説明

液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子、および圧電セラミックス

【課題】環境負荷が小さく、歪量および信頼性が向上した圧電素子を備えた液体噴射ヘッド等を提供する。
【解決手段】液体噴射ヘッド600は、ノズル孔612に連通する圧力発生室622と、圧電体層20、及び前記圧電体層に電圧を印加する電極30を有する圧電素子100と、を含み、前記圧電体層は、ビスマス、バリウム、鉄、及びチタンを含むペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなり、前記圧電体層は、(111)面の配向強度αの、(100)面の配向強度βに対する強度比γ(α/β)が、3以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子、および圧電セラミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インクジェットプリンター等の液体噴射装置に用いられるインクジェット式記録ヘッドなどの液体噴射ヘッドが知られている(特許文献1参照)。このような液体噴射ヘッドに備えられる圧電素子の圧電材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(組成式Pb(Zr、Ti)Oで表され、「PZT」と略称される圧電セラミックス)などのPZT系圧電材料が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
鉛の含有量を抑えた圧電セラミックスは、一般的にPZT系圧電セラミックスに比べて歪量が小さい。しかしながら、近年、環境問題の観点から、PZT系圧電材料の代替材料として、鉛の含有量を抑えたペロブスカイト型酸化物の圧電材料が望まれている。したがって、鉛の含有量を抑えた圧電セラミックスであって、歪量および信頼性が向上した圧電セラミックスを用いた圧電素子を備える液体噴射ヘッドが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−211140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のいくつかの態様のいずれかによれば、環境負荷が小さく、歪量および信頼性が向上した圧電セラミックスを用いた圧電素子を備える液体噴射ヘッドを提供することができる。また、本発明のいくつかの態様のいずれかによれば、上記圧電セラミックス、上記圧電素子、および上記液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る液体噴射ヘッドは、
ノズル孔に連通する圧力発生室と、
圧電体層、及び前記圧電体層に電圧を印加する電極を有する圧電素子と、
を含み、
前記圧電体層は、ビスマス、バリウム、鉄、及びチタンを含むペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなり、
前記圧電体層は、(111)面の配向強度αの、(100)面の配向強度βに対する強度比γ(α/β)が、3以上である。
【0007】
本発明によれば、環境負荷が小さく、歪量および信頼性が向上した圧電素子を備える液体噴射ヘッドを提供することができる。
【0008】
(2)本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、
前記複合酸化物において、前記バリウムに対する前記ビスマスの組成比(XBi/Ba)は、70/30≦XBi/Ba≦80/20であってもよい。
【0009】
(3)本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、
前記圧電体層は、(111)面に単一配向していてもよい。
【0010】
これによれば、より歪量が向上した圧電素子を備える液体噴射ヘッドを提供することができる。
【0011】
(4)本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、
前記電極は、前記圧力発生室側の第1電極と、前記圧電体層を挟んで前記第1電極と対向する第2電極と、を含み、
前記第1電極は、複数の導電層が積層されてなり、前記導電層の内で最も前記圧電体層側に位置する導電層は、導電性ストロンチウム化合物であってもよい。
【0012】
(5)本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、
前記導電性ストロンチウム化合物は、ルテニウム酸ストロンチウムであってもよい。
【0013】
(6)本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、
前記導電性ストロンチウム化合物は、ニオブが添加されたチタン酸ストロンチウムであってもよい。
【0014】
(7)本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、
前記導電性ストロンチウム化合物は、(111)面に優先配向していてもよい。
【0015】
(8)本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、
前記圧力発生室と前記圧電素子との間に設けられた基板を更に有し、
前記基板の材質は、シリコン基板であってもよい。
【0016】
(9)本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、
前記複合酸化物は、マンガン、コバルト、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、及びチタンのうち少なくとも1つを有する添加物を更に含んでいてもよい。
【0017】
(10)本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、
前記複合酸化物の結晶系は、疑立方晶であってもよい。
【0018】
(11)本発明に係る液体噴射装置は、本発明に係る液体噴射ヘッドを有する。
【0019】
本発明によれば、環境負荷が小さく、歪量および信頼性が向上した圧電素子を備える液体噴射装置を提供することができる。
【0020】
(12)本発明に係る圧電素子は、
圧電体層と、
前記圧電体層に電圧を印加する電極と、
を含み、
前記圧電体層は、ビスマス、バリウム、鉄、及びチタンを含むペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなり、
前記圧電体層は、(111)面の配向強度αの、(100)面の配向強度βに対する強度比γ(α/β)が、3以上である。
【0021】
本発明によれば、環境負荷が小さく、歪量および信頼性が向上した圧電素子を提供することができる。
【0022】
(13)本発明に係る圧電素子において、
前記複合酸化物において、前記バリウムに対する前記ビスマスの組成比(XBi/Ba
)は、70/30≦XBi/Ba≦80/20であってもよい。
【0023】
(14)本発明に係る圧電素子において、
前記圧電体層は、(111)面に単一配向していてもよい。
【0024】
(15)本発明に係る圧電素子において、
前記電極として、第1電極と、前記圧電体層を挟み前記第1電極と対向する第2電極と、を含み、
前記第1電極は、複数の導電層が積層されてなり、前記導電層の内で最も前記圧電体層側に位置する導電層は、導電性ストロンチウム化合物であってもよい。
【0025】
(16)本発明に係る圧電素子において、
前記導電性ストロンチウム化合物は、ルテニウム酸ストロンチウムであってもよい。
【0026】
(17)本発明に係る圧電素子において、
前記導電性ストロンチウム化合物は、ニオブが添加されたチタン酸ストロンチウムであってもよい。
【0027】
(18)本発明に係る圧電素子において、
前記導電性ストロンチウム化合物は、(111)面に優先配向していてもよい。
【0028】
(19)本発明に係る圧電素子において、
