをしないように、インクカートリッジにおけるインク液の残量を監視する必要が生じる。
【0004】
また、例えば、フルカラーの写真印刷を主用途とする場合と、単色のテキスト印刷等を主用途とする場合とのように、使用条件が異なると、消費するインク液の色や量に差異が生じる。
そこで、最近のインクジェット式プリンタでは、使用条件に応じて、装置に装着されている複数個のインクカートリッジの一部を、使用条件に適したインクカートリッジに変更可能にしたものがある。このようなインクジェット式プリンタの場合は、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジが新品のものか、以前に使用していたものが再装着されたものかなど、使用履歴等を管理することも必要になる。
【0005】
このような背景から、図8及び図9に示すインクカートリッジ1,2が提案されている。
これらのインクカートリッジ1,2は、インクを収容する容器本体4が、インク収容室5aと該インク収容室5aに収容したインクを外部の装置(インクジェット式プリンタの記録ヘッド)に供給するための供給口5bとを備えたケース本体5と、このケース本体5の一側を覆う蓋体6と、から構成されている。
【0006】
そして、容器本体4の外側面には、裏面側に情報記憶素子(ICチップ)8を搭載した回路基板9(図9参照)を装着するための凹部(基板取付け部)11が設けられる。
この回路基板9の表面(情報記憶素子8の搭載面とは逆側の面)には、インクカートリッジ1,2をインクジェット式プリンタのカートリッジ装着部に装着した際に、カートリッジ装着部に装備されたコネクタ端子に接触して、情報記憶素子8をコネクタ端子に電気接続する接続端子が装備されている。
【0007】
凹部11は、回路基板9の取付穴に嵌合して該回路基板9を位置決めする一対の基板固定ボス12a,12bと、これらの一対の基板固定ボス12a,12bにより位置決めされた回路基板9の周囲4辺に沿って立設された4辺の壁部13a〜13dと、を備えた構造である。基板固定ボス12a,12bにより位置決めされた回路基板9は、基板固定ボス12a,12bの先端を熱加締めすることで、凹部11に固定される。
【0008】
4辺の壁部13a〜13dは、カートリッジの着脱操作時などに回路基板9表面の接続端子等が外部の構造物等に不用意に接触して汚損することを防止するためのもので、回路基板9の表面に装備された接続端子等が各壁部13a〜13dの先端よりも突出することがないように、各壁部の突出高さが設定されている。
【0009】
ケース本体5及び蓋体6のそれぞれが樹脂の射出成形によって形成される点、及び凹部11がケース本体5の一外側面に設けられる点は、いずれのインクカートリッジ1,2の場合も共通している。
但し、図8に示すインクカートリッジ1の場合は、ケース本体5の射出成形時に、図8(b)に示すように、上下金型(一対の成形金型)とは別体のスライド金型15を用いることで、凹部11がケース本体5に一体形成されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
これに対して、図9に示すインクカートリッジ2の場合は、凹部11がケース本体5とは別個に射出成形された枠体17により提供されており、ケース本体5の外側面に突設された凹部位置決めボス18a,18bにより、枠体17がケース本体5に一体化されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
以上のインクカートリッジ1,2は、インクジェット式プリンタのカートリッジ装着部に装着すると、プリンタ側の制御手段から回路基板9の情報記憶素子8へ情報の読み書きが可能になり、情報記憶素子8へインク残量や使用履歴等の情報を書き込むことで、プリンタ側でのインク残量の管理を容易にすることができる。
【0011】
【特許文献1】特開2001−180003号公報
【特許文献2】特開2004−90624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、図8に示したインクカートリッジ1の場合は、ケース本体5の製造に使用する成形金型に、上下金型の抜き方向と直交する方向にスライドするスライド金型15を組み込まなければならず、成形金型の複雑化がコストアップを招くという問題があった。
