説明

液体噴射装置及びそのメンテナンス方法

【課題】記録品質の低下を抑制するべく媒体に対して記録を施すために噴射されるという用途に未使用のままで打ち捨てられる液体の量を低減させることができる液体噴射装置及びそのメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】インクを流入させる流入口23からインクを噴射するノズル開口24までインクを流動させるインク流路25が形成された液体噴射ヘッド19と、インクをノズル開口から噴射させる圧電素子26と、ノズル開口から噴射させるインクの噴射データを記憶する記憶部31と、インク流路内に流入口から流入させるインクがインクBからインクAに切り替わる場合において、記憶部にインクBの噴射データが記憶されている場合には、そのインクBの噴射データに基づき圧電素子の駆動を制御し、インク流路中のインクBを用紙に噴射させる制御部30とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンター等の液体噴射装置及びそのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体噴射装置の一種として、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)からインク(液体)を用紙等の媒体に噴射して記録を施すインクジェット式プリンターが知られている。このプリンターにおいては、例えばインクの噴射対象となる媒体の種類(光沢紙と非光沢紙等)に応じて、記録ヘッドに供給するインクの種類を切り替えることがある。そして、こうしたインクの切り替え時には、切り替え前のインクが切り替え後のインクに混じってノズル開口から媒体に対して噴射されることによる記録品質の低下を抑制するべく、その時点でノズル開口に至る記録ヘッド内のインク流路中に存在している切り替え前のインクを、切り替え後に使用するインクに置換することが必要となる。そこで、こうした場合に従来は、例えば特許文献1に記載のように、媒体に記録を施すためのインクの噴射データとは無関係の制御信号に基づき、インク流路中に存在する切り替え前のインクを切り替え後のインクと置換するのに必要十分な液量のインクをノズル開口から吐出させる、所謂、置換フラッシング(以下、「置換FL」ともいう。)を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−194923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の置換FLでは、記録ヘッド内のインク流路中に存在している切り替え前のインクを一律に全てノズル開口から吐出して打ち捨てると共に、切り替え後に使用予定の切り替え後のインクを記録ヘッド内のインク流路に流入させることで、記録ヘッド内のインク流路中のインクを切り替え前のインクから切り替え後のインクに置換していた。
【0005】
そのため、こうした置換FLを行った場合には、その後に媒体に対して記録を施す際に切り替え前のインクが媒体に対して噴射されないので、記録品質の低下は抑制できるものの、媒体に対して記録を施すために噴射されるという用途に未使用のままで置換FLにより一律に打ち捨てられる切り替え前のインクが無駄になるという問題があった。
【0006】
また、置換FLを行った後においても、記録ヘッド内のインク流路の壁面に切り替え前のインクが付着などして残留している場合があり、その残留インクが時間の経過と共にインク流路内の切り替え後のインク中に染み出して混じり合うことがあり得る。そして、このように残留した切り替え前のインクが切り替え後のインク中に染み出して混じった混合インクが媒体に対して噴射されると、記録品質が低下してしまうことになる。
【0007】
そこで、こうした記録品質の低下を抑制するべく、従来はインクの切り替えに伴う置換FLを行った後において媒体に記録を施すためのインクの噴射データが入力される度に、その時点で記録ヘッド内のインク流路中に存在しているインクをノズルから例えば媒体外へ大量に吐出させたり、又は強制的にノズルを介して吸引したりして一律に排出させていた。そのため、この場合も、記録品質の低下は抑制できるものの、媒体に対して記録を施すために噴射されるという用途に未使用のままでノズルからの大量の吐出又は強制的な吸引により一律に打ち捨てられる切り替え後のインクが無駄になるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録品質の低下を抑制するべく媒体に対して記録を施すために噴射されるという用途に未使用のままで打ち捨てられる液体の量を低減させることができる液体噴射装置及びそのメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、液体を流入させる流入口から前記液体を噴射するノズル開口まで前記液体を流動させる液体流路が形成された液体噴射ヘッドと、前記液体を前記ノズル開口から噴射させる噴射実行手段と、前記ノズル開口から噴射させる前記液体の噴射データを記憶する記憶手段と、前記液体流路内に前記流入口から流入させる前記液体が第1液体から第2液体に切り替わる場合において、前記記憶手段に前記第1液体の噴射データが記憶されている場合には、前記第1液体の噴射データに基づき前記噴射実行手段の駆動を制御し、前記液体流路中の前記第1液体を媒体に噴射させる制御手段とを備えた。
【0010】
通常、液体噴射ヘッドの液体流路内に流入口から流入させる液体が第1液体から第2液体に切り替わるときには、その後に第1液体が混じった第2液体を媒体に噴射することによる記録品質の低下を抑制するべく、その時点で液体流路内に存在している第1液体の全てが一律に廃棄のためにノズル開口から排出される。そのため、媒体に対して記録を施すために噴射されるという用途に未使用のままで打ち捨てられる第1液体が無駄になるという問題がある。この点、この発明によれば、液体噴射ヘッドの液体流路内に流入させる液体が第1液体から第2液体に切り替わるときに、第1液体を使用する噴射データが記憶手段に記憶されていれば、その第1液体の噴射データに基づいて、その時点で液体流路中に存在している切り替え前の第1液体の少なくとも一部が媒体に対して記録を施すために噴射される。したがって、記録品質の低下を抑制するべく媒体に対して記録を施すために噴射されるという用途に未使用のままで打ち捨てられる液体の量を低減させることができる。
【0011】
また、本発明の液体噴射装置は、前記液体流路中に存在する前記液体を前記ノズル開口から廃棄するべく排出させるときに駆動される排出実行手段を更に備え、前記制御手段は、前記噴射データに基づき前記液体流路中の前記第1液体が前記媒体に噴射された後、前記排出実行手段の駆動を制御し、前記液体流路中の液体を前記第1液体から前記第2液体に置換させる。
【0012】
この発明によれば、記憶手段に記憶された第1液体を使用する噴射データに基づき液体流路内に残存している第1液体の少なくとも一部が媒体に対して記録を施すために噴射された後において更に液体流路中に残っている第1液体を第2液体と置換するために、排出実行手段が駆動されることになる。すなわち、この場合には、液体噴射ヘッドの液体流路内に流入させる液体を切り替えた時点で液体流路中に存在している第1液体の全てが第2液体と置換されるわけではない。そのため、液体流路内に流入させる液体を切り替えた時点で液体流路内の全域分の第1液体よりも少ない量の第1液体が第2液体と置換されることになるので、排出実行手段による第1液体と第2液体との置換に要する時間を短縮することができる。
【0013】
また、本発明の液体噴射装置において、前記制御手段は、前記排出実行手段の駆動を制御して前記液体流路中の液体を前記第1液体から前記第2液体に置換させた後、前記噴射実行手段の駆動を制御し、前記液体流路中の前記第2液体を前記媒体に噴射させる。
【0014】
この発明によれば、媒体に第2液体の噴射により記録を施すために液体を切り替えた場合において、液体噴射ヘッド内の液体流路中に存在する液体が第1液体から第2液体に置換された後に、その液体流路中の液体つまり第2液体が媒体に対して第2液体の噴射データに基づき噴射されることになるので、記録品質の低下を抑制できる。
【0015】
また、本発明の液体噴射装置において、前記記憶手段は、少なくとも一つの前記第1液体の噴射データと少なくとも一つの前記第2液体の噴射データとを記憶しており、前記制御手段は、前記液体流路内に前記流入口から流入させる前記液体が第1液体から第2液体に切り替わる場合に、前記噴射実行手段の駆動を制御し、前記記憶手段に記憶されている前記各噴射データのうち前記第1液体の噴射データに基づいた媒体に対する第1液体の噴射を、前記第2液体の噴射データに基づいた媒体に対する第2液体の噴射に優先して実行させる。
【0016】
この発明によれば、液体噴射ヘッドの液体流路内に流入する液体が第1液体から第2液体に切り替わった時点で記憶手段に記憶されている複数の噴射データのうち第1液体の噴射データが第2液体の噴射データに優先して媒体に対する液体の噴射に使用されることになる。そのため、液体流路内に残存している第1液体を効率良く無駄にせずに消費することができる。
【0017】
また、本発明の液体噴射装置は、前記流入口を介して前記液体流路内に流入させる前記液体を切り替えるときに駆動される切替実行手段を更に備え、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶されている前記第1液体の噴射データによる前記媒体に対する前記第1液体の噴射に要する必要液量が、前記液体流路内に残存している第1液体の残存液量を超える場合には、前記噴射実行手段の駆動を制御し、前記必要液量と前記残存液量との差に相当する液量の第1液体を前記媒体に対して噴射させた後、前記切替実行手段の駆動を制御し、前記液体流路内に前記流入口を介して流入する前記液体を第1液体から第2液体に切り替えさせる。
【0018】
この発明によれば、液体流路内に流入させる液体が第1液体から第2液体に切り替わった時点で液体流路内に存在する第1液体を、媒体に対して記録を施すために噴射されるという用途に無駄なく使用することも可能となる。
【0019】