前記複合酸化物は、マンガン、コバルト、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、及びチタンのうち少なくとも1つを有する添加物を更に含んでいてもよい。
【0029】
(20)本発明に係る圧電素子において、
前記複合酸化物の結晶系は、疑立方晶であってもよい。
【0030】
(21)本発明に係る圧電セラミックスは、
ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる圧電セラミックスであって、
前記複合酸化物は、ビスマス、バリウム、鉄、及びチタンを含み、
前記前記複合酸化物における(111)面の配向強度αの、(100)面の配向強度βに対する強度比γ(α/β)は、3以上である。
【0031】
本発明によれば、環境負荷が小さく、歪量および信頼性が向上した圧電セラミックスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図2】実施例1、2および比較例1のX線回折パターンを示すグラフ。
【図3】実施例1、2および比較例1のX線回折パターンを示すグラフ。
【図4】比較例2、3のX線回折パターンを示すグラフ。
【図5】比較例2、3のX線回折パターンを示すグラフ。
【図6】実施例3、4、5のX線回折パターンを示すグラフ。
【図7】実施例3および比較例4、5のX線回折パターンを示すグラフ。
【図8】実施例1および比較例1の印加電圧に対する歪量を示すグラフ。
【図9】実施例1の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフ。
【図10】比較例1の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフ。
【図11】実施例3の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフ。
【図12】比較例4の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフ。
【図13】比較例5の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフ。
【図14】実施例3、4、5のヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフ。
【図15】実施例3、4、5の印加電圧に対する歪量を示すグラフ。
【図16】実施例1、2および比較例1の耐電圧性を示すグラフ。
【図17】実施例3、4、5の耐電圧性を示すグラフ。
【図18】実施例3、6のX線回折パターンを示すグラフ。
【図19】実施例3および比較例6のX線回折パターンを示すグラフ。
【図20】実施例3および比較例6のX線回折パターンを示すグラフ。
【図21】本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す断面図。
【図22】本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す分解斜視図。
【図23】本実施形態に係る液体噴射装置を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
1.圧電セラミックス
まず、本実施形態に係る圧電セラミックスについて説明する。本実施形態に係る圧電セラミックスは、ペロブスカイト型の結晶構造を有する複合酸化物を主成分とする。つまりは、圧電セラミックスは、製造工程において不可避の不純物を含んでいてもよい。本実施形態に係る複合酸化物は、一般式ABOで表され、Aサイトの元素の総モル数と、Bサイトの元素の総モル数と、酸素原子のモル数の比は、1:1:3が標準であるが、ペロブスカイト構造をとり得る範囲内で、1:1:3からずれていてもよい。
【0035】
本実施形態に係る複合酸化物は、ペロブスカイト型構造の複合酸化物からなり、Aサイト元素として、ビスマス(Bi)およびバリウム(Ba)を含み、Bサイト元素として、鉄(Fe)、およびチタン(Ti)を含む。本実施形態に係る複合酸化物の少なくとも一部は、ビスマスフェライト(BiFeO)、およびチタン酸バリウム(BaTiO)の混晶セラミックスからなる固溶体(以下、「BFO−BT系セラミックス」ともいう)であってもよい。
【0036】
本実施形態に係る複合酸化物は、例えば、マンガン(Mn)、コバルト(Co)などの任意の添加物(例えば、含有率10mol%以下程度)を加えることで特性改善をすることが知られている。本実施形態に係る複合酸化物は、本発明の効果を得られる範囲であれば、当然このような添加物を更に含んでいてもよい。例えば、本実施形態に係る複合酸化物は、マンガン(Mn)を添加物として含有していてもよい。その他の添加物としては、コバルト、クロム、アルミニウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、ニッケル、亜鉛、ケイ素、ランタン、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム等を挙げることができる。
【0037】
本実施形態に係る複合酸化物において、Aサイト元素の総量に対するビスマスの割合をx(0<x<1)としたとき、xは、0.7≦x≦0.8の範囲内であってもよい。また、本実施形態に係る複合酸化物において、Bサイト元素の総量に対するチタンの割合をy(x+y=1、0<y<1)としたとき、yは、0.2≦y≦0.3の範囲内であってもよい。換言すれば、バリウム(Ba)に対するビスマス(Bi)の組成比をXBi/Baとした場合、XBi/Baは70/30≦XBi/Ba≦80/20であることができる。
【0038】
つまりは、本実施形態に係る複合酸化物は、下記一般式(1)で表されるペロブスカイト型構造からなり、0.7≦x≦0.8、0.2≦y≦0.3、x+y=1である複合酸
化物であってもよい。ここで、下記一般式(1)において、Mはマンガンやコバルト等の添加物である。一般式(1)において、添加物は、含有率が鉄(Fe)元素に対して5mol%となるように添加されている。しかしながら、これに限定されず、本発明の効果を得られる範囲であれば、添加物Mの添加量は適宜調整することができる。
(Bi、Ba)(Fe0.95x、M0.05x、Ti)O・・・(1)
【0039】
例えば、特許文献の特開2010−254560において、BFO−BT系セラミックス(xBiFeO−yBaTiO)が、0.7≦x≦0.8、0.2≦y≦0.3、x+y=1の組成比である場合、BFO−BT系セラミックスの結晶系は疑立方晶となり、それ以外の組成比である場合は菱面体晶となることが報告されている。これによれば、BFO系のセラミックスである本実施形態に係る複合酸化物は、上記一般式(1)において、組成比が0.7≦x≦0.8、0.2≦y≦0.3であることにより、結晶系が疑立方晶をとることが推定され、圧電セラミックスとしての実用性が高いことが推測される。したがって、本実施形態に係る複合酸化物の組成比は、その結晶系が疑立方晶をとりえる組成比においてビスマスおよびチタンを含むことができる。
【0040】
本実施形態に係る複合酸化物は、製造工程において、配向が制御された圧電セラミックスである。本実施形態に係る圧電セラミックスの(111)面の配向強度をαとし、(100)面の配向強度をβとしたとき、(111)面の配向強度αの、(100)面の配向強度βに対する強度比γ(α/β)は、3以上である。これにより、本実施形態に係る圧電セラミックスの歪量および信頼性を向上することができる(詳細は後述される)。
【0041】
また、圧電セラミックスは、(111)面に90%以上の優先配向をしていてもよい。または、圧電セラミックスにおける強度比γは、∞であってもよい。換言すれば、圧電セラミックスは、(111)面に単一配向していてもよい。これにより、本実施形態に係る圧電セラミックスの歪量をより向上することができる(詳細は後述される)。
【0042】
2.圧電素子
