説明

液体吐出装置

【課題】格別な設備を設けることなく沈降性を有する液体に含まれる液体成分の沈降を防ぎ或いは液体成分を再分散させて沈降性を有する液体を有効利用することが可能な液体吐出装置を提供する。
【解決手段】制御部17は通常の印刷モード以外のスキャンを行っていない時間帯でキャリッジ3を所定方向に所定回数走査させることでチューブ14内の液体を流動させて撹拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット記録装置などの液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に使用されるインクとしては、例えば白インクに代表されるように溶媒中に顔料等の分散粒子を均一に分散させた顔料系インクが用いられる。この顔料等の分散粒子は、溶媒に対して比重が大きいことから、記録装置が長時間にわたって使用されない場合には、分散粒子(顔料成分)が沈降しやすく、インク供給系の目詰まりやインク濃度の変化などを引き起こすおそれがある。
【0003】
この問題を解決すべく、インクに含まれる分散粒子を拡散すべく滞留するインクを撹拌する方法が提案されている。例えば、インクカートリッジのインク室内に移動可能な撹拌移動体を配置し、撹拌移動体には磁石の極性を持たせ、キャリッジの走査方向に沿って設けられた往復運動ガイド部材に走査方向に沿って外部磁石が撹拌移動体の磁石に対向配置されている。キャリッジを作動させてインクカートリッジを往復動させる際に撹拌移動体が外部磁石に接近したときに生じる磁気吸引力若しくは磁気反発力により撹拌移動体が回動してインク室の撹拌動作を行うようになっている(特許文献1参照)。
【0004】
或いは、インクジェットヘッドとインクタンクを接続するインク流路にインク収容部を設け、インク収容部の容積を可変とすることでインクタンクとの間に圧力差を発生させてインク収容部のインクをインクタンクに逆流させてインクタンク内のインクを撹拌するインクジェット記録装置も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−276173号公報
【特許文献2】特開2010−143050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1においては、インクカートリッジのインク室内に撹拌移動体を設け、撹拌移動体の走査方向に設けられたガイド部材に対向する外部磁石を設けるという部品点数が嵩んで構造が複雑化する。
また特許文献2においてもインク収容部に容積変化をもたらすベローズポンプを設けて圧力差を積極的に作り出す機構を設ける必要があり、装置設備が大がかりになり製造コストも上昇する。
これらのインクを撹拌するための部品や設備を設けることなく、沈降したインク成分の再分散させる若しくは沈降しないように維持することが求められている。
また、インク流路内で沈降したインクはインクカートリッジ(若しくはインクタンク)との接続を解除してインク流路内に空気を圧入して滞留したインクを廃棄し、未使用インクを再充填して使用するため、インクの歩留まりが悪くなるうえにメンテナンス作業が煩わしくなる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、格別な設備を設けることなく沈降性の液体(インク)に含まれる液体(インク)成分の沈降を防ぎ或いは液体(インク)成分を再分散させて沈降性を有する液体(インク)を有効利用することが可能な液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、印刷ユニットに支持された液体を貯留する貯留容器からチューブを介して主走査方向に往復動するキャリッジに搭載された液体吐出部に液体が供給され、前記キャリッジが主走査方向に往復動しながら対向する媒体に前記液体吐出部より液体を吐出する液体吐出装置であって、前記液体吐出装置の印刷動作を制御する制御部を備え、該制御部は通常の印刷モード以外のスキャンを行っていない時間帯で前記キャリッジを所定方向に所定回数走査させることで前記チューブ内の液体を流動させて撹拌することを特徴とする。
この「所定方向に所定回数」は、一方向に小刻みに所定回数動かす場合や双方向に所定回数動かす場合のいずれの場合も含むことを意味する。
【0009】
また、前記制御部は通常の印刷モード以外のスキャンを行っていない時間帯で前記キャリッジを所定回数往復動させることで前記チューブ内の液体を流動させて撹拌することが望ましい。
具体的には、前記キャリッジは、重力加速度1.0G乃至2.0Gの速度又は速度0.5乃至3.0(メートル毎秒)より好ましくは速度1.0乃至2.0(メートル毎秒)で走査させることが望ましい。
【0010】
また、前記チューブの一部に少なくとも1つの緩衝部が設けられており、該緩衝部は前記キャリッジの往復動によってチューブ内の液体に生ずる圧力変動によって容積変化することで前記チューブ内の液体を流動させて撹拌することが好ましい。