一方、上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置のメンテナンス方法は、液体を流入させる流入口から前記液体を噴射するノズル開口まで前記液体を流動させる液体流路が形成された液体噴射ヘッドにおける前記液体流路内に前記流入口から流入させる前記液体が第1液体から第2液体に切り替わる場合において前記第1液体の噴射データが存在する場合に、その第1液体の噴射データに基づき前記液体流路中の前記第1液体を前記ノズル開口から媒体に対して噴射させる液体噴射ステップと、前記液体噴射ステップの実行後、前記液体流路中に存在している前記液体を前記ノズル開口から廃棄するべく排出させ、前記液体流路中の液体を前記第1液体から前記第2液体に置換させる液体置換ステップとを備えた。
【0020】
この発明によれば、上記構成の液体噴射装置が奏する作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
さらに、上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、液体を流入させる流入口から前記液体を噴射するノズル開口まで前記液体を流動させる液体流路が形成された液体噴射ヘッドと、前記液体流路中に存在する前記液体を前記ノズル開口から噴射させるときに駆動される噴射実行手段と、前記液体流路中に存在する前記液体が第1液体から第2液体に置換されてから予め設定した閾値時間内における前記液体流路中に存在する前記液体を前記ノズル開口から廃棄のために噴射させる廃棄用噴射の有無を判別する廃棄用噴射判別手段と、前記液体の置換時点から前記閾値時間が経過した後に前記第2液体を媒体に噴射する場合において、前記廃棄用噴射判別手段によって前記閾値時間内に前記廃棄用噴射が有ったと判別された場合には、前記噴射実行手段の駆動を制御し、前記閾値時間内に前記廃棄用噴射は無かったと判別された場合よりも少ない液量の廃棄用噴射を前記媒体に対する前記第2液体の噴射の前に行わせる制御手段とを備えた。
【0021】
この発明によれば、液体流路中の液体を第1液体から第2液体に置換した後に液体流路中の淀み箇所等に残留した第1液体が第2液体中に染み出して混じると想定される閾値時間の経過後において、その液体流路中に存在する液体を記録品質の低下を抑制するべくノズル開口から廃棄のために噴射させる廃棄用噴射で消費される液体の液量を抑制できる。すなわち、液体の置換時点から閾値時間が経過するまでに廃棄用噴射が1回でも実行されていれば、その廃棄用噴射が引き起こす液体の流動が液体流路中の淀み解消に寄与するものと期待できる。そのため、閾値時間内に廃棄用噴射を実行した後において閾値時間経過後に廃棄用噴射を重ねて行う場合には、少なくとも幾分かは液体流路内の淀みが閾値時間内での廃棄用噴射により解消されているため、閾値時間内に廃棄用噴射が無かったとした場合よりも、少ない液量の廃棄用噴射で足りることになる。その結果、その時点では液体流路内の液体のほとんどを占める第2液体が廃棄用噴射により噴射されて打ち捨てられる量も少なくなる。したがって、記録品質の低下を抑制するべく媒体に対して記録を施すために噴射されるという用途に未使用のままで打ち捨てられる液体の量を低減させることができる。
【0022】
また、本発明の液体噴射装置において、前記制御手段は、前記廃棄用噴射判別手段により前記閾値時間内に前記廃棄用噴射が有ったと判別された場合において、第1の回数よりも多い第2の回数の前記廃棄用噴射が有ったと判別された場合には、前記噴射実行手段の駆動を制御し、前記第1の回数の前記廃棄用噴射が有ったと判別された場合よりも少ない液量での廃棄用噴射を前記媒体に対する前記第2液体の噴射の前に行わせる。
【0023】
この発明によれば、閾値時間内に実行された廃棄用噴射の回数が多い場合ほど、それよりも廃棄用噴射の実行済み回数が少ない場合よりも、それらの廃棄用噴射が引き起こす液体の流動が液体流路中の淀み解消に大きく寄与するものと期待できる。そのため、閾値時間経過後に廃棄用噴射を重ねて行う場合には、更に少ない液量の廃棄用噴射で足りることになり、より一層、媒体に対して記録を施すために噴射されるという用途に未使用のままで打ち捨てられる液体の量を低減させることができる。
【0024】
また、本発明の液体噴射装置において、前記制御手段は、前記廃棄用噴射判別手段により前記閾値時間内に予め設定した閾値回数に相当する回数の前記廃棄用噴射が有ったと判別された場合には、前記噴射実行手段の駆動を制御し、前記閾値時間が経過した後において前記廃棄用噴射を行わせることなく前記媒体に対する前記第2液体の噴射を行わせる。
【0025】
この発明によれば、液体流路内の液体が第1液体から第2液体に置換されたにもかかわらず液体流路内に淀んで残留していた第1液体が、閾値回数に相当する回数の廃棄用噴射が閾値時間内に集中して行われることによって、ノズル開口から排出される可能性が高くなる。そのため、閾値時間の経過後には、既に液体流路内から第1液体の淀みは消失しているものと推測できるので、第2液体を媒体に対して記録を施すために噴射する前に更なる廃棄用噴射を実行する必要性も低い。したがって、この場合には、廃棄用噴射を省略できる分だけ、媒体に対して記録を施すために噴射されるという用途に未使用のままで打ち捨てられる液体の量を低減させることができる。
【0026】
また、本発明の液体噴射装置において、前記制御手段は、前記液体の置換時点から前記閾値時間が経過した後に前記第2液体を前記媒体に対して記録を施すために噴射する場合には、前記噴射実行手段の駆動を制御し、予め設定した閾値回数と前記閾値時間内における廃棄用噴射の回数との差を示す数値に予め設定した液量を乗じた液量での廃棄用噴射を前記媒体に対する前記第2液体の噴射の前に行わせる。
【0027】
この発明によれば、液体流路内に残留した第1液体の淀みが解消していると推測される確率が高い場合ほど、媒体に対する第2液体の噴射の前に行われる廃棄用噴射で消費される液体の液量を少なくできる。したがって、この点でも、媒体に対して記録を施すために噴射されるという用途に未使用のままで打ち捨てられる液体の量を低減させることができる。
【0028】
一方、上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置のメンテナンス方法は、液体を流入させる流入口から前記液体を噴射するノズル開口まで前記液体を流動させる液体流路が形成された液体噴射ヘッドにおける前記液体流路中に存在する前記液体が第1液体から第2液体に置換されてから予め設定した閾値時間内における前記液体流路中に存在する前記液体が前記ノズル開口から廃棄のために噴射された廃棄用噴射の有無を判別する廃棄用噴射判別ステップと、前記液体の置換時点から前記閾値時間が経過した後に前記第2液体を媒体に対して記録を施すために噴射する場合において、前記閾値時間内に前記廃棄用噴射が有ったと判別された場合には、前記閾値時間内に前記廃棄用噴射は無かったと判別された場合よりも少ない液量での廃棄用噴射を前記媒体に対する前記第2液体の噴射の前に行うことを特徴とする廃棄用噴射実行ステップとを備えた。
【0029】
この発明によれば、上記構成の液体噴射装置が奏する作用効果と同一の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る第1実施形態におけるプリンターの概略構成を示す斜視図。
【図2】プリンターにおけるインクの切り替え制御に関わる構成を示す概略図。
【図3】第1実施形態におけるインクの切り替えに伴う置換フラッシング制御処理のフローチャート。
【図4】(a)(b)(d)は第1実施形態におけるインクの切り替え時における液体噴射ヘッドの状態を、(c)は表示パネルの画面表示を、夫々示す概略図。
【図5】第1実施形態における置換フラッシング後の廃棄用噴射制御処理のフローチャート。
【図6】第2実施形態におけるインクの切り替えに伴う置換フラッシング制御処理のフローチャート。
【図7】(a)は第2実施形態におけるインクの切り替え時における記憶部が記憶する印刷データの印刷順を、(b)〜(d)は液体噴射ヘッドの状態を、夫々示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」ともいう。)及びそのメンテナンス方法において具体化した第1実施形態を、図1〜図5を参照して説明する。なお、以降の説明を容易にするため、図1に示したように、鉛直方向における重力方向を下方向、反重力方向を上方向とする。また、これと交差する方向であって、プリンターに給送された用紙Pが画像の形成時において搬送される搬送方向を前方向、搬送方向と反対方向を後方向とする。さらに鉛直方向および搬送方向の双方と交差する方向であってキャリッジ16が往復移動する方向すなわち走査方向を、前方から見て、それぞれ右方向、左方向と呼ぶことにする。
【0032】
図1に示すように、プリンター11における略矩形箱状をなすフレーム12内の下部には、その長手方向である左右方向に沿って支持台13が延設されるとともに、フレーム12の後方面の下部には紙送りモーター14が設けられている。そして、この紙送りモーター14の駆動を通じて図示しない紙送り機構により、支持台13上にその後方側から用紙Pが給送されるようになっている。
【0033】
フレーム12内における支持台13の上方には、該支持台13の長手方向である左右方向に沿ってガイド軸15が架設されている。このガイド軸15にはその軸線方向において往復移動可能にキャリッジ16が支持されている。詳しくは、キャリッジ16に左右方向において貫通する支持孔16aが形成されるとともに、この支持孔16aにガイド軸15が挿通されている。
【0034】
フレーム12の後壁内面において上記ガイド軸15の両端の近傍にあたる位置には、駆動プーリー17aと従動プーリー17bとがそれぞれ回転自在に支持されている。駆動プーリー17aにはキャリッジモーター18の出力軸が連結されるとともに、駆動プーリー17aと従動プーリー17bとの間には一部がキャリッジ16に連結された無端状のタイミングベルト17が巻き掛けられている。そして、キャリッジモーター18が駆動されることにより、タイミングベルト17を介してキャリッジ16がガイド軸15によりガイドされつつ左右方向に往復移動するようになっている。
【0035】
