液体吐出ヘッド、画像記録装置及び方法
【課題】着弾干渉による画像欠陥の発生を抑制するノズル配列を持つ液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッドに対する記録媒体の相対的な移動方向をY方向、Y方向に直交する記録媒体の幅方向をX方向とするとき、液体吐出ヘッドには、Y方向に対して傾斜する斜め方向に沿って複数個の前記ノズルが並んだノズル列がX方向に複数列設けられ、当該ノズル配列は、記録媒体上のX方向の画素位置に対応するY方向の走査ラインについて、X方向の並び順に、連続する整数値でライン番号を定めて、X方向に画素間隔で連続して並ぶ各走査ラインに対して打滴を行い、その着弾液滴によって前記記録媒体上にX方向ラインを記録する場合に、当該各走査ラインに対する液滴の着弾順をライン番号の数列で表したときに、着弾順で隣り合うライン番号の差が2以上となる。
【解決手段】液体吐出ヘッドに対する記録媒体の相対的な移動方向をY方向、Y方向に直交する記録媒体の幅方向をX方向とするとき、液体吐出ヘッドには、Y方向に対して傾斜する斜め方向に沿って複数個の前記ノズルが並んだノズル列がX方向に複数列設けられ、当該ノズル配列は、記録媒体上のX方向の画素位置に対応するY方向の走査ラインについて、X方向の並び順に、連続する整数値でライン番号を定めて、X方向に画素間隔で連続して並ぶ各走査ラインに対して打滴を行い、その着弾液滴によって前記記録媒体上にX方向ラインを記録する場合に、当該各走査ラインに対する液滴の着弾順をライン番号の数列で表したときに、着弾順で隣り合うライン番号の差が2以上となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド、画像記録装置及び方法に係り、特に、インクジェット方式によって液滴を吐出する複数のノズルを有する液体吐出ヘッド、並びに、これを用いて記録媒体(被描画媒体)上に付着させることによって画像を形成する画像記録装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像記録装置(インクジェト記録装置)は、複数のノズルを有する記録ヘッドと記録媒体とを相対移動させ、ノズルから液滴を吐出することによって、記録媒体上に所望の画像を形成することができる(特許文献1〜4)。かかるインクジェット記録においては、高い描画解像度を実現するために、多数のノズルが2次元的に配列されたノズル面(インク吐出面)を有するヘッドモジュールが用いられる。また、プリント生産性を高めるために、2次元ノズル配列のヘッドモジュールを用紙幅方向(以下「X方向」とする。)に複数個並べて用紙全幅の描画領域をカバーする長尺のバーヘッド(ページワイドヘッド、或いはフルライン型ヘッドと呼ばれる)を構成し、かかる長尺ヘッドと用紙とをx方向に直交する方向(以下「Y方向」とする。)に1回だけ相対走査を行うことにより、用紙上に所定解像度の画像を形成するシングルパス方式の画像記録装置も知られている。
【0003】
2次元ノズル配列を有するインクジェットヘッドを用いる場合、ノズルの配列形態によっては、用紙幅方向において、あるノズルライン番号nの画素位置に液滴が着弾し(第1着弾)、次に、これに隣接するノズルライン番号(n+1)又は(n−1)の画素位置に液滴が着弾することがある(第2着弾)。この隣接するノズルライン間の間隔(ノズルラインピッチ)が着弾液滴のドット幅よりも小さい場合、第2着弾の瞬間に着弾干渉が発生し、第2着弾液滴の重心位置が第1着弾液滴の方へ移動してしまう。
【0004】
着弾干渉とは、液体の表面エネルギーの影響によって、液滴同士が合一する際に、後着弾に係る液滴が先着弾に係る液滴の方に引き寄せられてドットが移動し、本来の着弾位置よりもずれた位置にドットが形成される現象である(特許文献2の段落0021〜0023参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−241282号公報
【特許文献2】特許第3921690号公報
【特許文献3】特開2010−52262号公報
【特許文献4】特開2008−87285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
着弾干渉によるドット移動で隣接ドット間の距離が離れてしまった部分では、画像上に隙間が生じやすくなる。一方、ドット移動で隣接ドット間の距離が詰まってしまった部分では、画像上で高濃度になりやすい。隣接ドット間の距離が離れてしまったところ、或いは逆に、隣接ドット間の距離が近づいてしまったところのいずれの場合においても、画像上で筋状の濃度ムラ(スジムラ)となって、画像欠陥を引き起こす。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、着弾干渉による画像欠陥の発生を抑制することができるノズル配列を持つ液体吐出ヘッド及びこれを用いた画像記録装置、並びに画像記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために以下の発明態様を提供する。
【0009】
(発明1):発明1に係る液体吐出ヘッドは、液滴を吐出する複数のノズルを有する液体吐出ヘッドであって、当該液体吐出ヘッドから吐出した液滴を付着させる記録媒体の前記液体吐出ヘッドに対する相対的な移動方向をY方向、前記Y方向に直交する前記記録媒体の幅方向をX方向とするとき、当該液体吐出ヘッドには、Y方向に対して傾斜する斜め方向に沿って複数個の前記ノズルが並んだノズル列がX方向に複数列設けられ、前記複数列のノズル列からなるノズル配列は、前記記録媒体上のX方向の画素位置に対応するY方向の走査ラインについて、X方向の並び順に、連続する整数値でライン番号を定めて、X方向に画素間隔で連続して並ぶ各走査ラインに対して打滴を行い、その着弾液滴によって前記記録媒体上にX方向ラインを記録する場合に、当該各走査ラインに対する液滴の着弾順を前記ライン番号の数列で表したときに、前記着弾順で隣り合うライン番号の差が2以上となるノズル配列であることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、X方向ラインを記録する場合に、液体吐出ヘッドと記録媒体の相対移動に伴う次の着弾が、先着弾に係る走査ラインの隣接ラインとは異なる走査ラインに着弾することになる。したがって、隣接走査ラインに対して、連続的な着弾が回避され、1着弾以上の着弾時差を隔てて隣接走査ラインへの着弾が行われるため、着弾干渉が起こりにくい。よって、着弾干渉に起因する画像欠陥の発生を抑制することができる。
【0011】
なお、記録媒体上のX方向の画素位置nに対応するY方向に沿った走査ラインをライン番号nと表し(nは整数の連続番号)、ライン番号nの打滴を担うノズルが属するノズル列のノズル列番号をNとすると、ライン番号(n−1)又はライン番号(n+1)の打滴を担うノズルがノズル列(N−1)又はノズル列(N+1)に所属していないことになる。
【0012】
本発明の実施に際しては、ノズルが2次元に配列された吐出面(ノズル面)を有する液体吐出ヘッドを構成してもよいし、1列のノズル列のみを有するヘッドモジュールをX方向に複数本並べることによって、これら全体として複数列のノズル列を持つ液体吐出ヘッドを構成してもよい。
【0013】
(発明2):発明2に係る液体吐出ヘッドは、発明1において、前記ノズル列は、同一ノズル列内でX方向について等間隔でノズルが並んでいることを特徴とする。
【0014】
ノズル列内のX方向ノズル間ピッチは一定(等間隔)であることが好ましい。
【0015】
(発明3):発明3に係る液体吐出ヘッドは、発明2において、前記ノズル列内におけるX方向のノズル間隔をK画素間隔(Kは5以上の整数)とするとき、X方向に連続するK本の走査ラインの打滴を担うノズルは全て異なるノズル列に属しており、当該K本の走査ラインに対する打滴の着弾順をライン番号の数列で表したときに、着弾順で隣り合うライン番号の差が2以上となることを特徴とする。
【0016】
ノズル列内のノズル間X方向ピッチは5画素間隔以上あけることが好ましい。1画素の大きさ(画素ピッチ)は記録解像度によって決定される。例えば、1200dpiの場合、約21.1μmである。
【0017】
(発明4):発明4に係る液体吐出ヘッドは、発明2又は3において、前記ノズル列は、同一ノズル列内でX方向について5画素間隔でノズルが並んでいることを特徴とする。
【0018】
ノズル列内のノズル間X方向ピッチは5画素とする態様が最も好ましい。
【0019】
(発明5):発明5に係る液体吐出ヘッドは、発明4において、X方向に連続する5画素単位の繰り返し周期について、当該5画素内で最初に着弾する走査ラインをライン番号1とするとき、ライン番号1から5までの5本の走査ラインに対する打滴順をライン番号の数列で表したときに、「13524」又は「14253」となることを特徴とする。
【0020】
かかる態様は、隣接する走査ラインへの着弾時間差のばらつきも小さく、好ましい態様である。
【0021】
(発明6):発明6に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至5のいずれか1項において、前記ノズル列は、同一ノズル列内でY方向について等間隔でノズルが並んでいることを特徴とする。
【0022】
1ノズルの吐出要素に必要な物理的寸法の制約を考慮して、ノズル列内のY方向ピッチが決定される。
【0023】
(発明7):発明7に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至6のいずれか1項において、前記ノズル列は、同一ノズル列内でX方向について5画素間隔で32個のノズルが並んでおり、前記複数列のノズル列は、X方向に32画素の列間隔で配列されていることを特徴とする。
【0024】
かかる態様によれば、ノズル数が2のべき乗となり、デジタル回路による制御が容易である。
【0025】
(発明8):発明8に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至7のいずれか1項において、前記複数列のノズル列は、列ごとに、Y方向に所定量ずつ画素単位でノズル位置をシフトさせたノズル配列となっていることを特徴とする。
【0026】
かかる態様によれば、当該液体吐出ヘッドをサブヘッド(ヘッドモジュール)として、これを複数個繋ぎ合わせて長尺のバーヘッドを構成する場合に、サブヘッド(ヘッドモジュール)間接合のスペースを確保することができる。
【0027】
(発明9):発明9に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至8のいずれか1項において、X方向に隣接する走査ラインの打滴を担うノズル間のY方向距離の最小値をL_i、前記液体吐出ヘッドに対する前記記録媒体の相対的な移動速度をV、液滴の着弾干渉時間をT_cとするとき、L_i/V>T_cを満たすことを特徴とする。
【0028】
隣接ラインへの着弾時間差は、ノズル配列と相対速度Vによって決定される。隣接ラインへの着弾時間差の最小値が着弾干渉時間T_cを超えていると、着弾干渉が起こり難い。
【0029】
(発明10):発明10に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至9のいずれか1項において、X方向に隣接する走査ラインのライン間隔は、前記記録媒体上に着弾する液滴による最小ドット径よりも小さいことを特徴とする。
【0030】
X方向に隣接する走査ラインのライン間隔(ラインピッチLp)が最小ドット径よりも小さい場合に着弾干渉の問題が顕著になるため、ラインピッチLpが最小ドット径よりも小さい場合に本発明の適用が有益である。
【0031】
(発明11):発明11に係る画像記録装置は、発明1乃至10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、前記記録媒体を前記液体吐出ヘッドに対して相対移動させる移動手段と、を備え、前記記録媒体上に画像を形成することを特徴とする。
【0032】
(発明12):発明12に係る画像記録方法は、発明1乃至10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを用い、前記液体吐出ヘッドから液滴を吐出し、前記記録媒体を前記液体吐出ヘッドに対して相対移動させることにより、前記記録媒体上に画像を形成することを特徴とする。
【0033】
「記録媒体」は、液体吐出ヘッドの吐出口(ノズル)から吐出される液滴を付着させる媒体(印字媒体、被画像形成媒体、被記録媒体、受像媒体、非描画媒体など呼ばれ得るもの)であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、布、繊維シート、樹脂シート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
【0034】
記録媒体と液体吐出ヘッドを相対的に移動させる手段は、停止した記録媒体に対してヘッドを移動させる態様、停止した(固定された)ヘッドに対して記録媒体を搬送する態様、或いは、ヘッドと記録媒体の両方を移動させる態様の何れをも含む。
【0035】
なお、液体吐出ヘッドを用いてカラー画像を形成する場合は、複数色のインク(記録液)の色別にプリントヘッドを配置してもよいし、1つのプリントヘッドから複数色のインクを吐出可能な構成としてもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、着弾干渉による画像欠陥の発生を抑制できる液体吐出ヘッド、画像記録装置及び画像記録方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、特許文献1に示されている従来のインクジェットヘッドの平面透視図
【図2】図1の一部拡大図
【図3】図2中の33−33線に沿う断面図
【図4】図1のインクジェットヘッドのノズル配置を示す拡大図
【図5】特許文献3に示されている従来のノズル配置の説明図
【図6】図5のノズル配置と打滴タイミングを説明する図
【図7】着弾干渉を説明する図
【図8】折り返し位置における着弾干渉を説明する図
【図9】他の形態に係るインクジェットヘッドを構成するヘッドモジュールの斜視図
【図10】図9に示したヘッドモジュールにおけるノズル面の平面図
【図11】ヘッドモジュールを繋ぎ合わせてフルライン型のヘッドを構成する例を示す平面図
【図12】図9に示したヘッドモジュールの内部構造を示す断面図
【図13】図9に示したヘッドモジュールにおける2次元ノズル配列の一部詳細図
【図14】図8〜図13で説明したヘッドモジュールのノズル配列の説明図
【図15】本発明の実施形態に係るヘッドモジュールにおける液滴吐出素子の配置を模式的に示した図
【図16】比較例1に係る1次元ノズル配列による着弾パターンを示した図
【図17】比較例2に係る千鳥ノズル配列による着弾パターンを示した図
【図18】比較例3に係るノズル列内X方向ピッチが3画素の場合の着弾パターンを示した図
【図19】比較例4に係るノズル列内X方向ピッチが4画素の場合の着弾パターンを示した図
【図20】本発明の実施例1に係るノズル列内X方向ピッチが5画素の場合の着弾パターンを示した図
【図21】図20の各着弾パターン1〜24について、隣接するドットの最小着弾順差と、最大着弾順差、及びこれらの差を示した図表
【図22】本発明の実施例2に係るノズル列内X方向ピッチが6画素の場合の着弾パターンを示した図
【図23】図21の各着弾パターン1〜10について、隣接するドットの最小着弾順差と、最大着弾順差、及びこれらの差を示した図表
【図24】湾曲するドラム面とインクジェットヘッドの吐出面の関係を示した模式的に示した側面図
【図25】本発明の実施形態によるノズル配列の説明図
【図26】ノズル列間のY方向シフトの有無によるサブヘッド間のスペースの広狭をマクロ的に示した説明図
【図27】図26(a)に示した「Y方向シフト無し」の形態におけるサブヘッド1、2の境界部分の拡大図
【図28】図26(b)に示した「Y方向シフト有り」の形態におけるサブヘッド1、2の境界部分の拡大図
【図29】本発明の実施形態によるノズル配列における隣接ノズル間Y方向距離の好ましい条件の説明図
【図30】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成図
【図31】図30に示したインクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0039】
<従来ヘッドにおける技術課題の説明>
はじめに、従来ヘッドのノズル配列による技術課題を説明する。図1は、特許文献1に示されているインクジェットヘッドの平面透視図であり、図2は図1の一部拡大図である。また、図3は記録素子単位となる1つの液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図2中の33−33線に沿う断面図)である。ヘッド150は、インク吐出口であるノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)153をマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有する。
【0040】
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており(図1、図2参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル151への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)154が設けられている。
【0041】
図3に示したように、各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。圧力室152の一部の面(図3において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)156には個別電極157を備えたアクチュエータ158が接合されている。個別電極157と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。なお、アクチュエータ158には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ158の変位が元に戻る際に、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
【0042】
画像情報から生成されるドット配置データに応じて各ノズル151に対応したアクチュエータ158の駆動を制御することにより、ノズル151からインク滴を吐出させることができる。記録媒体たる用紙(不図示)を一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル151のインク吐出タイミングを制御することによって、用紙上に所望の画像を記録することができる。
【0043】
上述した構造を有するインク室ユニット153を図4に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0044】
