説明

液体吐出装置およびその制御方法

【課題】吐出ヘッドに液体を充填する際に循環路の気泡をより確実に除去できるようにする。
【解決手段】印刷ヘッド24にインクを充填する際には、循環ポンプ76を制御して循環路60全体の体積以上のインクを往路口69側から印刷ヘッド24を経由して復路口73側に(順方向に)循環させると共にその後に循環ポンプ76を制御して循環路60全体の体積以上のインクを復路口73側から印刷ヘッド24を経由して往路口69側に(逆方向に)循環させる。これにより、循環路60内の気体(気泡)をより確実にサブタンク53に放出させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体吐出装置としては、インクを噴射する印字ヘッドと、インクを収容するインクタンクと、インクタンクから印字ヘッドのマニホールドにインクを供給するための第1のインク流路と、マニホールドからインクタンクにインクを回収するための第2のインク流路と、第1のインク流路に設けられたインク循環用ポンプと、第2のインク流路に設けられた開閉バルブと、印字ヘッドのノズル面を覆うための吸引キャップと、吸引キャップに吸引パイプを介して接続された吸引用ポンプと、を備え、印字ヘッドにインクを充填する際には、吸引キャップによって印字ヘッドのノズル面を覆うと共に開閉バルブを開放してインク循環用ポンプを回転駆動することにより、インクを第1のインク流路,マニホールド,第2のインク流路からなる循環流路を循環させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、印字ヘッドにインクを充填するためにインクを循環流路を循環させる際に、インク循環用ポンプの回転方向を短時間だけ逆方向に変更することにより、循環流路内の気泡を除去しやすくすると共にインクや気泡が循環流路を逆流するのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−33714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の液体吐出装置では、インクや気泡が逆流しないようにすることができるものの、順方向にインクを流すときに気泡が滞留しやすい位置(例えば、循環流路の各構成要素の接合部など)を循環流路が有する場合には、循環流路内の気泡を十分に除去できないことがある。
【0005】
本発明の液体吐出装置およびその制御方法は、吐出ヘッドに液体を充填する際に循環路の気体(気泡)をより確実に除去できるようにすることを主目的とする。
【0006】
本発明の液体吐出装置およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、
液体を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドを備える液体吐出装置であって、
液体を貯留する貯留部と、
前記吐出ヘッドを含んで構成され、一方の開口端部と他方の開口端部とが共に前記貯留部内に配置された循環路と、
前記循環路における前記吐出ヘッドより前記一方の開口端部側に設けられ、液体が前記循環路を循環するよう液体を圧送可能な圧送手段と、
前記吐出ヘッドに液体を充填する際、前記圧送手段の駆動によって前記循環路全体の体積以上の液体が前記一方の開口端部側から前記吐出ヘッドを経由して前記他方の開口端部側に循環するよう前記圧送手段を制御する第1循環制御を実行し、該第1循環制御の実行後に、前記圧送手段の駆動によって前記循環路全体の体積以上の液体が前記他方の開口端部側から前記吐出ヘッドを経由して前記一方の開口端部側に循環するよう前記圧送手段を制御する第2循環制御を実行する充填時制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の液体吐出装置では、吐出ヘッドに液体を充填する際には、圧送手段の駆動によって循環路全体の体積以上の液体が一方の開口端部側から吐出ヘッドを経由して他方の開口端部側に循環する(以下、順方向に循環するという)よう圧送手段を制御する第1循環制御を実行し、第1循環制御の実行後に、圧送手段の駆動によって循環路全体の体積以上の液体が他方の開口端部側から吐出ヘッドを経由して一方の開口端部側に循環する(以下、逆方向に循環するという)よう圧送手段を制御する第2循環制御を実行する。したがって、循環路全体の体積以上の液体を循環路を順方向に循環させた後に循環路全体の体積以上の液体を循環路を逆方向に循環させるから、液体が循環路を順方向に循環する際に気体(気泡)が滞留しやすい位置を循環路が有する場合でも、循環路の液体をより確実に除去することができる。
【0009】
こうした本発明の液体吐出装置において、前記循環路における前記吐出ヘッドより前記他方の開口端部側に設けられて開閉可能な開閉弁を備え、前記充填時制御手段は、前記開閉弁が開成している状態で前記第1循環制御を実行した後に、前記開閉弁が閉成されるよう該開閉弁を制御し、前記圧送手段の駆動によって前記循環路のうち前記開閉弁より前記一方の開口端部側である所定部分の液体が該一方の開口端部側に圧送されるよう前記圧送手段を制御し、前記開閉弁が開成されるよう該開閉弁を制御してから前記第2循環制御を実行する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、循環路内に気体がある場合に所定部分の圧力を低下させて循環路内の気体(気泡)を膨張させることができると共に開閉弁の開成後の流速を高くすることができるから、気体を貯留部に放出しやすくすることができる。この態様の本発明の液体吐出装置において、前記充填時制御手段は、前記第1循環制御の実行後で且つ前記開閉弁を開成した後に、前記第2循環制御の実行時間より短い時間に亘って前記圧送手段の駆動によって液体が前記他方の開口端部側から前記一方の開口端部側に圧送されるよう前記圧送手段を制御する短時間第1制御と、該短時間第1制御の実行後に前記第2循環制御の実行時間より短い時間に亘って前記圧送手段の駆動によって液体が前記一方の開口端部側から前記他方の開口端部側に圧送されるよう前記圧送手段を制御する短時間第2制御と、を所定回数ずつ実行してから前記第2循環制御を実行する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、循環路内に気体がある場合にその気体を他方の開口端部側や一方の開口端部側に移動させることによって気体を貯留部に放出しやすくすることができる。
