説明

液体噴射装置

【課題】液体の無駄な排出を抑制すると共に、噴射特性に優れた液体噴射装置を得ることができる液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】液体が噴射されるノズルを有すると共に、前記ノズルに接続され前記液体を保持する液体保持室が形成された液体噴射ヘッドと、前記液体保持室の前記液体に存在する異物が前記ノズル側へ移動するように前記液体噴射ヘッドの所定部分に衝撃を加える衝撃付与機構と、前記液体保持室の前記液体を前記ノズルから排出させる排出機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置として、記録ヘッドのノズルから記録媒体にインクを噴射するインクジェット式記録装置が知られている。このようなインクジェット式記録装置においては、例えば記録ヘッドの内部に設けられるインク保持室において時間の経過に伴って気泡が成長する場合がある。この場合、インクの吐出速度や吐出量が低下してしまい、吐出不良が生じる原因となる。そこで、定期的にインク保持室のインクをノズルから排出させることで、ノズルのクリーニングを行うインクジェット式記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−219567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えばインク保持室のうちインクの流れが形成されにくい位置などに気泡が形成されると、当該気泡がその位置で滞留する場合がある。このため、クリーニング動作を行っても気泡がノズルから排出されないケースも想定され得る。このような場合にクリーニング動作を繰り返し行うと、例えば気泡が排出されない上にインクが無駄に消費されてしまうことになる。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、液体の無駄な排出を抑制すると共に、噴射特性に優れた液体噴射装置を得ることができる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体噴射装置は、液体が噴射されるノズルを有すると共に、前記ノズルに接続され前記液体を保持する液体保持室が形成された液体噴射ヘッドと、前記液体保持室の前記液体に存在する異物が前記ノズル側へ移動するように前記液体噴射ヘッドの所定部分に衝撃を加える衝撃付与機構と、前記液体保持室の前記液体を前記ノズルから排出させる排出機構とを備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、衝撃付与機構によって液体噴射ヘッドの所定部分に衝撃を加えることにより、液体保持室の液体に存在する異物をノズル側へ移動させることができる。この状態で排出機構により液体保持室の液体をノズルから排出させることで、液体保持室の液体に存在する異物を排出することができる。例えば液体保持室のうち液体の流れが形成されにくい位置などに異物が存在する場合であっても、当該異物を排出することができることになる。これにより、液体の無駄な排出を抑制することができると共に、噴射特性に優れた液体噴射装置を得ることができる。
【0008】
上記の液体噴射装置は、前記衝撃付与機構は、前記液体噴射ヘッドに衝突させる衝突部と、前記液体噴射ヘッドと前記衝突部とを相対的に移動させる相対移動機構とを有することを特徴とする。
このような構成によれば、衝撃付与機構が液体噴射ヘッドに衝突させる衝突部と、液体噴射ヘッドと衝突部とを相対的に移動させる相対移動機構とを有するため、液体噴射ヘッドに確実に衝撃を与えることができる。
【0009】
上記の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドを移動させるヘッド移動機構を更に備え、前記ヘッド移動機構は、前記相対移動機構を兼ねていることを特徴とする。
このような構成によれば、独立して相対移動機構を設けることなく液体噴射ヘッドに衝撃を与えることができるため、省スペース化を図ることができる。
【0010】
上記の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドは、前記ノズルから前記液体が噴射される噴射領域と、当該噴射領域から外れた第二領域との間を移動可能に設けられており、前記衝突部は、前記第二領域に設けられていることを特徴とする。
このような構成によれば、液体噴射ヘッドがノズルから液体が噴射される噴射領域と、当該噴射領域から外れた第二領域との間を移動可能に設けられており、衝突部が第二領域に設けられているため、液体噴射ヘッドによる液体の噴射に影響を及ぼすことなく、液体噴射ヘッドに衝撃を与えることができる。
【0011】
