液体噴射装置
【課題】低コスト化を図ることができる液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】液体を噴射するヘッド部と、前記ヘッド部から排出された前記液体を受けると共に、底部に前記液体の流出口が設けられた複数の液体受部と、複数の前記液体受部のそれぞれの前記流出口に接続され、前記流出口を吸引する一の吸引ポンプと、複数の前記液体受部にそれぞれ設けられ、前記液体に浮くように形成されると共に前記液体が流出された状態において前記流出口を閉塞する閉塞部材とを備える。
【解決手段】液体を噴射するヘッド部と、前記ヘッド部から排出された前記液体を受けると共に、底部に前記液体の流出口が設けられた複数の液体受部と、複数の前記液体受部のそれぞれの前記流出口に接続され、前記流出口を吸引する一の吸引ポンプと、複数の前記液体受部にそれぞれ設けられ、前記液体に浮くように形成されると共に前記液体が流出された状態において前記流出口を閉塞する閉塞部材とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を噴射する液体噴射装置として、例えば記録媒体に文字や画像等を記録するインクジェット式記録装置などが知られている。インクジェット式記録装置は、記録媒体を搬送しつつ、噴射ヘッドに設けられたノズルから当該記録媒体にインクを噴射することで、記録媒体に文字や画像等を形成する構成になっている。インクジェット式記録装置には、噴射ヘッドの噴射領域を覆うキャップが設けられている。
【0003】
インクジェット式記録装置においては、インクの増粘や固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などにより噴射ヘッドのノズルに目詰まりが生じ、印刷不良を引き起こす場合がある。また、噴射ヘッドにインクを初期充填する際に、ヘッド内の液体をノズルから排出する必要がある。このため、記録媒体に対しての噴射とは別に、ノズル内の液体を強制的に排出させるフラッシング動作などのメンテナンス動作を行うように構成されている。
【0004】
フラッシング動作では、噴射ヘッドから排出される液体を例えばキャップなどの液体受部を用いて受けるようにしている。キャップ内には、例えば受けたインクを流出させる流出口が設けられている。流出口には、例えばポンプなどの吸引部が接続されている。
【0005】
近年、カラー印刷時の印字品質を向上するため、例えばマゼンタ、ライトマゼンタ、シアン、ライトシアン、イエロー、ブラックなどの多色のインクを使用するインクジェット式記録装置が提供されている。このように多色のインクを用いる場合、噴射ヘッドには色数に応じたノズル開口列を設ける必要があるため、例えば複数の噴射ヘッドを1つのキャリッジに搭載した構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の構成では、複数の噴射ヘッドのそれぞれに対応した複数のキャップが設けられており、キャップ毎に別々のポンプが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−153622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、複数のキャップのそれぞれに対して別々のポンプを接続する構成では、吸引精度等のメンテナンス性の面で良好ではあるが、コストが高くなってしまう。
上記のような事情に鑑み、本発明は、低コスト化を図ることができる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射するヘッド部と、前記ヘッド部から排出された前記液体を受けると共に、底部に前記液体の流出口が設けられた複数の液体受部と、複数の前記液体受部の前記流出口を共通して吸引する吸引部と、複数の前記液体受部にそれぞれ設けられ、前記液体に浮くように形成されると共に前記液体が流出された状態において前記流出口を閉塞する閉塞部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、液体受部に液体が存在する場合、閉塞部材は液体に浮くため、閉塞部材と液体の間に液体が介在した状態となる。一方、液体が液体受部から流出され液体受部における液体の液位が小さくなるにつれて閉塞部材が流出口に近づいていき、液体が流出された状態では閉塞部材によって流出口が塞がれることになる。このように、液体受部に液体が存在しない場合には流出口が塞がれることになるため、一の吸引ポンプによって複数の液体受部の流出口を共通して吸引する場合でも、吸引漏れを防ぐことができる。これにより、流出口ごとに吸引ポンプを個別に設けなくても済むため、低コスト化を図ることができる。
【0010】
上記の液体噴射装置は、前記ヘッド部は、複数の液体噴射領域を有し、前記液体受部は、前記液体噴射領域毎に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、ヘッド部が複数の液体噴射領域を有し、液体受部が液体噴射領域毎に設けられているため、複数の液体噴射領域のそれぞれに対して、確実に吸引を行うことができる。
【0011】
上記の流体噴射装置は、前記ヘッド部は、複数の噴射ヘッドを有し、前記液体噴射領域は、前記噴射ヘッド毎に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、複数の噴射ヘッドが設けられ、当該噴射ヘッド毎に液体噴射領域が設けられている構成においても、液体噴射領域のそれぞれに対して確実に吸引を行うことができる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、前記ヘッド部は、前記液体を噴射する液体噴射面を有し、複数の前記液体受部は、前記液体噴射面を覆うように形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、液体受部が液体噴射面を覆うように形成されているため、流出口が閉塞部材によって塞がれている場合においても、液体噴射面が保護されることとなる。
【0013】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射面を有するヘッド部と、前記液体噴射面を覆うように形成され、前記ヘッド部から排出された前記液体を受けると共に、底部に前記液体の流出口が設けられた複数の液体受部と、複数の前記液体受部のそれぞれの前記流出口に接続され、前記流出口を吸引する一の吸引ポンプと、それぞれの前記流出口に設けられ、前記流出口の開閉を切り替えるバルブと、前記液体噴射面が複数の前記液体受部によって覆われ、かつ、少なくとも一つの前記液体受部の前記液体が流出された状態において、当該液体が流出された前記液体受部の前記流出口を閉塞させるバルブ制御部とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、液体噴射面が複数の液体受部によって覆われ、かつ、少なくとも一つの液体受部の液体が流出された状態において、当該液体が流出された液体受部の流出口が閉塞されることになるため、一の吸引ポンプによって複数の液体受部の流出口を共通して吸引する場合でも、吸引漏れを防ぐことができる。これにより、流出口ごとに吸引ポンプを個別に設けなくても済むため、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタの構成を示す図。