キャリッジ16の下面側には液体噴射ヘッド19が設けられると共に、そのキャリッジ16上には、液体噴射ヘッド19に対して種類(例えば、色相、彩度、明度(濃度)、組成など)の異なるインク(液体)を供給するための複数(本実施形態では2つ)のインクカートリッジ20,21がそれぞれ着脱可能に装着されている。本実施形態では、一例として、インクカートリッジ20には光沢紙への印刷に適したフォトブラックインク(以下、「インクA」ともいう。)が収容されていると共に、インクカートリッジ21には非光沢紙への印刷に適したマットブラックインク(以下、「インクB」ともいう。)が収容されている。そして、液体噴射ヘッド19に対して各インクカートリッジ20,21のいずれか一つからインクが択一的に供給されるようにインク流路の切り替え動作をするインクセレクター22がキャリッジ16内に備えられている。
【0036】
図2に示すように、液体噴射ヘッド19の上面にはインクセレクター22から供給されるインクを流入させる流入口23が形成されると共に、その流入口23にはインクセレクター22から下流側に延設されたインク供給チューブ22aの下流端が接続されている。また、液体噴射ヘッド19の下面であるノズル形成面19aにはインクを噴射するノズル開口24が形成されると共に、液体噴射ヘッド19の内部には、流入口23からノズル開口24までインクを流動させるインク流路(液体流路)25が形成されている。インク流路25は、インクの流動方向において上流側の流路となるリザーバー25aと下流側の流路となるインク室25bを有している。
【0037】
インク室25bは、その内部容積が可変となるように上側の壁面が弾性壁で構成され、その弾性壁を介してインク室25bの上側に隣接する位置には一方向(ここでは上下方向)に伸長および収縮する圧電素子26が設けられている。そして、圧電素子26は、その一端部(ここでは上端部)が液体噴射ヘッド19において剛性の高い部分に固定され、その他端部(ここでは下端部)がインク室25bにおける上下方向に変位可能に形成された弾性壁からなる上側の壁面のほぼ中央に固定されている。
【0038】
また、フレーム12の内部における支持台13よりも右側の領域、すなわち印刷時において使用されない領域(ホームポジション領域)には、上方が開口した有底箱状のキャップ28及び図示しない吸引ポンプなどを有したメンテナンス装置29が設けられている。すなわち、このプリンター11では、液体噴射ヘッド19をホームポジション領域に移動させ、液体噴射ヘッド19からキャップ28内に増粘等した廃棄用のインクを、圧電素子26の駆動に基づき吐出させたりキャッピング状態での吸引ポンプの駆動に基づき強制的に吸引して排出させたりすることで、液体噴射ヘッド19のメンテナンスを行っている。
【0039】
また、図2に示すように、プリンター11には、プリンター11の稼動状態を統括制御する制御部(制御手段)30が備えられている。制御部30は、CPU、ROM、RAM及びASIC((Application Specific IC(特定用途向けIC))などの電子部品により構成された電気回路を有する基板であり、ROM及びRAMからなる記憶部(記憶手段)31と、計時機能を有するタイマー32とを備えている。さらに、制御部30には、プリンター11にとって外部電子機器となるPC33が情報通信可能に接続されると共に、プリンター11におけるフレーム12の外面に設けられた表示パネル34がその表示状態を制御可能に接続されている。
【0040】
すなわち、制御部30は、用紙Pに対して印刷(記録)を施すためのインクの噴射データ(この場合は「記録用の噴射データ」であって、以下、「印刷データ」ともいう。)等の各種データをPC33から受信した場合には、その受信したデータを記憶部31におけるデータ領域に記憶させるようになっている。そして、制御部30は、記憶部31に記憶されたプログラム及び記憶部31に記憶されている印刷データ等に基づき、液体噴射ヘッド19に供給されるインクの種類を切り替えるときには、キャリッジモーター18、インクセレクター22、圧電素子26、メンテナンス装置29の吸引ポンプ、及び表示パネル34等の駆動を制御するようになっている。
【0041】
すなわち、インクセレクター22は、記憶部31が記憶する印刷データであって、その時点で支持台13上に給送した用紙Pに印刷を施すために用いる印刷データでの使用インクの種類が、その時点でインクセレクター22から液体噴射ヘッド19側に供給しているインクの種類と異なる場合、制御部30からの制御信号S1により切り替え駆動される。また、圧電素子26は、記憶部31が記憶する用紙Pに対する記録用の噴射データである印刷データ又はそのような印刷データとは無関係な廃棄用の噴射データに基づき液体噴射ヘッド19内のインク流路25中に存在しているインクをノズル開口24から噴射させる場合に、制御部30からの制御信号S2,S3により伸縮動作するように駆動される。
【0042】
また、吸引ポンプは、液体噴射ヘッド19にノズル開口24を囲うようにキャップ28を当接させたキャッピング状態でキャップ28内を吸引してノズル開口24から液体噴射ヘッド19内の増粘インクや気泡混じりの廃棄用インクを強制的に排出させる、所謂、クリーニングを実行する場合に、制御部30からの制御信号(図示略)により駆動される。また、表示パネル34は、プリンター11の現時点における稼働状態を示す画面表示や、例えば図4(c)に示すようなユーザーに対する案内画面表示をする場合に、制御部30からの制御信号S4により表示制御される。
【0043】
さらに、紙送りモーター14は、用紙Pを支持台13上に給送する場合に、制御部30からの制御信号S5により駆動される。また、キャリッジモーター18は、液体噴射ヘッド19を搭載したキャリッジ16をメンテナンス装置29が配置されたホームポジション領域と支持台13が配置された印刷領域との間を往復移動させる場合に、制御部30からの制御信号S6により駆動される。
【0044】
次に、インクセレクター22の切り替え駆動に伴いインク流路25中に存在するインクを切替前のインク(第1液体)から切替後のインク(第2液体)に置換する、所謂、置換フラッシング(置換FL)を行う際に制御部30が実行する置換FL制御処理ルーチンについて図3及び図4を参照して説明する。なお、図4(a)(b)(d)の概略図においては、図面簡略化のため、圧電素子26の図示を省略している。
【0045】
また、説明の前提として、インクセレクター22は、図4(a)に示す流路状態、すなわち、その時点では、インクカートリッジ21から供給されるインクB(第1液体)のインク供給チューブ22a側への流動を許容し、インクカートリッジ20から供給されるインクA(第2液体)の流動は遮断する流路状態になっているものとする。つまり、その時点の前には、支持台13上に給送された用紙Pに対して記憶部31から読み出したインクBの印刷データ(以下、「印刷データBn」という場合もある。)に基づいたインクBを使用した印刷動作がなされていたものとする。そして、そのインクBを使用した印刷動作が終了した後、インクA及びインクBの何れか一方を使用する新たな印刷データを記憶部31から読み出したものとする。
【0046】
さて、プリンター11の稼働状態において、制御部30は、用紙Pに対して印刷を施すための新たなインクの印刷データを記憶部31から読み出すと、図3に示す置換FL制御処理ルーチンを開始する。
【0047】
そして、制御部30は、まずステップS11において、インクの種類の切り替えが必要であるか否か、すなわちインクセレクター22の切り替え駆動が必要か否かを、新たに記憶部31から読み出した印刷データが示すインクの種類と、その時点でインクセレクター22が流動を許容しているインクの種類との比較に基づき判定する。本実施形態の場合、その時点でインクセレクター22がインク供給チューブ22a側への流動を許容しているインクの種類はインクBであるため、新たに記憶部31から読み出した印刷データが示すインクの種類がインクAであれば、ステップS11の判定結果は肯定判定(S11=YES)となる。その一方、新たに記憶部31から読み出した印刷データが示すインクの種類がインクBであれば、ステップS11の判定結果は否定判定(S11=NO)となる。そして、制御部30は、判定結果が肯定判定の場合、その処理を次のステップS12に移行し、その判定結果が否定判定の場合には、その処理をステップS21に移行する。
【0048】
ステップS12に移行した場合、制御部30は、インクセレクター22に向けて制御信号S1を出力し、インクセレクター22の流路状態を、図4(a)に示す流路状態から図4(b)に示す流路状態に切り替えさせる。そのため、以後は、インクカートリッジ20から供給されるインクAがインクセレクター22を介して液体噴射ヘッド19側に供給されることになる。この点で、制御部30からの制御信号S1に基づき切り替え駆動されるインクセレクター22は、流入口23を介してインク流路25内に流入させるインクの種類を切り替えるときに駆動される切替実行手段として機能する。但し、この流路の切り替え時点では、まだ液体噴射ヘッド19内のインク流路25中に切り替え前のインクであるインクBが存在している。ここで、このインク流路25中の全域に存在しているインクBを全てインクAと置換するべく排出するのでは、インクBが大量に無駄になる。
【0049】
そこで、制御部30は、次のステップS13において、表示パネル34に向けて制御信号S4を出力し、図4(c)に示す表示内容の案内画面を表示させる。この案内画面は、インクセレクター22の切り替え前のインクであって且つその時点でインク流路25中の全域に存在しているインク(この場合はインクB)を使用して割り込み印刷をするか否かをユーザーに問いかけるものであり、その画面内には実行ボタン34aと実行しないボタン34bがタッチ操作可能に表示されている。
【0050】
そして、次のステップS14において、制御部30は、ユーザーがインク流路25中に残存している切り替え前のインク(この場合はインクB残量)を使用して割り込み印刷する意思があるか否かを判定する。この場合、表示パネル34上で実行ボタン34aがオン操作された場合は肯定判定となり、その逆に、実行しないボタン34bがオン操作された場合は否定判定となる。そして、制御部30は、否定判定(S14=NO)の場合、その処理をステップS19に移行し、肯定判定(S14=YES)の場合、その処理を次のステップS15に移行する。
【0051】