【0010】
また、本発明の液体吐出装置において、前記充填時制御手段は、前記第1循環制御を実行した後に、前記第2循環制御の実行時間より短い時間に亘って前記圧送手段の駆動によって液体が前記他方の開口端部側から前記一方の開口端部側に圧送されるよう前記圧送手段を制御する短時間第1制御と、該短時間第1制御の実行後に前記第2循環制御の実行時間より短い時間に亘って前記圧送手段の駆動によって液体が前記一方の開口端部側から前記他方の開口端部側に圧送されるよう前記圧送手段を制御する短時間第2制御と、を所定回数ずつ実行してから前記第2循環制御を実行する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、循環路内に気体がある場合にその気体を他方の開口端部側や一方の開口端部側に移動させることによって気体を貯留部に放出しやすくすることができる。
【0011】
さらに、本発明の液体吐出装置において、前記循環路の前記一方の開口端部と前記他方の開口端部とのうち少なくとも一方の重力方向の高さを調整可能な高さ調整手段を備え、前記充填時制御手段は、液体を前記一方の開口端部側から前記他方の開口端部側に循環させる際には前記一方の開口端部が前記他方の開口端部より低くなるよう前記高さ調整手段を制御し、液体を前記他方の開口端部側から前記一方の開口端部側に循環させる際には、前記他方の開口端部が前記一方の開口端部より低くなるよう前記高さ調整手段を制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、貯留部から循環路に気体が侵入するのを抑制することができる。
【0012】
加えて、本発明の液体吐出装置において、前記循環路は、前記一方の開口端部と前記他方の開口端部との重力方向の高さが同一となるよう形成されてなる、ものとすることもできる。
【0013】
また、本発明の液体吐出装置において、前記複数のノズルをそれぞれ独立して封止可能な封止手段を備え、前記充填時制御手段は、前記封止手段によって前記複数のノズルがそれぞれ独立して封止された状態で少なくとも前記第1循環制御および前記第2循環制御を実行する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、第1循環制御や第2循環制御の実行時に液体がノズルから放出される(漏れ出る)のを抑止することができる。この態様の本発明の液体吐出装置において、前記貯留部を加圧可能な加圧手段を備え、前記充填時制御手段は、前記第2循環制御の実行後に、前記加圧手段によって前記貯留部が加圧されながら前記封止手段による前記複数のノズルの封止が解除されるよう前記加圧手段と前記封止手段とを制御する封止解除制御を実行する手段である、ものとすることもできる。また、この態様の本発明の液体吐出装置において、前記充填時制御手段は、前記第2循環制御の実行後に、前記圧送手段の駆動によって液体が前記循環路を循環しながら前記封止手段による前記複数のノズルの封止が解除されるよう前記圧送手段と前記封止手段とを制御する封止解除制御を実行する手段である、ものとすることもできる。これらの場合、封止解除制御の実行により、ノズル内の気体を放出することができる。
【0014】
本発明の液体吐出装置の制御方法は、
液体を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドと、液体を貯留する貯留部と、前記吐出ヘッドを含んで構成され一方の開口端部と他方の開口端部とが共に前記貯留部内に配置された循環路と、前記循環路における前記吐出ヘッドより前記一方の開口端部側に設けられ液体が前記循環路を循環するよう液体を圧送可能な圧送手段と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、
前記吐出ヘッドに液体を充填する際、前記圧送手段の駆動によって前記循環路全体の体積以上の液体が前記一方の開口端部側から前記吐出ヘッドを経由して前記他方の開口端部側に循環するよう前記圧送手段を制御する第1循環制御を実行し、該第1循環制御の実行後に、前記圧送手段の駆動によって前記循環路全体の体積以上の液体が前記他方の開口端部側から前記吐出ヘッドを経由して前記一方の開口端部側に循環するよう前記圧送手段を制御する第2循環制御を実行する、
ことを特徴とする。
【0015】
この本発明の液体吐出装置の制御方法では、吐出ヘッドに液体を充填する際には、圧送手段の駆動によって循環路全体の体積以上の液体が一方の開口端部側から吐出ヘッドを経由して他方の開口端部側に循環する(以下、順方向に循環するという)よう圧送手段を制御する第1循環制御を実行し、第1循環制御の実行後に、圧送手段の駆動によって循環路全体の体積以上の液体が他方の開口端部側から吐出ヘッドを経由して一方の開口端部側に循環する(以下、逆方向に循環するという)よう圧送手段を制御する第2循環制御を実行する。したがって、循環路全体の体積以上の液体を循環路を順方向に循環させた後に循環路全体の体積以上の液体を循環路を逆方向に循環させるから、液体が循環路を順方向に循環する際に気体(気泡)が滞留しやすい位置を循環路が有する場合でも、循環路の液体をより確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】インクジェットプリンター20の構成の概略を示す構成図。
【図2】インク循環システム50の構成の概略を示す構成図。
【図3】キャッピング装置40の構成の概略を示す構成図。
【図4】複数のノズル23を封止する様子を示す説明図。
【図5】初期充填時制御ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図6】初期充填時制御ルーチンの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるインクジェットプリンター20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、インク循環システム50の構成の概略を示す構成図であり、図3は、キャッピング装置40の構成の概略を示す構成図である。
