説明

液体容器の検査装置

【課題】 金属製の栓で密封された液体容器のひび割れ又は亀裂の箇所を特定できる検査装置を提供する。
【解決手段】 金属製の栓12で密封された液体容器10に対して電磁波を放射する円筒状の電磁石14と、その中心軸線上に配置され、電磁波の放射によって生じる栓の振動音を捕捉するマイク16とを備える。マイク16の側面と電磁石14の内面との間に音を通過させる空間26を設け、容器10の栓12に対向する電磁石14とマイク16の各端面の位置を一致させて配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が充填された容器のひび割れ箇所を検出する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を充填し栓で封止した容器において液体の充填レベルを決定するために、垂直軸方向に孔を設けたコアを有する磁気コイルと、そのコアの孔の下端に配置したマイクとを備えた装置を用いることが知られている(特許文献1参照)。この装置によれば、容器の栓に磁気コイルから電磁パルスを与えて栓に機械的振動を生じさせ、その振動が容器内の空間を伝播して液体と気体の境界面及び液体と容器材料の境界面で反射することで、容器内に定常波が生成される。そして、電磁パルスの電磁的衝撃から所定時間(例えば、10ms)内にマイクが捕捉した栓の振動音と定常波の振動音を周波数解析し、この周波数解析結果に示されるピーク周波数から、容器に充填された液体の充填レベルを決定することができる。また、周波数解析結果から容器の壁のひび割れ又は亀裂を認識できることも示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−503868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した装置では、電磁パルスの電磁的衝撃から10msの間に発生する大きな振幅の栓の振動音と小さな振幅の定常波の振動音をマイクが捕捉するが、容器内に形成される定常波は、振幅が大きい栓の振動が減衰するまでその振動の影響を受け続ける。このため、定常波に現れる液体の充填レベルを検知することは可能であるが、定常波の振幅に比して小さい振幅として現れる容器のひび割れや亀裂の存在を識別することは困難である。
【0005】
本発明は、上記のような背景技術に鑑み、容器のひび割れ又は亀裂の存在に加えて、それらが存在する箇所の特定も可能な検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属製の栓で密封された液体容器に対して電磁波を放射する円筒状の電磁石と、該電磁石の中心軸に配置され、前記電磁波の放射によって発生する前記栓の振動音を捕捉するマイクとを備える検査装置であって、前記マイクの側面と前記電磁石の内面との間に音を通過させる空間を設け、前記容器の栓に対向する前記電磁石と前記マイクの各端面の位置を一致させて配置したことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、液体容器に対する電磁波の放射によって生じた栓の振動音がマイクに捕捉されるが、マイクの周囲に達した栓の振動音は、マイクの側面と電磁石の内面との間の空間を通過するため、マイクの周囲では振動音の反射が生じない。また、電磁石とマイクの各端面の位置が一致しているので、電磁石が栓の振動音を反射しても、その反射音はマイクに到達しない。以上により、マイクは、振幅が大きい栓の振動の影響を受けずに振幅の小さい定常波の振動音を歪みなく捕捉することが可能となり、定常波に含まれるひび割れや亀裂の存在を識別すると共に、そのひび割れ等の箇所を特定することができる。
【0008】
