説明

液体吐出装置及びその制御プログラム

【課題】印刷速度が速くなった場合でも電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方の調整を適正に行うようにする。
【解決手段】インクジェットプリンタ10は、第1ギャップG1にノズル面20aが対向しているときに、インク吐出ヘッド14aに入力する電圧波形を変更するヘッド入力変更手段と、第2ギャップG2にノズル面20aが対向しているときに、インク吐出ヘッド14aの第1実温度を測定する温度センサ90と、第1実温度と、第1ギャップG1と第2ギャップG2との間に位置する用紙Pに対して吐出されるインクの吐出履歴とに基づいて、第1ギャップG1にノズル面20aが対向しているときのインク吐出ヘッド14aの第1推定温度を算出する第1推定温度算出手段とを備え、ヘッド入力変更手段は、第1推定温度に基づいて電圧波形を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出させるための電圧波形が入力される液体吐出ヘッドを備える、液体吐出装置及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電圧波形が入力されて駆動される液体吐出ヘッドを備える印刷装置では、液体吐出ヘッドの駆動履歴などによりヘッド温度が変化すると、同じ電圧波形を入力したとしても吐出される液体の量が変化して印刷濃度が変動する。そのため、ヘッド温度の変化に伴って入力する電圧波形の電圧値(すなわち駆動電圧)を適宜調整することが望ましい。しかし、記録媒体への印刷中に駆動電圧を調整すると、印刷濃度が印刷の途中で変わるため、画質が劣化する。そこで、特許文献1に記載された画像形成装置では、記録ヘッドの温度を常時検出し、記録媒体間の媒体ギャップに記録ヘッドの記録領域が対向しているときに、検出されたヘッド温度に基づいて記録ヘッドの駆動電圧を変更するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−262668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された画像形成装置では、記録ヘッドの温度を常時検出し、記録媒体間の媒体ギャップに記録ヘッドの記録領域が対向している短時間の間に、検出された最新のヘッド温度に基づいてヘッドに入力する駆動電圧を調整していた。したがって、画像形成速度が速い場合には、この時間がさらに短くなり、ヘッドの駆動電圧の調整が間に合わなくなるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、印刷速度が速くなった場合でも液体吐出ヘッドに入力する電圧波形の調整を適正に行うことができる、液体吐出装置及びその制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出するノズルが設けられたノズル面を有し、前記ノズルから液体を吐出させるための電圧波形が入力される液体吐出ヘッドと、複数の記録媒体を前記ノズル面と対向する吐出領域に通過させるように搬送方向に連続して搬送する記録媒体搬送手段と、前記記録媒体搬送手段により搬送される前記複数の記録媒体の相互間に生じる複数のギャップのうち第1ギャップに前記ノズル面が対向しているときに、前記液体吐出ヘッドに入力する前記電圧波形を変更するヘッド入力変更手段と、前記第1ギャップよりも前記搬送方向下流側に位置する第2ギャップに前記ノズル面が対向しているときに前記液体吐出ヘッドの第1実温度を測定する第1ヘッド温度測定手段と、前記第1実温度と、前記第1ギャップと前記第2ギャップとの間に位置する記録媒体に対して吐出される液体の吐出履歴とに基づいて、前記第1ギャップに前記ノズル面が対向しているときの前記液体吐出ヘッドの第1推定温度を算出する第1推定温度算出手段とを備え、前記ヘッド入力変更手段は、前記第1推定温度に基づいて前記電圧波形を変更する。
【0007】
この構成では、第1ギャップにノズル面が対向しているときの液体吐出ヘッドの第1推定温度を算出し、第1ギャップにノズル面が対向しているときに、第1推定温度に基づいて電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方を変更するようにしている。したがって、第1ギャップにノズル面が対向しているときに、温度計測や温度取得をする必要がなく、電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方を時間的な余裕を持って変更することができる。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置の制御プログラムは、上記液体吐出装置における少なくともヘッド入力変更手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記の構成によって、印刷速度が速くなった場合でも、液体吐出ヘッドに入力する電圧波形の調整を適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係るインクジェットプリンタ(液体吐出装置)の構成を示す概念図である。
【図2】インクジェットプリンタに用いられるインク吐出ヘッド(液体吐出ヘッド)のヘッド本体を示す平面図である。
【図3】インク吐出ヘッドのヘッド本体を示す部分拡大断面図である。
【図4】インクジェットプリンタに用いられる制御部(ヘッド入力変更手段)の構成を示すブロック図である。