上記の液体噴射装置は、前記衝撃付与機構は、前記液体噴射ヘッドに対して前記ノズルの開口が向けられた方向に衝撃を加えるように形成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、衝撃付与機構が液体噴射ヘッドに対してノズルの開口が向けられた方向に衝撃を加えるように形成されているため、異物がよりノズル側へ移動しやすくなる。
【0012】
上記の液体噴射装置は、前記衝撃付与機構は、前記液体噴射ヘッドのうち複数箇所に衝撃を加えるように形成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、衝撃付与機構が液体噴射ヘッドのうち複数箇所に衝撃を加えるように形成されていることとしたので、より確実に異物を移動させることができる。
【0013】
上記の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドに衝撃を加えさせる動作と、前記液体保持室の前記液体の排出させる動作とが同時に行われるように、前記衝撃付与機構及び前記排出機構を制御する制御機構を更に備えることを特徴とする。
このような構成によれば、液体噴射ヘッドに衝撃を加えつつ、液体保持室の液体の排出が行われるため、効率的に異物を排出することが可能となる。
【0014】
上記の液体噴射装置は、前記排出機構は、前記液体保持室を加圧する加圧部及び前記ノズルを吸引する吸引部のうち少なくとも一方を有することを特徴とする。
このような構成によれば、排出機構として、液体保持室を加圧する加圧部及びノズルを吸引する吸引部のうち少なくとも一方を有することとしたので、より確実に液体を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の構成を示す概略図。
【図2】本実施形態に係るヘッドの構成を示す概略断面図。
【図3】本実施形態に係るヘッドの構成を示す概略断面図。
【図4】本実施形態に係るメンテナンス機構の一部の構成を示す図。
【図5】制御系の構成を示すブロック図。
【図6】印刷装置のメンテナンス動作を示す図。
【図7】印刷装置のメンテナンス動作を示す図。
【図8】印刷装置のメンテナンス動作を示す図。
【図9】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【図10】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷装置PRT(液体噴射装置)の概略構成を示す図である。本実施形態では、印刷装置PRTとして例えばインクジェット型の印刷装置を例に挙げて説明する。
【0017】
図1に示す印刷装置PRTは、例えば、紙、プラスチックシートなどのシート状の媒体Mを搬送しつつ印刷処理を行う装置である。印刷装置PRTは、筐体PBと、媒体Mにインクを噴射するインクジェット機構IJと、当該インクジェット機構IJにインクを供給するインク供給機構SPと、媒体Mを搬送する搬送機構CVと、インクジェット機構IJの保全動作を行うメンテナンス機構MNと、これら各機構を制御する制御装置CONTとを備えている。
【0018】
以下、XYZ直交座標系を設定し、当該XYZ直交座標系を適宜参照しつつ各構成要素の位置関係を説明する。本実施形態では、媒体Mの搬送方向をX方向とし、当該媒体Mの搬送面においてX方向に直交する方向をY方向とし、X軸及びY軸を含む平面に垂直な方向をZ方向と表記する。また、X軸周りの回転方向をθX方向、Y軸周りの回転方向をθY方向、Z軸周りの回転方向をθZ方向とする。
【0019】
筐体PBは、Y方向を長手とするように形成されている。筐体PBには、上記のインクジェット機構IJ、インク供給機構SP、搬送機構CV、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTの各部が取り付けられている。筐体PBには、プラテン13が設けられている。プラテン13は、媒体Mを支持する支持部材である。プラテン13は、筐体PBのうちX方向の中央部に配置されている。プラテン13は、+Z方向に向けられた平坦面13aを有している。当該平坦面13aは、媒体Mを支持する支持面として用いられる。
【0020】
搬送機構CVは、搬送ローラーや当該搬送ローラーを駆動するモーターなどを有している。搬送機構CVは、筐体PBの−X側から当該筐体PBの内部に媒体Mを搬送し、当該筐体PBの+X側から当該筐体PBの外部に排出する。搬送機構CVは、筐体PBの内部において、媒体Mがプラテン13上を通過するように当該媒体Mを搬送する。搬送機構CVは、制御装置CONTによって搬送のタイミングや搬送量などが制御されるようになっている。
【0021】
インクジェット機構IJは、インクを噴射するヘッドHと、当該ヘッドHを保持して移動させるヘッド移動機構ACとを有している。ヘッドHは、プラテン13上に送り出された媒体Mに向けてインクを噴射する。ヘッドHは、インクを噴射する噴射面Haを有している。噴射面Haは、−Z方向に向けられており、プラテン13の支持面13aに対向するように配置されている。
【0022】