【図2】本実施形態に係るヘッド部の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係るキャッピング機構の構成を示す図。
【図4】本実施形態に係るキャッピング機構を用いたメンテナンス動作の過程を示す図。
【図5】同、動作図。
【図6】同、動作図。
【図7】同、動作図。
【図8】本発明の第2実施形態に係るキャッピング機構の構成を示す図。
【図9】本実施形態に係るキャッピング機構を用いたメンテナンス動作の過程を示す図。
【図10】同、動作図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、第1実施形態に係るインクジェットプリンタ1(液体噴射装置)の概略構成を示す図である。
【0017】
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、プリンタ本体BD、インク噴射機構IJ、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTを有している。また、インクジェットプリンタ1は、不図示の記録媒体搬送機構を有している。インクジェットプリンタ1は、記録媒体搬送機構によって記録媒体を搬送しつつ、インク噴射機構IJによって記録媒体(例えば、紙、プラスチックシートなど)に文字や画像等を記録する装置である。記録媒体搬送機構、インク噴射機構IJ、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTは、それぞれプリンタ本体BDに取り付けられている。
【0018】
以下、XYZ直交座標系を設定し、当該XYZ直交座標系を適宜参照しつつ各構成要素の位置関係を説明する。本実施形態では、例えば記録媒体の搬送方向をX方向とし、当該記録媒体の搬送面においてX方向に直交する方向をY方向とし、X軸及びY軸を含む平面に垂直な方向をZ方向と表記する。また、X軸周りの回転方向をθX方向、Y軸周りの回転方向をθY方向、Z軸周りの回転方向をθZ方向とする。
【0019】
記録媒体の搬送経路には、プラテン13が配置されている。プラテン13は、例えばプリンタ本体BDに取り付けられており、記録媒体を支持する支持面を有している。プラテン13の当該支持面は、例えば+Z方向に向けられており、XY平面に平行に形成されている。
【0020】
インク噴射機構IJは、ヘッド部3、ヘッド部移動機構4及びインク貯留部6を有している。
ヘッド部3は、記録媒体に向けてインクを噴射する部分である。図2は、ヘッド部3の構成を示す側断面図である。図2に示すように、ヘッド部3は、例えば2つの噴射ヘッド3A及び3Bを有している。噴射ヘッド3A及び3Bは、それぞれヘッド部移動機構4に固定されており、例えばY方向に並んで配置されている。噴射ヘッド3A及び3Bは、−Z側の面がノズル面(液体噴射面)3F及び3Gになっている。
【0021】
ノズル面3F及び3Gには、インクを吐出するノズルNZが複数設けられている。この複数のノズルNZは、例えばX方向に直線状に配列されている。ノズル面3F及び3Gには、このようなノズル列が複数列形成されている。ノズル面3F及び3Gにおいてノズル列が形成された領域が液体噴射領域3S及び3Tとなる。噴射ヘッド3A及び3Bは、ノズル面3F及び3Gが例えばプラテン13に対向するように配置されている。噴射ヘッド3A及び3Bは、それぞれ異なる色のインクを噴射するようになっている。
【0022】
図1に戻って、ヘッド部移動機構4は、キャリッジ5及びキャリッジ移動機構16を有している。キャリッジ5は、ヘッド部3の噴射ヘッド3A及び3Bを固定させる部分である。キャリッジ5は、キャリッジ移動機構16によって例えばY方向に移動可能に設けられている。
【0023】
キャリッジ移動機構16は、ガイド軸8、パルスモータ9、主動プーリー10、従動プーリー11及びタイミングベルト12を有している。ガイド軸8は、例えばY方向に平行になるようにプリンタ本体BDに取り付けられており、キャリッジ5のY方向への移動を案内する。パルスモータ9は、θX方向に回転する回転軸を有している。主動プーリー10はパルスモータ9の回転軸に接続されている。従動プーリー11は、主動プーリー10とはプリンタ本体BDのY方向の反対側に設けられている。タイミングベルト12は、主動プーリー10及び従動プーリー11に亘って掛けられた無端ベルトである。タイミングベルト12には、キャリッジ5が固定されている。パルスモータ9を駆動することにより、キャリッジ5がガイド軸8に沿ってX方向に往復移動するようになっている。
【0024】
インク貯留部6は、例えばヘッド部3に供給するインクを貯留する部分である。インク貯留部6は、例えばインク供給チューブ14を介してヘッド部3に接続されている。インク貯留部6は、ヘッド部3のうち噴射ヘッド3Aに接続された複数(例えば、3個)のインクカートリッジ6Aと、噴射ヘッド3Bに接続された複数(例えば、3個)のインクカートリッジ6Bとを有している。インクカートリッジ6A及び6Bには、例えばマゼンタ、ライトマゼンタ、シアン、ライトシアン、イエロー、ブラックのインクが貯留されている。勿論、インクカートリッジ6A及び6Bの個数、インクの色の組み合わせなどのインク貯留部6の構成については、上記の例に限られるものではない。
【0025】
メンテナンス機構MNは、例えばキャッピング機構15及びワイピング機構17を有している。ワイピング機構17は、例えば噴射ヘッド3A及び3Bに付着したインクを払拭する。
【0026】
キャッピング機構15は、例えば増粘したインクをノズルから吸引する吸引動作、噴射ヘッド3A及び3Bから噴射あるいは排出されたインクを受けるフラッシング動作等に用いられる。キャッピング機構15は、2つのキャップ部材15A及び15Bと、1つの吸引ポンプ34とを有している。
【0027】
キャッピング機構15は、例えばプリンタ本体BD内のホームポジションに配置されている。このホームポジションは、インクジェットプリンタ1の電源オフ時や長時間に亘って記録が行われない場合などにキャリッジ5が配置される場所である。ホームポジションは、キャリッジ5の移動範囲内であって例えば記録媒体が配置される領域の外側の領域に設定される。本実施形態では、例えばキャリッジ5の移動領域のうち+Y側端部にホームポジションが設定されている。
【0028】
図3は、キャッピング機構15の構成を示す断面図である。
図1及び図3に示すように、キャップ部材15A及び15Bは、例えばY方向に並んで配置されている。キャリッジ5がホームポジションに配置された状態において、例えば噴射ヘッド3Aとキャップ部材15Aとが対向し、噴射ヘッド3Bとキャップ部材15Bとが対向するようになっている。