次に、本実施形態に係る圧電素子について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態にかかる圧電素子100を模式的に示す断面図である。
【0043】
圧電素子100は、図1に示すように、圧電体層20、および圧電体層20に電圧を印加する電極(10、30)を含む。圧電素子100は、図1に示すように、第1電極10と、圧電体層20と、第2電極30と、を含むことができる。圧電素子100は、例えば、基板1の上方に形成されている。電極部(10、30)は、図1に示すように、基板1(圧力発生室622、図10参照)側の第1電極10と、圧電体層20を挟んで第1電極10と対向する第2電極30と、を含む。
【0044】
基板1は、例えば、導電体、半導体、絶縁体で形成された平板である。基板1は、単層であっても、複数の層が積層された構造であってもよい。基板1は、上面が平面的な形状であれば内部の構造は限定されず、例えば、内部に空間等が形成された構造であってもよい。基板1は、可撓性を有し、圧電体層20の動作によって変形(屈曲)することのできる基板であって、振動板と称されてもよい。基板1の材質としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化シリコン、またはこれらの積層体が挙げられる。
【0045】
好適には、基板1の材質は、シリコン基板であってもよい。シリコン基板の表面は酸化処理によって酸化シリコンが形成されていてもよい。シリコン基板は、高品質な基板を比較的安価で安定的に入手可能であるため、商業的観点から好適な材質である。したがって、基板1の材質にシリコン基板を採用することにより、生産性を向上し、安定的に生産す
ることが可能となる。
【0046】
第1電極10は、基板1上に形成されている。第1電極10の形状は、例えば、層状または薄膜状である。第1電極10の厚みは、例えば、50nm以上400nm以下である。第1電極10の平面形状は、第2電極30が対向して配置されたときに両者の間に圧電体層20を配置できる形状であれば、特に限定されず、例えば、矩形、円形である。
【0047】
第1電極10は、図1に示すように、複数の導電層が積層されて形成される。例えば、第1電極10は、少なくとも、第1導電層11と第2導電層12とを含む。第2導電層12は、複数の導電層の内で最も圧電体層20側に位置する導電層である。例えば、第1導電層11と基板1との間に図示されない導電層をさらに含んでいてもよい。
【0048】
第1導電層11の材質は、導電性を有する物質である限り特に限定されない。第1導電層11の材質として、例えば、Ni、Ir、Au、Pt、W、Ti、Cr、Ag,Pd、Cuなどの各種の金属およびこれらの金属の合金、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、SrとRuの複合酸化物、LaとNiの複合酸化物などを用いることができる。
【0049】
第2導電層12の材質は、導電性ストロンチウム化合物である。導電性ストロンチウム化合物としては、例えば、ルテニウム酸ストロンチウム(SRO)または、チタン酸ストロンチウム(STO)が挙げられる。導電性ストロンチウム化合物が、チタン酸ストロンチウム(STO)である場合、ニオブ(Nb)が添加されていてもよい。
【0050】
第2導電層12が、ルテニウム酸ストロンチウムである場合、第2導電層の厚みは、例えば、40nm以上60nm以下であってもよい。この場合、第2導電層12は、(111)面に優先配向していることができる。ここで、第2導電層12は、(111)面に90%以上の優先配向をしていてもよく、(111)面に単一配向していてもよい。
【0051】
また、第2導電層12が、ニオブが添加されたチタン酸ストロンチウムである場合、第2導電層の厚みは、例えば、5nm以上15nm以下であってもよい。チタン酸ストロンチウムに対してニオブは、例えば、3%以上、8%以下の範囲で添付されていてもよい。この場合、第2導電層12は、(111)面に優先配向していることができる。ここで、第2導電層12は、(111)面に90%以上の優先配向をしていてもよく、(111)面に単一配向していてもよい。
【0052】
このように最も圧電体層20側に位置する導電層である第2導電層12が、導電性ストロンチウム化合物であることによって、(111)面の配向強度αの、(100)面の配向強度βに対する強度比γ(α/β)が3以上である圧電セラミックスを形成することができる。詳細は後述される。
【0053】
なお、図示の例では、第2導電層12は、第1導電層11の上面に形成されているが、第1導電層11が形成されていない領域においては、基板1の上に連続して形成されていてもよい。
【0054】
第1電極10の機能の一つとしては、第2電極30と一対になって、圧電体層20に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体層20の下方に形成された下部電極)となることが挙げられる。
【0055】
なお、基板1が振動板を有さず、第1電極10が振動板としての機能を有していてもよい。すなわち、第1電極10は、圧電体層20に電圧を印加するための一方の電極として
の機能と、圧電体層20の動作によって変形することのできる振動板としての機能と、を有していてもよい。
【0056】
また、図示はしないが、第1電極10と基板1との間には、例えば、両者の密着性を付与する層や、強度や導電性を付与する層が形成されてもよい。このような層の例としては、例えば、チタン、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの酸化物の層が挙げられる。
【0057】
圧電体層20は、第1電極10(第2導電層12)上に形成されている。圧電体層20の形状は、例えば、層状または薄膜状である。圧電体層20の厚みは、例えば、300nm以上1500nm以下である。圧電体層20は、圧電性を有することができ、第1電極10および第2電極30によって電界が印加されることで変形することができる(電気機械変換)。
【0058】
圧電体層20は、上述の「1.圧電セラミックス」の項で述べた圧電セラミックスからなる。そのため、圧電素子100は、環境負荷が小さく、かつ、歪量および信頼性が向上した圧電特性を有することができる。
【0059】
ここで、図1に示すように、圧電体層20は、電極部(10、30)によって挟まれた能動領域21を有する。本実施形態にかかる圧電素子100は、少なくとも能動部における圧電体層20において、(111)面の配向強度αの、(100)面の配向強度βに対する強度比γ(α/β)が3以上であればよい。また、圧電体層20は、(111)面に90%以上の優先配向をしていてもよい。また、圧電体層20における強度比γは、∞であってもよい。換言すれば、圧電体層20は、(111)面に単一配向していてもよい。
【0060】
第2電極30は、圧電体層20上に形成されている。第2電極30の形状は、例えば、層状または薄膜状である。第2電極30の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下である。第2電極30の平面形状は、特に限定されず、例えば、矩形、円形である。第2電極30としては、第1電極10の材質として列挙した上記材料を用いることができる。
【0061】
第2電極30の機能の一つとしては、第1電極10と一対になって、圧電体層20に電圧を印加するための他方の電極(例えば、圧電体層20の上方に形成された上部電極)となることが挙げられる。
【0062】
なお、図示の例では、第2電極30は、圧電体層20の上面に形成されているが、さらに、圧電体層20の側面、基板1の上面に形成されていてもよい。
【0063】
以上のような圧電素子100は、例えば、圧力発生室内の液体を加圧する圧電アクチュエーターとして、液体噴射ヘッドや、該液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置(インクジェットプリンター)などに適用されてもよいし、圧電体層の変形を電気信号として検出する圧電センサー等その他の用途として用いてもよい。