【図5】複数の用紙(記録媒体)の相互間に生じるギャップとインク吐出ヘッドとの位置関係を模式的に示す正面図である。
【図6】制御部(コンピュータ)の制御動作を示すフロー図である。
【図7】第2実施形態に係るインクジェットプリンタ(液体吐出装置)における制御部(コンピュータ)の制御動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る液体吐出装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明に係る「液体吐出装置」をインクジェットプリンタに適用したものであり、「液体」としてインクを用いており、「液体吐出ヘッド」としてインク吐出ヘッドを用いている。また、「記録媒体」として用紙を用いており、「記録媒体搬送手段」として用紙搬送機構を用いている。
(第1実施形態)
[インクジェットプリンタの全体構成]
【0012】
図1は、第1実施形態に係るインクジェットプリンタ10の構成を示す概念図である。図2は、インクジェットプリンタ10に用いられるインク吐出ヘッド14aのヘッド本体72を示す平面図であり、図3は、インク吐出ヘッド14aのヘッド本体72を示す部分拡大断面図である。図4は、インクジェットプリンタ10に用いられる制御部24の構成を示すブロック図であり、図5は、複数の用紙Pの相互間に生じるギャップG1〜G3とインク吐出ヘッド14aとの位置関係を模式的に示す正面図である。
【0013】
図1に示すように、インクジェットプリンタ10は、略直方体状の筐体12と、4色(マゼンタ、シアン、イエロー、ブラック)のインクのそれぞれを吐出する4つのインク吐出ヘッド14a〜14dと、4色のインクのそれぞれを個別に収容する4つのインクタンク16a〜16dとを備えている。また、インクジェットプリンタ10は、用紙Pを収容する用紙カセット18と、用紙Pを搬送する用紙搬送機構22と、各種の制御動作を実行する制御部24とを備えている。
【0014】
図1に示すように、筐体12は、その内部に各種の機器を収容する空間Sを有しており、筐体12の上面には、筐体12の外部に排出された用紙Pを受ける排紙部12aが設けられている。そして、空間Sの底部にインクタンク16a〜16dが着脱自在に配置されており、空間Sの底部におけるインクタンク16a〜16dの上方に用紙カセット18が着脱自在に配置されている。また、空間Sの上部にインク吐出ヘッド14a〜14d及び制御部24が配置されており、空間Sの上下方向中央部及び上部に用紙搬送機構22が配置されている。さらに、空間Sの上部におけるインク吐出ヘッド14a〜14dの近傍には、環境温度Tを測定する環境温度センサ25が配置されている。
【0015】
インク吐出ヘッド14a〜14dのそれぞれは、インクを吐出する複数のノズル20(図3)が設けられたノズル面20aを有しており、インク吐出ヘッド14a〜14dのそれぞれにおける複数のノズル20(図3)と対向する領域、すなわちノズル面20aと対向する領域が、用紙Pに対するインクの吐出が行われる吐出領域Q1〜Q4となっている。本実施形態では、4つの吐出領域Q1〜Q4が水平方向に並んで配置されており、用紙搬送機構22は、複数の用紙Pを、吐出領域Q1〜Q4に通過させるように搬送方向に連続して搬送するように構成されている。
[用紙搬送機構の構成]
【0016】
図1に示すように、用紙搬送機構22は、用紙Pを吐出領域Q1〜Q4に通過させるように搬送する搬送ユニット28と、搬送ユニット28の搬送方向上流側に設けられ、用紙カセット18に収容された用紙Pを搬送ユニット28に供給する給紙ユニット30と、搬送ユニット28の搬送方向下流側に設けられ、吐出領域Q1〜Q4を通過した用紙Pを排紙部12aに排出する排紙ユニット32と、吐出領域Q1〜Q4のそれぞれの上流側の端縁又はその近傍にインク吐出ヘッド14a〜14dのそれぞれに近接して配置され、用紙Pを検知する用紙センサ33a〜33dとを有している。
【0017】
搬送ユニット28は、一対のベルトローラ34,36と、ベルトローラ34,36間に掛け渡された環状の搬送ベルト38と、搬送ベルト38に押し当てられたテンションローラ40と、搬送ベルト38の上側に位置する部分を水平に支持するプラテン42とを有している。そして、一方のベルトローラ34の回転軸34aには、ギアユニット44を介してモータ46の回転軸46aが接続されている。
【0018】
給紙ユニット30は、用紙Pの給紙路R1を構成するガイド48と、ガイド48の上流側の端部に近接して設けられ、用紙カセット18に収容された用紙Pを給紙路R1に送り出す給紙ローラ50と、給紙路R1の途中に設けられた一対の送りローラ52a,52bと、ガイド48の下流側の端部に近接して設けられ、用紙Pを搬送ベルト38の表面38aに押し付けるニップローラ54とを有している。そして、給紙ローラ50の回転軸50aには、モータ55の回転軸(図示省略)が接続されている。
【0019】
排紙ユニット32は、排紙路R2を構成するガイド56と、排紙路R2の上流側の端部に近接して設けられ、搬送ベルト38の表面38aから用紙Pを剥離する剥離プレート58と、排紙路R2の途中に設けられた一対の送りローラ60a,60bと、ガイド56の下流側の端部に近接して設けられ、ガイド56から用紙Pを排出する一対の排紙ローラ62a,62bとを有している。
【0020】