【0029】
図3に示すように、キャップ部材15A及びキャップ部材15Bは、上記のインクを受けるように凹状に形成されている。キャップ部材15A及び15Bは、それぞれ底部にインクの流出口51A及び51Bを有している。また、キャップ部材15A及び15Bの底部は、流出口51A及び51Bに重なるように閉塞部材50A及び50Bがそれぞれ配置されている。
【0030】
閉塞部材50A及び50Bは、例えばインクに対して浮くような材料を用いて形成されている。また、例えば閉塞部材50A及び50Bは、キャップ部材15A及び15Bの凹部内においてXY方向に移動した場合であっても流出口51A及び51Bに重なることができる程度の寸法に形成されている。図3では、キャップ部材15A及び15Bには、インクが存在しない状態を示している。このような場合においては、閉塞部材50A及び50Bによって流出口51A及び51Bが塞がれた状態になっている。
【0031】
流出口51A及び51Bには、例えばチューブ部材35が接続されている。チューブ部材35は、一端が吸引ポンプ34に接続されている。チューブ部材35の他端は2つに分岐されており、その一方が流出口51Aに接続され、他方が流出口51Bに接続されている。このため、1つの吸引ポンプ34に対して流出口51A及び51Bの両方が接続されていることになる。
【0032】
次に、上述の構成を有するインクジェットプリンタ1の動作の一例を説明する。
【0033】
外部から印刷データが送信されると、不図示の制御装置は、ドットパターンに対応した噴射データに展開して噴射ヘッド3A及び3Bに送信する。噴射ヘッド3A及び3Bでは、受信した噴射データに基づき、記録(印字・印刷)処理、すなわち記録紙に対するインク滴の噴射を実行する。
【0034】
このような記録処理の後、動作を継続すると判断した場合、例えば予め設定されている時間が経過すると、定期メンテナンス処理を開始する。また、記録処理の後、動作を継続しないと判断した場合、インクジェットプリンタ1の処理を終了する。以下、動作を継続すると判断した場合について説明する。
【0035】
本実施形態では、メンテナンス処理のうち、例えばフラッシング処理を行う場合を説明する。制御装置CONTは、噴射ヘッド3A及び3Bをホームポジションまで移動させる。この動作により、噴射ヘッド3Aとキャップ部材15Aとが対向し、噴射ヘッド3Bとキャップ部材15Bとが対向する。
【0036】
この状態で、制御装置CONTは、図4に示すように、噴射ヘッド3A及び3BからインクQを排出させる。排出されたインクQは、キャップ部材15A及び15Bの凹部にそれぞれ収容される。本実施形態では、例えば噴射ヘッド3Aよりも噴射ヘッド3Bの方がインクQの排出量が多くなっている。
【0037】
図5は、キャップ部材15A及び15BにインクQが受けられた状態を示している。図5に示すように、キャップ部材15A及び15B内にインクQが収容されることにより、閉塞部材50A及び50BがインクQに浮上する。このため、流出口51A及び51Bと閉塞部材50A及び50Bとの間には、インクQが介在することになる。噴射ヘッド3Aよりも噴射ヘッド3Bの方がインクQの排出量が多いため、キャップ部材15Bの方がキャップ部材15AよりもインクQの液面が高くなっている。
【0038】
この状態で、制御装置CONTは、例えば吸引ポンプ34を駆動させる。この動作により、流出口51A及び51Bが吸引され、キャップ部材15A及びキャップ部材15Bに収容されるインクQが当該流出口51A及び51Bからそれぞれ流出する。流出したインクQは、チューブ部材35を介して外部に排出される。
【0039】
本実施形態では、キャップ部材15Aに収容されたインクQの量がキャップ部材15Bに収容されたインクQの量よりも少ないため、吸引動作が進むと、図6に示すように、先にキャップ部材15A内のインクQが全て流出する。インクQが全て流出すると、閉塞部材50Aがキャップ部材15Aの底部に接触し、当該閉塞部材50Aによって流出口51Aが塞がれることになる。このため、キャップ部材15A内のインクQが全て流出した後は、キャップ部材15A側の吸引漏れが発生することなく、キャップ部材15Bの流出口51Bのみの吸引が行われることになる。
【0040】
なお、流出口51A及び51Bを吸引する際には、例えば図7に示すように、一旦閉塞部材50A及び50Bを浮かせた後、キャップ部材15A及び15Bによって噴射ヘッド3A及び3Bのノズル面3F及び3Gを覆った状態で吸引を行うようにしても構わない。この場合、キャップ部材15A及び15B内の液面の移動により、キャップ部材15A及び15Bとノズル面3F及び3Gとの間に負圧が発生する。当該負圧によってノズルNZからインクを排出させることができるため、ノズルNZの状態を保持することができる。
【0041】
また、例えば工場出荷時において、キャップ部材15A及び15B内にインクなどの液体を収容させ閉塞部材50A及び50Bを浮上させた状態にしておくようにしても構わない。この場合、インクカートリッジ6A及び6Bから噴射ヘッド3A及び3Bに対してインクQを初期充填する際には、キャップ部材15A及び15Bによって噴射ヘッド3A及び3Bのノズル面3F及び3Gを密閉し、吸引ポンプ34を作動させる。この動作により、予め収容しておいた液体が流出口51A及び51Bから流出すると共に、液面の低下によってキャップ部材15A及び15B内に負圧が発生し、当該負圧によってインクQを噴射ヘッド3A及び3B内に充填させることができる。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、キャップ部材15A及びキャップ部材15Bのうち例えば一方にインクQが存在しない場合には、閉塞部材50A又は50Bによって流出口51A又は51Bが塞がれることになるため、一の吸引ポンプ34によって複数の流出口51A及び51Bを共通して吸引する場合でも、吸引漏れを防ぐことができる。これにより、流出口51A及び51Bごとに吸引ポンプ34を個別に設けなくても済むため、低コスト化を図ることができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図8は、本実施形態に係るキャッピング機構115の構成を示す図である。
図8に示すように、キャッピング機構115は、キャップ部材115A及びキャップ部材115Bを有している。キャップ部材115A及び115Bは、第1実施形態に記載のキャップ部材と同一の構成となっている。
【0044】
本実施形態では、流出口151A及び151Bに対してチューブ部材135A及び135Bが接続されている。チューブ部材135A及び135Bは、チューブ部材135Cに接続されており、チューブ部材135Cには吸引ポンプ134が取り付けられている。このため、1つの吸引ポンプ134に対して流出口151A及び151Bの両方が接続されていることになる。
【0045】
