説明

液体収容容器

【課題】 容器装着部に液体収容容器を装着した際に、液体収容容器に装備された情報記憶手段の電気接点を、安定した接触圧で確実に容器装着部の接続端子に接触させることができる液体収容容器を提供する。
【解決手段】 インクジェット式記録装置のカートリッジ装着部に着脱自在に装着されるインクカートリッジ1は、内部にインク貯留部を有した容器本体2の前面2aに、第1及び第2の位置決め穴3a,3bと、インク導出口4と、を備えている。前面2aの第1の位置決め穴3a側の端辺で当該前面2aに直交する上壁面2bには、表面に複数の電気接点5aを装備したメモリ基板5bが装着されると共に、カートリッジ装着部11からのインクカートリッジ1の抜けを規制するための当接部7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体収容容器に関し、特に、液体消費装置側の接触端子に接続する情報記憶手段の電気接点が容器本体の外壁面に設けられた液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体消費装置の一例として挙げられるインクジェット式記録装置は、通常、装置内のカートリッジ装着部(容器装着部)に装着されたインクカートリッジ(液体収容容器)に貯留されているインク(液体)を記録ヘッドへ送り込み、この記録ヘッドが用紙等の被記録体にインク滴を噴射・塗布することで、画像や文字の記録を行う。
【0003】
インクジェット式記録装置における記録ヘッドは、熱や振動を利用してインク滴の噴射を制御するもので、インクカートリッジがインク切れになり、インクが供給されない状態でインク吐出動作を行う空打ちが発生すると、故障の原因となってしまう。
そこで、インクジェット式記録装置では、記録ヘッドが空打ちをしないように、インクカートリッジにおけるインク液の残量を監視する必要が生じる。
【0004】
また、例えば、フルカラーの写真印刷を主用途とする場合と、単色のテキスト印刷等を主用途とする場合とのように、使用条件が異なると、消費するインク液の色や量に差異が生じる。そこで、最近のインクジェット式記録装置では、使用条件に応じて、装置に装着されている複数個のインクカートリッジの一部を、使用条件に適したインクカートリッジに変更可能にしたものがある。
このようなインクジェット式記録装置の場合は、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジが新品のものか、以前に使用していたものが再装着されたものかなど、使用履歴等を管理することも必要になる。
【0005】
このような背景から、インクを貯留する容器本体にインク液の残量や使用履歴等の情報を記録する情報記録手段(メモリチップ)を搭載すると共に、インクジェット式記録装置のカートリッジ装着部側に装備される接続端子に接触することで前記情報記録手段をインクジェット式記録装置側の回路に接続する電気接点を、前記容器本体の外壁面に装備したインクカートリッジが提案された。
【0006】
このようなインクカートリッジが装着されたインクジェット式記録装置は、例えば、印刷処理により消費したインク量等に基づいて、インクカートリッジ側の情報記録手段に記録のインク残量を更新することで、インクの残量を正確に管理可能になり、記録ヘッドの空打ちを防止することができる。また、インクジェット式記録装置が、情報記録手段に使用履歴を更新していくことで、誤装着の防止等に活かすことができる。
【0007】
しかし、インクカートリッジに装備された情報記録手段を有効に活用するためには、例えば、インクカートリッジとカートリッジ装着部との間の位置決め誤差や寸法公差の影響で、インクカートリッジに装備された情報記録手段の電気接点とカートリッジ装着部側に装備される接続端子とが接触不良とならないように、インクカートリッジやカートリッジ装着部の構造に、電気接続部の位置決め精度を向上させる工夫が必要になる(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
図3は、このような情報記録手段を具備したインクカートリッジ101と、該インクカートリッジ101が装着されるインクジェット式記録装置のカートリッジ装着部111の従来例を示している。
インクカートリッジ101は、図4(b)に示すように、偏平な直方体形状で内部にインク貯留部を有した容器本体102の第1の外壁面である前面102aに、第1及び第2の位置決め手段103a,103bと、インク導出口104とを備えている。