具体的には、前記緩衝部が前記チューブの液体吐出部との接続部分に設けられ、液体の圧力変化により撓むダイヤフラムを有することが好ましい。
【0011】
また、前記制御部には、駆動源を起動させて前記キャリッジを走査させる指令部と、インクの種類毎に静止状態でインク成分が沈降する沈降時間に関するデータが記憶されている記憶部と、前記キャリッジが停止してからの経過時間をカウントする計測部が設けられており、前記指令部は、スリーピングモード又は印刷待機モードにおいて、前記計測部は前記キャリッジが停止してから前記記憶部に記憶したインクの種類に応じた所定沈降時間が経過すると前記駆動源を起動して前記キャリッジを所定回数往復動させることが好ましい。
【0012】
また、前記制御部は、電源投入モードにおいて、駆動源を起動してキャリッジを所定回数往復動させるようにしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、制御部は通常の印刷モード以外のスキャンを行っていない時間帯で前記キャリッジを所定方向に所定回数走査させることで前記チューブ内の液体を流動させて撹拌するので、格別な部品や装置を設けなくても、キャリッジの加減速に伴い発生するチューブ内の圧力差を利用してチューブ内の液体を流動させて、沈降性を有する液体(インク)の液体(インク)成分の沈降を防止ないしは沈降した液体(インク)成分を再分散させることができる。
【0014】
また、チューブの一部に少なくとも1つの緩衝部が設けられ、該緩衝部はキャリッジの往復動によって滞留したインクに生ずる圧力変動によって容積変化する場合には、チューブ内の液体の流動が促進されて沈降性を有する液体(インク)の液体(インク)成分の沈降を防止ないしは沈降した液体(インク)成分を再分散させることができる。
また、チューブの一部に緩衝部を設けたことにより、キャリッジを往復動させることで所期の液体(インク)の撹拌効果が得られる。
緩衝部がチューブの液体吐出部との接続部分に設けられ、液体の圧力変化により撓むダイヤフラムを有する場合には、ダイヤフラムの可撓性を利用してチューブ内の液体(インク)の流動を促進し沈降性を有する液体(インク)の液体(インク)成分の沈降を防止ないしは沈降した液体(インク)成分を再分散させることができる。
【0015】
インクジェット記録装置においては、通常液体貯留部であるインクカートリッジは可撓性の容器にインクを貯留したものであり、それ自体が緩衝部としての働きを持つ。このインクカートリッジに一端が接続されるインクチューブの他端近傍(キャリッジ側)に緩衝部を設けることにより、インクチューブの両端に緩衝部を備えることになる。よって、キャリッジの往復移動に伴うチューブの加減速で生じた圧力差により、例えば往路ではインクカートリッジ側からキャリッジ側へインクが移動して貯留され、復路ではキャリッジ側からインクカートリッジ側へインクが移動して貯留されるという動きを繰り返す。
これにより、インクチューブ内をインクが往復移動してその流れにより顔料などの沈降しやすいインク成分が撹拌され、再分散される。
尚、インクの流動量は、圧力差が大きいほど、また圧力差が生じている時間が長いほど多くなる。そして、圧力差は主に加減速時の加速度の大きさと加速度が加わるインクチューブの長さに比例し、圧力差が生じている時間は加減速している時間に比例する。このため、スキャン幅(走査範囲)が長く、スキャン速度及び加速度が大きいほどインクの流動量は多くなる。
【0016】
また、インクカートリッジとインクチューブとの接続部は注射針のような細径のニードル部により接続される場合があり、該ニードル部の圧力損失によりインクチューブ内のインク流量が制限され、所望の流量が得られない場合がある。
このような場合、ニードル部のキャリッジ寄りのインクチューブ部分にキャリッジ側と同様な緩衝部を接続することによって、圧力損失が減り、かつインクチューブの両端に緩衝部を備えた状態になるので、インクチューブの加減速に伴い発生する圧力差により、インクチューブ内のインクは良好に往復移動する。
【0017】
また、制御部は、スリーピングモード又は印刷待機モードにおいて、キャリッジが停止してから記憶部に記憶したインクの種類に応じた所定沈降時間が経過すると指令部が駆動源を起動させてキャリッジを所定回数往復動させることで、インクチューブに滞留した沈降性インクのインク成分の沈降を防止することができる。
また、制御部は、電源投入直後において駆動源を起動してキャリッジを所定回数往復動させることで、インクチューブに滞留したインクの沈降成分を再分散させてから印刷を開始することで、印刷品質を均一に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】インクジェット記録装置の外観斜視図である。
【図2】インクジェット記録装置の走査部を示す模式図である。
【図3】インクジェット記録装置の制御系のブロック構成図である。
【図4】制御動作を示すフローチャートである。