ステップS15に移行した場合、制御部30は、記憶部31に切り替え前のインク(この場合はインクB)を使用して用紙Pに印刷を施すための新たな印刷データが入力されたか否かを判定する。本実施形態の場合は、インクBによる少なくとも一つの印刷データBnがPC33からユーザーの入力操作によりプリンター11の制御部30に送信され、記憶部31に新たに記憶されたか否かが判定される。そして、制御部30は、タイマー32の計時により一定時間が経過してもインクBによる印刷データBnの入力がない場合には否定判定(S15=NO)し、その処理をステップS19に移行する。その一方、ステップS15の判定結果が肯定判定(S15=YES)の場合、制御部30は、その処理を次のステップS16に移行する。
【0052】
ステップS16に移行した場合、制御部30は、記憶部31に新たに記憶された印刷データBnに基づいた印刷動作で必要とされるインクBの必要液量が、その時点でインク流路25中に存在しているインクBの残存液量以下であるか否かを判定する。そして、制御部30は、その判定結果が否定判定(S16=NO)の場合、その処理を先のステップS13に戻し、入力された印刷データBnの印刷を行うためにはインクB残量が不足しているので印刷が完了できない旨、及び印刷完了のための必要液量が更に少量で済む別の印刷データBnの再入力を促す案内画面を表示パネル34に表示させる。その一方、ステップS16の判定結果が肯定判定(S16=YES)の場合、制御部30は、その処理を次のステップS17に移行する。
【0053】
そして、ステップS17において、制御部30は、紙送りモーター14に向けて用紙Pを給送させるための制御信号S5を出力すると共に、圧電素子26に向けて記録用噴射のための制御信号S2を出力する。そして、圧電素子26の伸縮動作に基づきインク室25bの内容積を増減させることにより、ノズル開口24からインク流路25中に存在しているインク(この場合はインクB)を支持台13上に給送されている用紙Pに向けて噴射させる。この点で、制御部30からの制御信号S2に基づき伸縮動作する圧電素子26は、インク流路25中に存在するインク(この場合はインクB)をノズル開口24から噴射させるときに駆動される噴射実行手段として機能すると共に、このようなステップS17は液体噴射ステップに相当する。そして、このようなインクBを使用する印刷データBnに基づく用紙Pに対する印刷が終了すると、制御部30は、その処理を次のステップS18に移行する。
【0054】
そして、次のステップS18において、制御部30は、その時点でのインク流路25中のインクBの残量が、予め設定した閾値残量(一例としてインク流路25の全容積の半分に相当する液量)よりも少ないか否かを判定する。制御部30は、このステップS18の判定結果が否定判定(S18=NO)の場合、その処理を先のステップS13に戻し、更に新たな別の印刷データBnの印刷も可能とするインクB残量がある旨を実行ボタン34a及び実行しないボタン34bと共に表示パネル34上に表示させる。その一方、ステップS18の判定結果が肯定判定(S18=YES)の場合、制御部30は、その処理を次のステップS19に移行する。
【0055】
そして、次のステップS19において、制御部30は、キャリッジモーター18に向けて制御信号S6を出力すると共に、圧電素子26に向けて廃棄用噴射のための制御信号S3を出力する。すなわち、キャリッジ16をホームポジション領域に移動させて液体噴射ヘッド19のノズル形成面19aをキャップ28に対峙させると共に、圧電素子26を伸縮動作させてインク室25bの内容積を増減させることによりノズル開口24からインク流路25中に存在しているインク(この場合はインクB残量)をキャップ28内に吐出させる。この点で、制御部30からの制御信号S3に基づき伸縮動作する圧電素子26は、インク流路25中に存在するインク(この場合はインクB)をノズル開口24から、噴射させるときに駆動される噴射実行手段及び廃棄するべく排出させるときに駆動される排出実行手段として機能すると共に、このようなステップS19は液体置換ステップに相当する。以上のようにして、インク流路25内に残留しているインクBを新たに流入口23から流入させたインクAと置換する、所謂、置換フラッシング(置換FL)が実行されることになる。なお、この置換FLが実行された場合、制御部30は、記憶部31のフラグ領域に、置換FLが実行されたことを示す置換FLフラグをたてる。
【0056】
そして、次のステップS20において、制御部30は、紙送りモーター14に向けて制御信号S5を出力すると共に、キャリッジモーター18に向けて制御信号S6を出力し、さらに、圧電素子26に向けて記録用噴射のための制御信号S2を出力する。すなわち、キャリッジ16を支持台13が配置された印刷領域に移動させると共に、圧電素子26を伸縮動作させてインク室25bの内容積を増減させることによりノズル開口24からインク流路25中に存在しているインク(この場合はインクA)を支持台13上に給送される用紙Pに向けて噴射させる。すなわち、インクAを使用する印刷データに基づく用紙Pに対する印刷を実行させる。そして、そのインクAを使用する印刷データによる印刷が終了すると、制御部30は、図3に示す置換フラッシング制御処理ルーチンを終了する。
【0057】
なお、制御部30は、先のステップS11での判定結果が否定判定(S11=NO)であるため、その処理をステップS21に移行した場合は、そのステップS21において、紙送りモーター14に向けて用紙Pを給送させるための制御信号S5を出力すると共に、圧電素子26に向けて記録用噴射のための制御信号S2を出力する。そして、圧電素子26の伸縮動作に基づきインク室25bの内容積を増減させることにより、ノズル開口24からインク流路25中に存在しているインク(この場合はインクB)を支持台13上に給送されている用紙Pに向けて噴射させる。すなわち、インクBを使用する印刷データBnに基づく用紙Pに対する印刷を継続して実行させる。そして、その印刷データBnによる印刷が終了すると、制御部30は、図3に示す置換フラッシング制御処理ルーチンを終了する。
【0058】
さて、以上のようなインクセレクター22の切り替え駆動(S12)、置換FL(S19)及びそれに伴う切り替え後のインクAを使用した印刷実行(S20)をした後において、更に新たな印刷データが記憶部31から読み出された場合、その印刷データに基づく印刷が用紙Pに対してなされることになる。ところが、置換FLの実行後において、切り替え前のインクBがインク流路25中の淀み箇所(例えば屈曲箇所など)に付着するなどして残留することがあり得る。そして、そのような僅かに残留しているインクBが時間の経過と共に、その時点でインク流路25内に流入している切り換え後のインクA中に染み出して混合インクを生成してしまい、そのような混合インクが用紙Pに対して噴射されると記録品質が低下してしまうことになる。そのため、こうした場合には、記憶部31から読み出した新たな印刷データに基づく印刷動作をする前に、液体噴射ヘッド19内のインク流路25中に存在するインク(この場合は混合インク)が廃棄用の噴射データに基づきキャップ28内に吐出されたり、キャッピング状態での吸引ポンプの駆動によりキャップ28内に吸引されたりして排出される。
【0059】
そこで次に、このような場合に記録品質の低下を抑制するべく、制御部30が廃棄用の噴射データに基づき実行する廃棄用噴射制御処理ルーチンについて図5を参照して説明する。
【0060】
さて、図3に示した置換フラッシング制御処理ルーチンの終了後において、新たな印刷データが記憶部31から読み出されると、制御部30は、図5に示す廃棄用噴射制御処理ルーチンを開始する。
【0061】
そして、制御部30は、まずステップS31において、記憶部31のフラグ領域に置換FLフラグがたっているか否かを判定する。そして、制御部30は、その判定結果が置換FLフラグありとする肯定判定(S31=YES)の場合、その処理を次のステップS32に移行し、置換FLフラグなしとする否定判定(S31=NO)の場合は、その処理をステップS39に移行する。
【0062】
ステップS32に移行した場合、制御部30は、前回の置換FLが実行されてからの経過時間が予め設定した閾値時間(本実施形態では、一例として、1時間)未満であるか否かを判定する。すなわち、先のステップS19で置換FLを実行してからのタイマー32による計測時間が1時間未満であるか否かを判定する。なお、この場合の閾値時間とは、インク流路25中のインクを第1液体(この場合、インクB)から第2液体(この場合、インクA)に置換した後において、インク流路25中の淀み箇所等に残留している第1液体(インクB)が第2液体(インクA)中に染み出して混合インクを生じさせると想定される想定時間であり、染み出し実験結果等に基づき設定される。そして、制御部30は、その判定結果が肯定判定(S32=YES)の場合、その処理をステップS33に移行する一方、その判定結果が否定判定(S32=NO)の場合、その処理をステップS34に移行する。
【0063】
ステップS33に移行した場合、制御部30は、キャリッジモーター18に向けて制御信号S6を出力すると共に、圧電素子26に向けて廃棄用噴射のための制御信号S3を出力する。すなわち、キャリッジ16をホームポジション領域に移動させて液体噴射ヘッド19のノズル形成面19aをキャップ28に対峙させると共に、圧電素子26を伸縮動作(駆動)させてインク室25bの内容積を増減させることによりノズル開口24からインク流路25中に存在しているインク(この場合は僅かに残留したインクBがインクA中に染み出して混じった混合インク)をキャップ28内に吐出させる。
【0064】
なお、このステップS33での廃棄用噴射において圧電素子26に印加される単位周期信号の数値は、一例として、25000セグメント(Seg)とされる。そして、このステップS33での廃棄用噴射は、液体噴射ヘッド19のノズル開口24から印刷途中などに周期的にノズル内のインクの増粘予防を図るために100〜1000Seg程度の単位周期信号にてノズル開口24からインクを吐出させる通常フラッシング(通常FL)よりも強力なFLである第1パワーFLと呼ばれる。そして、この第1パワーFLを実行させると、制御部30は、その処理をステップS35に移行する。
【0065】
一方、ステップS32からステップS34に移行した場合も、制御部30は、キャリッジモーター18に向けて制御信号S6を出力すると共に、圧電素子26に向けて廃棄用噴射のための制御信号S3を出力する。そして、ホームポジション領域において液体噴射ヘッド19のノズル形成面19aをキャップ28に対峙させると共に、圧電素子26の伸縮動作によりインク室25bの内容積を増減させてノズル開口24からインク流路25中に存在しているインク(残留インクBがインクA中に染み出して混じった混合インク)をキャップ28内に吐出させる。