【0064】
3.圧電素子の製造方法
次に、本実施形態に係る圧電素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0065】
図1に示すように、基板1上に、第1電極10を形成する。ここで、基板1は、例えば、シリコン基板上に、酸化シリコン層を積層し、その上に酸化チタン層、酸化ジルコン層、酸化アルミニウムのいずれかを積層することにより形成してもよい。酸化シリコン層は、例えば、熱酸化法により形成される。酸化ジルコン層や酸化チタン層は、例えば、スパッタ法などにより形成される。
【0066】
第1電極10の製造方法は特に限定されず、公知の成膜方法を用いることができる。例えば、第1導電層11および第2導電層12は、例えば、スピンコート法、スパッタ法、真空蒸着法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などの公知の
成膜方法により形成される。第1電極10を形成する工程においては、必要に応じて、乾燥工程、脱脂工程、結晶化のための熱処理工程、およびパターニング工程が行われてもよい。
【0067】
ここで、第2導電層12が、ルテニウム酸ストロンチウムである場合、RFスパッタ法によって所望の膜厚となるまで成膜される。ここで、RFスパッタにおける成膜は、例えば、690℃以上、710℃以下で行われてもよい。また、RFパワーは、50W以上、100W以下、スパッタガス圧力は、1Pa以上、5Pa以下であってもよい。これによ
れば、好適に(111)面に優先配向((111)面への配向強度比が90%以上)もしくは単一配向((111)面への配向強度比が実質的に100%)した第2導電層12を形成することができる。
【0068】
また、第2導電層12が、ニオブが添加されたチタン酸ストロンチウムである場合、スピンコート法によって所望の膜厚となるまで成膜した後、例えば、300℃以上、400℃以下で脱脂される。第2導電層12が、ニオブが添加されたチタン酸ストロンチウムである場合、結晶化のための焼成工程はおこなわれない。これによれば、非晶質(アモルファス)の前駆体膜からなる第2導電層12を形成することができる。
【0069】
第2導電層12は、後述される圧電体層20が形成される面に形成される導電層であって、圧電体層20を(111)面へ配向制御するための種(シード)層であることができる。第2導電層12の膜厚は、特に限定されないが、好適には、40nm以上、60nm以下であってもよい。
【0070】
次に、第1電極10上に、本実施形態に係る圧電セラミックスからなる圧電体層20を形成する。圧電体層20は、例えば、スパッタ法、レーザーアブレーション法、MOCVD法や、ゾルゲル法およびMOD(Metal Organic Deposition)法などに代表される液相法により形成される。圧電体層20の結晶化温度は、例えば、500℃以上850℃以下である。
【0071】
また、圧電体層20は、所望の膜厚を得るために、圧電体層の前駆体膜の成膜及び乾燥・脱脂を繰り返して複数の圧電体層を積層することで形成してもよい。例えば、膜厚が70nm以上、80nm以下の第1前駆体膜を成膜した後、180℃以上、360℃以下の温度範囲である段階的な乾燥・脱脂を行って、焼成を行い、第1圧電体層を形成してもよい。
【0072】
また、圧電体層20を形成する工程は、第1電極10上に第1圧電体層を形成した後、複数の前駆体膜を積層し、焼成(結晶化)する工程を含んでいてもよい。具体的には、第1圧電体層を形成した後、第2前駆体膜及び第3前駆体膜を第1前駆体膜と同様の条件の下で形成し、結晶化温度にて焼成して第2圧電体層、第3圧電体層を形成してもよい。第4前駆体膜以降は、第2前駆体膜及び第3前駆体膜と同様に、2層ずつ前駆体膜を形成し、結晶化温度で焼成して、複数の圧電体層を積層し、所望の膜厚を有する圧電体層20を形成してもよい。これによれば、より確実に圧電体層20の配向を制御することができる。
【0073】
ここで、段階的な乾燥・脱脂とは、段階的に昇温することを意味する。例えば、昇温を3段階とし、第1温度を150℃以上、200℃以下とし、第2温度を210℃以上、2
90℃以下とし、第3温度を300℃以上、360℃以下としてもよい。これによれば、より確実に圧電体層20の配向を制御することができる。
【0074】
次に、圧電体層20上に、第2電極30を形成する。第2電極30は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、MOCVD法により形成される。そして、所望の形状に第2電極30および圧電体層20をパターニングする。なお、第2電極30および圧電体層20のパターニングは、同じ工程で行ってもよいし、別々の工程で行ってもよい。
【0075】
圧電体層20および第2電極30の構成は、上述した通りであるが、圧電体層30のうち、第1電極10の第2導電層12の上に成膜され、結晶化した圧電体層20は、第2導電層12の作用によって、配向が制御され、(111)面の配向強度をαとし、(100)面の配向強度をβとしたとき、(111)面の配向強度αの、(100)面の配向強度βに対する強度比γ(α/β)は、3以上となる。
【0076】
以上の工程により、環境負荷が小さく、歪量および信頼性が向上した圧電素子100を製造することができる。
【0077】
また、以上の工程に沿い、圧電素子100を製造することで、シリコン基板上において圧電セラミックスを前述のように配向制御することが可能となる。通常の製造方法により、シリコン基板上で製造した場合、BFO−BT系セラミックスは(111)面への配向制御が技術的に困難であり、(110)面や(100)面に容易に配向する。したがって、これまで、商業的生産工程において生産性の観点からシリコン基板を用いたい場合、(111)面へ配向制御された圧電セラミックスを製造することは技術的に困難であった(詳細は後述される)。
【0078】
4.実施例
以下に実施例1〜6および比較例1〜6を示し、図面を参照しながら、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によってなんら限定されるものではない。
【0079】
4.1.実施例
[実施例1]
まず、基板を以下の工程にて作製した。単結晶シリコン基板上に二酸化シリコン層を熱酸化にて作製した。この二酸化シリコン層上にDCスパッタ法により膜厚が20nmのチタン層を形成し、熱酸化することで酸化チタン層を形成した。さらに、この酸化チタン層上にDCスパッタ法により膜厚が150nmの白金層を成膜して、第1導電層を作製した。第1導電層の上に、RFスパッタ法にて50nmのルテニウム酸ストロンチウムを成膜した。RFスパッタ法の実施条件は、温度を700℃、RFパワーを50W、スパッタガス圧力を2Paに設定した。
【0080】
次に、第1電極(第2導電層)上に圧電体層を液相法により形成した。その手法は、以下のとおりである。
【0081】
まず、上述された圧電体層の原料液を準備し、この原料液を、スピンコート法により、第1電極上に滴下し基板を回転させた(塗布工程)。基板は、500rpmで5秒間回転させた後、2500rpmで30秒間回転させた。該原料液は、ビスマス、バリウム、鉄、チタンの元素と、添加物としてのマンガン元素を含む公知の金属アルコキシドもしくは有機酸金属塩を、溶媒(n−オクタン)に混合したものを用いた。
【0082】
次に、150℃に設定したホットプレート上に基板を乗せ、3分間乾燥を行った後(乾
燥工程)、350℃に設定したホットプレート上に基板を乗せ、6分間保持して脱脂した(脱脂工程)。この塗布工程、乾燥工程、および脱脂工程を2回繰り返し行った。次に、650℃で5分間、酸素雰囲気中でアニールを行って(結晶化工程)、薄膜の圧電体層を形成した(成膜工程)。上記の成膜工程を6回繰り返し行った。これにより、下記一般式(2)で表され、x=0.75、y=1−x=0.25となる複合酸化物からなる圧電体層を得た。このとき、圧電体層の膜厚は、600nmであった。