本発明の検査装置は、前記電磁石に励磁電力を供給する励磁電源と、前記電磁石の下方に位置した前記容器を検出する容器検出センサと、検査対象の容器の良否を判定するための良否判定データを格納した記憶装置と、前記容器検出センサからの検出信号に応じて、前記励磁電源から前記電磁石へ電力を供給させ、前記電磁波による前記栓の振動によって励起される前記容器の材料の振動音を前記マイクを通して受信する解析装置とを備え、前記解析装置は、前記電磁石の電磁的衝撃から栓の振動の減衰時間が経過して前記容器の内部空間内に形成された定常波の消失後に現れる容器材料の振動音の周波数特性及び電力強度に基づいて、複数の周波数領域における前記容器材料の振動音の電力強度面積値を算出し、該電力強度面積値と前記記憶装置に格納された良否判定データとを対比することにより、前記容器の良否を判定することが好ましい。
【0009】
この好ましい形態によれば、複数の周波数領域における前記容器材料の振動音の電力強度面積値と前記記憶装置に格納された良否判定データとを比較することにより、前記電磁石の下方に搬送された容器の良否を判定することができる。
【0010】
また、前記記憶装置は、複数種類の不良品容器の電力強度面積値を、前記良否判定データとして記憶し、前記解析装置は、前記容器の電力強度面積値と前記不良品容器の電力強度面積値とを対比して、両者が一致する場合に前記容器の欠陥部位を判別することが好ましい。
【0011】
これによれば、前記解析装置は、前記容器の電力強度面積値と前記記憶装置に記憶された不良品容器の電力強度面積値と比較し、両者が一致することを条件として前記容器の欠陥部位を判別することができる。
【0012】
また、前記解析装置は、前記容器の振動音の音響信号にハニング窓関数をかけた演算結果をフーリエ変換することが好ましい。
【0013】
これによれば、前記容器の振動音の音響信号の主成分であるメインローブの幅が小さいほど周波数分解能を高くする一方、サイドローブの値が小さいほど小電力のスペクトルを検出する能力を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の検査装置と液体容器の正面図。
【図2】図1の検査装置の拡大断面図。
【図3】実施形態の検査装置の構成を示すブロック図。
【図4】実施形態の検査装置による容器の周波数解析結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図3に示した実施形態の検査装置は、栓12により密閉されたビン10を検査対象の容器とし、そのひび割れ又は欠けのような欠陥の存在を検知すると共に、欠陥の個所を特定する検査を行う。
【0016】
本実施形態の検査装置は、下方に搬送されたビン10に電磁波を放射する電磁石14と、電磁石14の中心軸に配置され、ビン10の振動音を捕捉するマイク16(例えば、振動板と固定板を有するコンデンサマイク)と、電磁石14の外周を覆うカバー18と、カバー18及び電磁石14の内面を支持する円筒部材20と、円筒部材20の内周側に配置され、マイク16の頂部を支持するマイク支持部材22と、マイク支持部材22を上方から吊り下げ支持する保持部材24とを備える。
【0017】
ビン10は、液体(例えば、清涼飲料水)が充填され、上部に金属製であって王冠状の栓12により密閉されている。栓12と液体との間には気体(例えば、炭酸ガス又は窒素ガス)が封入されている。ビン10の頭部空間内には、液体と気体の境界面及び液体と容器材料(例えば、ガラス)の境界面を有する。
【0018】
ビン10は、金属製又は樹脂製の搬送板26に載置され、例えば、コンベアにより図中前方又は後方から電磁石14の下方に搬送される。
【0019】
マイク16は、電磁石14から放射された電磁波の電磁的衝撃により励起される栓12の振動音を捕捉する。この栓12の振動音は、栓12の周波数特性及びビン10の周波数特性を含んだアナログ信号としてマイク16から出力する。
【0020】
カバー18は、電磁石14の側面を覆い、カバー18の底部において、電磁石14及びマイク16の底面を露出させている。また、電磁石14の底部とマイク16の底部との間に空気の振動を通過させる空間26が設けられ、空間26は、カバー18の内周側で上下方向に貫通している。
【0021】
円筒部材20は、電磁石14の内面及びカバー18の上部内面に密着し、マイク支持部材22と空間26を隔てて垂直方向に延在する。このため、マイク支持部材22と円筒部材20に挟まれた空間26は、音響抵抗が低く、空間26を伝達する空気の振動による反射波の発生を低減させる。
