説明

液体噴射装置

【課題】小型で、媒体への記録の制御が容易な液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】紙媒体Pの搬送方向および搬送方向と逆方向に沿って移動する移動部材31にキャップ部材33および媒体支持部34が配置されているので、搬送部20と移動部材31との間隔を狭くでき、小型のインクジェット式記録装置100,200,300,400を得ることができる。また、紙媒体Pを支持可能な開口25の位置に可動プラテン341が移動可能なので、紙媒体Pにインク2を吐出する際に、インクジェット式記録ヘッド10と紙媒体Pとの距離にバラツキが生じにくくできる。したがって、インク2の紙媒体Pへの到達位置のばらつきを少なくでき、紙媒体Pへの所望の記録を行うのが容易なインクジェット式記録装置100,200,300,400を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドのクリーニング機能を備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドのノズル開口から液体を噴射して媒体への記録を行う液体噴射装置が知られている。媒体は、液体噴射ヘッドに対向する媒体支持部に支えられて搬送され、媒体に向けて液体が噴射される。
また、液体噴射装置として、ノズル開口が、媒体の搬送方向と直交する媒体の幅方向にわたって設けられ、記録時に液体噴射ヘッドの移動を伴わない液体噴射装置が知られている。
【0003】
液体噴射ヘッドの液体の流路およびノズル開口に気泡、異物、溶媒が蒸発して粘度の高まった液体等が存在すると、液体の噴射に支障が生じる。したがって、必要なときあるいは定期的にクリーニングを行う必要がある。
液体噴射ヘッドであるプリントヘッドに対して進退可能で回転自在なプラテン本体を備え、プラテン本体に、プラテン本体を取り巻く様に媒体支持部であるプラテン面、キャッピング装置および吸取装置が配置された液体噴射装置としてのプリンターが知られている(例えば、特許文献1参照)。このプリンターでは、必要に応じてプラテン本体を回転し、プラテン面、キャッピング装置または吸取装置のいずれかをプリントヘッドに近づけて、液体の噴射、液体の溶媒の揮発防止、クリーニング等の動作を行う。
また、プラテン自体に凹部を形成して、凹部自体を液体受け部としたり、凹部の内部にノズル開口を塞ぐ当接部材を設けたりしたプリンターが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−534165号公報
【特許文献2】特開2009−6681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プラテン面、キャッピング装置および吸取装置を回転自在なプラテン本体と取り巻くように配置した構成では、液体噴射ヘッドの噴射面に合わせて、プラテン面、キャッピング装置および吸取装置も平坦に近くしなければならず、回転方向の曲率を大きくするのが難しい。したがって、プラテン本体が大型になり、液体噴射装置の小型化が困難になる。
また、プラテン自体に凹部を形成する構成では、媒体がプラテンを通過する際に、媒体が凹部に沈んでしまい、液体噴射ヘッドと媒体との距離にバラツキが生じる。したがって、媒体への液体の到達位置がばらついて、媒体への記録の制御が困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも1つを解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置であって、前記媒体を支持しながら搬送するとともに、前記液体噴射ヘッドと対向する部分に開口を有する搬送部と、前記搬送部よりも前記液体噴射ヘッドから離れた側に位置し、前記媒体の搬送方向および前記搬送方向と逆方向に沿って移動する移動部材と、前記移動部材に配置され、前記移動部材に対して前記液体噴射ヘッドに当接および離間する方向に移動可能で、前記液体噴射ヘッドをキャップすることが可能なキャップ部材と、前記移動部材に配置され、前記移動部材に対して前記媒体を前記開口において支持可能な位置と前記媒体から離間した位置に移動可能な媒体支持部とを備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【0008】