(Bi、Ba)(Fe0.95x、Mn0.05x、Ti)O・・・(2)
【0083】
次に、圧電体層上に、直径500μmの穴のあいた金属マスクを使用して、DCスパッタ法により膜厚100nmの白金層(第2電極)を形成した。
【0084】
[実施例2]
実施例2においては、第2導電層の材料として、ニオブが5%添加されたチタン酸ストロンチウムを用いた。第1導電層を作製した後、第1導電層の上に、スピンコート法にて5nmのニオブが5%添加されたチタン酸ストロンチウムを成膜した。チタン酸ストロンチウムを成膜した後、150℃に設定したホットプレート上に基板を乗せ、3分間乾燥を行った後(乾燥工程)、350℃に設定したホットプレート上に基板を乗せ、6分間保持して脱脂した(脱脂工程)。以上によって、非晶質の第2導電層の前駆体膜を作製した。圧電体層は、この前駆体膜の上に成膜された。上記の第2導電層の作製工程以外は、実施例1と同じ方法で形成した。
【0085】
[実施例3]
実施例3においては、実施例1と同様に第1電極が形成された基板、及び原料液を準備した後、以下の方法で圧電体層を形成した。
【0086】
まず、上述された原料液を、スピンコート法により、前駆体膜のターゲット膜厚が70nmとなるように第1電極上に滴下し基板を回転させた(塗布工程)。基板は、500rpmで5秒間回転させた後、3000rpmで30秒間回転させた。
【0087】
次に、ホットプレート上に基板を乗せ、前駆体膜の段階的な乾燥・脱脂工程を行った。本乾燥・脱脂工程では、第1段階(120秒)の第1温度を180℃とし、第2段階(120秒)の第2温度を250℃とし、第3段階(120秒)の第3温度を350℃とした。
【0088】
次に、700℃で5分間、酸素雰囲気中でアニールを行って、膜厚が70nmの第1圧電体層を形成した。第1圧電体層を形成した後は、上記と同様の条件下で、前駆体膜を2層連続して形成した後、結晶化し、圧電体層を積層する工程を6回繰り返した。これにより、全体の膜厚が1200nmの圧電体層を形成した。
【0089】
[実施例4]
実施例4においては、原料液として、焼成後の圧電体層の複合酸化物が上記一般式(2)で表され、x=0.80、y=1−x=0.20となる原料液を準備した。上記の原料液を準備した以外は、実施例3と同じ方法で形成した。
【0090】
[実施例5]
実施例5においては、原料液として、焼成後の圧電体層の複合酸化物が上記一般式(2)で表され、x=0.70、y=1−x=0.30となる原料液を準備した。上記の原料液を準備した以外は、実施例3と同じ方法で形成した。
【0091】
[実施例6]
実施例6においては、原料液として、焼成後の圧電体層の複合酸化物が下記一般式(3)で表され、x=0.75、y=1−x=0.25となる原料液を準備した。
(Bi、Ba)(Fe0.95x、Co0.05x、Ti)O・・・(3)
【0092】
一般式(3)で表されるように、本実施例においては、実施例1、3で準備された原料液には添加物として添加されていたマンガン(Mn)をコバルト(Co)へ変更した。上記の原料液を準備した以外は、実施例3と同じ方法で形成した。
【0093】
[比較例1]
比較例1においては、第1電極として130nmの白金層からなる第1導電層のみを作製し、第2導電層は作製せずに、白金層の上に圧電体層を作製した。第2導電層を作製しないこと以外は、実施例1と同じ方法で形成した。
【0094】
[比較例2]
比較例2においては、実施例1と同様に第2導電層をルテニウム酸ストロンチウムを用いて作製した。比較例2においては、第1導電層の上に、RFスパッタ法にて50nmのルテニウム酸ストロンチウムを成膜した。RFスパッタ法の実施条件は、温度を650℃、RFパワーを50W、スパッタガス圧力を2Paに設定した。上記の第2導電層の作製工程以外は、実施例1と同じ方法で形成した。
【0095】
[比較例3]
比較例3においては、実施例2と同様に第2導電層をニオブが添加されたチタン酸ストロンチウムを用いて作製した。比較例3においては、チタン酸ストロンチウムを成膜した後、150℃に設定したホットプレート上に基板を乗せ、3分間乾燥を行った後(乾燥工程)、350℃に設定したホットプレート上に基板を乗せ、6分間保持して脱脂した(脱脂工程)。次に、650℃で5分間、酸素雰囲気中でアニールを行って(結晶化工程)、第2導電層(第1電極)を形成した。以上によって第2導電層を作製した。圧電体層は、この前駆体膜の上に成膜された。上記の第2導電層の作製工程以外は、実施例2と同じ方法で形成した。
【0096】
[比較例4]
比較例4においては、第2電極として40nmのLNO(LaNiO)からなる第2導電層を作製し、LNOの上に圧電体層を作製した。圧電体の作製は、実施例3と同じ方法で形成した。
【0097】
[比較例5]
比較例5においては、第1電極として130nmの白金からなる第1導電層のみを作製し、第2導電層は作製せずに、白金の上に圧電体層を作製した。第2導電層を作製しないこと以外は、実施例3と同じ方法で形成した。
【0098】
[比較例6]
比較例5においては、実施例1と同様に第1電極が形成された基板、及び原料液を準備し、同様の方法で第1圧電体層を形成した。その後、複数の前駆体膜を形成し、結晶化して圧電体層を積層する工程において、本比較例においては、前駆体膜を3層連続して形成した後、結晶化して圧電体層を積層する工程を4回繰り返した。これにより、全体の膜厚が1200nmの圧電体層を形成した。
【0099】
4.2.X線回折の評価
X線回折パターンの解析は、Bruker AXS社製の「D8 Discover」を用い、室温で測定された。
【0100】
図2および図3には、実施例1、2、および比較例1のX線回折パターン解析の結果を示す。図4および図5には、比較例2、3のX線回折パターン解析の結果を示す。図6には、実施例3〜5のX線回折パターン解析の結果を示す。図7には、実施例3及び比較例4、5のX線回折パターン解析の結果を示す。
【0101】
図2〜図7におけるX線回折パターンの解析結果から、それぞれの圧電体層の(111)面の配向強度α、(100)面の配向強度β、(110)面の配向強度、および強度比γ(α/β)を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
図2および表1に示すように、実施例1、2、および比較例1における(100)面の配向強度βは、それぞれ、103、137、175であった。また、図3および表1に示すように、実施例1、2、および比較例1における(111)面の配向強度αは、それぞれ、363、412、170であった。これによれば、実施例1における強度比γ(α/β)は、3.524、実施例2における強度比γ(α/β)は、3.007であったのに対し、比較例1における強度比γ(α/β)は、0.971であった。したがって、実施例1および2に係る圧電素子の圧電体層においては、強度比γ(α/β)は、3以上であることが確認された。
【0104】
図4および表1に示すように、比較例2、3における(100)面の配向強度βは、それぞれ、210、210であった。また、図5および表1に示すように、比較例2、3における(111)面の配向強度αは、それぞれ、257、283であった。これによれば、比較例2における強度比γ(α/β)は、1.224、比較例3における強度比γ(α/β)は、1.348であった。したがって、比較例2、3の結果から、第2導電層がルテニウム酸ストロンチウムもしくは、ニオブが添加されたチタン酸ストロンチウムであって、かつ、所定の作製条件下において作製された第2導電層の上に圧電体層が形成されることで、強度比γ(α/β)を、3以上とすることができることが確認された(実施例1、2参照)。
【0105】
次に、図6および表1に示すように、実施例3〜5における(100)面の配向は確認されなかった。また、(111)面の配向強度αは、実施例3では1000、実施例4では1225、実施例5では615であった。以上から、実施例3〜5において(100)面の配向は確認されなかったため、強度比γ(α/β)は3以上であり、実質的に無限大(∞)であることが確認された。