【0066】
なお、このステップS34での廃棄用噴射も、第1パワーFLの場合と同様に通常FLよりは強力なFLであるが、第1パワーFLとは区別して、第2パワーFLと呼ばれる。但し、この第2パワーFLの廃棄用噴射において圧電素子26に印加される単位周期信号の数値Eは、一例として、次のような式(1)によって算出された数値とされる。
【0067】
E=25000*(N−Na)Seg…(1)
この場合、Nは、上記の閾値時間(1時間)内に第1パワーFLのような通常FLよりも強力なFLが集中して繰り返されたならばインク流路25内の淀み箇所等から残留しているインクBが排出されて淀みが消失するであろうと想定されるFL回数として予め設定された閾値回数であり、本実施形態では、一例として、4回に設定されている。さらに、Naは、上記の閾値時間(1時間)内に実行された強力なフラッシング(すなわち、上記の第1パワーFL)の回数を示すカウント値である。
【0068】
そのため、前回の置換FLの終了後で1時間未満の間にステップS33での第1パワーFLが例えば1回も実行されていない場合には、25000*(4−0)Seg=100000Segの単位周期信号の印加により、圧電素子26が伸縮駆動される。また、例えば閾値時間である1時間未満の間に、ステップS33での第1パワーFLが例えば1回実行されていた場合には、25000*(4−1)Seg=75000Segの単位周期信号の印加により、圧電素子26が伸縮駆動される。さらに、同じく閾値時間である1時間未満の間に、ステップS33での第1パワーFLが例えば2回実行されていた場合には、25000*(4−2)Seg=50000Segの単位周期信号の印加により、圧電素子26が伸縮駆動される。なお、この場合、0回と1回では、0回が第1の回数に、1回が第2の回数に相当する。また、1回と2回では、1回が第1の回数に、2回が第2の回数に相当する。
【0069】
このように、ステップS34では、前回の置換FLの終了後における閾値時間(1時間)内における廃棄用噴射の一例である第1パワーFLの有無が制御部30によって判別され、第1パワーFLが有ったと判定した場合は、その回数のカウント値Naが記憶部31から読み出される。この点で、制御部30は、置換FL後の閾値時間(1時間)内における廃棄用噴射の有無を判別する廃棄用噴射判別手段として機能すると共に、このようなステップS34は廃棄用噴射判別ステップに相当する。また、このステップS34では、置換FL後の閾値時間(1時間)内に第1パワーFLが有った場合には1回も無かった場合よりも少ない液量での廃棄用噴射(第2パワーFL)がなされるため、このステップS34は廃棄用噴射実行ステップに相当する。そして、制御部30は、このステップS34で第2パワーFLを実行させると、その処理をステップS37に移行させる。
【0070】
また、第1パワーFLを実行したステップS33からステップS35に移行した場合、制御部30は、記憶部31のカウント領域に記憶させている第1パワーFLのカウント値Naを更新させる。そして、次のステップS36において、制御部30は、更新した第1パワーFLのカウント値Naが閾値回数N(この場合、4回)と一致するか否かを判定する。そして、制御部30は、その判定結果が否定判定(S36=NO)の場合、廃棄用噴射制御処理ルーチンを終了する。その一方、その判定結果が肯定判定(S36=YES)の場合、制御部30は、その処理を次のステップS37に移行する。
【0071】
そして、ステップS37において、制御部30は、記憶部31のフラグ領域に記憶させている置換FLフラグをリセット、すなわちクリアさせる。また、次のステップS38において、制御部30は、記憶部31のカウント領域に記憶させている第1パワーFLのカウント値Naをゼロとなるようにクリアさせる。そして、このステップS38の処理を終了すると、制御部30は、廃棄用噴射制御処理ルーチンを終了する。なお、この廃棄用噴射制御処理ルーチンが終了すると、この制御処理ルーチンが開始される契機となった読み出し印刷データに基づく印刷動作が実行されることになる。
【0072】
そこで次に、以上のように構成された第1実施形態のプリンター11における作用について、特に供給されるインクの種類が切り替わる場合及びその切り替えに伴う置換FLの実行後における印刷時に液体噴射ヘッド19をメンテナンスする際の作用に着目して以下説明する。
【0073】
さて、いま例えば図4(a)に示すように、インクセレクター22の流路状態が液体噴射ヘッド19側にインクBを供給する流路状態であるとする。この場合において、次に用紙Pに対して印刷するための印刷データが印刷データBnであるときには、インクセレクター22は切り替え駆動されることなく、図4(a)に示す流路状態のままで次に支持台13上に給送されてきた用紙Pに対してノズル開口24からインク流路25中のインクBが噴射されて印刷が行われる。
【0074】
その一方、次に用紙Pに対して印刷するための印刷データがインクAの印刷データ(以下、「印刷データAn」という場合もある。)である場合には、インクセレクター22が図4(b)に示す流路状態に切り替え駆動される。そして、この場合は、その時点で液体噴射ヘッド19のインク流路25中には切替前のインクBが存在しているため、次に印刷データAnによる印刷を用紙Pに施すためには、インク流路25中に存在している切替前のインクB(第1液体)を切替後のインクA(第2液体)に置換する必要がある。そのため、キャリッジ16がホームポジション領域に移動され、液体噴射ヘッド19がメンテナンス装置29のキャップ28の上方に位置した状態で、そのキャップ28内に向けてノズル開口24からインク流路25中のインクBが廃棄のために吐出させられる。但し、その時点でインク流路25中に存在しているインクBの全てを一律にノズル開口24から吐出させたのでは、印刷に未使用のまま廃棄されることになるインクBの無駄が多すぎる。
【0075】
そこで本実施形態では、次のようなことが行われる。すなわち、プリンター11外面の表示パネル34に、図4(c)に示す表示内容の案内画面表示がなされる。そのため、プリンター11のユーザーは、この表示パネル34の案内画面表示を見て、インク流路25中に残っているインクBを利用した割り込み印刷をすることが可能となる。画面内の2つのボタンのうち、実行しないボタン34bがオン操作された場合は、割り込み印刷しないということになり、液体噴射ヘッド19のノズル開口24からインク流路25中のインクBが置換FLのためにキャップ28内に向けて直ぐに吐出される。
【0076】
その一方、実行ボタン34aがオン操作された場合には、割り込み印刷するということになり、所定時間内にユーザーがPC33等から割り込み印刷用の新たな印刷データBnをプリンター11に送信すれば、その印刷データが記憶部31に一時記憶されると共に、制御部30により読み出される。そして、新たに入力された印刷データBnによる印刷に要する必要液量がインク流路25中の残存液量よりも多ければ、インク不足である旨、及び、印刷完了のための必要液量が更に少量で済む別の印刷データの再入力を促す案内画面表示が表示パネル34上になされる。
【0077】
その一方、新たに入力された印刷データBnによる印刷に要する必要液量がインク流路25中の残存液量以下であれば、その印刷データBnによる印刷が支持台13上の用紙Pに対して施される。つまり、その分だけ、印刷に未使用のまま廃棄されることになるインクBの無駄が抑制される。そして、その印刷データBnに基づくインクBの噴射がされた後におけるインク流路25中の残存液量が、依然としてインク流路25全域分の半分以上(閾値残量以上)残っている場合には、表示パネル34上に残存するインクBを使用した更なる割り込み印刷が可能である旨が表示され、ユーザーは更なる割り込み印刷の実行が可能とされる。
【0078】
こうした割り込み印刷によりインク流路25中のインクB残量が閾値残量よりも少なくなると、その時点で、液体噴射ヘッド19のノズル開口24からインク流路25中の残存するインクBが置換FLのためにキャップ28内に向けて吐出される。こうした割り込み印刷で切替前の第1液体であるインク流路25中のインクBが印刷に消費されると、例えば、図4(d)に示すように、インク流路25内から置換のために排出させるべきインクBの液量が、ノズル開口24の付近に残存する僅かな液量だけで済むようになる。そのため、印刷に未使用のまま廃棄されることになるインクBをごく僅かにできる。
【0079】
そして、以上のような置換FLが行われた直後に、先に記憶部31から読み出して一時的に印刷待機していた印刷データAnに基づいた印刷が新たに支持台13上に給送された用紙Pに対して施される。
【0080】
また、以上のような置換FL直後の印刷データAnに基づく印刷が行われた後であって前回の置換FLから1時間(閾値時間)内に新たな印刷データが記憶部31から読み出された場合には、圧電素子26に印加される単位周期信号が通常FL(100〜1000Seg程度)よりも強力な第1パワーFL(25000Seg)がなされる。これにより、置換FL後でインク流路25内の淀み箇所にインクBが残存してインクA中に染み出して混合インクを生成していたとしても、そのような混合インクは通常FLよりも強力な第1パワーFLでノズル開口24から排出され、インク流路25内のインクBの淀みも良好に解消される。そして、そのような第1パワーFLが行われた直後に、先に記憶部31から読み出して一時的に印刷待機していた印刷データ(An又はBn)に基づいた印刷が新たに支持台13上に給送された用紙Pに対して施される。
【0081】
一方、以上のような置換FL直後の印刷データAnに基づく印刷が行われた後であって前回の置換FLから1時間(閾値時間)経過後に新たな印刷データが記憶部31から読み出された場合には、インク流路25内の淀み箇所に残存しているインクBがインクA中に染み出している確率が高い。そのため、圧電素子26に印加される単位周期信号の大きさが、少なくとも第1パワーFL(25000Seg)以上の第2パワーFLがなされる。具体的には、E=25000*(N−Na)Seg、という式により算出される数値Eが第2パワーFLにおける単位周期信号の大きさとされる。