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影された(正射影された)ノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
【0045】
上述したインクジェットヘッドと用紙とを相対移動することによって、主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、ここでは、用紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向(紙幅方向)が主走査方向ということになる。以後、副走査方向をY方向、主走査方向をX方向と呼ぶ場合がある。
【0046】
図1〜3に示したように1つの吐出要素は、圧電素子等の駆動源、それらに動力を伝達するための電気配線など、物理的スペースが必要である。1ノズル当りに必要な物理的スペースは、例えば、概ね300μm角程度となっている。このサイズは、解像度1200dpiとした場合に、14〜15画素分のピッチに相当するものとなる。このような吐出要素を図4のように、2次元的に配列することによって、高密度のノズル配置を実現している。
【0047】
図5は、特許文献3に示されているノズル配置の説明図である。図5は、図4と比べて上下の向きが逆に描かれているが、実質的には図5と図4は同等のノズル配置となっている。図5のノズル配置において、用紙を図の上から下に向かって一定速度で搬送しながら描画を行うと、X方向の描画ラインは図6のような打滴順となる。
【0048】
図6には、図5のノズル配置と打滴タイミングの関係が示されている。ノズル51を表す円内に示した数字は打滴タイミングを示し、タイミングt1 では「1」で示したノズル51-11 、51-21 、…、の打滴が行われ、続いてタイミングt2 では、「2」で示したノズル51-12、51-22 、…、の打滴が行われる。このようにしてタイミングt3 〜タイミングt6 では、「3」〜「6」で示したノズル51-13 、51-23 、…、51-16 、51-26 、…、の打滴が行われる。このようにしてタイミングt1〜タイミングt6の順に「1」〜「6」に示したノズルからの打滴が繰り返し行われ、「1」に示したノズルから「6」に示したノズルまで、順に打滴を行う1サイクルの打滴によって用紙16上に主走査方向に沿う1ラインのドット列が形成される。
【0049】
図6に示したP0 は主走査方向に隣り合うドットを形成するインク滴が打滴されるノズル間ピッチを示し、P1 は主走査方向に隣り合うノズルのノズル間ピッチ(即ち、同一タイミングで打滴が行われるノズル間ピッチ、例えば、図6ではノズル51-16 とノズル51-26 との間のピッチ)を示し、P2 は折り返し位置(ノズル列つなぎ部)間ピッチ(折り返し位置Aを主走査方向に並ぶように投影したときの隣り合う折り返し位置間の間隔、ピッチ)を示している。
【0050】
折り返し位置Aとは、斜め方向に並ぶ6個のノズル(例えば、ノズル51-11 〜ノズル51- 16)で構成されるノズル列の境目(つなぎ部分)を言い、図6ではノズル51-16 とノズル51-21 との間やノズル51-26とノズル51-31 との間のように主走査方向に隣り合うドットを形成するノズルで、副走査方向のノズル間のピッチが他よりも大きくなっている部分をいう。
【0051】
図7(a) には、図6に示したタイミングt1 でノズル51-11 から打滴されたインク滴501及びタイミングt2 でノズル51-12 から打滴されたインク滴502が用紙16上に着弾した様子を示し、図7(b) には図7(a) に示した用紙16上に着弾した液滴の断面形状(主走査方向に沿う断面形状)を示している。なお、図7(b)の符号511はタイミングt1でノズル51-21 から打滴されたインク滴(ドット)を示している。
【0052】
図7(a) に示すように、タイミングt1 でノズル51-11 から打滴されたインク滴501は単独で用紙16上に着弾するので、既に用紙16上に着弾している他のインク滴に影響されないため、本来着弾する着弾位置d1に本来形成される大きさのドットが形成される。また、タイミングt2 でノズル51-12 から打滴されたインク滴502が用紙16上に着弾すると、先に着弾しているインク滴501との着弾干渉(打滴干渉)によって、インク滴501の方向(矢印線Kの方向)に引き寄せられる。その結果、本来の着弾位置d2 よりもインク滴501側にずれた位置d2'にドットが形成される。
【0053】
すなわち、インク滴501によるドットとインク滴502によるドットとのドット間ピッチは本来ノズル51-11 とノズル51-12 とのノズル間ピッチP0 と略同一となるはずであるが、着弾干渉によってインク滴501によるドットとインク滴502によるドットとのドット間ピッチはP0 より小さいP0'になる。
【0054】
同様にタイミングt2 〜タイミングt5 で打滴されたインク滴は、先に着弾している隣り合う液滴との着弾干渉によって、本来の着弾位置よりも先に着弾しているインク滴の方へずれた位置にドットが形成される。
【0055】
その一方、図8(a) 、(b) に示すように、タイミングt6 でノズル51-16(折り返し位置のノズル)から打滴されたインク滴506は、タイミングt5でノズル51-15 から打滴されたインク滴505とタイミングt1 でノズル51-21 から打滴されたインク滴511との間に着弾し、インク滴505及びインク滴511の両方に引き寄せられる。
【0056】
即ち、インク滴506はインク滴505及びインク滴511から引き寄せられる力がつり合う位置d6'にドットが形成される。インク滴505及びインク滴511がインク滴506を引き寄せる力が略同一であれば、インク滴506によって本来の着弾点にドットが形成される。
【0057】
インク滴506がインク滴505とインク滴511の中間位置にドットを形成する場合には、インク滴506によるドットとインク滴505によるドットとのドット間ピッチP0"及びインク滴506によるドットとインク滴511によるドットとのドット間ピッチP0"は、インク滴501〜インク滴505によって形成されるドットの各ドット間ピッチ(図8(a) 、(b) ではタイミングt4 で打滴されたインク滴504によるドットとインク滴505によるドットとのドット間ピッチ)P0'よりも大きくなる(即ち、P0'<P0")。
【0058】
したがって、図5に示したノズル配置では、図6に示した折り返し位置Aの印字においてドット間ピッチにばらつきが生じ、このドット間ピッチのばらつきによって副走査方向に沿って視認性の高いむらが発生することがある。折り返し位置Aに生じる着弾干渉の特異性の影響により該折り返し位置が着弾干渉の特異点となり、副走査方向に筋状のむらや濃度むらを生じ易い。
【0059】
図9は、他の形態に係るインクジェットヘッドを構成するヘッドモジュールの斜視図(部分断面図を含む図)であり、図10は図9に示したヘッドモジュールにおけるノズル面の平面図(吐出側から見た図)である。
【0060】
ヘッドモジュール200は、ノズル板275のノズル面(インク吐出面)と反対側(図8において上側)にインク供給室232とインク循環室236等からなるインク供給ユニットを有している。インク供給室232は、供給管路252を介してインクタンク(不図示)に接続され、インク循環室236は、循環管路256を介して回収タンク(不図示)に接続される。
【0061】
図10ではノズル数を省略して描いているが、1個のヘッドモジュール200のノズル板275のインク吐出面277には、32×64個のノズル280が2次元配列されている。図10においてY方向が記録媒体の送り方向(副走査方向)であり、X方向は記録媒体の幅方向(主走査方向)である。このヘッドモジュール200は、X方向に対して角度γの傾きを有するv方向に沿った長辺側の端面と、Y方向に対して角度αの傾きを持つw方向に沿った短辺側の端面とを有する平行四辺形の平面形状となっている。図10に示すヘッドモジュール200を図11に示すように、x方向(用紙幅方向)に複数個繋ぎ合わせることにより、フルライン型のヘッド(シングルパス・ページワイドヘッド)が構成される。
【0062】
図12は、ヘッドモジュールの内部構造を示す断面図である。符号214はインク供給路(供給側共通流路)、218は圧力室、216は各圧力室218とインク供給路214とを繋ぐ個別供給路(供給絞り流路)、220は圧力室218からノズル280に繋がるノズル連通路、226はノズル連通路220と循環流路228(循環側共通流路)とを繋ぐ循環絞り流路(個別循環路)である。これら流路部(214,216,218,220,226,228)を構成する流路構造体210の上に、振動板266が設けられる。振動板266の上には接着層267を介して、下部電極(共通電極)265、圧電体層231及び上部電極(個別電極)264の積層構造から成る圧電素子230が配設されている。 上部電極264は、各圧力室218の形状に対応してパターニングされた個別電極となっており、圧力室218毎に、それぞれ圧電素子230(「吐出エネルギー発生素子」に相当)が設けられている。
【0063】
インク供給路214は、図9で説明したインク供給室232に繋がっており、インク供給路から供給絞り流路216を介して圧力室218にインクが供給される。描画すべき画像の画像信号に応じて、対応する圧力室218(ノズル280)に設けられた圧電素子230の上部電極264に駆動電圧を印加することによって、該圧電素子230及び振動板266が変形して圧力室218の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル連通路220を介してノズル280からインクが吐出される。
【0064】
ノズル近傍には循環絞り流路226が設けられ、吐出に使用されないインクは、循環絞り流路226を介して循環流路228へ回収される。循環流路228は、図9で説明したインク循環室236につながっており、循環絞り流路226を通って常時インクが循環流路228へ回収されることにより、非吐出時におけるノズル近傍のインクの増粘を防止する。
【0065】
図13は、ヘッドモジュール200における32×64個の2次元ノズル配列の一部詳細図である。図13は圧力室側から吐出する方向に向かって見た(ヘッドモジュール200を上から見た)図である。
【0066】
図13では、符号311、321、331、341の4列のノズル列が図示されているが、実際にはこの4列と同様な繰り返し配列パターンで、合計64列が1個のヘッドモジュールに配置され、各ノズル列には、32個のノズルが設けられている。
【0067】
図13において、Y方向が用紙搬送方向(副走査方向)であり、X方向がラインヘッドの長手方向(主走査方向)である。1本の主走査ライン260を打滴する場合、ドット314は、ノズル列311のノズル312から吐出される。ドット314と主走査方向に隣接するドット324は、ノズル列311に対して2個隣にあるノズル列331のノズル332から吐出される。ドット324と主走査方向に隣接するドット334は、ノズル列311の隣にあるノズル列321のノズル322から吐出される。ドット334と主走査方向に隣接するドット344は、ノズル列311と3個隣にあるノズル列341のノズル342から吐出される。このように、4個のノズル列を1個ずつ所定のパターンで使いまわすことで、主走査方向の隣接ドットを打滴する。
【0068】
図14は、図8〜図13で説明したヘッドモジュールのノズル配列を示した図である。図14は圧力室側(ノズル連通路20の上流側)からインク吐出方向に向かって見た図である。記録媒体を停止させた状態で全ノズルを同時吐出させると、記録媒体上に、このノズル配列パターンでインクのドットパターンが形成されることになる。
【0069】
図14における左端のノズルのノズル番号を「1」とし、ここから右斜め上に向かって並ぶノズルの並び順に沿って、ノズル番号を付与する。図の丸括弧( )付き数字がノズル番号を表す。
【0070】
図14においてノズル番号(1)〜(32)のノズル列を第1ノズル列とする。ノズル番号(33)〜(64)のノズル列を第2ノズル列、ノズル番号(65)〜(96)のノズル列を第3ノズル列、・・という具合に、ノズル列の列番号を定める。
【0071】
図示のノズル配列に対して、記録媒体(用紙)は図の下から上に向かって搬送されるため、用紙搬送に伴い、各ノズル列における最も若いノズル番号のものから順に記録媒体上に打滴されて、主走査ラインが記録されることになる。
【0072】
図中の角括弧[ ]付き数字は、幅方向(X方向)におけるドット記録位置、すなわち、x方向の画素位置を表す。第1ノズル列のノズル番号(2)は、画素位置[5]となっていることから、ノズル列内における隣接ノズル間のX方向距離は4画素分離れている。
【0073】
また、括弧無しの数字は、左端からのノズルの個数目(幅方向に沿って並ぶ実質的なノズルの並び順)を表している。本明細書では以下、括弧無しの数字を< >付きで表記する。
【0074】
図14において<48>個目以降で、X方向ノズル間距離が等ピッチ(1200dpi)となっている。<1>〜<48>個目までの部分は、図12で説明した繋ぎ合わせの重なり部分(後述する「隣接サブヘッドの重なり部」に相当)となる。<49>個目以降のノズルを用いることで、当該モジュール単独で1200dpiの解像度が実現される。
【0075】
第5ノズル列の下端(ノズル番号(129)の<81>)をノズルライン番号=1番として、ここからX方向(右)に順次隣接する画素位置(ノズルライン番号2,3,4)を記録するノズルの打滴順を追うと、<81>→<82>→<83>→<84>は、ノズルライン番号で表すと「1→3→4→2」の順となる。これを打滴順「1342」と表している。
【0076】
<81>〜<112>までは「1342」の打滴順パターンが繰り返される。<113>〜<146>までは「1423」の打滴順となり、<147>〜<176>までは「1324」、<177>〜<207>までは「1243」の打滴順となる。その後は再び「1342」→「1423」→「1324」→「1243」の繰り返しとなる。
【0077】
<着弾干渉による画像欠陥を防止するノズル配列の検討>
着弾干渉は、第1着弾と第2着弾の時間差が所定時間内で生じやすく、所定時間を過ぎると生じにくくなる特性がある(特許文献3の段落0145〜0146)。この所定時間を「着弾干渉時間」と定義する。先に着弾した第1着弾液滴が液状態を維持している時間内に第2着弾液滴が接触する場合に着弾干渉が起こることから、着弾干渉時間は概ね液状態を維持している時間を反映している。
【0078】
図4〜図5で説明したノズル配列や図13〜図14で説明したノズル配列の場合、着弾干渉が起こり得る距離(x方向距離)の隣接ラインに、着弾干渉時間内に次の打滴が着弾してしまうと、スジムラなどの画像欠陥を引き起こす。
【0079】
したがって、ノズル配列としては、次の着弾が、隣接ラインに着弾しないノズル配列であることが好ましい。つまり、次の着弾が、隣接ラインとは異なる他のラインに着弾し、次の次以降の着弾時に、隣接ラインに着弾するようなノズル配列とする。こうすることで、隣接ラインへの着弾時間間隔をあけることができる。隣接ラインへの最小着弾時間をできるだけ大きくすることで、着弾干渉が起こり難くなる。
【0080】
また、図4〜図5で説明したノズル配列の場合、1ノズル列中の各ノズルの着弾時間差は小さいが、51-13の「6」と、51-21の「1」の二つの関係のように、ノズル列間の着弾時間差が大きい。このようなノズル配列の場合、ノズル配列内に、着弾時間差の小さな箇所と、着弾時間差の大きな箇所とが存在し、しかもその差が大きなノズル配置である。
【0081】
着弾時間差が小さいほど、着弾干渉の影響が大きく、着弾時間差が大きくなるほど、着弾干渉の影響は小さくなる。つまり、着弾時間差が着弾干渉時間に対して「不十分」→「やや十分」→「十分」→「完全に十分」という関係に応じて、図5で説明した「P0−P0’」(標準位置に対する着弾位置差)が「大」→「小」へ変化する。
【0082】
着弾時間差のばらつき(差)が大きくなると、「P0−P0’」の値が異なる状況が、ノズル配列の幅方向に散在、或いは周期的に分布してしまうことになる。すると、スジムラなどの画像欠陥を引き起こす。
【0083】
また、図14のノズル配列は、幅方向に打滴順序(隣接打滴の状況)が周期的に変化するので、ドット移動の状態が周期毎にことなり、帯状の周期的スジとなるという問題がある。
【0084】
これらの問題点を引き起こさないようにするためには、ノズル配列内に、着弾時間差の小さな箇所と、着弾時間差の大きな箇所とが、無い様にすることが最も好ましい。種々の状況で、その着弾時間差の差をゼロにできない場合、その差を最小にする工夫が必要である。
【0085】
好ましいノズル配列を決定するにあたり、次の観点に分けて検討する。
(1)ノズル列内のX方向ピッチの適正化
(2)ノズル配列内Y方向ピッチの適正化
(3)ノズル列間X方向ピッチの適正化
<用語の意味について>
図15は、本発明の実施形態に係るヘッドモジュールにおける液滴吐出素子の配置を模式的に示した図である。図15の横方向がX方向、縦方向がY方向であり、数字を付した目盛りは画素ピッチを単位とする位置を表す。例えば、1200dpiの記録解像度の場合、1つのセル(□)が1画素分(21.1μm×21.1μm)に相当する。
【0086】
黒塗りの■がノズルを表しており、当該ノズルを左下隅とする14×14画素の矩形が液滴吐出素子の大きさを表している。1つのノズルは概ね14×14画素程度の吐出要素領域を必要とする。
【0087】
図15では、左下の(1,1)を先頭ノズルとして、(6,15)、(11,29)、(16,43)・・・・のノズルの並び(斜め方向に沿って直線的に並ぶノズル列)を第1列目のノズル列とし、(33,2)、(38,16)、(43,30)・・・・のノズルの並びを第2列目のノズル列という。
【0088】
図15における「ノズル列内のX方向ピッチ」は「5」である。つまり、同じノズル列内におけるX方向のノズル間距離を画素単位で表したものを「ノズル列内のノズル間X方向ピッチ」という。
【0089】
図15における「ノズル列内Y方向ピッチ」は「15」である。同じノズル列内におけるY方向のノズル間距離を画素単位で表したものを「ノズル列内Y方向ピッチ」という。
【0090】
図15における「ノズル列間X方向ピッチ」は「32」である。X方向に隣り合う2本のノズル列間のX方向距離を画素単位で表したものをノズル列間X方向ピッチ」という。
【0091】
なお、圧力室の形状は、正方形に限定されない。圧力室の平面形状は、四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0092】
<ノズル列内X方向ピッチの検討>
(比較例1)1次元配列のノズル配列の場合
1次元配列のノズル配列においてノズル列内X方向ピッチ=1とした構成を検討する。
【0093】
この場合、ノズルがX方向に所定解像度(例えば1200dpi)で並んだ配列となる。
【0094】