【図5】インクチューブに気泡を混入させてインクの流動を確認するための試験装置の模式図である。
【図6】走査条件を変えて実験を行った場合の圧力変動と気泡振れ幅との関係を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る液体吐出装置の実施形態について詳細に説明する。本実施形態は液体吐出装置の一例としてインクジェット記録装置を用い、液体の一例として顔料系のインクを用いた場合について説明するものとする。以下の説明において、主走査方向は、印刷ユニットの長手方向(キャリッジが往復動する方向)、副走査方向は、ステージ部(吸着プレート)の長手方向(主走査方向と直交する方向)を指し示すものとする。
【0020】
図1は、インクジェット記録装置の外観を示す斜視図である。同図に示すように、インクジェット記録装置1は、例えばフラットベッド型インクジェット記録装置が用いられる。印刷ユニット4には、主走査方向に往復動するキャリッジ3が設けられている。このキャリッジ3には、対向するステージ部2(吸着プレート)に吸着支持された印刷対象である媒体にインクを吐出するインクジェットヘッド15が搭載されている。インクは、溶媒に対して顔料比重の大きい分散型のインクが用いられる。
【0021】
図2に示すように印刷ユニット4に固定されたインクを貯留するインクカートリッジ13(液体貯留部)からインクチューブ14を介して主走査方向に往復動するキャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド15にインクが供給される。インクジェットヘッド15には、スキャン(走査)に伴い屈曲が可能なインクチューブ14が接続されている。
【0022】
また、インクジェットヘッド15に接続するインクチューブ14には緩衝部16が設けられている。緩衝部16は圧力変動を緩和するダンパー機能や少量のインクを貯留する機能があるが、更に圧力を一定に保つためのレギュレータ機能を持つ部材であっても良いし、図2に示すように緩衝部16とインクジェットヘッド15との間にレギュレータ15aを入れても良い。緩衝部16はキャリッジ3の往復動によって滞留したインクに生ずる圧力変動によって容積変化し、インクチューブ14内に滞留したインクを流動させて撹拌する。具体的には、例えば図2においてキャリッジ3(緩衝部16)が右方向へ移動する際には緩衝部16におけるインク液による加圧が強まり、左方向に移動する際には緩衝部16にインク液の減圧が作用するため、キャリッジ3の往復動によって緩衝部16に容積変化を起こす。これによって、インクチューブ14内にインクの流れが発生して撹拌が行われる。尚、緩衝部16としては、例えば、インクの液圧変化により撓むダイヤフラムを備えた容器であってもよい。これによってダイヤフラムの可撓性を利用してインクチューブ14内に滞留するインクの流動を促進して沈降したインク成分を再分散させることができる。
【0023】
また、図2に示すように、インクカートリッジ13は、可撓性の容器にインクを貯留したものであり、インクチューブ14との接続部はニードル部14aにより接続される。インクの沈降性が高くインクチューブ14内のインクを更に大きく流動させたい場合には、上記ニードル部14aキャリッジ寄りのインクチューブ14にキャリッジ3側に設けた緩衝部16と同様の緩衝部16(図2破線部)を接続しても良い。これにより、インクチューブ14の両端に圧力損失が少なくインクの流動を促して、沈降したインク成分を効率よく再分散させることができる。
【0024】
印刷ユニット4は、図1に示すようにキャリッジ3が往復動する主走査方向(Y軸方向)と直交する副走査方向(X軸方向)に往復移動可能に設けられている。尚、媒体には、普通紙などの紙類のほかに、PVC(ポリ塩化ビニル),PLA(ポリ乳酸),PP(ポリプロピレン),PET(ポリエチレンテレフタレート),PC(ポリカーボネート),PMMA(ポリメタクリル酸メチル)などの樹脂シート、織布、不織布などの布シート、アルミやステンレスなどの金属シート、或いは複合材料からなる合成シートなどの各種材料が含まれるものとする。
【0025】
インクジェット記録装置の制御系について図3のブロック構成図を参照して説明する。
制御部17には、インクジェット記録装置の各部にコマンド(指令)を出力して印刷動作を制御するCPU(中央処理装置;指令部)17aや通常の印刷モードのほかに後述する電源投入モード、印刷前モード、待機若しくはスリープモードなど動作プログラムやインクの種類毎に静止状態でインク成分が沈降する沈降時間に関するデータが所定のテーブルに格納されたROM17bや、入力情報を一時記憶したりROM17aから動作プログラムを読みだしたり演算処理などのCPU17aによるワークエリアとして用いられるRAM17bなどの記憶部、キャリッジ3が停止してからの経過時間をカウントする計測部(タイマー)17dが設けられている。
【0026】