また、本実施形態では、チューブ部材135A及び135Bのそれぞれに対して、開閉バルブVA及びVBが取り付けられている。開閉バルブVA及びVBは、キャップ部材15A及び15Bが噴射ヘッド3A及び3Bのノズル面3F及び3Gを覆った状態において、それぞれ制御装置CONTによって個別に開閉が切り替えられるようになっている。
【0046】
次に、フラッシング処理を行う場合を説明する。制御装置CONTは、噴射ヘッド3A及び3Bをホームポジションまで移動させ、噴射ヘッド3Aとキャップ部材115Aとを対向させると共に、噴射ヘッド3Bとキャップ部材115Bとを対向させる。
【0047】
この状態で、制御装置CONTは、噴射ヘッド3A及び3BからインクQを排出させる。排出されたインクQは、キャップ部材115A及び115Bの凹部にそれぞれ収容される。本実施形態では、第1実施形態と同様、例えば噴射ヘッド3Aよりも噴射ヘッド3Bの方がインクQの排出量が多くした場合を例に挙げて説明する。
【0048】
図9は、キャップ部材115A及び115BにインクQが受けられた状態を示している。本実施形態においても、噴射ヘッド3Aよりも噴射ヘッド3Bの方がインクQの排出量が多いため、キャップ部材115Bの方がキャップ部材115AよりもインクQの液面が高くなっている。
【0049】
この状態で、制御装置CONTは、例えば吸引ポンプ134を駆動させる。この動作により、流出口151A及び151Bが吸引され、キャップ部材115A及びキャップ部材115Bに収容されるインクQが当該流出口151A及び151Bからそれぞれ流出する。流出したインクQは、チューブ部材135を介して外部に排出される。
【0050】
本実施形態では、キャップ部材115Aに収容されたインクQの量がキャップ部材115Bに収容されたインクQの量よりも少ないため、吸引動作が進むと、先にキャップ部材15A内のインクQが全て流出する。これに対して、制御装置CONTは、例えば図10に示すようにキャップ部材115A及びキャップ部材115Bを噴射ヘッド3A及び3Bのノズル面3F及び3Gに当接させ、この状態で流出口151Aに接続されるチューブ部材135Aの開閉バルブVAを閉状態にする。このため、キャップ部材115A内のインクQが全て流出した後は、キャップ部材115A側の吸引漏れが発生することなく、キャップ部材115Bの流出口151Bのみの吸引が行われることになる。
【0051】
以上のように、本実施形態では、ノズル面3F及び3Gが複数のキャップ部材115A及び115Bよって覆われ、かつ、少なくともキャップ部材115AのインクQが全て流出された状態において、当該キャップ部材115Aの流出口151Aが閉塞されることになるため、一の吸引ポンプ134によって流出口151A及び151Bを共通して吸引する場合でも、吸引漏れを防ぐことができる。これにより、流出口151A及び151Bごとに吸引ポンプ134を個別に設けなくても済むため、低コスト化を図ることができる。
【0052】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、ヘッド部3が2つの噴射ヘッド3A及び3Bを有する構成としたが、これに限られることは無く、例えば1つの噴射ヘッドを有する構成であっても構わないし、3つ以上の噴射ヘッドを有する構成であっても構わない。また、ヘッド部3が1つの噴射ヘッドを有する構成とした場合、当該1つの噴射ヘッドに複数の噴射領域を配置させる構成としても構わない。
【0053】
上記の説明では、インクジェット式のプリンタと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置と、その流体を収容した流体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる流体噴射ヘッド等を備える各種の流体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。
【0054】
例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての流体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、流体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。
【0055】
流体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む流体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0056】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および流体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
BD…プリンタ本体 IJ…インク噴射機構 MN…メンテナンス機構 CONT…制御装置 NZ…ノズル Q…インク 1…インクジェットプリンタ 3…ヘッド部 3A、3B…噴射ヘッド 3F、3G…ノズル面 3S、3T…液体噴射領域 15、115…キャッピング機構 15A、15B、115A、115B…キャップ部材 34、134…吸引ポンプ 50A、50B…閉塞部材 51A、51B、151A、151B…流出口 135A、135B、135C…チューブ部材 VA、VB…開閉バルブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を噴射する液体噴射装置として、例えば記録媒体に文字や画像等を記録するインクジェット式記録装置などが知られている。インクジェット式記録装置は、記録媒体を搬送しつつ、噴射ヘッドに設けられたノズルから当該記録媒体にインクを噴射することで、記録媒体に文字や画像等を形成する構成になっている。インクジェット式記録装置には、噴射ヘッドの噴射領域を覆うキャップが設けられている。
【0003】
インクジェット式記録装置においては、インクの増粘や固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などにより噴射ヘッドのノズルに目詰まりが生じ、印刷不良を引き起こす場合がある。また、噴射ヘッドにインクを初期充填する際に、ヘッド内の液体をノズルから排出する必要がある。このため、記録媒体に対しての噴射とは別に、ノズル内の液体を強制的に排出させるフラッシング動作などのメンテナンス動作を行うように構成されている。
【0004】
フラッシング動作では、噴射ヘッドから排出される液体を例えばキャップなどの液体受部を用いて受けるようにしている。キャップ内には、例えば受けたインクを流出させる流出口が設けられている。流出口には、例えばポンプなどの吸引部が接続されている。
【0005】