【0018】
本実施形態のインクジェットプリンター20は、図1に示すように、プラテン36上を搬送される用紙Pに印刷ヘッド24に形成された複数のノズル23からインク滴を吐出して印刷処理を行なうプリンター機構21と、プラテン36の右端付近に配置されて印刷ヘッド24の複数のノズル23をそれぞれ独立して封止可能なキャッピング装置40と、装置全体をコントロールするコントローラー90と、ユーザーに各種の情報を報知するための表示部98やユーザーが各種の指示を入力する操作部99を有する操作パネル97と、を備える。
【0019】
プリンター機構21は、駆動モーター33によって駆動されて用紙Pをプラテン36上に図中奥側から手前側に搬送する紙送りローラー35と、キャリッジベルト32に取り付けられてガイド28に沿って左右方向(主走査方向)に往復動するキャリッジ22と、このキャリッジ22の位置を検出するリニア式エンコーダー25と、キャリッジ22の下部に設けられて複数のノズル23が形成された印刷ヘッド24と、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)のインクをそれぞれ印刷ヘッド24を経由して循環させるインク循環システム50a〜50d(以下、まとめてインク循環システム50と称することがある)と、を備える。ここで、キャリッジ22は、メカフレーム39の右側に取り付けられたキャリッジモーター34aとメカフレーム39の左側に取り付けられた従動ローラー34bとの間に架設されたキャリッジベルト32に取り付けられ、キャリッジベルト32がキャリッジモーター34aによって駆動されることによってガイド46に沿って左右方向に往復動する。また、印刷ヘッド24は、内蔵する圧電素子に電圧を印加することによって圧電素子を変形させてインクを加圧する方式を用いるものとしてもよいし、発熱抵抗体(例えばヒーターなど)に電圧を印加することによってインクを加熱して発生した気泡によってインクを加圧する方式を用いるものとしてもよい。
【0020】
インク循環システム50は、図2に示すように、インクが貯留されているメインタンク52と、インクを一時的に貯留するサブタンク53と、一方の開口端部(以下、供給源口という)55がメインタンク52内に配置されると共に他方の開口端部(以下、供給口という)56がサブタンク53内に配置された供給路54と、供給路54に設けられて液体を圧送可能な供給ポンプ58と、印刷ヘッド24を含んで構成されて一方の開口端部(以下、往路口という)69と他方の開口端部(以下、復路口という)73とが共にサブタンク53内に配置された循環路60と、循環路60における印刷ヘッド24より往路口69側(以下、この部分を往路62という)に設けられて液体を圧送可能な循環ポンプ76と、循環路60における印刷ヘッド24より復路口73側(以下、この部分を復路64という)に設けられて開閉可能な開閉弁78と、サブタンク53が大気開放されるようにしたりサブタンク53を加圧したり可能な圧力調整装置80と、循環路60の往路口69と復路口73との少なくとも一方の重力方向の高さを調整可能な高さ調整装置82と、を備える。なお、サブタンク53や循環路60の往路口69および復路口73は、重力方向でみて印刷ヘッド24より低い位置に配置されている。
【0021】
供給ポンプ58は、ギヤポンプとして構成されており、所定方向(例えば時計回り)に回転する(以下、これを正転方向に回転するという)ことによってメインタンク52側からサブタンク53側にインクを圧送することができると共に、所定方向とは反対方向(例えば反時計回り)に回転する(以下、これを逆転方向に回転するという)ことによってサブタンク53側からメインタンク52側にインクを圧送することができるようになっている。
【0022】
循環ポンプ76は、供給ポンプ58と同様にギヤポンプとして構成されており、所定方向(例えば時計回り)に回転する(以下、これを正転方向に回転するという)ことによって往路口69側から印刷ヘッド24側にインクを圧送することができると共に、所定方向とは反対方向(例えば反時計回り)に回転する(以下、これを逆転方向に回転するという)ことによって印刷ヘッド24側から往路口69側にインクを圧送することができるようになっている。なお、この循環ポンプ76は、駆動停止時に循環路60を閉塞しないよう構成されている。
【0023】
キャッピング装置40は、図3に示すように、上方が開口した略直方体のキャップ42と、例えばゴムなどによって形成されてキャップ42の内部に配置されて印刷ヘッド24の複数のノズル23が形成された面(以下、ノズル形成面23aという)に当接可能な当接部材44と、キャップ42の底部と廃液タンク45とを接続する排出路46と、当接部材44とノズル形成面23aとの当接やその解除を行なうためにキャップ42を昇降させる昇降装置48と、を備える。このキャッピング装置40は、印刷ヘッド24がキャリッジ22と共にキャッピング装置40上の位置(いわゆるホームポジション)に移動したときに、当接部材44がノズル形成面23aに当接するよう昇降装置48によってキャップ42を上昇させることにより、全てのノズル23を封止できる(複数のノズル23をそれぞれ独立して封止できる)ようになっている。キャッピング装置40によって複数のノズル23を封止する様子を図4に示す。また、このキャッピング装置40では、ノズル形成面23aと当接部材44とが若干(数mmなど)離れてノズル形成面23aとキャップ42とによって閉空間が形成されている状態で複数のノズル23からインクが吐出された場合には、そのインクがキャップ42と当接部材44との隙間や排出路46を経由して廃液タンク45に排出される。
【0024】