図16は当該比較例1に係る1次元ノズル配列による着弾パターンを模式的に示した図である。1次元ノズル配列の場合、各ライン番号1〜6は全て同時に1弾目として打滴されることになる。このような着弾パターンの場合、着弾干渉の影響の差による違いは無いが、次の点で採用できない。すなわち、物理的にノズル駆動部材(アクチュエータを含む液滴吐出素子)を1200dpiで1列に並べることは困難である。つまり、X方向にノズル列を構成することは困難であり、ノズル列は傾斜するのが必然的構成となる。
【0095】
仮に、図15で説明したように、14画素(pix)で並べた場合、図8と同等のノズル数を達成しようとすると、Y方向に約600mm(≒28672pix×21.1μm=14pix×2048dot×21.1μm)もあり、非現実的である。
【0096】
また、斜めに1列のノズル列を構成した場合、必ず、隣接ラインに着弾することになる。
【0097】
さらに、記録媒体をドラム(圧胴)に巻き付けて搬送するドラム搬送系が採用されたインクジェット記録装置において、ドラム上に保持された記録媒体に向けてインクジェットヘッドからインクを吐出して描画を行う場合、ドラム周方向に600mmもドットを並べられるほど長い寸法のサブヘッド(ヘッドモジュール)を製造することは、現在の製造技術では非常に困難である。
【0098】
(比較例2)千鳥配列の場合
ノズル列内X方向ピッチ=2とする2列の千鳥配列を検討する。図17は、ノズルがY方向に千鳥配列で並んだ構成における着弾パターンを示した図である。
【0099】
この場合、奇数のライン番号をノズル列番号=1のノズルによって打滴(1弾目)した後、偶数のライン番号をノズル列番号=2のノズルによって打滴(2弾目)することになり、必ず隣接ラインに着弾する。
【0100】
また、液滴吐出素子の物理的な配置ができないため、高さ方向(y方向)にノズルを離す必要があり、比較例1と同じ問題が生じる。
【0101】
(比較例3)ノズル列内X方向ピッチが3画素の場合
図18はノズル列内X方向ピッチが3の場合の着弾パターンを示した図である。
【0102】
この場合、1弾目をライン番号1、4に着弾させた後、2弾目をライン番号2に、3弾目をライン番号3に着弾させるパターン(第1番パターン)と、1弾目をライン番号1、4に着弾させた後、2弾目をライン番号3に、3弾目をライン番号2に着弾させるパターン(第2番パターン)の2パターンが存在する。
【0103】
ただし、2弾目が、先着弾に係る第1ライン(ライン番号=1の走査ライン)に隣接する第2ライン(ライン番号=2の走査ライン)、または、先着弾に係る第4ライン(ライン番号=4の走査ライン)に隣接する第3ライン(ライン番号=3の走査ライン)となり、いずれにせよ、必ず隣接ラインに着弾してしまう。したがって、着弾干渉による画像欠陥が発生し得る。
【0104】
(比較例4)ノズル列内X方向ピッチが4画素の場合
図19はノズル列内X方向ピッチが4の場合の着弾パターンを示した図である。
【0105】
この場合、1弾目をライン番号1、4に着弾させた後、その間のライン番号2〜4を打滴する打滴順のパターンとして、6通り(=3×2×1)ある。
【0106】
図19中の第3番パターン(パターン番号=3)と第4番パターン(パターン番号=4)において、2弾目を第3ライン(ライン番号=3)に着弾させることで、2弾目を1弾目に隣接させずに着弾させることはできる。しかし、3弾目は、第3ラインに隣接する第2ラインまたは第4ラインに必ず着弾させる必要がある。
【0107】
このように、ノズル列内X方向ピッチが4の場合、いずれかの打滴において、必ず、隣接ラインに着弾してしまう。したがって、着弾干渉による画質上の問題が発生する。さらに、隣接ラインに着弾するまでの着弾時間差に注目すると、例えば、第6番パターンなどは、1弾差〜3弾差と、その差が2弾もあるパターンも存在するという問題がある。
【0108】
(実施例1)ノズル列内X方向ピッチが5画素の場合
図20は、本発明の実施形態を示す図であり、ノズル列内X方向ピッチが「5」の場合の着弾パターンを示した図である。
【0109】
X方向ピッチ=5の場合、1弾目をライン番号1,6に着弾させた後、その間のライン番号2〜5を打滴する打滴順のパターン(着弾パターン)は、全部で24通り(=4×3×2×1)ある。
【0110】
このうち、隣接ラインに着弾しないパターンは、図20におけるパターン番号=11、14の2通りのみである。
【0111】
好ましいノズル配列の基本的な考え方は、次着弾時に、直前着弾ラインからX方向に2ライン以上離れる(少なくとも1ラインをあける)ことである。また、図21は、各着弾パターン1〜24について、隣接するドットの最小着弾順差と、最大着弾順差、及びこれらの差を示した図表である。着弾パターン11(パターン番号=11)と、着弾パターン14(パターン番号=14)の隣接着弾最小距離の差は、隣接着弾最小距離は2弾、隣接着弾最大距離は3弾であり、その差は僅か1弾と小さい。
【0112】
着弾パターン11に注目すると、1弾目のライン番号1の隣接ライン(ライン番号2)は4弾目に打滴されるため、時間的な着弾差は3弾ある。2弾目のライン番号2の隣接ラインであるライン番号2は4弾目に打滴されるため、その時間的な差は2弾分である。また、ライン番号2の隣接ラインであるライン番号3は5弾目に打滴されるため、その時間的な差は2弾分である。このように、着弾パターン11の場合、近いところは2弾、遠いところは3弾離れる。その差は1弾分である。本来この差は無いことが好ましいが、1弾差は影響が少ないので許容できる。
【0113】
「着弾パターン11」(パターン番号=11)は、着弾順にライン番号で表現すると「13524」という数列になる。「着弾パターン14」(パターン番号=14)は、着弾順にライン番号で表現すると「14253」である。
【0114】
(実施例2)ノズル列内X方向ピッチが6画素の場合
図22は、本発明の実施形態を示す図であり、ノズル列内X方向ピッチが6の場合の着弾パターンを示した図である。X方向ピッチ=6の場合の着弾パターンの組合せは、全部で120通り(=5×4×3×2×1)である。
【0115】
このうち、次着弾が隣接ラインに着弾しないパターンは図22に示す10種類のみである。この場合も、好ましいノズル配列の基本的な考え方は、次着弾時に、直前着弾ラインからX方向に2ライン以上離れる(少なくとも1ラインをあける)ことである。
【0116】
図23は、図22に示した各着弾パターン1〜10について、隣接するドットの最小着弾順差と、最大着弾順差、及びこれらの差を示した表である。図22に示した着弾パターン10種類のうち、隣接着弾距離差が最も短いのは、2弾となるパターン2,3,5,6,8,9の6種類である。
【0117】
さらに、パターン1,2,9,10の4種類は、全ノズルをONする場合において、自身着弾時に、隣接片側にドットが存在していて、かつ、もう一方の(他方の)隣接にドットが存在しないという、状況が存在しない。つまり、どのラインを打滴する場合も、両隣に必ずドットが存在しているか、または、両隣にドットが必ず存在していないか、のどちらかの状況であり、着弾干渉によるドット移動抑止の観点から、良好なパターンである。
【0118】
ただし、網点パターンや、ノズル詰まり(不吐)によって、隣接ドット状態は異なる。
【0119】
よって、X方向ピッチ=6で最も好ましいパターンは、上記、2つの観点に共通するパターン2、または9の2種類である。ただし、これらは不等ピッチなので(各ノズルを等間隔で直線上に並べることができないので)、規則的な2次元配列を構成することは困難である。また、隣接着弾最小距離が2弾となる点で、X方向ピッチ=5の場合に劣る。なお、図20で説明したX方向ピッチ=5の着弾パターン11や、着弾パターン14は等ピッチによるノズル配置が可能であり、規則的な2次元配列の構成が容易である。
【0120】
(比較例5)ノズル列内X方向ピッチが7画素以上の場合
実施例1,2のノズル列内X方向ピッチが5画素、6画素の場合に関する説明の通り、ノズル列内X方向ピッチが7画素以上の場合にも隣接ラインに着弾しないパターンは存在する。しかし、吐出駆動のための電気回路やインク流路を複雑化するだけなので製造上好ましくない。
【0121】
詳しい説明は省略するが、X方向ピッチが大きい場合、複数のサブヘッド(ヘッドモジュール)をX方向において隣り合うサブヘッド同士を重ねる「隣接サブヘッドの重なり部」があるが(図11、14参照)、この「隣接サブヘッドの重なり部」のX方向長さが、長くなってしまう。特性の異なるサブヘッドが重なる隣接サブヘッドの重なり部」は比較的スジが発生しやすい傾向にあるが、その「隣接サブヘッドの重なり部」の長さが長くなってしまうと、全体的に画像欠陥が目立ちやすくなる。したがって、隣接サブヘッドの重なり部を長くするのは好ましくない。
【0122】
<ノズル列内Y方向ピッチの検討>
先の説明のとおり、「ノズル列内X方向ピッチ=5」が、隣接ラインに着弾せず、かつ、最も隣接着弾差が小さい配列なので、「ノズル列内X方向ピッチ=5」の場合について説明する。
【0123】
「ノズル列内X方向ピッチ=5」とは、ノズル列内におけるX方向(用紙幅方向)のノズル間距離(ピッチ)が5画素であることを示す(図15参照)。記録解像度が1200dpiの場合、画素間隔は概ね21.1μmなので、5画素というと約105μm程度である。
【0124】
この条件を前提に、2次元のノズル配列を形成することができる。Y方向については、サブヘッド(ヘッドモジュール)の製作上の作りやすさや、湾曲したドラム面への打滴の影響から、Y方向のトータル長さは10mm程度が適度な値である。すなわち、図24のように、ドラム面に対向して配置されるヘッドモジュールの場合、ノズル面における吐出領域の中心はドラム面に近く、その前後(周辺部)は遠くなる。Y方向の長さが長くなるほど、飛翔距離差が大きくなる。描画に影響しない程度の飛翔距離差に納めるためには、吐出領域のY方向長さを10mmとすることが好ましい。
【0125】
また、1ノズル列中のY方向のノズル数を決めるためには、1つのノズルを構成するために、圧力室や駆動素子、電気回路、流路など、XY面における物理的な寸法が必要になる。図15でも説明したとおり、1つのノズルを構成する液滴吐出素子は少なくとも0.3mm角程度が必要である。解像度1200dpi(画素ピッチ=約21.1μm)では、14画素分(≒0.3/0.211)ノズル間隔を離す必要がある。
【0126】
さらに、同一ノズル列内でX方向に5画素ピッチでノズルを離して配置すると、図15で説明したような配置になる。なお、図15において、記録媒体(用紙)は、相対的に図の下から上に向かって移動する。
【0127】
図15のように、Y方向に14画素ピッチ(=14×25.4mm/1200dpi=0.296mm)で10mm程度のエリアに配置可能なノズル数は33.8(≒10mm/0.296mm)個である。デジタル回路での制御のし易さから、2のべき乗が好ましいので、33.8に近い「32個」とする。
【0128】
上記の考察から、1つのノズル列における好ましいノズル配列(第1列目のノズル配列)が決定された。
【0129】
<ノズル列間X方向ピッチの検討>
次に、ノズル列間X方向ピッチについて検討する。ノズル列間ピッチは、Y方向と同様に、吐出要素(液滴吐出素子)の物理的制約などにより、14画素程度以上離す必要がある。また、ノズルの有効利用の観点から、ノズル列間で同じライン(X方向の画素位置ライン)上に重複してノズルを配置しないことが望ましい(冗長ノズルを設けない構成)。
【0130】
なお、同一のライン上に複数のノズルを有する場合は、これら複数のノズルを冗長させて使用してもよく、また、使用するノズル1つだけを残して、他のノズルの動作をオフさせてもよい。
【0131】
図25は、本発明の実施形態によるノズル配列の説明図である。
【0132】
図25は、図20で説明した第14番の着弾パターン(打滴順のライン番号表記で「14253」のパターン)の例であり、ノズル列内X方向ピッチ=5画素、ノズル列内Y方向ピッチ=14画素、ノズル列内ノズル数=32個、ノズル列間X方向ピッチ=32画素の例である。
【0133】
記録媒体が図の下から上に向かって移動する場合、記録媒体上の所望の狭幅内に打滴する順番は、X方向画素位置(ライン番号)150〜170付近では、「ノズル列6列目」→「ノズル列5列目」→「ノズル列4列目」→「ノズル列3列目」→「ノズル列2列目」→(ノズル列1列目)となる。なお、ノズル列1列目については、ノズルの有無があり得る。
【0134】
1弾目のノズル列6列目の先頭ノズルが、ライン番号161番なので、2弾目は、ノズル列5列目で、ライン番号は、161番から右側へ3ライン離れた164番に置かねばならない(図20で説明した第14番の着弾パターンに従うため)。
【0135】
そうすると、ノズル列5列目に存在するノズルのライン番号は、ライン番号161+3±5×m(mは整数)先頭となる。取り得るライン番号の具体的な数値の例は、{・・・124、129、134、139、144、149、154、159、164、169、174、179、184、189、・・・}である。
【0136】
また、もう一つの考え方として、ノズル列内ノズル数が32個なので、ノズル列間X方向ピッチは、平均的に32画素とならなければならない。これは、ライン番号一つに、ノズルを一つ割り当てる考え方である。
【0137】
この場合、2弾目となるノズル列5列目の先頭ノズルが取り得るライン番号は、1弾目のノズル列6列目の先頭ノズルのライン番号が、161番なので、「32」ライン分ずらして、{・・・、65、97、129、(161)、(193)、・・・}のうち、いずれかとなる。
【0138】
上記2つの考え方で、ライン番号129番が、共通のライン番号となっている。
【0139】
つまり、2弾目のノズル列5列目のノズル列先頭X方向位置は、ライン129番目に位置するのが良い。
【0140】
他のノズル列の先頭X方向位置も同様の手法によって決定することができる。
【0141】
また、図20で説明した第11番の着弾パターンについても同様の手法によってノズル配列を決定することができる。
【0142】
なお、本発明が適用されたノズル配列の吐出面を有するヘッドモジュール(本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッド)は、ノズル配列以外のヘッド構造(ヘッドモジュールの外観、液滴吐出素子の構造等)については、図9,図12で説明したヘッドモジュールと同様の構成が採用される。
【0143】
<ノズル列間のY方向シフトについて>
図15に示したように、複数列のノズル列は、列ごとに、Y方向に所定量ずつ画素単位でノズル位置をシフトさせたノズル配列となっている。図15では、第2ノズル列の先頭ノズルはY方向に1画素分シフトされている。なお、Y方向のシフト量は適宜設計可能である。
【0144】
このような構成によれば、当該ヘッドモジュールを図11のように複数個繋ぎ合わせて長尺のバーヘッドを構成する場合に、モジュール間接合のスペースを確保することができる。
【0145】
図26は、ノズル列間のY方向シフトの有無によるサブヘッド間のスペースの広狭をマクロ的に示した図である。図26の上段(図26(a))は、ノズル列毎のY方向シフトが無いノズル配列を持つサブヘッド(「ヘッドモジュール」と同義)をX方向に2つ並べて繋ぎ合わせた構成を示している。図26の下段(図26(b))は、ノズル列毎にY方向に1画素分シフトされたノズル配列を持つサブヘッドをX方向に2つ並べて繋ぎ合わせた構成を示している。図の左側に描いたノズル配列を持つサブヘッドを「サブヘッド1」、右側に描いたノズル配列を持つサブヘッドを「サブヘッド2」と呼ぶことにする。
【0146】
なお、ここでは、各サブヘッドのノズル配列として、図20のパターン番号=14で説明したノズル配列が採用されており、X方向に連続して並ぶ走査ライン(ノズルライン)の着弾順は「14253」である。
【0147】
図27は、図26(a)に示した「Y方向シフト無し」の形態におけるサブヘッド1とサブヘッド2の境界部分を拡大した図である。図27においてサブヘッド1のノズルを○で表し、サブヘッド2のノズルを□で表した。
【0148】
図27に示したように、サブヘッド1,2間の境界部分(ノズル列のつなぎ目部分)におけるノズル列の間隔、すなわち、サブヘッド1における右端のノズル列(ノズル列番号=64)とサブヘッド2における左端のノズル列(ノズル列番号=1)の列間隔は約0.6mmである。
【0149】
図28は、図26(b)に示した「Y方向シフト有り」の形態におけるサブヘッド1とサブヘッド2の境界部分を拡大した図である。図28においてサブヘッド1のノズルを○で表し、サブヘッド2のノズルを□で表した。図28に示したように、サブヘッド間の境界部分(ノズル列のつなぎ目部分)におけるノズル列の間隔、すなわち、サブヘッド1における右端のノズル列(ノズル列番号=64)とサブヘッド2における左端のノズル列(ノズル列番号=1)の列間隔は約1.1mmである。
【0150】
「Y方向シフト無し」(図26(a)、図27)の形態と比較して、「Y方向シフト有り」(図26(b)、図28)の形態の方が、第1サブヘッドと第2サブヘッドの間の隙間を広く形成することができ、サブヘッドの最外周ノズルからの部材の強度確保や、サブヘッドの位置調整時の調整シロを確保することが可能である。
【0151】
<隣接ノズル間Y方向距離L_iの規定について>
図29のように、隣接ラインY方向ノズル間距離(最小部分)L_iを定義する。Vはライン速度(すなわち、用紙搬送速度)、T_cをインクの着弾干渉時間とすると、次式
L_i/V>T_cを満たすようにL_iの寸法を定めることが好ましい。すなわち、ノズル配列とライン速度によって決定される隣接ラインに着弾する時間差が、インクの着弾干渉時間よりも長いことが好ましい。
【0152】
具体的な数値を例示すると、以下のとおりである。
【0153】
V=0.5m/s
Tc=7ms
L_i>Tc×V=7[ms]×0.5[m/s]=3.5mm
すなわち、この場合、L_iは3.5mmを超える距離が必要である。
【0154】
<着弾干渉が発生する条件について>
X方向に隣接する各画素位置に対応した走査ライン(Y方向ライン)のライン間隔(ラインピッチLp)が着弾液滴で形成される最小ドット径よりも小さい場合に着弾干渉の問題が顕著になる。よって、ラインピッチLpが最小ドット径よりも小さい場合に本発明を適用にしたノズル配列を採用することが有益である。
【0155】
<インクジェット記録装置の構成例>
上述した本発明の実施形態によるノズル配列を持つインクジェットヘッドを適用したインクジェット記録装置(「画像記録装置」に相当)の例を説明する。
【0156】
図30は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置600の構成図である。このインクジェット記録装置600は、描画部616の圧胴(描画ドラム670)に保持された記録媒体124(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体624上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体624上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
【0157】
図示のように、インクジェット記録装置600は、主として、給紙部612、処理液付与部614、描画部616、乾燥部618、定着部620、及び排紙部622を備えて構成される。
