説明

液体容器用袋

【課題】液体容器用袋の内部に、液体容器の外面から液体を除去する吸水性シートを設けるに際し、その吸水性シートが液体容器の出し入れに邪魔にならないようにする。
【解決手段】液体容器用袋1は、非透水性シートからなる表材2と裏材3の間に、折り返し部を上辺とする形で二つ折りにした吸水性シート5を配置し、表材2と裏材3の左右両辺同士と下辺同士を、吸水性シート5の左右両辺と下辺が挟まっている箇所についてはそれも含めてヒートシールして三方袋の製袋を行い、上辺には樹脂製チャックからなる封口部4を設けた構造となっている。吸水性シート5の上辺の折り返し部は袋1内に緩衝性のある底部を形成する。吸水性シート5の素材は熱接着性を有する不織布である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体容器を入れる袋に関する。
【背景技術】
【0002】
運搬・携帯・譲渡・販売などの目的のため、液体を必要量だけ、主として合成樹脂からなる容器に入れるということは日常的に良く行われる事柄である。医学・薬学・生理学・生物学等の分野においては、少量の液体を容器に取り分けることが多い。そのような行為を行う業務分野の一例としては、体液のような液体を検体とする検体検査がある。この場合、専用の容器に液体を入れて施設内検査室または外部の検査機関まで運搬する。容器の外面に液体が付着していた場合、放置しておくと不衛生になりやすいので、速やかに除去することが望ましい。それも、液体が付着していないかどうか、個々の容器を一々確認するのは大変なので、運搬作業の流れの中で自然に除去が行われるのが望ましい。
【0003】
運搬作業の流れの中で液体容器外面に付着した液体を除去する工夫としては、例えば、液体容器を袋に入れて運搬するものとし、その袋の中に吸水性シートを仕込んで液体を吸収させるといったことが考えられる。吸水性シートを内部に保持する袋については、特許文献1に例がある。
【特許文献1】特開平10−287374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された袋は農産物鮮度保持用包装袋であり、内部に吸水性シートを保持させる形態としては、段落[0021]に次のような説明がある。「包装袋の底部に吸水性シートを敷く形態、包装袋内の農産物と農産物との間に矜持させる形態、水分により劣化が発生する農産物の部位を直に覆うか、あるいは巻き付ける形態」
【0005】
上記のように、特許文献1記載の袋は、吸水性シートを単に内部に挿入する以上のことを想定していない。しかしながらこれでは、液体容器用の、特に検体を入れた容器用の袋としては使い勝手が良くないことがある。
【0006】
すなわち、袋を開けて液体容器を取り出すとき、吸水性シートも一緒に出てくることがある。検体検査には液体容器さえあれば良いので、吸水性シートまで出てくると却って邪魔になる。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、液体容器用袋の内部に、液体容器の外面から液体を除去する吸水性シートを設けるに際し、その吸水性シートが液体容器の出し入れに邪魔にならないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するため、本発明では液体容器用袋を次のように構成した。すなわち液体容器用袋は、非透水性シートからなる表材と裏材の間に、折り返し部を上辺とする形で二つ折りにした吸水性シートを配置し、前記表材と裏材の左右両辺同士と下辺同士を、前記吸水性シートの左右両辺と下辺が挟まっている箇所についてはそれも含めてヒートシールして三方袋の製袋を行ったことを特徴としている。
【0009】
この構成によると、袋を開けたとき内部から出てくるのは液体容器のみであり、邪魔な吸水性シートまで出てくることがない。
【0010】
(2)また本発明は、上記構成の液体容器用袋において、前記吸水性シートの折り返し部は袋内に緩衝性のある底部を形成することを特徴としている。
【0011】
この構成によると、液体容器を袋に乱暴に投入しても、吸水性シートが液体容器を柔らかく受け止めるから、液体容器が破損することがない。
【0012】
(3)また本発明は、上記構成の液体容器用袋において、袋の上辺に封口部が設けられたことを特徴としている。
【0013】
この構成によると、袋から液体容器や液体が出ることを防止できる。
【0014】
(4)また本発明は、上記構成の液体容器用袋において、前記封口部が樹脂製チャックからなり、前記吸水性シートの上端と前記チャックの間に所定の間隔が設けられたことを特徴としている。