一方、凹部11をケース本体5とは別体の枠体17により提供するインクカートリッジ2の場合は、ケース本体5の成形金型はスライド金型を省略することにより単純な構成にできるものの、新たに枠体17の成形金型が必要になると共に、枠体17をケース本体5に一体化する組立工程も増えるため、金型数の増加や組立工程の増加がコストアップや生産性の低下という問題を招く原因となった。
【0013】
従って、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、容器本体の外側面に回路基板を装着する基板取付け部が設けられる液体カートリッジ及びその製造方法において、成形金型の単純化や組立工程数の低減により製造コストの低減及び生産性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、液体消費装置のカートリッジ装着部に着脱自在とされる容器本体は、液体収容室を備えたケース本体と、該ケース本体の一側面を覆う蓋体とから構成され、
情報記憶素子を搭載した回路基板を装着するための基板取付け部が、前記回路基板の取付穴に嵌合して該回路基板を位置決めする一対の基板固定ボスと、これらの一対の基板固定ボスにより位置決めされた回路基板の周囲4辺に沿って設けられた4辺のガイド壁部とを備え、前記容器本体の外側面に設けられた液体カートリッジであって、
前記基板取付け部を形成する4辺のガイド壁部における3辺のガイド壁部が、前記ケース本体の外側面において前記蓋体側に開口する略コ字状に形成されると共に、残る1辺のガイド壁部が、前記蓋体の縁部に形成され、
前記3辺のガイド壁部の内、前記蓋体側の1辺のガイド壁部に対向する中央壁部の両端には一対の切欠部を設け、
前記ケース本体の外側面上おける前記一対の切欠部に対向する位置に、前記一対の基板固定ボスを配置したことを特徴とする液体カートリッジにより達成される。
【0015】
また、本発明の上記目的は、上記構成の液体カートリッジの製造方法であって、
前記ケース本体及び蓋体は、これらケース本体及び蓋体の組合せ方向に型抜きされる一対の成形金型によりそれぞれ形成され、
前記一対の基板固定ボスが、前記ケース本体を成形する一対の成形金型における一方の金型に設けられて前記一対の切欠部と同時に前記一対の基板固定ボスにおける前記切欠部側の外面を形成する第1のボス成形部と、前記一対の成形金型における他方の金型に設けられて前記中央壁部の内表面と同時に前記一対の基板固定ボスにおける前記略コ字状の開口側の外面を形成する第2のボス成形部と、で形成されることを特徴とする液体カートリッジの製造方法により達成される。
【0016】
上記構成の液体カートリッジ及びその製造方法によれば、容器本体の外側面に回路基板を装着するための基板取付け部は、その一部がケース本体と一体に形成され、残る部分が蓋体と一体に形成される。そこで、基板取付け部を形成するために、容器本体形成用とは別に、基板取付け部専用の成形金型を準備する必要がなく、基板取付け部を容器本体に組み付ける工程も必要がない。
【0017】
即ち、基板取付け部を構成する4辺のガイド壁部は、その3辺のガイド壁部を蓋体側に開口する略コ字状にしてケース本体の外側面に形成し、残る1辺のガイド壁部を蓋体の縁部に形成する。そこで、凹状となる基板取付け部を構成するガイド壁部が、ケース本体を一体成形する際に、成形金型の抜き方向の邪魔になることはない。
【0018】
また、基板取付け部は、金型の複雑化を招くスライド金型を使用せずに、一対の成形金型のみで成形することができる。しかも、基板取付け部に突設する一対の基板固定ボスにおける切欠部側の外面を形成する第1のボス成形部が、切欠部から金型の抜き方向に抜き差しできるため、これら基板固定ボスも金型の複雑化を招くスライド金型を使用せずに一体成形することができる。
【0019】
なお、上記構成の液体カートリッジにおいて、前記基板取付け部には、前記回路基板に搭載された情報記憶素子との干渉を避けるための逃げ凹部が設けられていることが望ましい。