【0082】
そのため、前回の置換FLから1時間以内に1回も第1パワーFLがされていない場合には、インク流路25内の淀み箇所に残存しているインクBがインクA中に染み出すことで、記録品質の低下を招く混合インクを生成している可能性が高いものの、単位周期信号が100000Segの第2パワーFLにより、ノズル開口24から良好に排出される。
【0083】
また、前回の置換FLから1時間以内に第1パワーFLが2回なされている場合には、インク流路25内の淀み箇所に残存していたインクBのうち、その幾分かが2回の第1パワーFLによってインク流路25内の淀み箇所から移動させられ、ノズル開口24から排出していることもあり得る。そのため、前回の置換FLから1時間以内に第1パワーFLが未だ1回もなされていなかった場合よりも、廃棄用噴射で吐出されるインク(残留したインクBがインクA中に染み出した混合インク)の液量を低減させるように、単位周期信号が50000Segの第2パワーFLがなされる。
【0084】
さらに、前回の置換FLから1時間以内に第1パワーFLが4回(閾値回数)なされた場合には、それらの度重なる第1パワーFLによりインク流路25中から既にインクBの淀みは消失させられているものと推測される。そのため、前回の置換FLから1時間(閾値時間)経過後に新たな印刷データが記憶部31から読み出されると、通常FL(100〜1000Seg程度)とほぼ同程度又はそれよりも少し強力な廃棄用噴射のフラッシングをおこなった後、その新たな印刷データ(An又はBn)に基づいた印刷が新たに支持台13上に給送された用紙Pに対して施される。
【0085】
上記第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)液体噴射ヘッド19のインク流路25内に流入口23から流入させるインクの種類がインクB(第1液体)からインクA(第2液体)に切り替わるときには、その後においてインクA中にインクBが混じった混合インクを用紙Pに噴射することによる記録品質の低下を抑制することが望ましい。そのため、通常は、その時点でインク流路25内に存在しているインクBの全てが一律に廃棄のためにノズル開口24から排出されると、用紙Pに対して記録を施すために噴射されるという用途に未使用のままで打ち捨てられるインクBが無駄になるという問題がある。この点、本実施形態によれば、液体噴射ヘッド19のインク流路25内に流入させるインクの種類がインクB(第1液体)からインクA(第2液体)に切り替わるときに、インクBを使用する印刷データが記憶部31に記憶されていれば、その印刷データに基づいて、その時点でインク流路25中に存在している切り替え前のインクBの少なくとも一部が用紙Pに対して印刷のために噴射される。したがって、記録品質の低下を抑制するべく用紙Pに対して印刷のために噴射されるという用途に未使用のままで打ち捨てられるインクの量を低減させることができる。
【0086】
(2)記憶部31に記憶されたインクB(第1液体)を使用する印刷データBnに基づきインク流路25内に残存しているインクBの少なくとも一部が用紙Pに対して印刷のために噴射された後において更にインク流路25中に残っているインクBをインクAと置換するために、圧電素子(排出実行手段)26が駆動されることになる。すなわち、この場合には、液体噴射ヘッド19のインク流路25内に流入させるインクの種類を切り替えた時点でインク流路25中に存在しているインクBの全てがインクAと置換されるわけではない。そのため、インク流路25内に流入させるインクの種類を切り替えた時点でインク流路25内の全域分のインクBよりも少ない量のインクBがインクAと置換されることになるので、圧電素子26の駆動によるインクBとインクAとの置換に要する時間を短縮することができる。
【0087】
(3)用紙PにインクA(第2液体)の噴射により記録を施すためにインクの種類を切り替えた場合において、液体噴射ヘッド19内のインク流路25中に存在するインクがインクB(第1液体)からインクAに置換された後に、そのインク流路25中のインクつまりインクAが用紙Pに対してインクAの印刷データAnに基づき噴射されることになるので、記録品質の低下を抑制できる。
【0088】
(4)インク流路25中のインクをインクB(第1液体)からインクA(第2液体)に置換した後にインク流路25中の淀み箇所等に残留したインクBがインクA中に染み出して混じると想定される閾値時間(1時間)の経過後において、そのインク流路25中に存在するインクを記録品質の低下を抑制するべくノズル開口24から廃棄のために噴射させる第2パワーFL(廃棄用噴射)で消費される液体の液量を抑制できる。すなわち、インクの置換時点から閾値時間が経過するまでに第1パワーFL(廃棄用噴射)が1回でも実行されていれば、その第1パワーFLが引き起こすインクの流動がインク流路25中の淀み解消に寄与するものと期待できる。そのため、閾値時間内に第1パワーFLを実行した後において閾値時間経過後に第2パワーFLを重ねて行う場合には、少なくとも幾分かはインク流路25内の淀みが閾値時間内での第1パワーFLにより解消されているため、閾値時間内に第1パワーFLが無かったとした場合よりも、少ない液量の第2パワーFLで足りることになる。その結果、その時点ではインク流路25内のインクのほとんどを占めるインクA(第2液体)が第2パワーFLにより噴射されて打ち捨てられる量も少なくなる。したがって、記録品質の低下を抑制するべく媒体に対して印刷を施すために噴射されるという用途に未使用のままで打ち捨てられるインクの量を低減させることができる。
【0089】
(5)閾値時間(1時間)内に実行された第1パワーFL(廃棄用噴射)の回数が多い場合ほど、それよりも第1パワーFLの実行済み回数が少ない場合よりも、それらの第1パワーFLが引き起こす液体の流動がインク流路25中の淀み解消に大きく寄与するものと期待できる。そのため、閾値時間経過後に第2パワーFLを重ねて行う場合には、更に少ない液量の第2パワーFLで足りることになり、より一層、用紙Pに対して記録を施すために噴射されるという用途に未使用のままで打ち捨てられるインクの量を低減させることができる。
【0090】
(6)インク流路25内のインクがインクB(第1液体)からインクA(第2液体)に置換されたにもかかわらずインク流路25内に淀んで残留していたインクBが、閾値回数に相当する回数の第1パワーFL(廃棄用噴射)が閾値時間内に集中して行われることによって、ノズル開口24から排出される可能性が高くなる。そのため、閾値時間の経過後には、既にインク流路25内からインクBの淀みは消失しているものと推測できるので、インクAを用紙Pに対して記録を施すために噴射する前に更なる第2パワーFL(廃棄用噴射)を実行する必要性も低い。したがって、この場合には、第2パワーFL(廃棄用噴射)を省略できる分だけ、用紙Pに対して記録を施すために噴射されるという用途に未使用のままで打ち捨てられるインクの量を低減させることができる。
【0091】
(7)インク流路25内に残留したインクB(第1液体)の淀みが解消していると推測される確率が高い場合ほど、用紙Pに対するインクA(第2液体)の噴射の前に行われる第1パワーFL(廃棄用噴射)で消費されるインクの液量を少なくできる。したがって、この点でも、用紙Pに対して記録を施すために噴射されるという用途に未使用のままで打ち捨てられるインクの量を低減させることができる。
【0092】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図6,図7を参照しながら説明する。なお、この第2実施形態は、インクの種類の切替時に制御部30が実行する置換FL制御処理ルーチンの処理内容が第1実施形態の場合とは異なっている。そして、その他の点では第1実施形態とほぼ同じであるため、同一の構成については同一符号を付すことによって重複した説明は省略する。なお、図7(b)〜(d)の概略図でも、図4(a)(b)(d)の場合と同様に図面簡略化のため、圧電素子26の図示を省略している。
【0093】
この第2実施形態においても、置換FL制御処理ルーチンが開始される時点の前には、支持台13上に給送された用紙Pに対して記憶部31から読み出した印刷データBnに基づいたインクBを使用した印刷動作がなされていたものとする。そして、そのインクBを使用した印刷動作が終了した後、制御部30により、インクA及びインクBの何れか一方を使用する新たな印刷データが記憶部31から読み出されると、図6に示す置換FL制御処理ルーチンが開始される。なお、この第2実施形態では、図7(a)内の白抜き矢印よりも上側に示すように、記憶部31には複数のインクBの印刷データB1〜Bnと複数のインクAの印刷データA1〜Anとが各々の印刷順序をインクの種類と関係なく不規則に入れ込ませた状態で既に記憶されているものとする。
【0094】
さて、置換FL制御処理ルーチンが開始されると、制御部30は、まずステップS41において、インクの種類の切り替えが必要であるか否か、すなわちインクセレクター22の切り替え駆動が必要か否かを判定する。具体的には、記憶部31に記憶されている複数の印刷データのうちに現時点でインクセレクター22が流動を許容しているインク(この場合はインクB)とは異なるインク(この場合はインクA)を使用する印刷データが存在するか否かを判定する。本実施形態の場合、図7(a)に示すように、記憶部31は印刷データA1〜Anを印刷データB1〜Bnと共に記憶しているので、その判定結果は肯定判定(S41=YES)となり、制御部30は、その処理をステップS42に移行する。なお、その時点で記憶部31がインクBを使用する印刷データBnしか記憶していない場合には、その判定結果が否定判定(S41=NO)となり、制御部30は、その処理をステップS49に移行する。
【0095】
ステップS42に移行すると、制御部30は、記憶部31に記憶されている印刷待ちの各印刷データの印刷順を変更する。具体的には、その時点でインクセレクター22がインク供給チューブ22a側への流動を許容しているインクの種類はインクBであるため、図7(a)内の白抜き矢印よりも下側に示すように、印刷データB1〜Bnが印刷データA1〜Anよりも優先的に印刷されるように順番が変更される。
【0096】