【0015】
この構成によると、封口部が樹脂製チャックなのでシール性が良く、袋から液体、液体が気化した気体、液体が固化した固体などが漏れることを防ぐことができる。逆に、外部の液体、気体、固体が袋内に入り込むことも防止できる。またチャックと吸水性シートの間に所定の間隔が設けられているので、チャックが吸水性シートをかみ込んで閉じられなくなるといったことがない。
【0016】
(5)また本発明は、上記構成の液体容器用袋において、前記吸水性シートの素材が熱接着性を有する不織布であることを特徴としている。
【0017】
この構成によると、吸水性シートも含めたヒートシールを容易に行うことができる。
【0018】
(6)また本発明は、上記構成の液体容器用袋において、前記液体が検査用の検体であることを特徴としている。
【0019】
この構成によると、検体を入れた容器を衛生的に運ぶことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、袋に液体容器を入れたとき、液体容器の表面に付着した液体を吸水性シートで吸い取り、清潔な状態の液体容器を袋から取り出すことができる。吸水性シート自体は袋から出ることがなく、液体容器の出し入れの邪魔にならない。吸水性シートの湾曲部は袋内に緩衝性のある底部を構成するので、袋に投入された液体容器は吸水性シートにより柔らかく受け止められ、破損することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る液体容器用袋の実施形態を図1−4に基づき説明する。図1は液体容器用袋の平面図、図2は図1のA−A線で切断した縦断面図、図3は図1のB−B線で切断した横断面図、図は液体容器を入れる前の図2に相当する縦断面図である。
【0022】
液体容器用の袋1は4個の構成要素を備える。すなわち、非透水性シートからなる表材2及び裏材3と、表材2と裏材3の間に設けられる封口部4と、吸水性シート5である。
【0023】
封口部4は、袋1の口を閉じた状態に保てるものであれば何でも良く、例えば粘着テープ、ファスナー(ジッパー)、面ファスナー、ホック、樹脂製チャック等が使用可能である。この実施形態では、袋1の上辺(ここが口となる)に樹脂製チャックを貼着して用いる。
【0024】
吸水性シート5としては、十分な吸水力を有する他、少なくとも表面が熱接着性を有するものを選択する。このような条件を満たす素材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエステルからなる不織布を挙げることができる。これらの不織布には、必要に応じ吸水性樹脂を含浸やヒートコーティング等の手法で結合する。
【0025】
表材2及び裏材3には、最内層(袋の内面となる層)が熱可塑性樹脂となった積層シートを用いる。積層シートの積層構成は、例えば次のようにすることができる。
【0026】
二軸延伸ナイロン/押出ポリエチレン/線状低密度ポリエチレン/押出ポリエチレン
上記は積層構成の一例であり、非透水性さえ確保できればどのような構成の積層体であっても良いことは言うまでもない。なお、袋1の内部の状況を目視で確認できるよう、積層シートは透明または半透明であるのがよい。
【0027】
袋1の製作は次のように行う。まず、表材2と裏材3のそれぞれ内面側に封口部4の雄側チャックと雌側チャックをヒートシールで貼着する。図2では、表材2に雄側チャック4aが貼着され、裏材3に雌側チャック4bが貼着された状態が描かれているが、雄側と雌側の配置を逆にしても構わない。封口部4は前述の通り袋1の上辺に配置する。この表材2と裏材3を同一の矩形に裁断する。吸水性シート5も所定の矩形に裁断し、折り返し部を上辺とする形で二つ折りにする。吸水性シート5の寸法は、横幅は表材2及び裏材3に等しく、二つ折りにした後の縦方向の長さは表材2及び裏材3よりも短くなっている。
【0028】
裏材3の上に吸水性シート5を重ね、さらにその上に表材2を重ねる。吸水性シート5は封口部4のある側と反対の側に寄せておく。こうしておいて表材2と裏材3を、左辺同士、右辺同士、下辺同士の3箇所でヒートシールする。吸水性シート5の左右両辺と下辺が挟まっている箇所については、吸水性シート5も含める形でヒートシールが行われることになる。このようにして三方袋(三方シール袋)の製袋を行い、上辺に封口部4を備えた矩形の袋1を形成する。吸水性シート5の縦方向の長さが短いので、吸水性シート5の上端と封口部4の間には所定の間隔が生じることになる。
【0029】