【0106】
次に、図7および表1に示すように、比較例4、5における(100)面の配向強度βは、比較例4では655、比較例5では20であった。また、比較例4、5における(111)面の配向強度αは、比較例4では0、比較例5では1であった。また、比較例4、5における(110)面の配向強度は、比較例4では0、比較例5では808であった。したがって、比較例4における強度比γ(α/β)は0、比較例5における強度比γ(α/β)は0.05であった。
【0107】
以上から、比較例4における圧電体層は、(111)面ではなく(100)面に優先配向し、比較例5における圧電体層は、(110)面に優先配向していることが確認された。したがって、第2導電層に導電性ストロンチウム化合物を用いずに、圧電体層を(111)面に優先配向させ、かつ、強度比γ(α/β)を3以上とすることが技術的に困難であることが確認された。
【0108】
以上、実施例1〜5に係る圧電素子サンプル及び比較例1〜5に係る圧電素子サンプルのX線回折の評価から、上記「3.圧電素子の製造方法」の項において説明された圧電素子の製造方法によれば、BFO−BT系セラミックスからなる圧電体層を、配向強度比γ(α/β)を3以上とし、(111)面に単一配向もしくは優先配向させることができることが確認された。
【0109】
4.3.歪量およびヒステリシスの評価
アグザクト社製の歪量測定装置(DBLI)を使用し、測定温度25℃において、d33方向の歪量、およびヒステリシスを測定した。
【0110】
図8は、実施例1および比較例1の印加電圧に対する歪量を示すグラフである。図9は、実施例1の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフである。図10は、比較例1の歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフである。
【0111】
図8に示すように、比較例1における歪量と較べて、実施例1における歪量は向上していることが確認された。例えば、30V印加時の歪量の比較においては、歪量が約20%増加した。
【0112】
また、図9、10より、実施例1に係る圧電素子の圧電体層は、比較例1に比べて、良好なヒステリシスを有することがわかった。
【0113】
次に、図11は、実施例3に係る圧電素子サンプルの歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフであり、図12は、比較例4に係る圧電素子サンプルの歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフであり、図13は、比較例5に係る圧電素子サンプルの歪量およびヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフである。
【0114】
図11〜13に示すように、比較例4、5に係る圧電素子サンプルの歪量(nm)は、それぞれ、1.95[nm](比較例4)、2.4[nm](比較例5)であったのに対し、実施例3に係る圧電素子サンプルの歪量(nm)は、3.2[nm]であった。したがって、実施例3における歪量は、比較例4に対しては約64%、比較例5に対しては約33%増加した。
【0115】
以上から、比較例4及び5にように(110)面や(100)面に優先的に配向させた場合や、比較例1のように強度比γが3より小さい場合よりも、実施例1や実施例3のように、強度比γが3以上であり、(111)面に優先的に配向するように制御された本発明に係る圧電体層を用いることで、圧電素子の歪量を約20%〜約64%増加させることができることが確認された。
【0116】
次に、図14は、実施例3〜5に係る圧電素子サンプルのヒステリシスの印加電圧依存性を示すグラフである。バリウムに対するビスマスの組成比(XBi/Ba)が70/30である実施例5や、75/25である実施例3に比べて、組成比(XBi/Ba)が80/20であり、ビスマスを含むBFOの組成比割合が実施例間で相対的に多い実施例4の方が、よりヒステリシスの角型性が向上していることが確認された。
【0117】
次に、図15は、実施例3〜5に係る圧電素子サンプルの30(V)印加時の歪量[nm]を示すグラフである。ここで、歪量の測定のN数は2である。図15に示すように、実施例3に係る圧電素子サンプルの歪量(nm)の平均値は、3.2[nm]であり、実施例4に係る圧電素子サンプルの歪量(nm)の平均値は、3.4[nm]であり、実施例5に係る圧電素子サンプルの歪量(nm)の平均値は、2.2[nm]であった。したがって、組成比(XBi/Ba)が、70/30である実施例5や、75/25である実施例3に比べて、組成比(XBi/Ba)が80/20であり、ビスマスを含むBFOの組成比割合が実施例間で相対的に多くなる実施例4の方が、より歪量が大きくなることが確認された。
【0118】
4.4.耐電圧性及びリーク電流の評価
図16は、実施例1、2および比較例1に係る圧電素子サンプルに対する耐電圧性実験の結果をプロットした図である。横軸は、印加された電圧値(V)を示し、縦軸は、各電圧値におけるサンプルの圧電変位量を示す。
【0119】
図16に示すように、比較例1に係る圧電サンプルは、55(V)までの電圧印加が可能であり、それ以上の電圧を印加した結果、第1電極および第2電極間のリーク電流増大により、短絡等が発生し焼損したため、測定することができなかった。これに対し、図9に示すように、実施例1および2に係る圧電サンプルは、75(V)および85(V)まで印加することができ、圧電歪量を測定することができた。すなわち、実施例1および2によれば、圧電素子は、耐電圧性が向上し、信頼性が向上していることが確認された。
【0120】
次に、図17は、実施例3〜5に係る圧電素子サンプルに対する耐電圧性及びリーク電流実験の結果をプロットした図である。横軸は、印加された電圧値(V)を示し、縦軸は、各電圧値におけるサンプルの電流密度を示す。
【0121】
図17に示すように、実施例3〜5のすべてのサンプルにおいて、圧電素子を用いた液体噴射ヘッドで通常想定される電圧値の60(V)まで電圧印加が可能であった。
【0122】
また、組成比(XBi/Ba)が75/25である実施例3や、80/20である実施例4に比べて、組成比(XBi/Ba)が70/30であり、バリウムを含むBTの組成比割合が実施例間で相対的に多くなる実施例5の方が、より耐電圧性が向上し、リーク電流を低減することができることが確認された。
【0123】
4.5.添加剤代替可能性の評価
図18は、実施例3と実施例6に係る圧電素子サンプルに対するX線回折パターン解析の結果を示す。
【0124】
図18に示すように、添加物としてマンガン(Mn)を用いた実施例3の圧電体層のX線回折パターンと、添加物としてコバルト(Co)を用いた実施例3の圧電体層のX線回折パターンは、実質的に同じパターンを示すことが確認された。したがって、本発明に係る圧電セラミックの添加物は、特にマンガンに限定されず、本発明の効果を得られる範囲であれば、公知の添加物へ代替可能であることが確認された。
【0125】
4.6.(111)面への配向制御の技術的評価
図19及び図20は、実施例3と比較例6に係る圧電素子サンプルに対するX線回折パターン解析の結果を示す。
【0126】
図19及び図20に示すように、第1圧電体層を形成した後、2層ずつ積層した実施例3では、(100)面や(110)面に配向せず、(111)面に単一配向したのに対し、第1圧電体層を形成した後、3層ずつ積層した比較例6では、(111)面に単一配向せず、(110)面への配向が確認された。したがって、BFO−BT系セラミックスの(111)面への配向制御には、技術的な困難性が高いことが確認された。
【0127】
5.液体噴射ヘッド