【0009】
第1及び第2の位置決め手段103a,103bは、前面102aの長手方向に互いに離間して設けられた位置決め孔であり、図4(a)に示すカートリッジ装着部111の前面102aに対向する第1の対向面112に設けられた第1及び第2の位置決め部材113a,113bが嵌合することによって、前面102aに沿う方向の移動を規制する。
【0010】
インク導出口104は、第1及び第2の位置決め手段103a,103bの間に設けられており、図4(a)に示したカートリッジ装着部111の第1の対向面112に装備されたインク供給針114を内部のインク貯留部に連通させる。
【0011】
インクカートリッジ101は、図4(b)に示すように、前面102aに直交する第2の外壁面である右側面102bには、一段下がって右側面102bと平行に形成された補助側面102cが設けられている。そして、この補助側面102cには、表面に複数の電気接点105aを装備したメモリ基板105bが装着されている。
【0012】
メモリ基板105bは、裏面に、情報を記録するメモリチップを搭載したものである。メモリ基板105bの表面の電気接点105aは、容器本体102をカートリッジ装着部111に装着した際に、容器本体102の右側面102bに対向するカートリッジ装着部111側における第2の対向面115に装備された接触端子116(図4(a)参照)が押圧接触することで、メモリ基板105b上のメモリチップをインクジェット式記録装置側の制御回路に接続した状態にする。これにより、インクジェット式記録装置側の制御回路からインクカートリッジ101上のメモリチップへの情報の読み書きが可能になる。
【0013】
カートリッジ装着部111に装着したインクカートリッジ101が不用意にカートリッジ装着部111から抜けることを防止するために、インクカートリッジ101は、図4(b)に示すように、前面102a及び容器本体102bに直交する第3の外壁面である上面102dに、当接部107が突設されている。
【0014】
そして、図4(a)に示すように、容器本体102の上面102dに対向するカートリッジ装着部111の第3の対向面118には、図3に示すように、カートリッジ装着部111に挿入された容器本体102上の当接部107の後端面に当接して、容器本体102のカートリッジ装着部111からの抜けを規制する係止片119が設けられている。
【0015】
このようなインクカートリッジ101では、電気接点105aの装備位置を、容器本体102の前面102a上の第1の位置決め手段103aの近傍に設定することで、接触端子116に対する電気接点105aの位置決め精度を向上させ、接触端子116と電気接点105aとの間の接触不良の発生を抑止するように配慮している。
【0016】
【特許文献1】特開2003−341100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところが、上述した従来のインクカートリッジ101では、電気接点105aが設けられた補助側面102cと、当接部107が設けられた上面102dとが、互いに直交した異なる面であり、図3に示すように、当接部107の位置が、メモリ基板105bの面方向に距離Lだけオフセットした状態になっている。
その結果、係止片119が当接部107を押さえる力をFとすると、カートリッジ装着部111に装着された容器本体102に対して、第1の位置決め部材113aと第1の位置決め手段103aとの嵌合位置を中心に、メモリ基板105bの面方向に沿って振れさせるモーメントM(=F×L)が発生する。
そして、このモーメントM(=F×L)が、接触端子116に接触する電気接点105aをメモリ基板105bの面方向に位置ずれさせる力となるため、電気接点105aと接触端子116との接触面積や接触圧が不安定になって、接触不良が発生する虞があった。
【0018】
そこで、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、容器装着部に液体収容容器を装着した際に、液体収容容器に装備された情報記憶手段の電気接点を、安定した接触圧で確実に容器装着部の接続端子に接触させることができる液体収容容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の上記目的は、液体消費装置の容器装着部に着脱自在に装着され、容器本体内に貯留している液体を前記液体消費装置に供給する液体収容容器であって、