この適用例によれば、媒体の搬送方向および搬送方向と逆方向に沿って移動する移動部材にキャップ部材および媒体支持部が配置されているので、キャップ部材および媒体支持部が搬送部に沿って移動する。したがって、移動部材と搬送部との間隔を狭くでき、小型の液体噴射装置が得られる。
また、液体噴射ヘッドと対向する搬送部の開口において、媒体を支持可能な位置に媒体支持部が移動可能なので、媒体に液体を噴射する際に、液体噴射ヘッドと媒体との距離にバラツキが生じにくい。したがって、液体の媒体への到達位置のばらつきが少なくなり、媒体への記録の制御が容易な液体噴射装置が得られる。
【0009】
[適用例2]
上記液体噴射装置において、前記搬送方向は直線に沿った方向で、前記移動部材の移動は、直線に沿って行われることを特徴とする液体噴射装置。
この適用例では、移動部材が直線に沿って移動するので、搬送部と移動部材との間隔をより狭くでき、より小型の液体噴射装置が得られる。
【0010】
[適用例3]
上記液体噴射装置において、前記移動部材は、前記液体噴射ヘッドに付着した液体を払拭または吸収することが可能なワイパーを有するワイパー部材を備えていることを特徴とする液体噴射装置。
この適用例では、液体噴射ヘッドに付着した液体を払拭または吸収することが可能なワイパーを有するワイパー部材を備えているので、クリーニング機能がより向上した液体噴射装置が得られる。
【0011】
[適用例4]
上記液体噴射装置において、前記搬送方向上流から下流に向けて、前記ワイパー部材、前記キャップ部材、前記媒体支持部の順に配置されていることを特徴とする液体噴射装置。
【0012】
[適用例5]
上記液体噴射装置において、前記搬送方向上流から下流に向けて、前記媒体支持部、前記キャップ部材、前記ワイパー部材の順に配置されていることを特徴とする液体噴射装置。
【0013】
[適用例6]
上記液体噴射装置において、前記搬送方向上流から下流に向けて、前記ワイパー部材、前記媒体支持部、前記キャップ部材の順に配置されていることを特徴とする液体噴射装置。
【0014】
[適用例7]
上記液体噴射装置において、前記搬送方向上流から下流に向けて、前記キャップ部材、前記媒体支持部、前記ワイパー部材の順に配置されていることを特徴とする液体噴射装置。
【0015】
[適用例8]
上記液体噴射装置において、前記ワイパー部材は、四角平板状の前記ワイパーを備えていることを特徴とする液体噴射装置。
【0016】
[適用例9]
上記液体噴射装置において、前記ワイパー部材は、円筒形状の前記ワイパーを備えていることを特徴とする液体噴射装置。
【0017】
[適用例10]
上記液体噴射装置において、前記液体噴射ヘッドは、前記媒体の前記搬送方向と直交する方向における前記媒体の長さよりも長いことを特徴とする液体噴射装置。
この適用例では、液体噴射ヘッドは、媒体の搬送方向と直交する方向における媒体の長さよりも長いので、媒体の幅にわたって液体の噴射が可能である。したがって、媒体における記録面の広い液体噴射装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態におけるインクジェット式記録装置を示す概略図。
【図2】(a)〜(e)はクリーニング部の動きを示す概略図。
【図3】(f)〜(i)はクリーニング部の動きを示す概略図。
【図4】(a)は第3実施形態におけるインクジェット式記録装置を示す概略図、(b)〜(e)はクリーニング部の動きを示す概略図。
【図5】(f)〜(j)はクリーニング部の動きを示す概略図。
【図6】(a)は第4実施形態におけるインクジェット式記録装置を示す概略図、(b)〜(e)はクリーニング部の動きを示す概略図。
【図7】(f)〜(j)はクリーニング部の動きを示す概略図。
【図8】(a)は第7実施形態におけるインクジェット式記録装置を示す概略図、(b)〜(e)はクリーニング部の動きを示す概略図。
【図9】(f)〜(i)はクリーニング部の動きを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下の各図においては、各部材を簡略化して示しており、各部材の尺度は実際とは異なっている。また、各実施形態において、同じ構成部材には同じ符号を付している。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置100を示す概略図である。図1は、インクジェット式記録装置100で媒体Pに記録を行う状態を示している。