また、上記構成の液体カートリッジの製造方法において、前記回路基板に搭載された情報記憶素子との干渉を避けるための逃げ凹部が、前記他方の金型に設けられた凹部形成部で形成されることが望ましい。
【0020】
このような構成の液体カートリッジ及びその製造方法によれば、回路基板に搭載された情報記憶素子との干渉を避けるための逃げ凹部を備えた容器本体を形成する場合にも、一対の成形金型だけでケース本体を一体成形することが可能になり、成形金型の構成の単純化や組立工程数の低減により、製造コストの低減及び生産性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る液体カートリッジ及びその製造方法によれば、回路基板が装着される基板取付け部を備えた容器本体を一体成形により形成する際、金型の複雑化を招くスライド金型を用いずに、一対の成形金型だけで容器本体を形成することが可能になり、成形金型の構成の単純化や組立工程数の低減により、製造コストの低減及び生産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態に係る液体カートリッジ及びその製造方法を詳細に説明する。
図1及び図2は本発明の一実施形態に係る液体カートリッジの分解斜視図、図3は図1に示した容器本体を構成するケース本体及び蓋体の回路基板が装着される側の分解側面図、図4は図3に示したケース本体の正面図、図5は図3に示した容器本体の組立状態の側面図、図6は図3に示したケース本体の基板取付け部における基板固定ボスを形成する製造方法の説明図、図7は図6(a)におけるVII−VII断面矢視図である。
【0023】
本実施形態に係るインクカートリッジ(液体カートリッジ)21は、インクジェット式プリンタ(液体消費装置)のカートリッジ装着部に着脱自在とされる。
インクカートリッジ21の容器本体31は、図1及び図2に示すように、インクを収容するインク収容室(液体収容室)を備えたケース本体32と、該ケース本体32の一側面を覆う蓋体33とを備えている。
【0024】
ケース本体32は、樹脂による射出成形品であり、図1中に矢印Aで示す蓋体33との対向方向が、成形金型の抜き方向(分割方向)となる。
このケース本体32は、蓋体33で覆われる側に、インクを収容するインク収容室となるインク収容凹部321(図2及び図4参照)が形成されると共に、蓋体33で覆われる側とは逆側には、圧力調整手段34を装着するためのバルブ装着用凹部322や、蛇行した微細な通気通路を形成するための溝部323などが形成されている。
【0025】
ケース本体32の蓋体33で覆われる側の面、及び逆側の面には、それぞれ樹脂製フィルム35,36が熱溶着される。
樹脂製フィルム35は、インク収容凹部321の開放面を密封して、インク収容凹部321との協働でインクを収容するインク収容室を形成する。樹脂製フィルム36は、バルブ装着用凹部322や溝部323の開放面を密封して、バルブ収容室や通気通路、或いはインク通路を形成する。
【0026】
ケース本体32の樹脂製フィルム35が溶着される面に直交する外側面の一つである底壁面32aには、インク収容室に収容したインクを外部の装置(インクジェット式プリンタ)に供給するための供給口324が形成される。
この供給口324には、インクジェット式プリンタのカートリッジ装着部に装備されたインク供給針等が挿入されるとインク流路を開くバルブ機構37が装着され、また、カートリッジ装着に装着した際に破られる封止フィルム38が熱溶着される。
さらに、供給口324に並んで、ケース本体32の底壁面32aに開口される大気連通孔325には、使用時に剥がす封止フィルム39が熱溶着される。
【0027】
ケース本体32の底壁面32aに直交する一対の外側面の一つである前面外側壁(外側面)32bには、インクカートリッジ21をインクジェット式プリンタのカートリッジ装着部に装着した際に、カートリッジ装着部側の係止手段に係合する係合レバー326が一体形成されている。また、この前面外側壁32bには、係合レバー326の下方に位置して、回路基板51を装着するための基板取付け部41の一部が形成されている。
【0028】