搬送ユニット28(図1)のモータ46及び給紙ユニット30(図1)のモータ55は、高精度の位置制御が可能なステッピングモータ又はサーボモータ等であり、図4に示すように、これらのモータ46,55が制御部24に対して電気的に接続されている。したがって、制御部24で搬送ユニット28のモータ46を制御することによって、用紙Pの搬送速度V(図5)を適宜変更することが可能であり、また、制御部24で給紙ユニット30のモータ55を制御することによって、用紙P間の間隔W1〜W3(図5)を適宜変更することができる。
【0021】
用紙センサ33a〜33dのそれぞれは、用紙Pを無接触で検知するセンサであり、図4に示すように、制御部24に対して電気的に接続されている。したがって、ギャップG1〜G3(図5)にノズル面20aが対向しているときに、用紙センサ33a〜33dの出力と用紙Pの搬送速度V(図5)とタイマ(図示省略)が計測する時間とに基づいて、用紙P間の間隔W1〜W3(図5)を正確に測定することができる。なお、「ギャップ」とは、用紙P間における印刷が行われない領域を意味し、本実施形態では、用紙P間における用紙Pが存在しない領域が「ギャップ」となっている。
[インク吐出ヘッドの構成]
【0022】
図1に示すように、インク吐出ヘッド14a〜14dのそれぞれは、用紙搬送機構22で搬送される用紙Pに対して、吐出領域Q1〜Q4のそれぞれにおいてインクを吐出するものであり、用紙Pの搬送方向(以下、「副走査方向」という。)に対して直交する方向(以下、「主走査方向」という。)に長尺な略直方体状のヘッドホルダ70と、ヘッドホルダ70の下面に装着されたヘッド本体72とを有している。つまり、本実施形態のインクジェットプリンタ10はライン式のプリンタである。なお、本実施形態では、インク吐出ヘッド14a〜14dの全てが同様に構成されているので、以下では、インク吐出ヘッド14aについてのみ説明し、他のインク吐出ヘッド14b〜14dの説明は省略する。
【0023】
図3に示すように、インク吐出ヘッド14aのヘッド本体72は、流路ユニット74と、その上面に接合された複数(本実施形態では8つ)のアクチュエータユニット76とを有している。流路ユニット74は、複数の金属製プレートからなる積層体であり、最下層を構成するノズルプレート74aの下面が、複数のノズル20が設けられたノズル面20aとなっている。また、図3に示すように、流路ユニット74の内部には、マニホールド80(図2)と、マニホールド80に連通する副マニホールド82と、副マニホールド82からアパーチャ84及び圧力室86を経てノズル20に至る複数の個別インク流路88とが形成されており、図2に示すように、流路ユニット74の上面74bには、マニホールド80に連通する複数のインク供給口80aが形成されている。
【0024】
そして、図示していないが、ヘッドホルダ70(図1)の内部におけるヘッド本体72(図1)の上方には、インクを貯留するリザーブユニットが配置されており、このリザーブユニットがチューブ及びポンプ89a(図4)を介してインクタンク16a(図1)に接続されている。図4に示すように、ポンプ89aは、制御部24に対して電気的に接続されており、制御部24でポンプ89aが制御されることによって、インクタンク16a(図1)に貯留されたインクが所定のタイミングでインク吐出ヘッド14aのリザーブタンクに補給される。なお、図4に示した他のポンプ89b〜89dは、インク吐出ヘッド14b〜14dのそれぞれに対応するものである。
【0025】
図2に示すように、複数(本実施形態では8つ)のアクチュエータユニット76のそれぞれは、平面視形状が略台形となるように形成されており、互いに隣接するアクチュエータユニット76どうしは、上底及び下底が互いに逆方向に位置するように、主走査方向に並べて配置されている。そして、複数のアクチュエータユニット76のそれぞれの近傍に位置する部分、又は、アクチュエータユニット76の一部(本実施形態では流路ユニット74の上面74b)には、アクチュエータユニット76の温度を検出する「ヘッド温度測定手段」としての温度センサ90が設けられており、これらの温度センサ90が制御部24に対して電気的に接続されている。したがって、制御部24は、温度センサ90の出力に基づいて、インク吐出ヘッド14aの温度をアクチュエータユニット76ごとに把握することができる。なお、アクチュエータユニット76と温度センサ90とは、必ずしも1対1で対応している必要はなく、複数のアクチュエータユニット76に対して共通の1つの温度センサ90を対応させてもよい。
【0026】
図3に示すように、複数のアクチュエータユニット76のそれぞれは、複数の個別インク流路88の圧力室86に対応する複数のアクチュエータ77(図3中に格子線で示す。)を有しており、複数のアクチュエータ77のそれぞれは、圧電層77aと、これを挟むように配置された電極77b,77cとを有している。そして、ドライバICを搭載したフレキシブルプリント配線基板(Flexible Printed Circuit:FPC)の一方端部が、複数のアクチュエータ77のそれぞれの電極77b,77cに対して電気的に接続されており、当該FPCの他方端部が、制御部24(図1)に対して電気的に接続されている。本実施形態では、全てのアクチュエータユニット76のアクチュエータ77が、共通のFPCを介して制御部24(図1)に対して電気的に接続されている。
【0027】