【0022】
マイク16は、その下部位置と電磁石14の下部位置とを一致させることにより、電磁石14が発生する反射音をマイク16の下方に通過させ、マイク16に反射音が入射することを防止する。
【0023】
マイク16は、その外周と円筒部材20の内周との間の空間26により包囲し、マイク16とカバー12とを空気で分離しているため、第1に、空間26に到達した栓12の振動音を空気の振動として上方に通過させることができる。第2に、空間26では栓12の振動音による反射音が発生しないため、マイク16は歪の無い栓12の振動音を捕捉できる。第3に、栓12の振動音による電磁石14からの反射音を遮断することができる。これらにより、マイク16は、栓12からの振動音の集音効果をより向上させることができる。
【0024】
マイク支持部材22は、好ましくは、樹脂製の中空パイプで形成し、上方を固定部材28(例えば、ねじ)により、保持部材24に固定される。マイク支持部材22の下部にマイク16を取り付け、保持部材24から吊り下げるようにマイク16の下部位置を電磁石14の下部位置に一致させることが好ましい。
【0025】
但し、本発明は、マイク16の下部位置を電磁石14の下部位置に完全に一致させる構成に限定されず、例えば、固定部材28による固定を解除し、マイク支持部材22の固定位置を上下方向に調整した後に固定部材28で再度固定し、電磁石14の中心軸の筒状空間に発生する共鳴音を減衰することもできる。
【0026】
また、マイク支持部材22は、マイク16と電気的に接続するマイク配線30を挿入し、マイク配線30と空間26とを遮断する。このため、空間26の音響抵抗をマイク配線30により増大させることがない。
【0027】
保持部材24は、ベース板32の上面に固定部34を介して固定されている。ベース板32の下面には、カバー18の上面を固定する。また、ベース板32及び固定部34は、コイル配線36を垂直方向に貫通させカバー18の側面から電磁石14へコイル配線36を導入する。
【0028】
ベース板32は、両側から下方に向けてビン10の頭部空間と距離を離して対向する延長部32a及び延長部32bを備える。延長部32aは、ビン10の頭部空間に向けてビン検出センサ38aを配置し、延長部32bは、ビン10の頭部空間に向けてビン検出センサ38bを配置する。
【0029】
ビン検出センサ38aは、水平方向に位置するビン検出センサ38bに向けて光線を照射し光軸を形成する透過型又は反射型の光電センサを用いることが好ましい。また、ビン検出センサとして、搬送されたビン10を検知できる手段であれば光電型及びレーザ型の他に、ビン10のガラス検知型のセンサを適用することもできる。
【0030】
図2は、本実施形態の検査装置の断面図である。
【0031】
検査装置は、円筒状のカバー18と、カバー18の下部内面に支持される電磁石14と、電磁石14の中心軸に配置するマイク16と、マイク16を上方から垂直方向に吊り下げるマイク支持部材22と、マイク16及びマイク支持部材22の外周から空間26を隔てて包囲する円筒部材20とを備える。
【0032】
電磁石14は、円筒部材20を包囲する円筒状の磁性体コア40と、磁性体コア40の外周を巻回する導電性のコイル巻線42とを備え、磁性体コア40の下部は、円筒部材20の下部の位置と一致するように配置されている。
【0033】
磁性体コア40は、初期透磁率の高いアモルファス材の薄帯を積層して形成し、応答周波数の向上と共にヒステリシス損を減少させる。例えば、磁性体コア40には、鉄を主成分とした、シリコンと、ボロン及び微量の銅ニオブを添加させた高温融液を約100万℃/秒で急冷固化するアモルファス薄帯からなる素材を結晶化温度以上で熱処理し、10nmの結晶粒径を有する薄帯の積層体を用いることが好ましい。
【0034】
円筒部材20は、マイク16及びマイク支持部材22の外周を空気の振動を通過させる空間26を隔てて包囲しているため、円筒部材20及びマイク16の下部から円筒部材20の上部間で延在する空間26を形成している。このため、栓12の振動音による空気の振動を空間26の下部に入射させ、この空気の振動を空間26の上部から放出させることができる。