ヘッド移動機構ACは、キャリッジ4を有している。ヘッドHは、当該キャリッジ4に固定されている。キャリッジ4は、筐体PBの長手方向(X方向)に架けられたガイド軸8に当接されている。ヘッドH及びキャリッジ4は、プラテン13の+Z方向に配置されている。
【0023】
ヘッド移動機構ACは、キャリッジ4の他、パルスモーター9と、当該パルスモーター9によって回転駆動される駆動プーリー10と、駆動プーリー10とはプリンタ本体5の幅方向の反対側に設けられた遊転プーリー11と、駆動プーリー10と遊転プーリー11との間に掛け渡されてキャリッジ4に接続されたタイミングベルト12とを有している。
【0024】
キャリッジ4は、当該タイミングベルト12に接続されている。キャリッジ4は、タイミングベルト12の回転に伴ってY方向に移動可能に設けられている。Y方向へ移動する際、キャリッジ4は、ガイド軸8によって案内されるようになっている。
【0025】
インク供給機構SPは、ヘッドHにインクを供給する。インク供給機構SPには、複数のインクカートリッジ6が収容されている。本実施形態の印刷装置PRTは、インクカートリッジ6がヘッドHとは異なる位置に収容される構成(オフキャリッジ型)である。インク供給機構SPは、ヘッドHとインクカートリッジ6とを接続する供給チューブTBを有している。インク供給機構SPは、当該供給チューブTBを介してインクカートリッジ6内に貯留されるインクをヘッドHに供給する不図示のポンプ機構を有している。
【0026】
メンテナンス機構MNは、ヘッドHのホームポジションに配置されている。このホームポジションは、媒体Mに対して印刷が行われる領域から外れた領域に設定されている。本実施形態では、プラテン13の+Y側にホームポジションが設定されている。ホームポジションは、例えば印刷装置PRTの電源がオフである時や、長時間に亘って記録が行われない時などに、ヘッドHが待機する場所である。
【0027】
メンテナンス機構MNは、ヘッドHの噴射面Haを覆うキャッピング機構CPや、当該噴射面Haを払拭するワイピング機構WPなどを有している。キャッピング機構CPには、例えば吸引ポンプなどの吸引機構SCが接続されている。吸引機構SCにより、キャッピング機構CPは、噴射面Haを覆いつつ当該噴射面Ha上の空間を吸引できるようになっている。ヘッドHからメンテナンス機構MN側に排出された廃インクは、廃液回収機構(不図示)において回収されるようになっている。また、メンテナンス機構MNは、ヘッドHに対して衝撃を付与する衝撃付与機構SHを有している。
【0028】
図2は、ヘッドHの構成を示す側断面図である。図3は、ヘッドHの構成を説明する要部断面図である。
図2に示されるように、ヘッドHは、導入針ユニット17、ヘッドケース18、流路ユニット19及びアクチュエータユニット20を備えている。
【0029】
導入針ユニット17の上面には、フィルタ21を介在させた状態で2本のインク導入針22が並んで取り付けられている。導入針ユニット17の内部には、各インク導入針22に対応したインク導入路23が形成されている。インク導入路23の上端は、フィルタ21を介してインク導入針22に接続されている。インク導入路23の下端は、パッキン24を介してヘッドケース18内部のケース流路25に接続されている。インク導入針22には、それぞれサブタンク2が装着されている。
【0030】
サブタンク2は、例えばポリプロピレン等の樹脂製材料を用いて形成されている。サブタンク2には、インク室27が設けられている。インク室27は、すり鉢状に形成された凹部27aを有している。凹部27aは、開口部27bを有している。開口部27bには、透明な弾性シート26が貼り付けられている。凹部27aの底部には、連通孔27cが形成されている。連通孔27cは、インク室27の凹部27aとインク供給室27dとの間を連通するように形成されている。インク供給室27dは、供給チューブTBに接続されている。インク供給室27dのうち供給チューブTBとの接続部分には、不図示のフィルタなどが設けられている。
【0031】
弾性シート26は、開口部27bを塞ぐように貼り付けられている。弾性シート26は、インク室27の圧力に応じて伸縮するようになっている。弾性シート26は、インク室27の圧力が外部の圧力よりも高くなると凹部27aの外側へ向けて膨張した状態となり、インク室27の容積が増加した状態となる。インク室27の圧力が外部の圧力よりも低くなると凹部27aの内側へ向けて膨張した状態となり、インク室27の容積が減少した状態となる。
【0032】
弾性シート26には、弁27eが取り付けられている。弁27eは、凹部27aから連通孔27cを介してインク供給室27dに接続されており、インク供給室27d側から連通孔27cを開閉するように形成されている。弁27eは、弾性シート26が膨張及び収縮に連動して連通孔27cを開閉するようになっている。具体的には、インク室27の容積を減少させる方向に弾性シート26が膨張したときに連通孔27cが開状態となり、インク室27の容積を増加させる方向に弾性シート26が膨張したときには連通孔27cが閉状態となる。弁27eには、所定の弾性力を付与する付勢部材27fが取り付けられており、連通孔27cの開閉の圧力が調整されている。