前記容器本体における第1の外壁面側には、該第1の外壁面に互いに離間して設けられ、前記第1の外壁面が対向する前記容器装着部側における第1の対向面に設けられた第1及び第2の位置決め部材が嵌合することによって、前記第1の外壁面に沿う方向の移動を規制する第1及び第2の位置決め手段と、前記第1の外壁面に設けられ、前記第1の対向面に設けられた液体供給部を前記容器本体内の液体貯留部に連通させる液体導出口と、を備え、
前記第1の外壁面に直交する第2の外壁面側には、該第2の外壁面における前記第1の位置決め手段近傍に設けられ、前記第2の外壁面が対向する前記容器装着部側における第2の対向面に設けられた接触端子が押圧接触することによって、前記容器本体に装備されている情報記憶手段を前記液体消費装置側の情報制御回路に接続した状態にする電気接点と、前記第1の位置決め手段の中心線よりも前記第2の外壁面側に設けられ、前記第2の対向面に装備された係止片が係合して前記容器本体の前記容器装着部からの抜けを規制する当接部と、を備えることを特徴とする液体収容容器により達成される。
【0020】
上記構成の液体収容容器によれば、液体収容容器に装備される情報記憶手段の電気接点は、容器本体の第1の外壁面に直交する第2の外壁面における第1の位置決め手段近傍に設けられるため、第1の位置決め手段の位置決め精度に相応して高精度に位置決めすることができる。
【0021】
そして、容器装着部側の係止片が係合して容器本体の容器装着部からの抜けを規制する当接部は、電気接点と一緒に第2の外壁面側に配置されるため、例えば、第2の外壁面側の同一縦断面上に当接部と電気接点とが並ぶように、これらの当接部と電気接点との配置を設定しておけば、当接部と電気接点との間における電気接点の面方向のオフセット量をゼロに設定できる。
【0022】
これにより、容器装着部側の係止片から当接部に作用する力が、第1の位置決め部材と第1の位置決め手段との嵌合位置を中心に電気接点の面方向に容器本体を振れさせるモーメントを発生しない、良好な作用状態になる。
したがって、容器装着部に液体収容容器を装着した際には、液体収容容器に装備された情報記憶手段の電気接点を、安定した接触圧で確実に容器装着部の接続端子に接触させることができる。
【0023】
なお、上記構成の液体収容容器において、前記第1及び第2の位置決め部材は、容器本体側に向かって突出した位置決めピンであり、
前記第1の位置決め手段は、前記第1の位置決め部材が嵌合する円形孔であり、
前記第2の位置決め手段は、前記第2の位置決め部材が嵌合する長円孔であることが望ましい。
【0024】
このような構成の液体収容容器によれば、液体収容容器を容器装着部に装着する際、長円孔を採用した第2の位置決め手段側では、容器装着部側の第2の位置決め部材との嵌合に遊びが生じる分、容器装着部への装着を容易にすることができる。
そして、その一方で、円形孔を採用した第1の位置決め手段側では、容器装着部側の第1の位置決め部材との間の遊びを小さくできる分、位置決め精度が向上し、第1の位置決め手段近傍に設けられる電気接点の位置決め精度も向上させることができる。
【0025】
また、上記構成の液体収容容器において、前記第2の外壁面は、前記第1の外壁面における前記第1の位置決め手段側の端辺で直交する外壁面であることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、情報記憶手段の電気接点と抜けを規制するための当接部とが配置される第2の外壁面は、第1の外壁面に直交する4つの外壁面の内、幅の狭い外壁面となる。そこで、複数の液体収容容器を並列に装着する場合に、第2の外壁面を隣接する液体収容容器相互の対向方向から外すことで、コンパクトな並列装着を実現することができる。
【0026】
また、上記構成の液体収容容器において、前記第1の外壁面側における第1及び第2の位置決め手段と、前記第2の外壁面側における電気接点及び当接部とが、前記容器本体の同一縦断面上に配置されることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、容器装着部側の係止片から当接部に作用する力は、第1及び第2の位置決め手段と電気接点とを通る垂直断面内に作用し、当接部と電気接点との間における電気接点の面方向のオフセット量、並びに当接部と第1及び第2の位置決め手段との間における電気接点の面方向のオフセット量を、何れもゼロに設定できる。
【0027】