コントローラー90は、図1に示すように、CPU92を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムを記憶したROM93と、一時的にデータを記憶するRAM94と、外部機器との情報のやり取りを行うインターフェース(I/F)95と、図示しない入出力ポートとを備える。RAM94には、印刷バッファー領域が設けられており、この印刷バッファー領域にユーザーPC100からI/F95を介して送られてきた印刷データが記憶される。コントローラー90には、リニア式エンコーダー25からの位置検出信号や、サブタンク53のインクの液面の位置(高さ)が所定位置Href以上の場合にオンすると共にサブタンク53のインクの液面の位置(高さ)が所定位置Hrefより低い場合にオフするフロートスイッチ59(図2参照)からのスイッチ信号,操作パネル97の操作部99からの操作信号などが入力ポートを介して入力される他、ユーザーPC100からの印刷ジョブなどがI/F95を介して入力される。ここで、所定位置Hrefは、本実施形態では、サブタンク53のインクの液面とノズル形成面23aとの高低差(水頭差)ΔHが所定値ΔH1となる位置、即ち、ノズル形成面23aより所定値ΔH1だけ低い位置とするものとした。所定値ΔH1は、サブタンク53が大気開放されている場合に、ノズル23内のインクに作用する圧力が、ノズル形成面23a側からノズル23に空気が侵入するのを抑止することができると共にノズル23からインクが漏れ出るのを抑止可能な圧力として定められた所定負圧(例えば、−1kPaや−0.8kPaなど)となるよう定められており、例えば、90mmや100mm,110mmなどとすることができる。コントローラー90からは、印刷ヘッド24への制御信号や、駆動モーター33やキャリッジモーター34への制御信号,キャッピング装置40の昇降装置48(図3参照)への制御信号,供給ポンプ58や循環ポンプ76,開閉弁78,圧力調整装置80(図2参照)への制御信号,操作パネル97の表示部98への表示制御信号などが出力ポートを介して出力される他、印刷ステータス情報などがI/F95を介してユーザーPC100に出力される。
【0025】
こうして構成された本実施形態のインクジェットプリンター20では、印刷ヘッド24の複数のノズル23からインク滴を吐出して用紙Pに印刷処理を行なう場合には、循環路60の往路口69が循環路60の復路口73や供給路54の供給口56より重力方向でみて低い位置となるよう高さ調整装置82を制御し、開閉弁78が開成された状態で供給ポンプ58および循環ポンプ76が共に正転方向に回転するよう供給ポンプ58と循環ポンプ76と開閉弁78とを制御することにより、メインタンク52のインクをサブタンク53に供給し、サブタンク53のインクを往路口69側から印刷ヘッド24に供給すると共にその一部を印刷ヘッド24を経由して復路口73側からサブタンク53に戻している。ここで、循環路60の往路口69が循環路60の復路口73や供給路54の供給口56より低い位置となるようにすることにより、印刷処理を行なうときに、空気(気泡)が往路口69から循環路60に侵入して印刷ヘッド24に到達するのを抑制している。これにより、印刷処理をより適正に行なうことができる。なお、サブタンク53内に発生する気泡としては、供給路54を経由してメインタンク52からサブタンク53に圧送されたインクに含まれる気泡や、循環路60の復路口73からサブタンク53に放出されるインクに含まれる気泡などがある。
【0026】
次に、こうして構成された本実施形態のインクジェットプリンター20の動作、特に、印刷ヘッド24にインクを充填する初期充填時の動作について説明する。図5は、コントローラー90により実行される初期充填時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、印刷ヘッド24へのインクの充填が指示されたときに実行される。なお、このルーチンの実行開始時には、本実施形態では、圧力調整装置80によってサブタンク53は大気開放されており、キャッピング装置40によって複数のノズル23が封止されており、開閉弁78は開成されており、高さ調整装置82によって循環路60の往路口69が復路口73より低い位置となるよう(復路口73が往路口69より高い位置となるよう)調整されているものとした。また、以下の説明では、循環ポンプ76の正転方向の駆動によってインクが循環路60を往路口69側から往路62,印刷ヘッド24,復路64を経由して復路口73側に循環することを順方向に循環するといい、循環ポンプ76の逆転方向の駆動によってインクが復路口73側から復路64,印刷ヘッド24,往路62を経由して往路口69側に循環することを逆方向に循環するという。
【0027】
初期充填時制御ルーチンが実行されると、コントローラー90は、まず、フロートスイッチ59からのフロートスイッチ信号FSWを入力すると共に(ステップS100)、入力したフロートスイッチ信号FSWを調べ(ステップS110)、フロートスイッチ信号FSWがオフの場合、即ち、サブタンク53のインクの液面の位置(高さ)が所定位置Hrefより低い場合には、循環ポンプ76が正転方向に回転するよう(メインタンク52側からサブタンク53側にインクが圧送されるよう)供給ポンプ58を制御して(ステップS120)、ステップS100に戻る。このステップS100〜S120の処理は、ノズル23内のインクに作用する圧力(負圧)を調整する処理である。
【0028】
ステップS110でフロートスイッチ信号FSWがオンの場合、即ち、サブタンク53のインクの液面の位置(高さ)が所定位置Href以上の場合には、比較的高い正転方向の回転数として定められた所定回転数N1で循環ポンプ76が回転するよう循環ポンプ76を制御する高速正転制御を所定時間t1に亘って実行する(ステップS130)。ここで、所定時間t1は、高速正転制御を実行したときに循環路60全体の体積以上のインクが循環路60を順方向に循環するのに要する時間として定められ、例えば、2分や3分,4分などとすることができる。こうした高速正転制御の実行により、インクを循環路60を順方向に循環させることができる。しかも、本実施形態では、キャッピング装置40によって複数のノズル23を封止した状態で高速正転制御を実行するから、高速正転制御の実行時に複数のノズル23からインクが放出される(漏れ出る)のを抑制することができる。さらに、本実施形態では、循環路60の往路口69を復路口73より低くした状態で高速正転制御を実行することにより、空気(気泡)が往路口69から循環路60に侵入するのを抑制することができる。なお、循環路60が、インクが循環路60を順方向に循環する際に空気(気泡)が滞留しやすい位置(例えば、循環路60の各部分の接合部など、以下、この位置を順方向滞留位置という)を有する場合には、高速正転制御の実行では順方向滞留位置などに空気が滞留することがある。
