説明

液体吐出装置及びプログラム

【課題】キャップ内に液体が堆積しても適切にキャップ内の加湿を行うことができるようにする。
【解決手段】インクを吐出する吐出口が形成された吐出面と対向する吐出空間を開放した状態で(S105)、印刷を実行する(S106)。その後、吐出空間をキャップで封止し(S107)、吐出空間に加湿空気を供給する供給時間を、直前に吐出空間が開放されていた時間が長くなるに連れて長くなるように決定する(S108)。決定した供給時間が経過するまで加湿空気の供給を継続する(S114)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンタにおいて、非印刷時にヘッドの吐出面と対向する空間を保湿用キャップで封止し、保湿用キャップ内に加湿器により発生させた水蒸気を供給する流体噴射装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、インクが内部に吐出される予備吐出用ヘッドキャップが保湿用ヘッドキャップとは別に設けられており、保湿用ヘッドキャップ内にインクが吐出されないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−34912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の発明者らは、インクが内部に吐出されない保湿用ヘッドキャップであっても、記録装置の使用時間が経過すると共に、ヘッド周辺に飛散するインクミストやノズルから意図せず漏れたインクが保湿ヘッドキャップ内に堆積し、このキャップ内に堆積されたインクが乾燥剤として作用し、保湿ヘッドキャップによるキャップ後にノズルのインク乾燥が促進されるという知見を得た。この場合、加湿器により発生させた水蒸気を単純に保湿用ヘッドキャップに供給しただけではノズルに対する加湿が十分になされない懸念が生じる。なお、予備吐出用ヘッドキャップと保湿用ヘッドキャップとを兼ねたヘッドキャップについても同様である。
【0005】
本発明の目的は、キャップ内に液体が堆積しても適切に吐出口の加湿を行うことができる液体吐出装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、記録媒体に画像を形成する液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間から封止する封止状態と、前記吐出空間を外部空間に対して封止しない非封止状態とを取り得るキャップ手段と、前記吐出空間に所定湿度より高い湿度の空気を供給する空気供給手段と、前記キャップ手段が前記封止状態となっているときに、前記吐出空間に前記空気が供給されるように、前記キャップ手段及び前記空気供給手段を制御する制御手段とを備えている。前記制御手段は、直前に前記非封止状態となっていた時間が長くなるに連れて、前記吐出空間に前記空気を供給させる時間が長くなるように前記空気供給手段を制御する。
【0007】
本発明のプログラムは、記録媒体に画像を形成する液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッド、前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間から封止する封止状態と、前記吐出空間を外部空間に対して封止しない非封止状態とを取り得るキャップ手段、及び、前記吐出空間に所定湿度より高い湿度の空気を供給する空気供給手段を有する液体吐出装置において、前記キャップ手段が前記封止状態となっているときに、前記吐出空間に前記空気が供給されるように、前記キャップ手段及び前記空気供給手段を制御する制御手段としてコンピュータを機能させるプログラムである。前記制御手段は、直前に前記非封止状態となっていた時間が長くなるに連れて、前記吐出空間に前記空気を供給させる時間が長くなるように前記空気供給手段を制御する。
【0008】
本発明によると、直前に非封止状態となっていた時間が長くなるに連れて高い湿度の空気を供給する時間が長くなるため、キャップ内に供給した空気の水分がキャップ内に堆積した液体に吸収されたとしてもキャップ内の湿度を高湿度に調整することが可能であり、キャップ内に液体が堆積しても適切に吐出口の加湿を行うことができる。
【0009】
また、本発明において、前記制御手段は、前記吐出空間に前記空気を供給させる供給予定時間を決定し、前記空気の供給を開始させてから前記供給予定時間が経過する前に前記空気の供給が停止されたとき、前記供給予定時間の残り時間に対応する時間を、次に前記吐出空間に前記空気を供給させる際に決定した前記供給予定時間に加算することが好ましい。これによると、キャップ内に液体が堆積しても確実に吐出口の加湿を行うことができる。
【0010】
さらに、本発明によると、前記キャップ手段の周囲の湿度を検出する検出手段をさらに備えており、前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて前記吐出空間に前記空気を供給させる時間を決定することが好ましい。これによると、吐出空間の湿度を精度よく調整することができる。
【0011】
また、本発明において、前記制御装置は、前記キャップ手段が前記封止状態となっている場合において、前記吐出空間への前記空気の供給が停止されてから第1所定時間が経過した後に、前記吐出空間への前記空気の供給を再開させるように、前記空気供給手段を制御することが好ましい。これによると、キャップ手段が封止状態にあったとしても、時間が経過するに伴って吐出空間の湿度が低下するのが抑制され、吐出口内の液体の粘度が増加することを抑制できる。
【0012】
加えて、本発明において、前記制御手段は、前記吐出空間内に前記空気を供給させることにより前記吐出口の液体の濃度又は粘度が適正値以下となるように、前記空気供給手段を制御することが好ましい。これによると、吐出口の液体の粘度が乾燥により増加して吐出特性が低下するのを抑制することができる。
【0013】
また、本発明において、前記制御手段は、最後に前記吐出口から液滴を吐出してからの経過時間が長くなるに連れて、前記吐出空間に前記空気を供給させる時間が長くなるように前記空気供給手段を制御することが好ましい。これによると、吐出口の液体の粘度が乾燥により増加して吐出特性が低下するのをさらに抑制することができる。
【0014】