回路基板51は、図1及び図4に示すように、略長方形板状の基板本体52の裏面側に情報を読み書き可能な情報記憶素子53が搭載されると共に、基板本体52の表面側には、インクジェット式プリンタのカートリッジ装着部に装備されるコネクタ端子に押圧接触して情報記憶素子53を前記コネクタ端子に電気的に接続する接続端子54が装備されたものである。
回路基板51の基板本体52には、基板取付け部41に装備される一対の基板固定ボス42a,42bに嵌合する一対の取付穴52a,52bが設けられている。一対の取付穴52a,52bは、基板本体52の上端縁及び下端縁に設けられている。
【0029】
基板取付け部41は、情報記憶素子53を搭載した回路基板51を装着するための窪みであり、図2乃至図5に示すように、回路基板51の取付穴52a,52bに嵌合して該回路基板51を位置決めする一対の基板固定ボス42a,42bと、これらの一対の基板固定ボス42a,42bにより位置決めされた回路基板51の周囲4辺に沿って立設された4辺のガイド壁部44a,44b,44c,44dと、回路基板51に搭載された情報記憶素子53との干渉を避けるための逃げ凹部47と、を備える。なお、基板固定ボス42a,42bにより位置決めされた回路基板51は、基板固定ボス42a,42bの先端を熱加締めすることで、基板取付け部41に固定される。
【0030】
本実施形態の容器本体31の場合、図3に示すように、基板取付け部41を形成する4辺のガイド壁部44a,44b,44c,44dにおける3辺のガイド壁部44a,44b,44cが、ケース本体32の前面外側壁32bにおいて蓋体33側に開口する略コ字状に形成されると共に、残る1辺のガイド壁部44dが、蓋体33の縁部に形成されている。
更に、上記3辺のガイド壁部44a,44b,44cの内、蓋体33側の1辺のガイド壁部44dに対向する中央壁部であるガイド壁部44bの両端には一対の切欠部(壁無し部)46a,46bを設けている。
【0031】
そして、ケース本体32の前面外側壁32b上おける一対の切欠部46a,46bに対向する位置に、一対の基板固定ボス42a,42bを配置している。
また、図4に示すように、基板取付け部41における3辺のガイド壁部44a,44b,44cで囲まれた領域には、回路基板51における基板本体52の裏面に突出した情報記憶素子53との干渉を避けるための逃げ凹部47が設けられている。
【0032】
蓋体33は、樹脂による射出成形品であり、図1中に矢印Aで示すケース本体32との対向方向が、成形金型の抜き方向(分割方向)となる。
この蓋体33は、図1及び図2に示すように、ケース本体32の一側に熱溶着された樹脂製フィルム35の外側を覆う矩形の平板部331と、この平板部331の外周縁にケース本体32側に向かって立設された4辺の外側壁332a〜332dとを備えており、外側壁332a〜332dの一部域には、蓋体33をケース本体32に結合するための弾性係止片334が突設されている。
【0033】
また、ケース本体32の前面外側壁32bに面一に連結される蓋体33の前面側の外側壁332b表面には、図3に示すように、ケース本体32側の3辺のガイド壁部44a,44b,44cとの協働で前述の基板取付け部41を構成する1辺のガイド壁部44dが突設されている。
【0034】
次に、図6及び図7を参照しながら、上記インクカートリッジ21におけるケース本体32及び蓋体33の製造方法について説明する。
図6(a)は一対の成形金型の型締めにより第1のボス成形部61と第2のボス成形部62とが突き合された状態を示し、図6(b)は一対の成形金型を開いて第1のボス成形部61と第2のボス成形部62とが引き離された状態を示している。図7は、図6(a)におけるVII−VII断面矢視図である。尚、図中の成形金型は、一部分である第1のボス成形部61及び第2のボス成形部62のみを図示している。
【0035】
上記構成の液体カートリッジ21におけるケース本体32及び蓋体33は、これらケース本体32及び蓋体33の組合せ方向(図1の矢印A方向)に型抜きされる一対の成形金型を使った射出成形によりそれぞれ形成される。
基板取付け部41の構成要素である一対の基板固定ボス42a,42bは、図6に示すように、ケース本体32を成形する為の一対の成形金型における一方の金型に設けられて一対の切欠部46a,46bと同時に一対の基板固定ボス42a,42bにおける切欠部側の外面を形成する第1のボス成形部61と、前記一対の成形金型における他方の金型に設けられて中央壁部であるガイド壁部44bの内表面と同時に一対の基板固定ボス42a,42bにおける略コ字状の開口側の外面を形成する第2のボス成形部62と、で形成される。