【0158】
(給紙部)
給紙部612には、給紙トレイ650が設けられ、この給紙トレイ650から記録媒体624が一枚ずつ処理液付与部614に給紙される。本例では、記録媒体624として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
【0159】
(処理液付与部)
処理液付与部614は、記録媒体624の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部616で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0160】
処理液付与部614は、給紙胴652、処理液ドラム654、及び処理液塗布装置656を備えている。処理液ドラム654は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)655を備え、記録媒体624の先端を保持できるようになっている。
【0161】
処理液塗布装置656は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム654上の記録媒体624に圧接されて計量後の処理液を記録媒体624に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置656によれば、処理液を計量しながら記録媒体624に塗布することができる。ローラによる塗布方式に代えて、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
【0162】
処理液付与部614で処理液が付与された記録媒体624は、処理液ドラム654から中間搬送部626を介して描画部616の描画ドラム670へ受け渡される。
【0163】
(描画部)
描画部616は、描画ドラム670、用紙抑えローラ674、及びインクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yを備えている。描画ドラム670は、処理液ドラム654と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)671を備える。描画ドラム670に固定された記録媒体624にインクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yからインクが付与される。
【0164】
インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yは、それぞれ、記録媒体624における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッドであり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。ヘッドモジュールのノズル配列は図で説明したものであり、これを図のように繋ぎ合わせたものとなっている。 各インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yは、記録媒体624の搬送方向(描画ドラム670の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
【0165】
描画ドラム670上に密着保持された記録媒体624の記録面に向かって各インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体624上での色材流れなどが防止され、記録媒体624の記録面に画像が形成される。
【0166】
描画部616で画像が形成された記録媒体624は、描画ドラム670から中間搬送部628を介して乾燥部618の乾燥ドラム676へ受け渡される。
本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0167】
(乾燥部)
乾燥部618は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、乾燥ドラム676、及び溶媒乾燥装置678を備えている。
【0168】
乾燥ドラム676は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)677を備え、この保持手段677によって記録媒体624の先端を保持できるようになっている。
【0169】
溶媒乾燥装置678は、複数のハロゲンヒータ680と、各ハロゲンヒータ680の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル682とで構成される。乾燥部618で乾燥処理が行われた記録媒体624は、乾燥ドラム676から中間搬送部630を介して定着部620の定着ドラム684へ受け渡される。
【0170】
(定着部)
定着部620は、定着ドラム684、ハロゲンヒータ686、定着ローラ688、及びインラインセンサ690で構成される。定着ドラム684は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)685を備え、この保持手段685によって記録媒体624の先端を保持できるようになっている。
【0171】
定着ドラム684の回転により、記録媒体624の記録面に対して、ハロゲンヒータ686による予備加熱と、定着ローラ688による定着処理と、インラインセンサ690による検査が行われる。
【0172】
定着ローラ688は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体624を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ688は、定着ドラム684に対して圧接するように配置されており、定着ドラム684との間でニップローラを構成するようになっている。
【0173】
なお、高沸点溶媒及びポリマー微粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含んだインクに代えて、紫外線(UV)露光にて重合硬化可能なモノマー成分を含有していてもよい。この場合、インクジェット記録装置600は、ヒートローラによる熱圧定着部(定着ローラ688)の代わりに、記録媒体624上のインクにUV光を露光するUV露光部を備える。このように、UV硬化性樹脂などの活性光線硬化性樹脂を含んだインクを用いる場合には、加熱定着の定着ローラ188に代えて、UVランプや紫外線LD(レーザダイオード)アレイなど、活性光線を照射する手段が設けられる。
【0174】
インラインセンサ690は、記録媒体624に記録された画像(テストパターンなども含む)について、吐出不良チェックパターンや画像の濃度、画像の欠陥などを計測するための読取手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
【0175】
(排紙部)
排紙部622は、排出トレイ692を備えており、この排出トレイ692と定着部620の定着ドラム684との間に、これらに対接するように渡し胴694、搬送ベルト696、張架ローラ698が設けられている。記録媒体624は、渡し胴694により搬送ベルト696に送られ、排出トレイ692に排出される。搬送ベルト696による用紙搬送機構の詳細は図示しないが、印刷後の記録媒体624は無端状の搬送ベルト696間に渡されたバー(不図示)のグリッパーによって用紙先端部が保持され、搬送ベルト696の回転によって排出トレイ692の上方に運ばれてくる。
【0176】
また、図には示されていないが、本例のインクジェット記録装置600には、上記構成の他、各インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部614に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体624の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
【0177】
<制御系の説明>
図31は、インクジェット記録装置600のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置600は、通信インターフェース770、システムコントローラ772、メモリ774、モータドライバ776、ヒータドライバ778、プリント制御部780、画像バッファメモリ782、ヘッドドライバ784等を備えている。
【0178】
通信インターフェース770は、ホストコンピュータ786から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース770にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ786から送出された画像データは通信インターフェース770を介してインクジェット記録装置600に取り込まれ、一旦メモリ774に記憶される。
【0179】
メモリ774は、通信インターフェース770を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ772を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ774は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0180】
システムコントローラ772は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置600の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。ROM790には各種制御プログラムや各種のパラメータ等が格納されており、システムコントローラ772の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。
【0181】
メモリ774は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0182】
モータドライバ776は、システムコントローラ772からの指示にしたがってモータ788を駆動するドライバである。図31では、装置内の各部に配置される様々なモータを代表して符号788で図示している。
【0183】
ヒータドライバ778は、システムコントローラ772からの指示にしたがって、ヒータ789を駆動するドライバである。図31では、装置内の各部に配置される様々なヒータを代表して符号789で図示している。
【0184】
プリント制御部780は、システムコントローラ772の制御に従い、メモリ774内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドット画像データ)をヘッドドライバ784に供給する制御部である。
【0185】
ドット画像データは、入力された多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置600で使用するインクの各色の色データ(本例では、KCMYの色データ)に変換する処理である。
【0186】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して、誤差拡散法で各色のドットデータ(本例では、KCMYのドットデータ)に変換する処理である。
【0187】
プリント制御部780において所要の信号処理が施され、得られたドットデータに基づいて、ヘッドドライバ784を介してヘッド750(図30のインクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yを代表して符号750とした)のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0188】
プリント制御部780には画像バッファメモリ782が備えられており、プリント制御部780における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ782に一時的に格納される。また、プリント制御部780とシステムコントローラ772とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0189】
ヘッドドライバ784には、ヘッド750の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0190】
本例に示すインクジェット記録装置600は、ヘッド750の各ピエゾアクチュエータ(圧電素子230)に対して、共通の駆動電力波形信号を印加し、各ピエゾアクチュエータの吐出タイミングに応じて各ピエゾアクチュエータの個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、各ピエゾアクチュエータに対応するノズル280らインクを吐出させる駆動方式が採用されている。
【0191】
(変形例1)
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによるシングルパス印字方式に限定されず、記録媒体の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを記録媒体の幅方向に走査させて印字を行う方式を適用してもよい。
【0192】
(変形例2)
インクジェットヘッドにおける各ノズルから液滴を吐出させるための吐出用の圧力(吐出エネルギー)を発生させる手段は、ピエゾアクチュエータ(圧電素子)に限らず、サーマル方式(ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させる方式)におけるヒータ(加熱素子)や静電アクチュエータその他方式による各種アクチュエータなど様々な圧力発生素子(エネルギー発生素子)を適用し得る。ヘッドの吐出方式に応じて、相応のエネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
【0193】
(変形例3)
上記実施形態では、記録媒体に直接インク滴を打滴して画像を形成する方式(直接記録方式)のインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、一旦、中間転写体上に画像(一次画像)を形成し、その画像を転写部において記録紙に対して転写することで最終的な画像形成を行う中間転写型の画像形成装置についても本発明を適用することができる。この場合、中間転写体が「記録媒体」と解釈される。
【0194】
<装置応用例>
上述の実施形態では、画像記録装置の一例としてインクジェット印刷機(記録装置)を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。本発明は、グラフフィック印刷用途に限らず、電子回路基板の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体(「インク」に相当)として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、微細構造物形成装置など、各種の画像パターンを形成し得る様々なインクジェットシステム(画像記録装置)に適用可能である。
【符号の説明】
【0195】
200…ヘッドモジュール、214…インク供給路、218…圧力室、220…ノズル連通路、230…圧電素子、275…ノズル板、280…ノズル、600…インクジェット記録装置、624…記録媒体、672M,672K,672C,672Y…インクジェットヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド、画像記録装置及び方法に係り、特に、インクジェット方式によって液滴を吐出する複数のノズルを有する液体吐出ヘッド、並びに、これを用いて記録媒体(被描画媒体)上に付着させることによって画像を形成する画像記録装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像記録装置(インクジェト記録装置)は、複数のノズルを有する記録ヘッドと記録媒体とを相対移動させ、ノズルから液滴を吐出することによって、記録媒体上に所望の画像を形成することができる(特許文献1〜4)。かかるインクジェット記録においては、高い描画解像度を実現するために、多数のノズルが2次元的に配列されたノズル面(インク吐出面)を有するヘッドモジュールが用いられる。また、プリント生産性を高めるために、2次元ノズル配列のヘッドモジュールを用紙幅方向(以下「X方向」とする。)に複数個並べて用紙全幅の描画領域をカバーする長尺のバーヘッド(ページワイドヘッド、或いはフルライン型ヘッドと呼ばれる)を構成し、かかる長尺ヘッドと用紙とをx方向に直交する方向(以下「Y方向」とする。)に1回だけ相対走査を行うことにより、用紙上に所定解像度の画像を形成するシングルパス方式の画像記録装置も知られている。
【0003】
2次元ノズル配列を有するインクジェットヘッドを用いる場合、ノズルの配列形態によっては、用紙幅方向において、あるノズルライン番号nの画素位置に液滴が着弾し(第1着弾)、次に、これに隣接するノズルライン番号(n+1)又は(n−1)の画素位置に液滴が着弾することがある(第2着弾)。この隣接するノズルライン間の間隔(ノズルラインピッチ)が着弾液滴のドット幅よりも小さい場合、第2着弾の瞬間に着弾干渉が発生し、第2着弾液滴の重心位置が第1着弾液滴の方へ移動してしまう。
【0004】
着弾干渉とは、液体の表面エネルギーの影響によって、液滴同士が合一する際に、後着弾に係る液滴が先着弾に係る液滴の方に引き寄せられてドットが移動し、本来の着弾位置よりもずれた位置にドットが形成される現象である(特許文献2の段落0021〜0023参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−241282号公報
【特許文献2】特許第3921690号公報
【特許文献3】特開2010−52262号公報
【特許文献4】特開2008−87285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
着弾干渉によるドット移動で隣接ドット間の距離が離れてしまった部分では、画像上に隙間が生じやすくなる。一方、ドット移動で隣接ドット間の距離が詰まってしまった部分では、画像上で高濃度になりやすい。隣接ドット間の距離が離れてしまったところ、或いは逆に、隣接ドット間の距離が近づいてしまったところのいずれの場合においても、画像上で筋状の濃度ムラ(スジムラ)となって、画像欠陥を引き起こす。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、着弾干渉による画像欠陥の発生を抑制することができるノズル配列を持つ液体吐出ヘッド及びこれを用いた画像記録装置、並びに画像記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために以下の発明態様を提供する。
【0009】