【0029】
こうして高速正転制御を所定時間t1に亘って実行すると、所定回転数N1より低い正転方向の回転数として定められた所定回転数N2で循環ポンプ76が回転するよう循環ポンプ76を制御する低速正転制御を所定時間t2に亘って実行する(ステップS140)。ここで、所定時間t2は、循環路60のインクの順方向の循環の安定などに要する時間として定められ、例えば、25秒や30秒,35秒などとすることができる。
【0030】
次に、循環路60の復路口73が往路口69より低い位置となるよう(往路口69が復路口73より高い位置となるよう)高さ調整装置82を制御し(ステップS150)、開閉弁78を閉成し(ステップS160)、比較的高い逆転方向の回転数として定められた所定回転数N3で循環ポンプ76が回転するよう循環ポンプ76を制御する高速逆転制御を所定時間t3に亘って実行し(ステップS170)、その後に、開閉弁78を開成して(ステップS180)、高速逆転制御を所定時間t4に亘って実行する(ステップS190)。ここで、所定時間t3は、循環路60内に空気がある場合にその空気を膨張させるのに要する時間として定められ、例えば、50秒や1分,1分10秒などとすることができる。また、所定時間t4は、高速逆転制御を実行したときに循環路60全体の体積のインクが循環路60を逆方向に循環するのに要する時間として定められ、上述の所定時間t1と同一の時間としてもよいし、異なる時間としてもよい。まず、開閉弁78を閉成した状態で高速逆転制御を実行することにより、循環路60における開閉弁78より往路口69側(以下、所定部分という)のインクが往路口69側に圧送されて所定部分の圧力が低下し、その部分に空気(気泡)がある場合には膨張する。そして、その後に、開閉弁78を開成した状態で高速逆転制御を実行することにより、膨張した空気が往路口69側に圧送されてサブタンク53に放出される。しかも、この場合、開閉弁78を開成した直後には、所定部分の圧力が低くインクの流速が高くなりやすいから、空気は往路口69側により圧送されやすい。このように開閉弁78の開閉を伴って高速逆転制御を実行することにより、循環路60内の空気を膨張させると共にインクの流速を高くしてより確実にサブタンク53に放出させることができる(除去することができる)。特に、循環路60が順方向滞留位置を有する形状などの場合、インクを循環路60を順方向に循環させている最中や循環させた後に短時間だけ逆方向に圧送するだけでは順方向滞留位置の空気を十分に除去できない可能性があるが、本実施形態では、循環路60全体の体積以上のインクを循環路60を順方向に循環させた後に循環路60全体の体積以上のインクを循環路60を逆方向に循環させるから、順方向滞留位置などのインクをより確実にサブタンク53に放出させることができる。また、本実施形態では、キャッピング装置40によって複数のノズル23を封止した状態で高速逆転制御を実行するから、高速逆転制御の実行時に複数のノズル23からインクが放出される(漏れ出る)のを抑制することができる。さらに、本実施形態では、循環路60の復路口73を往路口69より低くした状態で高速正転制御を実行することにより、空気(気泡)が復路口73から循環路60に侵入するのを抑制することができる。
【0031】
こうして高速逆転制御を所定時間t4に亘って実行すると、循環路60の往路口69が復路口73より低い位置となるよう高さ調整装置82を制御し(ステップS200)、ステップS140の処理と同様に、低速正転制御を所定時間t5に亘って実行する(ステップS210)。ここで、所定時間t5は、循環路60のインクの順方向の循環の安定などに要する時間として定められ、上述の所定時間t2と同一の時間(例えば、25秒や30秒,35秒など)としてもよいし、異なる時間としてもよい。
【0032】
次に、圧力調整装置80によってサブタンク53が加圧されるよう圧力調整装置80を制御する加圧制御の実行を開始し(ステップS220)、キャッピング装置40による複数のノズル23の封止が解除されるようキャッピング装置40を制御し(ステップS230)、その状態で所定時間t6が経過するのを待つ(ステップS240)。ここで、加圧制御は、ノズル23内のインクに作用する圧力が正圧(例えば、10kPaや12kPaなど)となるようサブタンク53を加圧する制御である。また、複数のノズル23の封止の解除は、ノズル形成面23aと当接部材44とが若干(数mmなど)離れてノズル形成面23aとキャップ42とによって閉空間が形成される状態とするものとした。このように加圧制御を実行しながら複数のノズル23の封止を解除すると、サブタンク53のインクが印刷ヘッド24側に流れ、複数のノズル23内に空気(気泡)がある場合にその空気と共に複数のノズル23から放出される。これにより、複数のノズル23内の空気をより確実に除去することができる。なお、複数のノズル23から吐出されたインクは、キャップ42と当接部材44との隙間や排出路46を経由して廃液タンク45に排出される。こうしたステップS220〜S240の処理により、複数のノズル23内の空気を十分に放出させることができる。所定時間t6は、複数のノズル23からの空気の放出に要する時間として定められ、例えば、3秒や5秒,7秒などとすることができる。
【0033】
こうして所定時間t6が経過すると、加圧制御の実行を終了してサブタンク53を大気開放された状態として(ステップS250)、所定時間t7が経過するのを待つ(ステップS260)。ここで、所定時間t7は、複数のノズル23内のインクのメニスカスが安定するまでに要する時間として定められ、例えば、8秒や10秒,12秒などとすることができる。
【0034】
そして、フロートスイッチ59からのフロートスイッチ信号FSWを入力すると共に(ステップ270)、入力したフロートスイッチ信号FSWを調べ(ステップS280)、フロートスイッチ信号FSWがオフの場合には、循環ポンプ76が正転方向に回転するよう(メインタンク52側からサブタンク53側にインクが圧送されるよう)供給ポンプ58を制御して(ステップS290)、ステップS270に戻る。一方、ステップS280でフロートスイッチ信号FSWがオンの場合には、キャッピング装置40によって複数のノズル23が封止されるようキャッピング装置40を制御して(ステップS300)、本ルーチンを終了する。