図1において、インクジェット式記録装置100は、液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッド10と、搬送部20と、クリーニング部30とを備えている。媒体である紙媒体Pは、搬送部20によって実線矢印で示した直線に沿った方向へ搬送される。以下、実線矢印で示した方向を搬送方向という。また、搬送の始まる側を上流側といい、搬送の終わる側を下流という。上流側から下流側に向かう方向が搬送方向である。
【0021】
インクジェット式記録ヘッド10は、搬送部20の上流側と下流側との間に配置されている。インクジェット式記録ヘッド10は、紙媒体Pの搬送方向と直交する方向である紙媒体Pの幅方向に並んだ図示しないノズル開口を、紙媒体Pに対向する面11に備えている。ノズル開口は、1列であっても良いし、複数列であってもよい。
また、インクジェット式記録ヘッド10の紙媒体Pの搬送方向と直交する方向の長さは、紙媒体Pの幅方向の長さよりも長く形成されており、ノズル開口は紙媒体Pの幅にわたって形成されている。
紙媒体Pへの記録は、紙媒体Pを搬送方向へ搬送しながら、インクジェット式記録ヘッド10のノズル開口から液体としてのインク2を紙媒体Pに向けて吐出して行う。
【0022】
搬送部20は、上流側搬送ローラー21と、上流側固定プラテン22と、下流側固定プラテン23と、下流側搬送ローラー24とを備えている。紙媒体Pは、上流側から下流側に向かって搬送される。また、上流側固定プラテン22と下流側固定プラテン23との間で、インクジェット式記録ヘッド10の配置された位置には、開口25が設けられている。
開口25は、1枚のプラテンをくりぬいて形成し、上流側固定プラテン22と下流側固定プラテン23とが、開口25の搬送方向と直交する方向の両端で連続している。また、上流側固定プラテン22と下流側固定プラテン23とが別体で離れた状態で、開口25を形成していてもよい。
【0023】
上流側固定プラテン22の紙媒体Pを支持する面220と、下流側固定プラテン23の面230とは、紙媒体Pの搬送が円滑に行われるように配置されている。例えば、面220と面230とを略同一平面に配置することができる。紙媒体Pの搬送が円滑に行われる配置であれば、面220および面230は同一平面になくてもよいし、曲面であってもよい。
紙媒体Pは、2つの上流側搬送ローラー21に挟まれて、上流側搬送ローラー21の回転によって、上流側固定プラテン22に送られ、下流側固定プラテン23から来た紙媒体Pは、2つの下流側搬送ローラー24に挟まれて、下流側搬送ローラー24の回転によって排出される。
【0024】
クリーニング部30は、移動部材31と、移動機構32と、移動部材31に配置されたキャップ部材33と、媒体支持部34と、ワイパー部材35とを備えている。ここで、移動部材31に、上流側から下流側に向かってワイパー部材35、キャップ部材33、媒体支持部34の順で配置されている。
なお、ワイパー部材35は必要に応じて配置すればよく、移動部材31に、キャップ部材33および媒体支持部34が配置されているだけでもよい。
【0025】
移動部材31は、移動機構32によって、紙媒体Pの搬送方向および搬送方向とは逆方向に直線に沿って移動する。例えば、移動部材31がラックで移動機構32がピニオンで構成される。また、図示しないが、リニアモーターで移動部材31を移動させてもよい。
キャップ部材33は、キャップ331を備えている。キャップ331は、インクジェット式記録ヘッド10の面11に当接する方向および離れる方向に移動可能となっている。
キャップ331は、面11と当接して密着する構造が好ましく、例えば、ゴム、合成樹脂等からなる弾性体で全体が形成されていてもよいし、面11と当接する部分がこれらの弾性体で構成されていてもよい。
【0026】
媒体支持部34は、可動プラテン341を備えている。可動プラテン341の形状は、開口25に収まる形状である。可動プラテン341が開口25に収まったときの面340の位置は、上流側固定プラテン22の面220と下流側固定プラテン23の面230とで支持されて搬送される紙媒体Pの搬送が円滑に行われる位置が好ましい。