従って、容器本体上の電気接点と容器装着部側の接続端子との接触性を低下させる電気接点の面方向への容器本体の振れを確実に防止して、容器本体上の電気接点と容器装着部側の接続端子との電気的接続性を向上させることができる。
【0028】
また、上記構成の液体収容容器において、前記電気接点は、前記当接部よりも前記第1の外壁面に近い位置に設けられることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、容器装着部側の係止片から当接部に作用する力で、容器装着部側の第1の位置決め部材と容器本体上の第1の位置決め手段との嵌合位置を中心に、電気接点と接続端子との接触圧を増大させる方向に容器本体を付勢するモーメントが発生するようになり、電気接点と接続端子との接触圧の増大によって、電気的接続性能を更に向上させることができる。
【0029】
また、上記構成の液体収容容器において、前記第2の外壁面は、複数個の液体収容容器が近接して前記液体消費装置に整列装着される場合に、隣接する他の容器本体とは対向しない外壁面であることが望ましい。
【0030】
このような構成の液体収容容器によれば、容器装着部が複数個の液体収容容器を並列収容する構造とされる場合に、容器本体の電気接点や当接部に対応する液体消費装置側の接触端子や係止片等の機構の設置スペースを、隣接する液体収容容器間に確保する必要がなくなる。そこで、容器装着部上において隣接する液体収容容器相互間の隙間を低減した高密度配置が可能になると同時に、容器装着部をコンパクト化することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る液体収容容器によれば、液体収容容器に装備される情報記憶手段の電気接点は、容器本体の第1の外壁面に直交する第2の外壁面における第1の位置決め手段近傍に設けられるため、第1の位置決め手段の位置決め精度に相応して高精度に位置決めすることができる。
【0032】
そして、容器装着部からの容器本体の抜けを規制する当接部は、電気接点と一緒に第2の外壁面側に配置されるため、例えば、第2の外壁面側の同一縦断面上に当接部と電気接点とが並ぶように、これらの当接部と電気接点との配置を設定しておけば、当接部と電気接点との間における電気接点の面方向のオフセット量をゼロに設定できる。
【0033】
これにより、容器装着部側の係止片から当接部に作用する力が、第1の位置決め部材と第1の位置決め手段との嵌合位置を中心に電気接点の面方向に容器本体を振れさせるモーメントを発生しない、良好な作用状態になる。
したがって、容器装着部に液体収容容器を装着した際には、容器本体に装備された情報記憶手段の電気接点を、安定した接触圧で確実に容器装着部の接続端子に接触させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る液体収容容器を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る液体収容容器の前面側斜め上方からの斜視図、図2は図1に示した液体収容容器の後面側斜め上方からの斜視図及び該液体収容容器が装着される容器装着部の概略構成を示す斜視図である。
【0035】
本実施形態のインクカートリッジ1は、液体消費装置であるインクジェット式記録装置のカートリッジ装着部(容器装着部)11に着脱自在に装着され、記録装置内の記録ヘッドに、インク(液体)の供給を行う液体収容容器である。
本実施形態のインクカートリッジ1は、図1及び図2に示すように、左右方向(図1の矢印B方向)に偏平な略直方体形状で内部にインク貯留部を有した容器本体2の前面(第1の外壁面)2aに、第1及び第2の位置決め穴(第1及び第2の位置決め手段)3a,3bと、インク導出口(液体導出口)4と、を備えている。
【0036】
第1及び第2の位置決め穴3a,3bは、前面2aの長手方向(上下方向で、図1の矢印C方向)に互いに離間して設けられた二つの位置決め手段である。これら第1及び第2の位置決め穴3a,3bは、図2に示すように、前面2aが対向するカートリッジ装着部11側における第1の対向面12に設けられた第1及び第2の位置決めピン(第1及び第2の位置決め部材)13a,13bが嵌合することによって、前面2aに沿う方向の容器本体2の移動を規制する。
カートリッジ装着部11の第1及び第2の位置決めピン13a,13bは、いずれも先端が尖った円柱状に形成された位置決めピンである。
【0037】
