説明

液体供給装置、液滴を吐出する装置及び画像形成装置

【課題】メインタンクからヘッドタンクに記録液を供給する流路内での記録液の増粘によって供給不全が発生する。
【解決手段】インクカートリッジ10から供給ポンプ241、インク供給チューブ36を介してヘッドタンク35に記録液を補充供給するようにし、供給ポンプ241、インク供給チューブ36などの流路内の記録液の滞留時間を供給ポンプ241を駆動していない時間として計測し、この計測した時間が所定時間以上になったときには供給ポンプ241を駆動して流路内の記録液を流動化する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体供給装置、液滴を吐出する装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタ/ファックス/コピア或いはこれらの機能を複合した画像形成装置としては、例えば、液体としての記録液の液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを用いて、被記録媒体(以下「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、また、記録媒体、転写材なども同義で使用する。)を搬送しながら、記録液の液滴(以下、インク滴ともいう。)を用紙に付着させて画像形成(記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる。)を行なうインクジェット方式の画像形成部を搭載したものが知られている。
【0003】
このようなインクジェット記録方式の画像形成装置において、記録ヘッドに対して記録液を供給する方式には、記録ヘッドを搭載するキャリッジに記録液を収容した液体収容手段であるインクカートリッジを着脱自在に装着し、このインクカートリッジから記録ヘッドに記録液を供給する方式と、キャリッジ上に記録ヘッドに記録液を供給する小容量のヘッドタンク(サブタンクともいう。)を搭載し、液体収容手段である大容量のインクカートリッジ(メインタンク)を装置本体側に設置し、ヘッドタンクに装置本体側のインクカートリッジから記録液(液体)を補充供給する方式とが知られている。
【0004】
また、上述したインクジェット記録装置などの液滴を吐出する装置を含む装置にあっては、記録ヘッド内でインクが増粘することによって吐出不良が生じることから、記録ヘッドから液滴を吐出していない時間に基づいて記録ヘッドの吐出状態を回復するための処理、動作を行うようにしている。
【0005】
例えば、特許文献1には記録ヘッドのインク吐出に影響を及ぼすインクジェット記録装置における複数の状態が継続するそれぞれの時間を計時して、各状態の計時結果の組合せに応じて記録ヘッドをキャッピングしてノズルからインクを吸引し、あるいは、記録に関与しない空吐出を行うなどの回復動作を行うことが記載されている。
【特許文献1】特許第2877971号公報
【0006】
特許文献2には情報処理装置から画像データを受容する前に時計データを受信し、受信した時間データと記憶している時計データとの比較によってプリント動作を行うプリントヘッドのプリント性能を維持するための処理を行うことが記載されている。
【特許文献2】特開2001−130109号公報
【0007】
特許文献3にはキャップ部材により吐出口をキャップしていないキャップオープン状態の経過時間であるキャップオープン時間を累積した累積時間が所定時間より長くなった場合に回復手段により記録ヘッドの回復処理を行うことが記載されている。
【特許文献3】特開2004−090359号公報
【0008】
特許文献4には装置の放置時間と、当該日時が春夏秋冬のどの季節に該当するかを求めて、放置時間と季節とに応じて、記録ヘッドに対する回復手段による回復処理を異ならせることが記載されている。
【特許文献4】特許第2877872号公報
【0009】
特許文献5には最後に行われた記録動作終了時から次の記録動作開始時に至る経過時間と、使用環境に応じた設定時間とに基づいて、経過時間が設定時間以上であるときに記録動作開始前に回復手段による記録ヘッドの回復動作を行うことが記載されている。
【特許文献5】特許第3159833号公報
【0010】
特許文献6には記録装置の電源が再投入されたときに、先の電源投入終了からの経過時間を反映した電源投入時に温度が上昇する特定部分またはその周囲の温度を検出し、検出された温度に基づいて経過時間に応じた記録ヘッドの吐出状態を回復させるための処理を決定して回復手段を制御することが記載されている。
【特許文献6】特開2002−029071号公報
【0011】
その他、記録ヘッドの維持回復に関するものとして特許文献7ないし19に記載されているものがある。
【特許文献7】特開2002−079693号公報
【特許文献8】特開2002−248780号公報
【特許文献9】特開2003−089226号公報
【特許文献10】特開2003−182052号公報
【特許文献11】特開2003−205633号公報
【特許文献12】特開平05−131647号公報
【特許文献13】特開平06−031929号公報
【特許文献14】特開平06−031950号公報
【特許文献15】特許第3246532号公報
【特許文献16】特許第3329367号公報
【特許文献17】特開平11−179929号公報
【特許文献18】特開2000−272116号公報
【特許文献19】特開2001−180012号公報
【0012】
また、電源が供給されなくなったときにも記録ヘッドのキャッピングを可能にするものとして特許文献20に記載のものがある。
【特許文献20】特開2005−111735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、水性記録液などの液体の滴(液滴)を吐出する装置にあっては、液体の乾燥増粘によって液体吐出ヘッドに対して液体を供給することができなくなることがある。記録液が供給経路内部で増粘するのは、装置が長時間にわたり使用されなかった場合あるいは、使用されていても記録ヘッド近傍に貯える記録液のみで賄え、供給経路を通じての記録液補給を長時間にわたり必要としなかった場合などが考えられる。ここで長時間とは、記録液自体や記録液流路における耐乾燥性により規定されるものである。