紙媒体Pの搬送が円滑に行われる位置とは、例えば、面220と面230と面340とが略同一平面にある位置である。
また、面340は、紙媒体Pに向かって凸の面であって、凸の面の稜線が面220と面230とが含まれる面にあってもよい。
さらに、面340が凸の面の場合、紙媒体Pの搬送が円滑に行われれば、面220と面230とが含まれる平面よりインクジェット式記録ヘッド10に近い位置まで移動してもよい。この場合、紙媒体Pは、面220から凸面である面340に乗り上げるように搬送されるが、自重によって面340に沿って移動し、面230に搬送される。
可動プラテン341は、開口25に収まる方向および離れる方向に移動可能となっている。
【0027】
ワイパー部材35は、ワイパーとしての四角平板状のワイパーブレード351を備えている。ワイパーブレード351は、インクジェット式記録ヘッド10の面11に向かう方向および離れる方向に移動可能となっている。
ワイパーブレード351の材質としては、例えば、ゴム、合成樹脂等の弾性材を用いることができる。これらの弾性材は、例えば、多孔性でインクを吸収する能力を付与してもよい。
【0028】
キャップ部材33、媒体支持部34およびワイパー部材35を移動させる機構は、種々の機構を用いることができる。例えば、これらの部材の自重とカム機構によってこれらの部材を移動させることができる。これらの部材の移動量は同じであってもよいし、それぞれの部材ごとに異なる移動量であってもよい。
また、バネ等の弾性体によって、上流側固定プラテン22および下流側固定プラテン23方向に、キャップ部材33、媒体支持部34およびワイパー部材35に力を加えておき、上流側固定プラテン22または下流側固定プラテン23に当接して移動し、開口25に達したときに、キャップ331、可動プラテン341または媒体支持部34が、開口25でインクジェット式記録ヘッド10に向けて移動するようにしてもよい。このとき、開口25で弾性体が伸びきったときのそれぞれの部材の移動量は調節しておく。
また、これらの部材はリニアモーターを利用して移動させてもよい。
【0029】
図2(a)〜図3(i)は、第1実施形態におけるクリーニング部30の動きを示す概略図である。
クリーニング部30は、インクジェット式記録ヘッド10のクリーニングが必要なとき、定期的にクリーニングを行うとき、ノズル開口からインク2の溶媒の蒸発を防いでインクの乾燥を抑えるとき等に応じて作動する。
【0030】
クリーニングの種類としては、例えば吸引、フラッシング、ワイピングの3種類がある。
吸引は、ノズル開口からインク2を吸引し、インクジェット式記録ヘッド10内の気泡、異物、乾燥して粘度の高まったインク等を除去する動作である。
フラッシングは、インクジェット式記録ヘッド10を駆動させて、インク2をノズル開口から勢いよく吐出し、インクジェット式記録ヘッド10内の気泡、異物、乾燥して粘度の高まったインク等を除去する動作である。
ワイピングは、インクジェット式記録ヘッド10の面11を払拭し、面11に付着したインク2、埃等を除去する動作である。このとき、ノズル開口内の気泡、異物、乾燥して粘度の高まったインク等も、払拭時に生じる負圧によって、あるいは面11にはみ出たインクに引きずられて多少除去される。
【0031】
図2(a)は、可動プラテン341が、インクジェット式記録ヘッド10の面11に向かう方向に移動し、開口25に収まっている状態を示している。この状態は、図1に示した紙媒体Pが上流側固定プラテン22と可動プラテン341と下流側固定プラテン23とに支持される状態で、インクジェット式記録ヘッド10によって紙媒体Pに記録が可能な状態である。
【0032】
図2(b)は、可動プラテン341が、インクジェット式記録ヘッド10の面11から離れる方向に移動し、開口25から外れている状態を示している。この状態は、移動部材31が移動機構32によって、搬送方向および搬送方向とは逆方向に沿って移動できる状態である。
【0033】
図2(c)は、キャップ331が、インクジェット式記録ヘッド10の面11に対向する位置まで、搬送方向に移動した状態を示している。
この状態で、インクジェット式記録ヘッド10からインクを吐出することによるクリーニングであるフラッシングを行ってもよい。この場合、フラッシングによって吐出されたインクをキャップ331で確実に受け止めることができる位置まで、キャップ331をインクジェット式記録ヘッド10の面11に近づける。