さらに、本発明において、前記制御手段は、前記液体吐出ヘッドをさらに制御し、前記吐出空間への前記空気の供給を開始させてから第2所定時間が経過する前に、画像を記録するために前記吐出空間への前記空気の供給が停止されたときは、前記吐出口から画像の記録に寄与しない液滴を予備吐出させた後に、前記吐出口から画像の記録に寄与する液滴を吐出させることが好ましい。吐出空間の湿度、吐出口近傍の液体の濃度、吐出口近傍以外の液体の濃度が平衡するまでは比較的時間がかかり(第2所定時間)、それまでに空気の供給が停止すると、吐出口近傍の液体の濃度が比較的低濃度となることがある。したがって、その部分だけ排出することで、吐出特性が低下することを抑制できる。
【0015】
また、本発明においては、前記キャップ手段に前記吐出空間を画定する凹部が形成されており、前記凹部の開口端が前記吐出面に接触することによって、前記キャップ手段を前記封止状態にすることが好ましい。これによると、簡単な構成で吐出空間を封止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、直前に非封止状態となっていた時間が長くなるに連れて高い湿度の空気を供給する時間が長くなるため、キャップ内に供給した空気の水分がキャップ内に堆積した液体に吸収されたとしてもキャップ内の湿度を高湿度に調整することが可能であり、キャップ内に液体が堆積しても適切に吐出口の加湿を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット式プリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】図1のプリンタに含まれるインクジェットヘッドの流路ユニット及びアクチュエータユニットを示す平面図である。
【図3】図2の一点鎖線で囲まれた領域IIIを示す拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図5】図1のプリンタに含まれるヘッドホルダ及び加湿機構を示す概略図である。
【図6】図5の一点鎖線で囲まれた領域VIを示す部分断面図である。
【図7】図1のプリンタに含まれる全ヘッドと加湿機構との接続形態を示す概略図である。
【図8】図1のプリンタに含まれるコントローラの機能ブロック図である。
【図9】図1のプリンタの印刷動作を示すフローチャートである。
【図10】図9の供給時間決定動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係る変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
本発明の実施形態に係るインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A及びBには、排紙部31に連なる用紙搬送経路が形成されている。空間Cには、インクジェットヘッド10に対するインク供給源としてのインクカートリッジ39が収容されている。
【0021】
空間Aには、4つのヘッド10、用紙Pを搬送する搬送ユニット21、用紙Pをガイドするガイドユニット、加湿メンテナンスに用いられる加湿機構50(図5参照)等が配置されている。空間Aの上部には、プリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司るコントローラ1pが配置されている。
【0022】
コントローラ1pは、外部装置から供給された画像データに基づいて、プリンタ1各部による用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作、吐出性能の回復・維持に係るメンテナンス動作等を制御する。メンテナンス動作は、フラッシング(画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてヘッド10のアクチュエータを駆動することにより一部〜全吐出口14aからインクを強制的に吐出させる動作)、パージ(ポンプ等によりヘッド10内のインクに圧力を付与することにより全吐出口14aからインクを強制的に吐出させる動作)、ワイピング(フラッシング又はパージの後にワイパーにより吐出面10a上の異物を払拭する動作)、加湿メンテナンス(吐出面10aと対向する吐出空間S1(図5参照)内に加湿空気を供給する動作)等を含む。なお、加湿メンテナンスについては後に詳述する。
【0023】
搬送ユニット21は、ベルトローラ6,7、両ローラ6,7間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト8、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ4及び剥離プレート5、搬送ベルト8の内側に配置されたプラテン9等を有する。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、搬送モータ(図示せず)の駆動により回転し、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ7の回転に伴い、搬送ベルト8が図1中の太矢印方向に走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8が走行するのに伴って、図1中時計回りに回転する。ニップローラ4は、ベルトローラ6に対向配置され、搬送方向上流側から供給されてきた用紙Pを搬送ベルト8の外周面である支持面8aに押さえ付ける。その後用紙Pは、搬送ベルト8の走行に伴い、支持面8a上に支持されつつ、ベルトローラ7に向けて搬送される。剥離プレート5は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを支持面8aから剥離し、さらに搬送方向下流側へと導く。プラテン9は、4つのヘッド10に対向配置され、搬送ベルト8の上側ループを内側から支える。
【0024】
各ヘッド10は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。各ヘッド10の下面は、多数の吐出口14a(図3及び図4参照)が開口した吐出面10aである。印刷に際して、4つのヘッド10の吐出面10aからそれぞれマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクが吐出される。4つのヘッド10は、副走査方向に所定ピッチで並び、ヘッドホルダ3を介して筐体1aに支持されている。ヘッドホルダ3は、吐出面10aが搬送ベルト8の上側ループの支持面8aに対向し、且つ、吐出面10aと支持面8aとの間に印刷に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド10を保持している。また、ヘッドホルダ3には、ヘッド10毎に、吐出面10aの外周を覆う環状のキャップ40が設けられている。ヘッド10及びヘッドホルダ3のより具体的な構成については後に詳述する。