【0014】
この場合、上述したように、従来の装置では、放置時間に応じてヘッドの吐出性能を回復するための回復動作を実施するようにしている。
【0015】
しかしながら、ヘッドの吐出性能の回復動作を行ってもヘッドに対する液体供給が不全になると、ヘッドからの液滴吐出を行うことができないという課題がある。
【0016】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、液体供給不全を防止する液体供給装置、液滴を吐出する装置、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体供給装置は、液体の流路を形成する少なくとも一部が非金属かつ非セラミックス製の流路手段と、この流路手段に液体を流動させる液体流動手段と、前記流路手段内に液体が滞留している滞留時間に基づいて前記液体流動手段を制御して前記流路手段内の液体を流動させる制御手段とを備えている構成とした。
【0018】
ここで、流路形成手段の少なくとも一部が可撓性を有している構成、液体流動手段が液体を送るポンプである構成、流路形成手段又は液体流動手段の構成部分に外界との遮蔽壁の最薄箇所が1mmを越えない部分がある構成、液体の滞留時間が液体流動手段の非稼動時間である構成、液体の滞留時間が通電しているときの液体流動手段の非稼動時間を累積した時間である構成とできる。また、液体は、少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤、浸透性向上剤を含み、水分蒸発に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)が記録液全重量に対する水分蒸発率30%までは1.0以下であり、かつ、水分蒸発率30〜45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成された液体である構成とできる。
【0019】
本発明に係る液滴を吐出する装置、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る液体供給装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る液体供給装置、液滴を吐出する装置、画像形成装置によれば、流路手段内に液体が滞留している滞留時間に基づいて液体流動手段を制御して流路手段内の液体を流動させる構成としたので、流路内での液体の乾燥、増粘による供給不全を低減、抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る液滴を吐出する装置を含む本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置を前方側から見た斜視説明図である。
このインクジェット記録装置は、装置本体1と、装置本体1に装着された用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、第1液体収容手段であるインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
【0022】
このカートリッジ装填部4には、色の異なる液体である記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の第1の液体収容手段としての記録液カートリッジであるインクカートリッジ(メインタンク)10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。また、インクカートリッジ10k、10c、10m、10yは縦置き状態で横方向に並べて装填する構成としている。
【0023】
また、操作/表示部5には、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための各色の残量表示部11k、11c、11m、11yを配置している。さらに、この操作/表示部5には、電源ボタン12、用紙送り/印刷再開ボタン13、キャンセルボタン14も配置している。
【0024】
次に、このインクジェット記録装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の概要を示す側面模式的説明図、図3は同じく要部平面説明図である。
フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図3で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0025】
このキャリッジ33には、前述したようにイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0026】
記録ヘッド34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0027】
この記録ヘッド34にはドライバICを搭載し、図示しない制御部との間でハーネス(フレキシブルプリントケーブル)22を介して接続している。
【0028】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34に各色のインクを供給するための第2液体収容手段である各色のヘッドタンク35を搭載している。この各色のヘッドタンク35には各色の可撓性を有する非金属かつ非セラミックス製(ここでは樹脂製)の流路手段であるインク供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。
【0029】
また、このカートリッジ装填部4にはインクカートリッジ10内のインクを、インク供給チューブ36を介してヘッドタンク35に送液するための液体流動手段である供給ポンプユニット24が設けられ、また、インク供給チューブ36は這い回しの途中でフレーム21を構成する後板21Cに係止部材25にて保持されている。