【0035】
そして、マイク16は、栓12の振動音の集音効果を向上させ、電磁石14から栓12の反射音の入射を遮断することができる。
【0036】
図3は、本実施形態の検査装置のブロック図である。
【0037】
検査装置は、電磁石14と、予備電磁石14aと、電磁石14の中心軸に配置するマイク16と、ビン検出センサ38と、コイル励磁電源44と、マイク16及びコイル励磁電源44並びにビン検出センサ38に接続する解析装置46とを備える。
【0038】
電磁石14及び予備電磁石14aは共に、コイル励磁電源44に接続され、解析装置46の制御プログラムにより電磁波を夫々のタイミングでビン10及びビン10aに向けて放射する。
【0039】
コイル励磁電源44は、使用者により電磁石14及び予備電磁石14aに夫々供給する励磁電力の電圧と、励磁タイミングと、パルス幅とを調整し、励磁コイルのチャンネルを設定することで励磁タイミングを制御する。
【0040】
本実施形態では、コイル励磁電源44は、チャンネル設定により、コイル励磁電源44から電磁石14だけに励磁電力を供給する単チャンネル型のコイル励磁電源44と、電磁石14及び予備電磁石14aの2つの電磁石に励磁電力を夫々供給する多チャンネル型のコイル励磁電源44の何れか1つを選択することができる。
【0041】
予備電磁石14aは、ビン10の上流で待機しているビン10aの上方に設けられ、ビン10aの栓12aに対して電磁的衝撃を与えて、この栓12aの残留応力を除去する。これにより、容器10aが電磁石14の下方に搬送され電磁石14の電磁的衝撃を受けることにより検査精度をより向上させることができる。
【0042】
解析装置46は、内部に制御装置48(以下、「CPU48」と記する。)と、ランダムアクセス型のメモリ50(以下、「RAM50」と略記する。)と、計測トリガ入力部52と、励磁トリガ出力部54と、増幅部56と、表示画面58と、データ保存用記憶装置60と、不良判定部62と、計測値出力部64と、電源68とを備え、電源68から各部材へ電力が供給される。
【0043】
CPU48は、バス66を介して、RAM50、計測トリガ入力部52、励磁トリガ出力部54、増幅部56、表示画面58、データ保存用記憶装置60、不良判定部62、及び、計測値出力部64と接続する。
【0044】
解析装置46は、外部の状態監視ランプ70と、排斥装置72と、外部記憶装置74に接続され、状態監視ランプ70からビン10の良否を識別する容器判定結果を報知する。また、不良判定部62から排斥装置72へ排斥信号を送信しビン10を図外の容器不良ラインへ搬送させる。さらに、計測値出力部64から容器の振動音データや容器の周波数解析データを外部記憶装置74へ出力する。
【0045】
増幅部56は、マイク16からアナログ信号を受信し、このアナログ信号を増幅しフィルタを通過させた後に、アナログ信号をデジタル信号へ変換し、CPU48の指令によりデジタル信号をバス66を介してRAM50へ書き込む。増幅部56では、マイク16から少なくとも40msのビン10の振動音データを受信し、10Hzの周波数分解能を得るため、2048ビットのデジタル信号を出力することが好ましい。
【0046】
表示画面58には、使用者の操作により、マイク16から受信するアナログ信号の波形、RAM50に記憶するデジタル信号の波形、CPU48がRAM50から読み出したデジタル信号をフーリエ変換し演算出力する周波数解析結果の波形、解析装置46の解析パラメータを設定するメニュー画面を表示する。
【0047】
データ保存用記憶装置60は、例えば、100本のビン10を予め検査装置で検査し生成した良否判定データを記憶する。100本のビンには、良品ビン、不良ビンとして、ビン口割れ、ビン内壁ひび、ビン外壁ひび、ビン底ひび、液体充填量の良否が含まれている。
【0048】
データ保存用記憶装置60は、良品ビン及び不良ビンの良否判定データとして、ビン10の周波数解析結果に示される波形の面積値の限界値を記憶する。この限界値は、複数の周波数領域に設定されている。