【0025】
ガイドユニットは、搬送ユニット21を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、2つのガイド27a,27b及び一対の送りローラ26を有する。当該ガイド部は、給紙ユニット1b(後述)と搬送ユニット21とを繋ぐ。下流側ガイド部は、2つのガイド29a,29b及び二対の送りローラ28を有する。当該ガイド部は、搬送ユニット21と排紙部31とを繋ぐ。
【0026】
空間Bには、給紙ユニット1bが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25を有する。給紙トレイ23は、上方に開口した箱体であり、複数種類のサイズの用紙Pを収納可能である。給紙ローラ25は、給紙トレイ23内で最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0027】
上述したように、空間A及びBに、給紙ユニット1bから搬送ユニット21を介して排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されている。外部装置から受信した印刷指令に基づいて、コントローラ1pは、給紙ローラ25用の給紙モータ(図示せず)、各ガイド部の送りローラ用の送りモータ(図示せず)、搬送モータ等を駆動する。給紙トレイ23から送り出された用紙Pは、送りローラ26によって、搬送ユニット21に供給される。用紙Pが各ヘッド10の真下を副走査方向に通過する際、順に吐出面10aからインクが吐出されて、用紙P上にカラー画像が形成される。インクの吐出動作は、用紙センサ32からの検出信号に基づいて行われる。用紙Pは、その後剥離プレート5により剥離され、2つの送りローラ28によって上方に搬送される。さらに用紙Pは、上方の開口30から排紙部31に排出される。
【0028】
ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向に平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0029】
空間Cには、インクユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。インクユニット1cは、カートリッジトレイ35、及び、トレイ35内に並んで収納された4つのカートリッジ39を有する。各カートリッジ39は、インクチューブ(図示せず)を介して、対応するヘッド10にインクを供給する。
【0030】
次に、図2〜図4及び図7を参照し、ヘッド10の構成について説明する。なお、図3では、アクチュエータユニット17の下側にあって点線で示すべき圧力室16及びアパーチャ15を実線で示している。
【0031】
ヘッド10は、上下に積層されたリザーバユニット11及び流路ユニット12(図7参照)、流路ユニット12の上面12xに固定された8つのアクチュエータユニット17(図2参照)、各アクチュエータユニット17に接合されたFPC(平型柔軟基板)19(図4参照)等を有する。リザーバユニット11には、カートリッジ39(図1参照)から供給されたインクを一時的に貯留するリザーバを含むインク流路が形成されている。流路ユニット12には、上面12xの開口12y(図2参照)から下面(吐出面10a)の各吐出口14aに至るインク流路が形成されている。アクチュエータユニット17は、吐出口14a毎の圧電型アクチュエータを有する。
【0032】
リザーバユニット11の下面には凹凸が形成されている。凸部は、流路ユニット12の上面12xにおけるアクチュエータユニット17が配置されていない領域(図2に示す開口12yを含む二点鎖線で囲まれた領域)に接着されている。凸部の先端面は、リザーバに接続し且つ流路ユニット12の各開口12yに対向する開口を有する。これにより、上記各開口を介して、リザーバ及び個別インク流路14が連通している。凹部は、流路ユニット12の上面12x、アクチュエータユニット17の表面、及びFPC19の表面と、若干の隙間を介して対向している。
【0033】
流路ユニット12は、略同一サイズの矩形状の9枚の金属プレート12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h,12i(図4参照)を互いに積層し接着することにより形成された積層体である。流路ユニット12のインク流路は、図2、図3、及び図4に示すように、開口12yを一端に有するマニホールド流路13、マニホールド流路13から分岐した副マニホールド流路13a、及び、副マニホールド流路13aの出口から圧力室16を介して吐出口14aに至る個別インク流路14を含む。個別インク流路14は、図4に示すように、吐出口14a毎に形成されており、流路抵抗調整用の絞りとして機能するアパーチャ15を含む。上面12xにおける各アクチュエータユニット17の接着領域には、圧力室16を露出させる略菱形形状の開口がマトリクス状に配置されている。下面(吐出面10a)における各アクチュエータユニット17の接着領域に対向する領域には、圧力室16と同様の配置パターンで、吐出口14aがマトリクス状に配置されている。
【0034】
アクチュエータユニット17は、図2に示すように、それぞれ台形の平面形状を有し、流路ユニット12の上面12xにおいて2列の千鳥状に配置されている。各アクチュエータユニット17は、図3に示すように、当該アクチュエータユニット17の接着領域内に形成された多数の圧力室16の開口を覆っている。図示は省略するが、アクチュエータユニット17は、多数の圧力室16に跨るように延在した複数の圧電層、及び、厚み方向に関して圧電層を挟む電極を含む。電極には、圧力室16毎に設けられた個別電極、及び、圧力室16に共通の共通電極が含まれる。個別電極は、最も上方の圧電層の表面に形成されている。
【0035】
FPC19は、アクチュエータユニット17の各電極に対応する配線を有し、その途中部にドライバIC(図示せず)が実装されている。FPC19は、一端がアクチュエータユニット17、他端がヘッド10の制御基板(リザーバユニット11上方に配置。図示せず)にそれぞれ固定されている。FPC19は、コントローラ1p(図1参照)による制御の下、制御基板から出力された各種駆動信号をドライバICに伝達し、ドライバICが生成した信号をアクチュエータユニット17に伝達する。