【0035】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の印刷ヘッド24が「吐出ヘッド」に相当し、サブタンク53が「貯留部」に相当し、循環路60が「循環路」に相当し、循環ポンプ76が「圧送手段」に相当し、図5の初期充填時制御ルーチンを実行するコントローラー90が「充填時制御手段」に相当する。なお、本実施形態では、液体吐出装置の動作を説明することにより本発明の液体吐出装置の制御方法の一例も明らかにしている。
【0036】
以上説明した本実施形態のインクジェットプリンター20によれば、印刷ヘッド24にインクを充填する際には、循環ポンプ76を制御して循環路60全体の体積以上のインクを往路口69側から印刷ヘッド24を経由して復路口73側に(順方向に)循環させると共にその後に循環ポンプ76を制御して循環路60全体の体積以上のインクを復路口73側から印刷ヘッド24を経由して往路口69側に(逆方向に)循環させるから、循環路60内の気体(気泡)をより確実にサブタンク53に放出させることができる。
【0037】
また、本実施形態のインクジェットプリンター20によれば、印刷ヘッド24にインクを充填する際には、インクを循環路60を順方向に循環させた後に、開閉弁78を閉成した状態で循環ポンプ76を制御してインクを循環路60を逆方向に圧送すると共にその後に開閉弁78を開成した状態で循環ポンプ76を制御してインクを循環路60を逆方向に循環させるから、循環路60内の空気を膨張させると共にインクの流速を高くして空気をサブタンク53に放出しやすくすることができる。
【0038】
さらに、本実施形態のインクジェットプリンター20によれば、印刷ヘッド24にインクを充填する際には、高さ調整装置82によって循環路60の往路口69を復路口73より低くした状態で循環ポンプ76を制御してインクを循環路60を順方向に循環させると共に、高さ調整装置82によって循環路60の復路口73を往路口69より低くした状態で循環ポンプ76を制御してインクを循環路60を逆方向に循環させるから、サブタンク53から循環路60に空気(気泡)が侵入するのを抑制することができる。
【0039】
加えて、本実施形態のインクジェットプリンター20によれば、キャッピング装置40によって複数のノズル23を封止した状態で高速正転制御や高速逆転制御を実行するから、これらの実行時に複数のノズル23からインクが放出される(漏れ出る)のを抑制することができる。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0041】
上述した実施形態では、印刷ヘッド24にインクを充填する初期充填時の動作について説明したが、印刷ヘッド24のクリーニングを行なう場合にも同様の動作を行なうものとしてもよい。この場合、例えば、所定時間t1や所定時間t4については50秒や1分,1分10秒などとし、所定時間t2や所定時間t5については8秒や10秒,12秒などとし、所定時間t3については25秒や30秒,35秒などとし、所定時間t6については3秒や5秒,7秒などとし、所定時間t7については8秒や10秒,12秒などとするものとしてもよい。なお、印刷ヘッド24のクリーニングを実行するタイミングとしては、メインタンク52やサブタンク53が交換されたときや、操作部99の操作によってクリーニングが指示されたときなどが考えられる。
【0042】
上述した実施形態では、キャッピング装置40によって複数のノズル23を封止した状態で高速正転制御や高速逆転制御を実行するものとしたが、複数のノズル23を封止せずに高速正転制御や高速逆転制御を実行するものとしてもよい。
【0043】
上述した実施形態では、所定時間t1に亘る高速正転制御を実行した後に、所定時間t2に亘る低速正転制御を実行するものとしたが、この低速正転制御を実行しないものとしてもよい。
【0044】
上述した実施形態では、高さ調整装置82によって循環路60の往路口69を復路口73より低くした状態で循環ポンプ76を制御してインクを循環路60を順方向に循環させると共に、高さ調整装置82によって循環路60の復路口73を往路口69より低くした状態で循環ポンプ76を制御してインクを循環路60を逆方向に循環させるものとしたが、インクを循環路60を順方向に循環させるか逆方向に循環させるかに拘わらず、循環路60の往路口69と復路口73とを略等しい高さとするものとしてもよい。この場合、往路口69と復路口73との位置関係を調整しなくても、インクが流れる方向に拘わらず、サブタンク53から循環路60に空気が侵入するのをある程度抑制することができる。なお、この場合、高さ調整装置82を備えないものとしてもよい。
【0045】
上述した実施形態では、開閉弁78を開成した状態での所定時間t4に亘る高速逆転制御を実行する前に、開閉弁78を閉成した状態での所定時間t3に亘る高速逆転制御を実行するものとしたが、開閉弁78を閉成した状態での所定時間t3に亘る高速逆転制御を実行しないものとしてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、開閉弁78を開成した状態での所定時間t4に亘る高速逆転制御を実行する前に、開閉弁78を閉成した状態での所定時間t3に亘る高速逆転制御を実行するものとしたが、これに加えて他の処理も実行するものとしてもよい。この場合の初期充填時制御ルーチンの一例の一部を図6に示す。このルーチンは、ステップS180の処理とステップS190の処理との間にステップS400〜S440の処理を追加し、ステップS440の処理でステップS150に戻る場合がある点を除いて、図5の初期充填時制御ルーチンと同一である。このルーチンでは、低速正転制御を所定時間t2に亘って実行すると(ステップS140)、高さ調整装置82によって循環路60の復路口73を往路口69より低い位置とする共に開閉弁78を閉成して高速逆転制御を所定時間t3に亘って実行し(ステップS150〜S170)、その後に、開閉弁78を開成して高速逆転制御を所定時間t31に亘って実行し(ステップS400,S410)、高さ調整装置82によって循環路60の往路口69を復路口73より低い位置として高速正転制御を所定時間t32に亘って実行し(ステップS420,S430)、初期値として値0が設定されるカウンタCをインクリメントして閾値Cref(例えば、値1や値2,値3など)と比較し(ステップS440,S450)、カウンタCが閾値Cref未満の場合にはステップS150に戻り、カウンタCが閾値Cref以上の場合にはステップS190以降の処理を実行する。