説明

液体吐出記録ヘッド

【課題】記録不良を目立たないようにする。
【解決手段】記録ヘッド101の、千鳥状の第1のノズル列L1は、第1の共通液室112aと連通し、第1の共通液室の片側にある。千鳥状の第2のノズル列L2は、第1の共通液室と連通し、第1の共通液室を挟んで第1のノズル列L1と反対側にある。千鳥状の第3のノズル列L3は、第2の共通液室112bと連通し、第2の共通液室の片側にある。千鳥状の第4のノズル列L4は、第2の共通液室と連通し、第2の共通液室を挟んで第3のノズル列L3と反対側にある。第3のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、第1のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が90度以上270度以下の範囲内でずれており、第4のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、第2のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が90度以上270度以下の範囲内でずれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズル列を有する液体吐出記録ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の記録装置は、画像情報に基づいて紙やプラスチック薄板等の記録媒体上にドットパターンからなる画像を記録するように構成されている。この記録装置は、その記録方式により、インクジェット方式、ワイヤドット方式、サーマル方式、レーザービーム方式等に分類することができる。このうち、インクジェット方式を用いた記録装置(インクジェット記録装置)は、記録ヘッドのノズルの吐出口からインク滴(液体)を吐出飛翔させ、これを記録媒体に付着させて記録するよう構成されている。
【0003】
近年、記録装置に対し、高速記録、高解像度、高画像品質、低騒音などが要求されており、このような要求に応える記録装置の1つとして、インクジェット記録装置がある。
【0004】
このように、インクのような液体を吐出する記録装置に用いられる液体吐出記録ヘッドの構成について、以下で説明する。液体吐出記録ヘッドは、液体を吐出させるエネルギーを発生させるエネルギー発生素子、例えば電気熱変換素子が設けられた素子基板と、この素子基板に接合されて液体の供給路(流路)を構成する流路形成部材(オリフィス基板とも称す。)と、を備えている。流路形成部材は、液体が流動する複数のノズルを有し、ノズルの先端の開口部が、液滴を吐出する吐出口となっている。ノズルは、エネルギー発生素子によって気泡が発生する発泡室と、この発泡室に液体を供給する供給路とを有する。素子基板の発泡室内には、電気熱変換素子が配設されている。また、素子基板の、流路形成部材に接する主面には供給口が、その反対側の裏面には裏面供給口が、それらの間には共通液室が設けられている。また、流路形成部材には、素子基板上の電気熱変換素子に対向する位置に、吐出口が設けられている。
【0005】
以上のように構成された記録ヘッドは、裏面供給口から共通液室内に供給された液体が、供給口を通って各ノズルに供給され、発泡室内に充填される。発泡室内に充填された液体は、電気熱変換素子により膜沸騰されたときに発生する気泡によって、素子基板の主面に対してほぼ直交する方向に飛翔されて、吐出口から液滴として吐出される。
【0006】
ところで、液体吐出記録ヘッドにおいて、より高い解像度での記録画像を達成するためには、液滴を小さくし、記録媒体に形成されるドット径を小さくすることが望ましい。しかし、液滴を小さくした場合、紙などの記録媒体への単位時間あたりの打ち込み数を増大させないと、スループットが低下してしまう。そこで、単位時間あたりの打ち込み数を増大させる1つの方法としてノズル数を増大させることが考えられる。
【0007】
近年では、より高速に高精細の画像の記録を実現するため、より印字幅が広く、よりノズルの配置の密度の高いものが要求されている。以下、その要求に対応した液体吐出記録ヘッドと、その記録方法の従来例を説明する。
【0008】
この液体吐出記録ヘッドでは、シリコン基板上にエネルギー発生素子としてのヒーターが設けられており、ノズル材でノズルが形成されている。液体は、シリコン基板を貫通する穴として形成された液体供給口を通じて、シリコン基板の裏面から供給される。ヒーターに電気エネルギーを印加して液体を加熱、発泡させることで、液体を吐出口から吐出させ、記録媒体に記録を行う。ヒーターへの電気エネルギーの印加は、外部から電気コネクタを通じて入力される信号に応じて、電気回路基板およびフレキシブル回路基板を通じて、シリコン基板上に設けられた駆動トランジスタによって行われる。このような液体吐出記録ヘッドに、高密度、高精度のノズル及び吐出口を形成する方法が、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0009】
このような液体吐出記録ヘッドで高速の印字(画像の記録)を行うには、液体吐出口を記録媒体の幅いっぱいに多数個並べて配列することが知られている。この場合、液体吐出記録ヘッドに対して相対的に記録媒体を1度走査する間に、すべての印字データ(画像データ)を記録すること(フルマルチヘッドを用いた1パス描画方法)が可能である。このような液体吐出記録ヘッドにおいては、多数のノズルのうち、1つでも不良のノズルがあると、印字不良につながってしまうため、不良のノズルがあったとしても他のノズルを用いて印字不良を補完する方法が提案されている。そのような方法を、図7を用いて説明する。図7において、各正方形のマス501は記録媒体500上の各画素を示しており、黒いドット502は吐出された液体を示している。
【0010】
図7は、一部に不良のノズルがあった場合に、従来知られている、印字不良の改善方法の一例を示す。図面上、X方向に沿って、液体吐出記録ヘッドのノズル列を配置されており、記録媒体500に対して相対的にY方向に走査を行いながら印字を行っている。本来、図7(a)に示すような印字パターンを形成するところが、何らかの原因で液体を吐出できないノズルがあると、図7(b)に示すように白スジが形成されてしまう。これを改善するために、図7(c)に示すように、不吐出ノズルに隣接するノズルを用いて不吐出ノズルが液体を吐出するべき画素に隣接する位置に補完ドット503を吐出する。