(発明1):発明1に係る液体吐出ヘッドは、液滴を吐出する複数のノズルを有する液体吐出ヘッドであって、当該液体吐出ヘッドから吐出した液滴を付着させる記録媒体の前記液体吐出ヘッドに対する相対的な移動方向をY方向、前記Y方向に直交する前記記録媒体の幅方向をX方向とするとき、当該液体吐出ヘッドには、Y方向に対して傾斜する斜め方向に沿って複数個の前記ノズルが並んだノズル列がX方向に複数列設けられ、前記複数列のノズル列からなるノズル配列は、前記記録媒体上のX方向の画素位置に対応するY方向の走査ラインについて、X方向の並び順に、連続する整数値でライン番号を定めて、X方向に画素間隔で連続して並ぶ各走査ラインに対して打滴を行い、その着弾液滴によって前記記録媒体上にX方向ラインを記録する場合に、当該各走査ラインに対する液滴の着弾順を前記ライン番号の数列で表したときに、前記着弾順で隣り合うライン番号の差が2以上となるノズル配列であることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、X方向ラインを記録する場合に、液体吐出ヘッドと記録媒体の相対移動に伴う次の着弾が、先着弾に係る走査ラインの隣接ラインとは異なる走査ラインに着弾することになる。したがって、隣接走査ラインに対して、連続的な着弾が回避され、1着弾以上の着弾時差を隔てて隣接走査ラインへの着弾が行われるため、着弾干渉が起こりにくい。よって、着弾干渉に起因する画像欠陥の発生を抑制することができる。
【0011】
なお、記録媒体上のX方向の画素位置nに対応するY方向に沿った走査ラインをライン番号nと表し(nは整数の連続番号)、ライン番号nの打滴を担うノズルが属するノズル列のノズル列番号をNとすると、ライン番号(n−1)又はライン番号(n+1)の打滴を担うノズルがノズル列(N−1)又はノズル列(N+1)に所属していないことになる。
【0012】
本発明の実施に際しては、ノズルが2次元に配列された吐出面(ノズル面)を有する液体吐出ヘッドを構成してもよいし、1列のノズル列のみを有するヘッドモジュールをX方向に複数本並べることによって、これら全体として複数列のノズル列を持つ液体吐出ヘッドを構成してもよい。
【0013】
(発明2):発明2に係る液体吐出ヘッドは、発明1において、前記ノズル列は、同一ノズル列内でX方向について等間隔でノズルが並んでいることを特徴とする。
【0014】
ノズル列内のX方向ノズル間ピッチは一定(等間隔)であることが好ましい。
【0015】
(発明3):発明3に係る液体吐出ヘッドは、発明2において、前記ノズル列内におけるX方向のノズル間隔をK画素間隔(Kは5以上の整数)とするとき、X方向に連続するK本の走査ラインの打滴を担うノズルは全て異なるノズル列に属しており、当該K本の走査ラインに対する打滴の着弾順をライン番号の数列で表したときに、着弾順で隣り合うライン番号の差が2以上となることを特徴とする。
【0016】
ノズル列内のノズル間X方向ピッチは5画素間隔以上あけることが好ましい。1画素の大きさ(画素ピッチ)は記録解像度によって決定される。例えば、1200dpiの場合、約21.1μmである。
【0017】
(発明4):発明4に係る液体吐出ヘッドは、発明2又は3において、前記ノズル列は、同一ノズル列内でX方向について5画素間隔でノズルが並んでいることを特徴とする。
【0018】
ノズル列内のノズル間X方向ピッチは5画素とする態様が最も好ましい。
【0019】
(発明5):発明5に係る液体吐出ヘッドは、発明4において、X方向に連続する5画素単位の繰り返し周期について、当該5画素内で最初に着弾する走査ラインをライン番号1とするとき、ライン番号1から5までの5本の走査ラインに対する打滴順をライン番号の数列で表したときに、「13524」又は「14253」となることを特徴とする。
【0020】
かかる態様は、隣接する走査ラインへの着弾時間差のばらつきも小さく、好ましい態様である。
【0021】
(発明6):発明6に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至5のいずれか1項において、前記ノズル列は、同一ノズル列内でY方向について等間隔でノズルが並んでいることを特徴とする。
【0022】
1ノズルの吐出要素に必要な物理的寸法の制約を考慮して、ノズル列内のY方向ピッチが決定される。
【0023】
(発明7):発明7に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至6のいずれか1項において、前記ノズル列は、同一ノズル列内でX方向について5画素間隔で32個のノズルが並んでおり、前記複数列のノズル列は、X方向に32画素の列間隔で配列されていることを特徴とする。
【0024】
かかる態様によれば、ノズル数が2のべき乗となり、デジタル回路による制御が容易である。
【0025】
(発明8):発明8に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至7のいずれか1項において、前記複数列のノズル列は、列ごとに、Y方向に所定量ずつ画素単位でノズル位置をシフトさせたノズル配列となっていることを特徴とする。
【0026】
かかる態様によれば、当該液体吐出ヘッドをサブヘッド(ヘッドモジュール)として、これを複数個繋ぎ合わせて長尺のバーヘッドを構成する場合に、サブヘッド(ヘッドモジュール)間接合のスペースを確保することができる。
【0027】
(発明9):発明9に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至8のいずれか1項において、X方向に隣接する走査ラインの打滴を担うノズル間のY方向距離の最小値をL_i、前記液体吐出ヘッドに対する前記記録媒体の相対的な移動速度をV、液滴の着弾干渉時間をT_cとするとき、L_i/V>T_cを満たすことを特徴とする。
【0028】
隣接ラインへの着弾時間差は、ノズル配列と相対速度Vによって決定される。隣接ラインへの着弾時間差の最小値が着弾干渉時間T_cを超えていると、着弾干渉が起こり難い。
【0029】
(発明10):発明10に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至9のいずれか1項において、X方向に隣接する走査ラインのライン間隔は、前記記録媒体上に着弾する液滴による最小ドット径よりも小さいことを特徴とする。
【0030】
X方向に隣接する走査ラインのライン間隔(ラインピッチLp)が最小ドット径よりも小さい場合に着弾干渉の問題が顕著になるため、ラインピッチLpが最小ドット径よりも小さい場合に本発明の適用が有益である。
【0031】
(発明11):発明11に係る画像記録装置は、発明1乃至10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、前記記録媒体を前記液体吐出ヘッドに対して相対移動させる移動手段と、を備え、前記記録媒体上に画像を形成することを特徴とする。
【0032】
(発明12):発明12に係る画像記録方法は、発明1乃至10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを用い、前記液体吐出ヘッドから液滴を吐出し、前記記録媒体を前記液体吐出ヘッドに対して相対移動させることにより、前記記録媒体上に画像を形成することを特徴とする。
【0033】
「記録媒体」は、液体吐出ヘッドの吐出口(ノズル)から吐出される液滴を付着させる媒体(印字媒体、被画像形成媒体、被記録媒体、受像媒体、非描画媒体など呼ばれ得るもの)であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、布、繊維シート、樹脂シート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
【0034】
記録媒体と液体吐出ヘッドを相対的に移動させる手段は、停止した記録媒体に対してヘッドを移動させる態様、停止した(固定された)ヘッドに対して記録媒体を搬送する態様、或いは、ヘッドと記録媒体の両方を移動させる態様の何れをも含む。
【0035】
なお、液体吐出ヘッドを用いてカラー画像を形成する場合は、複数色のインク(記録液)の色別にプリントヘッドを配置してもよいし、1つのプリントヘッドから複数色のインクを吐出可能な構成としてもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、着弾干渉による画像欠陥の発生を抑制できる液体吐出ヘッド、画像記録装置及び画像記録方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、特許文献1に示されている従来のインクジェットヘッドの平面透視図
【図2】図1の一部拡大図
【図3】図2中の33−33線に沿う断面図
【図4】図1のインクジェットヘッドのノズル配置を示す拡大図
【図5】特許文献3に示されている従来のノズル配置の説明図
【図6】図5のノズル配置と打滴タイミングを説明する図
【図7】着弾干渉を説明する図
【図8】折り返し位置における着弾干渉を説明する図
【図9】他の形態に係るインクジェットヘッドを構成するヘッドモジュールの斜視図
【図10】図9に示したヘッドモジュールにおけるノズル面の平面図
【図11】ヘッドモジュールを繋ぎ合わせてフルライン型のヘッドを構成する例を示す平面図
【図12】図9に示したヘッドモジュールの内部構造を示す断面図
【図13】図9に示したヘッドモジュールにおける2次元ノズル配列の一部詳細図
【図14】図8〜図13で説明したヘッドモジュールのノズル配列の説明図
【図15】本発明の実施形態に係るヘッドモジュールにおける液滴吐出素子の配置を模式的に示した図
【図16】比較例1に係る1次元ノズル配列による着弾パターンを示した図
【図17】比較例2に係る千鳥ノズル配列による着弾パターンを示した図
【図18】比較例3に係るノズル列内X方向ピッチが3画素の場合の着弾パターンを示した図
【図19】比較例4に係るノズル列内X方向ピッチが4画素の場合の着弾パターンを示した図
【図20】本発明の実施例1に係るノズル列内X方向ピッチが5画素の場合の着弾パターンを示した図
【図21】図20の各着弾パターン1〜24について、隣接するドットの最小着弾順差と、最大着弾順差、及びこれらの差を示した図表
【図22】本発明の実施例2に係るノズル列内X方向ピッチが6画素の場合の着弾パターンを示した図
【図23】図21の各着弾パターン1〜10について、隣接するドットの最小着弾順差と、最大着弾順差、及びこれらの差を示した図表
【図24】湾曲するドラム面とインクジェットヘッドの吐出面の関係を示した模式的に示した側面図
【図25】本発明の実施形態によるノズル配列の説明図
【図26】ノズル列間のY方向シフトの有無によるサブヘッド間のスペースの広狭をマクロ的に示した説明図
【図27】図26(a)に示した「Y方向シフト無し」の形態におけるサブヘッド1、2の境界部分の拡大図
【図28】図26(b)に示した「Y方向シフト有り」の形態におけるサブヘッド1、2の境界部分の拡大図
【図29】本発明の実施形態によるノズル配列における隣接ノズル間Y方向距離の好ましい条件の説明図
【図30】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成図
【図31】図30に示したインクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0039】
<従来ヘッドにおける技術課題の説明>
はじめに、従来ヘッドのノズル配列による技術課題を説明する。図1は、特許文献1に示されているインクジェットヘッドの平面透視図であり、図2は図1の一部拡大図である。また、図3は記録素子単位となる1つの液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図2中の33−33線に沿う断面図)である。ヘッド150は、インク吐出口であるノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)153をマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有する。
【0040】
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており(図1、図2参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル151への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)154が設けられている。
【0041】
図3に示したように、各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。圧力室152の一部の面(図3において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)156には個別電極157を備えたアクチュエータ158が接合されている。個別電極157と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。なお、アクチュエータ158には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ158の変位が元に戻る際に、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
【0042】
画像情報から生成されるドット配置データに応じて各ノズル151に対応したアクチュエータ158の駆動を制御することにより、ノズル151からインク滴を吐出させることができる。記録媒体たる用紙(不図示)を一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル151のインク吐出タイミングを制御することによって、用紙上に所望の画像を記録することができる。
【0043】
上述した構造を有するインク室ユニット153を図4に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0044】
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影された(正射影された)ノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
【0045】
上述したインクジェットヘッドと用紙とを相対移動することによって、主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、ここでは、用紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向(紙幅方向)が主走査方向ということになる。以後、副走査方向をY方向、主走査方向をX方向と呼ぶ場合がある。
【0046】
図1〜3に示したように1つの吐出要素は、圧電素子等の駆動源、それらに動力を伝達するための電気配線など、物理的スペースが必要である。1ノズル当りに必要な物理的スペースは、例えば、概ね300μm角程度となっている。このサイズは、解像度1200dpiとした場合に、14〜15画素分のピッチに相当するものとなる。このような吐出要素を図4のように、2次元的に配列することによって、高密度のノズル配置を実現している。
【0047】
図5は、特許文献3に示されているノズル配置の説明図である。図5は、図4と比べて上下の向きが逆に描かれているが、実質的には図5と図4は同等のノズル配置となっている。図5のノズル配置において、用紙を図の上から下に向かって一定速度で搬送しながら描画を行うと、X方向の描画ラインは図6のような打滴順となる。
【0048】
図6には、図5のノズル配置と打滴タイミングの関係が示されている。ノズル51を表す円内に示した数字は打滴タイミングを示し、タイミングt1 では「1」で示したノズル51-11 、51-21 、…、の打滴が行われ、続いてタイミングt2 では、「2」で示したノズル51-12、51-22 、…、の打滴が行われる。このようにしてタイミングt3 〜タイミングt6 では、「3」〜「6」で示したノズル51-13 、51-23 、…、51-16 、51-26 、…、の打滴が行われる。このようにしてタイミングt1〜タイミングt6の順に「1」〜「6」に示したノズルからの打滴が繰り返し行われ、「1」に示したノズルから「6」に示したノズルまで、順に打滴を行う1サイクルの打滴によって用紙16上に主走査方向に沿う1ラインのドット列が形成される。
【0049】
図6に示したP0 は主走査方向に隣り合うドットを形成するインク滴が打滴されるノズル間ピッチを示し、P1 は主走査方向に隣り合うノズルのノズル間ピッチ(即ち、同一タイミングで打滴が行われるノズル間ピッチ、例えば、図6ではノズル51-16 とノズル51-26 との間のピッチ)を示し、P2 は折り返し位置(ノズル列つなぎ部)間ピッチ(折り返し位置Aを主走査方向に並ぶように投影したときの隣り合う折り返し位置間の間隔、ピッチ)を示している。
【0050】
折り返し位置Aとは、斜め方向に並ぶ6個のノズル(例えば、ノズル51-11 〜ノズル51- 16)で構成されるノズル列の境目(つなぎ部分)を言い、図6ではノズル51-16 とノズル51-21 との間やノズル51-26とノズル51-31 との間のように主走査方向に隣り合うドットを形成するノズルで、副走査方向のノズル間のピッチが他よりも大きくなっている部分をいう。
【0051】
図7(a) には、図6に示したタイミングt1 でノズル51-11 から打滴されたインク滴501及びタイミングt2 でノズル51-12 から打滴されたインク滴502が用紙16上に着弾した様子を示し、図7(b) には図7(a) に示した用紙16上に着弾した液滴の断面形状(主走査方向に沿う断面形状)を示している。なお、図7(b)の符号511はタイミングt1でノズル51-21 から打滴されたインク滴(ドット)を示している。
【0052】
図7(a) に示すように、タイミングt1 でノズル51-11 から打滴されたインク滴501は単独で用紙16上に着弾するので、既に用紙16上に着弾している他のインク滴に影響されないため、本来着弾する着弾位置d1に本来形成される大きさのドットが形成される。また、タイミングt2 でノズル51-12 から打滴されたインク滴502が用紙16上に着弾すると、先に着弾しているインク滴501との着弾干渉(打滴干渉)によって、インク滴501の方向(矢印線Kの方向)に引き寄せられる。その結果、本来の着弾位置d2 よりもインク滴501側にずれた位置d2'にドットが形成される。
【0053】
すなわち、インク滴501によるドットとインク滴502によるドットとのドット間ピッチは本来ノズル51-11 とノズル51-12 とのノズル間ピッチP0 と略同一となるはずであるが、着弾干渉によってインク滴501によるドットとインク滴502によるドットとのドット間ピッチはP0 より小さいP0'になる。
【0054】
同様にタイミングt2 〜タイミングt5 で打滴されたインク滴は、先に着弾している隣り合う液滴との着弾干渉によって、本来の着弾位置よりも先に着弾しているインク滴の方へずれた位置にドットが形成される。
【0055】
その一方、図8(a) 、(b) に示すように、タイミングt6 でノズル51-16(折り返し位置のノズル)から打滴されたインク滴506は、タイミングt5でノズル51-15 から打滴されたインク滴505とタイミングt1 でノズル51-21 から打滴されたインク滴511との間に着弾し、インク滴505及びインク滴511の両方に引き寄せられる。