そして、第1の位置決め穴3aは、第1の位置決めピン13aとしての位置決めピンが嵌合する円形孔であり、第2の位置決め穴3bは、第2の位置決めピン13bとしての位置決めピンが嵌合する長円孔である。
【0038】
インク導出口4は、第1及び第2の位置決め穴3a,3bの間に配置されており、図2に示したカートリッジ装着部11における第1の対向面12に装備されたインク供給針(液体供給部)14を内部のインク貯留部に連通させる。
【0039】
更に、前面2aの第1の位置決め穴3a側の端辺で当該前面2aに直交する第2の外壁面である上壁面2bには、表面に複数の電気接点5aを装備したメモリ基板5bが装着されると共に、カートリッジ装着部11からのインクカートリッジ1の抜けを規制するための当接部7が設けられている。
【0040】
メモリ基板5bは、裏面に、情報を記録するメモリチップ(情報記憶手段)を搭載したものである。該メモリ基板5bの表面の電気接点5aは、容器本体2をカートリッジ装着部11に装着した際に、上壁面2bに対向するカートリッジ装着部11側の第2の対向面15に設けられた接続端子16が押圧接触することで、メモリ基板5b上のメモリチップをインクジェット式記録装置側の制御回路に電気的に接続した状態にする。
これにより、インクジェット式記録装置側の制御回路からインクカートリッジ1上のメモリチップへの情報の読み書きが可能になる。本実施形態の場合、メモリ基板5bは、上壁面2b上における当接部7よりも前面2aに近い位置に設けられている。即ち、電気接点5aは、当接部7よりも第1の位置決め穴3aに近い位置に設けられる。
【0041】
当接部7は、上壁面2bに窪みを形成し、後方に向いた当接面7aを形成したものであり、カートリッジ装着部11の第2の対向面15に回動可能に設けられた係止片19の先端部19aが当接面7aに当接することで、カートリッジ装着部11に装着したインクカートリッジ1がカートリッジ装着部11から抜け出ることを阻止する。
本実施形態では、前面2a上の第1及び第2の位置決め穴3a,3bと、上壁面2b上の電気接点5a及び当接部7とが、図1に示すように、容器本体2の同一縦断面xy上に配置されている。
【0042】
尚、本発明に係る当接部7が形成される箇所は上壁面2b上に限らず、第1の位置決め穴3aの中心線Pよりも第2の外壁面である上壁面2b側に設けられていれば良く、上壁面2b上に限らず、後面2f上に当接面7aを形成することもできる。
【0043】
また、上壁面2bは、複数個のインクカートリッジ1が近接してインクジェット式記録装置に整列装着される場合に、隣接する他の容器本体2とは対向しない外壁面になっている。
即ち、本実施形態のインクカートリッジ1は、容器本体2の左右側壁面2c,2d(図1及び図2参照)が、隣接する他の容器本体2との対向面として整列装着されるようになっている。
【0044】
以上に説明した本実施形態のインクカートリッジ1によれば、インクカートリッジ1に装備されるメモリチップの電気接点5aは、容器本体2の前面2aに直交する上壁面2bにおける第1の位置決め穴3a近傍に設けられるため、第1の位置決め穴3aの位置決め精度に相応して高精度に位置決めすることができる。
【0045】
そして、カートリッジ装着部11側の係止片19が係合して容器本体2のカートリッジ装着部11からの抜けを規制する当接部7は、電気接点5aと一緒に上壁面2b上に配置されるため、本実施形態のように、上壁面2bの同一縦断面xy上に当接部7と電気接点5aとが並ぶように、これらの当接部7と電気接点5aとの配置を設定しておけば、当接部7と電気接点5aとの間における電気接点5aの面方向のオフセット量をゼロに設定できる。
【0046】
これにより、カートリッジ装着部11側の係止片19から当接部7に作用する力が、第1の位置決めピン13aと第1の位置決め穴3aとの嵌合位置を中心に電気接点5aの面方向に容器本体2を振れさせるモーメントを発生しない、良好な作用状態になる。
したがって、カートリッジ装着部11にインクカートリッジ1を装着した際には、インクカートリッジ1に装備されたメモリチップの電気接点5aを、安定した接触圧で確実にカートリッジ装着部11の接続端子16に接触させることができる。
【0047】
さらに、上記構成によれば、容器本体2に設けられるメモリチップの電気接点5aと抜けを規制する当接部7とが、共通の上壁面2bに設けられたことで、前面2aに直交する容器本体2の4つの外壁面の内の3つの外壁面(左右側壁面2c,2dと底壁面2e)は、カートリッジ装着部11側と接続する部品が配置されない単純な外壁面となる。