【0030】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0031】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0032】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。さらに、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド34による印写領域に対応してガイド部材57を配置している。
【0033】
この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングベルトを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図3のベルト搬送方向に周回移動する。
【0034】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロ63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0035】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0036】
さらに、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。
【0037】
この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a〜82d(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。ここでは、キャップ82aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ82b〜82dは保湿用キャップとしている。
【0038】
そして、この維持回復機構81による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ82に排出されたインク、あるいはワイパーブレード83に付着してワイパークリーナ85で除去されたインク、空吐出受け94に空吐出されたインクは図示しない廃液タンクに排出されて収容される。
【0039】
また、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口89などを備えている。
【0040】
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0041】
このとき、後述する制御部のACバイアス供給部から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0042】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0043】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で記録ヘッド34をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
【0044】
次に、この画像形成装置で使用しているインク(記録液、以下「本インク」という。)の調整例について説明する。なお、これに限定されるものではない。
<製造例1インク>
(ブラックインク)
KM−9036(東洋インキ)(自己分散型顔料) 50重量%
グリセリン 10重量%
1,3−ブタンジオール 15重量%
2−エチル−1、3−ヘキサンジオール 2重量%
2−ピロリドン 2重量%
界面活性剤(1−9) 1重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例1インクを得た。
【0045】
<製造例2インク>
(ポリマー溶液Aの調整)
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。次にスチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50%のポリマー溶液800gを得た。このポリマー溶液の一部を乾燥し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(標準:ポリスチレン、溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したところ、重量平均分子量は15000であった。
【0046】
(顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調整)
ポリマー溶液A28gとC.I.ピグメントイエロー97を26g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g及びイオン交換水13.6gを充分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、イエローポリマー微粒子の水分散体を得た。
(イエローインク)
イエローポリマー微粒子分散体 40重量%
グリセリン 8重量%
1、3−ブタンジオール 20重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2重量%
界面活性剤(1−8) 1.5重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学社製) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例2インクを得た。
【0047】
<製造例3インク>
(顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調整)
顔料種をC.I.ピグメントレッド122に変えた他は同様にして、マゼンタポリマー微粒子の水分散体を得た。
(マゼンタインク)
マゼンタポリマー微粒子の分散体 50重量%
グリセリン 10重量%
1、3−ブタンジオール 18重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2重量%
界面活性剤(1−8) 1.5重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学社製) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例3インクを得た。