近年、カラー印刷時の印字品質を向上するため、例えばマゼンタ、ライトマゼンタ、シアン、ライトシアン、イエロー、ブラックなどの多色のインクを使用するインクジェット式記録装置が提供されている。このように多色のインクを用いる場合、噴射ヘッドには色数に応じたノズル開口列を設ける必要があるため、例えば複数の噴射ヘッドを1つのキャリッジに搭載した構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の構成では、複数の噴射ヘッドのそれぞれに対応した複数のキャップが設けられており、キャップ毎に別々のポンプが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−153622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、複数のキャップのそれぞれに対して別々のポンプを接続する構成では、吸引精度等のメンテナンス性の面で良好ではあるが、コストが高くなってしまう。
上記のような事情に鑑み、本発明は、低コスト化を図ることができる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射するヘッド部と、前記ヘッド部から排出された前記液体を受けると共に、底部に前記液体の流出口が設けられた複数の液体受部と、複数の前記液体受部の前記流出口を共通して吸引する吸引部と、複数の前記液体受部にそれぞれ設けられ、前記液体に浮くように形成されると共に前記液体が流出された状態において前記流出口を閉塞する閉塞部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、液体受部に液体が存在する場合、閉塞部材は液体に浮くため、閉塞部材と液体の間に液体が介在した状態となる。一方、液体が液体受部から流出され液体受部における液体の液位が小さくなるにつれて閉塞部材が流出口に近づいていき、液体が流出された状態では閉塞部材によって流出口が塞がれることになる。このように、液体受部に液体が存在しない場合には流出口が塞がれることになるため、一の吸引ポンプによって複数の液体受部の流出口を共通して吸引する場合でも、吸引漏れを防ぐことができる。これにより、流出口ごとに吸引ポンプを個別に設けなくても済むため、低コスト化を図ることができる。
【0010】
上記の液体噴射装置は、前記ヘッド部は、複数の液体噴射領域を有し、前記液体受部は、前記液体噴射領域毎に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、ヘッド部が複数の液体噴射領域を有し、液体受部が液体噴射領域毎に設けられているため、複数の液体噴射領域のそれぞれに対して、確実に吸引を行うことができる。
【0011】
上記の流体噴射装置は、前記ヘッド部は、複数の噴射ヘッドを有し、前記液体噴射領域は、前記噴射ヘッド毎に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、複数の噴射ヘッドが設けられ、当該噴射ヘッド毎に液体噴射領域が設けられている構成においても、液体噴射領域のそれぞれに対して確実に吸引を行うことができる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、前記ヘッド部は、前記液体を噴射する液体噴射面を有し、複数の前記液体受部は、前記液体噴射面を覆うように形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、液体受部が液体噴射面を覆うように形成されているため、流出口が閉塞部材によって塞がれている場合においても、液体噴射面が保護されることとなる。
【0013】
本発明に係る液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射面を有するヘッド部と、前記液体噴射面を覆うように形成され、前記ヘッド部から排出された前記液体を受けると共に、底部に前記液体の流出口が設けられた複数の液体受部と、複数の前記液体受部のそれぞれの前記流出口に接続され、前記流出口を吸引する一の吸引ポンプと、それぞれの前記流出口に設けられ、前記流出口の開閉を切り替えるバルブと、前記液体噴射面が複数の前記液体受部によって覆われ、かつ、少なくとも一つの前記液体受部の前記液体が流出された状態において、当該液体が流出された前記液体受部の前記流出口を閉塞させるバルブ制御部とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、液体噴射面が複数の液体受部によって覆われ、かつ、少なくとも一つの液体受部の液体が流出された状態において、当該液体が流出された液体受部の流出口が閉塞されることになるため、一の吸引ポンプによって複数の液体受部の流出口を共通して吸引する場合でも、吸引漏れを防ぐことができる。これにより、流出口ごとに吸引ポンプを個別に設けなくても済むため、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタの構成を示す図。
【図2】本実施形態に係るヘッド部の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係るキャッピング機構の構成を示す図。
【図4】本実施形態に係るキャッピング機構を用いたメンテナンス動作の過程を示す図。
【図5】同、動作図。
【図6】同、動作図。
【図7】同、動作図。
【図8】本発明の第2実施形態に係るキャッピング機構の構成を示す図。
【図9】本実施形態に係るキャッピング機構を用いたメンテナンス動作の過程を示す図。
【図10】同、動作図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、第1実施形態に係るインクジェットプリンタ1(液体噴射装置)の概略構成を示す図である。
【0017】
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、プリンタ本体BD、インク噴射機構IJ、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTを有している。また、インクジェットプリンタ1は、不図示の記録媒体搬送機構を有している。インクジェットプリンタ1は、記録媒体搬送機構によって記録媒体を搬送しつつ、インク噴射機構IJによって記録媒体(例えば、紙、プラスチックシートなど)に文字や画像等を記録する装置である。記録媒体搬送機構、インク噴射機構IJ、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTは、それぞれプリンタ本体BDに取り付けられている。
【0018】
以下、XYZ直交座標系を設定し、当該XYZ直交座標系を適宜参照しつつ各構成要素の位置関係を説明する。本実施形態では、例えば記録媒体の搬送方向をX方向とし、当該記録媒体の搬送面においてX方向に直交する方向をY方向とし、X軸及びY軸を含む平面に垂直な方向をZ方向と表記する。また、X軸周りの回転方向をθX方向、Y軸周りの回転方向をθY方向、Z軸周りの回転方向をθZ方向とする。
【0019】
記録媒体の搬送経路には、プラテン13が配置されている。プラテン13は、例えばプリンタ本体BDに取り付けられており、記録媒体を支持する支持面を有している。プラテン13の当該支持面は、例えば+Z方向に向けられており、XY平面に平行に形成されている。