【0048】
従って、複数個のインクカートリッジ1を並列して装着する場合に、上壁面2bの向きを隣接するインクカートリッジ1相互の対向方向から外すだけで、これらの電気接点5aや当接部7に対応するインクジェット式記録装置側の接続端子16や係止片19等の機構の設置スペースを、隣接するインクカートリッジ1間に確保する必要がなくなる。そこで、カートリッジ装着部11上において隣接するインクカートリッジ1相互間の隙間を低減した高密度配置が可能になると同時に、カートリッジ装着部11をコンパクト化することができる。
【0049】
また、本実施形態のインクカートリッジ1では、カートリッジ装着部11に装備される第1及び第2の位置決めピン13a,13bが、容器本体2側に向かって突出した位置決めピンである。そして、第1の位置決め穴3aは、第1の位置決めピン13aが嵌合する円形孔であり、第2の位置決め穴3bは、第1の位置決めピン13bが嵌合する長円孔である。
【0050】
そのため、インクカートリッジ1をカートリッジ装着部11に装着する際、長円孔を採用した第2の位置決め穴3b側では、カートリッジ装着部11側の第2の位置決めピン13bとの嵌合に遊びが生じる分、カートリッジ装着部11への装着を容易にすることができる。
そして、その一方で、円形孔を採用した第1の位置決め穴3a側では、カートリッジ装着部11側の第1の位置決めピン13aとの間の遊びを小さくできる分、位置決め精度が向上し、第1の位置決め穴3a近傍に設けられる電気接点5aの位置決め精度も向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態のインクカートリッジ1では、メモリチップの電気接点5aと抜けを規制するための当接部7とが配置される上壁面2bは、前面2aに直交する4つの外壁面の内、幅の狭い外壁面となる。そこで、複数のインクカートリッジ1を並列に装着する場合に、上壁面2bを隣接するインクカートリッジ1相互の対向方向から外すことで、コンパクトな並列装着を実現することができる。
【0052】
また、本実施形態のインクカートリッジ1では、前面2a上の第1及び第2の位置決め穴3a,3bと、上壁面2b上の電気接点5a及び当接部7とが、容器本体2の同一縦断面xy上に配置された構成になっている。
このため、カートリッジ装着部11側の係止片19から当接部7に作用する力は、第1及び第2の位置決め穴3a,3bと電気接点5aとを通る垂直断面内に作用し、当接部7と電気接点5aとの間における電気接点5aの面方向のオフセット量、並びに当接部7と第1及び第2の位置決め穴3a,3bとの間における電気接点5aの面方向のオフセット量を、何れもゼロに設定できる。
【0053】
従って、容器本体2上の電気接点5aとカートリッジ装着部11側の接続端子16との接触性を低下させる電気接点5aの面方向への容器本体2の振れを確実に防止して、容器本体2上の電気接点5aとカートリッジ装着部11側の接続端子16との電気的接続性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態のインクカートリッジ1では、電気接点5aは、図1に示すように、当接部7よりも前面2aに近い位置に設けられているため、カートリッジ装着部11側の係止片19から当接部7に作用する力で、カートリッジ装着部11側の第1の位置決めピン13aと容器本体2上の第1の位置決め穴3aとの嵌合位置を中心に、電気接点5aと接続端子16との接触圧を増大させる方向(図1に矢印M1で示す方向)に容器本体2を付勢するモーメントが発生するようになる。そこで、電気接点5aと接続端子16との接触圧の増大によって電気的接続性能を更に向上させることができる。
【0055】
なお、本発明の液体収容容器の用途は、上記実施形態に示したインクカートリッジに限らない。また、本発明の液体収容容器が装着される容器装着部を備えた液体消費装置も、上記実施形態に示したインクジェット式記録装置に限らない。
液体消費装置としては、液体収容容器が着脱可能に装着される容器装着部を備え、前記液体収容容器に貯留されている液体が装置に供給される各種の装置が該当し、具体例としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体収容容器の前面側斜め上方からの斜視図である。