【0056】
即ち、インク滴506はインク滴505及びインク滴511から引き寄せられる力がつり合う位置d6'にドットが形成される。インク滴505及びインク滴511がインク滴506を引き寄せる力が略同一であれば、インク滴506によって本来の着弾点にドットが形成される。
【0057】
インク滴506がインク滴505とインク滴511の中間位置にドットを形成する場合には、インク滴506によるドットとインク滴505によるドットとのドット間ピッチP0"及びインク滴506によるドットとインク滴511によるドットとのドット間ピッチP0"は、インク滴501〜インク滴505によって形成されるドットの各ドット間ピッチ(図8(a) 、(b) ではタイミングt4 で打滴されたインク滴504によるドットとインク滴505によるドットとのドット間ピッチ)P0'よりも大きくなる(即ち、P0'<P0")。
【0058】
したがって、図5に示したノズル配置では、図6に示した折り返し位置Aの印字においてドット間ピッチにばらつきが生じ、このドット間ピッチのばらつきによって副走査方向に沿って視認性の高いむらが発生することがある。折り返し位置Aに生じる着弾干渉の特異性の影響により該折り返し位置が着弾干渉の特異点となり、副走査方向に筋状のむらや濃度むらを生じ易い。
【0059】
図9は、他の形態に係るインクジェットヘッドを構成するヘッドモジュールの斜視図(部分断面図を含む図)であり、図10は図9に示したヘッドモジュールにおけるノズル面の平面図(吐出側から見た図)である。
【0060】
ヘッドモジュール200は、ノズル板275のノズル面(インク吐出面)と反対側(図8において上側)にインク供給室232とインク循環室236等からなるインク供給ユニットを有している。インク供給室232は、供給管路252を介してインクタンク(不図示)に接続され、インク循環室236は、循環管路256を介して回収タンク(不図示)に接続される。
【0061】
図10ではノズル数を省略して描いているが、1個のヘッドモジュール200のノズル板275のインク吐出面277には、32×64個のノズル280が2次元配列されている。図10においてY方向が記録媒体の送り方向(副走査方向)であり、X方向は記録媒体の幅方向(主走査方向)である。このヘッドモジュール200は、X方向に対して角度γの傾きを有するv方向に沿った長辺側の端面と、Y方向に対して角度αの傾きを持つw方向に沿った短辺側の端面とを有する平行四辺形の平面形状となっている。図10に示すヘッドモジュール200を図11に示すように、x方向(用紙幅方向)に複数個繋ぎ合わせることにより、フルライン型のヘッド(シングルパス・ページワイドヘッド)が構成される。
【0062】
図12は、ヘッドモジュールの内部構造を示す断面図である。符号214はインク供給路(供給側共通流路)、218は圧力室、216は各圧力室218とインク供給路214とを繋ぐ個別供給路(供給絞り流路)、220は圧力室218からノズル280に繋がるノズル連通路、226はノズル連通路220と循環流路228(循環側共通流路)とを繋ぐ循環絞り流路(個別循環路)である。これら流路部(214,216,218,220,226,228)を構成する流路構造体210の上に、振動板266が設けられる。振動板266の上には接着層267を介して、下部電極(共通電極)265、圧電体層231及び上部電極(個別電極)264の積層構造から成る圧電素子230が配設されている。 上部電極264は、各圧力室218の形状に対応してパターニングされた個別電極となっており、圧力室218毎に、それぞれ圧電素子230(「吐出エネルギー発生素子」に相当)が設けられている。
【0063】
インク供給路214は、図9で説明したインク供給室232に繋がっており、インク供給路から供給絞り流路216を介して圧力室218にインクが供給される。描画すべき画像の画像信号に応じて、対応する圧力室218(ノズル280)に設けられた圧電素子230の上部電極264に駆動電圧を印加することによって、該圧電素子230及び振動板266が変形して圧力室218の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル連通路220を介してノズル280からインクが吐出される。
【0064】
ノズル近傍には循環絞り流路226が設けられ、吐出に使用されないインクは、循環絞り流路226を介して循環流路228へ回収される。循環流路228は、図9で説明したインク循環室236につながっており、循環絞り流路226を通って常時インクが循環流路228へ回収されることにより、非吐出時におけるノズル近傍のインクの増粘を防止する。
【0065】
図13は、ヘッドモジュール200における32×64個の2次元ノズル配列の一部詳細図である。図13は圧力室側から吐出する方向に向かって見た(ヘッドモジュール200を上から見た)図である。
【0066】
図13では、符号311、321、331、341の4列のノズル列が図示されているが、実際にはこの4列と同様な繰り返し配列パターンで、合計64列が1個のヘッドモジュールに配置され、各ノズル列には、32個のノズルが設けられている。
【0067】
図13において、Y方向が用紙搬送方向(副走査方向)であり、X方向がラインヘッドの長手方向(主走査方向)である。1本の主走査ライン260を打滴する場合、ドット314は、ノズル列311のノズル312から吐出される。ドット314と主走査方向に隣接するドット324は、ノズル列311に対して2個隣にあるノズル列331のノズル332から吐出される。ドット324と主走査方向に隣接するドット334は、ノズル列311の隣にあるノズル列321のノズル322から吐出される。ドット334と主走査方向に隣接するドット344は、ノズル列311と3個隣にあるノズル列341のノズル342から吐出される。このように、4個のノズル列を1個ずつ所定のパターンで使いまわすことで、主走査方向の隣接ドットを打滴する。
【0068】
図14は、図8〜図13で説明したヘッドモジュールのノズル配列を示した図である。図14は圧力室側(ノズル連通路20の上流側)からインク吐出方向に向かって見た図である。記録媒体を停止させた状態で全ノズルを同時吐出させると、記録媒体上に、このノズル配列パターンでインクのドットパターンが形成されることになる。
【0069】
図14における左端のノズルのノズル番号を「1」とし、ここから右斜め上に向かって並ぶノズルの並び順に沿って、ノズル番号を付与する。図の丸括弧( )付き数字がノズル番号を表す。
【0070】
図14においてノズル番号(1)〜(32)のノズル列を第1ノズル列とする。ノズル番号(33)〜(64)のノズル列を第2ノズル列、ノズル番号(65)〜(96)のノズル列を第3ノズル列、・・という具合に、ノズル列の列番号を定める。
【0071】
図示のノズル配列に対して、記録媒体(用紙)は図の下から上に向かって搬送されるため、用紙搬送に伴い、各ノズル列における最も若いノズル番号のものから順に記録媒体上に打滴されて、主走査ラインが記録されることになる。
【0072】
図中の角括弧[ ]付き数字は、幅方向(X方向)におけるドット記録位置、すなわち、x方向の画素位置を表す。第1ノズル列のノズル番号(2)は、画素位置[5]となっていることから、ノズル列内における隣接ノズル間のX方向距離は4画素分離れている。
【0073】
また、括弧無しの数字は、左端からのノズルの個数目(幅方向に沿って並ぶ実質的なノズルの並び順)を表している。本明細書では以下、括弧無しの数字を< >付きで表記する。
【0074】
図14において<48>個目以降で、X方向ノズル間距離が等ピッチ(1200dpi)となっている。<1>〜<48>個目までの部分は、図12で説明した繋ぎ合わせの重なり部分(後述する「隣接サブヘッドの重なり部」に相当)となる。<49>個目以降のノズルを用いることで、当該モジュール単独で1200dpiの解像度が実現される。
【0075】
第5ノズル列の下端(ノズル番号(129)の<81>)をノズルライン番号=1番として、ここからX方向(右)に順次隣接する画素位置(ノズルライン番号2,3,4)を記録するノズルの打滴順を追うと、<81>→<82>→<83>→<84>は、ノズルライン番号で表すと「1→3→4→2」の順となる。これを打滴順「1342」と表している。
【0076】
<81>〜<112>までは「1342」の打滴順パターンが繰り返される。<113>〜<146>までは「1423」の打滴順となり、<147>〜<176>までは「1324」、<177>〜<207>までは「1243」の打滴順となる。その後は再び「1342」→「1423」→「1324」→「1243」の繰り返しとなる。
【0077】
<着弾干渉による画像欠陥を防止するノズル配列の検討>
着弾干渉は、第1着弾と第2着弾の時間差が所定時間内で生じやすく、所定時間を過ぎると生じにくくなる特性がある(特許文献3の段落0145〜0146)。この所定時間を「着弾干渉時間」と定義する。先に着弾した第1着弾液滴が液状態を維持している時間内に第2着弾液滴が接触する場合に着弾干渉が起こることから、着弾干渉時間は概ね液状態を維持している時間を反映している。
【0078】
図4〜図5で説明したノズル配列や図13〜図14で説明したノズル配列の場合、着弾干渉が起こり得る距離(x方向距離)の隣接ラインに、着弾干渉時間内に次の打滴が着弾してしまうと、スジムラなどの画像欠陥を引き起こす。
【0079】
したがって、ノズル配列としては、次の着弾が、隣接ラインに着弾しないノズル配列であることが好ましい。つまり、次の着弾が、隣接ラインとは異なる他のラインに着弾し、次の次以降の着弾時に、隣接ラインに着弾するようなノズル配列とする。こうすることで、隣接ラインへの着弾時間間隔をあけることができる。隣接ラインへの最小着弾時間をできるだけ大きくすることで、着弾干渉が起こり難くなる。
【0080】
また、図4〜図5で説明したノズル配列の場合、1ノズル列中の各ノズルの着弾時間差は小さいが、51-13の「6」と、51-21の「1」の二つの関係のように、ノズル列間の着弾時間差が大きい。このようなノズル配列の場合、ノズル配列内に、着弾時間差の小さな箇所と、着弾時間差の大きな箇所とが存在し、しかもその差が大きなノズル配置である。
【0081】
着弾時間差が小さいほど、着弾干渉の影響が大きく、着弾時間差が大きくなるほど、着弾干渉の影響は小さくなる。つまり、着弾時間差が着弾干渉時間に対して「不十分」→「やや十分」→「十分」→「完全に十分」という関係に応じて、図5で説明した「P0−P0’」(標準位置に対する着弾位置差)が「大」→「小」へ変化する。
【0082】
着弾時間差のばらつき(差)が大きくなると、「P0−P0’」の値が異なる状況が、ノズル配列の幅方向に散在、或いは周期的に分布してしまうことになる。すると、スジムラなどの画像欠陥を引き起こす。
【0083】
また、図14のノズル配列は、幅方向に打滴順序(隣接打滴の状況)が周期的に変化するので、ドット移動の状態が周期毎にことなり、帯状の周期的スジとなるという問題がある。
【0084】
これらの問題点を引き起こさないようにするためには、ノズル配列内に、着弾時間差の小さな箇所と、着弾時間差の大きな箇所とが、無い様にすることが最も好ましい。種々の状況で、その着弾時間差の差をゼロにできない場合、その差を最小にする工夫が必要である。
【0085】
好ましいノズル配列を決定するにあたり、次の観点に分けて検討する。
(1)ノズル列内のX方向ピッチの適正化
(2)ノズル配列内Y方向ピッチの適正化
(3)ノズル列間X方向ピッチの適正化
<用語の意味について>
図15は、本発明の実施形態に係るヘッドモジュールにおける液滴吐出素子の配置を模式的に示した図である。図15の横方向がX方向、縦方向がY方向であり、数字を付した目盛りは画素ピッチを単位とする位置を表す。例えば、1200dpiの記録解像度の場合、1つのセル(□)が1画素分(21.1μm×21.1μm)に相当する。
【0086】
黒塗りの■がノズルを表しており、当該ノズルを左下隅とする14×14画素の矩形が液滴吐出素子の大きさを表している。1つのノズルは概ね14×14画素程度の吐出要素領域を必要とする。
【0087】
図15では、左下の(1,1)を先頭ノズルとして、(6,15)、(11,29)、(16,43)・・・・のノズルの並び(斜め方向に沿って直線的に並ぶノズル列)を第1列目のノズル列とし、(33,2)、(38,16)、(43,30)・・・・のノズルの並びを第2列目のノズル列という。
【0088】
図15における「ノズル列内のX方向ピッチ」は「5」である。つまり、同じノズル列内におけるX方向のノズル間距離を画素単位で表したものを「ノズル列内のノズル間X方向ピッチ」という。
【0089】
図15における「ノズル列内Y方向ピッチ」は「15」である。同じノズル列内におけるY方向のノズル間距離を画素単位で表したものを「ノズル列内Y方向ピッチ」という。
【0090】
図15における「ノズル列間X方向ピッチ」は「32」である。X方向に隣り合う2本のノズル列間のX方向距離を画素単位で表したものをノズル列間X方向ピッチ」という。
【0091】
なお、圧力室の形状は、正方形に限定されない。圧力室の平面形状は、四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0092】
<ノズル列内X方向ピッチの検討>
(比較例1)1次元配列のノズル配列の場合
1次元配列のノズル配列においてノズル列内X方向ピッチ=1とした構成を検討する。
【0093】
この場合、ノズルがX方向に所定解像度(例えば1200dpi)で並んだ配列となる。
【0094】
図16は当該比較例1に係る1次元ノズル配列による着弾パターンを模式的に示した図である。1次元ノズル配列の場合、各ライン番号1〜6は全て同時に1弾目として打滴されることになる。このような着弾パターンの場合、着弾干渉の影響の差による違いは無いが、次の点で採用できない。すなわち、物理的にノズル駆動部材(アクチュエータを含む液滴吐出素子)を1200dpiで1列に並べることは困難である。つまり、X方向にノズル列を構成することは困難であり、ノズル列は傾斜するのが必然的構成となる。
【0095】
仮に、図15で説明したように、14画素(pix)で並べた場合、図8と同等のノズル数を達成しようとすると、Y方向に約600mm(≒28672pix×21.1μm=14pix×2048dot×21.1μm)もあり、非現実的である。
【0096】
また、斜めに1列のノズル列を構成した場合、必ず、隣接ラインに着弾することになる。
【0097】
さらに、記録媒体をドラム(圧胴)に巻き付けて搬送するドラム搬送系が採用されたインクジェット記録装置において、ドラム上に保持された記録媒体に向けてインクジェットヘッドからインクを吐出して描画を行う場合、ドラム周方向に600mmもドットを並べられるほど長い寸法のサブヘッド(ヘッドモジュール)を製造することは、現在の製造技術では非常に困難である。
【0098】
(比較例2)千鳥配列の場合
ノズル列内X方向ピッチ=2とする2列の千鳥配列を検討する。図17は、ノズルがY方向に千鳥配列で並んだ構成における着弾パターンを示した図である。
【0099】
この場合、奇数のライン番号をノズル列番号=1のノズルによって打滴(1弾目)した後、偶数のライン番号をノズル列番号=2のノズルによって打滴(2弾目)することになり、必ず隣接ラインに着弾する。
【0100】
また、液滴吐出素子の物理的な配置ができないため、高さ方向(y方向)にノズルを離す必要があり、比較例1と同じ問題が生じる。
【0101】
(比較例3)ノズル列内X方向ピッチが3画素の場合
図18はノズル列内X方向ピッチが3の場合の着弾パターンを示した図である。
【0102】
この場合、1弾目をライン番号1、4に着弾させた後、2弾目をライン番号2に、3弾目をライン番号3に着弾させるパターン(第1番パターン)と、1弾目をライン番号1、4に着弾させた後、2弾目をライン番号3に、3弾目をライン番号2に着弾させるパターン(第2番パターン)の2パターンが存在する。
【0103】
ただし、2弾目が、先着弾に係る第1ライン(ライン番号=1の走査ライン)に隣接する第2ライン(ライン番号=2の走査ライン)、または、先着弾に係る第4ライン(ライン番号=4の走査ライン)に隣接する第3ライン(ライン番号=3の走査ライン)となり、いずれにせよ、必ず隣接ラインに着弾してしまう。したがって、着弾干渉による画像欠陥が発生し得る。
【0104】
(比較例4)ノズル列内X方向ピッチが4画素の場合
図19はノズル列内X方向ピッチが4の場合の着弾パターンを示した図である。
【0105】
この場合、1弾目をライン番号1、4に着弾させた後、その間のライン番号2〜4を打滴する打滴順のパターンとして、6通り(=3×2×1)ある。
【0106】
図19中の第3番パターン(パターン番号=3)と第4番パターン(パターン番号=4)において、2弾目を第3ライン(ライン番号=3)に着弾させることで、2弾目を1弾目に隣接させずに着弾させることはできる。しかし、3弾目は、第3ラインに隣接する第2ラインまたは第4ラインに必ず着弾させる必要がある。
【0107】
このように、ノズル列内X方向ピッチが4の場合、いずれかの打滴において、必ず、隣接ラインに着弾してしまう。したがって、着弾干渉による画質上の問題が発生する。さらに、隣接ラインに着弾するまでの着弾時間差に注目すると、例えば、第6番パターンなどは、1弾差〜3弾差と、その差が2弾もあるパターンも存在するという問題がある。
【0108】
(実施例1)ノズル列内X方向ピッチが5画素の場合
図20は、本発明の実施形態を示す図であり、ノズル列内X方向ピッチが「5」の場合の着弾パターンを示した図である。
【0109】
X方向ピッチ=5の場合、1弾目をライン番号1,6に着弾させた後、その間のライン番号2〜5を打滴する打滴順のパターン(着弾パターン)は、全部で24通り(=4×3×2×1)ある。
【0110】
このうち、隣接ラインに着弾しないパターンは、図20におけるパターン番号=11、14の2通りのみである。
【0111】
好ましいノズル配列の基本的な考え方は、次着弾時に、直前着弾ラインからX方向に2ライン以上離れる(少なくとも1ラインをあける)ことである。また、図21は、各着弾パターン1〜24について、隣接するドットの最小着弾順差と、最大着弾順差、及びこれらの差を示した図表である。着弾パターン11(パターン番号=11)と、着弾パターン14(パターン番号=14)の隣接着弾最小距離の差は、隣接着弾最小距離は2弾、隣接着弾最大距離は3弾であり、その差は僅か1弾と小さい。
【0112】
着弾パターン11に注目すると、1弾目のライン番号1の隣接ライン(ライン番号2)は4弾目に打滴されるため、時間的な着弾差は3弾ある。2弾目のライン番号2の隣接ラインであるライン番号2は4弾目に打滴されるため、その時間的な差は2弾分である。また、ライン番号2の隣接ラインであるライン番号3は5弾目に打滴されるため、その時間的な差は2弾分である。このように、着弾パターン11の場合、近いところは2弾、遠いところは3弾離れる。その差は1弾分である。本来この差は無いことが好ましいが、1弾差は影響が少ないので許容できる。
【0113】