【0020】
インク噴射機構IJは、ヘッド部3、ヘッド部移動機構4及びインク貯留部6を有している。
ヘッド部3は、記録媒体に向けてインクを噴射する部分である。図2は、ヘッド部3の構成を示す側断面図である。図2に示すように、ヘッド部3は、例えば2つの噴射ヘッド3A及び3Bを有している。噴射ヘッド3A及び3Bは、それぞれヘッド部移動機構4に固定されており、例えばY方向に並んで配置されている。噴射ヘッド3A及び3Bは、−Z側の面がノズル面(液体噴射面)3F及び3Gになっている。
【0021】
ノズル面3F及び3Gには、インクを吐出するノズルNZが複数設けられている。この複数のノズルNZは、例えばX方向に直線状に配列されている。ノズル面3F及び3Gには、このようなノズル列が複数列形成されている。ノズル面3F及び3Gにおいてノズル列が形成された領域が液体噴射領域3S及び3Tとなる。噴射ヘッド3A及び3Bは、ノズル面3F及び3Gが例えばプラテン13に対向するように配置されている。噴射ヘッド3A及び3Bは、それぞれ異なる色のインクを噴射するようになっている。
【0022】
図1に戻って、ヘッド部移動機構4は、キャリッジ5及びキャリッジ移動機構16を有している。キャリッジ5は、ヘッド部3の噴射ヘッド3A及び3Bを固定させる部分である。キャリッジ5は、キャリッジ移動機構16によって例えばY方向に移動可能に設けられている。
【0023】
キャリッジ移動機構16は、ガイド軸8、パルスモータ9、主動プーリー10、従動プーリー11及びタイミングベルト12を有している。ガイド軸8は、例えばY方向に平行になるようにプリンタ本体BDに取り付けられており、キャリッジ5のY方向への移動を案内する。パルスモータ9は、θX方向に回転する回転軸を有している。主動プーリー10はパルスモータ9の回転軸に接続されている。従動プーリー11は、主動プーリー10とはプリンタ本体BDのY方向の反対側に設けられている。タイミングベルト12は、主動プーリー10及び従動プーリー11に亘って掛けられた無端ベルトである。タイミングベルト12には、キャリッジ5が固定されている。パルスモータ9を駆動することにより、キャリッジ5がガイド軸8に沿ってX方向に往復移動するようになっている。
【0024】
インク貯留部6は、例えばヘッド部3に供給するインクを貯留する部分である。インク貯留部6は、例えばインク供給チューブ14を介してヘッド部3に接続されている。インク貯留部6は、ヘッド部3のうち噴射ヘッド3Aに接続された複数(例えば、3個)のインクカートリッジ6Aと、噴射ヘッド3Bに接続された複数(例えば、3個)のインクカートリッジ6Bとを有している。インクカートリッジ6A及び6Bには、例えばマゼンタ、ライトマゼンタ、シアン、ライトシアン、イエロー、ブラックのインクが貯留されている。勿論、インクカートリッジ6A及び6Bの個数、インクの色の組み合わせなどのインク貯留部6の構成については、上記の例に限られるものではない。
【0025】
メンテナンス機構MNは、例えばキャッピング機構15及びワイピング機構17を有している。ワイピング機構17は、例えば噴射ヘッド3A及び3Bに付着したインクを払拭する。
【0026】
キャッピング機構15は、例えば増粘したインクをノズルから吸引する吸引動作、噴射ヘッド3A及び3Bから噴射あるいは排出されたインクを受けるフラッシング動作等に用いられる。キャッピング機構15は、2つのキャップ部材15A及び15Bと、1つの吸引ポンプ34とを有している。
【0027】
キャッピング機構15は、例えばプリンタ本体BD内のホームポジションに配置されている。このホームポジションは、インクジェットプリンタ1の電源オフ時や長時間に亘って記録が行われない場合などにキャリッジ5が配置される場所である。ホームポジションは、キャリッジ5の移動範囲内であって例えば記録媒体が配置される領域の外側の領域に設定される。本実施形態では、例えばキャリッジ5の移動領域のうち+Y側端部にホームポジションが設定されている。
【0028】
図3は、キャッピング機構15の構成を示す断面図である。
図1及び図3に示すように、キャップ部材15A及び15Bは、例えばY方向に並んで配置されている。キャリッジ5がホームポジションに配置された状態において、例えば噴射ヘッド3Aとキャップ部材15Aとが対向し、噴射ヘッド3Bとキャップ部材15Bとが対向するようになっている。
【0029】
図3に示すように、キャップ部材15A及びキャップ部材15Bは、上記のインクを受けるように凹状に形成されている。キャップ部材15A及び15Bは、それぞれ底部にインクの流出口51A及び51Bを有している。また、キャップ部材15A及び15Bの底部は、流出口51A及び51Bに重なるように閉塞部材50A及び50Bがそれぞれ配置されている。
【0030】
閉塞部材50A及び50Bは、例えばインクに対して浮くような材料を用いて形成されている。また、例えば閉塞部材50A及び50Bは、キャップ部材15A及び15Bの凹部内においてXY方向に移動した場合であっても流出口51A及び51Bに重なることができる程度の寸法に形成されている。図3では、キャップ部材15A及び15Bには、インクが存在しない状態を示している。このような場合においては、閉塞部材50A及び50Bによって流出口51A及び51Bが塞がれた状態になっている。
【0031】
流出口51A及び51Bには、例えばチューブ部材35が接続されている。チューブ部材35は、一端が吸引ポンプ34に接続されている。チューブ部材35の他端は2つに分岐されており、その一方が流出口51Aに接続され、他方が流出口51Bに接続されている。このため、1つの吸引ポンプ34に対して流出口51A及び51Bの両方が接続されていることになる。
【0032】
次に、上述の構成を有するインクジェットプリンタ1の動作の一例を説明する。
【0033】
外部から印刷データが送信されると、不図示の制御装置は、ドットパターンに対応した噴射データに展開して噴射ヘッド3A及び3Bに送信する。噴射ヘッド3A及び3Bでは、受信した噴射データに基づき、記録(印字・印刷)処理、すなわち記録紙に対するインク滴の噴射を実行する。
【0034】
このような記録処理の後、動作を継続すると判断した場合、例えば予め設定されている時間が経過すると、定期メンテナンス処理を開始する。また、記録処理の後、動作を継続しないと判断した場合、インクジェットプリンタ1の処理を終了する。以下、動作を継続すると判断した場合について説明する。
【0035】
本実施形態では、メンテナンス処理のうち、例えばフラッシング処理を行う場合を説明する。制御装置CONTは、噴射ヘッド3A及び3Bをホームポジションまで移動させる。この動作により、噴射ヘッド3Aとキャップ部材15Aとが対向し、噴射ヘッド3Bとキャップ部材15Bとが対向する。
【0036】