【0036】
次に、図2、図5、及び図6を参照し、ヘッドホルダ3の構成について説明する。
【0037】
ヘッドホルダ3は、金属等からなるフレームであり、それぞれヘッド10毎に設けられたキャップ40と一対のジョイント51とが取り付けられている。
【0038】
一対のジョイント51は、図5に示すように、加湿機構50の循環流路の一端及び他端をそれぞれ構成するものであり、対応するヘッド10の長手方向一端及び他端にそれぞれ近接配置されている。加湿メンテナンスにおいて、一対のジョイント51のうち、一方(図5の左側)のジョイント51の下面の開口(排出口)51aから空気が回収され、他方(図5の右側)のジョイント51の下面の開口(流入口)51bから加湿空気が供給される。
【0039】
ジョイント51は、図6に示すように、略円筒状であり、基端51x、及び、基端51xから延出した先端51yを含む。基端51xから先端51yに亘って、鉛直方向に沿った円柱状の中空空間51zが貫通している。基端51x及び先端51yの外径は異なり、基端51xの方が先端51yより外径が大きいが、中空空間51zは鉛直方向に沿って一定の径を有する。先端51yは、その上端面の外周に切欠を有し、先細り形状となっている。これにより、先端51yへのチューブ55,57一端の接続が容易である。
【0040】
ジョイント51は、先端51yがヘッドホルダ3の貫通孔3aに貫挿された状態で、ヘッドホルダ3に対して固定されている。貫通孔3aは、ヘッドホルダ3におけるジョイント51の配置位置、即ち、ヘッド10の長手方向一端及び他端の近傍にそれぞれ形成されている。先端51yの外径は貫通孔3aの直径より一回り小さく、先端51yの外周面とヘッドホルダ3の貫通孔3aを画定する壁面との間に若干の隙間がある。この隙間は、ジョイント51をヘッドホルダ3に固定する際にシール材等が充填されることにより、封止される。
【0041】
キャップ40は、平面視でヘッド10の吐出面10aの外周を囲む環状に形成されており、固定部41cを介してヘッドホルダ3に支持された弾性体41、及び、昇降可能な可動体42を含む。
【0042】
弾性体41は、ゴム等の弾性材料からなり、基部41x、基部41xの下面から下方に突出した断面視逆三角形状の突出部41a、ヘッドホルダ3に固定された断面視T字状の固定部41c、及び、基部41xと固定部41cとを接続する接続部41dを含む。弾性体41は、上記各部を有しつつ、平面視でヘッド10の吐出面10aの外周を囲む環状に形成されている。固定部41cの上端部分は、接着剤等を介して、ヘッドホルダ3に固定されている。固定部41cはまた、各貫通孔3aの近傍において、ヘッドホルダ3と各ジョイント51の基端51xとの間に挟持されている。接続部41dは、固定部41cの下端から湾曲しつつ外側(平面視で吐出面10aから離隔する方向)に延び、基部41xの下端に接続している。接続部41dは、可動体42の昇降に伴って変形可能な程度の撓みを有する。基部41xの上面には、可動体42の下端に嵌合する凹部41bが形成されている。
【0043】
可動体42は、剛材料からなり、また、弾性体41と同様、平面視でヘッド10の吐出面10aの外周を囲む環状に形成されている。可動体42は、弾性体41を介してヘッドホルダ3に支持されつつ、ヘッドホルダ3に対して鉛直方向に移動可能である。具体的には、可動体42は、複数のギア43と接続されており、コントローラ1pによる制御の下、昇降モータ44(図8参照)の駆動に伴いギア43が回転することにより、昇降する。このとき、可動体42の下端に弾性体41の凹部41bが嵌合しているため、基部41xも可動体42と共に昇降する。弾性体41は、可動体42が昇降するとき、固定部41cがヘッドホルダ3に固定された状態で、突出部41aを含む基部41xが可動体42と共に昇降する。これにより、突出部41aの先端41a1の吐出面10aに対する鉛直方向の相対位置が変化する。
【0044】
突出部41aは、可動体42の昇降により、先端41a1が搬送ベルト8の支持面8aに当接する当接位置(図5参照)と、先端41a1が搬送ベルト8の支持面8aから離隔した離隔位置(図6参照)とを選択的に取る。図5に示すように、突出部41aが当接位置にあるとき、吐出面10aと支持面8aとの間に形成される吐出空間S1が外部空間S2から隔離されたキャップ状態(封止状態)となっている。図6に示すように、突出部41aが離隔位置にあるとき、吐出空間S1が外部空間S2と連通した非キャップ状態(非封止状態)となっている。
【0045】
突出部41aは、平面視で、吐出面10a(図2に示すヘッド10の下面)の全周に亘って吐出面10aから離隔している。
【0046】
次に、図5及び図7を参照し、加湿機構50の構成について説明する。
【0047】
加湿機構50は、図5に示すように、ジョイント51、チューブ55,56,57、ポンプ53、及びタンク54を含む。ジョイント51は1のヘッド10に対して一対(2つずつ)設けられているが、ポンプ53及びタンク54は、図7に示すように、プリンタ1内に1つずつ、即ち4つのヘッド10に対して1つずつ設けられている(図7参照)。チューブ55,57はそれぞれ、4つのヘッド10に共通の主部55a,57a、及び、主部55a,57aから分岐してジョイント51まで延在した4つの分岐部55b,57bを含む。
【0048】
チューブ55の一端(各分岐部55bの先端)は各ヘッド10に設けられた一方(図5の左側)のジョイント51の先端51yに嵌合し、他端(主部55aの分岐部55bと反対側の端部)はポンプ53に接続されている。即ち、チューブ55は、各ヘッド10に設けられた一方のジョイント51の中空空間51zとポンプ53とを連通可能に接続している。チューブ56は、ポンプ53とタンク54とを連通可能に接続している。チューブ57の一端(各分岐部57bの先端)は各ヘッド10に設けられた他方(図5の右側)のジョイント51の先端51yに嵌合し、他端(主部57aの分岐部57bと反対側の端部)はタンク54に接続されている。即ち、チューブ57は、各ヘッド10に設けられた他方のジョイント51の中空空間51zとタンク54とを連通可能に接続している。
【0049】