【0048】
<製造例4インク>
(顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調整)
顔料種をC.I.ピグメントブルー15:3に変えた他は同様にして、シアンポリマー微粒子の水分散体を得た。
(シアンインク)
シアンポリマー微粒子分散体 40重量%
グリセリン 8重量%
1、3−ブタンジオール 20重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2重量%
界面活性剤(1−8) 1.5重量%
シリコーン消泡剤KS508(信越化学社製) 0.1重量%
イオン交換水 残量
上記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターにて濾過を行ない、製造例4インクを得た。
【0049】
上記製造例の各インクは、水分蒸発に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)がインク全重量に対する水分蒸発率30%までは1.0以下であり、かつ、水分蒸発率30〜45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つこと、粘度上昇率が50を越える点での、インク中の着色剤の平均粒子径が、初期平均粒子径の5倍以下であり、かつ0.8μm以下となることが確認された。
【0050】
このような記録液を使用することによって、長期放置でもノズル目詰まりを起こさず、普通紙上での高画質化及び高速印字を達成できる。しかも、この記録液は、仮に、ノズル内の記録液が乾燥し増粘することによりノズルから吐出できなくなったとしても、顔料などが粗大粒子化してノズル詰まりを発生するわけではないため、簡単な維持回復動作により容易に回復できるという利点を有している。
【0051】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図4を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部は、この画像形成装置全体の制御を司る、本発明に係る制御手段を兼ねたマイクロコンピュータで構成した主制御部301及び印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御部302とを備えている。
【0052】
そして、主制御部301は、通信回路300から入力される印刷処理の情報に基づいて用紙42に画像を形成するために、前述したように、主走査モータ24や副走査モータ58を主走査モータ駆動回路303及び副走査モータ304を介して駆動制御するとともに、印刷制御部302に対して印刷用データを送出するなどの制御を行う。
【0053】
また、主制御部301には、キャリッジ23の位置を検出するキャリッジ位置検出回路305からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいてキャリッジ23の移動位置及び移動速度を制御する。キャリッジ位置検出回路305は、例えばキャリッジ23の走査方向に配置されたエンコーダシートのスリット数を、キャリッジ23に搭載されたフォトセンサで読み取って計数することで、キャリッジ23の位置を検出する。主走査モータ駆動回路303は、主制御部301から入力されるキャリッジ移動量に応じて主走査モータ24を回転駆動させて、キャリッジ23を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0054】
また、主制御部301には搬送ベルト51の移動量を検出する搬送量検出回路306からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいて搬送ベルト51の移動量及び移動速度を制御する。搬送量検出回路306は、例えば搬送ローラ52の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシートのスリット数を、フォトセンサで読み取って計数することで搬送量を検出する。副走査モータ駆動回路304は、主制御部301から入力される搬送量に応じて副走査モータ58を回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0055】
主制御部301は、給紙コロ駆動回路307に給紙コロ駆動指令を与えることによって給紙コロ43を一回転させる。主制御部301は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路308を介して維持回復機構81のモータ221を回転駆動することにより、前述したようにキャップ82の昇降、ワイパーブレード83の昇降、吸引ポンプ211の駆動などを行わせる。
【0056】
主制御部301は、供給ポンプ用駆動回路311を介して供給ユニット24のポンプを駆動するための駆動モータ(供給モータ)を駆動制御し、カートリッジ装填部4に装填されたインクカートリッジ10からヘッドタンク35に対してインクを補充供給する。このとき、主制御部301には、ヘッドタンク35が満タン状態にあることを検知するサブタンク満タンセンサ312からの検知信号に基づいて補充供給を制御する。
【0057】
また、主制御部301は、カートリッジ通信回路314を通じて、カートリッジ装填部4に装着された各インクカートリッジ10に設けられる記憶手段である不揮発性メモリ316に記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行って、本体記憶手段である不揮発性メモリ(例えばEEPROM)315に格納保持する。
【0058】
また、主制御部301には、環境温度、環境湿度を検知する環境センサ313からの検知信号が入力される。
【0059】