この状態で、制御装置CONTは、図4に示すように、噴射ヘッド3A及び3BからインクQを排出させる。排出されたインクQは、キャップ部材15A及び15Bの凹部にそれぞれ収容される。本実施形態では、例えば噴射ヘッド3Aよりも噴射ヘッド3Bの方がインクQの排出量が多くなっている。
【0037】
図5は、キャップ部材15A及び15BにインクQが受けられた状態を示している。図5に示すように、キャップ部材15A及び15B内にインクQが収容されることにより、閉塞部材50A及び50BがインクQに浮上する。このため、流出口51A及び51Bと閉塞部材50A及び50Bとの間には、インクQが介在することになる。噴射ヘッド3Aよりも噴射ヘッド3Bの方がインクQの排出量が多いため、キャップ部材15Bの方がキャップ部材15AよりもインクQの液面が高くなっている。
【0038】
この状態で、制御装置CONTは、例えば吸引ポンプ34を駆動させる。この動作により、流出口51A及び51Bが吸引され、キャップ部材15A及びキャップ部材15Bに収容されるインクQが当該流出口51A及び51Bからそれぞれ流出する。流出したインクQは、チューブ部材35を介して外部に排出される。
【0039】
本実施形態では、キャップ部材15Aに収容されたインクQの量がキャップ部材15Bに収容されたインクQの量よりも少ないため、吸引動作が進むと、図6に示すように、先にキャップ部材15A内のインクQが全て流出する。インクQが全て流出すると、閉塞部材50Aがキャップ部材15Aの底部に接触し、当該閉塞部材50Aによって流出口51Aが塞がれることになる。このため、キャップ部材15A内のインクQが全て流出した後は、キャップ部材15A側の吸引漏れが発生することなく、キャップ部材15Bの流出口51Bのみの吸引が行われることになる。
【0040】
なお、流出口51A及び51Bを吸引する際には、例えば図7に示すように、一旦閉塞部材50A及び50Bを浮かせた後、キャップ部材15A及び15Bによって噴射ヘッド3A及び3Bのノズル面3F及び3Gを覆った状態で吸引を行うようにしても構わない。この場合、キャップ部材15A及び15B内の液面の移動により、キャップ部材15A及び15Bとノズル面3F及び3Gとの間に負圧が発生する。当該負圧によってノズルNZからインクを排出させることができるため、ノズルNZの状態を保持することができる。
【0041】
また、例えば工場出荷時において、キャップ部材15A及び15B内にインクなどの液体を収容させ閉塞部材50A及び50Bを浮上させた状態にしておくようにしても構わない。この場合、インクカートリッジ6A及び6Bから噴射ヘッド3A及び3Bに対してインクQを初期充填する際には、キャップ部材15A及び15Bによって噴射ヘッド3A及び3Bのノズル面3F及び3Gを密閉し、吸引ポンプ34を作動させる。この動作により、予め収容しておいた液体が流出口51A及び51Bから流出すると共に、液面の低下によってキャップ部材15A及び15B内に負圧が発生し、当該負圧によってインクQを噴射ヘッド3A及び3B内に充填させることができる。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、キャップ部材15A及びキャップ部材15Bのうち例えば一方にインクQが存在しない場合には、閉塞部材50A又は50Bによって流出口51A又は51Bが塞がれることになるため、一の吸引ポンプ34によって複数の流出口51A及び51Bを共通して吸引する場合でも、吸引漏れを防ぐことができる。これにより、流出口51A及び51Bごとに吸引ポンプ34を個別に設けなくても済むため、低コスト化を図ることができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図8は、本実施形態に係るキャッピング機構115の構成を示す図である。
図8に示すように、キャッピング機構115は、キャップ部材115A及びキャップ部材115Bを有している。キャップ部材115A及び115Bは、第1実施形態に記載のキャップ部材と同一の構成となっている。
【0044】
本実施形態では、流出口151A及び151Bに対してチューブ部材135A及び135Bが接続されている。チューブ部材135A及び135Bは、チューブ部材135Cに接続されており、チューブ部材135Cには吸引ポンプ134が取り付けられている。このため、1つの吸引ポンプ134に対して流出口151A及び151Bの両方が接続されていることになる。
【0045】
また、本実施形態では、チューブ部材135A及び135Bのそれぞれに対して、開閉バルブVA及びVBが取り付けられている。開閉バルブVA及びVBは、キャップ部材15A及び15Bが噴射ヘッド3A及び3Bのノズル面3F及び3Gを覆った状態において、それぞれ制御装置CONTによって個別に開閉が切り替えられるようになっている。
【0046】
次に、フラッシング処理を行う場合を説明する。制御装置CONTは、噴射ヘッド3A及び3Bをホームポジションまで移動させ、噴射ヘッド3Aとキャップ部材115Aとを対向させると共に、噴射ヘッド3Bとキャップ部材115Bとを対向させる。
【0047】
この状態で、制御装置CONTは、噴射ヘッド3A及び3BからインクQを排出させる。排出されたインクQは、キャップ部材115A及び115Bの凹部にそれぞれ収容される。本実施形態では、第1実施形態と同様、例えば噴射ヘッド3Aよりも噴射ヘッド3Bの方がインクQの排出量が多くした場合を例に挙げて説明する。
【0048】
図9は、キャップ部材115A及び115BにインクQが受けられた状態を示している。本実施形態においても、噴射ヘッド3Aよりも噴射ヘッド3Bの方がインクQの排出量が多いため、キャップ部材115Bの方がキャップ部材115AよりもインクQの液面が高くなっている。
【0049】
この状態で、制御装置CONTは、例えば吸引ポンプ134を駆動させる。この動作により、流出口151A及び151Bが吸引され、キャップ部材115A及びキャップ部材115Bに収容されるインクQが当該流出口151A及び151Bからそれぞれ流出する。流出したインクQは、チューブ部材135を介して外部に排出される。
【0050】
本実施形態では、キャップ部材115Aに収容されたインクQの量がキャップ部材115Bに収容されたインクQの量よりも少ないため、吸引動作が進むと、先にキャップ部材15A内のインクQが全て流出する。これに対して、制御装置CONTは、例えば図10に示すようにキャップ部材115A及びキャップ部材115Bを噴射ヘッド3A及び3Bのノズル面3F及び3Gに当接させ、この状態で流出口151Aに接続されるチューブ部材135Aの開閉バルブVAを閉状態にする。このため、キャップ部材115A内のインクQが全て流出した後は、キャップ部材115A側の吸引漏れが発生することなく、キャップ部材115Bの流出口151Bのみの吸引が行われることになる。
【0051】
以上のように、本実施形態では、ノズル面3F及び3Gが複数のキャップ部材115A及び115Bよって覆われ、かつ、少なくともキャップ部材115AのインクQが全て流出された状態において、当該キャップ部材115Aの流出口151Aが閉塞されることになるため、一の吸引ポンプ134によって流出口151A及び151Bを共通して吸引する場合でも、吸引漏れを防ぐことができる。これにより、流出口151A及び151Bごとに吸引ポンプ134を個別に設けなくても済むため、低コスト化を図ることができる。