【図2】図1に示した液体収容容器の後面側斜め上方からの斜視図及び該液体収容容器が装着される容器装着部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】従来のインクカートリッジがカートリッジ装着部に装着された状態の側面図である。
【図4】(a)は図3に示したカートリッジ装着部のカートリッジ挿入側から見た斜視図、(b)は図3に示したインクカートリッジの前面側斜め上方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1…インクカートリッジ(液体収容容器)、2…容器本体、2a…前面(第1の外壁面)、2b…上壁面(第2の外壁面)、3a…第1の位置決め穴(第1の位置決め手段)、3b…第2の位置決め穴(第2の位置決め手段)、4…インク導出口(液体導出口)、5a…電気接点、5b…メモリ基板、7…当接部、7a…当接面、11…カートリッジ装着部(容器装着部)、12…第1の対向面、13a…第1の位置決めピン(第1の位置決め部材)、13b…第2の位置決めピン(第2の位置決め部材)、14…インク供給針(液体供給部)、15…第2の対向面、16…接続端子、19…係止片、19a…先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体消費装置の容器装着部に着脱自在に装着され、容器本体内に貯留している液体を前記液体消費装置に供給する液体収容容器であって、
前記容器本体における第1の外壁面側には、該第1の外壁面に互いに離間して設けられ、前記第1の外壁面が対向する前記容器装着部側における第1の対向面に設けられた第1及び第2の位置決め部材が嵌合することによって、前記第1の外壁面に沿う方向の移動を規制する第1及び第2の位置決め手段と、前記第1の外壁面に設けられ、前記第1の対向面に設けられた液体供給部を前記容器本体内の液体貯留部に連通させる液体導出口と、を備え、
前記第1の外壁面に直交する第2の外壁面側には、該第2の外壁面における前記第1の位置決め手段近傍に設けられ、前記第2の外壁面が対向する前記容器装着部側における第2の対向面に設けられた接触端子が押圧接触することによって、前記容器本体に装備されている情報記憶手段を前記液体消費装置側の情報制御回路に接続した状態にする電気接点と、前記第1の位置決め手段の中心線よりも前記第2の外壁面側に設けられ、前記第2の対向面に装備された係止片が係合して前記容器本体の前記容器装着部からの抜けを規制する当接部と、を備えることを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記第1及び第2の位置決め部材は、容器本体側に向かって突出した位置決めピンであり、
前記第1の位置決め手段は、前記第1の位置決め部材が嵌合する円形孔であり、
前記第2の位置決め手段は、前記第2の位置決め部材が嵌合する長円孔であることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
前記第2の外壁面は、前記第1の外壁面における前記第1の位置決め手段側の端辺で直交する外壁面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体収容容器。
【請求項4】
前記第1の外壁面側における第1及び第2の位置決め手段と、前記第2の外壁面側における電気接点及び当接部とが、前記容器本体の同一縦断面上に配置されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項5】
前記電気接点は、前記当接部よりも前記第1の外壁面に近い位置に設けられることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項6】
前記第2の外壁面は、複数個の液体収容容器が近接して前記液体消費装置に整列装着される場合に、隣接する他の容器本体とは対向しない外壁面であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体収容容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−36984(P2008−36984A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215222(P2006−215222)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】