図1に示すように、袋1の左右両辺と下辺の三方をヒートシール部6が縁取る。色の薄い部分は表材2と裏材3の二者のみがヒートシールされた箇所であることを表し、色の濃い部分は表材2、裏材3、吸水性シート5の三者がヒートシールされた箇所であることを表す。
【0030】
図4に示すように、吸水性シート5の上辺の折り返し部はシートの弾性で湾曲し、袋1の中に緩衝性のある底部を形成する。
【0031】
上記製造手順では、表材2、裏材3、及び吸水性シート5を所定形状に裁断した上で重ね合わせてヒートシールした。これと異なる製造手順として、表材2、裏材3、及び吸水性シート5を長尺シートのまま重ね合わせてヒートシールし、後で切り離して個別の袋1とする手法も可能である。
【0032】
完成した袋1は、液体容器10を運搬するのに用いる。袋1に液体容器10を入れ、封口部4を閉じて袋1を密封する。袋1に液体容器10を投入する際、多少乱暴に扱ったとしても、吸水性シート5の上辺の湾曲部が押されて横に膨らみ、柔らかく受け止めるので、液体容器10が破損することはない。なお液体容器10は略直方体形状の物品として表現されているが、その形状に制限はない。
【0033】
封口部4を閉じた後の袋1は、液体容器10が破損して液体がこぼれてもそれが外部に漏出しないだけの液密性を備えるものとする。袋1はさらに、環境温度が変化しても、それが所定範囲内であれば内圧の変化に耐え得るだけの耐圧性を備えるものとする。また吸水性シート5は液体容器10の保持する液体を全て吸収できるだけの吸収力を備えるものとする。
【0034】
液体容器10の外面に液体が付着していたとしても、それは吸水性シート5に吸収される。従って封口部4を開いて液体容器10を取り出すときは、液体が吸い取られ、清潔な状態となった液体容器10を取り出すことができる。
【0035】
吸水性シート5は表材2及び裏材3に固着されており、液体容器10を袋1から出すとき、液体容器10に引きずられて袋1から出ることはない。従って、吸水性シート5を袋1の中に押し戻す必要がない。
【0036】
以上本発明の実施形態につき説明したが、この他、発明の主旨から逸脱しない範囲で種々の改変を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、検体容器などの液体容器を入れる袋として広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】液体容器用袋の平面図
【図2】図1のA−A線で切断した縦断面図
【図3】図1のB−B線で切断した縦断面図
【図4】液体容器を入れる前の図2に相当する縦断面図
【符号の説明】
【0039】
1 袋
2 表材
3 裏材
4 封口部
5 吸水性シート
6 ヒートシール部
10 液体容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非透水性シートからなる表材と裏材の間に、折り返し部を上辺とする形で二つ折りにした吸水性シートを配置し、前記表材と裏材の左右両辺同士と下辺同士を、前記吸水性シートの左右両辺と下辺が挟まっている箇所についてはそれも含めてヒートシールして三方袋の製袋を行ったことを特徴とする液体容器用袋。
【請求項2】
前記吸水性シートの折り返し部は袋内に緩衝性のある底部を形成することを特徴とする請求項1に記載の液体容器用袋。
【請求項3】
上辺に封口部が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の液体容器用袋。
【請求項4】
前記封口部が樹脂製チャックからなり、前記吸水性シートの上端と前記チャックの間に所定の間隔が設けられたことを特徴とする請求項3に記載の液体容器用袋。
【請求項5】
前記吸水性シートの素材が熱接着性を有する不織布であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体容器用袋。
【請求項6】
前記液体容器が検体容器であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の液体容器用袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−230640(P2008−230640A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69815(P2007−69815)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】