印刷制御部302は、主制御部301からの信号とキャリッジ位置検出回路305及び搬送量検出回路306などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、記録ヘッド34の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成して、上述した画像データをシリアルデータでヘッド駆動回路310に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッド駆動回路310に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッド駆動回路310に対して出力する。
【0060】
ヘッド駆動回路310は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部302から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド34を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0061】
次に、この画像形成装置におけるヘッドタンク35に液体である記録液(インク)を供給する本発明に係る液体供給装置について図5を参照して説明する。なお、図5は同液体供給装置の模式的説明図である。
第1液体収容手段であるインクカートリッジ10は、カートリッジケース101内に液体であるインクを収容した可撓性を有するインク袋102を収納してなり、このインク袋102には内部のインクを供給するためのインク供給口部103を備えている。このインク供給口部103は内部にゴムなどの弾性部材を有している。
【0062】
第2液体収容手段であるヘッドタンク35は、インク200を収容するタンクケース201と、図示しない負圧発生手段、例えばフィルムと弾性部材からなる負圧発生機構とを備え、タンクケース201の下部には記録ヘッド34が取り付けられ、またタンクケース201の上部には収容されたインク200の液面が所定の位置になったことを検知する2本の検知電極などで構成した満タン検知手段312を備えている。
【0063】
供給ポンプユニット24は、インクカートリッジ10のインクをヘッドタンク35に給送するための供給ポンプ241と、供給ポンプ241のピストン242を往復移動させるためのカム243、カム243を回転させるギヤ244及びこのギヤ244を回転駆動させるギヤ245をモータ軸250に取り付けたポンプ駆動手段である駆動モータ250などとを備え、供給ポンプ241に設けた中空針246をインクカートリッジ10のインク袋102のインク供給口部103内の弾性部材(例えばゴム栓)に差し込むことによって、供給ポンプ241内とインク袋102内とをジョイントする。なお、供給ポンプ241の排出口部側はインク供給チューブ36を介してヘッドタンク35に接続されている。
【0064】
そして、供給ポンプ241の作動/停止を制御するための制御手段401は、ヘッドタンク35に対してインクカートリッジ10からインクを供給するとき、検知手段203からの検知信号に基づいて供給ポンプ用駆動回路311を介して駆動モータ245の回転駆動及び停止を制御するとともに、インクカートリッジ10からサブタンク35まで流路内に記録液が滞留している時間を計測する計時手段403の計測結果に基づいて、当該流路内に記録液を流動させるために供給ポンプ241の作動/停止を制御する。
【0065】
ここで、供給ポンプ241の一例について図6を参照して説明する。
この供給ポンプ241はピストンポンプであり、シリンダ502と、このシリンダ501の内周面(内壁面)に摺動自在に嵌め込んだピストン242とを備え、シリンダ502内にピストン242で隔成された第1室511及び第2室512を形成している。第1室511はシリンダ502の側壁に形成した導入口513に連通し、この導入口513に中空針246を接続する。第2室512は前述したチューブ36を接続する図示しない接続部に連通している。
【0066】
そして、ピストン242はピストンロッド(ピストン軸、ロッド部)515の一端部に摺動可能に装着し、このピストンロッド511の一端部外周側にはピストン242の移動範囲を規制するストッパ部516、517を形成し、また、ピストンロッド515の一端部の内部にはピストン242の移動で開閉される流路518を形成している。
【0067】
また、シリンダ502の開口部とピストンロッド515との間には、ピストンロッド515の往復動を可能にするとともに第1室511をシールするための外界から流路を遮蔽する遮蔽壁としてのシール部材521を設けている。
【0068】
このシール部材521の外周縁部523はシリンダ502側にキャップ部材520で押圧して保持し、内周縁部524はピストンロッド515の外周面に設けた突起部515a、515a間に嵌め込んで保持し、シール部材521がピストンロッド515に移動に同動して移動するようにしている。
【0069】
そして、シール部材521のピストンロッド515とシリンダ502との間の部分522は、他の部分であるシリンダ502の開口端部に保持する外周縁部523、ピストンロッド515に保持する内周縁部524よりも厚みを薄く形成して、所謂蛇腹状にすることによって撓み易くしている。
【0070】
また、シール部材521とシリンダ502の開口端部との接触部(嵌合部)は、シリンダ502の端面に凸部525を形成し、シール部材521の外周縁部523に凸部525が嵌合する凹部526を形成して凹凸嵌合させ、シール部材521をキャップ部材520でシリンダ502の端面に押圧して保持している。なお、シリンダ502側を凹部、シール部材521側を凸部にすることもできる。
【0071】
さらに、シリンダ502の開口端部にシール部材521を押圧保持するキャップ部材520とピストンロッド515の係止部215bとの間には、ピストンロッド515を第2室512側に付勢する戻しスプリング528を介装している。
【0072】
このように構成したピストンポンプ501においては、ピストンロッド515が図5で上昇する(第2室512側に移動する)とき、ピストン242はストッパ部516側に当接して流路518を閉じるので、ピストン242の移動(往動)によって第1室511の容積が拡大して負圧状態になり、これにより、インクカートリッジ10から中空針306及び導入口513を介して第1室511に記録液が導入される。このとき、第2室512内の記録液は第2室512の容積が縮小することによって図示しない接続部からチューブ36に排出される(送り出される。)。