【0034】
図2(d)は、キャップ331が移動し、インクジェット式記録ヘッド10の面11に当接している状態を示している。この状態で、キャップ331およびキャップ部材33を介して図示しないポンプによって、インクジェット式記録ヘッド10の面11のノズル開口からインクを吸引してインクジェット式記録ヘッド10内の気泡、異物、インク等を除去する。
また、キャップ331がインクジェット式記録ヘッド10の面11に当接している状態で吸引を行わなければ、インクジェット式記録ヘッド10の面11のノズル開口からインクの溶媒の蒸発を防げ、インクの乾燥が抑えられる。紙媒体Pに記録を行わないときやインクジェット式記録装置100の電源を切って使用しないときは、この状態にしておくのが好ましい。
【0035】
図2(e)は、キャップ331が、インクジェット式記録ヘッド10の面11から離れた状態を示している。この状態は、移動部材31が移動機構32によって、搬送方向および搬送方向とは逆方向に沿って移動できる状態である。
【0036】
図3(f)は、移動部材31が移動機構32によって搬送方向に移動し、ワイパー部材35のワイパーブレード351が、インクジェット式記録ヘッド10の少し上流側まで移動した状態を示している。
【0037】
図3(g)は、ワイパー部材35のワイパーブレード351が、インクジェット式記録ヘッド10の面11に向かう方向に移動し、インクジェット式記録ヘッド10の少し上流側で、面11を通り過ぎた位置まで移動した状態を示している。
ワイパーブレード351は、ワイパーブレード351がインクジェット式記録ヘッド10を横切るように搬送方向に向かって移動した際に、面11をふき取れる位置まで移動させる。
【0038】
図3(h)は、移動部材31が移動機構32によって搬送方向に移動し、ワイパー部材35のワイパーブレード351が、面11を通り過ぎた状態から、インクジェット式記録ヘッド10の少し下流側まで移動した後の状態を示している。
図3(g)に示した状態から図3(h)に示した状態までワイパーブレード351が移動する際に、ワイパーブレード351は変形して、インクジェット式記録ヘッド10の面11を払拭しながら移動する。インクジェット式記録ヘッド10の面11には、吸引、フラッシング、静電気等によってインク、埃等が付着するが、ワイピングによって、インクジェット式記録ヘッド10の面11に付着したインク等が除去される。
【0039】
図3(i)は、ワイパー部材35のワイパーブレード351が、インクジェット式記録ヘッド10の面11より離れ、移動部材31が移動機構32によって、搬送方向および搬送方向とは逆方向に沿って移動できる状態を示している。
【0040】
(第2実施形態)
本実施形態におけるインクジェット式記録装置は、第1実施形態のインクジェット式記録装置100とクリーニング部30の移動部材31に配置されたキャップ部材33、媒体支持部34およびワイパー部材35の配置順序が異なる。本実施形態では、キャップ部材33、媒体支持部34およびワイパー部材35は、移動部材31に、上流側から下流側に向かって媒体支持部34、キャップ部材33、ワイパー部材35の順で配置されている。
【0041】
(第3実施形態)
図4(a)は、本実施形態におけるインクジェット式記録装置200を示す概略図であり、図4(b)〜図5(j)は、本実施形態におけるクリーニング部301の動きを示す概略図である。
図4(a)において、本実施形態は、第1実施形態または第2実施形態のワイパーブレード351の代わりに、ワイパー部材35が円筒形状のワイパー352を備えている。ワイパー352は、例えば、弾性体、インクを吸収する多孔性の材料等からなる。
【0042】
以下、第1実施形態のワイパーブレード351をワイパー352に代えた実施形態を例に説明する。
図4(b)〜図5(f)、図5(j)に示すクリーニング部301の動きおよび状態は、第1実施形態で示した図2(a)〜図2(e)、図3(i)のクリーニング部30の動きおよび状態と同じなので説明は省略する。
【0043】
図5(g)は、移動部材31が移動機構32によって搬送方向に移動し、ワイパー部材35のワイパー352が、インクジェット式記録ヘッド10の面11の上流側の端と対向する位置まで移動した状態を示している。