【0011】
さらに、不吐出ノズルを補完する別の例として、特許文献3では、走査方向に沿って配置された一次ノズルと二次ノズルとが開示されている。一次ノズルと二次ノズルの一方に故障が発見されると、故障したノズルの圧力発生素子(エネルギー発生素子)に代わって他方のノズルの圧力発生素子が動作する。このように、故障したノズルによって形成されるべきデータ(画素)は、故障したノズルと走査方向の同じ軸上に位置する他のノズルによって形成される。
【0012】
走査方向の同じ軸上に複数のノズルがあると、不吐出ノズルの補完を行うことが可能となったり、スループット向上が可能になったりするだけでなく、記録媒体上の同一画素列に複数の異なるノズルから吐出した液滴を付与することができるという利点もある。これにより、マルチパスで描画したかのような高精細な画質を得ることができる。このことを、図8を用いて説明する。図8(a)は1つのノズル列L1のみを有し、同じ走査軸(走査方向Yに沿った軸)上には単一のノズルのみがある液体吐出記録ヘッドで記録媒体500に画像を形成する様子を示している。図8において、符号502で示すドットは、記録媒体500に着弾した液滴(着弾ドット)を示している。ノズル列L1を構成するノズルのうち、何らかの原因で記録媒体上の理想的な着弾位置からずれて液滴が着弾するノズルn1がある場合、記録画像には走査方向Yに沿ったスジ510が形成される(図8(a)参照)。これに対し、図8(b)では、4つのノズル列L1〜L4を有し、走査方向Yに沿った同じ軸上に4つの異なるノズルを備えた液体吐出記録ヘッドで記録媒体500に画像を形成する様子を示している。この場合、1つのノズルn1の不良による画像への影響を、他の3つの正常なノズルn2〜n4によって抑制することができる。つまり、ノズルn1からの液滴505は4つのドット毎に形成されるため、その影響が認識し難くなる。すなわち、図8(a)に示す単一のノズル列を備えた構成よりも、図8(b)に示す複数ノズル列を備えた構成の方が、高精細な画像を得ることができる。
【0013】
また、高精細な画像を得るために吐出する液滴の量を少なくして、ノズル列方向の記録密度を上げる方法がある。そのために、各ノズル列は、ノズルが単に直線状に配置されて成るのではなく、千鳥状にノズルを配置することが知られている。すなわち、共通液室からの距離が遠いノズル(以下、長ノズルと呼ぶこともある。)と距離が近いノズル(以下、短ノズルと呼ぶこともある。)とが交互に並べられることによって、千鳥状のノズル列を構成している。このような千鳥状のノズル列によって、直線状のノズル列よりもノズルの配置の密度が向上するため、画像の記録密度の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平5−330066号公報
【特許文献2】特開平6−286149号公報
【特許文献3】US5984455A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
高精細な画像を得るために、交互に配置された長ノズルと短ノズルとは、ほぼ同一の吐出量や吐出速度等の吐出特性が得られることが望ましい。しかしながら、製造公差、駆動条件および使用環境によって、長ノズルと短ノズルとで吐出特性の差が生まれる場合があった。このことから、長ノズルのみを用いて形成される記録媒体上の画素列と、短ノズルのみを用いて形成される画素列との間に、濃度ムラや着弾ズレが生じ、良好な画像が得られないことがあった。
【0016】
さらに、記録媒体上に液滴が着弾して形成されるドットの位置や形状が、共通液室からの各ノズルの向きによって異なり、このノズルの向きの違いが画質に影響することがあった。このことを、図9を用いて説明する。図9(b),(c)に示すように、基板910にスリット状に開口した共通液室912の両側にノズル列LL,LRを配置した場合、共通液室912から各ノズルNnl,Nnrへ連通する流路の方向Dnl,Dnrが、ノズル列LL,LRによって逆になる。すなわち、共通液室912であるスリット状の開口を中心軸として、ノズル列LLとLRとが線対照になるように設計されている。なお、図9(c)に示す例では、ノズル列LL,LRは、直線状に配置されたノズルによって構成されている。
【0017】
共通液室912をはさんで設けられた一対のノズル列の間で、ノズル形状(開口位置や、流路および吐出口などの形状)が製造過程で偏りを生じたり、使用中にノズル列によって吐出性能に経時的な変化を起こしたりすることがあった。そのため、ノズル列LL、LRで、吐出速度や吐出量といった特性に差が生まれる場合があった。
【0018】
加えて、ノズル列によって記録媒体上に着弾したドット形状が異なることがあった。液体吐出記録ヘッドの個々のノズルにおいて、1回の吐出動作で吐出する液滴が、主滴901a,901bとこれよりも小さなサテライト902a,902bに分断されることが知られている(図9(b)参照)。主滴901a,901bとサテライト902a,902bとは、飛翔速度や吐出角度が異なっているので、記録媒体に対して相対的に移動走査しながら吐出されたこれら2種の液滴は、記録媒体の異なる位置に着弾される。もし、サテライト902a,902bが形成するドットが目立ちすぎる場合には、画像データとは無関係な位置にドットが視認されることになり、画質の低下を引き起こす。この主滴901a,901bとサテライト902a,902bの着弾位置ズレの程度は、共通液室912から各ノズルNnl,Nnrに向かう流路916l,916rの向きによって異なることがある。このことを図9(a)に示している。ノズルNnl,Nnrから吐出された液滴の形成過程において、サテライト902a,902bは、流路916l,916rの向きの影響を受けやすく、主滴901a,901bと異なる吐出角度で飛翔することがある。このことから、記録媒体上に形成された、ノズル列LLから吐出された主滴901bとサテライト902bとの着弾位置のズレは、ノズル列LRから吐出された主滴901aとサテライト902aとの着弾位置のズレと異なることがある。そのため、どちらか一方だけのノズル列を用いて画素列を形成すると、他のノズル列のみで形成された画素列との間に濃度ムラやスジが生じ、良好な画像が得られないことがあった。