制御部17には、電源18から商用電源が供給されており、操作キーボード19より印刷用の入力データや指令が入力され、インク種IC20よりインクの種類や残量などの情報が入力され、保安センサ21からインクジェットヘッドHの発熱やキャリッジ3の走査位置などの保安情報が入力される。
また、制御部17からは、CPU17aからキャリッジ3を主走査方向に往復動させるスキャンモータ22に回転方向を含む駆動信号が出力され、インクジェットヘッド(印字ヘッド)Hに入力データに基づいて印刷信号が出力される。
【0027】
制御部17は、通常の印刷モードにおいて操作キーボード15から入力された印刷開始信号や印刷データに基づいてCPU17aから駆動信号を出力してスキャンモータ22を起動してキャリッジ3を往復動させるとともに、インクジェットヘッドHに印刷信号を出力して媒体に対して印刷が行われる。
【0028】
制御部17には、図4に示すように、入力データに基づいた通常の印刷モード以外にも装置がウォーミングアップ動作を開始する印刷前モード、装置が停止状態から電源スイッチ投入直後の電源投入モード、電源スイッチは投入されたまま印刷動作を待つ待機モード或いは装置の省電力を図るためのスリープモードなどの動作モードが設定されている。
【0029】
ここで、制御部17による制御動作について説明する。尚、キャリッジ3は静止状態では待機位置に停止しているものとする。待機位置においてインジェットヘッドHにはキャップでノズルが覆われてインクの乾燥を防ぐようになっている。
【0030】
先ず、制御部17は、インク種IC20より入力されたインク種や計測部17dに計測されたキャリッジ3の静止時間、保安センサ21による異常の有無、操作キーボード19からのコマンド入力や印刷情報の有無などの入力情報を収集し、CPU17aは入力情報に基づいて装置状態を把握する(ステップS1)。
【0031】
次いで、制御部17は、装置状態に応じたモード判定を行う。すなわち、印刷前モード、電源投入モード、待機モード或いはスリープモードのいずれかを判定する(ステップS2)。
印刷前モードの場合には、印刷開始直前の状態であるため、CPU17aはスキャンモータ22を駆動制御して、キャリッジ3を待機位置(キャップ位置)から一旦往復動(印刷前スキャン)させてから(ステップS3)通常の印刷動作を行う(ステップS4)。即ち、スキャンモータ22を往復動させてキャリッジ3を主走査方向に往復動させながら媒体にインクを吐出し、印刷ユニット4が副走査方向に移動してからキャリッジ3を往復動させる動作を繰り返して印刷が終了するとキャリッジ3は待機位置に戻る(ステップS5)。そしてステップS1に戻って同様の動作を繰り返す。
【0032】
また、ステップS2において、CPU17aは電源スイッチを投入直後の電源投入モードであると判定した場合には、スキャンモータ22を起動してキャリッジ3を所定回数往復動させることでウォーミングアップ動作を行わせる(ステップS6)。これにより、インクチューブ14に滞留したインクの沈降成分を再分散させてから印刷を開始することで、印刷品質を均一に保つことができる。尚、ウォーミングアップ動作を終了すると、キャリッジ3は待機位置に戻る(ステップS5)。
【0033】
また、ステップS2において、CPU17aは、スリーピングモード又は印刷待機モードであると判定した場合には、まず計測部(タイマー)17dはキャリッジ3が停止してから計測している計測時間が、ROM17bに記憶しているインクの種類に応じた所定の沈降時間を経過したか否か判定し(ステップS7)、経過していなければステップS1に戻って装置状態の把握(計測部17dによる計測)を続ける。計測部17dが所定沈降時間を経過していれば、CPU17aはスキャンモータ22を起動してキャリッジ3を所定回数往復動させることで、インクチューブ14に滞留したインクの沈降を防止することができる(沈殿防止スキャン;ステップS8)。尚、沈殿防止スキャンを終了すると、キャリッジ3は待機位置に戻る(ステップS5)。
【0034】
以上の制御動作を行うことで、格別な設備を設けることなくインクジェットヘッドHを搭載したキャリッジ3の移動動作を制御することで沈降性インクに含まれるインク成分の沈降を防ぎ或いはインク成分を再分散させて沈降性を有するインクを有効利用することが可能となる。
【0035】
出願人は、キャリッジ3の移動動作を制御することで、インクチューブ14に滞留するインクを流動させることができることを実験により確認した。先ず、図5A,Bにおいて実験装置の構成について説明する。図5Aはインクカートリッジ13とキャリッジ3までのインク流路を示す模式平面図、図5Bはその正面図である。
【0036】
ミマキエンジニアリング社製インクジェット印刷機(JV33‐260;試作機)を用いて、キャリッジ3に緩衝部16としてダンパー23を設けた。また、キャリッジ3内、インクチューブ14の中途部、インクカートリッジ13の近傍に各々圧力センサ24a,24b,24cを設けてキャリッジ3のスキャン条件(加速度、到達速度、スキャン幅)を変えて滞留するインクに生ずる圧力変動を測定した。また、インクの流量を確認しやすくするため、インクチューブ14内に気泡25を混入させて該気泡25の移動量から流量を求めた。気泡25の大きさは配管10mm分程度で一か所混入させた。尚インクチューブ径はφ2(mm)で使用インクはES3インク(Y)を用いた。