【0049】
小瓶を対象とする良品ビンの強度面積の限界値を例示すれば、以下のとおりである。
【0050】
第1の周波数領域(7000〜8000Hz)は、200000以上の強度面積を有し、第2の周波数領域(6000〜7000Hz)は、100000以上の強度面積を有し、第3の周波数領域(7200〜7500Hz)は、150000以上の強度面積を有し、第4の周波数領域(6500〜6800Hz)は、150000以下の強度面積を有し、第5の周波数領域(5800〜6100Hz)は、100000以下の強度面積を有し、第6の周波数領域(5100〜5400Hz)は、50000以上の強度面積を有する。
【0051】
小瓶を対象とする不良ビンの強度面積は、上述した第1〜第5の周波数領域の強度面積の1又は複数の限界値を満たすことができない。例えば、ビン口割れ、ビン内壁ひび、ビン外壁ひび、ビン底ひび、液体の充填不良を含む不良ビンの強度面積を、Kビン不良、Tビン不良、外ビン不良(ビン外壁ひび)、液体が充填されていない空ビン不良、内ビン不良、液体の充填が不十分な低充填ビン不良、液体の充填が過剰な高充填ビン不良として例示する。
【0052】
第1の周波数領域では、低充填ビン不良の強度面積が200000以上の限界値を充足しない。
【0053】
第2の周波数領域では、すべての不良ビンの強度面積が100000以上の限界値を充足する。
【0054】
第3の周波数領域では、Kビン不良、外ビン不良、低充填ビン不良、空ビン不良、内ビン不良、低充填ビン不良の強度面積が150000以上の限界値を充足しない。
【0055】
第4の周波数領域では、Tビン不良、内ビン不良の強度面積が150000以下の限界値を充足しない。
【0056】
第5の周波数領域では、低充填ビン不良の強度面積が100000以下の限界値を充足しない。
【0057】
第6の周波数領域では、空ビン不良の強度面積が50000以上の限界値を充足しない。
【0058】
データ保存用記憶装置60には、ビン10の判定結果を「1」と「0」の数字で表現する周波数領域別の判定結果データを記憶する。例えば、周波数領域の限界値を充足する場合は判定結果「1」の判定結果データを記憶し、限界値を充足しない場合は「0」の判定結果データを記憶する。
【0059】
良品ビンは、第1〜第6の周波数領域の順に、6桁の「111111」の総合判定結果データで特定する。
【0060】
Kビン不良は、第1〜第6の周波数領域の順に、6桁の「110111」の総合判定結果データで特定する。
【0061】
Tビン不良は、第1〜第6の周波数領域の順に、6桁の「111011」の総合判定結果データで特定する。
【0062】
外ビン不良は、第1〜第6の周波数領域の順に、6桁の「110111」の総合判定結果データで特定する。
【0063】
空ビン不良は、第1〜第6の周波数領域の順に、6桁の「111110」の総合判定結果データで特定する。
【0064】
内ビン不良は、第1〜第6の周波数領域の順に、6桁の「110011」の総合判定結果データで特定する。
【0065】
低充填ビン不良は、第1〜第6の周波数領域の順に、6桁の「110101」の総合判定結果データで特定する。
【0066】
高充填ビン不良は、第1〜第6の周波数領域の順に、6桁の「010111」の総合判定結果データで特定する。
【0067】
更に大瓶を対象とする良品ビンの強度面積の限界値を例示すれば、次のとおりである。
【0068】
第1の周波数領域(11800〜12300Hz)は、30000以上の強度面積を有し、第2の周波数領域(10200〜10600Hz)は、50000以上の強度面積を有し、第3の周波数領域(5300〜5700Hz)は、20000以上の強度面積を有し、第4の周波数領域(4000〜4500Hz)は、100000以上の強度面積を有する。
【0069】
大瓶のビン底割れ不良ビンは、第1〜第4の周波数領域のすべてにおいて、良品ビンの強度面積の限界値を充足していない。このため、ビン底割れ不良ビンの総合判定結果データは、4桁の「0000」で特定することができる。
【0070】
次に、上記検査装置の動作について説明する。
【0071】