ここで、所定時間t31や所定時間t32は、循環路60内に空気(気泡)がある場合にその空気を逆方向や順方向に移動させる時間であり、所定時間t4より短い時間として、例えば、25秒や30秒,35秒などとすることができる。このルーチンでは、開閉弁78を閉成した状態で所定時間t3に亘って高速逆転制御を実行することによって循環路60内の空気(気泡)を膨張させ、その後に、開閉弁78を開成した状態で所定時間t31に亘って高速逆転制御を実行したり所定時間t32に亘って高速正転制御を実行したりすることによって空気を循環路60内で逆方向や順方向に移動させるのである。これにより、循環路60内の空気をより除去しやすくすることができる。この変形例では、開閉弁78を開成した状態での所定時間t4に亘る高速逆転制御を実行する前に、開閉弁78を閉成した状態での所定時間t3に亘る高速逆転制御に加えて他の処理も実行するものとしたが、開閉弁78を閉成した状態での所定時間t3に亘る高速逆転制御に代えて他の処理を実行するものとしてもよい。この場合、図6の初期充填時制御ルーチンのステップS160〜S180の処理を実行しないもの、即ち、高速正転制御や低速正転制御を実行した後に、高速逆転制御を所定時間t31に亘って実行すると共に高速正転制御を所定時間t32に亘って実行し、カウンタCが閾値Cref以上の場合に所定時間t4に亘る高速逆転制御を実行するものとしてもよい。この場合でも、所定時間t31に亘って高速逆転制御を実行したり所定時間t32に亘って高速正転制御を実行したりすることにより、空気を循環路60内で逆方向や順方向に移動させて循環路60内の空気をより除去しやすくすることができる。
【0047】
上述した実施形態では、所定時間t4に亘る高速逆転制御を実行した後に、所定時間t5に亘る低速正転制御を実行するものとしたが、この低速正転制御を実行しないものとしてもよい。
【0048】
上述した実施形態では、高速正転制御や高速逆転制御などを実行した後に、圧力調整装置80によってサブタンク53を加圧しながらキャッピング装置40による複数のノズル23の封止を解除するものとしたが、高速正転制御や高速逆転制御などを実行した後に、循環ポンプ76を回転させてインクを循環路60を循環させながらキャッピング装置40による複数のノズル23の封止を解除するものとしてもよい。また、高速正転制御や高速逆転制御などを実行した後に、キャッピング装置40による複数のノズル23の封止を解除しないものとしてもよい。
【0049】
上述した実施形態では、加圧制御の実行を終了した後に所定時間t7が経過するのを待って必要に応じて供給ポンプ58を制御するものとしたが、加圧制御の実行を終了した後に所定時間t7が経過するのを待たずに必要に応じて供給ポンプ58を制御するものとしてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、加圧制御の実行を終了した後に必要に応じてメインタンク52からサブタンク53にインクを圧送するものとしたが、加圧制御の実行を終了した後にはメインタンク52からサブタンク53にインクを圧送しないものとしてもよい。
【0051】
上述した実施形態では、供給ポンプ58は、ギヤポンプを用いるものとしたが、チューブポンプなどを用いるものとしてもよい。循環ポンプ76についても同様に、チューブポンプなどを用いるものとしてもよい。
【0052】
上述した実施形態では、インク循環システム50は、メインタンク52とサブタンク53と供給路54と供給ポンプ58と循環路60と循環ポンプ76と開閉弁78と圧力調整装置80と高さ調整装置82とを備えるものとしたが、メインタンク52や供給路54,供給ポンプ58を備えないものとしてもよい。
【0053】
上述した実施形態では、一つの印刷ヘッド24を備えるインクジェットプリンター20について説明したが、複数の印刷ヘッドを備えるインクジェットプリンターに適用するものとしてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、本発明の液体吐出装置をインクジェットプリンター20に具体化した例を示したが、インク以外の他の液体や機能材料の粒子が分散されている液状体(分散液)、ジェルのような流状体などを吐出する流体吐出装置に具体化してもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を溶解した液体を吐出する液体吐出装置、同材料を分散した液状体を吐出する液状体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置としてもよい。また、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置、ジェルを吐出する流状体吐出装置としてもよい。
【0055】
上述した実施形態では、本発明の液体吐出装置をインクジェットプリンター20に適用して説明したが、これに限定されるものではなく、液体を吐出するノズルを有する吐出ヘッドを備える液体吐出装置の形態であればよく、例えば、ファクシミリ装置や複合機などの他の如何なるOA機器に適用するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
20 インクジェットプリンター、21 プリンター機構、22 キャリッジ、23 ノズル、23a ノズル形成面、24 印刷ヘッド、25 リニア式エンコーダー、28 ガイド、32 キャリッジベルト、33 駆動モーター、34 キャリッジモーター、35 紙送りローラー、36 プラテン、40 キャッピング装置、42 キャップ、44 当接部材、45 廃液タンク、46 排出路、48 昇降装置、50,50a〜50d インク循環システム、52 メインタンク、53 サブタンク、54 供給路、55 供給源口、56 供給口、57 インク検出センサー、58 供給ポンプ、60 循環路、62 往路、64 復路、69 往路口、73 復路口、76 循環ポンプ、78 開閉弁、80 圧力調整装置、82 高さ調整装置、90 コントローラー、92 CPU,93 ROM、94 RAM、95 インターフェース(I/F)、97 操作パネル、98 表示部、99 操作部、100 ユーザーPC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドを備える液体吐出装置であって、