【0019】
以上のように、流路の長さが異なるノズルや、共通液室からの向きが異なるノズルなどが存在する場合、各ノズルから吐出される液滴の吐出性能に差が生じ、その結果、記録画像の画質が低下するという問題がある。特に、高密度に配置された千鳥状のノズル列では、流路の長さの差による吐出特性の違い、および共通液室から各ノズルへの流路の向きの違いによって生じる吐出特性の差やサテライトの着弾位置の違いに起因して記録画像が影響を受けるという課題がある。
【0020】
特に、記録幅に対応するノズル列の長さを有し、記録媒体を記録ヘッドに対して相対的に1回だけ走査して記録を行うラインヘッドの場合には、上記課題に起因する画質の低下が顕著に表れてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本発明の液体吐出記録ヘッドは、液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子を備えた基板と、前記基板にスリット状に互いに平行に形成され、前記液体が導入される第1の共通液室および第2の共通液室と、前記第1の共通液室と連通する複数のノズルであって、前記第1の共通液室からの距離が近いノズルと前記第1の共通液室からの距離が遠いノズルとが、前記第2の共通液室から遠い方の、前記第1の共通液室の片側で、前記第1の共通液室に沿って交互に並べられて構成される千鳥状の第1のノズル列と、前記第1の共通液室と連通するノズルであって、前記第1のノズル列と同一のピッチで並べられたノズルによって構成され、前記第1の共通液室を挟んで前記第1のノズル列と反対側に設けられた千鳥状の第2のノズル列と、前記第2の共通液室と連通するノズルであって、前記第1のノズル列と同一のピッチで並べられたノズルによって構成され、前記第1の共通液室に近い方の、前記第2の共通液室の片側に設けられた千鳥状の第3のノズル列と、前記第2の共通液室と連通するノズルであって、前記第1のノズル列と同一のピッチで並べられたノズルによって構成され、前記第2の共通液室を挟んで前記第3のノズル列と反対側に設けられた千鳥状の第4のノズル列と、を有する。前記第3のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第1のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が90度以上270度以下の範囲内でずれており、前記第4のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第2のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が90度以上270度以下の範囲内でずれている。
【発明の効果】
【0022】
本発明の構成によると、ノズルの種類に応じて、ノズルから吐出される液体の吐出性能にばらつきが生じても、スジやムラなどの記録不良を目立たないようにすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】液体吐出記録ヘッドの模式的斜視図である。
【図2】(a)は千鳥状のノズル列を構成するノズルの配置を示す概念図であり、(b)および(c)はそれぞれ(a)のA−A’線およびB−B’線に沿った概略断面図である。
【図3】(a)は第1の実施形態によるノズル配置を示す概略図であり、(b)は第2の実施形態によるノズル配置を示す概略図であり、(c)は第3の実施形態によるノズル配置を示す概略図である。
【図4】(a)は従来例のノズル配置とそれを用いて形成した液滴のドット配列を示す概略図であり、(b)は図3(a)に示すノズル配置とそれを用いて形成した液滴のドット配列を示す概略図である。
【図5】本発明の第3の実施形態による液体吐出記録ヘッドのノズル配置を示す概念図である。
【図6】本発明の第3の実施形態による液体吐出記録ヘッドのノズル配置を示す概略平面図である。
【図7】一部に不良のノズルを有する記録ヘッドで画像劣化を補完する方法の、従来知られた一例を示す概念図である。
【図8】従来の記録ヘッドのノズルから吐出した液滴によって記録媒体に形成した画像を示す概念図である。
【図9】主滴とサテライトとの着弾位置のズレが、共通液室からのノズルの向きによって異なることを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明は、一般的なプリント装置のほか、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリント部を有するワードプロセッサ等の装置、あるいは、これらの装置を複合した多機能記録装置等に適用することができる。以下の実施形態では、一例として、インクを吐出するインクジェット記録ヘッドについて説明するが、本発明の液体吐出記録ヘッドは、インクに限定されず任意の液体を吐出するものであって良い。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、液体吐出記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドと呼ぶ。)を模式的に示す斜視図である。
【0026】
記録ヘッド101は、上面に、例えば発熱抵抗体や圧力発生素子からなる記録素子(エネルギー発生素子)400が複数設けられたSi基板110(半導体基板)と、記録素子400を覆うようにSi基板110上に配置された流路形成部材111とを有している。図1では、便宜上、流路形成部材111の一部が破断して示されている。本実施形態では、加工が容易であるために、Si基板110を用いているが、本発明はSi以外の材料から成る基板を用いても良い。
【0027】