ドライバIC(図示省略)では、制御部24(図1)から与えられた信号に基づいて、所定の電圧値及び波形の電圧波形が生成され、アクチュエータユニット76では、当該電圧波形に基づいてノズル20からインクを吐出させるようにアクチュエータ77が駆動される。したがって、アクチュエータユニット76においては、ドライバIC(図示省略)で発生した熱が伝達されることによって、或いは、アクチュエータ77が物理的に変形されることによって温度変化が生じ、この温度変化によってノズル20(図3)から吐出されるインクの吐出特性が変動する場合がある。例えば、用紙Pに対するインク吐出量が多くなると、アクチュエータ77が変形される頻度が高くなるとともに、ドライバICの発熱量が多くなるので、アクチュエータユニット76の温度が上昇し、インク吐出量が必要以上に多くなる場合がある。一方、用紙Pに対するインク吐出量が少なく(ゼロを含む。)なると、アクチュエータ77が変形される頻度が低くなる(ゼロを含む。)とともに、ドライバICの発熱量が少なくなるので、環境温度Tがインク吐出ヘッド14aより低い場合には、アクチュエータユニット76の温度が低下し、インク吐出量が必要以上に少なくなる場合がある。
【0028】
そこで、本実施形態では、インク吐出量が必要以上に変動するのを抑制するように、インク吐出ヘッド14a〜14dに入力される電圧波形の電圧値及び波形(パルス幅等)の少なくとも一方が制御部24によって変更される。
[制御部の構成]
【0029】
制御部24(図1)は、図示しないCPU(タイマを含む。)と、CPUが実行する制御プログラムや各種のデータを書き替え可能に記憶する不揮発メモリと、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAMとを有するコンピュータである。そして、図4に示すように、CPUにより実行される制御プログラムと不揮発メモリ又はRAMにより、画像データ記憶部92、ヘッド制御部94、搬送制御部96、液体移送制御部98、吐出履歴記憶部100、温度情報処理部102、第1推定温度算出部104、ヘッド入力変更部106、第2推定温度算出部108及び推定温度補正部110が実現される。
【0030】
画像データ記憶部92は、パーソナルコンピュータ等から送信されてきた画像データを記憶するものである。一般的に、画像データは、用紙Pの印刷領域に対応するマトリクス配置された各画素について、対応する色の濃度値を有している。そして、画像データ記憶部92に記憶された後に、インク吐出ヘッド14a〜14dに対応するデータに変換される。具体的には、各画素について、ノズル20(図3)から吐出させるインクの量を、ゼロ、小滴、中滴、大滴の4段階で示す吐出量データに変換される。
【0031】
ヘッド制御部94は、吐出量データに応じた所定量のインクが各画素に対応する用紙Pの位置に吐出されるように、インク吐出ヘッド14a〜14d(図1)に入力する電圧波形の電圧値及び波形を制御するものである。例えば、ヘッド制御部94は、吐出量データから読み取ったインク吐出量(ゼロ、小滴、中滴、大滴)が多くなるほど大きくするように電圧値を制御する。或いは、インク吐出ヘッド14a〜14d内に設けられたドライバICが、ヘッド制御部94から送信された制御信号に基づいて、吐出量データから読み取ったインク吐出量(ゼロ、小滴、中滴、大滴)に対応した電圧波形を生成する。なお、ヘッド制御部94は、電圧波形の電圧値及び波形のいずれか一方を制御するだけでなく、これらの両方を同時に制御してもよい。なお、ここでの電圧波形(電圧値及び波形)の制御は、通常の印刷動作に必要な一般的な制御である。
【0032】
搬送制御部96は、用紙Pを吐出領域Q1〜Q4(図1)に所定のタイミングで搬送するとともに、用紙Pの搬送速度V(図5)及び用紙P間の間隔W1〜W3(図5)を適宜変更するように、搬送ユニット28(図1)のモータ46及び給紙ユニット30(図1)のモータ55を制御するものである。液体移送制御部98は、インク吐出ヘッド14a〜14dのリザーブユニットに対してインクを補給するように、ポンプ89a〜89dの動作を制御するものである。吐出履歴記憶部100は、インク吐出ヘッド14a〜14dの「吐出履歴」を記憶するものである。ここで、「吐出履歴」は、インク吐出ヘッド14a〜14dにおけるインクの吐出条件に関する履歴であり、具体的には、インク吐出ヘッド14a〜14dから吐出されるインク吐出量や、インク吐出ヘッド14a〜14dにおけるインクのドットカウント数が「吐出履歴」となる。なお、「吐出履歴」は、画像データ記憶部92に記憶された画像データ(吐出量データ)に基づいて生成される。
【0033】
温度情報処理部102は、環境温度センサ25及び複数の温度センサ90のそれぞれから出力された信号から温度情報を取得するものである。第1推定温度算出部104は、第1ギャップG1にノズル面20aが対向しているときのインク吐出ヘッド14a〜14dの第1推定温度tを算出する「第1推定温度算出手段」として機能するものである。第1推定温度算出部104は、第2ギャップG2(図5)にノズル面20aが対向しているときに温度情報処理部102が取得したインク吐出ヘッド14a〜14dの第1実温度Tと、第1ギャップG1と第2ギャップG2との間に位置する用紙Pに対して吐出されるインクの吐出履歴(インク吐出量等)とに基づいて、第1ギャップG1にノズル面20aが対向しているときのインク吐出ヘッド14a〜14dの第1推定温度tを算出する。
【0034】