液体を貯留する貯留部と、
前記吐出ヘッドを含んで構成され、一方の開口端部と他方の開口端部とが共に前記貯留部内に配置された循環路と、
前記循環路における前記吐出ヘッドより前記一方の開口端部側に設けられ、液体が前記循環路を循環するよう液体を圧送可能な圧送手段と、
前記吐出ヘッドに液体を充填する際、前記圧送手段の駆動によって前記循環路全体の体積以上の液体が前記一方の開口端部側から前記吐出ヘッドを経由して前記他方の開口端部側に循環するよう前記圧送手段を制御する第1循環制御を実行し、該第1循環制御の実行後に、前記圧送手段の駆動によって前記循環路全体の体積以上の液体が前記他方の開口端部側から前記吐出ヘッドを経由して前記一方の開口端部側に循環するよう前記圧送手段を制御する第2循環制御を実行する充填時制御手段と、
を備える液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体吐出装置であって、
前記循環路における前記吐出ヘッドより前記他方の開口端部側に設けられて開閉可能な開閉弁を備え、
前記充填時制御手段は、前記開閉弁が開成している状態で前記第1循環制御を実行した後に、前記開閉弁が閉成されるよう該開閉弁を制御し、前記圧送手段の駆動によって前記循環路のうち前記開閉弁より前記一方の開口端部側である所定部分の液体が該一方の開口端部側に圧送されるよう前記圧送手段を制御し、前記開閉弁が開成されるよう該開閉弁を制御してから前記第2循環制御を実行する手段である、
液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2記載の液体吐出装置であって、
前記充填時制御手段は、前記第1循環制御の実行後で且つ前記開閉弁を開成した後に、前記第2循環制御の実行時間より短い時間に亘って前記圧送手段の駆動によって液体が前記他方の開口端部側から前記一方の開口端部側に圧送されるよう前記圧送手段を制御する短時間第1制御と、該短時間第1制御の実行後に前記第2循環制御の実行時間より短い時間に亘って前記圧送手段の駆動によって液体が前記一方の開口端部側から前記他方の開口端部側に圧送されるよう前記圧送手段を制御する短時間第2制御と、を所定回数ずつ実行してから前記第2循環制御を実行する手段である、
液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1記載の液体吐出装置であって、
前記充填時制御手段は、前記第1循環制御を実行した後に、前記第2循環制御の実行時間より短い時間に亘って前記圧送手段の駆動によって液体が前記他方の開口端部側から前記一方の開口端部側に圧送されるよう前記圧送手段を制御する短時間第1制御と、該短時間第1制御の実行後に前記第2循環制御の実行時間より短い時間に亘って前記圧送手段の駆動によって液体が前記一方の開口端部側から前記他方の開口端部側に圧送されるよう前記圧送手段を制御する短時間第2制御と、を所定回数ずつ実行してから前記第2循環制御を実行する手段である、
液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記循環路の前記一方の開口端部と前記他方の開口端部とのうち少なくとも一方の重力方向の高さを調整可能な高さ調整手段を備え、
前記充填時制御手段は、液体を前記一方の開口端部側から前記他方の開口端部側に循環させる際には前記一方の開口端部が前記他方の開口端部より低くなるよう前記高さ調整手段を制御し、液体を前記他方の開口端部側から前記一方の開口端部側に循環させる際には、前記他方の開口端部が前記一方の開口端部より低くなるよう前記高さ調整手段を制御する手段である、
液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記循環路は、前記一方の開口端部と前記他方の開口端部との重力方向の高さが同一となるよう形成されてなる、
液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つの請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記複数のノズルをそれぞれ独立して封止可能な封止手段を備え、
前記充填時制御手段は、前記封止手段によって前記複数のノズルがそれぞれ独立して封止された状態で少なくとも前記第1循環制御および前記第2循環制御を実行する手段である、
液体吐出装置。
【請求項8】
液体を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドと、液体を貯留する貯留部と、前記吐出ヘッドを含んで構成され一方の開口端部と他方の開口端部とが共に前記貯留部内に配置された循環路と、前記循環路における前記吐出ヘッドより前記一方の開口端部側に設けられ液体が前記循環路を循環するよう液体を圧送可能な圧送手段と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、
前記吐出ヘッドに液体を充填する際、前記圧送手段の駆動によって前記循環路全体の体積以上の液体が前記一方の開口端部側から前記吐出ヘッドを経由して前記他方の開口端部側に循環するよう前記圧送手段を制御する第1循環制御を実行し、該第1循環制御の実行後に、前記圧送手段の駆動によって前記循環路全体の体積以上の液体が前記他方の開口端部側から前記吐出ヘッドを経由して前記一方の開口端部側に循環するよう前記圧送手段を制御する第2循環制御を実行する、
ことを特徴とする液体吐出装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−183695(P2012−183695A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47524(P2011−47524)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】