検査装置は、飲料物を生産する工場から出荷する前の液体が充填され、栓12で密封されたビン10のひび割れ、欠けのようなビン不良が存在するか否かを検査する。
【0072】
検査装置は、ビン10の検査ラインに設置され、検査装置の電磁コイル14の下方には搬送板26が移動する。ビン10は、搬送板26に載置され電磁コイル14の下方に搬送される。搬送板26は、コンベアによる連続移動、ビン10を軸方向に旋回させるターレットによる連続移動、及び電磁コイル14の下方に停止させてもよい。要は、ビン10を載置しながら水平方向に移動させ、コンベア又はターレットから伝達される振動音を減衰させる手段を用いることが好ましい。
【0073】
搬送板26は、ビン10の栓12の中心が電磁コイル14の中心軸を通過するように移動する。栓12の上面と電磁コイル14の底面との距離は、例えば、2〜4mmの間隔を維持するように設定する。好ましくは、3mmの間隔に設定することで、栓12に対して強い電磁的衝撃を与える。
【0074】
マイク16は、電磁石14の下部位置と同一の位置に下部を露出しているため、マイク16と栓12との距離は、例示した2〜4mmの間隔を維持するように設定されている。好ましくは、3mmの間隔に設定することで、栓12の振動音を確実に捕捉することができる。
【0075】
ビン検出センサ38a、38bは、ビン10が電磁石14の下方に搬送された状態で、栓12の中心軸と電磁石14の中心軸が合致するタイミングで計測トリガ信号を出力するように、ビン検出センサ38a、38bの水平位置及び垂直位置が設定されている。
【0076】
増幅部56は、ビン10の移動速度又は移動時間に対応させてマイク16から受信するアナログ信号の増幅率を設定する。また、増幅部56は、オートゲインコントロールAGC回路を設けて、増幅したアナログ信号をフィードバックしマイク16から受信するアナログ信号の増幅率を自動的に制御することが好ましい。
【0077】
搬送板26は、検査装置が少なくとも40msの期間に栓12の振動音をマイク16から受信する時間を確保するように、移動速度が決定されている。なお、搬送板26は、前方又は後方のビン10が接触しない間隔で移動し、搬送板26に載置するビン10が周囲の固定物に接触しないように移動する。
【0078】
解析装置46は、計測トリガ入力部52において、容器検出センサ38から電磁石14の下方に搬送されたビン10を検出する計測トリガ信号を受信する。解析装置46のCPU48は、計測トリガ信号の受信に応動し、励磁トリガ出力部54からコイル励磁電源44に励磁トリガ信号を送信する。
【0079】
コイル励磁電源44は、予め設定された励磁タイミングに合致する励磁電力を1〜10μsの時間に亘り電磁石14に供給する。また、多チャンネル型のコイル励磁電源44を選択する場合は、励磁電力を1〜10μsの時間に亘り電磁石14及び予備電磁石14aに供給する。この予備電磁石14aは、ビン10の上流で待機している検査前のビン10aに電磁的衝撃を与える。
【0080】
栓12は、電磁的衝撃により電磁石14側へ引っ張られた後に開放されることで、栓12の固有の振動周波数を有する振動が発生する。この栓12の振動が、ビン10の頭部空間の液体と気体の境界、液体とビン10の壁の境界、栓12と接するビン10の口部に伝播し、ビン10内部で反射する。
【0081】
マイク16は、ビン10の反射音を、栓12を通して捕捉する。この反射音は、ビン10の頭部空間の内圧に対応する固有の振動周波数を有する振動と、栓12と接するビン10の口部の固有の振動周波数を有する振動と、ビン10の壁の固有の振動周波数を有する振動が総合された可聴音(例えば、0〜20000Hz)である。
【0082】
マイク16は、コンデンサマイクを使用することが好ましい。コンデンサマイクの振動板は、非常に薄く、軽いので、空気の振動に忠実に反応し、低い周波数(50Hz)から高い周波数(20000Hz)の音まで安定した周波数特性で栓12の振動音を捕捉することができる。特に、高耐圧入力(例えば、最大入力音圧が149dB)のため、栓12から3mmの距離にマイク16を配置し、歪の無い栓12の振動音を捕捉することができる。