【0036】
第1のボス成形部61は、ケース本体32を成形する一対の成形金型における一方の金型(例えば、上型)に一体形成されたもので、中央壁部であるガイド壁部44bの両側の切欠部46a,46bを形成する一対の突状片61a,61bの各先端における半円柱状の曲面61cによって、一対の基板固定ボス42a,42bにおける切欠部46a,46b側の半円形の外面を形成する。
【0037】
第2のボス成形部62は、ケース本体32を成形する一対の成形金型における他方の金型(例えば、下型)に一体形成されたもので、中央壁部であるガイド壁部44bの内表面を形成する凸状片62d両側の段部62a,62bの各先端における半円柱状の曲面62cによって、一対の基板固定ボス42a,42bにおける前記略コ字状の開口側の外面を形成する。
【0038】
以上に説明した本実施形態のインクカートリッジ21及びその製造方法によれば、容器本体31の外側面に回路基板51を装着するための基板取付け部41は、容器本体31と別体ではなく、その一部である3片のガイド壁部44a,44b,44cと一対の基板固定ボス42a,42bがケース本体32と一体に形成され、残る部分である1辺のガイド壁部44dが蓋体33と一体に形成される。
そこで、基板取付け部41を形成するために、容器本体31形成用とは別に、基板取付け部41専用の成形金型を準備する必要がなく、基板取付け部41を容器本体31に組み付ける工程も必要がない。
【0039】
即ち、基板取付け部41を構成する4辺のガイド壁部44a,44b,44c,44dは、その3辺のガイド壁部44a,44b,44cを蓋体33側に開口する略コ字状にしてケース本体32の前面外側壁32bに形成し、残る1辺のガイド壁部44dを蓋体33の縁部に形成する。
【0040】
そこで、凹状となる基板取付け部41を構成するガイド壁部44a,44b,44cが、ケース本体32を一体成形する際に、成形金型の抜き方向の邪魔になることはない。
また、基板取付け部41は、金型の複雑化を招くスライド金型を使用せずに、一対の成形金型のみで成形することができる。しかも、基板取付け部41に突設する一対の基板固定ボス42a,42bにおける切欠部46a,46b側の外面を形成する第1のボス成形部61が、切欠部46a,46bから金型の抜き方向に抜き差しできるため、これら基板固定ボス42a,42bも金型の複雑化を招くスライド金型を使用せずに一体成形することができる。
【0041】
更に、上記実施形態に係るインクカートリッジ21の基板取付け部41には、回路基板51に搭載された情報記憶素子53との干渉を避けるための逃げ凹部47が設けられている。
そして、この逃げ凹部47は、図7に示すように、他方の金型における第2のボス成形部62に設けられた凹部形成部62fで形成される。
そこで、回路基板51に搭載された情報記憶素子53との干渉を避けるための逃げ凹部47を備えた容器本体31を形成する場合にも、一対の成形金型だけでケース本体32を形成することが可能になり、成形金型の構成の単純化や組立工程数の低減により、インクカートリッジ21の製造コストの低減及び生産性の向上を図ることができる。
【0042】
なお、本発明に係る液体カートリッジは、上記実施形態に示したインクカートリッジに限らない。また、本発明の液体カートリッジが装着される液体消費装置も、上記実施形態に示したインクジェット式プリンタに限らない。
例えば、液体消費装置としては、液体カートリッジが着脱可能に装着される容器装着部を備え、前記液体カートリッジに貯留されている液体が装置に供給される各種の装置が該当し、具体例としては、例えば液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレイ、面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体カートリッジを斜め下方から見た分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る液体カートリッジを斜め上方から見た分解斜視図である。