【0073】
そして、ピストンロッド515が下降する(第1室511側に移動する)とき、ピストン242はストッパ部517側に当接して流路518を開くので、ピストン242の移動(復動)によって第1室511の容積が縮小して第1室511の記録液が流路518を通じて第2室512側に流入する。
【0074】
このようなピストン242の往復動によってインクカートリッジ10から記録液を第1室511に導入して、第2室512からヘッドタンク35側(ヘッド側)に記録液を排出して供給する(送液する。)。
【0075】
次に、このように構成した液体供給装置の記録液補充供給動作について説明する。
記録ヘッド34から液滴を吐出して画像を形成することによってヘッドタンク35から記録ヘッド34に対してインクが供給され、ヘッドタンク35内のインク200の収容量(インク量)が減少する。このヘッドタンク35内のインク量の減少が所定量になったとき(あるいは記録ヘッド34から吐出したインクの消費量が所定量になったとき)には、ヘッドタンク35に対してインクカートリッジ10からインクを補充するためにインクを供給する動作を行なうことになる。
【0076】
このヘッドタンク35にインクカートリッジ10からインクの補充供給を行なうときには、制御手段401は駆動モータ250を回転駆動してカム243を回転させることにより、供給ポンプ241のピストン242が往復移動し、インクカートリッジ10のインク袋102内のインクが供給ポンプ241内に吸い込まれ、インク供給チューブ36側に排出されることで、インクカートリッジ10からヘッドタンク35に対してインクが給送される。
【0077】
そして、ヘッドタンク35の検知手段203にインク200が接触することでヘッドタンク35が満タンになったことが検出されるので、駆動モータ250を停止して供給ポンプ241を停止させ、インクの給送を停止する。
【0078】
次に、この液体供給装置における記録液供給用の流路内で記録液を流動化して記録液の増粘などによる供給不全を低減、抑制するための処理(液体流動化処理)について図7を参照して説明する。
この処理は所定のタイミングでエントリして、あるいは供給ポンプ作動のタイミングなどでエントリして実行を行い、供給ポンプ241による供給動作実行であれば、供給ポンプ241を作動させてインクカートリッジ10からインク供給チューブ36を介してヘッドタンク35に記録液を補充供給し、所定の補充供給が完了したときには供給ポンプ241を停止して記録液の供給動作を停止する動作を行う。
【0079】
そして、供給ポンプ241の動作を実行したときには、供給動作終了後、供給ポンプ241の非稼動時間を計測する計時手段403をリセットして非稼働時間の計測を開始(再スタート)する。
【0080】
その後、あるいは、供給ポンプ241の供給動作実行でなければそのまま、供給ポンプ241の非稼動時間が所定時間(例えば1ヶ月)経過したか否か、つまり、供給ポンプ241やインク供給チューブ36などの記録液流路内での記録液の滞留時間が所定時間経過したか否かを判別する。なお、この場合の所定時間は、記録液や供給経路の耐乾燥性に応じて設定することが好ましい。また、記録液の乾燥度合いは外部環境(特に、温度や相対湿度)によっても影響を受けるため、ポンプ非稼働時間として、環境に応じて重み付けた時間を用いることも有効である。
【0081】
このように、ここでは、供給ポンプ241やインク供給チューブ36などの記録液流路内での記録液の滞留時間を供給ポンプ241の非稼動時間として計測するようにしている。この場合、装置内部に時計を備えて装置の電源状態(電源オン、オフ)にかかわらず常時供給ポンプ241の非稼動時間を計測して、計測した値が所定時間を経過したか否かを判別するようにすることができる。あるいは、装置の電源がオン状態のとき(通電時)の供給ポンプの非稼動時間を計測してこれを累積した値が所定時間を経過したか否かを判別するようにすることもできる。
【0082】
このとき、供給ポンプ241の非稼動時間が所定時間経過していれば、供給ポンプ241の駆動を指示して、供給ポンプ241を駆動してインクカートリッジ10からサブタンク35に対する記録液の供給動作を所定の時間行なう。その後、供給ポンプ241の非稼動時間を計測する計時手段403の値をリセットして、再度、供給ポンプ241の非稼動時間の計測を開始する。
【0083】
この処理を適用した場合の具体的な事例について図8ないし図11を参照して説明する。
先ず、図8に示す第1例は、放置が所定期間(所定時間、ここでは1ヶ月とする。)未満である場合の例である。つまり、印字指示が与えられて印字が行なわれ印字が終了し、供給ポンプ241による供給動作を行った後、次に印字指示が1ヶ月を経過する前に与えられた場合であり、このときには、流路内の記録液を流動させるための供給ポンプ241の供給動作は行われない。
【0084】
次に、図9に示す第2例は、放置が所定期間(所定時間、ここでは1ヶ月とする。)以上である場合の例である。つまり、印字指示が与えられて印字が行なわれ印字が終了し、供給ポンプ241による供給動作を行った後、そのまま放置されて1ヶ月を経過したことから供給ポンプ241を駆動して供給動作を行わせて流路内の記録液を流動させ(ポンプへの流動指示)、その後1ヶ月経過前に印字指示が与えられた場合である。
【0085】
次に、図10に示す第3例は、記録液の補充供給が所定期間(所定時間、ここでは1ヶ月とする。)以上停止した場合の例である。つまり、印字指示が与えられて印字が行なわれ、印字中に供給ポンプ241による供給動作を行ない、印字が終了し、その後、印字が何度か行なわれたが供給ポンプ241による供給動作が行われないまま1ヶ月が経過したことから、供給ポンプ241を駆動して供給動作を行わせて流路内の記録液を流動させ(ポンプへの流動指示)、その後1ヶ月経過前に印字指示が与えられた場合である。
【0086】