そして、次のステップS43において、制御部30は、記憶部31に記憶された各印刷データのうち優先印刷されるインクBによる各印刷データB1〜Bnに基づいた印刷動作で必要とされるインクBの必要液量が、その時点でインク流路25中に存在しているインクBの残存液量以下であるか否かを判定する。そして、その判定結果が肯定判定(S43=YES)の場合、制御部30は、その処理を次のステップS17に移行する。その一方、その判定結果が否定判定(S43=NO)の場合、各印刷データB1〜Bnに基づいた印刷動作で必要とされるインクBの必要液量とその時点でインク流路25中に存在しているインクBの残存液量との差である差分液量を算出した後、その処理をステップS44に移行する。
【0097】
そして、このステップS44において、制御部30は、紙送りモーター14に向けて用紙Pを給送させるための制御信号S5を出力すると共に、圧電素子26に向けて記録用噴射のための制御信号S2を出力する。そして、圧電素子26の伸縮動作に基づきインク室25bの内容積を増減させることにより、ノズル開口24からインク流路25中に存在しているインク(この場合はインクB)を支持台13上に給送されている用紙Pに向けて噴射させる。なお、この時点では、図7(b)に示すように、インクセレクター22は未だ切り替え駆動されていない。そのため、インクセレクター22を介して液体噴射ヘッド19のインク流路25内にインクカートリッジ21からのインクBが引き続き供給される。そして、制御部30は、先のステップS43で算出した差分液量に相当する液量のインクBがノズル開口24から用紙Pに対して噴射されると、その処理を次のステップS45に移行する。
【0098】
そして、ステップS45において、制御部30は、インクセレクター22に向けて制御信号S1を出力し、インクセレクター22の流路状態を、図7(b)に示す流路状態から図7(c)に示す流路状態に切り替えさせる。そのため、以後は、インクカートリッジ20から供給されるインクAがインクセレクター22を介して液体噴射ヘッド19側に供給されることになる。
【0099】
そして、次のステップS46において、制御部30は、紙送りモーター14に向けて用紙Pを給送させるための制御信号S5を出力すると共に、圧電素子26に向けて記録用噴射のための制御信号S2を出力する。そして、圧電素子26の伸縮動作に基づきインク室25bの内容積を増減させることにより、ノズル開口24からインク流路25中にインクB残量に相当する液量のインクを支持台13上に順次給送される用紙Pに向けて噴射させると、制御部30は、その処理を次のステップS47に移行する。
【0100】
そして、次のステップS47において、制御部30は、キャリッジモーター18に向けて制御信号S6を出力すると共に、圧電素子26に向けて廃棄用噴射のための制御信号S3を出力する。すなわち、キャリッジ16をホームポジション領域に移動させて液体噴射ヘッド19のノズル形成面19aをキャップ28に対峙させると共に、圧電素子26を伸縮動作させてインク室25bの内容積を増減させることによりノズル開口24からインク流路25中のインクをキャップ28内に吐出させて置換FLを行わせる。
【0101】
但し、この時点で、液体噴射ヘッド19のインク流路25内には、図7(d)に示すように、先のステップS46でインク流路25内の全域に亘るインクB残量に相当する液量のインクが廃棄用に吐出された後であるために、インクBはほとんど残っていない。そのため、この場合に行う置換FLではノズル開口24のメニスカスを整えること等を目的とした僅かな液量のインクの吐出でも足りるので、廃棄用噴射のために圧電素子26に印加される単位周期信号の大きさも通常FL(100〜1000Seg程度)相当に調整される。そして、この置換FLが実行されると、制御部30は、記憶部31のフラグ領域に、置換FLが実行されたことを示す置換FLフラグをたて、その処理を次のステップS48に移行する。
【0102】
そして、次のステップS48において、制御部30は、紙送りモーター14に向けて制御信号S5を出力すると共に、キャリッジモーター18に向けて制御信号S6を出力し、さらに、圧電素子26に向けて記録用噴射のための制御信号S2を出力する。すなわち、キャリッジ16を支持台13が配置された印刷領域に移動させると共に、圧電素子26を伸縮動作させてインク室25bの内容積を増減させることによりノズル開口24からインク流路25中に存在しているインク(この場合はインクA)を支持台13上に給送される用紙Pに向けて噴射させる。すなわち、インクAを使用する各印刷データA1〜Anに基づく用紙Pに対する印刷を実行させる。そして、それらの各印刷データA1〜Anによる印刷が終了すると、制御部30は、図6に示す置換FL制御処理ルーチンを終了する。
【0103】
なお、制御部30は、先のステップS41での判定結果が否定判定(S41=NO)であるため、その処理をステップS49に移行した場合は、そのステップS49において、紙送りモーター14に向けて用紙Pを給送させるための制御信号S5を出力すると共に、圧電素子26に向けて記録用噴射のための制御信号S2を出力する。そして、圧電素子26の伸縮動作に基づきインク室25bの内容積を増減させることにより、ノズル開口24からインク流路25中に存在しているインク(この場合はインクB)を支持台13上に給送されている用紙Pに向けて噴射させる。すなわち、インクBを使用する印刷データに基づく用紙Pに対する印刷を継続して実行させる。そして、そのインクBを使用する印刷データによる印刷が終了すると、制御部30は、図6に示す置換FL制御処理ルーチンを終了する。
【0104】
そこで次に、以上のように構成された第2実施形態のプリンター11における置換FL制御処理を行う場合の作用について、主に第1実施形態のプリンター11における作用との相違点につき説明する。
【0105】
さて、この第2実施形態では、印刷待ちのため記憶部31に記憶されている印刷データのうちに、その時点でインクセレクター22が流動を許容しているインク(この場合はインクB)の種類とは異なるインク(この場合はインクA)の印刷データが含まれていると、第1実施形態の場合と同様に、インクセレクター22の切り替えが必要と判定される。但し、第1実施形態の場合とは異なり、直ぐにインクセレクター22の切り替え駆動は行われず、まず、記憶部31に印刷順がインクの種類と無関係に記憶されている各印刷データA1〜An,B1〜Bnの印刷順が変更される。
【0106】
すなわち、その時点でインクセレクター22が流動を許容しているインクBの各印刷データB1〜BnがインクAの印刷データA1〜Anよりも優先的に印刷されるように並べ替えられる。そして、印刷データB1,B2…という順番で、インク流路25中のインクBがノズル開口24から用紙Pに向けて噴射されてインクBを使用した印刷が行われる。
【0107】
このとき、印刷データA1〜Anに優先させた各印刷データB1〜Bnの印刷に要するインクBの必要液量がインク流路25全域に亘るインクBの残存液量よりも少ない場合には、直ぐにインクセレクター22が切り替え駆動される。そして、ノズル開口24からインク流路25内のインクBが用紙Pに対して噴射されてインクBを使用した印刷が行われる。そして、そのインクBの印刷データB1〜Bnの印刷が終了すると、インク流路25内に残存しているインクBが廃棄用噴射により吐出され、インクAと置換される置換FLが行われる。そして、その後に印刷データA1〜Anの印刷が行われる。
【0108】
その一方、印刷データA1〜Anに優先させた各印刷データB1〜Bnの印刷に要するインクBの必要液量がインク流路25全域に亘るインクBの残存液量よりも多い場合には、インクセレクター22の切り替え駆動を保留した状態のままノズル開口24からインク流路25内のインクBが用紙Pに対して噴射されてインクBを使用した印刷が行われる。そして、各印刷データB1〜Bnの印刷に要するインクBの必要液量とインク流路25の全域分に相当するインクBの残存液量との差である差分液量のインクBの記録用噴射がなされると、インクセレクター22が切り替え駆動される。
【0109】
すると、以後はインクセレクター22を介してインク流路25内にインクAが流入するようになり、そのままインクBの印刷データB1〜Bnに基づいた印刷が続けられると、インク流路25内のインクがインクBからインクAに置換される。そして、この場合にはインク流路25内のインクB残量がほとんどゼロになった時点でインクAへの置換が完了するようになる。そのため、その後において、置換FLにより大量のインクBを廃棄用に噴射させる必要がなくなる。
【0110】
上記第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)〜(7)の効果に加えて、更に以下のような効果を得ることができる。
(8)液体噴射ヘッド19のインク流路25内に流入するインクの種類がインクB(第1液体)からインクA(第2液体)に切り替わった時点で記憶部31に記憶されている複数の印刷データのうちインクBの印刷データB1〜BnがインクAの印刷データA1〜Anに優先して用紙Pに対する印刷に使用されることになる。そのため、インク流路25内に残存しているインクB(第1液体)を効率良く無駄にせずに消費することができる。
【0111】
(9)全ての印刷データB1〜Bnの印刷に要する必要液量とインク流路25全域分に相当するインクBの残存液量との差分液量のインクBを噴射させてからインクセレクター22を切り替え駆動させ、その後、インク流路25内に存在するインクBの全てを用紙Pに印刷のために噴射させれば、無駄に廃棄させるインクBをほとんどゼロにできる。
【0112】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態において、第1パワーFLで圧電素子26に印加させる単位周期信号の大きさは通常FL(100〜1000Seg程度)よりも強力であれば、実施形態中に示した25000Segに限定されるものではない。また、第2パワーFLにおいて閾値回数(4回)Nと閾値時間(1時間)内の第1パワーFLの回数カウント値Naとの差の数値に乗ずる単位周期信号の数値Eも実施形態中の式(1)に示した25000Segに限定されるものではない。
【0113】
・上記実施形態において、第1パワーFLの閾値回数は4回に限定されず、4回以外の複数回であってもよい。
・上記実施形態において、第2パワーFLでは、式(1)により算出した数値Eに相当する単位周期信号を圧電素子26に印加するのではなく、第1パワーFLにおける単位周期信号(25000Seg)以上の予め設定された単位周期信号(例えば100000Seg以下の30000Segとか50000Seg等)を一律に印加してもよい。