【0083】
また、マイク16は、円筒部材20との間の空間26に包囲されているため、栓12から上方へ伝達される振動音の集音効果が高く、電磁石14の底部位置とマイク16の底部位置が同一に配置されているので、電磁石14の反射音の影響を低減することができる。
【0084】
解析装置46は、増幅部56において、マイク16から60ms間の反射音に対応するアナログ信号を受信し、受信したアナログ信号を増幅しフィルタを通してから60ms間のデジタル信号へ変換する。このデジタル信号は、バス66を介してRAM50へ書き込まれる。
【0085】
解析装置46は、CPU48を用いて音波収集ソフトウエアを実行し、RAM50に書き込まれた60ms間のデジタル信号を読み出し、電磁的衝撃から20ms間のデジタル信号を破棄し、残りの40ms間のデジタル信号を抽出する。
【0086】
解析装置46は、栓12の振動が減衰しビン10の頭部空間内に形成される定常波が消失した後(電磁的衝撃から20ms経過した後)に現れる少なくとも40msの間のビン10の材料の振動音について、CPU48によりフーリエ変換して得られた周波数特性データをRAM50に書き込む。
【0087】
そして、解析装置46は、CPU48により、RAM50から周波数特性データを読み出し、ビン10の材料の振動音の周波数特性及び電力強度を演算出力する。
【0088】
図4は、CPU48を用いて演算出力した容器の周波数解析結果を示す。
【0089】
図4(a)は、2種類の良品ビンの周波数解析結果を示している。図中の実線で示すビンと破線で示すビンは、5200Hz〜5500Hzの周波数領域において、固有のピーク周波数が現れ、6700Hz〜7700Hzの周波数領域において、固有のピーク周波数が現れる。
【0090】
本実施形態では、良品ビンの周波数特性と相違する周波数特性を有するビン10を不良ビンとして判定する。図4(b)は、Kビン不良の周波数特性を示している。Kビン不良は、第3の周波数領域F3において、波形の強度面積値が限界値の150000未満であり、良品ビンの波形の強度面積値と相違する特徴を有しているため、不良ビンとして判定される。
【0091】
ここで、波形の強度面積値とは、周波数領域の最小周波数から最大周波数の間に現れる波形(メインローブ及びサイドローブ)を積分した面積値に相当する。つまり、ピーク周波数により容器材料の振動を特定する従来技術に対し、本実施形態では、所定の周波数領域に現れる波形の振幅をすべて積分することにより、微小な振動を識別することができる。
【0092】
また、CPU48は、ビン10の振動音のデジタル信号にハニング窓関数をかけた演算結果をフーリエ変換することが好ましい。
【0093】
ビン10の振動音のデジタル信号にハニング窓関数をかけた結果をフーリエ変換することで、離散的な音響信号の主成分であるメインローブの幅が小さいほど周波数分解能を高くすることができ、サイドローブの値が小さいほど小電力のスペクトルを検出する能力を高くすることができるため、定常波に比して電力強度が低い欠陥部位の振動音を正確に識別することができる。
【0094】
図4(c)は、内ビン不良の周波数特性を示している。内ビン不良は、第3の周波数領域F3において、波形の強度面積値が限界値の150000未満であり、且つ第4の周波数領域F4において、波形の強度面積値が限界値の150000を超え、良品ビンの波形の強度面積値と相違する特徴を有しているため、不良ビンとして判定される。
【0095】
図4(d)は、第4の周波数領域F4において、波形の強度面積値が限界値の150000を超え、良品ビンの波形の強度面積値と相違する特徴を有しているため、不良ビンとして判定される。
【0096】
次に、CPU48は、RAM50に記憶している良否判定データとしての第1〜第6の周波数領域の限界値とビン10の周波数特性及び電力強度とを比較する。CPU48はビン10が所定の限界値を越えるか超えないかにより、「1」又は「0」からなる6桁の総合判定結果データを生成し、ビン10の良否を判定する。この判定処理によりビン10が不良ビンである場合は、ビンの欠陥部位を総合判定結果データから特定することができる。