【0033】
サブタンク2は、針接続部28に接続されている。針接続部28は、インク導入針22サブタンク2とインク導入針22とを接続する部分である。インク室27の凹部27aには、当該針接続部28に接続される接続流路29が形成されている。針接続部28の内部空間には、インク導入針22がほぼ隙間無く嵌め込まれるシール材31が設けられている。インク導入針22がシール材31に嵌め込まれることで、サブタンク2と導入針ユニット17との間がほぼ漏れの無い状態で接続されるようになっている。
【0034】
図3に示すように、ヘッドケース18は、合成樹脂などを用いて形成されている。ヘッドケース18は、中空部を有するように箱型に形成されている。ヘッドケース18は、上端側がパッキン24を介して導入針ユニット17を取り付けられている。ヘッドケース18の下端面には、流路ユニット19が接合されている。ヘッドケース18の内部に形成された中空部37内には、アクチュエータユニット20が収容されている。
【0035】
ヘッドケース18の内部には、高さ方向を貫通してケース流路25が設けられている。ケース流路25の上端は、パッキン24を介して導入針ユニット17のインク導入路23に連通されている。ケース流路25の下端は、流路ユニット19内の共通インク室44に連通されている。このため、インク導入針22から導入されたインクDは、インク導入路23及びケース流路25を通じて共通インク室44側に供給されるようになっている。
【0036】
アクチュエータユニット20は、櫛歯状に配置された複数の圧電振動子38と、当該圧電振動子38を保持する固定板39と、圧電振動子38に対して制御装置CONTからの駆動信号を供給するフレキシブルケーブル40とを有している。
【0037】
圧電振動子38は、図中下側端部が固定板39の下端面から突出するように固定されている。このように、各圧電振動子38は、所謂片持ち梁の状態で固定板39上に取り付けられている。各圧電振動子38を支持する固定板39は、例えば厚さ1mm程度のステンレス鋼によって構成されている。固定板39のうち圧電振動子38の固定された面とは異なる面が中空部37を区画するケース内壁面に接着されている。
【0038】
流路ユニット19は、振動板41、流路基板42及びノズル基板43を有している。振動板41、流路基板42及びノズル基板43は、積層された状態で接着されている。流路ユニット19は、共通インク室44からインク供給口45、圧力室46を通り、ノズルNZに至るまでの一連のインク流路(液体流路)を構成している。圧力室46は、ノズルNZの配列方向(ノズル列方向)に対して直交する方向が長手方向となるように形成されている。
【0039】
共通インク室44は、ケース流路25に接続されている。共通インク室44には、インク導入針22側からのインクDが導入される室である。また、共通インク室44は、インク供給口45に接続されている。共通インク室44に導入されたインクDは、当該インク供給口45を通じて各圧力室46に分配されるようになっている。また、図3に示すように、共通インク室44は、加圧機構PSに接続されている。加圧機構PSは、共通インク室44を加圧する。加圧機構PSとしては、加圧ポンプなどが用いられている。加圧機構PSは、ヘッドHに搭載されている構成であっても構わないし、ヘッドHとは異なる位置に設けられている構成であっても構わない。
【0040】
ノズル基板43は、流路ユニット19の底部に配置されている。ノズル基板43には、媒体Mに形成される画像などのドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で複数のノズルNZが形成されている。ノズル基板43としては、例えばステンレス鋼などの金属製の板材が用いられる。
【0041】
図4は、メンテナンス機構MNのうち衝撃付与機構SHを含む部分の構成を示す図である。なお、図4には、ホームポジションに配置された状態のヘッドHが示されている。
図4に示すように、衝撃付与機構SHは、衝突部材BT及び衝突部駆動機構ACTを有している。衝突部材BTは、棒状に形成されている。
【0042】
衝突部材BTの一方の端部BTaは、ヘッドHのホームポジションに設けられる筐体PBの一部に連結されている。衝突部材BTの他方の端部BTbは屈曲されている。衝突部材BTは、端部BTaの連結部分を中心として、θX方向に回転可能に設けられている。衝突部材BTの端部BTbは、衝突部材BT全体の延在方向に対して直角方向に屈曲されている。衝突部材BTは、Y方向に平行に配置された状態において、端部BTbがホームポジションに配置されたヘッドHの+Z側の面に当接するようになっている。
【0043】