タンク54は、下部空間に水を貯留し、且つ、上部空間に、下部空間の水により加湿された加湿空気を貯蔵している。チューブ56は、タンク54内の水面よりも下方に接続し、即ちタンク54の下部空間と連通している。チューブ57は、タンク54内の水面よりも上方に接続し、即ちタンク54の上部空間と連通している。なお、タンク54内の水がポンプ53に流れ込まないよう、チューブ56には図示しない逆止弁が取り付けられており、図5の矢印方向にのみ空気が流れるようになっている。
【0050】
次に、コントローラ1pについて説明する。コントローラ1pは、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶する不揮発メモリと、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。コントローラ1pを構成する各機能部は、これらハードウェアと不揮発メモリ内のソフトウェアとが協働して構築されている。このプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、メモリカード等の各種記録媒体に保存されており、これらの記録媒体から不揮発メモリにインストールされる。なお、記録媒体に記録された制御プログラムは、CPUで直接実行可能なものであってもよいし、不揮発メモリにインストールすることによって初めて実行可能となるものでもよい。また、暗号化されていたり、圧縮されていたりしてもよい。図8に示すように、コントローラ1pは、画像データ記憶部61と、ヘッド制御部62と、キャップ履歴記憶部63と、メンテナンス制御部64と、搬送制御部65とを有している。
【0051】
画像データ記憶部61は、用紙Pに印刷すべき画像を示す画像データを記憶する。搬送制御部65は、用紙Pが所定の速度で搬送経路に沿って搬送されるように搬送ユニット21を制御する。ヘッド制御部62は、搬送ユニット21に搬送された用紙Pに画像データ記憶部61に記憶された画像データに係る画像が印刷されるように、及び、メンテナンス動作においてフラッシングが行われるようにヘッド10を制御する。
【0052】
キャップ履歴記憶部63は、吐出空間S1が非キャップ状態となっているときの履歴、供給時間の残り時間に対応する時間(後述)、最後に吐出口14aからインクが吐出されてからの経過時間などを記憶している。
【0053】
メンテナンス制御部64は、加湿メンテナンスが行われるように、加湿機構50のポンプ53、可動体42(突出部41aの先端41a1)を昇降させる昇降モータ44を制御する。加湿メンテナンスは、キャップ状態にある吐出空間S1内を加湿する動作であり、印刷が完了した後に開始される。なお、加湿メンテナンス時における下記一連の動作の間、ヘッド10、ヘッドホルダ3、及び搬送ベルト8は、所定位置に固定されている。ヘッドホルダ3は、吐出面10aと支持面8aとの間に印刷に適した所定の間隙が形成されるようにヘッド10を保持した状態で固定されている。
【0054】
メンテナンス制御部64は、加湿メンテナンスを開始すると、先ず、ギア43の回転により可動体42を下方に移動させる。印刷時においては、突出部41aは離隔位置(図6参照)にあるが、当該可動体42の下方への移動に伴い、当接位置(図5参照)に移動する。これにより、吐出空間S1が封止されてキャップ状態となる。なお、メンテナンス制御部64は、印刷時以外の待機状態又は休止状態においては、突出部41aを当接位置に移動させてキャップ状態とする。
【0055】
メンテナンス制御部64が有する供給時間決定部64aは、吐出口14aのインク濃度又は粘度が適正値以下となるように、ポンプ53の駆動時間、即ち吐出空間S1内に加湿空気を供給する供給時間を決定する。ここで、供給時間決定部64aは、キャップ履歴記憶部63から得られる直前に非キャップ状態となっていた時間が長くなるに連れて長くなるように供給時間を算出し、そして、算出した供給時間を、最後にいずれかの吐出口14aからインクを吐出してからの経過時間の少なくとも一方が長くなるに連れて長くなるように補正する。さらに、供給時間決定部64aは、キャップ40の周囲の湿度を検出する湿度センサ58の検出結果が所定値以下の場合は、決定した供給時間がより長くなるように補正する。なお、インク濃度の適正値は、インクが記録媒体上に吐出されて画像が形成されたときに、画像の悪化が生じない範囲のインク濃度であり、通常、実験により求められる値である。また、インク粘度の適正値は、インクがヘッドから安定して記録媒体上に吐出される範囲のインク粘度であり、こちらも通常、実験により求められる値である。
【0056】
その後、メンテナンス制御部64は、ポンプ53を駆動し、一方のジョイント51の開口51aから吐出空間S1内の空気を回収させる。このとき、開口51aから回収された空気は、ジョイント51の中空空間51z及びチューブ55内の空間を通ってポンプ53に至り、さらにチューブ56内の空間を通ってタンク54に至る。当該空気は、タンク54の下部空間(即ち水面下)に供給される。そして、タンク54内の水により加湿された空気(加湿空気)は、タンク54の上部空間から排出される。タンク54の上部空間から排出された加湿空気の湿度はほぼ100%となっている。なお、加湿空気の湿度は環境湿度(所定湿度)よりも高くなっていればよい。この加湿空気は、チューブ57内の空間を通って、他方のジョイント51の開口51bから吐出空間S1内に供給される。図5中、黒塗りの矢印は加湿前の空気の流れを示し、白抜きの矢印は加湿後の空気の流れを示す。メンテナンス制御部64は、上記のポンプ53の駆動と共に、図7に示す各分岐部55b,57bに設けられた切換弁等(図示せず)を制御することにより、分岐部55b,57bにおける空気の流れを選択的に調節する。
【0057】
このようにして開口51bから吐出空間S1内に加湿空気が供給されることにより、吐出空間S1内の湿度が上昇する。吐出空間S1内の湿度が上昇するに連れて、キャップ40内に堆積したインクが加湿されると共に、吐出口14aのインク濃度及びインク粘度が低下する。メンテナンス制御部64は、ポンプ53の駆動を開始して先に決定した供給時間を経過するとポンプ53の駆動を停止する。以上で、加湿メンテナンスが完了する。なお、メンテナンス制御部64は、加湿メンテナンスが完了してから所定時間(第1所定時間)が経過すると、加湿空気が漏れたりすることによって吐出空間S1の湿度が低下するため、所定時間が経過する毎に再びポンプ53を所定時間駆動させて吐出空間S1の加湿を繰り返す。
【0058】