【図3】図1に示した容器本体を構成するケース本体及び蓋体の回路基板が装着される側の分解側面図である。
【図4】図3に示したケース本体の正面図である。
【図5】図3に示した容器本体の組立状態の側面図である。
【図6】図3に示したケース本体の基板取付け部における基板固定ボスを形成する製造方法の説明図である。
【図7】図6(a)におけるVII−VII断面矢視図である。
【図8】従来のインクカートリッジの説明図であり、(a)は容器本体の回路基板が装着される側の側面図、(b)は(a)に示したケース本体の正面図である。
【図9】従来の別のインクカートリッジの説明図であり、(a)は容器本体の回路基板が装着された側面図、(b)は(a)に示したケース本体の正面図である。
【符号の説明】
【0044】
21…インクカートリッジ(液体カートリッジ)、31…容器本体、32…ケース本体、32a…底壁面、32b…前面外側壁(外側面)、33…蓋体、41…基板取付け部、42a,42b…基板固定ボス、44a,44b,44c,44d…ガイド壁部、46a,46b…切欠部、47…逃げ凹部、51…回路基板、52…基板本体、53…情報記憶素子、61…第1のボス成形部、62…第2のボス成形部、321…インク収容凹部(液体収容凹部)、324…供給口、332b…外側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体消費装置のカートリッジ装着部に着脱自在とされる容器本体は、液体収容室を備えたケース本体と、該ケース本体の一側面を覆う蓋体とから構成され、
情報記憶素子を搭載した回路基板を装着するための基板取付け部が、前記回路基板の取付穴に嵌合して該回路基板を位置決めする一対の基板固定ボスと、これらの一対の基板固定ボスにより位置決めされた回路基板の周囲4辺に沿って設けられた4辺のガイド壁部とを備え、前記容器本体の外側面に設けられた液体カートリッジであって、
前記基板取付け部を形成する4辺のガイド壁部における3辺のガイド壁部が、前記ケース本体の外側面において前記蓋体側に開口する略コ字状に形成されると共に、残る1辺のガイド壁部が、前記蓋体の縁部に形成され、
前記3辺のガイド壁部の内、前記蓋体側の1辺のガイド壁部に対向する中央壁部の両端には一対の切欠部を設け、
前記ケース本体の外側面上おける前記一対の切欠部に対向する位置に、前記一対の基板固定ボスを配置したことを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項2】
前記基板取付け部には、前記回路基板に搭載された情報記憶素子との干渉を避けるための逃げ凹部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体カートリッジ。
【請求項3】
請求項1に記載の液体カートリッジの製造方法であって、
前記ケース本体及び蓋体は、これらケース本体及び蓋体の組合せ方向に型抜きされる一対の成形金型によりそれぞれ形成され、
前記一対の基板固定ボスが、前記ケース本体を成形する一対の成形金型における一方の金型に設けられて前記一対の切欠部と同時に前記一対の基板固定ボスにおける前記切欠部側の外面を形成する第1のボス成形部と、前記一対の成形金型における他方の金型に設けられて前記中央壁部の内表面と同時に前記一対の基板固定ボスにおける前記略コ字状の開口側の外面を形成する第2のボス成形部と、で形成されることを特徴とする液体カートリッジの製造方法。
【請求項4】
前記回路基板に搭載された情報記憶素子との干渉を避けるための逃げ凹部が、前記他方の金型に設けられた凹部形成部で形成されることを特徴とする請求項3に記載の液体カートリッジの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−290137(P2007−290137A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117282(P2006−117282)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】