衝突部駆動機構ACTは、衝突部材BTをθX方向に回転させるアクチュエータである。衝突部駆動機構ACTとしては、モーターなどが用いられている。衝突部駆動機構ACTは、制御装置CONTに接続されている。制御装置CONTは、衝突部材BTの回転速度や回転のタイミングなどを制御可能である。衝突部駆動機構ACTによって衝突部材BTがθX方向に回転することで、衝突部材BTの端部BTbがヘッドHの+Z側の面に衝突するようになっている。端部BTbの衝突により、ヘッドHには−Z方向の衝撃が付与されるようになっている。
【0044】
図5は印刷装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
制御装置CONTには、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置IP、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を記憶した記憶装置MRなどが接続されており、上述した搬送機構CVや、ヘッド移動機構AC、メンテナンス機構MN等が接続されている。制御装置CONTは、メンテナンス機構MNのうちキャッピング機構CPやワイピング機構WP、吸引機構SCなどを制御可能である。また、上記のように、制御装置CONTは、衝撃付与機構SHの衝突部駆動機構ACTや、ヘッドHの加圧機構PSの動作を制御可能に設けられている。
【0045】
印刷装置PRTは、それぞれの圧電振動子38に入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。この駆動信号発生器62は、制御装置CONTに接続されている。駆動信号発生器62には、ヘッドHの圧電振動子38に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、各圧電振動子38に対して、個別に駆動信号を供給可能に設けられている。
【0046】
次に、上記のように構成された印刷装置PRTの動作を説明する。
ヘッドHによる印刷動作を行う場合、制御装置CONTは、搬送機構CVによって媒体MをヘッドHの−Z側に配置させる。媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、ヘッドHを移動させつつ、印刷する画像の画像データに基づいてノズルNZに係る駆動信号発生器62から圧電振動子38に駆動信号を入力する。
【0047】
圧電振動子38に駆動信号が入力されると、圧電振動子38が伸縮する。圧電振動子38の伸縮により、圧力室46の容積が変化し、インクを収容した圧力室46の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズルNZからインクが噴射される。ノズルNZから噴射されたインクによって、媒体Mに所望の画像が形成される。なお、圧電振動子38を伸縮させる場合、上記の第1電気信号を圧電振動子38に供給しても構わない。また、第1電気信号とは異なる駆動信号を圧電振動子38に供給しても構わない。
【0048】
時間の経過に伴い、例えばヘッドHの共通インク室44において気泡が成長する場合がある。この場合、インクの吐出速度や吐出量が低下してしまい、吐出不良が生じる原因となる。そこで、制御装置CONTは、定期的に共通インク室44のインクをノズルNZから排出させることで、ノズルNZのクリーニング動作を行わせる。クリーニング動作は、キャッピング動作や吸引動作などを含んでいる。
【0049】
制御装置CONTは、まず、キャッピング動作を行わせる。制御装置CONTは、ヘッドHをホームポジションに移動させ、ヘッドHとキャッピング機構CPとを対向させる。同時に、制御装置CONTは、図示しない駆動機構により、キャッピング機構CPをヘッドH側へ移動させて噴射面Haを押圧させる。この動作により、キャッピング機構CPと噴射面Haとの間が密閉状態となる。
【0050】
次に、制御装置CONTは、吸引動作を行わせる。制御装置CONTは、ヘッドHとキャッピング機構CPとの間を密閉させた後、吸引機構SCを作動させる。この動作により、当該吸引機構SCに連通されたキャッピング機構CP内が吸引されて負圧となる。ヘッドHとキャッピング機構CPとの間に形成された負圧により、ヘッドHの各ノズルNZからインクが吸引(排出)される。このため、ノズルNZ内のインクの粘度が適正に保持されることになる。
【0051】
一方、例えば図6に示すように、共通インク室44のうちインクの流れが形成されにくい位置(例えば角部など)に気泡BBが形成されると、当該気泡BBがその位置で滞留する場合がある。このため、クリーニング動作を行っても気泡BBがノズルNZから排出されずに共通インク室44に残ってしまうケースも想定され得る。このような場合にクリーニング動作を繰り返し行うと、気泡BBが排出されない上にインクDが無駄に消費されてしまうことになる。
【0052】