次に、図11に示す第4例は、記録液の補充供給が所定期間(所定時間、ここでは1ヶ月とする。)以上停止した場合で、電源オン中の供給ポンプの非稼動時間を計測する場合の例である。つまり、印字指示が与えられて印字が行なわれ、印字中に供給ポンプ241による供給動作を行ない、印字が終了し、その後、印字が何度か行なわれ、最終的には電源がオフ状態にされた。そして、その後、再度、電源がオン状態にされて印字が行われたが、供給ポンプ241による供給動作が行われないまま、電源オン中で供給ポンプ241を停止している時間を累積した累積時間が1ヶ月を経過したことから、供給ポンプ241を駆動して供給動作を行わせて流路内の記録液を流動させ(ポンプへの流動指示)、その後1ヶ月経過前に印字指示が与えられた場合である。
【0087】
このように、この実施形態においては、供給ポンプ241やインク供給チューブ36などの記録液流路内での記録液の滞留時間を供給ポンプ241の非稼動時間として計測し、この計測結果(流路における記録液の滞留時間)が所定時間以上になったときには、流動手段としての供給ポンプ241を駆動して流路内の記録液を流動させるようにしているので、流路内で乾燥などによって粘度が上昇した記録液を流動化することができて、供給不全の発生を低減ないし抑制することができるようになる。
【0088】
つまり、流路手段の流路内における液体の滞留時間の計測結果に基づいて液体流動手段を駆動して液体を流動させることによって、流路内での液体の乾燥、増粘によって液体の供給不全が生じることを低減、抑制することができるようになる。
【0089】
特に、少なくとも一部にプラスチックやゴムなど非金属かつ非セラミックス製の記録液流路が存在し、この流路を介して水性記録液を供給する場合、水分の透過やシール不足により水分が蒸発しやすく、記録液の増粘、固化によって記録液が供給不全となり、装置の故障に至る場合が生じる。そこで、該流路内に記録液が滞留している時間を計測してこの結果に応じて記録液を流路内に流動させることにより、記録液の増粘による供給不全を防ぐことができるようになる。
【0090】
また、本発明を上述した実施形態のように流路形成手段や流動手段の構成部分に可撓性を有する部分がある液体供給装置に適用することでより顕著な効果が得られる。高速印字、大容量印刷などの需要が増加し、記録ヘッドとインクカートリッジが分離されている構成が増えてきている。これは、大容量のカートリッジを記録ヘッド上に搭載したまま走査動作により記録するには、負荷が大きくなりすぎて大容量モータの搭載を余儀なくされるためである。これを防ぐために、記録ヘッドとカートリッジとが分離され、ヘッドとカートリッジとの間を樹脂チューブなどの可撓性を有する部材で接続するようにしている。なお、ヘッドとカートリッジは常に接続される構成、通常は分断されていて所定のタイミングで流路が接続される構成のいずれでもよい。
【0091】
このような構成では、上述したようにプラスチックやゴムなど非金属かつ非セラミックス製の流路が介在することになり、記録液の増粘などによる供給不全が生じ易くなることから、本発明を適用することによって、より効果的に供給不全の発生を低減、抑制することができる。
【0092】
また、上記実施形態のようにカートリッジと記録ヘッドとが分離されている場合、カートリッジ側から記録液を供給するために供給ポンプを有する場合がある。この場合には、計時時間に応じて、この供給ポンプを作動させることで、確実に増粘気味の記録液を流動、攪拌することができる。このとき、供給ポンプの作動とともに、ヘッドからの記録液の吸引動作などを組み合わせることもできる。また、計時結果に応じて、ポンプ作動時間を可変、すなわち、記録液滞留時間が長いほどポンプの稼働時間を長くするなどの制御を行うようにすることで、より確実に増粘気味の記録液を流動、攪拌することができる。
【0093】
また、上述した可撓性の流路は、その可動性を損なわないために外界との壁厚が薄いほど好ましい。しかしながら、耐久性の観点からはある程度の厚さが求められる。好ましい厚さは、0.1mmから2mmの間に、より好ましくは0.2mm〜1mmの間である。このような厚みの可撓性部分を有している場合、流路壁からの透湿を十分に防ぐことは困難であり、本発明はさらに有効となる。ポンプについても、ポンプ機能を発現するために内部容積の変化を許容する構成が簡素な構成で好ましい。内部容積の変化を許容する機構のひとつとして可撓性部材を外界との遮蔽壁として利用することが多い。ポンプとして機能するには壁厚は1mmを超えないことが好ましい。この場合も、遮蔽壁からの透湿を防ぐことは困難であり、本発明は特に有効となる。
【0094】
また、液体の滞留時間としては、ポンプ非稼働時間を計測することが好ましい。記録装置の通電、非通電によらず時刻認識手段があり、これにより非通電期間を含むポンプの非稼働時間を累積で計測することができる。また、この計時結果に応じて、非通電状態であろうとも内部電源等によるポンプ動作が実施できれば、より一層好ましい。内部電源を具備するかわりに、通電直後に計時結果に基づいてポンプ動作すべきかを判別する構成とすることもできる。
【0095】
あるいは、液体の滞留時間として通電時のポンプ非稼動時間を累積計測することも有効である。一般的に、通電により装置内部は温度上昇し、記録液中の水分がより蒸発しやすい状況になる。したがって、この通電時におけるポンプ非稼働時間を累積計測することで流路内部の増粘度合いを反映し、それに応じて流動動作を実行することで、供給不全による故障を防ぐことができる。
【0096】
また、上述したように液体としての記録液が、少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤、浸透性向上剤を含み、水分蒸発に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)が記録液全重量に対する水分蒸発率30%までは1.0以下であり、かつ、水分蒸発率30〜45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成された記録液であることで、前述したように非常に優れた特質を得ることができる。しかしながら、このような特性の記録液は、逆に水分蒸発による粘度変化が著しく、供給経路内での増粘による供給不全のリスクも高くなることから、本発明を適用することによって供給経路内での増粘による供給不全のリスクを低減できて非常に有効となる。
【0097】
次に、具体的な実施例と比較例について説明する。
〈実施例1〉