図5(g)では、円筒形状のワイパー352の頂部が面11の上流側の端と対向する位置が示されているが、円筒形状のワイパー352のいずれかの部位が面11の上流側の端と対向していればよい。
【0044】
図5(h)は、ワイパー部材35のワイパー352が、インクジェット式記録ヘッド10の面11に向かって移動し接触した状態を示している。ワイパー部材35のワイパー352の移動量は、ワイパー352のどの位置が面11の上流側の端と接触するかによって調整する。ワイパー352が弾性体からなれば、ワイパー352が変形するので、移動量に幅を持たせることができる。
【0045】
図5(i)は、移動部材31が移動機構32によって搬送方向に移動し、ワイパー部材35のワイパー352が、インクジェット式記録ヘッド10の面11に接触した状態で、インクジェット式記録ヘッド10の面11の下流側の端まで移動した後の状態を示している。
図5(h)に示した状態から図5(i)に示した状態まで、ワイパー352が移動する際に、ワイパー352は、インクジェット式記録ヘッド10の面11からインクを吸い取り、払拭しながら移動する。これによって、インクジェット式記録ヘッド10の面11に付着したインク等が除去される。このとき、ワイパー352は移動しながらインクジェット式記録ヘッド10との摩擦により回転してもよいし、しなくてもよい。また、図示しない駆動機構により回転してもよい。
【0046】
(第4実施形態)
図6(a)は、本実施形態におけるインクジェット式記録装置300を示す概略図であり、図6(b)〜図7(j)は、本実施形態におけるクリーニング部302の動きを示す概略図である。
図6(a)において、本実施形態は、第3実施形態とクリーニング部302の移動部材31に配置されたキャップ部材33、媒体支持部34およびワイパー部材35の配置順序が異なる。本実施形態では、キャップ部材33、媒体支持部34およびワイパー部材35は、移動部材31に、上流側から下流側に向かってワイパー部材35、媒体支持部34、キャップ部材33の順で配置されている。
【0047】
図6(b)は、可動プラテン341が、インクジェット式記録ヘッド10の面11に向かう方向に移動し、開口25に収まっている状態を示している。この状態は、図6(a)に示した紙媒体Pが上流側固定プラテン22と可動プラテン341と下流側固定プラテン23とに支持される状態で、インクジェット式記録ヘッド10によって紙媒体Pに記録が可能な状態である。
【0048】
図6(c)は、可動プラテン341が、インクジェット式記録ヘッド10の面11から離れる方向に移動し、開口25から外れている状態を示している。この状態は、移動部材31が移動機構32によって、搬送方向および搬送方向とは逆方向に沿って移動できる状態である。
【0049】
図6(d)は、移動部材31が移動機構32によって、搬送方向とは逆方向に沿って移動し、キャップ331が、インクジェット式記録ヘッド10の面11に対向する位置まで移動した状態を示している。この状態で、第1実施形態の図2(c)で説明したように、インクジェット式記録ヘッド10からインクを吐出することによるクリーニングであるフラッシングを行ってもよい。
【0050】
図6(e)は、キャップ331が、インクジェット式記録ヘッド10の面11に当接している状態を示している。この状態では、第1実施形態と同様に、インクジェット式記録ヘッド10の面11のノズル開口からインクを吸引してインクジェット式記録ヘッド10における気泡、異物、インク等を除去する。
また、第1実施形態と同様に、この状態では、インクジェット式記録ヘッド10の面11のノズル開口からインクの溶媒の蒸発を防げ、インクの乾燥が抑えられる。
【0051】
図7(f)は、キャップ331が、インクジェット式記録ヘッド10の面11から離間した状態を示している。この状態は、移動部材31が移動機構32によって、搬送方向および搬送方向とは逆方向に沿って移動できる状態である。
【0052】
図7(g)〜図7(j)に示すクリーニング部302の動きは、第3実施形態の図5(g)〜図5(j)に示したクリーニング部301の動きと同様の動きなので説明は省略する。
【0053】
(第5実施形態)
本実施形態では、クリーニング部30の移動部材31に配置されたキャップ部材33、媒体支持部34およびワイパー部材35の配置順序が、第4実施形態と異なる。本実施形態では、キャップ部材33、媒体支持部34およびワイパー部材35は、移動部材31に、上流側から下流側に向かってキャップ部材33、媒体支持部34、ワイパー部材35の順で配置されている。