これに対して、制御装置CONTは、図7に示すように、ヘッドHがホームポジションに配置されている状態で、衝突部駆動機構ACTにより衝突部材BTをθX方向に回転させ、衝突部材BTの端部BTbをヘッドHの+Z側の面に衝突させる。この動作により、ヘッドHには+Z側の面を介して衝撃が与えられる。この衝撃により、共通インク室44の気泡BBがノズルNZ側へ移動する。
【0053】
制御装置CONTは、衝突部駆動機構ACTを作動させて衝突部材BTをθX方向に往復させることで、衝突部材BTによりヘッドHの+Z側の面に複数回衝撃を付与するようにしても構わない。このように、制御装置CONTは、共通インク室44の気泡BBがノズルNZ側へ移動するように、衝突部材BTをヘッドHに衝突させ、ヘッドHに衝撃を付与する。
【0054】
ヘッドHの衝撃を付与した後、制御装置CONTは、図8に示すように、再度キャッピング機構CPをヘッドH側へ移動させて噴射面Haを押圧させ、キャッピング機構CPと噴射面Haとの間を密閉状態とする。この状態で、制御装置CONTは、例えばヘッドHの加圧機構PSに共通インク室44を加圧させることで、共通インク室44のインクDをノズルNZから排出させる。この動作により、ノズルNZ側に移動していた気泡BBがインクDと共にノズルNZから排出される。なお、制御装置CONTは、インクの排出動作を行う際、例えば加圧機構PSを用いる代わりに、吸引機構SCを用いても構わない。また、加圧機構PS及び吸引機構SCの両方を同時あるいは交互に用いても構わない。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、衝撃付与機構SHによってヘッドHの+Z側の面に衝撃を加えることにより、共通インク室44のインクDに存在する気泡BBなどの異物をノズルNZ側へ移動させることができる。この状態で加圧機構PSや吸引機構SCなどにより共通インク室44の液体をノズルNZから排出させることで、共通インク室44のインクDに存在する気泡BBなどの異物を排出することができる。
【0056】
共通インク室44のうちインクDの流れが形成されにくい位置(例えば角部)などに気泡BBが存在する場合であっても、当該気泡BBをより確実に排出することができることになる。これにより、インクDの無駄な排出を防ぐことができると共に、噴射特性に優れた印刷装置PRTを得ることができる。
【0057】
また、本実施形態の構成によれば、ヘッドHがノズルNZからインクが噴射される媒体M上の領域(噴射領域)と、当該噴射領域から外れたホームポジション(第二領域)との間を移動可能に設けられており、衝突部材BTがホームポジションに設けられているため、ヘッドHによる媒体MへのインクDの噴射に影響を及ぼすことなくヘッドHに衝撃を与えることができる。
【0058】
また、本実施形態の構成によれば、衝撃付与機構SHはヘッドHに対してノズルNZの開口が向けられた方向(−Z方向)に衝撃を加えるように形成されているため、気泡BBなどの異物がよりノズルNZ側へ移動しやすくなる。これにより、一層確実に気泡BBなどの異物を排出することができる。
【0059】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態では、衝突部材BTを移動させヘッドHに衝突させることでヘッドHに衝撃を付与する構成としたが、これに限られることは無い。例えば、衝突部とヘッドとが相対的に移動することで両者が衝突する構成であれば、他の構成であっても構わない。
【0060】
例えば、図9に示すように、ヘッドHのホームポジションに設けられる筐体BDの一部には被衝突部BTcが配置されている。ヘッドHは、当該被衝突部BTcに衝突するように移動範囲が設定されている。制御装置CONTは、ヘッド移動機構ACを作動させることにより、当該ヘッドHを所定の速度で被衝突部BTcに衝突させることができる構成となっている。この場合、ヘッドHの+Y側の面に衝撃が付与されるようになっている。
【0061】
このような構成によれば、上記実施形態のように衝突部材BTや衝突部駆動機構ACTを設けることなく、ヘッド移動機構ACなどの既存の構成を用いることでヘッドHに対して衝撃を付与することができる。これにより、印刷装置PRT内の省スペース化を図ることができる。
【0062】
また、上記実施形態では、ヘッドHのうち一箇所(あるいは一面)のみに衝撃を付与する構成であったが、これに限られることは無い。例えば、ヘッドHのうち複数箇所(あるいは複数面)に衝撃を付与することができる構成であっても構わない。図10に示す構成では、上記の衝突部材BTに加えて、第二衝突部材BT2が設けられている。第二衝突部材BT2には、第二衝突部駆動機構ACT2が設けられている。第二衝突部駆動機構ACT2は、制御装置CONTの制御により、第二衝突部材BT2をY方向に移動させることができるようになっている。
【0063】