例えば、図5に示すように、インク吐出ヘッド14aにおける1つのアクチュエータユニット76に着目し、第1ギャップG1と第2ギャップG2との間に位置する用紙Pに対して吐出されるインク吐出量を「吐出履歴」として用いると、第1ギャップG1にノズル面20aが対向しているときのインク吐出ヘッド14aの第1推定温度tは、このインク吐出量が多くなるに連れて、第1実温度Tよりも第1推定温度tの値が大きくなる。そこで、第1推定温度算出部104は、第1推定温度tと第1実温度Tとの温度差をインク吐出量が多くなるに連れて大きくするように、第1推定温度tを第1実温度Tよりも高くなるように算出する。また、第2ギャップG2よりも搬送方向下流側に位置する第3ギャップG3と第2ギャップG2との間における温度上昇量が大きくなるに連れて、第2ギャップG2と第1ギャップG1との間における温度上昇量も大きくなると考えられる。そこで、第1推定温度算出部104は、第3ギャップG3と第2ギャップG2との間における温度上昇量が大きくなるに連れて高くするように第1推定温度tを算出する。これにより、第1推定温度tをノズル面20aが第1ギャップG1に対向しているときに測定したインク吐出ヘッド14aの実際の温度(実温度T)に近づけることができる。
【0035】
また、インク吐出ヘッド14a〜14dの第1実温度Tは環境温度Tにも影響を受けるので、第1推定温度算出部104は、環境温度Tが第1実温度Tよりも高く、且つ、その差が大きくなるに連れて第1推定温度tが大きくなるように値を補正する。逆に、第1推定温度算出部104は、環境温度Tが第1実温度Tよりも低く、且つ、その差が大きくなるに連れて、第1推定温度tが小さくなるように値を補正する。第1実温度T、インク吐出量及び環境温度Tの組み合わせと第1推定温度tの値とは、あらかじめ実験データあるいは計算式として不揮発メモリに記憶されており、第1推定温度tの算出に用いられる。
【0036】
ヘッド入力変更部106は、「記録媒体搬送手段」としての用紙搬送機構22により搬送される複数の用紙Pの相互間に生じる複数のギャップG1〜G3のうち第1ギャップG1にノズル面20aが対向しているときに、インク吐出ヘッド14a〜14dに入力する電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方を、第1推定温度tに基づいて変更する「ヘッド入力変更手段」として機能するものである。インク吐出ヘッド14a〜14dにおいては、第1推定温度tが高くなるに連れて、インク吐出量が必要以上に多くなると考えられる。また、環境温度Tがインク吐出ヘッド14a〜14dの温度より低い場合には、第1推定温度tが低くなるに連れて、インク吐出量が必要以上に少なくなると考えられる。そこで、ヘッド入力変更部106は、第1推定温度tが高くなるに連れて小さくするように電圧波形の電圧値を制御し、第1推定温度tが低くなるに連れて大きくするように電圧波形の電圧値を制御する。或いは、ヘッド入力変更部106は、第1推定温度tが高くなるに連れてインク吐出量が少なくなる電圧波形を生成し、又は、インク吐出量が少なくなる電圧波形を不揮発メモリに格納された電圧波形から選択する。また、第1推定温度tが低くなるに連れてインク吐出量が多くなる電圧波形を生成し、又は、インク吐出量が多くなる電圧波形を不揮発メモリに格納された電圧波形から選択する。なお、インク吐出量が少なく又は多くなる電圧波形とは、第1実温度T(基準温度)における電圧波形と比較してインク吐出量が少なく又は多くなる電圧波形の意味である。これにより、実際に吐出されるインク吐出量は、温度によらずほぼ一定となり、インク吐出量の過剰な変動を抑制して、印刷濃度の変動を抑制することができる。電圧値及び波形のいずれを制御するかは、適宜変更可能であり、これらのいずれか一方だけを制御してもよいし、両方を制御してもよい。
【0037】
また、ヘッド入力変更部106は、第1ギャップG1にノズル面20aが対向している状態の持続時間(以下、「対向時間」という。)を検出(算出)する「対向時間検出手段」として機能する。画像データ記憶部92に記憶された画像データ又はインクジェットプリンタ10の初期値として、用紙Pの間隔W1〜W3が決められており、間隔W1〜W3は、通常は一定値となっている。ヘッド入力変更部106は、画像データ記憶部92に記憶された画像データ又は、インクジェットプリンタ10の初期値及び用紙Pの搬送速度V(図5)に基づいて対向時間を検出(算出)する。
【0038】
なお、本実施形態では、複数のアクチュエータユニット76のそれぞれに対応して「第1ヘッド温度測定手段」としての温度センサ90が設けられているので、第1推定温度算出部104は、複数のアクチュエータユニット76のそれぞれについて第1推定温度tを算出し、ヘッド入力変更部106は、複数のアクチュエータユニット76のそれぞれについて電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方を制御する。
【0039】
通常の印刷動作では、上記の通り、第1推定温度算出部104において第1推定温度tが算出されるが、電圧値及び波形をより適切に調整するためには、第1推定温度tと実温度Tとの差に応じて第1推定温度tを実温度Tに近づけるように補正することが望ましい。そこで、「推定温度補正手段」としての推定温度補正部110は、第1推定温度tを実温度Tに近づくように補正する。つまり、「第2ヘッド温度測定手段」としての温度センサ90は、第2ギャップG2よりも搬送方向下流側に位置する第4ギャップG4(本実施形態では第3ギャップG3と同じ。)にノズル面20aが対向しているときにインク吐出ヘッド14aの第2実温度Tを測定する。また、「第2推定温度算出手段」としての第2推定温度算出部108(図4)は、第2実温度Tと、第2ギャップG2と第4ギャップG4との間に位置する用紙Pに対して吐出されるインクの吐出履歴(インク吐出量等)とに基づいて、第2ギャップG2にノズル面20aが対向しているときの液体吐出ヘッド14aの第2推定温度t2を算出する。そして、「推定温度補正手段」としての推定温度補正部110は、第2推定温度tと第2実温度Tとの差に基づいて、第1推定温度算出部104で算出された第1推定温度tを補正する。例えば、第2推定温度tが第2実温度Tに比べて高い場合には、第1推定温度tも第1実温度Tに比べて同程度に高くなると考えられるので、「推定温度補正手段」としての推定温度補正部110は、第1推定温度tを第1推定温度算出部104で算出された値よりも高くなるように補正する。なお、インク吐出量が大きく変わる場合には、インク吐出量の変動をも考慮して第1推定温度tを補正する。