まず、記録ヘッド101の全体構成について簡単に説明する。Si基板110は、同基板110を貫通した状態に形成された共通液室112を有しており、共通液室112は基板110の上面に長尺な1つの液体供給口113を形成するように開口している。また、図1では一方側の列を構成する記録素子400のみしか示されていないが、液体供給口113の両側には、複数の記録素子(エネルギー発生素子)400が液体供給口113の長手方向に沿って並べられている。各記録素子400は、各ノズル100から液体を吐出するためのエネルギーを発生することができれば、どのようなものであっても良い。記録素子400は、一例として、発熱抵抗体で構成することができる。発熱抵抗体は、不図示の電気配線を通じて外部から電圧が印加されることにより発熱し、液体を加熱することで液体に吐出エネルギーを付与するものである。
【0028】
なお、図1では、記録素子400は、液体供給口113の長手方向に沿って直線的に並ぶように示されているが、実際には、後述するように千鳥状に配置されている。同様に、図1では、ノズル100が共通液室112に沿ってX方向に直線状に配置されているが、実際には、記録素子400は、図2(a)に示すように千鳥状に配置されている。また、液体供給口113およびそれに連通する共通液室112は、1つのみ図示されているが、実際には少なくとも2つ存在している。
【0029】
図2(a)は、千鳥状のノズル列を構成するノズルの配置を示す概念図である。図2(b)および図2(c)は、それぞれ、図2(a)のA−A’線およびB−B’線に沿った概略断面図である。
【0030】
流路形成部材111には、夫々の記録素子400に対向する位置に配置され、液体を吐出するための開口を有するノズル100が形成されている。これら複数のノズル100は、液体供給口113や共通液室112を挟んで両側にそれぞれ配列されている。流路形成部材111とSi基板110の上面との間には、共通液室112を通って液体供給口113から供給された液体を各ノズル100へ導くための複数の流路300が形成されている。
【0031】
なお、本実施形態では、Si基板110と流路形成部材111との2つの部材を用いて、共通液室112や流路300やノズル100などを構成しているが、単一の基板にこれらの要素を構成しても良い。これに代えて、3つ以上の部材から成る基板を用いてこれらの要素を構成しても良い。液体を吐出するためのエネルギーを発生する記録素子400は、このような基板に備えられる。
【0032】
記録ヘッド101は、Si基板110の共通液室112へ液体を供給するための流路(不図示)が形成された液体供給部材150に位置決め固定されて、次のように動作する。まず、不図示の電気配線通じて外部からの電圧を各記録素子400としての発熱抵抗体に印加すると、発熱抵抗体が発熱する。この熱エネルギーによって流路300内の液体は発泡し、それによって生じた気泡が流路300内の液体をノズル100から押し出す。このようにして、ノズル100の開口から液滴が吐出される。なお、このように構成された記録ヘッド101では、流路形成部材111の上面、すなわち液滴が吐出する開口が形成された吐出口面を紙などの記録媒体に対向させた状態で、上記動作を実施する。これにより、吐出された液滴が記録媒体に付着して記録が行われる。
【0033】
次に、本実施形態の記録ヘッド101に形成されたノズル列の配置を、図3を用いて詳細に説明する。
【0034】
図3(a)に示すように、記録素子が設けられた基板には、スリット状に互いに平行に形成された第1の共通液室112aおよび第2の共通液室112bが形成されている。これらの共通液室112a,112bには、ノズル100から吐出される液体が導入される。各共通液室112a,112bを挟んで両側には千鳥状のノズル列(第1〜第4のノズル列)L1,L2,L3,L4が形成されている。なお、図3(a)では、千鳥状のノズル列L1〜L4を構成するノズルのうちの2つのノズルが示されており、つまりノズル列方向Xに沿って一周期程度示されている。
【0035】
第1のノズル列L1と第3のノズル列L3とは、第1のノズル100aと第2のノズル100bとが交互に並べられて構成され、千鳥状になっている(図2(a)も参照)。第1のノズル100a(以下、「左向きの短ノズル」とも呼ぶ。)は、共通液室112a,112bからの距離が近く、第2のノズル100b(以下、「左向きの長ノズル」とも呼ぶ。)は、共通液室112a,112bからの距離が遠い。第1および第2のノズル100a,100bは共通液室112a,112bから左向きに延びている。
【0036】
第1のノズル列L1は、第1の共通液室112aの片側であって、第2の共通液室112bから遠い方に位置している。第3のノズル列L3は、第2の共通液室112bの片側であって、第1の共通液室112aに近い方に位置している。第1のノズル列L1を構成する各ノズルは、第1の共通液室112aと連通しており、第3のノズル列L3を構成する各ノズルは、第2の共通液室112bと連通している。
【0037】
第2のノズル列L2と第4のノズル列L4とは、第3のノズル100cと第4のノズル100dとが交互に並べられて構成され、千鳥状になっている。第3のノズル100c(以下、「右向きの短ノズル」とも呼ぶ。)は、共通液室112a,112bからの距離が近く、第4のノズル100b(以下、「右向きの長ノズル」とも呼ぶ。)は、共通液室112a,112bからの距離が遠い。第3および第4のノズル100a,100bは共通液室112a,112bから左向きに延びている。
【0038】
第2のノズル列L2は、第1の共通液室112aを挟んで第1のノズル列L1と反対側に設けられている。第4のノズル列L4は、第2の共通液室112bを挟んで第3のノズル列L3と反対側に設けられている。第2のノズル列L2を構成するノズルは第1の共通液室112aと連通しており、第4のノズル列L4を構成するノズルは第2の共通液室112bと連通している。第1〜第4のノズル列L1〜L4を構成するノズルは同一のピッチで並べられている。
【0039】
本実施形態では、同一のノズル列内で互いに隣接するノズル(長ノズルと短ノズル)の間の、ノズル列方向Xの間隔は1200dpiとした。それぞれのノズル100a〜100dからは、ほぼ同一体積の液滴が吐出されるよう設計されている。液体として複数色のインクを吐出し、記録媒体にカラー画像を記録する場合、第1の共通液室112aと第2の共通液室112bには同色のインクが供給されることが好ましい。これにより、第1〜第4のノズル列L1〜L4を構成するノズルの全てから、同色のインクが吐出されることになる。