キャノン株式会社製のインクジェットプリンタN1000のカートリッジを改造し、株式会社リコー製のインクジェットプリンタで用いているIPSiO G707のインクを充填し、コンセントを抜いて40℃環境に放置した。1ヶ月に一度インク抜きと充填動作を実施したところ、1年にわたり問題なく動作することが確認された。
【0098】
〈比較例1〉
実施例1において、1ヶ月ごとのインク抜きと充填動作を実施しなかった点以外は同じにして評価を実施したところ、1年後には送液不良が生じることが確認された。
【0099】
〈実施例2〉
記録ヘッドとインクカートリッジとを厚さ0.2mmの供給チューブ及び供給ポンプで接合されたインクジェットプリンタにおいて、通電時の供給ポンプ非稼働時間を累積計測する計時手段を具備し、この計測時間が2ヶ月を超えたら、供給ポンプを所定量稼働するようにプログラムした。そして、株式会社リコー製のインクジェットプリンタで用いているIPSiO G7570のインクを充填し、35℃環境で放置したところ、1年後も問題なく稼働することが確認された。
【0100】
〈比較例2〉
実施例2において、供給ポンプ非稼働時間によらず供給ポンプを稼働させないようにプログラムした以外は同じにして評価を実施したところ、1年後には供給不良が発生していることが確認された。そこで、内部を観察したところ、供給チューブ内部に増粘インクが存在し、送液不良を生じていることが原因であることが判明した。
【0101】
なお、本発明に係る画像形成装置は、プリンタ単機能構成のものに限らず、プリンタ/ファクシミリ/複写などの複合機能を有する画像形成装置であっても良い。また、液体は記録液、インクに限るものではない。その他の液体を供給する液体供給装置、液滴を吐出する装置、画像形成装置にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明に係る液体供給装置を備えた液滴を吐出する装置を含む画像形成装置としてのインクジェット記録装置の前方側から見た斜視説明図である。
【図2】同装置の機構部の全体構成を説明する側面概略構成図である。
【図3】同機構部の要部平面説明図である。
【図4】同装置の制御部の概要を示すブロック説明図である。
【図5】本発明に係る液体供給装置の一例を示す模式的説明図である。
【図6】同供給装置の供給ポンプの一例を示す要部断面説明図である。
【図7】同液体供給装置における液体流動化処理の説明に供するフロー図である。
【図8】同処理を適用した場合の具体的な事例の第1例の説明に供する流れ図である。
【図9】同じく第2例の説明に供する流れ図である。
【図10】同じく第3例の説明に供する流れ図である。
【図11】同じく第4例の説明に供する流れ図である。
【符号の説明】
【0103】
1…装置本体
2…給紙トレイ
3…排紙トレイ
4…カートリッジ装填部
10k、10c、10m、10y…インクカートリッジ
33…キャリッジ
34…記録ヘッド
35…ヘッドタンク
36…インク供給チューブ
51…搬送ベルト
101…カートリッジケース
102…インク袋
241…供給ポンプ
250…駆動モータ
401…制御手段
403…計時手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の流路を形成する少なくとも一部が非金属かつ非セラミックス製の流路手段と、この流路手段に液体を流動させる液体流動手段と、前記流路手段内に液体が滞留している滞留時間に基づいて前記液体流動手段を制御して前記流路手段内の液体を流動させる制御手段とを備えていることを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体供給装置において、前記流路形成手段の少なくとも一部が可撓性を有していることを特徴とする液体供給装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体供給装置において、前記液体流動手段が前記液体を送るポンプであることを特徴とする液体供給装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の液体供給装置において、前記流路形成手段又は前記液体流動手段の構成部分に外界との遮蔽壁の最薄箇所が1mmを越えない部分があることを特徴とする液体供給装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の液体供給装置において、前記液体の滞留時間が前記液体流動手段の非稼動時間であることを特徴とする液体供給装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の液体供給装置において、前記液体の滞留時間が通電しているときの前記液体流動手段の非稼動時間を累積した時間であることを特徴とする液体供給装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の液体供給装置において、前記液体は、少なくとも水に分散する着色剤、湿潤剤、浸透性向上剤を含み、水分蒸発に伴う粘度上昇率(mPa・s/%)が記録液全重量に対する水分蒸発率30%までは1.0以下であり、かつ、水分蒸発率30〜45%の間に粘度上昇率が50を越える点を持つように構成された液体であることを特徴とする液体供給装置。
【請求項8】
液体吐出ヘッドから液滴を吐出する装置において、請求項1ないし7のいずれかに記載の液体供給装置を備え、この液体供給装置から前記液体吐出ヘッドに直接又は間接的に液体を供給することを特徴とする液滴を吐出する装置。
【請求項9】
液体を吐出する液体吐出ヘッドを備えて画像を形成する画像形成装置において、請求項1ないし6のいずれかに記載の液体供給装置を備え、この液体供給装置から前記液体吐出ヘッドに直接又は間接的に液体を供給することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−223234(P2007−223234A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49229(P2006−49229)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】