【0114】
・上記実施形態において、第1パワーFLを行うか第2パワーFLを行うかの判定基準となる前回の置換FLからの経過時間である閾値時間は実施形態に示す1時間に限るものではない。要するに、インク流路25中のインクをインクB(第1液体)からインクA(第2液体)に置換した後にインク流路25中の淀み箇所等に残留したインクBがインクA中に染み出して混じると想定される時間であれば、例えば45分とか2時間とかでもよい。
【0115】
・上記第2実施形態において、ステップS44で印刷データB1〜Bnの一部をインクセレクター22からのインクBの供給を受けながら印刷のために噴射する液量は、印刷データB1〜Bnの必要液量とインク流路25全域相当の残存液量との差分液量以上であってもよい。但し、インク流路25全域相当の残存液量と差分液量との和以下であることが条件とされる。それ以上のインク噴射となると、インクBに続けてインクAまで同じ用紙Pに対して噴射されることになるからである。
【0116】
・上記実施形態において、切替実行手段として機能するインクセレクター22は三方弁以外に分岐流路の夫々に一つずつ個別に開閉動作する開閉弁を備えたものなど、他の流路切替機構で構成されてもよい。
【0117】
・上記第2実施形態において、記憶部31に記憶される複数の印刷データは、インクBの印刷データが1つとインクAの印刷データが1つの合計2つであってもよく、さらに、インクB及びインクAの何れか一方が1つで他方が複数であってもよい。
【0118】
・上記実施形態において、インク流路25中のインクを置換するために切替前のインクをインク流路25中から排出させる場合は、置換FLによることなく、液体噴射ヘッド19にキャップ28をキャッピングさせた状態で吸引ポンプを駆動させてノズル開口24からインクを強制的に吸引するクリーニングにより排出させてもよい。この場合には、吸引ポンプが排出実行手段として機能することになる。
【0119】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化してもよい。例えば微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0120】
11…プリンター(液体噴射装置)、19…液体噴射ヘッド、22…インクセレクター(切替実行手段)、23…流入口、24…ノズル開口、25…インク流路(液体流路)、26…圧電素子(噴射実行手段、排出実行手段)、30…制御部(制御手段、廃棄用噴射判別手段)、31…記憶部(記憶手段)、A…インク(第2液体)、A1〜An,B1〜Bn…印刷データ(噴射データ)、B…インク(第1液体)、E…数値、N…閾値回数、P…用紙(媒体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を流入させる流入口から前記液体を噴射するノズル開口まで前記液体を流動させる液体流路が形成された液体噴射ヘッドと、
前記液体を前記ノズル開口から噴射させる噴射実行手段と、
前記ノズル開口から噴射させる前記液体の噴射データを記憶する記憶手段と、
前記液体流路内に前記流入口から流入させる前記液体が第1液体から第2液体に切り替わる場合において、前記記憶手段に前記第1液体の噴射データが記憶されている場合には、前記第1液体の噴射データに基づき前記噴射実行手段の駆動を制御し、前記液体流路中の前記第1液体を媒体に噴射させる制御手段と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記液体流路中に存在する前記液体を前記ノズル開口から廃棄するべく排出させるときに駆動される排出実行手段を更に備え、
前記制御手段は、前記噴射データに基づき前記液体流路中の前記第1液体が前記媒体に噴射された後、前記排出実行手段の駆動を制御し、前記液体流路中の液体を前記第1液体から前記第2液体に置換させることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記排出実行手段の駆動を制御して前記液体流路中の液体を前記第1液体から前記第2液体に置換させた後、前記噴射実行手段の駆動を制御し、前記液体流路中の前記第2液体を前記媒体に噴射させることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、少なくとも一つの前記第1液体の噴射データと少なくとも一つの前記第2液体の噴射データとを記憶しており、
前記制御手段は、前記液体流路内に前記流入口から流入させる前記液体が第1液体から第2液体に切り替わる場合に、前記噴射実行手段の駆動を制御し、前記記憶手段に記憶されている前記各噴射データのうち前記第1液体の噴射データに基づいた媒体に対する第1液体の噴射を、前記第2液体の噴射データに基づいた媒体に対する第2液体の噴射に優先して実行させることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記流入口を介して前記液体流路内に流入させる前記液体を切り替えるときに駆動される切替実行手段を更に備え、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶されている前記第1液体の噴射データによる前記媒体に対する前記第1液体の噴射に要する必要液量が、前記液体流路内に残存している第1液体の残存液量を超える場合には、前記噴射実行手段の駆動を制御し、前記必要液量と前記残存液量との差に相当する液量の第1液体を前記媒体に対して噴射させた後、前記切替実行手段の駆動を制御し、前記液体流路内に前記流入口を介して流入する前記液体を第1液体から第2液体に切り替えさせることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
液体を流入させる流入口から前記液体を噴射するノズル開口まで前記液体を流動させる液体流路が形成された液体噴射ヘッドにおける前記液体流路内に前記流入口から流入させる前記液体が第1液体から第2液体に切り替わる場合において前記第1液体の噴射データが存在する場合に、その第1液体の噴射データに基づき前記液体流路中の前記第1液体を前記ノズル開口から媒体に対して噴射させる液体噴射ステップと、
前記液体噴射ステップの実行後、前記液体流路中に存在している前記液体を前記ノズル開口から廃棄するべく排出させ、前記液体流路中の液体を前記第1液体から前記第2液体に置換させる液体置換ステップと
を備えたことを特徴とする液体噴射装置のメンテナンス方法。
【請求項7】
液体を流入させる流入口から前記液体を噴射するノズル開口まで前記液体を流動させる液体流路が形成された液体噴射ヘッドと、
前記液体を前記ノズル開口から噴射させる噴射実行手段と、
前記液体流路中に存在する前記液体が第1液体から第2液体に置換されてから予め設定した閾値時間内における前記液体流路中に存在する前記液体を前記ノズル開口から廃棄のために噴射させる廃棄用噴射の有無を判別する廃棄用噴射判別手段と、
前記液体の置換時点から前記閾値時間が経過した後に前記第2液体を媒体に噴射する場合において、前記廃棄用噴射判別手段によって前記閾値時間内に前記廃棄用噴射が有ったと判別された場合には、前記噴射実行手段の駆動を制御し、前記閾値時間内に前記廃棄用噴射は無かったと判別された場合よりも少ない液量の廃棄用噴射を前記媒体に対する前記第2液体の噴射の前に行わせる制御手段と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記廃棄用噴射判別手段により前記閾値時間内に前記廃棄用噴射が有ったと判別された場合において、第1の回数よりも多い第2の回数の前記廃棄用噴射が有ったと判別された場合には、前記噴射実行手段の駆動を制御し、前記第1の回数の前記廃棄用噴射が有ったと判別された場合よりも少ない液量での廃棄用噴射を前記媒体に対する前記第2液体の噴射の前に行わせることを特徴とする請求項7に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記廃棄用噴射判別手段により前記閾値時間内に予め設定した閾値回数に相当する回数の前記廃棄用噴射が有ったと判別された場合には、前記噴射実行手段の駆動を制御し、前記閾値時間が経過した後において前記廃棄用噴射を行わせることなく前記媒体に対する前記第2液体の噴射を行わせることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記液体の置換時点から前記閾値時間が経過した後に前記第2液体を前記媒体に対して記録を施すために噴射する場合には、前記噴射実行手段の駆動を制御し、予め設定した閾値回数と前記閾値時間内における廃棄用噴射の回数との差を示す数値に予め設定した液量を乗じた液量での廃棄用噴射を前記媒体に対する前記第2液体の噴射の前に行わせることを特徴とする請求項7〜請求項9のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
液体を流入させる流入口から前記液体を噴射するノズル開口まで前記液体を流動させる液体流路が形成された液体噴射ヘッドにおける前記液体流路中に存在する前記液体が第1液体から第2液体に置換されてから予め設定した閾値時間内における前記液体流路中に存在する前記液体が前記ノズル開口から廃棄のために噴射された廃棄用噴射の有無を判別する廃棄用噴射判別ステップと、
前記液体の置換時点から前記閾値時間が経過した後に前記第2液体を媒体に対して記録を施すために噴射する場合において、前記閾値時間内に前記廃棄用噴射が有ったと判別された場合には、前記閾値時間内に前記廃棄用噴射は無かったと判別された場合よりも少ない液量での廃棄用噴射を前記媒体に対する前記第2液体の噴射の前に行うことを特徴とする廃棄用噴射実行ステップと
を備えたことを特徴とする液体噴射装置のメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−213994(P2012−213994A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82243(P2011−82243)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】