なお、メンテナンス制御部64は、ポンプ53の駆動を開始して先に決定した供給時間が経過する前に印刷指令を受信したとき、加湿メンテナンスを中断し、ポンプ53の駆動を停止させる。このとき、メンテナンス制御部64は、ポンプ53の駆動を開始して所定時間(第2所定時間)が経過していなければ、吐出口14aからインクをフラッシング(印刷に寄与しないインク吐出)させた後に印刷状態に移行させる。メンテナンス制御部64は、それ以外の場合は、フラッシングさせることなく印刷状態に移行させる。その後、当該印刷指令に係る印刷が完了して再び加湿メンテナンスが開始されると、供給時間決定部64aは、先に加湿メンテナンスを中断したときの供給時間の残り時間に対応する時間(残り時間そのもの、或いは残り時間に一定係数を乗じた時間など)を、新たに決定した供給時間に加算する。ここで、第2所定時間は、吐出空間S1の湿度、吐出口14a近傍のインク濃度、吐出口14a近傍以外のインク濃度の全てが先に述べたインク濃度又は粘度の適正値に平衡するまでの時間である。第2所定時間を経過するまでにポンプ53の駆動を停止した場合、吐出口14a近傍のインク濃度が適正値未満となる(インク粘度が適正値未満となる)ので、その部分のインクのみフラッシングにより排出することにより、吐出特性が低下や画像悪化を抑制することができる。また、供給時間の残り時間に対応する時間を、新たに決定した供給時間に加算するのは、フラッシングにより吐出口14a内のインク粘度など(インク濃度を含む)は適正値になっているものの、吐出空間S1内に堆積したインクの粘度などは適正値未満となっているので、新たに決定した供給時間だけ加湿空気を供給しただけでは、吐出空間S1内に堆積したインクの粘度などが適正値になるまで加湿されず、乾燥剤として作用し、吐出口14a内のインクを適正値まで加湿できなくなることが考えられるためである。
【0059】
図9を参照しつつ、プリンタ1における印刷動作について説明する。図9に示すように、印刷完了後、メンテナンス制御部64が、キャップ状態に移行させて待機状態とする(S101)。メンテナンス制御部64は、印刷指令を受信していなければ(S102:NO)、キャップ状態となってから所定時間が経過したか否かを判断し(S103)、所定時間が経過しなければ(S103:NO)印刷指令を受信したか否かの判断を繰り返す(S102)。メンテナンス制御部64は、キャップ状態となってから所定時間が経過していれば、供給時間を予め決定された時間に決定し(S104)、ポンプ53を駆動して吐出空間S1に対する加湿空気の供給を開始する(S109)。
【0060】
メンテナンス制御部64は、印刷指令を受信したと判断すれば(S102:YES)、キャップ状態から非キャップ状態に移行させると共にキャップ履歴記憶部63に非キャップ状態が開始された時刻を記憶させる(S105)。その後、受信した印刷指令に基づいて印刷が実行される(S106)。
【0061】
印刷が完了すると、メンテナンス制御部64が、加湿メンテナンスを開始し、非キャップ状態からキャップ状態に移行させると共にキャップ履歴記憶部63に直前に非キャップ状態が終了した時刻を記憶させる(S107)。また、供給時間決定部64aは、供給時間を決定する(S108)。このとき、図10に示すように、供給時間決定部64aは、キャップ履歴記憶部63から得られる直前に非キャップ状態となっていた時間が長くなるに連れて長くなるように供給時間を算出する(S201)。そして、供給時間決定部64aは、先に加湿メンテナンスが中断されたか否かを判断し(S202)、先に加湿メンテナンスが中断されていれば(S202:YES)、供給時間の残り時間に対応する時間を、新たに決定した供給時間に加算(S203)する。供給時間決定部64aは、算出した供給時間を、最後にいずれかの吐出口14aからインクを吐出してからの経過時間の少なくとも一方が長くなるに連れて長くなるように補正する(S204)。さらに、供給時間決定部64aは、キャップ40の周囲の湿度を検出する湿度センサ58の検出結果が所定値以下の場合は、決定した供給時間がより長くなるように補正する(S205)。
【0062】
そして、図9に戻って、メンテナンス制御部64は、ポンプ53を駆動して吐出空間S1に対する加湿空気の供給を開始する(S109)。メンテナンス制御部64は、加湿空気の供給中に新たな印刷指令を受信したか否かを判断する(S110)。メンテナンス制御部64は、新たな印刷指令を受信したと判断したとき(S110:YES)、ポンプ53を停止することで吐出空間S1に対する加湿空気の供給を停止する(S111)。このとき、ポンプ53の駆動を開始して所定時間(第2所定時間)が経過していなければ(S112:YES)、吐出口14aからインクをフラッシングさせた後に(S113)、キャップ状態から非キャップ状態に移行させ(S105)、上述の処理を繰り返す。
【0063】
メンテナンス制御部64は、新たな印刷指令を受信していないと判断したとき(S110:NO)、ポンプ53の駆動を開始して先に決定した供給時間を経過したか否かを判断する(S114)。メンテナンス制御部64は、供給時間を経過していないと判断すれば(S114:NO)、新たな印刷指令を受信したか否かの判断を再び行う(S110)。メンテナンス制御部64は、供給時間を経過したと判断すれば(S114:YES)、ポンプ53を停止することで吐出空間S1に対する加湿空気の供給を停止し(S115)、待機状態に移行する(S101)。
【0064】
以上に述べたように、本実施形態に係るプリンタ1によると、直前に非キャップ状態となっていた時間が長くなるに連れて加湿空気を供給する時間が長くなるため、キャップ40の吐出空間S1内に供給した加湿空気の水分がキャップ40の吐出空間S1に面した領域に堆積したインク(ヘッド10周辺に飛散するインクミストや吐出口14aから意図せず漏れたインク)に吸収されたとしても、キャップ40内のインクの濃度又は粘度が適正値となるように吐出空間S1内の加湿を行うことができる。つまり、キャップ40内にインクが堆積しても適切に吐出空間S1内の加湿を行うことができる。
【0065】
また、ポンプ53の駆動を開始してから供給時間が経過する前に印刷指令を受信することで加湿メンテナンスが中断されたとき、次の加湿メンテナンスにおいて、供給時間決定部64aが、先に加湿メンテナンスを中断したときの供給時間の残り時間に対応する時間を、新たに決定した供給時間に加算する。これにより、キャップ40内にインクが堆積しても確実に吐出口の加湿を行うことができる。
【0066】