【0040】
第3のノズル列L3を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第1のノズル列L1を構成するノズルの位置と比較して、位相が90度以上270度以下の範囲内でずれている。また、第4のノズル列L4を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第2のノズル列L2を構成するノズルの位置と比較して、位相が90度以上270度以下の範囲内でずれている。
【0041】
ここで、位相とは、ノズル列を構成するノズル配置を波形とみなしたときの、波形の位置を言い、1周期に2つのノズル(長ノズルおよび短ノズル)が含まれている。また、各ノズル列L1〜L4の長ノズル同士が走査方向Yの同一軸上に存在するとき、位相が揃っている(同一)と定義する。
【0042】
上記構成によれば、記録ヘッド101は、共通液室112a,112bからの長さの違い、および共通液室112a,112bからの向きの違いに応じて、4種類のノズル100a〜100dを有している。そして、概ね走査方向Yに沿って、これらの4種類のノズル100a〜100dの全てが配列される。具体的には、4種類のノズル100a〜100dは、走査方向Yの、完全に同一の軸上に配列する必要は無く、ノズル列方向Xの、半周期分の幅Wの範囲内に4種類のノズル100a〜100dが存在することになる。半周期分の幅Wの範囲内に存在する4種類のノズル100a〜100dから吐出された液滴は、記録媒体の略同一の画素列を形成する。
【0043】
これにより、概ね走査方向Yに4種類のノズルが並ぶため、記録媒体の略同一画素列に異なる種類のノズルから吐出された液滴(ドット)が混在する。このため、走査方向Yに沿った全ての画素列には、4種類のノズルから吐出された液滴が順番に形成される。したがって、製造公差のばらつきや駆動条件、使用環境に起因して、ノズルの種類ごとにノズルの吐出性能に差が生じたとしても、スジやムラなどの記録不良を目立たないようにすることができる。
【0044】
特に、ノズル列L1〜L4の長さが記録媒体の記録幅に対応し、ノズル列方向Xに垂直な走査方向Yに、記録媒体に対して相対的に1度だけ走査しつつ記録を行う記録ヘッド101であっても、記録画像に対してスジやムラを目立たなくすることができる。
【0045】
また、上記構成によれば、各ノズル列L1〜L4を構成するノズルが千鳥状に配列されているため、ノズルの密度が高いという利点もある。
【0046】
図3(a)に示す例では、第2のノズル列L2を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第1のノズル列L1を構成するノズルの位置と比較して、位相が180度ずれている。第3のノズル列L3を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第1のノズル列L1を構成するノズルの位置と比較して、位相が180度ずれている。また、第4のノズル列L4を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第2のノズル列L2を構成するノズルの位置と比較して、位相が180度ずれている。これに代えて、第2のノズル列L2を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第1のノズル列L1を構成するノズルの位置と位相が同じであっても良い。
【0047】
この場合、各ノズル列の第n番目のノズルにおいて、走査方向Yの同一軸上に、左向きの短ノズル100aと、右向きの長ノズル100dと、左向きの長ノズル100bと、右向きの短ノズル100cとの4つの異なる種類のノズルが配置される。ここで、nは、ノズル列を構成するノズルの数以下の自然数である。このとき、隣接する画素列、すなわち第(n+1)番目や(n−1)番目のノズルにおいても、同様に、走査方向の同一軸上には、4つの異なる種類のノズル100a,100b,100c,100dが配置される。
【0048】
このようなノズルの配置において、ノズル列方向Xと垂直な走査方向Yに記録媒体を相対的に走査させて記録するときに、これら4つの異なるノズル100a〜100dから吐出して着弾したドットは同じ画素列に並ぶ。このため製造公差のブレや駆動条件、使用環境によって、流路の向きや長さの異なるノズルに応じて、当該ノズルから吐出される液滴の量や速度などの吐出特性に差が生じたとしても、スジやムラなどの印字不良(記録不良)が目立たくなる。
【0049】
このことを、図4を参照して説明する。図4(a)は1つの共通液室の両側に千鳥状のノズル列を有する従来例を示しており、図4(b)は図3(a)で示す本発明の一例を示している。図4(a)および図4(b)の上段の図はノズルの配置を示しており、下段の図はこれらのノズルも用いて記録媒体500に記録を行った様子を示している。
【0050】
従来例では、図4(a)に示すように、1つの共通液室112の両側に合わせて2つのノズル列L1,L2を備えている。第1のノズル列L1では、それぞれ流路の比較的短い第1のノズル100aおよび流路の比較的長い第2のノズル100bが交互に配置している。第2のノズル列L2では、それぞれ流路の比較的短い第1のノズル100cおよび流路の比較的長い第2のノズル100dが交互に配置している。従来例の構成では、流路の向きおよび流路の長さの違いによって4種類のノズルが存在する。ところが、ノズル列が2列であるために、走査方向Yの同一軸上には2種類のノズルしか配置できない。たとえば、ある走査軸上には流路の向きの異なる流路の長い2種類のノズル100b,100dが配置し、別の走査軸上には流路の向きの異なる流路の短い2種類のノズル100a,100cが配置される。すなわち走査軸ごとに配置されるノズルの組み合わせが異なる。
【0051】