[制御部の制御動作]
【0040】
以下には、図5に示す1つのインク吐出ヘッド14aに対する制御部(コンピュータ)24の制御動作を、図6のフロー図に従って説明する。図6に示すように、ステップS1では、「対向時間検出手段」としてのヘッド入力変更部106で検出された対向時間が、インク吐出ヘッド14aの実温度Tを測定する時間及び電圧波形(電圧値及び波形の少なくとも一方)を変更するのに必要な時間(以下、「必要時間」という。)に満たないか否かが判断され、対向時間が必要時間に満たないときには「YES」と判断され、対向時間が必要時間以上のときには「NO」と判断される。
【0041】
そして、ステップS1において「YES」と判断されると、ステップS3において第2ギャップG2にノズル面20aが対向しているときのインク吐出ヘッド14aの第1実温度Tが測定され、ステップS5において第1ギャップG1にノズル面20aが対向しているときのインク吐出ヘッド14aの第1推定温度tが算出される。その後、ステップS7において第1実温度Tと第1推定温度tとの差が第1所定値以上であるか否かが判断され、「YES」と判断されると、ステップS9において電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方が変更された後、ステップS11に進む。一方、「NO」と判断されると、そのままステップS11に進む。ステップS11では、制御動作を終了するか否かが判断され、連続して用紙Pに印刷動作が継続する場合は「NO」と判断されてステップS1に戻り、印刷動作が完了する場合は「YES」と判断されて制御動作が終了される。
【0042】
ステップS1において「NO」と判断されると、ステップS13において第1実温度Tが測定され、ステップS15において実温度Tが測定される。実温度Tは、ノズル面20aが第1ギャップG1に対向しているときに測定したインク吐出ヘッド14aの実際の温度であり、温度センサ90で直接検出される。その後、ステップS17において第1実温度Tと実温度Tとの差が第2所定値以上であるか否かが判断され、「YES」と判断されるとステップS9に進み、「NO」と判断されるとステップS11に進む。
【0043】
このように、「ヘッド入力変更手段」としてのヘッド入力変更部106は、第1実温度Tと第1推定温度tとの差が第1所定値以上のときに電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方を変更する(ステップS7)。したがって、電圧値及び波形が頻繁に変更されることを防止して、消費電力を低減することができる。また、「ヘッド入力変更手段」としてのヘッド入力変更部106は、対向時間が必要時間以上であるとき、第1推定温度tに代えて実温度Tを用いて電圧値及び波形の少なくとも一方を変更する(ステップS13〜S17,S9)。したがって、対向時間が必要時間以上であるときは、インク吐出ヘッド14aの実温度Tに基づいて、電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方をより適正に変更することができる。
【0044】
なお、ステップS9において、「ヘッド入力変更手段」としてのヘッド入力変更部106は、第1ギャップG1と第2ギャップG2との間に位置する用紙Pに吐出されるインク吐出量が第3所定値以上のときに、電圧値を小さくし、又は、インク吐出量が少なくなる電圧波形を生成し、又は、インク吐出量が少なくなる電圧波形を不揮発メモリに格納された電圧波形から選択するように電圧波形を制御してもよい。また、「ヘッド入力変更手段」としてのヘッド入力変更部106は、環境温度Tが第4所定値以下のときに、電圧値を大きくし、又は、インク吐出量が多くなる電圧波形を生成し、又は、インク吐出量が多くなる電圧波形を不揮発メモリに格納された電圧波形から選択するように電圧波形を制御してもよいし、環境温度Tが第5所定値以上のときに、電圧値を小さくし、又は、インク吐出量が少なくなる電圧波形を生成し、又は、インク吐出量が少なくなる電圧波形を不揮発メモリに格納された電圧波形から選択するように電圧波形を制御してもよい。
【0045】
例えば、インク吐出量が第3所定値以上のときには、インク吐出ヘッド14aの温度が所定温度以上に上昇し、インク吐出量が必要以上に多くなるので、電圧値を小さくし、又は、インク吐出量が少なくなる電圧波形を生成し、又は、インク吐出量が少なくなる電圧波形を不揮発メモリに格納された電圧波形から選択してインク吐出量を抑制することで、インク吐出量を適正にすることができる。また、例えば、環境温度Tが第4所定値以下のときには、インク吐出ヘッド14aの温度が所定温度以下に低下し、インク吐出量が必要以上に少なくなるので、電圧値を大きくし、又は、インク吐出量が多くなる電圧波形を生成し、又は、インク吐出量が多くなる電圧波形を不揮発メモリに格納された電圧波形から選択してインク吐出量を増やすことで、インク吐出量を適正にすることができる。さらに、例えば、環境温度Tが第5所定値以上のときには、インク吐出ヘッド14aの温度が所定温度以上に上昇し、インク吐出量が必要以上に多くなるので、電圧値を小さくし、又は、インク吐出量が少なくなる電圧波形を生成し、又は、インク吐出量が少なくなる電圧波形を不揮発メモリに格納された電圧波形から選択してインク吐出量を抑制することで、インク吐出量を適正にすることができる。