「着弾パターン11」(パターン番号=11)は、着弾順にライン番号で表現すると「13524」という数列になる。「着弾パターン14」(パターン番号=14)は、着弾順にライン番号で表現すると「14253」である。
【0114】
(実施例2)ノズル列内X方向ピッチが6画素の場合
図22は、本発明の実施形態を示す図であり、ノズル列内X方向ピッチが6の場合の着弾パターンを示した図である。X方向ピッチ=6の場合の着弾パターンの組合せは、全部で120通り(=5×4×3×2×1)である。
【0115】
このうち、次着弾が隣接ラインに着弾しないパターンは図22に示す10種類のみである。この場合も、好ましいノズル配列の基本的な考え方は、次着弾時に、直前着弾ラインからX方向に2ライン以上離れる(少なくとも1ラインをあける)ことである。
【0116】
図23は、図22に示した各着弾パターン1〜10について、隣接するドットの最小着弾順差と、最大着弾順差、及びこれらの差を示した表である。図22に示した着弾パターン10種類のうち、隣接着弾距離差が最も短いのは、2弾となるパターン2,3,5,6,8,9の6種類である。
【0117】
さらに、パターン1,2,9,10の4種類は、全ノズルをONする場合において、自身着弾時に、隣接片側にドットが存在していて、かつ、もう一方の(他方の)隣接にドットが存在しないという、状況が存在しない。つまり、どのラインを打滴する場合も、両隣に必ずドットが存在しているか、または、両隣にドットが必ず存在していないか、のどちらかの状況であり、着弾干渉によるドット移動抑止の観点から、良好なパターンである。
【0118】
ただし、網点パターンや、ノズル詰まり(不吐)によって、隣接ドット状態は異なる。
【0119】
よって、X方向ピッチ=6で最も好ましいパターンは、上記、2つの観点に共通するパターン2、または9の2種類である。ただし、これらは不等ピッチなので(各ノズルを等間隔で直線上に並べることができないので)、規則的な2次元配列を構成することは困難である。また、隣接着弾最小距離が2弾となる点で、X方向ピッチ=5の場合に劣る。なお、図20で説明したX方向ピッチ=5の着弾パターン11や、着弾パターン14は等ピッチによるノズル配置が可能であり、規則的な2次元配列の構成が容易である。
【0120】
(比較例5)ノズル列内X方向ピッチが7画素以上の場合
実施例1,2のノズル列内X方向ピッチが5画素、6画素の場合に関する説明の通り、ノズル列内X方向ピッチが7画素以上の場合にも隣接ラインに着弾しないパターンは存在する。しかし、吐出駆動のための電気回路やインク流路を複雑化するだけなので製造上好ましくない。
【0121】
詳しい説明は省略するが、X方向ピッチが大きい場合、複数のサブヘッド(ヘッドモジュール)をX方向において隣り合うサブヘッド同士を重ねる「隣接サブヘッドの重なり部」があるが(図11、14参照)、この「隣接サブヘッドの重なり部」のX方向長さが、長くなってしまう。特性の異なるサブヘッドが重なる隣接サブヘッドの重なり部」は比較的スジが発生しやすい傾向にあるが、その「隣接サブヘッドの重なり部」の長さが長くなってしまうと、全体的に画像欠陥が目立ちやすくなる。したがって、隣接サブヘッドの重なり部を長くするのは好ましくない。
【0122】
<ノズル列内Y方向ピッチの検討>
先の説明のとおり、「ノズル列内X方向ピッチ=5」が、隣接ラインに着弾せず、かつ、最も隣接着弾差が小さい配列なので、「ノズル列内X方向ピッチ=5」の場合について説明する。
【0123】
「ノズル列内X方向ピッチ=5」とは、ノズル列内におけるX方向(用紙幅方向)のノズル間距離(ピッチ)が5画素であることを示す(図15参照)。記録解像度が1200dpiの場合、画素間隔は概ね21.1μmなので、5画素というと約105μm程度である。
【0124】
この条件を前提に、2次元のノズル配列を形成することができる。Y方向については、サブヘッド(ヘッドモジュール)の製作上の作りやすさや、湾曲したドラム面への打滴の影響から、Y方向のトータル長さは10mm程度が適度な値である。すなわち、図24のように、ドラム面に対向して配置されるヘッドモジュールの場合、ノズル面における吐出領域の中心はドラム面に近く、その前後(周辺部)は遠くなる。Y方向の長さが長くなるほど、飛翔距離差が大きくなる。描画に影響しない程度の飛翔距離差に納めるためには、吐出領域のY方向長さを10mmとすることが好ましい。
【0125】
また、1ノズル列中のY方向のノズル数を決めるためには、1つのノズルを構成するために、圧力室や駆動素子、電気回路、流路など、XY面における物理的な寸法が必要になる。図15でも説明したとおり、1つのノズルを構成する液滴吐出素子は少なくとも0.3mm角程度が必要である。解像度1200dpi(画素ピッチ=約21.1μm)では、14画素分(≒0.3/0.211)ノズル間隔を離す必要がある。
【0126】
さらに、同一ノズル列内でX方向に5画素ピッチでノズルを離して配置すると、図15で説明したような配置になる。なお、図15において、記録媒体(用紙)は、相対的に図の下から上に向かって移動する。
【0127】
図15のように、Y方向に14画素ピッチ(=14×25.4mm/1200dpi=0.296mm)で10mm程度のエリアに配置可能なノズル数は33.8(≒10mm/0.296mm)個である。デジタル回路での制御のし易さから、2のべき乗が好ましいので、33.8に近い「32個」とする。
【0128】
上記の考察から、1つのノズル列における好ましいノズル配列(第1列目のノズル配列)が決定された。
【0129】
<ノズル列間X方向ピッチの検討>
次に、ノズル列間X方向ピッチについて検討する。ノズル列間ピッチは、Y方向と同様に、吐出要素(液滴吐出素子)の物理的制約などにより、14画素程度以上離す必要がある。また、ノズルの有効利用の観点から、ノズル列間で同じライン(X方向の画素位置ライン)上に重複してノズルを配置しないことが望ましい(冗長ノズルを設けない構成)。
【0130】
なお、同一のライン上に複数のノズルを有する場合は、これら複数のノズルを冗長させて使用してもよく、また、使用するノズル1つだけを残して、他のノズルの動作をオフさせてもよい。
【0131】
図25は、本発明の実施形態によるノズル配列の説明図である。
【0132】
図25は、図20で説明した第14番の着弾パターン(打滴順のライン番号表記で「14253」のパターン)の例であり、ノズル列内X方向ピッチ=5画素、ノズル列内Y方向ピッチ=14画素、ノズル列内ノズル数=32個、ノズル列間X方向ピッチ=32画素の例である。
【0133】
記録媒体が図の下から上に向かって移動する場合、記録媒体上の所望の狭幅内に打滴する順番は、X方向画素位置(ライン番号)150〜170付近では、「ノズル列6列目」→「ノズル列5列目」→「ノズル列4列目」→「ノズル列3列目」→「ノズル列2列目」→(ノズル列1列目)となる。なお、ノズル列1列目については、ノズルの有無があり得る。
【0134】
1弾目のノズル列6列目の先頭ノズルが、ライン番号161番なので、2弾目は、ノズル列5列目で、ライン番号は、161番から右側へ3ライン離れた164番に置かねばならない(図20で説明した第14番の着弾パターンに従うため)。
【0135】
そうすると、ノズル列5列目に存在するノズルのライン番号は、ライン番号161+3±5×m(mは整数)先頭となる。取り得るライン番号の具体的な数値の例は、{・・・124、129、134、139、144、149、154、159、164、169、174、179、184、189、・・・}である。
【0136】
また、もう一つの考え方として、ノズル列内ノズル数が32個なので、ノズル列間X方向ピッチは、平均的に32画素とならなければならない。これは、ライン番号一つに、ノズルを一つ割り当てる考え方である。
【0137】
この場合、2弾目となるノズル列5列目の先頭ノズルが取り得るライン番号は、1弾目のノズル列6列目の先頭ノズルのライン番号が、161番なので、「32」ライン分ずらして、{・・・、65、97、129、(161)、(193)、・・・}のうち、いずれかとなる。
【0138】
上記2つの考え方で、ライン番号129番が、共通のライン番号となっている。
【0139】
つまり、2弾目のノズル列5列目のノズル列先頭X方向位置は、ライン129番目に位置するのが良い。
【0140】
他のノズル列の先頭X方向位置も同様の手法によって決定することができる。
【0141】
また、図20で説明した第11番の着弾パターンについても同様の手法によってノズル配列を決定することができる。
【0142】
なお、本発明が適用されたノズル配列の吐出面を有するヘッドモジュール(本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッド)は、ノズル配列以外のヘッド構造(ヘッドモジュールの外観、液滴吐出素子の構造等)については、図9,図12で説明したヘッドモジュールと同様の構成が採用される。
【0143】
<ノズル列間のY方向シフトについて>
図15に示したように、複数列のノズル列は、列ごとに、Y方向に所定量ずつ画素単位でノズル位置をシフトさせたノズル配列となっている。図15では、第2ノズル列の先頭ノズルはY方向に1画素分シフトされている。なお、Y方向のシフト量は適宜設計可能である。
【0144】
このような構成によれば、当該ヘッドモジュールを図11のように複数個繋ぎ合わせて長尺のバーヘッドを構成する場合に、モジュール間接合のスペースを確保することができる。
【0145】
図26は、ノズル列間のY方向シフトの有無によるサブヘッド間のスペースの広狭をマクロ的に示した図である。図26の上段(図26(a))は、ノズル列毎のY方向シフトが無いノズル配列を持つサブヘッド(「ヘッドモジュール」と同義)をX方向に2つ並べて繋ぎ合わせた構成を示している。図26の下段(図26(b))は、ノズル列毎にY方向に1画素分シフトされたノズル配列を持つサブヘッドをX方向に2つ並べて繋ぎ合わせた構成を示している。図の左側に描いたノズル配列を持つサブヘッドを「サブヘッド1」、右側に描いたノズル配列を持つサブヘッドを「サブヘッド2」と呼ぶことにする。
【0146】
なお、ここでは、各サブヘッドのノズル配列として、図20のパターン番号=14で説明したノズル配列が採用されており、X方向に連続して並ぶ走査ライン(ノズルライン)の着弾順は「14253」である。
【0147】
図27は、図26(a)に示した「Y方向シフト無し」の形態におけるサブヘッド1とサブヘッド2の境界部分を拡大した図である。図27においてサブヘッド1のノズルを○で表し、サブヘッド2のノズルを□で表した。
【0148】
図27に示したように、サブヘッド1,2間の境界部分(ノズル列のつなぎ目部分)におけるノズル列の間隔、すなわち、サブヘッド1における右端のノズル列(ノズル列番号=64)とサブヘッド2における左端のノズル列(ノズル列番号=1)の列間隔は約0.6mmである。
【0149】
図28は、図26(b)に示した「Y方向シフト有り」の形態におけるサブヘッド1とサブヘッド2の境界部分を拡大した図である。図28においてサブヘッド1のノズルを○で表し、サブヘッド2のノズルを□で表した。図28に示したように、サブヘッド間の境界部分(ノズル列のつなぎ目部分)におけるノズル列の間隔、すなわち、サブヘッド1における右端のノズル列(ノズル列番号=64)とサブヘッド2における左端のノズル列(ノズル列番号=1)の列間隔は約1.1mmである。
【0150】
「Y方向シフト無し」(図26(a)、図27)の形態と比較して、「Y方向シフト有り」(図26(b)、図28)の形態の方が、第1サブヘッドと第2サブヘッドの間の隙間を広く形成することができ、サブヘッドの最外周ノズルからの部材の強度確保や、サブヘッドの位置調整時の調整シロを確保することが可能である。
【0151】
<隣接ノズル間Y方向距離L_iの規定について>
図29のように、隣接ラインY方向ノズル間距離(最小部分)L_iを定義する。Vはライン速度(すなわち、用紙搬送速度)、T_cをインクの着弾干渉時間とすると、次式
L_i/V>T_cを満たすようにL_iの寸法を定めることが好ましい。すなわち、ノズル配列とライン速度によって決定される隣接ラインに着弾する時間差が、インクの着弾干渉時間よりも長いことが好ましい。
【0152】
具体的な数値を例示すると、以下のとおりである。
【0153】
V=0.5m/s
Tc=7ms
L_i>Tc×V=7[ms]×0.5[m/s]=3.5mm
すなわち、この場合、L_iは3.5mmを超える距離が必要である。
【0154】
<着弾干渉が発生する条件について>
X方向に隣接する各画素位置に対応した走査ライン(Y方向ライン)のライン間隔(ラインピッチLp)が着弾液滴で形成される最小ドット径よりも小さい場合に着弾干渉の問題が顕著になる。よって、ラインピッチLpが最小ドット径よりも小さい場合に本発明を適用にしたノズル配列を採用することが有益である。
【0155】
<インクジェット記録装置の構成例>
上述した本発明の実施形態によるノズル配列を持つインクジェットヘッドを適用したインクジェット記録装置(「画像記録装置」に相当)の例を説明する。
【0156】
図30は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置600の構成図である。このインクジェット記録装置600は、描画部616の圧胴(描画ドラム670)に保持された記録媒体124(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体624上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体624上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
【0157】
図示のように、インクジェット記録装置600は、主として、給紙部612、処理液付与部614、描画部616、乾燥部618、定着部620、及び排紙部622を備えて構成される。
【0158】
(給紙部)
給紙部612には、給紙トレイ650が設けられ、この給紙トレイ650から記録媒体624が一枚ずつ処理液付与部614に給紙される。本例では、記録媒体624として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
【0159】
(処理液付与部)
処理液付与部614は、記録媒体624の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部616で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0160】
処理液付与部614は、給紙胴652、処理液ドラム654、及び処理液塗布装置656を備えている。処理液ドラム654は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)655を備え、記録媒体624の先端を保持できるようになっている。
【0161】
処理液塗布装置656は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム654上の記録媒体624に圧接されて計量後の処理液を記録媒体624に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置656によれば、処理液を計量しながら記録媒体624に塗布することができる。ローラによる塗布方式に代えて、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
【0162】
処理液付与部614で処理液が付与された記録媒体624は、処理液ドラム654から中間搬送部626を介して描画部616の描画ドラム670へ受け渡される。
【0163】
(描画部)
描画部616は、描画ドラム670、用紙抑えローラ674、及びインクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yを備えている。描画ドラム670は、処理液ドラム654と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)671を備える。描画ドラム670に固定された記録媒体624にインクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yからインクが付与される。
【0164】
インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yは、それぞれ、記録媒体624における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッドであり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。ヘッドモジュールのノズル配列は図で説明したものであり、これを図のように繋ぎ合わせたものとなっている。 各インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yは、記録媒体624の搬送方向(描画ドラム670の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
【0165】
描画ドラム670上に密着保持された記録媒体624の記録面に向かって各インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体624上での色材流れなどが防止され、記録媒体624の記録面に画像が形成される。
【0166】
描画部616で画像が形成された記録媒体624は、描画ドラム670から中間搬送部628を介して乾燥部618の乾燥ドラム676へ受け渡される。
本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0167】
(乾燥部)
乾燥部618は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、乾燥ドラム676、及び溶媒乾燥装置678を備えている。
【0168】
乾燥ドラム676は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)677を備え、この保持手段677によって記録媒体624の先端を保持できるようになっている。
【0169】
溶媒乾燥装置678は、複数のハロゲンヒータ680と、各ハロゲンヒータ680の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル682とで構成される。乾燥部618で乾燥処理が行われた記録媒体624は、乾燥ドラム676から中間搬送部630を介して定着部620の定着ドラム684へ受け渡される。
【0170】
(定着部)
定着部620は、定着ドラム684、ハロゲンヒータ686、定着ローラ688、及びインラインセンサ690で構成される。定着ドラム684は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)685を備え、この保持手段685によって記録媒体624の先端を保持できるようになっている。
【0171】
定着ドラム684の回転により、記録媒体624の記録面に対して、ハロゲンヒータ686による予備加熱と、定着ローラ688による定着処理と、インラインセンサ690による検査が行われる。