ノズルは、その種類に応じて、吐出量、吐出速度、吐出角度などの吐出特性に差が生じたり、あるいは主滴とサテライトの飛翔軌道に差が生じたりすることがある。この場合、記録媒体500上に着弾した液滴(着弾ドット)の形状に差が生じる。製造公差や駆動条件や使用環境などによって、たとえば、流路の短いノズルの吐出量が比較的大きく、流路の向きよって主滴とサテライトの相対的な着弾位置が異なった場合、従来例では、図7(a)の下段の図に示すように、濃淡ムラが生じる。これは、長ノズル100b,100dのみによるドット配列と短ノズル100a,100cのみによるドット配列とが存在するからである。
【0052】
これに対して、本実施形態の記録ヘッド101では、図7(b)に示すように、走査方向Yに沿って、全ての軸上に4種類の異なるノズル100a〜100dが混在する。つまり、走査方向Yに沿った各画素列に向けて液体を吐出するノズルは、4種類の異なるノズルによって構成される。そのために、着弾ドットの形状にノズルの種類による差が生じたとしても、異なる画素列の間で画像のムラを低減させることが可能となる。
【0053】
上述したように、第1の共通液室112aと第2の共通液室112bに同一色のインクが供給される場合、第1〜第4のノズル列L1〜L4から吐出されるインクが同一色のものになるため、同一色で構成された画像のムラを低減させることができるようになる。
【0054】
(第2の実施形態)
本実施形態の記録ヘッドの全体構成の説明については、先の第1の実施形態と同様であるので省略する。以下、本実施形態のノズルの配置について、図3(b)を用いて説明する。
【0055】
本実施形態においても、基板110にスリット状に開口した少なくとも2つ共通液室112a,112bの両側に、千鳥状に配置されたノズル列L1〜L4がある。これらのノズル列L1〜L4を構成するノズルのピッチは、各ノズル列で同一である。
【0056】
本実施形態では、第2のノズル列L2を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第1のノズル列L1を構成するノズルの位置と比較して、位相が90度ずれている。そして、第3のノズル列L3を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第1のノズル列L1を構成するノズルの位置と比較して、位相が180度ずれている。また、第4のノズル列L4を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第2のノズル列L2を構成するノズルの位置と比較して、位相が180度ずれている。これに代えて、第2のノズル列L2を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第1のノズル列L1を構成するノズルの位置と比較して、位相が270度ずれていても良い。
【0057】
本構成では、1つのノズル列内における互いに隣接するノズル間(長ノズルと短ノズルとの間)の、ノズル列方向Xの間隔は、1200dpiとした。上記のように位相を設定したことで、共通液室112a,112bを挟む2つのノズル列のうちの一方が、他方のノズル列より1/4周期(半ピッチ:2400dpi)分だけずれる。
【0058】
記録媒体上の、同一の画素列を構成する互いに隣接する画素間の間隔を、1つのノズル列内の互いに隣接するノズル間の間隔(1200dpi)と同じにすることが好ましい。この場合、第1のノズル列L1の第n番目のノズルと、第2のノズル列L2の第n番目のノズルとは、同一の画素列に液体を吐出するため、略同一の走査軸(走査方向Yに沿った軸)上に配置されていると考えることができる。
【0059】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、概ね走査軸上に沿って、異なる4種類のノズルを混在できる。そのために、着弾ドットの形状にノズル形状による差があったとしても、画素列間のムラを低減させることが可能となる。
【0060】
第1の共通液室112aと第2の共通液室112bに同一色のインクが供給される場合、第1〜第4のノズル列L1〜L4から吐出されるインクが同一色のものになるため、同一色で構成された画像のムラを低減させることができるようになる。
【0061】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の記録ヘッド全体の構成の説明については、先の第1および第2の実施形態と同様であるので省略する。本実施形態の記録ヘッドのノズル配置を、図3(c)、図5および図6を用いて説明する。
【0062】
本実施形態においても、基板110にスリット状に開口した少なくとも2つ共通液室112a〜112dの両側に、千鳥状に配置されたノズル列L1〜L8がある。本実施形態では、第1の共通液室112a、第2の共通液室112b、第3の共通液室112cおよび第4の共通液室112dを有することが好ましい。1つのノズル列内における互いに隣接するノズル(長ノズルおよび短ノズル間)の、ノズル列方向Xの間隔は1200dpiとした。また、各共通液室112a〜112dを挟む2つのノズル列は、1/4周期(半ピッチ:2400dpi)だけずれている。これらのノズル列L1〜L8を構成するノズルのピッチは、各ノズル列で同一である。
【0063】
具体的には、第2のノズル列L2を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第1のノズル列L1を構成するノズルの位置と比較して、位相が90度または270度ずれている。第3のノズル列L3を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第1のノズル列L1を構成するノズルの位置と比較して、位相が135度または315度ずれている。そして、第4のノズル列L4を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第2のノズル列L2を構成するノズルの位置と比較して、位相が135度または315度ずれている。
【0064】