【0037】
図6の表図にあるように、キャリッジ3のスキャン条件は、移動速度を750(mm/s),1000(mm/s),1500(mm/s)、加速度1.0G,1.5G,2.0G、走査幅700(mm),1100(mm),2200(mm)の範囲で変えながら圧力変動、気泡振れ幅、流量を各々数値化した。
この結果、加速度1.0G,1.5G,2.0G、到達速度1500(mm/s)、スキャン幅2200(mm)の各条件下で気泡振れ幅20.0(mm)流量0.063(ml)の液流動が確認された。
【0038】
以上よりスキャン幅(走査範囲)が長く、スキャン速度が速いほど圧力変動や気泡の振れ幅が大きくなり、インクが往復移動していることがわかる。また、加速度の大きさについても影響は少ないものの、加速度が大きいほど圧力変動や気泡の振れ幅が大きくなる傾向が一部に見られた。
【符号の説明】
【0039】
1 インクジェット記録装置 2 ステージ部 3 キャリッジ 4 印刷ユニット 5a,5b 第一紫外線硬化ランプ 7 印刷カバー 8 ランプ収納カバー 9 第二紫外線硬化ランプユニット 10 カバー本体 11 開閉部材 12 電源ボックス 13 インクカートリッジ 14 インクチューブ 14a ニードル部 15 インクジェットヘッド 15a レギュレータ 16 緩衝部 17 制御部 17a CPU 17b ROM 17c RAM 18 電源 19 操作キーボード 20 インク種IC 21 インク貯留部 22 スキャンモータ 23 加圧ダンパー 24a,24b,24c 圧力センサ 25 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ユニットに支持された液体を貯留する貯留容器からチューブを介して主走査方向に往復動するキャリッジに搭載された液体吐出部に液体が供給され、前記キャリッジが主走査方向に往復動しながら対向する媒体に前記液体吐出部より液体を吐出する液体吐出装置であって、
前記液体吐出装置の記録動作を制御する制御部を備え、該制御部は通常の印刷モード以外のスキャンを行っていない時間帯で前記キャリッジを所定方向に所定回数走査させることで前記チューブ内の液体を流動させて撹拌することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は通常の印刷モード以外のスキャンを行っていない時間帯で前記キャリッジを所定回数往復動させることで前記チューブ内の液体を流動させて撹拌することを特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記キャリッジは、重力加速度1.0G乃至2.0Gの速度又は速度0.5乃至3.0(メートル毎秒)より好ましくは速度1.0乃至2.0(メートル毎秒)で走査させる請求項1又は2記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記チューブの一部に少なくとも1つの緩衝部が設けられており、該緩衝部は前記キャリッジの往復動によってチューブ内の液体に生ずる圧力変動によって容積変化することで前記チューブ内の液体を流動させて撹拌することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記緩衝部が前記チューブの液体吐出部との接続部分に設けられ、液体の圧力変化により撓むダイヤフラムを含むことを特徴とする請求項4記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御部には、駆動源を起動させて前記キャリッジを走査させる指令部と、インクの種類毎に静止状態でインク成分が沈降する沈降時間に関するデータが記憶されている記憶部と、前記キャリッジが停止してからの経過時間をカウントする計測部が設けられており、
前記指令部は、スリーピングモード又は印刷待機モードにおいて、前記計測部は前記キャリッジが停止してから前記記憶部に記憶したインクの種類に応じた所定沈降時間が経過すると前記駆動源を起動して前記キャリッジを所定回数往復動させることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御部は、電源投入モードにおいて、駆動源を起動して前記キャリッジを所定回数往復動させることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−183715(P2012−183715A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48202(P2011−48202)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】