この場合、上記衝突部材BTによってヘッドHの+Z側の面に衝撃を与えることができると共に、第二衝突部材BT2によってヘッドHの+Y側の面にも衝撃を与えることができる。このように、ヘッドHの複数箇所(あるいは複数面)に衝撃を与える構成とすることにより、より確実に気泡などの異物を移動させることができる。
【0064】
また、上記実施形態では、制御装置CONTが、ヘッドHに衝撃を付与した後でヘッドHの加圧機構PSに共通インク室44を加圧させる態様を説明したが、これに限られることは無い。例えば制御装置CONTが、ヘッドHに衝撃を付与するのと同時に加圧機構PSに共通インク室44を加圧(あるいは吸引)させる態様としても構わない。これにより、ヘッドHに衝撃を加えつつ、共通インク室44のインクの排出が行われるため、効率的に異物を排出することが可能となる。また、この他に、ヘッドHに衝撃を付与する動作と、共通インク室44を加圧する(あるいは吸引)させる動作とを交互に行う態様であっても構わない。
【0065】
なお、上記の実施形態及び変更例において説明した構成は、適宜組み合わせて用いることが可能である。
【0066】
また、上記実施形態では、インクジェット式のプリンタと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置と、その液体を収容した液体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。
【0067】
また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【0068】
液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0069】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および液体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
PRT…印刷装置 M…媒体 IJ…インクジェット機構 CONT…制御装置 H…ヘッド AC…ヘッド移動機構 SH…衝撃付与機構 NZ…ノズル PS…加圧機構 BT…衝突部材 BT2…第二衝突部材 ACT…衝突部駆動機構 ACT2…第二衝突部駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が噴射されるノズルを有すると共に、前記ノズルに接続され前記液体を保持する液体保持室が形成された液体噴射ヘッドと、
前記液体保持室の前記液体に存在する異物が前記ノズル側へ移動するように前記液体噴射ヘッドの所定部分に衝撃を加える衝撃付与機構と、
前記液体保持室の前記液体を前記ノズルから排出させる排出機構と
を備える液体噴射装置。
【請求項2】
前記衝撃付与機構は、
前記液体噴射ヘッドに衝突させる衝突部と、
前記液体噴射ヘッドと前記衝突部とを相対的に移動させる相対移動機構と
を有する
請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体噴射ヘッドを移動させるヘッド移動機構を更に備え、
前記ヘッド移動機構は、前記相対移動機構を兼ねている
請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記液体噴射ヘッドは、前記ノズルから前記液体が噴射される噴射領域と、当該噴射領域から外れた第二領域との間を移動可能に設けられており、
前記衝突部は、前記第二領域に設けられている
請求項2又は請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記衝撃付与機構は、前記液体噴射ヘッドに対して前記ノズルの開口が向けられた方向に衝撃を加えるように形成されている
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記衝撃付与機構は、前記液体噴射ヘッドのうち複数箇所に衝撃を加えるように形成されている
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記液体噴射ヘッドに衝撃を加えさせる動作と、前記液体保持室の前記液体の排出させる動作とが同時に行われるように、前記衝撃付与機構及び前記排出機構を制御する制御機構を更に備える
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記排出機構は、前記液体保持室を加圧する加圧部及び前記ノズルを吸引する吸引部のうち少なくとも一方を有する
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−51245(P2012−51245A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195745(P2010−195745)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】