【0054】
(第6実施形態)
本実施形態では、第4実施形態および第5実施形態のワイパー352を第1実施形態で示したワイパーブレード351に代えた以外は、第4実施形態および第5実施形態と同じ構成である。
【0055】
(第7実施形態)
本実施形態では、第1実施形態〜第6実施形態のワイパー352をフラッシング受け353に代えた以外は、第1実施形態〜第6実施形態と同じ構成である。
図8(a)は、本実施形態の一例におけるインクジェット式記録装置400を示す概略図であり、図8(b)〜図9(i)は、本実施形態におけるクリーニング部303の動きを示す概略図である。
以下、図8(a)において、第4実施形態のワイパー352をフラッシング受け353に代えた実施形態であるインクジェット式記録装置400を例に説明する。
【0056】
図8(b)〜図9(f)に示す、本実施形態のクリーニング部303の動きおよび状態は、第4実施形態で示した図6(b)〜図6(f)のクリーニング部302の動きおよび状態と同じであるので説明を省略する。
【0057】
図9(g)は、移動部材31が移動機構32によって搬送方向に移動し、フラッシング受け353が、インクジェット式記録ヘッド10の面11に対向する位置まで移動した状態を示している。
【0058】
図9(h)は、フラッシング受け353が上昇し、インクジェット式記録ヘッド10の面11に近い位置にある状態を示している。フラッシング受け353は、フラッシングを行った際に、インクをフラッシング受け353で確実に受け止めることができる位置まで面11に近づける。この状態でフラッシングを行う。
【0059】
図9(i)は、フラッシング受け353が、インクジェット式記録ヘッド10の面11から離れた状態を示している。この状態は、移動部材31が移動機構32によって、搬送方向および搬送方向とは逆方向に沿って移動できる状態である。
【0060】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)紙媒体Pの搬送方向および搬送方向と逆方向に沿って移動する移動部材31にキャップ部材33および媒体支持部34が配置されているので、キャップ部材33および媒体支持部34が搬送部20に沿って移動する。したがって、移動部材31と搬送部20との間隔を狭くでき、小型のインクジェット式記録装置100,200,300,400を得ることができる。
また、インクジェット式記録ヘッド10と対向する搬送部20の開口25において、紙媒体Pを支持可能な位置に可動プラテン341が移動可能なので、紙媒体Pにインク2を吐出する際に、インクジェット式記録ヘッド10と紙媒体Pとの距離にバラツキを生じにくくできる。したがって、インク2の紙媒体Pへの到達位置のばらつきを少なくでき、紙媒体Pへの記録制御が容易なインクジェット式記録装置100,200,300,400を得ることができる。
【0061】
(2)移動部材31が直線に沿って移動するので、搬送部20と移動部材31との間隔をより狭くでき、より小型のインクジェット式記録装置100,200,300,400を得ることができる。
【0062】
(3)インクジェット式記録ヘッド10の面11に付着したインク2を払拭または吸収することが可能なワイパーブレード351またはワイパー352を有しているので、クリーニング機能がより向上したインクジェット式記録装置100,200,300,400を得ることができる。
【0063】
(4)インクジェット式記録ヘッド10は、媒体Pの搬送方向と直交する方向における媒体Pの長さよりも長いので、媒体Pの幅にわたってインク2の吐出が可能である。したがって、媒体Pにおける記録面の広いインクジェット式記録装置100,200,300,400を得ることができる。
【0064】
上述した実施形態以外にも、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、移動部材に配置される部材は、媒体支持部、キャップ部材、ワイパー部材に限らず、4以上の部材を備えていてもよい。例えば、媒体に噴射された液体の乾燥を早めるための加熱部材を配置することも可能である。