同様に、第6のノズル列L6を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第5のノズル列L5を構成するノズルの位置と比較して、位相が90度または270度ずれている。第7のノズル列L7を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第5のノズル列L5を構成するノズルの位置と比較して、位相が135度または315度ずれている。そして、第8のノズル列L8を構成するノズルの、ノズル列方向Xの位置は、第7のノズル列L7を構成するノズルの位置と比較して、位相が135度または315度ずれている。
【0065】
さらに、各ノズル列L1〜L8を構成するノズルは、走査方向Yにおいて、同一の軸上に重ならないようにずらされて配置されている。つまり、各ノズル列L1〜L8を構成するノズルは、走査方向Yにおいて、細かいピッチで相対的にずらされることになる。
【0066】
具体的に、第3の実施形態では、図5に示すように、1つの共通液室の両側に配置されたノズル列は互いに半ピッチ(2400dpi)ずれている。第1〜第4のノズル列L1〜L4を構成するノズルと、第5〜第8のノズル列L5〜L8を構成するノズル列とは、互いに9600dpiずれて配されている。
【0067】
記録媒体上の同一画素列内の互いに隣接する画素間の間隔を、ノズル列内の互いに隣接するノズル間の間隔(1200dpi)と同じに設定すると、走査方向Yに沿って略同一の軸上に、各ノズル列L1〜L8から1つずつ合わせて8つのノズルが存在する。厳密には、これらの8つのノズル位置は、9600dpiだけ互いにずれて配されている。図5および図6に示す例では、各ノズル列L1〜L8の、たとえば第n番目のノズルには、走査方向Yの略同一軸上に、4種類の異なるノズル100a〜100dが2組存在する。つまり、左向きの短ノズル100aと、左向きの長ノズル100bと、右向きの短ノズル100cと、右向きの長ノズル100dとが、2つずつ配置される。つまり、ノズル列L1〜L8の半周期の幅W内に、4種類の異なるノズル100a〜100dが2組存在することになる。この場合、次の画素列、すなわち第(n+1)番目のノズルに対しても、走査方向Yの略同一軸上に、4種類の異なるノズル100a〜100dが2組配置される。
【0068】
このようなノズル配置にすることで、製造公差のブレや駆動条件、使用環境によって、長ノズルと短ノズルから吐出される液滴の量や吐出速度などの吐出特性に差が生じたとしても、スジやムラなどの画像不良を目立たないようにすることが出来る。これは、第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、記録媒体の同一画素列上に、4種類のノズルから吐出されたドットが着弾して混在するためである。特に、ノズル列の長さが記録媒体に記録する画像の幅に対応する長さであり、記録媒体をヘッドに対して相対的に1回だけ走査して記録を行うラインヘッドの場合にも、スジやムラなどの画像不良を目立たないようにすることが出来るという利点がある。
【0069】
第1の共通液室112aと第2の共通液室112bに同一色のインクが供給される場合、第1〜第4のノズル列L1〜L4から吐出されるインクが同一色のものになるため、同一色で構成された画像のムラを低減させることができるようになるという利点がある。
【符号の説明】
【0070】
100a 第1のノズル
100b 第2のノズル
100c 第3のノズル
100d 第4のノズル
101 記録ヘッド
112a 第1の共通液室
112b 第2の共通液室
L1 第1のノズル列
L2 第2のノズル列
L3 第3のノズル列
L4 第4のノズル列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子を備えた基板と、
前記基板にスリット状に互いに平行に形成され、前記液体が導入される第1の共通液室および第2の共通液室と、
前記第1の共通液室と連通する複数のノズルであって、前記第1の共通液室からの距離が近いノズルと前記第1の共通液室からの距離が遠いノズルとが、前記第2の共通液室から遠い方の、前記第1の共通液室の片側で、前記第1の共通液室に沿って交互に並べられて構成される千鳥状の第1のノズル列と、
前記第1の共通液室と連通するノズルであって、前記第1のノズル列と同一のピッチで並べられたノズルによって構成され、前記第1の共通液室を挟んで前記第1のノズル列と反対側に設けられた千鳥状の第2のノズル列と、
前記第2の共通液室と連通するノズルであって、前記第1のノズル列と同一のピッチで並べられたノズルによって構成され、前記第1の共通液室に近い方の、前記第2の共通液室の片側に設けられた千鳥状の第3のノズル列と、
前記第2の共通液室と連通するノズルであって、前記第1のノズル列と同一のピッチで並べられたノズルによって構成され、前記第2の共通液室を挟んで前記第3のノズル列と反対側に設けられた千鳥状の第4のノズル列と、を有する液体吐出記録ヘッドであって、
前記第3のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第1のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が90度以上270度以下の範囲内でずれており、
前記第4のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第2のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が90度以上270度以下の範囲内でずれている、液体吐出記録ヘッド。
【請求項2】
前記第2のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第1のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が同じであるか、または位相が180度ずれており、
前記第3のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第1のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が180度ずれており、