【0097】
但し、本発明は、良否判定データを第1〜第6の周波数領域の限界値に限定するものではなく、例えば、第1〜第6の周波数領域の波形データとビン10の周波数解析値の波形データとのパターンが一致するか否かを判定することで、ビン10の良否判定を実行し、容器の欠陥部位を特定することができる。
【0098】
解析装置46は、CPU48の判定結果データ及び検査日時データをデータ保存用記憶装置60に記憶し、状態監視ランプ70を点灯させる。状態監視ランプ70は、良品ビンを示す青色発光と不良ビンを示す赤色発光を区別して報知する。
【0099】
解析装置46は、ビン10がCPU48により不良ビンと判定された場合、排斥装置72排斥信号を送信し、ビン10を図外の容器不良ラインへ搬送させる。
【0100】
更に、解析装置46は、RAM50に書き込んだビン10の振動音データ、又は判定結果データ若しくはビン10の周波数解析データを、計測値出力部64を通して外部記憶装置74へ出力する。
【符号の説明】
【0101】
10…ビン(容器)、12…栓、14…電磁石、14a…予備電磁石、16…マイク、20…円筒部材、26…空間、40…磁性体、42…コイル巻線、44…コイル励磁電源、46…解析装置、48…CPU、50…メモリ、52…計測トリガ入力部、54…励磁トリガ出力部、56…増幅部、60…データ保存用記憶装置、62…不良判定部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の栓で密封された液体容器に対して電磁波を放射する円筒状の電磁石と、該電磁石の中心軸に配置され、前記電磁波の放射によって発生する前記栓の振動音を捕捉するマイクとを備える検査装置であって、
前記マイクの側面と前記電磁石の内面との間に音を通過させる空間を設け、前記容器の栓に対向する前記電磁石と前記マイクの各端面の位置を一致させて配置したことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の検査装置において、前記電磁石に励磁電力を供給する励磁電源と、前記電磁石の下方に位置した前記容器を検出する容器検出センサと、検査対象の容器の良否を判定するための良否判定データを格納した記憶装置と、前記容器検出センサからの検出信号に応じて、前記励磁電源から前記電磁石へ電力を供給させ、前記電磁波による前記栓の振動によって励起される前記容器の材料の振動音を前記マイクを通して受信する解析装置とを備え、
前記解析装置は、前記電磁石の電磁的衝撃から栓の振動の減衰時間が経過して前記容器の内部空間内に形成された定常波の消失後に現れる容器材料の振動音の周波数特性及び電力強度に基づいて、複数の周波数領域における前記容器材料の振動音の電力強度面積値を算出し、該電力強度面積値と前記記憶装置に格納された良否判定データとを対比することにより、前記容器の良否を判定することを特徴とする検査装置。
【請求項3】
前記記憶装置は、複数種類の不良品容器の電力強度面積値を前記良否判定データとして記憶し、前記解析装置は、前記容器の電力強度面積値と前記不良品容器の電力強度面積値とを対比し、両者が一致する場合に前記容器の欠陥部位を判別することを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記解析装置は、前記容器の振動音の音響信号にハニング窓関数をかけた演算結果をフーリエ変換することを特徴とする請求項2又は3に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−88088(P2012−88088A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233054(P2010−233054)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(505252953)ディ・アイ・エンジニアリング株式会社 (4)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】