さらに、供給時間決定部64aが、キャップ40の周囲の湿度を検出する湿度センサ58の検出結果が所定値以下の場合は、供給時間を長くするため、吐出空間S1の湿度を精度よく調整することができる。
【0067】
また、本発明において、加湿メンテナンスが完了してから所定時間が経過すると、吐出空間S1が再加湿されるため、キャップ状態にあったとしても、時間が経過するに伴って吐出空間S1の湿度が低下するのが抑制され、吐出口14a内のインク粘度が増加すること又はインク濃度が増加することを抑制できる。
【0068】
加えて、吐出口14aのインク濃度又は粘度が適正値以下となるように、吐出空間S1内に加湿空気を供給する供給時間が決定されるため、吐出口14aのインクが乾燥により増粘してインク吐出特性が低下するのを抑制することができる。
【0069】
また、最後にいずれかの吐出口14aからインクを吐出してからの経過時間が長くなるに連れて長くなるように供給時間を決定されるため。吐出口14aのインクが乾燥により増粘してインク吐出特性が低下するのをさらに抑制することができる。
【0070】
さらに、ポンプ53の駆動を開始してから先に決定した供給時間より短い所定時間が経過する前に印刷指令を受信したとき、加湿メンテナンスを中断して吐出口14aからインクをフラッシングさせた後に印刷状態に移行する。このため、吐出口14aのインクのうち低濃度となった部分を排出することができる。
【0071】
加えて、加湿メンテナンスにおいて、開口51aから回収された空気が、ジョイント51の中空空間51z及びチューブ55内の空間を通ってポンプ53に至り、さらにチューブ56内の空間を通ってタンク54を通過した後に、チューブ57内の空間を通って、他方のジョイント51の開口51bから吐出空間S1内に供給される。これによると、加湿空気を循環して再利用することができるため、加湿空気を迅速に供給でき、また、吐出空間S1を密閉したままで加湿空気の供給が可能となる。
【0072】
さらに、先端41a1が搬送ベルト8の支持面8aに当接する当接位置と、先端41a1が搬送ベルト8の支持面8aから離隔した離隔位置とを選択的に取ることで、簡単な構成で吐出空間S1を確実に封止できると共に、キャップ状態と非キャップ状態とを迅速に切り替えることができる。
【0073】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0074】
例えば、上述の実施形態においては、印刷指令を受信することで加湿メンテナンスが中断されたとき、次の加湿メンテナンスにおいて、先に加湿メンテナンスを中断したときの供給時間の残り時間に対応する時間を、新たに決定した供給時間に加算する構成であるが、新たに決定した供給時間に残り時間に対応する時間を加算しない構成であってもよい。
【0075】
また、上述の実施形態においては、供給時間決定部64aが、キャップ履歴記憶部63から得られる直前に非キャップ状態となっていた時間が長くなるに連れて長くなるように供給時間を算出する構成であるが、さらに、キャップ状態になった後から加湿空気を供給するまでの時間が長くなるに連れて長くなるように供給時間を算出してもよい。これは、キャップ状態にした後においても吐出口14a内のインクの乾燥は進む(非キャップ状態の時よりは乾燥の進行度合いは落ちるが)ので、それを考慮するものである。
【0076】
さらに、上述の実施形態においては、供給時間決定部64aが、キャップ40の周囲の湿度を検出する湿度センサ58の検出結果が所定値以下の場合は、供給時間を長くする構成であるが、キャップ40の周囲の湿度を考慮することなく供給時間を決定する構成であってもよい。また、供給時間決定部64aが、キャップ40の周囲の温度を検出する温度センサを有しており、この温度センサの検出結果が所定値以上の場合は、供給時間が長くなるように供給時間を決定する構成であってもよい。
【0077】
また、上述の実施形態においては、加湿メンテナンスが完了してから所定時間が経過すると、吐出空間S1が再加湿される構成であるが、このような再加湿を行わない構成であってもよい。
【0078】
加えて、上述の実施形態においては、吐出口14aのインク濃度又は粘度が適正値以下となるように、吐出空間S1内に加湿空気を供給する供給時間が決定される構成であるが、吐出空間S1内の湿度が環境湿度を超えていれば、吐出口14aのインク濃度又は粘度が適正値以上となってもよい。このような構成では、フラッシングによりインク濃度又は粘度が適正値以上となった部分を排出する必要があるが、加湿空気を供給することにより排出するインクの量を減らすことが可能となる。
【0079】
また、上述の実施形態においては、最後に吐出口14aからインクを吐出してからの経過時間が長くなるに連れて長くなるように供給時間が決定される構成であるが、この時間を考慮することなく供給時間が決定される構成であってもよい。
【0080】
さらに、上述の実施形態においては、ポンプ53の駆動を開始してから先に決定した供給時間よりも短い所定時間が経過する前に印刷指令を受信したとき、加湿メンテナンスを中断して吐出口14aからインクをフラッシングさせる構成であるが、フラッシングさせない構成であってもよいし、加湿メンテナンスが中断されたときは必ずフラッシングさせる構成であってもよい。
【0081】
加えて、上述の実施形態においては、加湿メンテナンスにおいて、加湿空気を循環して再利用する構成であるが、加湿空気を循環させることなく吐出空間S1外に排出する構成であってもよい。
【0082】
さらに、突出部41aは、上述の実施形態のように移動可能であることに限定されない。例えば、突出部が移動不能にヘッドホルダに固定され、突出部の先端の吐出面に対する相対位置が一定であってもよい。この場合、ヘッドホルダ又は媒体支持部の支持面を昇降させることにより、突出部の先端の吐出面に対する相対位置を変化させ、突出部が当接位置と離隔位置とを選択的に取ることができる。
【0083】
さらに、図11に示すように、キャップ240がヘッド10から独立して形成されていてもよい。この場合、キャップ240は、図示しないキャップ移動機構によって、吐出面10aと対向する位置に配置される。そして、キャップ240は、ヘッド10及びキャップ240の少なくともいずれかを昇降させることによって、キャップ240の端部241aが吐出面10aに当接する当接位置と、端部241aが吐出面10aから離隔する離隔位置とを選択的に取りうる。キャップ240が当接位置にあるとき、吐出空間S201がキャップ240によって封止され(キャップ状態)、キャップ240が離隔位置にあるとき、吐出空間S201が開放される(非キャップ状態)。これによると、簡単な構成で吐出空間S201を封止することができる。