次に、本実施形態にかかる液体噴射ヘッドについて、図面を参照しながら説明する。図21は、液体噴射ヘッド600の要部を模式的に示す断面図である。図22は、液体噴射ヘッド600の分解斜視図であり、通常使用される状態とは上下を逆に示したものである。
【0128】
液体噴射ヘッド600は、本発明に係る圧電素子を有する。以下では、本発明に係る圧電素子として、圧電素子100を用いた例について説明する。
【0129】
液体噴射ヘッド600は、図21および図22に示すように、例えば、振動板1aと、ノズル板610と、流路形成基板620と、圧電素子100と、筐体630と、を含む。なお、図22では、圧電素子100を簡略化して図示している。
【0130】
ノズル板610は、図21および図22に示すように、ノズル孔612を有する。ノズル孔612からは、インクが吐出される。ノズル板610には、例えば、複数のノズル孔612が設けられている。図22に示す例では、複数のノズル孔612は、一列に並んで形成されている。ノズル板610の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)が挙げられる。
【0131】
流路形成基板620は、ノズル板610上(図22の例では下)に設けられている。流路形成基板620の材質としては、例えば、シリコンなどを例示することができる。流路形成基板620がノズル板610と振動板1aとの間の空間を区画することにより、図22に示すように、リザーバー(液体貯留部)624と、リザーバー624と連通する供給口626と、供給口626と連通する圧力発生室622と、が設けられている。この例では、リザーバー624と、供給口626と、圧力発生室622と、を区別して説明するが、これらはいずれも液体の流路(例えば、マニホールドということもできる)であって、このような流路はどのように設計されても構わない。また例えば、供給口626は、図示の例では流路の一部が狭窄された形状を有しているが、設計にしたがって任意に形成することができ、必ずしも必須の構成ではない。
【0132】
リザーバー624は、外部(例えばインクカートリッジ)から、振動板1aに設けられた貫通孔628を通じて供給されるインクを一時貯留することができる。リザーバー624内のインクは、供給口626を介して、圧力発生室622に供給されることができる。圧力発生室622は、振動板1aの変形により容積が変化する。圧力発生室622はノズル孔612と連通しており、圧力発生室622の容積が変化することによって、ノズル孔612からインク等が吐出される。
【0133】
なお、リザーバー624および供給口626は、圧力発生室622と連通していれば、流路形成基板620とは別の部材(図示せず)に設けられていてもよい。
【0134】
圧電素子100は、流路形成基板620上(図22の例では下)に設けられている。圧電素子100は、圧電素子駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて動作(振動、変形)することができる。振動板1aは、圧電体層20の動作によって変形し、圧力発生室622の内部圧力を適宜変化させることができる。
【0135】
筐体630は、図22に示すように、ノズル板610、流路形成基板620、振動板1a、および圧電素子100を収納することができる。筐体630の材質としては、例えば、樹脂、金属などを挙げることができる。
【0136】
液体噴射ヘッド600によれば、環境負荷が小さく、歪量および信頼性が向上した圧電素子100を有することができる。したがって、液体噴射ヘッド600は、環境負荷が小さく、信頼性が高く、高い吐出能力を有することができる。
【0137】
なお、上記の例では、圧電体層20を2つの電極10、30で挟む圧電素子100を用いて、撓み振動によって圧力発生室622の容積を変化させる液体噴射ヘッド600について説明した。しなしながら、本発明に係る液体噴射ヘッドは、上記の形態に限定されず、例えば、圧電体層と電極とを交互に積層させてなる圧電素子を固定基板に固定し、縦振動によって圧力発生室の容積を変化させる形態であってもよい。また、本発明に係る液体噴射ヘッドは、圧電素子の伸張や収縮変形ではなく剪断変形によって圧力発生室の容積を変化させる、いわゆるシェアモード型の圧電素子を用いた形態であってもよい。
【0138】
また、上記の例では、液体噴射ヘッド600がインクジェット式記録ヘッドである場合について説明した。しかしながら、本実施形態の液体噴射ヘッドは、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどとして用いられることもできる。
【0139】
6. 液体噴射装置
次に、本実施形態にかかる液体噴射装置について、図面を参照しながら説明する。図23は、本実施形態にかかる液体噴射装置700を模式的に示す斜視図である。
【0140】
液体噴射装置700は、本発明に係る液体噴射ヘッドを有する。以下では、本発明に係る液体噴射ヘッドとして、液体噴射ヘッド600を用いた例について説明する。
【0141】
液体噴射装置700は、図23に示すように、ヘッドユニット730と、駆動部710と、制御部760と、を含む。液体噴射装置700は、さらに、液体噴射装置700は、装置本体720と、給紙部750と、記録用紙Pを設置するトレイ721と、記録用紙Pを排出する排出口722と、装置本体720の上面に配置された操作パネル770と、を含むことができる。
【0142】
ヘッドユニット730は、上述した液体噴射ヘッド600から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット730は、さらに、ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ731と、ヘッドおよびインクカートリッジ731を搭載した運搬部(キャリッジ)732と、を備える。
【0143】
駆動部710は、ヘッドユニット730を往復動させることができる。駆動部710は、ヘッドユニット730の駆動源となるキャリッジモーター741と、キャリッジモーター741の回転を受けて、ヘッドユニット730を往復動させる往復動機構742と、を有する。
【0144】
往復動機構742は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸744と、キャリッジガイド軸744と平行に延在するタイミングベルト743と、を備える。キャリッジガイド軸744は、キャリッジ732が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ732を支持している。さらに、キャリッジ732は、タイミングベルト743の一部に固定されている。キャリッジモーター741の作動により、タイミングベルト743を走行させると、キャリッジガイド軸744に導かれて、ヘッドユニット730が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0145】
なお、本実施形態では、液体噴射ヘッド600および記録用紙Pがいずれも移動しながら印刷が行われる液体噴射装置の例を示しているが、本発明の液体噴射装置は、液体噴射ヘッド600および記録用紙Pが互いに相対的に位置を変えて記録用紙Pに印刷される機構であればよい。また、本実施形態では、記録用紙Pに印刷が行われる例を示しているが、本発明の液体噴射装置によって印刷を施すことができる記録媒体としては、紙に限定されず、布、フィルム、金属など、広範な媒体を挙げることができ、適宜構成を変更することができる。
【0146】
制御部760は、ヘッドユニット730、駆動部710および給紙部750を制御することができる。
【0147】