【0046】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係るインクジェットプリンタにおける制御部(コンピュータ)の制御動作を示すフロー図である。以下には、図5に示す1つのインク吐出ヘッド14aに対する制御部の制御動作を、図7のフロー図に従って説明する。図7に示すように、第2実施形態では、まず、ステップS21において第1実温度Tが測定され、ステップS23において第1推定温度tが算出される。その後、ステップS25において第1実温度Tと第1推定温度tとの差が第6所定値以上であるか否かが判断される。
【0047】
ステップS25において「YES」と判断されると、ステップS29に進む。ステップS29では、「対向時間検出手段」としてのヘッド入力変更部106で検出された対向時間が、電圧波形(電圧値及び波形の少なくとも一方)を変更するのに必要な時間(以下、「変更時間」という。)に満たないか否かが判断される。そして、「YES」と判断されると、ステップS33において対向時間の延長処理が実行された後、ステップS30に進み、「NO」と判断されると、そのままステップS30に進む。そして、ステップS30において電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方が変更され、その後、ステップ31に進む。
【0048】
対向時間の延長処理において、「対向時間検出手段」としてのヘッド入力変更部106は、第1ギャップG1にノズル面20aが対向している対向時間を検出し、「搬送速度制御手段」としての搬送制御部96は、対向時間が電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方を変更するのに必要な時間に満たないときに、搬送速度Vを一時的に遅くして対向時間を長くする。或いは、「搬送間隔制御手段」としての搬送制御部96は、対向時間が電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方を変更するのに必要な時間に満たないときに、搬送間隔W1(図5)を一時的に長くして対向時間を長くする。
【0049】
一方、ステップS25において「NO」と判断されると、そのままステップS31に進む。ステップS31では、制御動作を終了するか否かが判断され、連続して用紙Pに印刷動作が継続する場合は「NO」と判断されてステップS21に戻り、印刷動作が完了する場合は「YES」と判断されて制御動作が終了される。
【0050】
第2実施形態では、電圧波形(電圧値及び波形の少なくとも一方)の変更が間に合わなくなった場合にだけ、対向時間の延長処理が実行され、対向時間が一時的に長くされるので、印刷速度がより高速になった場合でも、印刷速度を高速に保持しながら、電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方の調整を適正に行うことができる。
(その他の実施形態)
【0051】
上述の実施形態では、本発明に係る「液体吐出装置」を、インクを吐出するインクジェットプリンタに適用しているが、他の実施形態では、処理液を吐出する処理液吐出装置に適用してもよいし、他の液体を吐出する液体吐出装置に適用してもよい。また、液体吐出方式としては、アクチュエータ方式に代えて、発熱素子で液体の体積を膨張させたときの圧力を利用して吐出させる方式を用いてもよい。さらに、本発明に係る「液体吐出装置」は、上述のラインプリンタに代えてシリアルプリンタに適用してもよい。
【0052】
上記の実施形態では第1実温度Tを第1ギャップG1にノズル面20aが対向しているときに測定している。これは、インク吐出ヘッド14が吐出動作を行っている場合、ヘッド駆動によりインクジェットプリンタ10内の回路内にノイズが発生することがあり、第1実温度Tを正確に測定できなくなることを考慮したものである。したがって、上記の実施形態では用紙P間における用紙Pが存在しないギャップにノズル面20aが対向しているときに実温度を測定しているが、用紙Pにノズル面20aが対向しているときであっても、インク吐出ヘッド14が吐出動作を行っていないのであれば、この時に実温度を測定してもよい。この場合には、用紙P間の用紙Pが存在しない領域だけでなく、用紙Pの端部の印刷が行われない領域も「ギャップ」に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
G1〜G3… ギャップ
Q1〜Q4… 吐出領域
10… インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
14a〜14d… インク吐出ヘッド(液体吐出ヘッド)
20… ノズル
20a… ノズル面
22… 用紙搬送機構(記録媒体搬送手段)
90… 温度センサ(第1,2ヘッド温度測定手段)
104… 第1推定温度算出部(第1推定温度算出手段)
106… ヘッド入力変更部(ヘッド入力変更手段)
108… 第2推定温度算出部(第2推定温度算出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルが設けられたノズル面を有し、前記ノズルから液体を吐出させるための電圧波形が入力される液体吐出ヘッドと、