【0084】
また、上述の実施形態においては、循環流路の流入口及び排出口がヘッドホルダに形成される構成であるが、流入口及び排出口は、ヘッド、ヘッドホルダ又はキャップに形成されてもよい。流入口及び排出口がキャップに形成されている場合、加湿機構50がキャップ側(図5はヘッド10側に加湿機構50が設けられている)に設けられていてもよい。
【0085】
加えて、加湿手段として、上述の実施形態ではポンプ53及びタンク54を例示したが、循環流路内の空気を加湿することができる限りは、その他様々な手段を用いてよい。例えば、ポンプ53を省略し、タンク54のみを用いて加湿を行ってもよい。また、ヒータ等の加熱手段をさらに用いたり、超音波式加湿手段を用いたり、循環流路内に、水を含ませたスポンジ等の多孔質部材や布を配置したりすることで、加湿を行ってもよい。
【0086】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。さらに、インク以外の液体を吐出するものであってもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 インクジェット式プリンタ
10 インクジェットヘッド
10a 吐出面
14a 吐出口
21 搬送ユニット
40 キャップ
50 加湿機構
51a、51b 開口
53 ポンプ
54 タンク
55〜57 チューブ
58 湿度センサ
61 画像データ記憶部
62 ヘッド制御部
63 キャップ履歴記憶部
64 メンテナンス制御部
64a 供給時間決定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成する液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間から封止する封止状態と、前記吐出空間を外部空間に対して封止しない非封止状態とを取り得るキャップ手段と、
前記吐出空間に所定湿度より高い湿度の空気を供給する空気供給手段と、
前記キャップ手段が前記封止状態となっているときに、前記吐出空間に前記空気が供給されるように、前記キャップ手段及び前記空気供給手段を制御する制御手段とを備えており、
前記制御手段は、直前に前記非封止状態となっていた時間が長くなるに連れて、前記吐出空間に前記空気を供給させる時間が長くなるように前記空気供給手段を制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記吐出空間に前記空気を供給させる供給予定時間を決定し、前記空気の供給を開始させてから前記供給予定時間が経過する前に前記空気の供給が停止されたとき、前記供給予定時間の残り時間に対応する時間を、次に前記吐出空間に前記空気を供給させる際に決定した前記供給予定時間に加算することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記キャップ手段の周囲の湿度を検出する検出手段をさらに備えており、
前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて前記吐出空間に前記空気を供給させる時間を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記キャップ手段が前記封止状態となっている場合において、前記吐出空間への前記空気の供給が停止されてから第1所定時間が経過した後に、前記吐出空間への前記空気の供給を再開させるように、前記空気供給手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記吐出空間内に前記空気を供給させることにより前記吐出口の液体の濃度又は粘度が適正値以下となるように、前記空気供給手段を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御手段は、最後に前記吐出口から液滴を吐出してからの経過時間が長くなるに連れて、前記吐出空間に前記空気を供給させる時間が長くなるように前記空気供給手段を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記液体吐出ヘッドをさらに制御し、
前記吐出空間への前記空気の供給を開始させてから第2所定時間が経過する前に、画像を記録するために前記吐出空間への前記空気の供給が停止されたときは、前記吐出口から画像の記録に寄与しない液滴を予備吐出させた後に、前記吐出口から画像の記録に寄与する液滴を吐出させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記キャップ手段に前記吐出空間を画定する凹部が形成されており、
前記凹部の開口端が前記吐出面に接触することによって、前記キャップ手段を前記封止状態にすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
記録媒体に画像を形成する液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッド、前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間から封止する封止状態と、前記吐出空間を外部空間に対して封止しない非封止状態とを取り得るキャップ手段、及び、前記吐出空間に所定湿度より高い湿度の空気を供給する空気供給手段を有する液体吐出装置において、前記キャップ手段が前記封止状態となっているときに、前記吐出空間に前記空気が供給されるように、前記キャップ手段及び前記空気供給手段を制御する制御手段としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記制御手段は、直前に前記非封止状態となっていた時間が長くなるに連れて、前記吐出空間に前記空気を供給させる時間が長くなるように前記空気供給手段を制御することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−158069(P2012−158069A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18954(P2011−18954)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】