給紙部750は、記録用紙Pをトレイ721からヘッドユニット730側へ送り込むことができる。給紙部750は、その駆動源となる給紙モーター751と、給紙モーター751の作動により回転する給紙ローラー752と、を備える。給紙ローラー752は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラー752aおよび駆動ローラー752bを備える。駆動ローラー752bは、給紙モーター751に連結されている。制御部760によって供紙部750が駆動されると、記録用紙Pは、ヘッドユニット730の下方を通過するように送られる。ヘッドユニット730、駆動部710、制御部760および給紙部750は、装置本体720の内部に設けられている。
【0148】
液体噴射装置700によれば、環境負荷が小さく、信頼性が高く、液体の吐出能力が高い液体噴射ヘッド600を有することができる。したがって、液体噴射装置700は、環境負荷が小さく、信頼性が高く、高い吐出能力を有することができる。
【0149】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0150】
1 基板、1a 振動板、10 第1電極、11 第1導電層、12 第2導電層、
20 圧電体層、21 能動領域、30 第2電極、100 圧電素子、
600 液体噴射ヘッド、610 ノズル板、612 ノズル孔、
620 流路形成基板、622 圧力発生室、624 リザーバー、626 供給口、
628 貫通孔、630 筐体、700 液体噴射装置、710 駆動部、
720 装置本体、721 トレイ、722 排出口、730 ヘッドユニット、
731 インクカートリッジ、732 キャリッジ、741 キャリッジモーター、
742 往復動機構、743 タイミングベルト、744 キャリッジガイド軸、
750 給紙部、751 給紙モーター、752 給紙ローラー、
752a 従動ローラー、752b 駆動ローラー、760 制御部、
770 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル孔に連通する圧力発生室と、
圧電体層、及び前記圧電体層に電圧を印加する電極を有する圧電素子と、
を含み、
前記圧電体層は、ビスマス、バリウム、鉄、及びチタンを含むペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなり、
前記圧電体層は、(111)面の配向強度αの、(100)面の配向強度βに対する強度比γ(α/β)が、3以上である、液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、
前記複合酸化物において、前記バリウムに対する前記ビスマスの組成比(XBi/Ba)は、70/30≦XBi/Ba≦80/20である、液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記圧電体層は、(111)面に単一配向している、液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項において、
前記電極として、前記圧力発生室側に形成された第1電極と、前記圧電体層を挟み前記第1電極と対向する第2電極と、を含み、
前記第1電極は、複数の導電層が積層されてなり、前記導電層の内で最も前記圧電体層側に位置する導電層は、導電性ストロンチウム化合物である、液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項4において、
前記導電性ストロンチウム化合物は、ルテニウム酸ストロンチウムである、液体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項4において、
前記導電性ストロンチウム化合物は、ニオブが添加されたチタン酸ストロンチウムである、液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項において、
前記導電性ストロンチウム化合物は、(111)面に優先配向している、液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項において、
前記圧力発生室と前記圧電素子との間に設けられた基板を更に有し、
前記基板の材質は、シリコン基板である、液体噴射ヘッド。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項において、
前記複合酸化物は、マンガン、コバルト、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、及びチタンのうち少なくとも1つを有する添加物を更に含む、液体噴射ヘッド。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項において、
前記複合酸化物の結晶系は、疑立方晶である、液体噴射ヘッド。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッドを有する、液体噴射装置。
【請求項12】
圧電体層と、
前記圧電体層に電圧を印加する電極と、
を含み、
前記圧電体層は、ビスマス、バリウム、鉄、及びチタンを含むペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなり、
前記圧電体層は、(111)面の配向強度αの、(100)面の配向強度βに対する強度比γ(α/β)が、3以上である、圧電素子。
【請求項13】
請求項12において、
前記複合酸化物において、前記バリウムに対する前記ビスマスの組成比(XBi/Ba)は、70/30≦XBi/Ba≦80/20である、圧電素子。
【請求項14】
請求項12または13において、
前記圧電体層は、(111)面に単一配向している、圧電素子。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか1項において、
前記電極として、第1電極と、前記圧電体層を挟み前記第1電極と対向する第2電極と、を含み、
前記第1電極は、複数の導電層が積層されてなり、前記導電層の内で最も前記圧電体層側に位置する導電層は、導電性ストロンチウム化合物である、圧電素子。
【請求項16】
請求項15において、
前記導電性ストロンチウム化合物は、ルテニウム酸ストロンチウムである、圧電素子。
【請求項17】
請求項15において、
前記導電性ストロンチウム化合物は、ニオブが添加されたチタン酸ストロンチウムである、圧電素子。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか1項において、
前記導電性ストロンチウム化合物は、(111)面に優先配向している、圧電素子。
【請求項19】
請求項12から18のいずれか1項において、
前記複合酸化物は、マンガン、コバルト、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、及びチタンのうち少なくとも1つを有する添加物を更に含む、圧電素子。
【請求項20】
請求項12から19のいずれか1項において、
前記複合酸化物の結晶系は、疑立方晶である、圧電素子。
【請求項21】
ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる圧電セラミックスであって、
前記複合酸化物は、ビスマス、バリウム、鉄、及びチタンを含み、
前記前記複合酸化物における(111)面の配向強度αの、(100)面の配向強度βに対する強度比γ(α/β)は、3以上である、圧電セラミックス。

【図1】
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【図9】
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【図10】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−99916(P2013−99916A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270342(P2011−270342)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】