前記第4のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第2のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が180度ずれている、請求項1に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項3】
前記第2のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第1のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が90度または270度ずれており、
前記第3のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第1のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が180度ずれており、
前記第4のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第2のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が180度ずれている、請求項1に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項4】
前記第2のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第1のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が90度または270度ずれており、
前記第3のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第1のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が135度または315度ずれており、
前記第4のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第2のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が135度または315度ずれている、請求項1に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項5】
前記第2の共通液室を挟んで前記第1の共通液室と反対側に設けられた第3の共通液室と、前記第3の共通液室を挟んで前記第2の共通液室とは反対側に設けられた第4の共通液室と、
前記第3の共通液室と連通するノズルであって、前記第1のノズル列と同一のピッチで並べられたノズルによって構成され、前記第1の共通液室に近い方の、前記第3の共通液室の片側に設けられた千鳥状の第5のノズル列と、
前記第3の共通液室と連通するノズルであって、前記第1のノズル列と同一のピッチで並べられたノズルによって構成され、前記第3の共通液室を挟んで前記第5のノズル列と反対側に設けられた千鳥状の第6のノズル列と、
前記第4の共通液室と連通するノズルであって、前記第1のノズル列と同一のピッチで並べられたノズルによって構成され、前記第1の共通液室に近い方の、前記第4の共通液室の片側に設けられた千鳥状の第7のノズル列と、
前記第4の共通液室と連通するノズルであって、前記第1のノズル列と同一のピッチで並べられたノズルによって構成され、前記第4の共通液室を挟んで前記第7のノズル列と反対側に設けられた千鳥状の第8のノズル列と、をさらに有し、
前記第6のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第5のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が90度または270度ずれており、
前記第7のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第5のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が135度または315度ずれており、
前記第8のノズル列を構成するノズルの、ノズル列に沿った方向の位置は、前記第6のノズル列を構成するノズルの位置と比較して、位相が135度または315度ずれており、
前記各ノズル列を構成するノズルが、ノズル列に沿った方向に垂直な走査方向において、同一の軸上に重ならないようにずらされて配置されている、請求項4に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項6】
前記液体として複数色のインクを吐出して記録媒体に記録を行う液体吐出記録ヘッドであって、
前記第1の共通液室と前記第2の共通液室には同色のインクが供給される、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項7】
前記液体として複数色のインクを吐出して記録媒体に記録を行う液体吐出記録ヘッドであって、
前記第1の共通液室、前記第2の共通液室、前記第3の共通液室および前記第4の共通液室には同色のインクが供給される、請求項5に記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項8】
前記ノズル列の長さが記録媒体に記録する画像の幅に対応する長さであり、
前記ノズル列を構成するノズルが並んだ方向に垂直な走査方向に、前記記録媒体に対して相対的に1度だけ走査しつつ液体を吐出することで、前記記録媒体に記録を行うように構成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の液体吐出記録ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−16892(P2012−16892A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155840(P2010−155840)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】