複数の記録媒体を前記ノズル面と対向する吐出領域に通過させるように搬送方向に連続して搬送する記録媒体搬送手段と、
前記記録媒体搬送手段により搬送される前記複数の記録媒体の相互間に生じる複数のギャップのうち第1ギャップに前記ノズル面が対向しているときに、前記液体吐出ヘッドに入力する前記電圧波形を変更するヘッド入力変更手段と、
前記第1ギャップよりも前記搬送方向下流側に位置する第2ギャップに前記ノズル面が対向しているときに前記液体吐出ヘッドの第1実温度を測定する第1ヘッド温度測定手段と、
前記第1実温度と、前記第1ギャップと前記第2ギャップとの間に位置する記録媒体に対して吐出される液体の吐出履歴とに基づいて、前記第1ギャップに前記ノズル面が対向しているときの前記液体吐出ヘッドの第1推定温度を算出する第1推定温度算出手段とを備え、
前記ヘッド入力変更手段は、前記第1推定温度に基づいて前記電圧波形を変更する、液体吐出装置。
【請求項2】
前記吐出履歴は、前記液体吐出ヘッドから吐出される液体吐出量である、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1推定温度算出手段は、
前記第2ギャップよりも前記搬送方向下流側に位置する第3ギャップと前記第2ギャップとの間における温度上昇量が大きいほど前記第1推定温度を高くするように前記第1推定温度を算出する、請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第2ギャップよりも前記搬送方向下流側に位置する第4ギャップに前記ノズル面が対向しているときに前記液体吐出ヘッドの第2実温度を測定する第2ヘッド温度測定手段と、
前記第2実温度と、前記第2ギャップと前記第4ギャップとの間に位置する記録媒体に対して吐出される液体の吐出履歴とに基づいて、前記第2ギャップに前記ノズル面が対向しているときの前記液体吐出ヘッドの第2推定温度を算出する第2推定温度算出手段と、
前記第2推定温度と前記第2実温度との差に基づいて前記第1推定温度を補正する推定温度補正手段とを備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記ヘッド入力変更手段は、前記第1実温度と前記第1推定温度との差が所定値以上のときに前記電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方を変更する、請求項1ないし4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記ヘッド入力変更手段は、前記第1ギャップと前記第2ギャップとの間に位置する記録媒体に対する液体吐出量が所定値以上のときに前記電圧波形の電圧値を小さくする、請求項1ないし4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記ヘッド入力変更手段は、環境温度が所定値以下のときに前記電圧波形の電圧値を大きくする、請求項1ないし4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
環境温度に基づいて前記第1推定温度を補正する補正手段を備える、請求項1ないし7のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記第1ギャップにノズル面が対向している対向時間を検出する対向時間検出手段を備え、
前記ヘッド入力変更手段は、前記対向時間が、前記液体吐出ヘッドの実温度を測定するとともに前記電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方を変更するのに必要な時間以上であるとき、前記第1推定温度に代えて実温度に基づいて前記電圧値及び前記波形の少なくとも一方を変更する、請求項1ないし8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記第1ギャップにノズル面が対向している対向時間を検出する対向時間検出手段と、
記録媒体の搬送速度を制御する搬送速度制御手段とを備え、
前記搬送速度制御手段は、前記対向時間が、前記電圧値及び前記波形の少なくとも一方を変更するのに必要な時間に満たないときに、前記搬送速度を一時的に遅くして前記対向時間を長くする、請求項1ないし8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記第1ギャップにノズル面が対向している対向時間を検出する対向時間検出手段と、
記録媒体の搬送間隔を制御する搬送間隔制御手段とを備え、
前記搬送間隔制御手段は、前記対向時間が、前記電圧波形の電圧値及び波形の少なくとも一方を変更するのに必要な時間に満たないときに、前記搬送間隔を一時的に長くして前記対向時間を長くする、請求項1ないし8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の液体吐出装置における少なくとも前記ヘッド入力変更手段としてコンピュータを機能させる、液体吐出装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−213917(P2012−213917A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80773(P2011−80773)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】