【0172】
定着ローラ688は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体624を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ688は、定着ドラム684に対して圧接するように配置されており、定着ドラム684との間でニップローラを構成するようになっている。
【0173】
なお、高沸点溶媒及びポリマー微粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含んだインクに代えて、紫外線(UV)露光にて重合硬化可能なモノマー成分を含有していてもよい。この場合、インクジェット記録装置600は、ヒートローラによる熱圧定着部(定着ローラ688)の代わりに、記録媒体624上のインクにUV光を露光するUV露光部を備える。このように、UV硬化性樹脂などの活性光線硬化性樹脂を含んだインクを用いる場合には、加熱定着の定着ローラ188に代えて、UVランプや紫外線LD(レーザダイオード)アレイなど、活性光線を照射する手段が設けられる。
【0174】
インラインセンサ690は、記録媒体624に記録された画像(テストパターンなども含む)について、吐出不良チェックパターンや画像の濃度、画像の欠陥などを計測するための読取手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
【0175】
(排紙部)
排紙部622は、排出トレイ692を備えており、この排出トレイ692と定着部620の定着ドラム684との間に、これらに対接するように渡し胴694、搬送ベルト696、張架ローラ698が設けられている。記録媒体624は、渡し胴694により搬送ベルト696に送られ、排出トレイ692に排出される。搬送ベルト696による用紙搬送機構の詳細は図示しないが、印刷後の記録媒体624は無端状の搬送ベルト696間に渡されたバー(不図示)のグリッパーによって用紙先端部が保持され、搬送ベルト696の回転によって排出トレイ692の上方に運ばれてくる。
【0176】
また、図には示されていないが、本例のインクジェット記録装置600には、上記構成の他、各インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部614に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体624の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
【0177】
<制御系の説明>
図31は、インクジェット記録装置600のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置600は、通信インターフェース770、システムコントローラ772、メモリ774、モータドライバ776、ヒータドライバ778、プリント制御部780、画像バッファメモリ782、ヘッドドライバ784等を備えている。
【0178】
通信インターフェース770は、ホストコンピュータ786から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース770にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ786から送出された画像データは通信インターフェース770を介してインクジェット記録装置600に取り込まれ、一旦メモリ774に記憶される。
【0179】
メモリ774は、通信インターフェース770を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ772を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ774は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0180】
システムコントローラ772は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置600の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。ROM790には各種制御プログラムや各種のパラメータ等が格納されており、システムコントローラ772の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。
【0181】
メモリ774は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0182】
モータドライバ776は、システムコントローラ772からの指示にしたがってモータ788を駆動するドライバである。図31では、装置内の各部に配置される様々なモータを代表して符号788で図示している。
【0183】
ヒータドライバ778は、システムコントローラ772からの指示にしたがって、ヒータ789を駆動するドライバである。図31では、装置内の各部に配置される様々なヒータを代表して符号789で図示している。
【0184】
プリント制御部780は、システムコントローラ772の制御に従い、メモリ774内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドット画像データ)をヘッドドライバ784に供給する制御部である。
【0185】
ドット画像データは、入力された多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置600で使用するインクの各色の色データ(本例では、KCMYの色データ)に変換する処理である。
【0186】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して、誤差拡散法で各色のドットデータ(本例では、KCMYのドットデータ)に変換する処理である。
【0187】
プリント制御部780において所要の信号処理が施され、得られたドットデータに基づいて、ヘッドドライバ784を介してヘッド750(図30のインクジェットヘッド672M,672K,672C,672Yを代表して符号750とした)のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0188】
プリント制御部780には画像バッファメモリ782が備えられており、プリント制御部780における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ782に一時的に格納される。また、プリント制御部780とシステムコントローラ772とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0189】
ヘッドドライバ784には、ヘッド750の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0190】
本例に示すインクジェット記録装置600は、ヘッド750の各ピエゾアクチュエータ(圧電素子230)に対して、共通の駆動電力波形信号を印加し、各ピエゾアクチュエータの吐出タイミングに応じて各ピエゾアクチュエータの個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、各ピエゾアクチュエータに対応するノズル280らインクを吐出させる駆動方式が採用されている。
【0191】
(変形例1)
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによるシングルパス印字方式に限定されず、記録媒体の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを記録媒体の幅方向に走査させて印字を行う方式を適用してもよい。
【0192】
(変形例2)
インクジェットヘッドにおける各ノズルから液滴を吐出させるための吐出用の圧力(吐出エネルギー)を発生させる手段は、ピエゾアクチュエータ(圧電素子)に限らず、サーマル方式(ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させる方式)におけるヒータ(加熱素子)や静電アクチュエータその他方式による各種アクチュエータなど様々な圧力発生素子(エネルギー発生素子)を適用し得る。ヘッドの吐出方式に応じて、相応のエネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
【0193】
(変形例3)
上記実施形態では、記録媒体に直接インク滴を打滴して画像を形成する方式(直接記録方式)のインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、一旦、中間転写体上に画像(一次画像)を形成し、その画像を転写部において記録紙に対して転写することで最終的な画像形成を行う中間転写型の画像形成装置についても本発明を適用することができる。この場合、中間転写体が「記録媒体」と解釈される。
【0194】
<装置応用例>
上述の実施形態では、画像記録装置の一例としてインクジェット印刷機(記録装置)を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。本発明は、グラフフィック印刷用途に限らず、電子回路基板の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体(「インク」に相当)として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、微細構造物形成装置など、各種の画像パターンを形成し得る様々なインクジェットシステム(画像記録装置)に適用可能である。
【符号の説明】
【0195】
200…ヘッドモジュール、214…インク供給路、218…圧力室、220…ノズル連通路、230…圧電素子、275…ノズル板、280…ノズル、600…インクジェット記録装置、624…記録媒体、672M,672K,672C,672Y…インクジェットヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルを有する液体吐出ヘッドであって、
当該液体吐出ヘッドから吐出した液滴を付着させる記録媒体の前記液体吐出ヘッドに対する相対的な移動方向をY方向、前記Y方向に直交する前記記録媒体の幅方向をX方向とするとき、
当該液体吐出ヘッドには、Y方向に対して傾斜する斜め方向に沿って複数個の前記ノズルが並んだノズル列がX方向に複数列設けられ、
前記複数列のノズル列からなるノズル配列は、
前記記録媒体上のX方向の画素位置に対応するY方向の走査ラインについて、X方向の並び順に、連続する整数値でライン番号を定めて、X方向に画素間隔で連続して並ぶ各走査ラインに対して打滴を行い、その着弾液滴によって前記記録媒体上にX方向ラインを記録する場合に、当該各走査ラインに対する液滴の着弾順を前記ライン番号の数列で表したときに、前記着弾順で隣り合うライン番号の差が2以上となるノズル配列であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、
前記ノズル列は、同一ノズル列内でX方向について等間隔でノズルが並んでいることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2において、
前記ノズル列内におけるX方向のノズル間隔をK画素間隔(Kは5以上の整数)とするとき、X方向に連続するK本の走査ラインの打滴を担うノズルは全て異なるノズル列に属しており、当該K本の走査ラインに対する打滴の着弾順をライン番号の数列で表したときに、着弾順で隣り合うライン番号の差が2以上となることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記ノズル列は、同一ノズル列内でX方向について5画素間隔でノズルが並んでいることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4において、
X方向に連続する5画素単位の繰り返し周期について、当該5画素内で最初に着弾する走査ラインをライン番号1とするとき、ライン番号1から5までの5本の走査ラインに対する打滴順をライン番号の数列で表したときに、「13524」又は「14253」となることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、
前記ノズル列は、同一ノズル列内でY方向について等間隔でノズルが並んでいることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項において、
前記ノズル列は、同一ノズル列内でX方向について5画素間隔で32個のノズルが並んでおり、
前記複数列のノズル列は、X方向に32画素の列間隔で配列されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項において、
前記複数列のノズル列は、列ごとに、Y方向に所定量ずつ画素単位でノズル位置をシフトさせたノズル配列となっていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項において、
X方向に隣接する走査ラインの打滴を担うノズル間のY方向距離の最小値をL_i、前記液体吐出ヘッドに対する前記記録媒体の相対的な移動速度をV、液滴の着弾干渉時間をT_cとするとき、
L_i/V>T_c
を満たすことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項において、
X方向に隣接する走査ラインのライン間隔は、前記記録媒体上に着弾する液滴による最小ドット径よりも小さいことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記記録媒体を前記液体吐出ヘッドに対して相対移動させる移動手段と、
を備え、前記記録媒体上に画像を形成することを特徴とする画像記録装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを用い、
前記液体吐出ヘッドから液滴を吐出し、
前記記録媒体を前記液体吐出ヘッドに対して相対移動させることにより、前記記録媒体上に画像を形成することを特徴とする画像記録方法。
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルを有する液体吐出ヘッドであって、
当該液体吐出ヘッドから吐出した液滴を付着させる記録媒体の前記液体吐出ヘッドに対する相対的な移動方向をY方向、前記Y方向に直交する前記記録媒体の幅方向をX方向とするとき、
当該液体吐出ヘッドには、Y方向に対して傾斜する斜め方向に沿って複数個の前記ノズルが並んだノズル列がX方向に複数列設けられ、
前記複数列のノズル列からなるノズル配列は、
前記記録媒体上のX方向の画素位置に対応するY方向の走査ラインについて、X方向の並び順に、連続する整数値でライン番号を定めて、X方向に画素間隔で連続して並ぶ各走査ラインに対して打滴を行い、その着弾液滴によって前記記録媒体上にX方向ラインを記録する場合に、当該各走査ラインに対する液滴の着弾順を前記ライン番号の数列で表したときに、前記着弾順で隣り合うライン番号の差が2以上となるノズル配列であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、
前記ノズル列は、同一ノズル列内でX方向について等間隔でノズルが並んでいることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2において、
前記ノズル列内におけるX方向のノズル間隔をK画素間隔(Kは5以上の整数)とするとき、X方向に連続するK本の走査ラインの打滴を担うノズルは全て異なるノズル列に属しており、当該K本の走査ラインに対する打滴の着弾順をライン番号の数列で表したときに、着弾順で隣り合うライン番号の差が2以上となることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記ノズル列は、同一ノズル列内でX方向について5画素間隔でノズルが並んでいることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4において、
X方向に連続する5画素単位の繰り返し周期について、当該5画素内で最初に着弾する走査ラインをライン番号1とするとき、ライン番号1から5までの5本の走査ラインに対する打滴順をライン番号の数列で表したときに、「13524」又は「14253」となることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、
前記ノズル列は、同一ノズル列内でY方向について等間隔でノズルが並んでいることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項において、
前記ノズル列は、同一ノズル列内でX方向について5画素間隔で32個のノズルが並んでおり、
前記複数列のノズル列は、X方向に32画素の列間隔で配列されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項において、
前記複数列のノズル列は、列ごとに、Y方向に所定量ずつ画素単位でノズル位置をシフトさせたノズル配列となっていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項において、
X方向に隣接する走査ラインの打滴を担うノズル間のY方向距離の最小値をL_i、前記液体吐出ヘッドに対する前記記録媒体の相対的な移動速度をV、液滴の着弾干渉時間をT_cとするとき、
L_i/V>T_c
を満たすことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項において、
X方向に隣接する走査ラインのライン間隔は、前記記録媒体上に着弾する液滴による最小ドット径よりも小さいことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記記録媒体を前記液体吐出ヘッドに対して相対移動させる移動手段と、
を備え、前記記録媒体上に画像を形成することを特徴とする画像記録装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを用い、
前記液体吐出ヘッドから液滴を吐出し、
前記記録媒体を前記液体吐出ヘッドに対して相対移動させることにより、前記記録媒体上に画像を形成することを特徴とする画像記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2012−35573(P2012−35573A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179664(P2010−179664)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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