【0052】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、ヘッド部3が2つの噴射ヘッド3A及び3Bを有する構成としたが、これに限られることは無く、例えば1つの噴射ヘッドを有する構成であっても構わないし、3つ以上の噴射ヘッドを有する構成であっても構わない。また、ヘッド部3が1つの噴射ヘッドを有する構成とした場合、当該1つの噴射ヘッドに複数の噴射領域を配置させる構成としても構わない。
【0053】
上記の説明では、インクジェット式のプリンタと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置と、その流体を収容した流体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる流体噴射ヘッド等を備える各種の流体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。
【0054】
例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての流体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、流体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。
【0055】
流体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む流体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0056】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および流体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
BD…プリンタ本体 IJ…インク噴射機構 MN…メンテナンス機構 CONT…制御装置 NZ…ノズル Q…インク 1…インクジェットプリンタ 3…ヘッド部 3A、3B…噴射ヘッド 3F、3G…ノズル面 3S、3T…液体噴射領域 15、115…キャッピング機構 15A、15B、115A、115B…キャップ部材 34、134…吸引ポンプ 50A、50B…閉塞部材 51A、51B、151A、151B…流出口 135A、135B、135C…チューブ部材 VA、VB…開閉バルブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するヘッド部と、
前記ヘッド部から排出された前記液体を受けると共に、底部に前記液体の流出口が設けられた複数の液体受部と、
複数の前記液体受部のそれぞれの前記流出口に接続され、前記流出口を吸引する一の吸引ポンプと、
複数の前記液体受部にそれぞれ設けられ、前記液体に浮くように形成されると共に前記液体が流出された状態において前記流出口を閉塞する閉塞部材と
を備える液体噴射装置。
【請求項2】
前記ヘッド部は、複数の液体噴射領域を有し、
前記液体受部は、前記液体噴射領域毎に設けられている
請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記ヘッド部は、複数の噴射ヘッドを有し、
前記液体噴射領域は、前記噴射ヘッド毎に設けられている
請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記ヘッド部は、前記液体を噴射する液体噴射面を有し、
複数の前記液体受部は、前記液体噴射面を覆うように形成されている
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
液体を噴射する液体噴射面を有するヘッド部と、
前記液体噴射面を覆うように形成され、前記ヘッド部から排出された前記液体を受けると共に、底部に前記液体の流出口が設けられた複数の液体受部と、
複数の前記液体受部のそれぞれの前記流出口に接続され、前記流出口を吸引する一の吸引ポンプと、
それぞれの前記流出口に設けられ、前記流出口の開閉を切り替えるバルブと、
前記液体噴射面が複数の前記液体受部によって覆われ、かつ、少なくとも一つの前記液体受部の前記液体が流出された状態において、当該液体が流出された前記液体受部の前記流出口を閉塞させるバルブ制御部と
を備える液体噴射装置。
【請求項1】
液体を噴射するヘッド部と、
前記ヘッド部から排出された前記液体を受けると共に、底部に前記液体の流出口が設けられた複数の液体受部と、
複数の前記液体受部のそれぞれの前記流出口に接続され、前記流出口を吸引する一の吸引ポンプと、
複数の前記液体受部にそれぞれ設けられ、前記液体に浮くように形成されると共に前記液体が流出された状態において前記流出口を閉塞する閉塞部材と
を備える液体噴射装置。
【請求項2】
前記ヘッド部は、複数の液体噴射領域を有し、
前記液体受部は、前記液体噴射領域毎に設けられている
請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記ヘッド部は、複数の噴射ヘッドを有し、
前記液体噴射領域は、前記噴射ヘッド毎に設けられている
請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記ヘッド部は、前記液体を噴射する液体噴射面を有し、
複数の前記液体受部は、前記液体噴射面を覆うように形成されている
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
液体を噴射する液体噴射面を有するヘッド部と、
前記液体噴射面を覆うように形成され、前記ヘッド部から排出された前記液体を受けると共に、底部に前記液体の流出口が設けられた複数の液体受部と、
複数の前記液体受部のそれぞれの前記流出口に接続され、前記流出口を吸引する一の吸引ポンプと、
それぞれの前記流出口に設けられ、前記流出口の開閉を切り替えるバルブと、
前記液体噴射面が複数の前記液体受部によって覆われ、かつ、少なくとも一つの前記液体受部の前記液体が流出された状態において、当該液体が流出された前記液体受部の前記流出口を閉塞させるバルブ制御部と
を備える液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−161854(P2011−161854A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28877(P2010−28877)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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