また、ワイパー部材の形状は、四角平板形状や円筒形状に限らない。例えば、円筒形状の表面に搬送方向と直交する方向に溝が設けられていてもよい。この構成では、払拭された液体が溝に溜まることにより、より効率的に払拭が行える。
【符号の説明】
【0065】
10…インクジェット式記録ヘッド、11…面、20…搬送部、21…上流側搬送ローラー、22…上流側固定プラテン、23…下流側固定プラテン、24…下流側搬送ローラー、25…開口、30,301,302,303…クリーニング部、31…移動部材、32…移動機構、33…キャップ部材、34…媒体支持部、35…ワイパー部材、100,200,300…インクジェット式記録装置、220…面、230…面、331…キャップ、340…面、341…可動プラテン、351…ワイパーブレード、352…ワイパー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置であって、
前記媒体を支持しながら搬送するとともに、前記液体噴射ヘッドと対向する部分に開口を有する搬送部と、
前記搬送部よりも前記液体噴射ヘッドから離れた側に位置し、前記媒体の搬送方向および前記搬送方向と逆方向に沿って移動する移動部材と、
前記移動部材に配置され、前記移動部材に対して前記液体噴射ヘッドに当接および離間する方向に移動可能で、前記液体噴射ヘッドをキャップすることが可能なキャップ部材と、
前記移動部材に配置され、前記移動部材に対して前記媒体を前記開口において支持可能な位置と前記媒体から離間した位置に移動可能な媒体支持部とを備えた
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記搬送方向は直線に沿った方向で、前記移動部材の移動は、直線に沿って行われる
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置において、
前記移動部材は、前記液体噴射ヘッドに付着した液体を払拭または吸収することが可能なワイパーを有するワイパー部材を備えている
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体噴射装置において、
前記搬送方向上流から下流に向けて、前記ワイパー部材、前記キャップ部材、前記媒体支持部の順に配置されている
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項3に記載の液体噴射装置において、
前記搬送方向上流から下流に向けて、前記媒体支持部、前記キャップ部材、前記ワイパー部材の順に配置されている
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項3に記載の液体噴射装置において、
前記搬送方向上流から下流に向けて、前記ワイパー部材、前記媒体支持部、前記キャップ部材の順に配置されている
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項7】
請求項3に記載の液体噴射装置において、
前記搬送方向上流から下流に向けて、前記キャップ部材、前記媒体支持部、前記ワイパー部材の順に配置されている
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項8】
請求項3〜請求項7のいずれか一項に記載の液体噴射装置において、
前記ワイパー部材は、四角平板状の前記ワイパーを備えている
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項9】
請求項3〜請求項7のいずれか一項に記載の液体噴射装置において、
前記ワイパー部材は、円筒形状の前記ワイパーを備えている
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の液体噴射装置において、
前記液体噴射ヘッドは、前記媒体の前記搬送方向と直交する方向における前記媒体の長さよりも長い
ことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−59982(P2013−59982A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201486(P2011−201486)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】